標的90 アラウディの手錠
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リングが壊れて戦えなくなった魅真は後ろに下がり、魅真を守ると前に出たディーノと、やる気満々な雲雀は、デイジーに向かっていき、その数秒後、大きな爆発音とともに、校舎をはるかにこえるほどの煙が起こった。
「オエー!!」
ディーノの攻撃が直撃すると、デイジーはひざをついて顔を下に向け、口から戻してしまう。
「どうだ?」
攻撃があたると、ディーノは目の前のデイジーに声をかける。
「勝ち目がねーのはわかったろ?降参しとくか?」
戦い始めると、すぐに優勢に立ったので、ディーノは強気な姿勢を見せた。
「ぼっ…ぼぼっ…僕チンは、ユニ様の居場所を知りたいんだ…。居場所を吐けば、許してあげてもいいよ…」
吐いた上に、腰がぬけたように地面にすわっているのに、デイジーも、強気な態度はくずさなかった。
「吐いちゃいなよ!」
そして、再び匣を開匣し、サイを出した。サイはまっすぐに、ディーノに向かっていく。
「駆けろ、スクーデリア!!」
デイジーがサイを出すと、ディーノも匣兵器の馬を出した。
スクーデリアと呼ばれた馬は、サイに向かっていき、サイの前まで来ると、前足でサイの頭をふみつけた。
すると、サイはスクーデリアの足に灯っていた大空の炎で石化して、悲鳴をあげる。
そこへ、今度は雲ハリネズミの球針態が、勢いよく回転しながら向かってきて、サイを粉々に砕いた。
「ぼばっ」
サイはあっさりとやられ、消えてなくなった。
「僕チンの、太陽サイ(リノリェロンテ・デル・セレーノ)が」
あまりにも簡単にやられてしまったので、デイジーはすわった状態で、空中で粉々に砕けたサイを見上げ、呆然としていた。
「僕のエモノに手を出さないでくれる?」
「オレに向かってきたんだから、しょーがねーだろ?正当防衛だ」
半分はディーノが倒したので、雲雀は、建物と建物をつなぐ通路の屋根から下に降り、文句を言うが、ディーノはあっさりと返す。
今の戦いを見て、魅真は雲雀とディーノが無事でよかったと思うと同時に、とてもくやしそうにしていた。リングが壊れて匣を開匣できなくなったので、もう雲ハリネズミどころか、薙刀すら出すことができず、取り出せても、薙刀に炎は灯せないので、完全に足手まといになったからだった。
「楽勝だな」
「ツートップです。当然でしょう」
魅真の隣に立っている草壁とロマーリオは、雲雀とディーノが太陽サイをあっさりと倒したのを、何故か、自分のことのように自信満々だった。
「さあ、もう匣兵器はないはずだ。リングを地面において、手を頭の上にあげろ」
「…………」
降伏するようにディーノは言うが、デイジーはそうはしなかった。
「ぼっ…僕チンはユニ様の居場所を知りたいんだ…。ワープして、すぐにお前達を見つけて、嬉しかったから手加減してたけど…。居場所を教えてくれないなら、僕チンだって怒るよ」
デイジーは立ちあがって、フラフラとしているが、まだあきらめてはいなかった。
「?」
「手加減とは言ってくれるじゃねーか」
「だってそうでしょ?……たったそれだけの力で……。チョイスでも思ったけど、ボンゴレの連中は弱すぎるよ」
「「「!!」」」
「匣もうないし、僕チンが一番にこの力を使うことになっちゃったけど…。おまえ達に修羅開匣を見せるのは、これが最初で最後になると思うよ…」
「……!?」
「修羅開匣!?」
それは、初めて聞く言葉だった。
「白蘭様は言うよ。僕ら真6弔花は――――」
デイジーはしゃべりながら、服に手をかける。
「人間を超えた存在だって!!」
そして、服にかけた手を勢いよく横にひっぱって、ボタンをひきりぎり、服を開いた。
「!」
「あれは!!」
「何あれ…」
