#5 迷いと決断
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
魅真と花道がバスケ部に入部してから、一週間がすぎた。
三井目当てで入った魅真は、マネージャーとしての仕事はしているものの、三井がいないとわかってかなり気落ちしており、自己紹介した時とくらべて、覇気が感じられなくなっていた。
花道は意気ごんでいたものの、相変わらずコートのすみでドリブルの基礎練習をさせられており、そこが指定席のようになっていた。
一方で、すでに実力が充分にあった流川。彼見たさに、体育館には連日女子生徒が来ており、その数は増える一方だった。
そして花道は、この状況にかなりイライラしていた。
#5 迷いと決断
「ナイスパス、流川!」
今は、ちょうど流川が相手を見ずにパスをしたので、チームメイトから称賛されていた。
「見たかよ、今の…」
「うん」
「パスする相手なんて、全然見てなかったのに…。背中に目があるみたいだな、まるで」
同じ1年生の選手達は、流川の高度なテクニックに感心しており、赤木はそれを見てフッと笑っていた。
更には、流川を見にきていた女子生徒も黄色い声をあげており、その中には晴子もいて、同じように、頬を赤くして黄色い声をあげていた。
当然花道は、そのことにイライラしていた。
「いーぞォ、流川!!」
彩子は彩子で、花道の隣で、流川を称賛したので、過剰に反応をし、更に苛立った。
「ほら魅真!あんたもマネージャーなら声を出しなさい」
「は、はい。すみません」
「最近変よ。どうしたの?」
「なんでもないです」
「そう?」
無理して笑って誤魔化した魅真は、なんでもないと言うものの、沈んだ顔をしていた。
「(なんだかんだで、入部してから一週間か…。三井さんはバスケ部にいないし、相変わらず学校内でもみつからないし…。私、ここにいる意味あるのかな……)」
沈んだ顔をしていたのは、三井がバスケ部にいない上に、3年の教室どころか、校舎のどこを歩いても三井の姿は見当たらないから。これが理由だった。
「(…やめちゃおっかな…。花道も、そろそろ限界だろうし。もともと、三井さんがバスケ部にいることが前提で、バスケ部のマネージャーになったわけだし)」
三井がみつからないだけでなく、晴子にいいところを見せたいからという理由でバスケ部に入部した花道が、顔を見てわかるくらいに、すでにかなりイライラした様子だったので、これはキレるのも時間の問題だと思った魅真は、まだ入部して一週間だが、退部しようかと考えていた。
「(くっそーー。この次期キャプテンに対して、なんだこの扱いは。…あのゴリめ…。もう一週間もこればっかり…。これじゃ、スラムダンクどころじゃねーじゃねーか…。せっかくハルコさんにおしえてもらったのに)」
一方その花道は、自分がイメージしてたものと違うので、もんもんとしていた。
「(くそう。こんなハズじゃ…)」
花道がイメージしていたものは、周りから期待され、流川と赤木をスラムダンクで倒し、赤木にたよりにされ、晴子に、応援するから全国大会へ連れてってと言われ、更に一緒に帰ろうと誘われて、念願の、好きな女の子と下校するという夢を叶えるというものだった。
「まったく……。しょうがねえなあ…」
そのことを妄想しながら、花道は目を閉じて、頬を赤くし、何やらブツブツと一人ごとを言っていた。
「花道ー…。ボールボール」
「しょーがねーのはオマエだ!」
けど、妄想の方に集中するあまり、手は動かしているが、手からボールが離れて床にころがっていたので、魅真は冷静に指摘し、彩子はハリセンで頭をたたいた。
「(ぬう…。現実はこれか。ちくしょう!!この女もゴリの手下だな…!!)」
また恥をかかされたので、花道は両手で頭をおさえながら、彩子を睨んだ。
「よし。次は、ボールハンドリングの、基礎ね!!」
「(またキソか…。もうたくさんだ…)」
「(あ……。そろそろ本気でヤバイかも…)」
ドリブルではなくなったが、またしても基礎練習なので、花道の額にはたくさんの青筋が浮かんだ。
「ちょ…ちょっと、アヤコさん。いつになったらオレも、みんなにまじれるんすか。はやくこう、スラムダンクをドカンと…やりたいんすけど…」
「ん?そりゃー、やっぱ基礎が身につかないとねー。なんせ初心者だから」
それでも、相手は女性なので、ブチギレて襲いかかることはなく、なんとか怒りをおさえて彩子に質問をすると、あたり前の答えが返ってきた。
「たとえば、こういうのとか―――」
彩子は説明しながら、ボールハンドリングを始め、ボールを体の周りで回した。
