標的57 修業開始!
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ラル・ミルチの部屋では、ラルがアームカバーをつけ、マントをはおり、おしゃぶりをもって、アジトを発とうとしていた。
けど、部屋を出る時、扉の近くの机の上にかざられていた写真たてに目をやり、写真たてを手にとると、その写真をジッとみつめる。
写真には、軍服を着ているラルと、ラルの隣には、同じく軍服を着た金髪の男が、ラルの頭に手を置いている姿が写っていた。
写真に写っているラルの顔はどこか赤く、単なる同僚といった感じではなさそうだった。
標的57 修業開始!
その写真たてを懐にしまうと、今度こそそこから出ようとした。
「!」
けど、扉が開いた時、目の前のものを見て驚いた。
「お……お願いです!!この時代の戦い方の指導をしてください!!」
そこでは、ツナと獄寺が、土下座をしていたからだ。
「………………何のマネだ」
「オ…オレ達、もっと強くならなくちゃいけなくて…。でも…あの……リングの使い方とかわからなくて……えと……」
ツナは必死に頼みこむが、獄寺は、本当は不本意なのか、すごく嫌そうな顔をしていた。
「リボーンの差し金だな」
最後まで言わなくとも、何故ここにツナと獄寺がいて、土下座をしていたのかを、ラルは理解した。
「ピンポーン。守護者を集めるには、戦力UPは絶対に必要だからな」
「でっ」
ラルがリボーンの名前を出すと、リボーンがとんできて、ツナの後頭部に着地をした。
「10代目!!」
「おまえ以外、適任者はいねーんだ」
「断る。山本に頼むんだな」
「それがな」
リボーンは話しながら、ツナの頭を踏み台にして、横にとんだ。
「山本は、見ての通り、ただの野球バカに戻っちまったんだ」
「ども」
「てめーも土下座しやがれ!」
ツナの隣には山本が、山本の隣には魅真が立っており、リボーンはツナの頭を踏み台にして跳ぶと、山本の肩の上にのった。
「おまえ達と遊んでいるヒマはない。オレは発つ。ここでじっとしていろ。少しは長生きできるぜ」
けど、ラルは聞く耳もたずで、このアジトから発とうとそこから歩き出した。
「ちょっと待ってください!!真剣なんです!!リボーンに言われたからってわけじゃ…」
「もうやめましょう、10代目っ」
ツナは必死になってラルを止めようとするが、そのツナを獄寺が止める。
「あんな女、頼りにすることないっスよ!」
「でも…」
「だいたい、あいつに指導者の素質があるとは思えないっス!!」
「獄寺君………」
「その点はスペシャルだぞ」
「!?」
獄寺はラルをけなすが、そこをリボーンが否定した。
「ラル・ミルチは、イタリア特殊部隊コムスビンで、教官をやっていてな。指導者としては、オレも一目置いてるんだ。なんたって、アルコバレーノになる以前のコロネロを、一人前に育てあげたのはあいつだからな」
「ええーーー!?あの、コロネロの教官ーーーー!?」
「ア……アルコバレーノを育てたんスか!!」
リボーンと同じで強いあのコロネロを育てたと聞き、ツナと獄寺は驚く。
「つーか、あんなに若いのに、教官やってたの??」
「それに、コロネロも、アルコバレーノ以前って、生まれてないんじゃ…?」
いろいろとふしぎに思うことがあり、ツナと獄寺は、頭がこんがらがった。
「と…とにかく、リングでの戦い方を知るのはあの人しかいないんだ!!止めなくちゃ!!」
「10代目…」
「ガハハハ」
「?」
ツナがラルを止めようとした時、再びランボのけたたましい笑い声が聞こえてきた。
「ツナ、見て見て!!てっぽういっぱい!!」
しかも危険なことに、鉄砲を抱えてこちらに走ってきた。後ろにはイーピンも一緒に走ってきている。
「んな!?ランボ!!いったい、そんなものどこから!!?」
「ずーっとずーっと向こうの部屋!!迷路みたいで面白いんだよ!!」
