標的91 暗雲をはらう、純粋な紫炎
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魅真は、今までに見せたことのない、かなり鋭い目をデイジーに向けており、その目は怒りの感情と殺気で満ちあふれていた。
「ぼばっ」
その目や殺気や威圧感に、デイジーはひるみ、顔が青ざめた。
そして、デイジーだけでなく、草壁やロマーリオ、ディーノもその威圧感にひるみ、雲雀ですらも、驚いて目を見開いていた。
「(まさか、あの場面で、真田魅真が出てくるとは予想外だった。それに、あの威圧感……。いくらこの時代では強いといわれてても、10年前の、あの真田魅真が…)」
まだ弱かった頃の10年前の魅真が、ここまでの迫力を見せるとは、デイジーも思ってもみなかった。
「(それに……あの武器……)」
今度は、魅真が今持ってる武器に目を向ける。
「ねえ君、なんで雲雀恭弥の武器を使っているの?」
「!」
「君の武器は薙刀だろ?それなのに、なんで使いなれない、雲雀恭弥の武器を使っているのかな?」
薙刀とトンファーでは、間合いのはかり方も、使い方も違うのに、何故普段使っていない武器を使ったのか、デイジーはその疑問を魅真にぶつけた。
「…………この時代の雲雀さんが、はじめて私の特訓をしてくれた時、こう言ったの…。武器がなくなったら、武器以外のもので戦え。敵は待ってはくれない。武器をなくしたり、破壊された時は、別の戦い方を考えろ。武器は何も、私が普段使ってる薙刀だけじゃない。一番おろかなのは、武器をなくしただけで、負けた、勝てないと考えること。そう思った時点で、戦闘ではやられてしまう。思考を止めるな。どうすれば勝てるのか考えて、他の戦闘方法を、武器になるものをみつけろ。そうすれば、道は切り開けるって……。だから、薙刀が使えなくなったから、地面に落ちている雲雀さんのトンファーを使った。それだけよ」
その疑問に、魅真はこの時代の雲雀が言ってたことを思い出し、淡々と説明した。
「ふーん…。だけど、まさか今の攻撃で、僕チンをやったとか思ってないよね?跳ね馬ディーノも、雲雀恭弥も重傷を負った。隣の2人は戦力外。あとは、君だけだけど………。君は、さっきリングが砕けて、匣をあけることも、武器に炎を灯すこともできなくなった。そっちの2人と変わんない、ただの女だよ。非戦闘員も同然さ」
「そんなことないわよ」
デイジーは今の魅真の状況と、魅真では自分に勝てないことを説明するが、魅真はそれを否定する。
「どういうことだい?」
けど、当然デイジーにはわけがわからず、魅真を見ている雲雀やディーノ達も、どういうことかと思った。
魅真はデイジーを無視してしゃがむと、雲雀を拘束してるデイジーを、トンファーで一瞬にしてすべて破壊した後、雲雀の右手を、下からすくうように持ちあげて、ボンゴレリングをはずした。リングは、雲雀がケガをしているので、簡単にとることができた。
まさか、そんな行動に出るとは思わず、全員がびっくりする。
「リングなら、ここにあるわ」
そう言って、魅真は雲雀からとったリングを、デイジーに見せた。
そして立ち上がると、ボンゴレリングを右手の中指につけて、雲雀から離れ、デイジーのもとへ歩み寄っていき、デイジーの数メートル前で立ち止まる。
「まさか君、ボンゴレリングで戦う気かい?」
「そうよ。雲雀さんを傷つける奴は、誰であろうと、絶対に許さないっ!!」
「……理解できないな」
魅真が思いをぶつけると、デイジーは魅真が言ったことを疑問に感じ、否定した。
「白蘭様に聞いたんだけど、君、この時代に来る前に、雲雀恭弥とケンカしたんだろ?」
「!」
「それなのに、なんで助けるの?罵詈雑言をあびせられたんだろ?しかも、君の存在を否定した。そんな奴、守る価値なんかあるのかい?」