その服の下にあるものを見ると、魅真も雲雀もディーノも目を見張る。
「肉体(からだ)に匣が埋まっているのか!!?」
それは、デイジーの左胸には、匣が埋まっていたからだった。
デイジーは、左手で服をおさえて、右手につけているリングに炎を灯す。
「ユニ様はどこなの?」
そして、炎が灯ったリングを、胸に埋まっている匣の穴に差しこんだ。
「「「!!」」」
デイジーがリングを匣の穴に差しこむと、デイジーは、槍のようにとがった炎が出ている、巨大な炎の玉に包まれた。
標的90 アラウディの手錠
炎がおさまると、炎の玉と同じくらいに大きな煙が舞った。
「ぐっ。修羅開匣だと…!?」
「うおっ」
「一体何が出てくるんだ!!」
デイジーが修羅開匣して、巨大な炎の玉が出ると同時に爆風が起こり、魅真達は腕を前にやって顔をかばっていた。
そして、炎が徐々に消えていき、風がおさまると、まだ残っている炎の中から、別の、二つの晴の炎が見えた。
「吐いてもらうよ」
「!!」
炎が消えていき、そこから現れたデイジーの姿に、魅真達は更に目を見張る。
「ユニ様を何処に隠してるの?」
そこから現れたのは、肩から炎が吹き出し、とても人間とは思えないような手足と体をもったデイジーだった。
手足と体の一部が変色して、全身ではなく部分的にだが、変色したところには、うろこがあった。
「んだありゃあ!!!ウ…ウロコ!!?」
「人間じゃないのか!?」
「なんだか、動物みたいな手足だわ…」
異形の姿に変貌をとげたデイジーに、魅真も草壁もロマーリオもびっくりしていた。
「修羅開匣は、体に埋めこまれた匣の開匣によって、肉体そのものを、最強兵器に変えるんだよ」
「(肉体そのものを……)」
デイジーは修羅開匣がどういうものなのかを、魅真達に、簡潔に説明した。
「こいつは驚いたぜ……。たしかに、そのナリじゃ…ある意味人間超えてるかもな」
けど、異形の姿のデイジーを見ても、ディーノは冷静だった。
《ディーノさん!?》
「!」
その時、ツナから通信が入った。
「ツナか!?」
《よかった。無事だっ!!あの…敵は並中にいたんですか?》
「ああ、目の前に、化け物みてーなデイジーってのがいる」
《え゙!?》
「そっちはどーなんだ?ユニは無事だろうな」
《はい……。ただ…ザクロに、アジトがやられて…。オレ達を逃がすために残ったスクアーロが……》
「何!?」
「!!」
「!!」
生死は不明だが、よくない状況であることは、ツナの口調からして間違いないので、まさか、あの暗殺部隊ヴァリアーの隊長であるスクアーロがやられるとは思わず、ディーノと、声に出してはいないが、魅真と雲雀も驚いた。
《今…オレ達……5丁目の川平不動産て所に避難しています…》
「わかった」
《あの…そっちは…》
「まて!」
ツナがこちら側の状況を確認しようとした時、ディーノは強めの声で制止する。
目の前には、デイジーがいたからだ。
「仲間と話してるよね…。ユニ様もそこにいるんだよね…」
けど、ディーノの話ですべてバレてしまう。
「何処だよ!!」
デイジーは、ユニの居場所を吐かせるために、ディーノに向かっていく。
「ツナ、後で連絡する」
簡潔に話すと、応戦するためにムチを構えた。
ディーノがムチを構えると、デイジーはディーノの前に来て、左手を伸ばして襲いかかった。
ディーノは跳んでデイジーの攻撃をよけるが、デイジーはそのまま飛んでいくと、方向変換して、またディーノのもとへ向かっていった。
肩から吹き出ている炎のせいか、デイジーはすごい速さでディーノのもとへやってくる。
「(速い!)」
けど、ディーノは冷静で、リングに炎を灯す。
「こうなりゃ全力でいくぜ!!」
そして、再び匣を開匣した。
「スクーデリア!!」