「頼むからじっとしててくれよ!今、大事なお願いしてんだから!!」
「遊ぼ~よ、ツナ!!」
ツナはランボにお願いするが、ランボはおかまいなしに、遊びに誘う。
「「キャアアァ!!!」」
「!!」
その時、今度は京子とハルの悲鳴が聞こえてきた。
「今度は何だ?」
「キッチンから!京子ちゃん達だ!!大変だ!!」
「自分も行きます」
ツナ達は、ラル以外全員キッチンに向かって走っていく。
今の今まで、自分に戦いの指導のお願いをしてたというのに、ランボにじっとするように頼んだり、京子達の悲鳴に反応して、キッチンに行ったりしたので、ラルは軽くため息をついた。
京子達の悲鳴を聞いたツナ達は、キッチンに入っていった。
「どーしたの!?」
「流しの下に、何かいるんです」
ハルに言われて、流しの下を見てみると、何やら流しの下をうめつくすくらいの大きな黒いかたまりが、うなり声をあげていた。
「え!?」
「んだこりゃ…?」
何かいると言われても、この黒いかたまりは一体なんなのか、さっぱりわからなかった。
「おっぷ」
魅真、ツナ、獄寺、山本の四人が見ていると、急に黒いかたまりは、流しの下からぬけた。
「ぐわっ」
そのかたまりは獄寺の方にとんできて、獄寺の顔に直撃した。
「いやーー、ぬけました~♪」
獄寺を下敷きにしたというのに、そのかたまりは、なんとものんきな声で話した。
「私(ワタクシ)ボンゴレファミリー御用達武器チューナーにして、発明家の、ジャンニーニでございます」
「ああ!!武器をおかしくしちゃう!!」
「あの面白えオッサンだな」
「いつまで乗ってんだ!!」
「あっ、これは失礼」
獄寺に言われると、ジャンニーニは獄寺の上からどいた。
「お久しぶりです、皆様。私もすっかり立派になりまして、今や、超一流のメカアーティストに成長いたしました。2週間ほど前に、父の推薦で来日し、このアジトのシステム全般を管理しております」
「もしかして…ずっとここにいたの……?」
「ああ。外のバリアもこの服も、ジャンニーニが作ってくれたんだぞ」
「で、そのおまえが、何でキッチンにいるんだよ」
「はい。このフロアの水回りは、先週私が組み立てたのですが、いろいろ部品が余ってしまって、どこのかな…と」
「本当に腕確かなのーー!!?」
超一流と自分で言っておきながら、両手いっぱいに部品を持っているので、ツナはジャンニーニの腕を疑った。
「ん?何だ?このニオイ…」
「あっ」
その時、何やらニオイがしたので、山本がなんなのかと思っていると、京子が大きな声をあげた。
「ごめんなさい!火を消し忘れてた!」
「はひ!まっ黒コゲです」
「きょっ、京子ちゃん、大丈夫!!?」
それは、火にかけていたカレーの材料がこげたニオイだった。
「火・事!!火・事!!」
「コラ、アホ牛!!うるせーぞ!!!」
笑い事ではないのに、何故か今の状況に、ランボは笑いながら踊っていた。
「こんな乳くさいままごと集団が、この先生き残れると思うか」
「どーだろうな」
なんだかんだと、ラルもツナ達のあとについてきており、今の現状を見てきびしいことを言った。
「見込みは0だ。ボンゴレリングを持っていようが、使い手があれでは勝てん。オレには、見込みのないガキを鍛えているような、無駄な時間はないんだ」
「ミルフィオーレとの戦いで、奴らがボンゴレリングに炎を灯したとしてもか?」
「!! 何を言っている。昨日今日で習得できることではない」
「だが、現にツナと獄寺の2人は、炎を灯し、獄寺は匣をあけたぞ。あー見えて、あいつらは真剣だ」
「デタラメを言うな!できるわけがない!!」
「おまえ、昔も年下のあいつに、同じこと言ってたぞ。できるわけがない。見込みは0だ。立ち去れってな」
「!!」
リボーンに言われると、ラルは昔の、特殊部隊にいた時のことを思い出した。
「でも、おまえは見たはずだ、ラル・ミルチ。本当に大事なものを守る時の、呪いすら恐れぬ人の力を」