デイジーは以前白蘭に、この時代に来る前の、魅真と雲雀のいざこざを聞いていたので、なんで雲雀を助けるのか疑問に思ったのだった。
「……関係ないわ…」
それでも、魅真はデイジーの疑問を一蹴した。
「確かに私は、この時代に来る前に、雲雀さんとケンカした。悲しくて…苦しくて…死すら望んだ。でも……それでも、そんなことは関係ないの…」
魅真の言い分に、デイジーは信じられず、雲雀達も呆然とした。
「だって……それでも、雲雀さんが私の一番大切な人であることには、変わりないもの。だから私は、この想いをつらぬき通すだけ……」
言いながら、魅真はリングをつけている方の手を、胸のあたりにもってきた。
「私はずっと、雲雀さんを想ってる。何があっても、ずっと雲雀さんのそばにいる。どんなに嫌われても、どんなにないがしろにされても、どんなにさげすまれても、私は雲雀さんを、生涯守りぬく」
そして、魅真が雲雀への想いを語っていると、ボンゴレリングから、強い光が放たれた。
「それが、私の覚悟…!!」
強い光が放たれると、ボンゴレリングからは、巨大で澄んだ色の炎が灯った。
標的91 暗雲をはらう、純粋な紫炎
ボンゴレリングに灯った炎は、デイジーが修羅開匣をした時に起こった、巨大の炎の玉よりも大きかった。
建物10階分ほどの高さがあり、校舎の間にいるので、横の広がりは目視してもわからないが、実は、縦と同じように、建物10階分ほどの大きさがあった。
しかも炎は透きとおっており、純度の高い炎だった。
その、空間をうめつくすような、雲雀以上に巨大な炎が灯ったことに、全員が驚いた。
「(この炎は……)」
雲雀は魅真の炎に、あるものを感じとった。
「こいつぁ驚いたぜ。まさか嬢ちゃんが、こんなにでかい炎を灯せるとはな」
「魅真さんは実は、恭さんよりも強い波動と、純度の高い、大きな炎をもっているのです」
「何!?本当か」
「はい」
雲雀のそばでは、魅真が巨大な炎を灯したことに、ロマーリオが目を見張っていると、草壁が魅真のことを説明した。
この時代の人間でも、そのことは知らなかったので、ディーノは更に驚く。
「魅真さんが、この時代の恭さんに渡されたのは、ボンゴレリングの次にすごい、A級のリング。最初に渡されたばかりの時は、まだ弱かったが、先程恭さんがデイジーにやられそうになったのを見て、覚醒したのでしょう…」
草壁が、魅真のリングが砕けた時に感じた可能性は、このことだった。
「だとしたらすげぇな。A級のリングすら、炎が灯る前に砕けるほどの、強い波動…。恭弥以上の巨大な炎…。しかも、混じり気が少ないんじゃなく、混じり気がまったくない、純度100%の雲の炎。しかも、はじめてなのに、ボンゴレリングにあっさりと炎を灯せるほどの、強い覚悟…。すごい才能だ。こんなにすごい炎ははじめて見たぜ。どんな風になるのか、想像もつかねえな」
その死ぬ気の炎はすごく澄んだ色なので、透き通って、炎の向こう側にいるデイジーが見えるほどのものだった。
「(それにこの炎……。ただ大きいだけじゃねえ。とてもあたたかく、包容力と安心感がある)」
ディーノは魅真の炎に、安らぎを覚えた。
晴属性の炎ではなく雲属性の炎なので、癒しの効果はないが、心地のよさを感じていた。それは、雲雀も、草壁も、ロマーリオも同じだった。
ディーノが感じとったのは、先程雲雀が感じとったものと同じで、特に雲雀は、誰よりも強く感じとっていた。
魅真は、巨大な炎を小さくした。以前、雲雀が幻騎士と戦った時に、巨大な炎を匣に注入したら、暴走したからだった。
そして、ボンゴレ匣を取り出して、リングをつけている手と同じ高さに持ってくると、リングを匣の穴に差しこんで開匣した。
すると中からは、雲雀が持ってるボンゴレ匣と同じで、雲ハリネズミのロールが出てきた。