「こういうのが、まずはすばやくできるようにならないとね」
そして今度は、両足の周りを、8の字を描くようにボールを回す。
「…………」
それを花道は、どこかぼんやりとした顔で見ていた。
「わかった?桜木花道」
「う」
質問に答え終わると、彩子は花道の胸に、持っていたボールを軽くぶつける。
「なるほど。いいでしょう」
ボールをとると、花道はニヤリと笑う。
「はあーーーっ…」
「お…」
「おおっ」
彩子に言われた通り、ボールハンドリングをしようと、ボールを構える花道。それはバスケの練習というより、まるで、戦闘で必殺技でも出しそうな雰囲気だった。
「フンフンフンフンフンフン」
「「おおっ!?」」
ボールハンドリングを始め、ボールを体の周りを回す花道だが、それは彩子よりも早かった。
「フフフンフフフンフフフンフフフンフフフンフフフン」
「おおーーっ!!」
「すっごい花道!!」
続いて、両足の周りを回すが、これもかなり早く、魅真や彩子だけでなく、外で見ていた洋平達も驚いており、晴子は称賛していた。
「おお!!」
「スゲエ!!」
「ほう!」
洋平達や、晴子だけでなく、流川以外の部員達も、花道のボールハンドリングの技術に感心していた。
「どーだ!」
「スゴイじゃんか、桜木花道!!」
「ほんと!!あんた、こんな特技があったんだね」
ボールハンドリングを披露した花道は、肩で荒い息をくり返しており、魅真と彩子は、花道の腕をたたいて称賛した。
「スッゲエな…。初心者とは思えないな…」
「あいつ、やっぱタダ者じゃねーよ」
「おお!」
今のボールハンドリングは、とても初心者とは思えないほどの動きだったので、周りの者達も称賛する。
「こりゃあ、しっかり練習させていけば、相当な選手になるかも…!!なあ、赤木!!」
「フッ」
それは木暮も同じで、赤木に同意を求めると、赤木は何も言わないが、頭をかきながらうれしそうに笑っていた。
「イヤーーーーー。次期キャプテンとささやかれる男としては、これくらい!!」
「あっはっはっ!!いいぞ、桜木。その意気だ!!」
「その調子でがんばって!」
「おうよ!!」
周りから称賛の声があがったので、うれしくなった花道は有頂天になった。
「これで、やっとみんなにまじれるぞ。みてろよ。ん」
ボールハンドリングが素早くできるようにならないとと彩子に言われ、実際、彩子以上に早くできたので、これでようやく、みんなと一緒に練習ができるだろうと、花道はコートに走りだす。
「どこへ行く」
だが、赤木が前に立ちがだかった。
「イヤ…。みんなと一緒に…」
「ドリブルだ!」
「……………」
赤木は花道がコートに入ることを許さず、それどころか、またドリブルをするよう言われたので、花道は固まった。
これは一波乱あるかと、部員達は、固唾をのんで見ていた。
花道は、自分がコートに入ることを許されなかったが、それでも右側に歩き、赤木の横を通りすぎて、コートの中に入ろうとした。
けど、赤木が素早く動いて、花道の前に立ちはだかる。
右がダメなら左と、花道はまた赤木の横を通りすぎて中に入ろうとするが、赤木はまた同じように、花道の前に立ちはだかって邪魔をした。
横を行くのがダメならと、今度は赤木の股の間をくぐりぬけるが、赤木は花道の足首をつかんで阻止する。
そのせいで、花道はころんで、顔を床にうちつけた。
「マズイ…」
「へ?」
これで、完全にキレてしまったとわかった魅真は身構えるが、彩子には、魅真が言ってる意味がわからなかった。
「くる!」
一方で、外で中をのぞいていた洋平達も、まずいと思っていた。
「お…おい、大丈夫か、桜木…」
「桜木君…」
木暮達と晴子も、何やら様子がおかしいことに気づいた。
「ふんぬーっ!!!!!なんでオレばっかり、スミッコでダムダムやってなきゃならねーんだ。もーーーガマンできん!!!」
魅真と洋平達が思った通り、花道はブチギレてしまった。
「花道っ!!!」
「やっぱし!!」
「さァ、オレたちの出番だ!!」
「おい花道、よせ!!」
洋平達は、花道を止めるべく、体育館の中に入っていく。
「うる」
「!!」
「さァい!!!」
しかし、入ってきた途端に花道に頭突きをされて、全員倒れてしまった。
「ふぬーーーーっ」
「うわあああっ」
洋平達を倒した花道は、他の部員のもとへ走っていき、部員達はびびって逃げていった。
「うーーむ。まさに、焼け石に水」
「洋平!大楠!高宮!チュウ!大丈夫!?」
「「「「大丈夫じゃねーよ」」」」
「なんなのよ、あんたたちは…」
せっかく止めるために出てきたのに、洋平達はあっさりとやられてしまった。
「桜木君…!?」