次に思い出すのは、煙がたちこめる中、悲痛の声をあげている昔の自分。
「あれをくり返しちゃいけねーんだ」
「…………」
そして、迷彩柄のバンダナを取り出して、それをジッとみつめると、急に真剣な顔で前を見据えた。
場所は、日本にある、ミルフィオーレの基地。
「この部屋におられるはずです」
「うん」
正一が基地の廊下を歩き、ある部屋までやって来ると、チェルベッロの2人は外の扉の前で待機し、正一だけ中に入った。
「なっ…」
だが、部屋に入った途端、敷居の前にあるビンにつまずいてしまう。
「酒…?」
それは酒のビンで、そこら中にたくさんころがっていた。
「誰だ?」
「!!」
正一が部屋の中に入ると、そこにいる男が正一に声をかけた。
「ホワイトスペル、第2ローザ隊隊長A級(ランク)、入江正一です」
「おおっと、こいつは失礼!こちらから挨拶に伺おうと思っていたんだが…」
部屋の奥にあるカウンター席。そこに一つの影があり、声はその人物が発していた。
「オレが、ブラックスペル、第3アフェランドラ隊隊長」
そして、彼は背中を向けていたが、正一の方に顔を向け、持っていた酒ビンをカウンターに置いた。
「γ(ガンマ)だ。ようこそ、メローネ基地へ」
そこにいたのは、正一と色違いの、野猿と太猿と同じ色の隊服を着た、金髪の男だった。
正一にあいさつをするので、γと名乗った男は礼儀として立ちあがり、その顔には笑みを浮かべながら正一の方へ歩いていき、正一もまたγの方へ歩いていく。
「あなたが電光のγ…。武功の噂はかねがね聞いてます」
γの前まで来て、お互い向かいあうと、正一は緊張の面持ちでγにあいさつを返した。
「やめてくれ。上司におだてられると、鼻の下がのびる」
「上司?同じA級(ランク)ですよ」
そして、二人は話しながらあくしゅを交わす。
「いいや、ここの最高責任者はあんたなんだ。何でも申しつけてくれ。我ら第3部隊は、惜しみなく第2部隊に協力する」
「助かります。………では、早速ですが、野猿と太猿が、トラブルを起こした件について説明を……」
「おぉ。その件についちゃ、オレの監督不行届きだ。2人には、しっかり灸をすえて、反省もしている。オレの顔に免じて、許してもらえないか?」
「……ですが……問題は、匣を4つ失ったことでして…」
「………………」
「…………」
笑みをたやさない、γの無言の圧力のようなものに、正一は顔をそらして軽く息を吐いた。
「次はかばいきれないと伝えてください」
「いやあ、助かる」
γの笑みに負けたのか、正一は野猿と太猿をおとがめなしにした。
「あいつらは、オレが、もう一度とっちめとくよ」
「それと、もう一つ。情報伝達のことなんですが、ボンゴレに関することは、いかなる小さなことでも、噂であってもいい。もし何かあった時には、必ず僕に伝達してください」
「そいつは……あんたの特別な任務と関係あんのかい?」
γにそう言われると、正一は顔をゆがめた。
「いいえ…。ただ…お願いを……」
「そうかい。了解した」
「では、僕はこれで」
話が終わると、正一はこの部屋から立ち去ろうとした。
「茶でもどーだ?後ろの方々も一緒に」
「結構です」
そこをγがお茶に誘うが、正一は断った。
「失礼しました」
そして、部屋の外へ出ると、扉の外の両脇に待機していたチェルベッロも、後へと続く。
「お上手でしたよ」
「やめてくれよ」
チェルベッロの一人が正一をほめると、正一は少し頬を赤くして、軽くため息をついた。
一方第3部隊の部屋では、カーテンが壁の方から開いた。
「あれが、ミルフィオーレに5人しかいない、A級(ランク)の一人かよ。モヤシみてーだな、γアニキ」
「フッ」
カーテンの向こうは壁ではなく、一つの部屋を二つに仕切っていただけで、カーテンの向こう側にいた第3部隊の人間が開けたのだった。