「雲ハリネズミ…。恭さんのと同じだ」
「ってことは、形態変化を?まさか、さっきと同じで、手錠が出てくるのか?」
まったく同じ雲ハリネズミが出てきたので、雲雀の時と同じように手錠になるのかとロマーリオは思っていた。
「いや、違う」
けど、それをディーノは否定する。
「恭弥のボンゴレ匣と、魅真のボンゴレ匣は、匣の見た目は同じだし、中身も、同じ雲ハリネズミだ。魅真と恭弥、どっちがどっちのボンゴレ匣をもっても、同じように使える。だが、恭弥が形態変化をした時と、魅真が形態変化をした時では、まったく違う武器が出るんだ」
そして、魅真と雲雀のボンゴレ匣の違いを説明した。
「ロールちゃん!!形態変化(カンビオ・フォルマ)!!」
「クピィイイイ!!」
魅真がロールに声をかけると、ロールは鳴き、黒目が3つならんだ目になり、強い光を放った。
「初代雲の守護者は、実は2人いた。1人はアラウディ。そしてもう1人は、アラウディと同じ、秘密諜報部のナンバー2だ。
アラウディの部下であり、幼馴染でもある、彼女のボンゴレでの役割は、初代ボンゴレボスとの橋渡し役が多かった。彼女は、戦闘においては優れた才能をもっていたが、争いごとを嫌う、おだやかで心優しい性格をしていた。
だが、戦闘で仲間が…特に、アラウディがピンチに陥ると、勇猛果敢に敵陣にとびこんでいき、多くの敵を倒したという。
その武器こそ……」
ディーノは、今度は、もう1人の初代雲の守護者のことを説明した。
形態変化したロールは、強い光を放つと、その光は2つにわかれ、魅真の両手に灯った。
「もう1つの浮雲と謳われた……ルティカの双剣(ダガー)!!」
その光は形を変え、剣となった。それは、全体の見た目が十字架のような形をしており、柄と鍔が金色で、鍔の真ん中の部分に、ボンゴレのエンブレムの上にⅠと書かれた丸くて紫色の石があり、刃に雲属性の死ぬ気の炎が灯った、刃渡り30cmほどの、2つの西洋風の剣だった。
「双剣(ダガー)か。フーン。雲雀恭弥の時とは、違う武器になるんだね…。けど、僕チンは『不死身の肉体』をもっているんだ。殺傷力があるその武器は、見るからに僕チン向けさ」
剣の鋭利な刃を見ると、デイジーはニヤリと笑う。
「…やってみなきゃ…わからないわよ」
けど、魅真は冷静だった。
「覚悟は…いい…?」
そして戦うために、逆手持ちで剣を構える。
「覚悟?なんの覚悟だい?君が僕チンにやられて、ユニ様の居場所を吐く覚悟かい?」
「違う…」
デイジーも構え、挑発するように問うが、魅真はデイジーが言ったことを否定する。
「あなたが私にやられる覚悟よ…!!」
魅真はデイジーに向かって走りだし、デイジーもまた、魅真の方へ向かっていった。
「おいおい、嬢ちゃんの普段使ってる武器は薙刀だろ。ダガーと薙刀じゃ、使い勝手が全然違うぜ。まずリーチが違うし、間合いの測り方も全然違う。ほんの数日修業しただけで、どうにかなるもんなのか?」
ロマーリオは決してバカにしているわけではなく、純粋に心配していた。
「確かにそうですね。使いなれてない武器は、かえって相手にやられる可能性がある」
そして、ロマーリオだけでなく草壁も心配していた。
「大丈夫だ」
けど、その中でも、ディーノは心配していなかった。
「あいつも雲の守護者だ。魅真は寝る時間と食べる時間以外のほとんどを、修業にあててきたんだ。それに…」
「それに…?なんだよ、ボス」
「魅真には、すげえ才能があるかんな」
根拠のない理由を聞き、草壁とロマーリオはわけがわからなくなった。
一方魅真は、2つの剣を、縦横無尽にふりまわして戦っていた。
その使い方は、一見めちゃくちゃにふりまわしているように見えるが、デイジーを狙ってふっていた。