中からは、またスクーデリアが出てきて、匣から出てくると、スクーデリアは、体から炎の翼が生え、ペガサスとなった。
それは、天馬超翔(ペガソ・スーペル・サルト・ヴォランテ)という技だった。
「!!」
「綺麗……」
「ほ…炎の翼!!」
「翼に触れた物は、みな切り裂かれ、調和によりて、炎となり、灰と化す」
この技を初めて見た魅真は、思わず見惚れてしまい、雲雀と草壁は驚いていた。
「ぼば!?」
スクーデリアはデイジーのもとまで来ると、体から生えた翼で、デイジーの腕を切った。
「悪く思うなよ」
技が決まったので、ディーノは得意げな顔になる。
「やっぱり今の…」
だが……。
「知ってるよ」
デイジーは腕を切られたというのに、その顔に不敵な笑みを浮かべた。
「?」
ディーノはデイジーの言ってる意味が、よくわからなかった。
「おいっ!!」
「あれは!!」
「ちぎれた腕が、巻きついている!!」
スクーデリアの翼で切られた腕が、スクーデリアの体に巻きついて、攻撃していた。
「(あの腕は、天馬超翔により、朽ちるはず…。どうなってる!?)」
大空の匣の特徴は調和。炎にふれると石化するはずなのに、まったく効いていないかった。
スクーデリアは地面に落ち、デイジーは、校舎の前を旋回するように飛んでおり、その間に腕が再生した。
「!! 腕が再生していく!!」
「どうなってるの!?」
もうすでに、見た目が人間ではなくなっているが、人間技ではないその能力に、魅真達は更に驚く。
「おもしれえ。こい!」
匣がダメなら武器で勝負というように、ディーノはムチに炎を灯す。
「個人的には匣戦闘(ボックスバトル)より、肉弾戦の方が好きだぜ」
「僕チンも」
「光速天翔(サルト・ヴォランテ・ヴェローチェ・コメ・ルーチェ)!!!」
ディーノは炎を灯したムチを、すごい速さで、縦横無尽にふりまわした。
「ボスめ、奥義でシメる気だな」
まさに、光の速さのごとく動くムチは、地面を割り、えぐるほどの威力があり、攻防一体のような技だった。
「上下右右下前左右下右上下左左右下左下右下左上上左右下下上上右左下上」
だがデイジーは、そのムチの動きを上回るほどのスピードで、次々とよけていき、攻撃は一度もあたらなかった。
「!! (この見切りは、反射神経のレベルじゃない!!技がすでに攻略されている!?)」
すべての攻撃をよけていってるので、ディーノは驚き、何故こんなにも見切られているのか疑問に思ったが、目の前のデイジーの顔に、ふいに白蘭の顔が重なった。
「!! (まさか!!)」
その時、デイジーが、技を見切っているわけがわかった。
だが、わかったと同時に、懐まで入ってきたデイジーに、腹を手で刺された。
「「「!!」」」
「(…白蘭の奴…。パラレルワールドでオレの技と、すでに遭遇していたんだな…。それを分析し、攻略法を、真6弔花に伝授していたんだ…。スクアーロ……。お前もそれでやられたんだな……)」
ディーノは腹をさされると、力がなくなって、体がデイジーの方へ傾き、口から血を吐きながら、何故デイジーが自分の技を見切ったのか、そして何故、スクアーロがザクロにやられたのかを理解した。
「ゔ」
その時、さされたところからは、大量の血が吹き出した。
「おいボス!!」
「ディーノさん!!」
「ディーノさん!!」
見るからにヤバそうな事態に、魅真、草壁、ロマーリオは、心配そうにディーノの名前を呼んだ。
「もっと痛くしないと、ユニ様の居場所、吐かないよね」
今の攻撃で、ディーノは更に体が崩れ落ちる。
「ぐっ」
それでもデイジーは、容赦なく、内臓をつかんだ。
「ぐあ!!」
この、想像を絶するような痛みに、ディーノはうめき声をあげ、脂汗を流した。
「内臓を潰してくよ」
恐ろしいことを、無表情で淡々としゃべりながら、内臓をつかんだ手に力を入れようとした。
「ぶっ」