そこには、γと正一が話していた場所のようにバーカウンターとソファとテーブル、ビリヤード台があり、周りには第3部隊の人間。そして、ソファには、あの野猿がすわっていた。
「だが、おつむは切れるんじゃねーのか?白蘭が最も信頼してるらしいからな。
ところで、特別な任務って何のことだ?γアニキ」
奥のソファには、太猿もすわっていて、両隣に綺麗な水着の女性をはべらしていた。
「カマをかけたのさ…。ありゃあ、やはり密令持ちだな…。白蘭への土産づくりに必死だ」
γは答えながら、カウンターにある酒ビンと、ビリヤードの玉をつくためのキューをとると、酒を一口飲みながら、ビリヤード台の前まで歩いていく。
「でもよ!オレ達あいつをだしぬくんだろ?」
「人聞きのわりーこと言うんじゃねえ、野猿!オレ達はただ、独自の判断で、任務を全うしようってだけさ」
そして、太猿と野猿のすわっているソファの間にあるテーブルに、酒ビンを置くと、玉をつくために、キューの先端にチョークをつける。
「ああ、次こそは、雨の守護者を殺し、あの謎のガキどもの正体を暴いてやる」
「だよな、太猿アニキ!あれはオレ達の獲物!誰にもやるもんか!!」
「でけー口たたくんじゃねーの。おめーら、やられまぎわに匣で防御膜張ってなかったら、ここにゃいなかったんだぜ」
チョークをつけると、γは玉をつくために構えをとる。
「言うなよ、アニキ!油断したんだ!!次こそは…」
「心配してねーよ」
構えをとり、玉をつくと、瞬間的に電気が走った。
「次は、オレも出るからな」
玉を一回ついただけなのに、ビリヤード台は粉々に砕け、その残骸が辺りの床に落ちており、ビリヤード台だったものは、ところどころこげて、雷をまとってバチバチといっていた。
場所は、ボンゴレのアジトに戻り、キッチンでは……。
「ごめんなさい、私ボーッとしてて…」
「き、気にすることないよ、京子ちゃん!オレなんかしょっちゅうだし!!」
「そーですよ!ハルもよくやります!ノープロブレムです!!」
京子が、せっかくのカレーの材料をこがしてしまったので、謝罪するが、ツナとハルは、京子に気にしないようにフォローしていた。
「っと思ったら、蛇口が外れたー!!」
「それは私の責任です!!」
「はひー!」
いきなり蛇口がはずれ、噴水のように水が噴き出したので、ツナ達はまたあわてた。そんな中でも、ランボとイーピンは、ツナ達の後ろでおいかけっこをしている。
その時、ラルが拳で壁をたたいた。
「聞け!!!」
大きな音と声に、そこにいた全員がラルに注目する。
「誰だろう……?」
「………さあ…」
初めてラルを見る京子とハルは、目を丸くしていた。
「最低限の戦闘知識と技術は、オレがたたきこんでやる」
「「「!」」」
「え……じゃ…じゃあ…」
ようやく自分達の要望をのんでくれるのだと、ツナは顔が明るくなる。
「日本(ここ)に送られているのは、ミルフィオーレの中でも、トップクラスの部隊だ。お前達の戦ったブラックスペルが全力で来たらひとたまりもない。急ぐぞ」
「あ……。そーいえば、そのブラック何とかって……?」
「ミルフィオーレは、2つのファミリーが合併してできたファミリーだ!白蘭擁する、新進気鋭のジェッソファミリーと、ユニ擁する、ボンゴレと同等の歴史を持つジッリョネロファミリーのな。そして、ジェッソ出身者は、ホワイトスペルとして白い制服。ジッリョネロ出身者は、ブラックスペルとして、黒い制服に身を包む」
「そ…そうだったんだ…」
「ちなみに、ホワイトスペルは緻密で狡猾な戦いを得意とし、ブラックスペルは、実戦でならした猛者が多いと言われている」
「ゔお゙ぉい!!てめー、どーゆー風の吹き回しだ?急にベラベラと!!ぁあ゙!?」
「ご…獄寺君…」
「お…おい!何でスクアーロ…」
「心配はいらん!一度でもついて来れなくなった時点で見捨ててやる」
「!」
「(鬼だ…)」
「図に乗りやがって!」