晴子は、花道がキレて暴れまわっているので、どうしていいかわからず、その場で固まっていた。
「てめーら、誰がみがいたボールを使ってると思ってんだ、コラァ!!返せ!!コラァ!!コラァ!!」
花道は、他の1年生からボールを奪いとる。
1年生達はなす術もなくボールをとられ、キレて小さな子供のような言動をとる花道の迫力に恐れをなし、ボールをとられた1年生達は、涙を流しておびえていた。
「花道!!やめなさい!!」
「うるせえっ!!」
魅真も止めるが、花道は聞く耳もたずだった。
「このバカタレが!!なに一週間前のことをいっとるか!ドリブル左右500回!!失敗したら最初からだ!!」
「うるせい、ゴリラジジイ!!オレに負けたもんだからイジワルしやがって!!」
「イジワル…!!小学生か、てめーは!!」
もう一週間も同じドリブルの基礎をやらされ、ようやくみんなと一緒に練習が出来るかと思いきや、拒否をされ、それだけでなく、かなり厳しいことを言われたので、花道の怒りは頂点に達する。
「こわ~い…」
「………」
「やっぱ、アレが本当の姿ね」
「(止めなくちゃ……!!でも、こわい)」
晴子は、花道を止めなければとは思っているものの、怒り狂っている花道を見て、なかなか踏み出せずにいた。
「洋平君!!お願い!!やめさせて。お願い!!」
「…だから、見てたでしょ」
洋平達の手に負えないのは、すでに先程の頭突きを見てわかっただろうに、無茶ぶりを言う晴子に、洋平は自身の額にできたコブを指さしてつっこんだ。
「もー、てめーのいうことなんかきかねーぞ!!そりゃあ見てろ。スラムダンクだ!!」
「くっ…。このバカ…」
基礎をやらず、自分勝手にダンクをしようとする花道を、赤木は蹴りとばした。
花道はそのまま床に倒れ、体を床に強く打ちつけてしまい、その際に、大きな音が響いた。
「キサマは、スポーツというもんが、全然わかっとらん!!基本がどれほど大事かわからんのか!!ダンクができようが何だろうが、基本を知らん奴は、試合になったら、何もできやしねーんだ!!」
「ゲホ。ケリくれやがったな、この野郎。…上等だ」
言ってることはもっともだが、暴力を働かれたので、起き上がった花道は、赤木の頭をつかむと、得意の頭突きをくらわせた。
「ぐお…!!」
「キャプテン!!」
さすがに頑丈な赤木も、花道の頭突きは強烈だったようで、頭突きされたところを両手で押さえた。
「うわああっ。もうメチャクチャだあ~~!!おい、みんなでふたりをとめろー!!」
花道と赤木は、一人では止められないだろうと思い、流川以外の全員で止めようとした。
「くっそう。オレはスラムダンクがやりたいんだよ!!やらしてくれたっていいだろ!!」
「くっ…。そのまえに、身につけなきゃならんことが、山ほどあるんだ。ルールも全く知らんくせに!!こらっ、どこ行くんだ、桜木!?」
「帰る。こんなつまんねー部は、もうやめる」
まだ話している途中だというのに、体育館の出入口に歩いていく花道に問うと、花道は肩ごしに赤木を見ながら答えた。
「「桜木!!」」
「花道っ!!」
ここから去ろうとする花道を、流川は何も言わないがジッと見ており、魅真、彩子、木暮は引き止めようと名前を呼ぶが、花道の足が止まることはなかった。
「………!!」
「…………」
出入口まで行くと、そこには晴子がいた。
「…………さ…」
「…………」
晴子は花道の名前を呼ぼうとしていたが、花道は気まずいせいか、何も言わずに、晴子の横を通りすぎて、体育館から去っていった。
「………」
その姿も、流川は凝視していた。
「ぐっ…。この、根性なしが!!」
去っていく花道に、赤木は罵声を浴びせるが、花道がふり返ることはなかった。
「桜木君…」
その花道が去っていく姿を、晴子は悲しそうな顔で見送る。
「(ちくしょう――――)」
体育館から去っていく花道は、どこか悔しそうな顔をしていた。
「花道!!」
花道が体育館の外に出ると、魅真は追いかけようと走り出す。
「待て、魅真」
だが、そこを洋平に、後ろから腕をつかまれて止められる。
「洋平…」
洋平に腕をつかまれると、魅真は後ろへふり返った。
「お前は、まだ練習があんだろ」
「でもっ……花道が…」
確かに、練習の途中でぬけるのはまずいが、それでも花道のことが心配なので、追いかけようとする。
「だぁーいじょうぶだって。ここはオレ達にまかせろ」
魅真の気持ちを察した洋平は、魅真を安心させるように、にかっと笑う。
「そうそう」
洋平に続いて、高宮。
「ここはオレ達にまかせな」
そして大楠。
「だから、魅真はここに残ってろ」
野間も、魅真にここにいるように言った。