だが、力を入れようとした時、雲雀がデイジーをトンファーで殴りとばし、デイジーは校舎の4階の窓の下に激突して、壁にめりこんでしまった。
「!!」
「恭さん!!」
「雲雀さん!?」
あの雲雀がディーノを助けたので、魅真達は驚いた。
「んん?」
デイジーは校舎の壁の中から、何故こうなったのか、下の方を見た。
「ねぇ、君達。並中で暴れるの、やめてくれる?」
デイジーの目の先には雲雀がいて、無表情な顔で淡々としゃべっていた。
「君達には、制裁を与えなきゃね」
「ぐあっ」
そう言って、雲雀はディーノを、容赦なく蹴りとばす。
ディーノは後ろの、ちょうど魅真達がいるところにふっとんでいき、ディーノは地面に落ちる前に、ロマーリオに受け止められ、地面に寝かせられた。
「ディーノさん!」
「恭さん!!何てことを!!」
ケガ人相手にする仕打ちにしては、いくらなんでもひどいので、草壁は雲雀に注意をする。
「へへっ…。借りができちまったぜ」
「!?」
けど、ディーノは雲雀の今の行動を、ひどいとは思っていなかった。
「助けたのさ……あいつなりのやり方でな…」
「ディーノさん…!!」
「やっぱあいつにも、初代守護者に似てるトコあるな…」
「初代ボンゴレ雲の守護者にですか!?」
「ああ…」
「(雲雀さんが……初代雲の守護者に…?)」
雲雀が初代雲の守護者に似てると聞き、魅真はどんな人物なのか気になった。
「初代雲の守護者は、ある国の、秘密諜報部のトップだったが、誰にも迎合することはなく、一人でいることを好み、ファミリーと足並みを揃えることはなかった…。だが、ひとたび、ボンゴレⅠ世の正義と、己の正義とが重なった時には、誰よりも多くの敵を倒し、誰よりも味方に優しかったという」
ディーノは魅真達に、初代雲の守護者のことを簡単に説明をした。
「いくよ、ロール。形態変化(カンビオ・フォルマ)」
その、初代雲の守護者に似てるという雲雀は、雲ハリネズミのロールを、形態変化させた。
「クピィイイイ!!」
ロールは雲雀に応えるように鳴くと、黒目が3つ並んだ目に変化した。
そして、強い光を放つと、その光は、雲雀がたてている、右手の人差し指に灯ると同時に、軽い金属音がした。
「ぼば!!」
「!!」
「あれが恭さんの…!!」
「そう…。あれが恭弥のボンゴレ匣」
雲雀の人差し指に灯った光は、初代雲の守護者の武器へと、その姿を変える。
「なにものにも囚われず、我が道をいく浮雲と謳われた、アラウディの手錠!!!」
それは、ボンゴレのエンブレムの上にⅠの数字が書かれ、その部分に雲の炎が灯った、黒い手錠だった。
「おいおい」
「あれって…」
「手錠…!?」
雲雀の修業を見たことがある魅真とディーノはそうではないが、初めて見る草壁とロマーリオは驚いていた。
「覚悟はいいかい?」
雲雀が輪の部分をつかむと、そのつかんだ輪からは、輪を貫通している6本のトゲが、等間隔で出現した。
そして、またトゲがついてない方の輪に右手の人差し指を通すと、デイジーが降りてきた。
「(手錠……。手錠が、雲の守護者のボンゴレ匣か…。たしかに、炎をおびたトゲに、殺傷能力はあるだろうけど、人を捕まえるのに使う手錠だ…。白蘭様からは、まだボンゴレ匣の情報をもらってないけど…手錠っていうのはどう考えても…) 僕チン向けだ」
ボンゴレ匣は攻略していないが、デイジーは、かまうことなく雲雀に向かって飛んでいき、雲雀もデイジーに向かって走っていく。
距離をつめると、雲雀はトンファーと手錠で、デイジーは素手で応戦をくりひろげる。
その手錠のトゲが、デイジーの頬にささり、引き裂かれる。
「効かない」
けど、デイジーは意に介しておらず、デイジーがそう言った瞬間、今引き裂かれたところは、一瞬にして治った。
それでも雲雀は、トンファーと手錠で攻撃をくり返し、デイジーは素手で攻撃をした。