とんでもなくきびしいことを言うラルに、ツナは思わずだまってしまい、獄寺は怒り、山本は驚いて何も言えなかった。
「さっそく最初の修業を始めるぞ。4人のうち、誰でもいい。一度も開いたことのない、この匣を開匣しろ」
ラルがマントの下からとり出したのは、迷彩柄の匣だった。
「匣を開ける?匣って、あの何かすごいのを出す…?」
10年後の山本が使ってるのを見たが、ツナは匣のことを、まだよくわかっていなかった。
「でも、それが修業と何の関係が?」
「つべこべ言うな。やるのか、やらないのか」
「やっ…やります!!」
ツナが質問するが、ラルはそれには答えずに、逆にツナに問いかける。
「リボーン、暴れられる部屋はないのか?」
「さーな」
リボーンも、つい最近この時代に来たばかりなので、このアジトのことはよく知らなかった。
「それでしたら、トレーニングルームが、下の階にございますよ」
「そこがいい。案内を頼めるか?」
「もちろんです。こちらへどうぞ」
「オレ、着替えてくる」
ジャンニーニが先頭をきって歩きだすと、その後にツナ達が続いた。
「はひ…」
「あの…」
京子とハルが声をかけるが、まったくふり返ることなく行ってしまう。
「挨拶しそびれちゃったね…」
「意味不明発言満載の、あの、ビターな美人レディは誰なんでしょう…?」
「肩にのってたゴリラの頭、かわいかったね」
「やっぱり、あれゴリラですか!!か…かわいかったですか?」
「あれって劇団の衣装かなあ?」
「はひ!?じゃああの人劇団員さんですか?」
京子とハルは、初めて会ったラルのことをいろいろと考えていたが、どこかずれていた。
一方ツナ達は、ツナが着替えた後、ジャンニーニに案内されて、下の階のトレーニングルームに行くため、エレベーターに乗っていた。
「このアジトは公共の地下施設をよけているため、いびつな形状をしています。総面積は、イタリア、サンシーロ・スタジアムの約1.5倍。電力は、地熱を利用した自家発電で供給しています」
ジャンニーニはこのアジトのことを説明し、得意気な顔をする。
「よ…よくわかんないけど…すごそう」
「秘密のアジトみてーだな」
「みてーじゃねーんだよ」
まさに、秘密のアジトなのだが、ボケる(本人はそのつもりはない)山本に獄寺がつっこむ。
そして、その数秒後に地下8階についた。
「おや、つきましたよ」
小さくベルの音が聞こえると同時に機械が止まり、扉が開いた。
「ここです」
「わぁ」
ついた場所は、3~4階分くらいの高さの、かなり広い場所だった。
「それでは、私は再び修理に戻ります」
「ども」
トレーニングルームにつくと、ジャンニーニはすぐに戻っていく。
「ところで、雷の守護者はどこだ?見つかったと聞いたが…」
「ずっといんじゃねーか。おまえが視界に入れないようにしてる、あの毛のかたまりだぞ」
いつの間にか、再び山本の肩にすわっているリボーンに言われると、ラルは下へ顔を向ける。
「広い゙ーー!!!」
「(たしかにランボと呼ばれていたが…)」
ラルが顔を向けた先では、ランボがさっそく床にころがってはしゃいでいた。
「ヤッホー!!!ドアッホー!!!あらコダマだわ♪」
「…………」
そして、立ちあがったランボは、扉の方へ走っていき、そのあとをイーピンが追いかけていった。
「オレには見えん」
「(存在を消したー!!)」
ランボの性格が、ラルのカンにさわったのか、ラルはランボをいないものとした。
「修業の前に、今一度問う。生半可ではついてこれないぞ。本当にやる気があるのか?」
「ああ!」
「やります!!」
「ったりめーだ。吠え面かくなよ!」
「……………」
ラルの問いに、ツナ、獄寺、山本は気合が入っていたが、魅真は何も答えなかった。
「真田、おまえは?」
魅真が何も答えなかったので、ラルは魅真にだけ再度問う。
「………あ……あります……」
再度問われると、魅真はどこか気のない返事をした。
「わかった。絶対にできないと言うなよ。弱音を吐く奴は、容赦なく修正する」