「うん。わかった」
四人が魅真の代わりに、花道を追いかけてくれるというので、魅真は安心して、花道を四人にまかせた。
魅真が返事をすると、洋平達は花道のあとを追いかけていった。
そして、花道も洋平達もいなくなると、体育館はいやに静まりかえった。
「オウ、何やってる。練習だ練習だ!!スリーメン!!」
「は、はい!!」
赤木はその静寂をやぶり、練習を再開しようとした。
「お兄ちゃん。あたし桜木君さがしてくる!!きっと一時的に、ちょっと感情的になっちゃっただけだと思うの」
「ほっとけ晴子。あいつはああいう男だ。ちょっとキビシクすると、すぐガマンできなくなって逃げだす。今までそうやって、何人やめていったか…。おまえも知ってるだろう。桜木も、しょせんはあいつらと同じってことだ」
晴子に話していたが、晴子よりも先に、魅真が強く反応をする。
「…勝手なこと言わないでください……」
「は?」
そして、しぼりだすような声で意見をする。
「花道のこと何も知らないくせに、勝手なこと言わないでくださいって言ってるんです!!」
「なっ…」
入部してからまだ一週間で、魅真のことは何も知らないが、いつもおとなしくてひかえめだった魅真が、急に声を荒げてきたので、赤木だけでなく、周りにいる者は全員驚いた。
「あなたの目に、花道がどう映っているかはわかりません。確かに、花道は不良で、世間からはワルだって思われるかもしれません。けど、決してクズなんかじゃないです。少なくとも私は、昔花道に救ってもらったことがあります。何も知らないくせに、表層だけで、勝手な判断をしないで!!」
感情をむき出しにして、赤木に意見すると、そこにいる者達は全員言葉を失い、魅真を凝視した。
「大体あなたも、いくらなんでも、ちょっとキビシすぎるんじゃないですか!?なんなんですか?ドリブル500回で、失敗したら最初からって。軍隊ですか?キビシクするなとは言いませんけど、いきなりハードルあげるなんてやりすぎです!!」
「オレはキャプテンだ。あいつの練習メニューをどうするかは、オレに決める権利がある」
「そういうのを、職権乱用っていうんですよ」
相手は女なので少しひかえめだが、それでも赤木は威圧的に返す。
しかし、魅真はこんなことではひるまず、強気に返したのだった。
まさか、花道以外に、赤木に対してこんなにも強気に出る者がいるとは…しかもそれが女でいるとは思わず、全員口を閉ざして二人のやりとりを見ていた。
「お兄ちゃん」
そこへ、晴子が赤木に再び声をかけた。
そのことで、魅真と赤木は晴子の方へ顔を向ける。
「桜木君は、お兄ちゃんが言ったような人じゃない。桜木君は、ちがう!あたし、さがしてくる!」
そう言うと、晴子は花道を探すために走っていった。
「晴子!!」
晴子が走ると、松井と藤井もあとを追いかけていった。
「…………」
晴子が探しにいく姿を、赤木はどこか気まずそうに見ていた。
「さァ、スリーメンだ!!」
けど、今はまだ練習の時間なので、気まずそうにしながらも、練習を再開した。
魅真も、今は部活の時間なので、自分の仕事に戻った。
だが、赤木にケンカを売るように強気な態度で接したので、どこか気まずさを感じており、その上、花道がいなくなってしまったので、心ここにあらずだった。
「(とうとう、花道もいなくなっちゃった。本当にこれで、ここにいる意味がなくなっちゃったな…。私、これからどうしよう。三井さんがいない上に、花道もやめてしまったら、それこそ本当にいる意味がないじゃない。やめちゃおうかな……)」
それは、三井も花道もいないので、続けるかやめるか迷っていたからだ。
「(今やめたら、私も根性なしとか言われそうだけど…。でも、そんな気ないのに続けても、失礼なだけだし、意味もないし…。とりあえず、明日花道の頭が冷えていたら、花道に部に戻る気はないか聞いてみて、それで判断しよう)」
魅真はこれからのことを考えており、やめようという気持ちがありつつも、それでもここにいる間は、仕事はキッチリこなそうと思い、マネージャー業にとりくんでいた。
だが、それから数時間後……。
「あーーーーっ。桜木花道!!帰ってきたあ!!」
「えっ!!」
「なに!?」
「!!」
体育館の出入口で、コソコソしている花道をみつけた彩子が、大きな声で叫ぶと、全員出入口の方へ注目した。
「…………」
「…………」
もちろん赤木もふり向くが、中に入ってきた花道は、頬を赤くしてどこか気まずそうにしており、赤木もまた、どこか気まずそうにして、二人とも、一言もしゃべらなかった。
「イヤイヤイヤ!!よかったよかった!!