その時、デイジーが左の拳で殴りかかってくるが、それはフェイクで、右拳で殴るが、雲雀はその攻撃を身を低くしてよけ、デイジーの右腕に手錠をはめた。
「もう逃がさないよ」
デイジーをとらえると、雲雀はデイジーがそこから動けないように手錠をひっぱり、トンファーでとどめをさそうとした。
だが、デイジーは不敵な笑みを浮かべると、手錠がはめられてる部分の腕を、そこから上の部分の腕と、拳の部分を残して、自ら切断する。
「!」
この奇妙な出来事には、雲雀も驚いた。
しかもそれだけでなく、デイジーは、残った腕と拳の部分を一瞬にして繋げた。
そして、雲雀が驚いている隙に、雲雀の顔面を殴りとばし、雲雀はそのまま、校舎の壁に激突した。
「雲雀さんっ!!!」
「何だってんだ、今のは!?」
「自分から腕を切断したのか…」
「きょ…恭さん!!」
「トカゲの自切…」
今の奇妙な出来事をふしぎに思ったが、ディーノは、何故デイジーがあのようなことができたのかがわかった。
「トカゲは、自ら切った尾を、再生できるという…」
「だが、再生が早すぎねーか?」
「奴のリングの属性を考えれば可能だ」
「ありゃあ晴の炎だな…。あっ、そうか。晴は活性!!細胞の超活性か!!」
デイジーの腕が高速で再生したのは、デイジーの炎の属性が関係していた。
「修羅開匣は、能力の掛け算なんだよ」
「!?」
「匣アニマルの持つ特殊能力と、人間の能力が掛け合わされて、あらゆる生命体のリミッターを超えた能力を、生みだすことができるんだ。だから、トカゲのしっぽでは考えられないことも」
ディーノとロマーリオの言うことを、捕捉するように説明すると、雲雀の手錠に残った腕から触手のようなものが出てきて、雲雀の首に襲いかかった。
「!」
腕から手が再生して雲雀の首をしめ、更には腕や頭まで再生していく。
「雲雀さん!!」
「ちぎれた腕から体が!!全身を再生できるのか!?」
だが、雲雀は冷静に、デイジーの体が全て再生される前に破壊して、跳んで地面に立ち、デイジーと向かいあった。
「残念だけど、君のボンゴレ匣は、僕チンと相性最悪さ。もう諦めて、ユニ様の居場所を吐いちゃいなよ」
「いらないな」
「?」
「その程度なら武器(トンファー)はいらない」
「……ん?」
雲雀はトンファーを手放し、手錠を指にひっかけて、回転させる。
だが、手錠は一つではなく、両手の指に一つずつ、合計で二つあった。
「あれ!?手錠が…」
「いつのまにか2つに…」
最初は一つだったのに、いつのまにか二つに増えていたので、デイジーと草壁は驚く。
「校舎を壊した罪で、君を逮捕する」
2つどころか、手錠は片手に2つずつ、計4つに増えていた。
「雲属性の増殖…」
「4つ!!」
「あいつ…何をする気だ?」
「面白い手品だね。でも、手錠をいくつ増やしたところで、同じだよ!!」
けど、デイジーはまったく問題視しておらず、飛んで、まっすぐ雲雀に向かっていった。
「僕も同感さ」
けど、それは雲雀も同じだった。
デイジーは雲雀の前まで来ると、両方の拳で殴りつけるが、雲雀はそれをよけ、両手にある手錠を、デイジーの両腕にはめた。
「10や、20ならね」
「?」
デイジーは、雲雀が一体何を言ってるのかわからなかった。
すると、ボンゴレリングが光り、その直後、手錠が隙間なく増えていく。
「!?」
「「「「!!!」」」」
手錠は、形や大きさを変え、どんどん増えていき、長い鎖までできた。
「ぼっ!!?」
雲属性の増殖の力で増えた手錠は、デイジーの手と足と頭以外は見えなくなるくらいになっていた。
「てっ、手錠が拘束具のように!!」
「自切するスピードを上回る雲属性の増殖!!…にしても…こんな形態になるのか!!」
「こんなの……聞いてない!!」