三人にくらべてやる気を感じられなかったが、それでもイエスと言ったので、ラルは修業を始めることにした。
「(ひいっ。やっぱ怖ーよ、この人…。
で…でも、やるしかないんだ…!)」
容赦なくきびしいラルの言葉に、ツナはびびるが、それでも修業をがんばろうと決意する。
「この時代は、おまえ達の生きていた10年前と違い、リングに炎を灯し、匣を開けることができなければ戦いにならない」
ラルは説明をしながら、頭の上にあげていたゴーグルを装着する。
「それは、お前達も目の当たりにし、実感したはずだ」
「「「「!」」」」
「(………その通りだ。この時代の戦闘で、何度死にかけたことか…)」
アジトに来る前も、昼間の太猿との戦いでも、身をもって思い知ったツナは、ラルの言ってることに納得していた。
「だからこそ、匣を開けるプロセスを学ぶことが、この時代の戦いを吸収するのに、一番てっとり早いんだな」
「そんなところだ。運よく開匣できていたとしても、仕組みを知らねば意味はないしな」
「「?」」
「! オ…オレのことか…!」
この中で、唯一匣を開匣した獄寺に対して言ってるのだが、魅真はあの時隣にいたので、ラルが言ってるのは獄寺のことだとわかったが、ツナと山本はわからなかった。
「まずは、リングを理解しろ。リングにできることは2つ。リングそのものの力を使うか、匣を開けるか。
前者で言えば、この武器は、リングから発生した炎を」
ラルは説明しながら、左腕に装着しているガントレットに炎をこめた。
「そのまま射出している」
炎をこめると、その炎は、武器の手の上にある6つの穴から、弾丸のように放たれ、射出された炎は壁に直撃し、煙がたった。
「すげっ」
「ひいっ」
「アジト壊す気かよ!」
「リングそのものの力は、攻撃の基本となるものが多い」
煙がはれると、直撃した部分は陥没し、ひびが入り、こげていた。
それほどの威力があるというのは見てわかり、ヘタしたら、獄寺の言う通り、アジトが壊れそうなものだった。
「次に匣だが」
でも、ラルはまったく気にもとめず、今度は匣を取り出して、匣の説明を始めた。
「匣とは、リングの炎を、別の作用や運動に変える、装置だと考えろ。炎を電気にたとえるなら、匣は電化製品といったところだ」
ラルは、今度は匣の実演をするため、リングに炎を灯すと、持っている匣の穴にさしこんだ。
「種類は実に………」
持っている匣にリングをさしこむと、次に、マントの裏側につけている匣の穴にも、リングをさしこんだ。
すると、リングがさしこまれた匣のフタが開いて、中から匣に入っているモノがとびだしてきた。
「多種多様」
それは、炎をまとったムカデと、4本のひもが下についている小さな気球だった。
「基本的に、どの匣も、最初に炎をチャージした分しか仕事はしない。炎が切れれば、活動停止する」
「あ」
「!」
ラルが説明した通り、炎がなくなったムカデと気球は、床に落ちて動かなくなった。
「だが、開匣ののちに、更にリングの炎をまとわせるタイプ。敵の炎を吸収して、パワーアップするタイプも確認されている」
「(オレ…本当に、何も知らずに戦ってたんだな…。生き残ったのは、すんげーラッキーだったんだ………)」
それはまさに、昼間太猿と戦っていた時に、太猿が自分に使ったものだったので、ラルの説明を聞いたツナは、もし一歩違っていたらやられていたかもしれないので、身震いがした。
「ここまでで、わからないことはあるか?」
実演のためにつけていたゴーグルを頭の上にあげて、ツナ達の方へ向いて問う。
「あ…あの~。
……」
聞かれると、山本が後頭部をかきながら、どこか言いにくそうに口を開いた。
「一つもわかんねーんスけど」
「「(言い放ったー!!)」」
何一つ理解していない山本が、素直に言うと、ツナと獄寺はショックを受けた。
ラルは、そんな山本の前まで無言で歩いてくると