おっ、なに、そーか!
おおい、赤木!桜木も反省してるってよ!!なっ桜木、そーだろ!」
「イヤーよかった。そろそろ彼も、ドリブル以外も覚えていった方がいいかもしれないすよ。ねー、赤木先輩!!」
「おっ、それは名案だ!!」
けど、そんな頑固な二人の間…花道の隣には木暮が、赤木の隣には彩子が立って、二人の仲をとりもった。
「…………」
そのやりとりを、流川はジッと見ていた。
「まあ…いいだろう」
「キャーー」
「じ…じゃあ、スラムダンクを……!?」
許可が出たということは、いよいよスラムダンクができるのかと、花道の顔は明るくなった。
「パスの基礎だ!」
「ぬ………!!」
しかし、またしても基礎練習だった。
「よ…よかったな、桜木!!次のステップに進んだぞ!!」
「ぬぬ…」
「そーよそーよ。よかったなー桜木花道!!」
ドリブルがパスになっただけで、基礎練習には違いないので、またキレるかと思った木暮と彩子は、あわててフォローにまわり、拳で花道の胸を軽くたたいた。
「「よかったよかった」」
彩子と木暮が明るい調子でさわいでいると、そこへ、花道を探しに行った晴子が戻ってきた。
「桜木君…!!」
「(ハ…ハルコさん…!!)」
晴子の姿が見えると、花道は、急に表情が変わり、顔を赤くした。
「よかった…!!」
今まで花道を探していた晴子は、息を荒くしながら、ほっとした表情で笑った。
「(ハルコさん――――!!)」
戻ってきた時に晴子がいなかったのと、急に戻ってきて、しかも息を切らしているので、自分を探してくれてたというのがわかったのと、何よりも晴子が安堵して笑っていたので、花道は感動し、うれしくなった。
「よーーーし。パスやるぞパス!!ボールをかせい!!」
「うわあっ」
晴子の顔を見て、急にやる気になった花道は、学ランをぬいで、パス練習を始めようとした。
「ほーら、やっぱりここにもどってた」
「やっぱりな」
「オレのいった通りだ」
体育館の外には、顔がボロボロになった洋平達がいて、にこにこと笑いながら、壁の下の窓からのぞいていた。
あの後、体育館から去っていった花道は、学校を出た後に、洋平達と一緒に立ち寄ったファミレスで他校の不良と会い、ケンカをするために人気のないところに行った。
だが、花道は心ここにあらずで、不良の一人に蹴りを一撃入れるも、途中で用を思い出したと言ったので、その後のケンカを洋平達が引き受け、花道は学校に戻り、ケンカを終えた洋平達も、きっと花道はバスケ部に戻ったのだろうと思い、ここにやって来たのだった。
「(よかった―)」
大きな声でさわいでいる花道を見て、晴子はほっとした表情で笑っていた。
「(よかった…花道…)」
また、晴子だけでなく、魅真も花道が戻ってきたことにほっとしていた。
「(やっぱり……ここにいよう。三井さんはいないけど、ここにいて、花道が一人前のプレイヤーとして活躍できるように、手伝ってやるか)」
一度やめた花道だったが、それでも自分の意志で戻ってきて、バスケ部を続けようとはりきっていた。
そして、魅真もまた、花道がバスケ部に戻ってきたことで、バスケ部を続けようと決意したのだった。
.