全身に手錠がついたことで、デイジーには焦りが見えはじめた。
「君……死にたがってたみたいだけど、そんな甘えは許さないよ」
「え?」
「しめあげよう」
「し!!!しまるぅ!!!」
雲雀が言った通りにしめあげると、手錠の隙間から血が噴き出した。
それはさながら、鉄の処女のようであった。
「聞いてない!!白蘭様に聞いてないよ!!手錠がこんな風になるなんて!!!苦チィー!!!」
今まで、どんな攻撃もものともしていなかったのに、雲雀のこの攻撃には、デイジーは悲鳴をあげた。
「(お前の思惑通りだぜ、入江正一……。他のパラレルワールドでは作られなかったボンゴレ匣は……まだ白蘭に攻略されていない!!)」
先程のディーノの技のように、他のパラレルワールドで知られていたなら見破られていただろうが、ボンゴレ匣はこの世界にしか存在しないので、デイジーには効いていた。
「ぼ…ばふっ」
そして、とうとう白目をむき、口から泡をふいて、仰向けに倒れた。
「思ったより情けないね。君が死にたくても死ねないのは、晴の活性の炎が、体内を巡っているからだろ?」
デイジーが倒れると、雲雀はデイジーのもとまで歩いていき、目の前でしゃがむ。
「これは風紀委員が没収する」
そう言いながら、リングに手を伸ばした。
だが、もうあと少しでリングに手がふれるという時、いきなり体に衝撃を感じた。
それは、雲雀がデイジーに蹴りとばされたからだった。
「雲雀さんっ!!」
「なっ!!どうなってるんだ!?デイジーが……2人!!」
雲雀を蹴ったのは、手錠で拘束されているデイジーではなく、もう1人のデイジーだった。
「くっ…」
蹴りとばされた雲雀は、再び校舎に激突し、手錠はロールに戻り、ロールは匣に戻った。
「あぶなかった…」
その言葉を口から出したのは、拘束されてた方のデイジーだった。
「さっき、雲雀恭弥に破壊された僕チンが残っててよかったよ。でなけりゃ、やられるところだった」
デイジーは、九死に一生を得たというように、ほっとした表情で立ち上がる。
「そうか…。さっき全身再生しようとしていた奴は、恭弥に破壊されたと思っていたが、実はまだ残っていたのか…」
「そう……。僕チンは、ほんのカケラでもあれば、全身再生できるのさ」
デイジーがニヤッと笑うと、もう1人のデイジーは、雲雀の前まで来ていて、自ら全身を自切すると、雲雀の手足を壁にぬいつけるようにしばりつけた。
そして、先程手錠でやられた方のデイジーは、雲雀のもとまでやって来ると、ディーノと同じように、手で雲雀の腹をさした。
「ぐっ…」
腹をさされては、さすがの雲雀も、顔に苦痛の色を浮かべる。
「ボンゴレ匣さえ封じてしまえば、こっちのものだよ」
「うっ…」
デイジーはニヤッと笑うと、雲雀の内臓をつかんだ。
「やべぇ…。恭弥!!」
「恭さんっ!!」
草壁とロマーリオでは太刀打ちできないし、魅真はリングが壊れてしまい、唯一まともに戦えるディーノも、大ケガを負ったので、助けにいきたくともできなかった。
「くそっ…」
けど、それでもディーノは、痛む体をこらえ、雲雀を助けようと、立ち上がるために力をいれた。
「さあ、内臓をつぶすよ」
そう言うと、デイジーは実行するために、内臓をつかんでいる手に力をいれようとした。
「ぼっ」
だが、その時魅真がやってきて、デイジーを、雲雀のトンファーで殴りとばした。
そのことに、雲雀、ディーノ、草壁、ロマーリオは驚き、目を丸くした。
魅真は殴りとばしたことで下に向いた体を、ゆっくりとのばし、まっすぐに立ち、デイジーに顔を向ける。
「許さないっ!!!!!」
魅真は鋭い目でデイジーを睨みつけ、全身から怒りの感情があふれていた。
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