「わかれ」
「山本ォ!!」
容赦なく殴りとばした。
「オレの言ったことを何度も反復し、考えろ」
「え…」
「(鬼だ…)」
「(不条理だ…)」
「(雲雀さんみたいに容赦ないな、この人…)」
ラルからしてみれば、弱音を吐いた者を容赦なく修正しただけなのだが、ツナ達からしてみると、あまりに理不尽な行動なので、恐れをなしていた。
「!」
その時魅真は、雲雀のことが、一瞬だけだが思い浮かぶと、また悲しそうな顔になり、落ちこんだ。
「でも、山本は来たばかりで、何も知らなくって!」
「…」
「…後で説明してやれ」
大体なら、そういうことを言われたら、そうだったのかと理解するだろうが、やはりラルは容赦なかった。
「では実践だ。真田、お前はリングを持っていないそうだから、オレのを貸してやる」
「え?わっ」
ラルはリボーンから、魅真がリングを持っていないことを聞いていたので、魅真にも実践させるため、自分の指にはめているリングを、魅真に投げて渡し、魅真はそのリングをあわてて受け取った。
「さて…。沢田と獄寺は、リングに炎を灯したと聞いたが、本当だろうな」
「(10代目にいいとこ見せるチャンスだ!!)」
「えと…」
「ったりめーよ!!」
「見せてみろ」
「そ…それがオレ…よく、何が起こったのか、覚えてなくて……」
「覚悟を炎にするイメージ!!!」
「!?」
ツナは無意識のうちにやっていたようだが、獄寺は、ツナにいいところを見せるため、10年後の山本に教えられた通りに、リングに炎を灯そうとした。
「獄寺君!?」
「覚悟を炎に~~~~~炎に~~~!!」
ツナはどうしたらいいかわからなかったが、獄寺がやり始めたので、ツナは獄寺の方に顔を向けた。
「にぃ~~~~~~~~!!……………ん?」
けど、どんなに気合いをいれても、リングに炎は灯らなかった。
「ど、どーした!?確かにあん時は!!」
野猿と対峙した時は灯すことができたのに、今はやっても全然出ないので、獄寺はふしぎそうにしていた。
「やはりな。非常時に、偶然炎が出るというのはありうる話だ。だが、そんな火事場のクソ力に頼っていては、とても実戦では…」
ラルが呆れていると、話している途中で、獄寺のリングに赤い炎が灯った。
「!」
「っしゃあ!!」
リングに炎が灯ったことで、ラルは驚いてリングの炎に注目し、獄寺は得意気な顔をした。
「すごいよ、獄寺君!!真っ赤な死ぬ気の炎だ!!」
「これ、そんなのでんのかよ」
「いやー、まだまだっス!! (やったぜ!!)」
ツナに称賛されると、獄寺はツナの前でいいカッコができたので、謙遜しながらも、顔がにやけていた。
ツナと獄寺の間では、山本が首にさげていたボンゴレリングを指にはめて、獄寺と同じことをしようとしていた。
「へーー。覚悟を炎にってーと、こんな感じか?」
今度は山本がやってみると、一瞬にして青い炎が灯る。
「!!!」
それを見たラルは、まさか、さっきは自分の説明を一つもわからないと言った上、リングに炎が灯ることすら知らなかったのに、ほんの一瞬で灯すことができたので、驚きのあまり目を見張り、ツナは驚き、リボーンはうれしそうな顔をした。
「ハハハ、でたでたっ」
「山本は青い炎!!バジル君と同じだ!!」
「て…てめー、こうも簡単に!!」
「…………」
自分は少し手間取ったのに、山本はなんの苦労もなく、あっさりとリングに炎を灯してしまったので、獄寺は悔しそうにしていた。
「(ありえん…。ここまで、少なくとも30時間はかかるとふんでいた…。これが、ボンゴレリングの力なのか。いや……!!リングが媚びることなどない。これは……奴らの覚悟だ。
やはり、こいつらはあの、10代目ファミリーなのだな…。もしこいつらが、この時代のファミリーが持ち得なかった力…。ボンゴレリングを使いこなせるようになったとしたら……)」
「久しぶりに、教官の血が騒ぎだしたか?」
