標的89 来襲
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「骸!!」
「む、骸ーーー!!?」
「骸様の…有幻覚…」
「あれが!?」
魅真達は、突然骸が現れたことに驚いていた。
「あれれ?」
けど、白蘭は驚いておらず、魅真達の方に進みながら、リングに炎を灯し、その拳で骸に攻撃をするが、骸はその攻撃を槍で止めた。
「クフフフ」
そして、右目の数字を一に変えると、白蘭の足元に大きなひびが入り、そこからは、蓮の花が巻きついた、巨大な火の柱が出現し、白蘭に直撃した。
標的89 来襲
「ひいい。スゲーー!!」
一瞬で白蘭をやってしまったので、ツナは腰をぬかしていた。
「お久しぶりです。沢田綱吉」
「か…髪が伸びてる!!10年後の骸!?」
火柱を放つと、骸はツナに背を向けたまま、ツナにあいさつをする。
「それに魅真も……久しぶりですね」
「え?う、うん…。そうだね」
そして、ツナだけでなく、魅真にもあいさつをしたので、雲雀は一気に不機嫌になった。
「でも…ケガとか大丈夫なの?」
メローネ基地に突入する前、クロームの内臓が失われていた。それはつまり、骸の力が弱まっているということなので、ツナは心配そうに尋ねた。
「綱吉クンの言う通りだよ、骸クン」
その時、火柱の中から、平然とした顔をした白蘭が、骸に声をかけてきた。
「!」
「ひっ」
「えっ」
「効いてない!」
すごい技なのだが、無傷で、何事もないようにしゃべっているので、ツナはびびり、魅真、クローム、ディーノは驚いていた。
「僕の部下に憑依した君は、あの時精神ごと消したはずなんだけどな。少なくとも、こんな幻覚は、もうつくれないほどにね」
「クフフフフ。たしかに、あなたの策略にはまり、密閉された空間に閉じこめられた時は、もうダメかと思いましたよ」
けど、白蘭に技が効いていなくても、骸はまったく気にしてないようで、愉快そうに笑っていた。
「一人でしたらね」
そして、突然挑発的な目で白蘭を見た。
「ん。あっ」
その最後の言葉で、何故骸がここにいるのか、白蘭は理解した。
「そっかーー。お仲間に、外から穴を開けてもらったのね」
「アレは僕の仲間というには、出来の悪すぎる子供ですが」
「?」
「子供?」
「誰のこと?」
「どちらにせよ、あなたにもらったダメージはとても大きかったですよ。つい先刻まで、こんなことはできなかったほどにね」
言ったことを証明するように、白蘭がいる巨大な火柱の前後で、その巨大な火柱よりも一回りほど小さな、同じように蓮の花が巻きついた火柱が、罰点を描くように計4本出現し、更に、白蘭の体を蓮の花のつるで巻きつけ、拘束した。
「ひゃあ!!」
更にすごい技が出てきたので、ツナはまたびびった。
「ハハハ。ダメダメ、骸君」
だが、これだけすごい技なのに、それでも白蘭には効いていなかった。
「!」
「これじゃ、僕には勝てないよ。いくら本物に近い幻覚とは言っても、所詮君は、ニセの作り物だ。僕に勝ちたいんなら、少なくとも、復讐者の牢獄から抜け出して、君自身の肉体で戦わないとね」
「(本当に骸は…10年間ずっと、復讐者の牢獄に…)」
10年前のあの時から、ずっと復讐者の牢獄に閉じこめられているままだというので、雲雀は反応を示し、魅真、クローム、ツナは、顔が青くなった。
「クフフフ。ご心配なく。僕が自らの手で、直接あなたを倒す日も遠くはない」
「えっ…」
「!!」
「!!」
「ん!?」
それでも骸は意に介しておらず、不敵に笑うだけだった。
「我々は、すでに動きだしている…とだけ言っておきましょう」
「(我々…!?)」
「それに今この場では、足止めさえできれば、僕の勝ちですよ」
骸が有幻覚となって出現したのは、勝つためではなく、足止めだった。
骸が言ったことを表すように、白蘭に巻きついたつるは、また強くしめつけた。
「!」
「さあ、大空のアルコバレーノを並盛町へ連れて行くのです。沢田綱吉」
「骸…!」
「ツナ、ここは骸にまかせた方がよさそうだ」
「でも…骸様!」
「………」