右の剣を、上から下へふりおろしたと思えば、すぐ様、左の剣を体の前に回転させながら横へ薙ぎ、回転して、再びデイジーの前に向くと、すかさず、右の剣を、上からななめ下にふり下ろす。
デイジーが後ろへ跳んで距離をとると、姿勢を低くして走っていき、距離をつめると、ひざをまげて姿勢は低いままで、右の剣で横に薙ぐ。
デイジーはその攻撃を、また後ろに跳んでよけたが、魅真はまた距離をつめて、今度は上から下へふりおろし、同時にひざをまげて、体勢を低くする。
またしてもよけられるが、魅真は攻撃の手を休めず、その体勢から、左右の剣を下からふりあげて、上で交差させた。
そして、上にふりあげた剣を胸のあたりにさげると、体を大きく半回転させると同時に、左の剣を横にふった。
かと思えば、次は、右の剣を下から上にふりあげ、また胸のあたりまで剣をもってくると、その二つの剣を、真ん中から左右に開くようにして攻撃した。
デイジーは、攻撃を飛んでよけると、魅真の背後に着地し、魅真の後ろから襲いかかろうとするが、魅真はすばやくデイジーの後ろまで移動して、左右の剣をひろげ、後ろから前に回転すると同時に、左の剣を横にふった。
しかしデイジーは、またしてもその攻撃をよけた。
魅真はデイジーをねらってはいるが、すべて紙一重のところでよけられていた。
「やっぱ無理なんじゃねえのか?ボス」
めちゃくちゃにふりまわしていなくても、それでも、剣を武器にしている者とくらべると、つたないところがあるので、ロマーリオは心配していたが、ディーノはまっすぐに魅真の戦いを見ていた。
その魅真は、デイジーの足の間に、左足で一歩踏みこむと、左の剣を上から下に剣をふって、デイジーの体を切ろうとするが、デイジーはギリギリのところでよける。
しかし、一歩踏みこんだ方の足を半回転させると、流れるような動きで、右の剣で、後ろから半回転しながら攻撃するが、デイジーはよけきれず、剣の切っ先が、胸をわずかにかすった。
その動きに、ディーノ以外の全員が目を見張った。
「「「!!」」」
「あれは……恭さんの…」
それは、リング争奪戦の時、雲雀がディーノとはじめて特訓した時の動きなので、草壁とロマーリオは驚いていた。
「嬢ちゃんは、恭弥の戦い方をマネる修業をしていたのか?」
「いや……。オレが教えたのは剣の使い方だけだ」
「じゃあ、魅真さんは自分で考えて…」
「ああ……。恭弥の戦いを、より多く、より近くで、ずっと見てきた魅真だからこそできた技だ。といっても、簡単にできるもんじゃねえがな」
先程の剣での攻撃も、体の動きも、足の運び方も、めちゃくちゃではなく、すべて雲雀の動きを模倣していたのだった。
剣なので、トンファーのようにふりまわすことはできないが、雲雀みたいな戦い方をしているので、とても剣の戦い方とは思えないが、それでも確かに、デイジーをとらえていた。
「そんな攻撃は効かないよ」
けど、デイジーには効果はなく、傷はすでに治っていた。
「僕チンはすぐに再生できるんだ。そんな攻撃は効かない」
「どうかな…」
もともと不死身の肉体をもっている上に、マーレリングと晴属性の死ぬ気の炎をもち、しかも修羅開匣もしているので、どんなに傷を負わせても、すぐに再生してしまう。
だが、魅真は気にせずに、攻撃を続けた。
魅真は、心は熱く、頭は冷静という、とてもいい状態で戦っていた。
雲雀と同じ動きでデイジーを攻撃すると、デイジーはその攻撃をよけるが、たまにあたってしまい、傷を負う。でも、すぐに治る。そのくり返しだった。
「君のボンゴレ匣は、僕チンと相性最悪さ。それじゃあいつまで経っても、僕チンに致命的なダメージを負わせることなんてできない。そのうち、君は体力をなくし、僕チンに、ユニ様の居場所を吐いて殺される。おしまいさ。どうにもならないよ」