考えごとをしていると、隣にいるリボーンが、ラルの心を悟ったように声をかけてきた。
「おまえ、今エロい顔してたぞ」
「なっ」
「昔からおまえは、人のことを何でも見透かしたように……!!」
「おまえ、不器用だけどわかりやすいからな」
ラルは顔を赤くして、リボーンに怒るが、リボーンは受け流すだけだった。
「あん時もオレは、お前の気持ちの変化が、お前以上にわかって…」
「だっ、黙れ!!」
「…んだ?」
「ケンカ?」
けど、結局はリボーンに弱いところをつかれて怒鳴った。
「! 沢田!!おまえの炎はどーした!?」
ツナの声が聞こえたからか、急に思い出したように、ツナの方へふり向く。
「え……いや…あの、それが……やってるんだけど……さっぱりできなくて……」
ツナが困ったように言い訳をすると、ラルは素早くツナのもとへ移動した。
「え…」
「甘えるな」
そして、ツナの前まで来ると、先程の山本の時と同じように、ツナを殴りとばした。
「どわっ」
殴られてふっとんでいったツナは、後ろに仰向けに倒れた。
「なにしやがる!!10代目はケガしてんだぞ!!」
ラルからしてみれば、弱音を吐いたツナを修正しただけだが、ツナ命な獄寺は、これに対して猛抗議した。
「今のはツナが悪い」
けど、ラルと同意見のリボーンは、あっさりと言い放った。
「1時間以内に、全員がリングに炎を灯し、これを開匣できなければ、修業は中止だ。オレは発つ」
「そんなぁ!!待ってください!!」
さっぱりできないが、修業を中止されるのは困るので、ツナは焦って懇願した。
その頃キッチンでは…。
「ツナさん達遅いですねー。先におフロ入りましょーか」
「……」
すでにカレーはできあがっており、調理器具の片付けもすんでおり、今はカレーを煮込みながら、二人ならんで席についていた。
けど、ハルが話しかけても京子は元気がなく、反応を示さなかった。
「京子ちゃん?」
「!? えっ?」
「だ…大丈夫ですか?」
どこかうわの空だった京子は、ハルに再度話しかけられても反応がにぶく、生返事をするだけだった。
場所はトレーニングルームに戻り……。
「ハァ ハァ ゼェ」
あれから時間が経ったが、ツナは未だに炎を灯すことができないでいた。
「で…できない…。やっぱりダメツナなんだ…あ…」
「何度言えばわかる」
「んげ!!」
また弱音を吐いたので、ツナは再度ラルに殴られた。
「大丈夫っスか!10代目!!」
「ツナ、いいか!覚悟をこう、ボウッとイメージだ!!」
「やってるんだけど……」
山本がアドバイスをするが、ツナはまったくできなかった。
「リングを首にかけねーと出ねーのかもな」
「それではダメだぜ。奴がボンゴレの10代目であるのならば、10年後の奴のいたステージに、進んでもらう必要がある」
同刻、イタリア。
「白蘭様」
「お」
ミルフィオーレファミリーのアジトの白蘭の部屋で、レオが白蘭に声をかけていた。
「正チャンからの連絡だったりする?」
白蘭はソファにすわっており、レオが来たが、前を向いたまま、テーブルの上に置いてあるマシュマロを、袋の中から一つ取り出す。
「いえ…違います」
「あ、そう。となると、タイクツだよねー、レオ君」
「は…はぁ…」
マシュマロを手にとると、白蘭は親指と人差し指の間でマシュマロを何度か押して、感触を確かめていた。
「メシでも食い行く?」
「え゙、そんな恐れ多い!!」
そして、背伸びをするとレオを食事に誘うが、相手はボスなので、レオはあわてていた。
「うーんじらすよなーー。早く会いたいのに」
白蘭の目の前のテーブルの上には、『7³』と書かれたマシュマロが置かれていた。
「並盛中学2年A組、沢田綱吉クン」
白蘭はツナの名前を口にして、どこか楽しそうな顔で、先程手にとったマシュマロを口の中にいれた。
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