隣にいるクロームが迷っているのを見ると、ツナは少しだけ考えた。
「骸!!また会えるのか!?」
そして、クロームの気持ちをくんだように、骸に問いかける。
「当然です。僕以外の人間に、世界を取られるのは、面白くありませんからね」
ツナの質問に、骸はツナがいる方にふり向き、笑って答えた。
「いいですか?沢田綱吉」
けど、急に真剣な声色で、ツナに話しかける。
「絶対に、大空のアルコバレーノユニを、白蘭に渡してはいけない」
真剣な声色、真剣な目で、ツナに忠告した。それは、すべてがわかっているかのような口ぶりだった。
「黙って♪」
「ぐっ」
それ以上は言わせないというように、白蘭は骸の右胸をつらぬき、阻止した。
「骸っ!!」
「いや!!」
「あ!!」
この残酷な光景に、魅真、ツナ、クロームは悲痛の声をあげ、顔が青ざめる。
「……さあ、早く転送システムに炎を」
今ので骸の幻覚はくずれ、霧となって消えはじめた。
「わ…わかった……。クローム!み…みんな!!」
ツナは骸に言われた通りにリングに炎を灯し、魅真、雲雀、獄寺、山本、了平、クローム、バジル、ディーノも、リングに炎を灯した。
すると、大きな光がツナ達を包みこみ、そこから光の柱が矢のように転送システムに向かっていき、転送システムに直撃すると、転送システムは光り、次第に姿を消した。
「うまく逃がしたつもりだろうけど、意味ないな、骸クン。綱吉クン達の寿命は、ほんのちょっと伸びただけだよ」
ツナ達はここから逃げていったが、それでも白蘭は問題視していなかった。
骸の幻覚は、最初は顔だけだったが、今は全身から霧の炎が出てくずれており、火柱も、白蘭に巻きついていた蓮のつるもなくなっていた。
「僕は、ボンゴレファミリーを助けたかったわけじゃありませんよ」
「ん?」
「大空のアルコバレーノがあなたの手に渡らなければ、充分です」
「わかってるような口ぶりだね」
「クフフ」
「まっ、いいや」
問いかけても、笑って誤魔化すだけの骸だが、白蘭は気にとめていなかった。
「ユニちゃんは、どんな手を使っても手にいれるから。君の嫌いな、マフィアらしいやり方でね」
そしてリングにを光らせると、骸を攻撃した。
その瞬間、骸の幻覚はなくなり、まるで爆発したかのように、霧の炎は四散する。
「バイバイ」
霧の炎が辺りに漂う中、白蘭は冷たい目で、静かに別れを告げた。
「白蘭様、お怪我は!?」
「ないない。ちょっと口寂しいけどね」
そこへ、真6弔花が飛んできた。
「申しわけありません!!我々がついていながら、ユニ様を……」
「いやー。あの娘(こ)にはしてやられたよね」
桔梗は謝罪しながら地面に降りたち、ひざをついた。
他の者達も、同じく地面に降り、ひざをつく。
「こんなことなら、素直にチョイスの再戦うけときゃよかったかなー。といっても、ユニちゃんは、断るの予知(みとお)してやってんだろーし、ムリか」
「ニュニュウ~!!びゃくらんなんか、ブゥーだ!!」
「ん?」
白蘭と桔梗が話していると、そこへ、ブルーベルが白蘭のもとへやってきて、白蘭にマシュマロの袋を渡しながら、不機嫌そうな態度で接した。
「なんで、ユニなんて人形娘に振り回されてんの!?殺しちゃえばいいのにーー!!」
ブルーベルが白蘭につっかかったのは、単なるヤキモチだった。
「やだなー、ブルーベル。ユニちゃんを殺すなんて」
「!!」
白蘭は、そんなブルーベルの発言に、いつもの笑みを浮かべながら、ブルーベルの首に手刀をあてた。
薬指がわずかに首にくいこんだだけだが、ブルーベルは固まってしまう。
「次言ったら、殺す」
そして、恐ろしいほどの冷たい目と殺気を向けた。
白蘭は本気だった。本気を出せば、真6弔花のブルーベルといえども、一瞬にして消してしまえるほどの力を持っていた。
それがわかっているブルーベルは、白蘭に恐怖し、顔が真っ青になり、力がぬけて、後ろに倒れ、尻もちをついた。
「失礼しました、白蘭様。できれば我々にも、ユニ様を追う理由を、お教え願えないでしょうか?」
桔梗はかしこまった態度で、恐怖でしがみついているブルーベルの肩を抱きよせながら、白蘭に問う。