敗北を決定づけられるが、魅真は冷静さを失わず、デイジーを見据えて攻撃を続けた。
そして、何度か攻撃をして、上から下に剣をふりおろすと、今までで一番深く、剣が腹をかすめる。
「だから、そんなの効かな………」
そこまで言うと、デイジーは、体に異変を感じた。
「ぼ……ぼば……」
切られた部分に、剣以外の痛みを感じたので、顔を腹に向けると、剣で切られた部分は、紫色に変色していた。
「これ……は……」
剣で斬られた傷と変色した肌は、すぐにもとの色に戻ったが、なんでこうなったのか、デイジーはふしぎに思った。
「私の剣には、毒が仕込まれてるの。今肌が変色したのは、毒の効果ってわけ。少しかすっただけでも、毒は体内に入りこむわ」
「なるほど…。僕チンの活性の炎が、体内にめぐっているから、気づかなかったってわけなんだね」
「そう……。けど、今のは深く切ったから、毒が多く回ったってこと」
けど、次に魅真に説明されると、納得をした。
「少しは考えられた武器だけど、結局変わらないよ。今も言ったけど、僕チンの体内には晴の活性の炎がめぐっている。いくら君が、純度の高い雲属性の増殖の力をもっていても、僕チンも純度が高い炎を灯す。しかも晴属性だ。ちょっとかすっただけだと、すぐに再生できる。毒もなくなる。つまり、どっちみち君の攻撃は効かないんだ」
そして、増殖している毒を活性の炎で相殺してるとわかり、不敵な笑みを浮かべると、今度はデイジーから攻撃をした。
「ボス、戦況が苦しくなってきたぜ。このまま攻撃をくり返していても同じことだ」
「そうですね…。決定的なダメージを与えるには、長時間、デイジーに剣を突き刺す必要がある。ですが、奴がおとなしく剣を刺されているなんてことはありえない」
「そうだな。まさに、活性対増殖の戦いだ。魅真もデイジーも、お互いに純度の高い炎を灯している。しかも、つけているリングは、最高峰のボンゴレリングとマーレリング。先に致命的な攻撃を与えた方が有利だ。だが、魅真の力はこんなもんじゃねえ」
「「え?」」
まだ何か、かくされた力があるのかと、草壁とロマーリオはディーノを見た後、魅真に顔を向けた。
ディーノ達の前では、デイジーが魅真に攻撃を続けていた。
そして、何度目かの攻撃が魅真にあたりそうになるが、魅真は後ろに跳んでよけて、デイジーと距離をとった。
しかも、ただ跳んだにしては、かなりの距離があいており、以前幻騎士と戦った時よりも、ジャンプ力が増していた。
けど、デイジーは大して気にすることなく、距離をつめて、攻撃をした。魅真は、攻撃をしたり、攻撃をよけたり、距離をとったりをくり返していた。
何度か剣がかすっているが、やはり毒はまわりきらず、活性の炎で相殺されていた。
たまに深くかすめることもあるが、デイジーの体には常に晴の炎がめぐっているため、攻撃をしてる時も、攻撃をよけている時も、移動している時も、ずっと再生は続いていて、未だに決定的なダメージを与えられていなかった。
それでもかまわずに、魅真は剣を、前に半回転しながら横にふる。
しかし、デイジーはその攻撃を、後ろに跳んでよけた。
だが、魅真はデイジーを追いかけるように走っていき、あっというまに距離をつめる。
けど、デイジーは冷静で、魅真の腹に手をつきさそうとした。
だが、攻撃があたることはなかった。
「「「「!?」」」」
何故なら、魅真は白蘭や真6弔花と同じように、足の裏に炎を灯し、炎の推進力で、後ろに移動してよけたからだ。
この技に、草壁とロマーリオは目を見張った。
魅真はある程度距離をとると、足の裏の炎を消し、その場に立った。
「道具もなしに、足の裏に炎を灯した…」
「まさか…魅真さんが、あんな技術を身につけていたとは…」
「魅真は、力は弱いが、防御力と死ぬ気の炎をコントロールする力は抜群なんだ。さっき言ったろ?すごい才能をもってるってな」
驚いている草壁とロマーリオに説明をすると、ディーノは自分のことでもないのに、何故か自信満々だった。
「大したもんだ。それに、10年前にはじめて会った時よりも、足も速くなってんな」
「魅真さんは、この時代ではじめて恭さんと修業をした時から、体力作りと基礎トレーニングを、徹底的にやってきたのです。それこそ、常人では根をあげてしまうほどの…。ですが、魅真さんはやりきった。その成果が、今出ているんです」
足の裏に炎を灯すこともだが、魅真の足が速くなっていることにも驚いているロマーリオに、今度は草壁が説明をした。
「僕チン達のように、道具なしで足に炎を灯して飛ぶとはやるね。でも、結局同じだよ。君は僕チンにやられる運命なんだ」
「…言いたいことは…それだけ?」
「ん?」
「私は許さないって言った。だから、あなたがなんて言おうと、私はあなたを倒す。それだけよ」
魅真は剣を構えると、足の裏に炎を灯して、デイジーのように水平に飛んで、デイジーのもとへ向かっていく。
デイジーもまた、炎の推進力で移動をして、魅真に向かっていった。
けど、魅真はデイジーの前まで来ると、剣で攻撃をするのではなく、ひざ蹴りをデイジーの顔にくらわせ、デイジーが動きを一瞬止めると、素早く右手の剣を左手で持ち、右手で顔をつかんで仰向けに倒して、上空…デイジーの真上に飛ぶと、再び剣を両手に構えた。
そして、デイジーに向けて、左の剣を投げつけた。
すると、剣は投げられたと同時に、一瞬にして5倍の長さになり、同時に数が20本に増えた。
増えた剣は、何本かデイジーの手足に刺さった。手足を貫通し、まるで地面にぬいつけるように…。
「ぼっ…ばっ……」
デイジーに刺さったすべての剣から、一気に大量の毒が注入され、それが体の中で一気に増殖したので、デイジーは苦しんだ。
けど、まだ『苦しむだけ』だった。
魅真は剣を投げると、下に降りていって、その勢いで、デイジーの体に蹴りをくらわせる。
勢いもついていたので、威力は増しており、力が弱い魅真の蹴りでも、痛みを感じた。
そして、魅真はデイジーのお腹の上にまたがると、今度は首をもっておさえつけ、動けないようにした。
「く…苦チ……」
手足の剣は刺さったままなので、晴の炎で相殺しても、どんどん毒は体内に流れ、増殖してまわっていき、デイジーは苦しみを訴える。
けど、魅真はデイジーの顔をのぞきこむと、無情にもこう言い放った。
「言ったでしょ?許さないって…」
と……。
魅真は、射抜くように鋭く、氷のように冷たい目を向けて、デイジーの訴えを無視した。
そして、右の剣を大きく上にふりあげると、とどめをさすようにそのまま剣をふりおろし、デイジーの左胸につきたてた。
それと同時に、ボンゴレリングが強く光る。
「ギャアアア!!」
剣がつきたてられると同時に、毒が体内に注入され、純度の高い魅真の炎によって、活性の炎が間に合わないほど爆発的に増殖し、デイジーの全身に毒が回り、全身が紫色に変色した。
魅真は剣をさしたまま、デイジーの上からおりると、デイジーのマーレリングを奪いとった。
「う…」
リングを奪いとると、デイジーは動かなくなった。
「リングをとっちまえば、真6弔花といえど…ただの人間も同然だ」
「すげぇな、嬢ちゃん」
「やりましたね魅真さん!!お見事です!!」
最高峰のボンゴレリングと、純度100%の雲の炎と、魅真の強い波動で、増殖スピードはかなりのものとなっており、デイジーの活性の炎に勝ったのだった。
魅真が勝ったことに、ディーノと草壁とロマーリオは喜び、雲雀もほっとしていた。
けど、対照的に魅真は、どこか沈んだ顔をしていた。
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