「………言ってなかったかい?僕は、ここ以外の、ほとんど全てのパラレルワールドで、7³をコンプリートしているが、どの世界で集めた7³も、僕を、新しい世界の創造主にしてくれるほどの、偉大な力は発揮していない…。だが、それがなぜなのか、今日見た、目の眩むようなおしゃぶりの輝きで確信したよ。
7³を覚醒させるために必要なのは、魂をともなったユニだ。
彼女を手に入れ、7³のナゾがとければ、この世界だけじゃない。全パラレルワールドの扉は開かれ、僕は超時空の創造主になれるんだ。
この際、なぜユニの魂が、ボンゴレなんかを頼りに、今この世界にひょっこり戻ってきたかなんて、どーでもいいや」
白蘭は、桔梗に聞かれたことを、淡々と話し、そこまで話すと、ブルーベルに渡されたマシュマロの袋の中に、勢いよく手をつっこんだ。
そして、袋の中から手を出すと、手の中には、手からあふれんばかりのマシュマロがにぎられていた。
「欲しい…。あの娘が…」
その、野心に満ちた目で、白蘭は、今つかみとったマシュマロを、一気に口にいれ、真6弔花が見ている中、咀嚼し続けた。
「わかったら、さっさと追おうね♪」
咀嚼したマシュマロを飲みこむと、またいつもの顔に戻る。
「一刻も早く、ユニを奪え」
そして、低い声で、真6弔花に命令をした。
同じ頃、ツナ達は、ちょうど並盛神社にたどり着いた。
「いつつ…」
けど、ツナは着地を失敗して、左足が木の枝にひっかかり、もう片方の右足はどこにもひっかかっておらず、宙ぶらりんな状態だった。
「や…やった!!並盛に…転送(ワープ)できたぞ!!」
それでも、なんとか並盛についたので、ツナはほっとしていた。
「で!!」
「ツナ君!!」
「10代目!!大丈夫っスか!?」
「う…」
けど、唯一ひっかかってた左足が枝から離れ、地面に落ちてしまったので、ツナのそばにいた魅真、獄寺、バジルは心配した。
「そうだ!!基地ユニットの中のみんなは!?」
地面に落ちたといっても、地面から枝までは、そんなに高くなかったので、ツナはケガはしておらず、上半身を起こすと、京子達の心配をして、目の前にある基地ユニットに目を向けた。
「ふんじゃってごめんなさい」
「今度はランボさんがふんじゃうもんね!!」
一方基地ユニットの中では、基地ユニットが着地した際に、ユニに下敷きにされたランボが、お返しというように、すわっているユニのひざをふんでいたが、相手は女の子だからか、いつも獄寺にやるような激しいものではなく、ユニのひざに足を置くくらいの、かわいいものだった。
「大丈夫か?正一」
「ああ…」
モニターなどの機械がある方では、機械の後ろに寝かせられている正一を、リボーンが心配して声をかけていた。
「それよりユニさん」
「?」
「あの、超炎リング転送システムは、他にもあるのかい?」
「いえ、たしかあれ1つです」
リボーンに答えると、今度はユニに話しかけ、転送システムのことを聞いた。
「よし、いいぞ!!すぐに転送システムを破壊するんだ!!そうすれば、敵は追ってこれないはずだ!!」
ユニから答えが返ってくると、外にいるツナ達に、大きな声で指示をした。
「でしたら、10代目!!オレにまかせてください」
「獄寺君!」
ここは自分の出番だというように、獄寺はリングに炎を灯し、ボンゴレ匣を開匣すると、腰に巻きついた、複数の匣のうちの1つを開匣した。
「炎が吸収されるんなら、新兵器の実弾を使います!!」
それは、ここに来たばかりの頃に初めて使った匣の、あの髑髏の砲台で、髑髏の口の中には、ミサイルの形をした弾が入っていた。
「ターゲットロック!!」
まずは、目につけられている、ツナと似たようなコンタクトで位置を捕捉した。
「果てろ。赤炎の弾(フレイムミサイル)!!」
そして、転送システムに向けて、ミサイルを撃った。
ミサイルは命中して、転送システムは破壊された。
「すごい。当たったよ!!」
「マ…マグレッス♪」
謙遜しながらも、成功したし、ツナにいいとこを見せられたし、ツナにほめられたので、獄寺はうれしそうに笑う。
獄寺の赤炎の弾によって破壊された転送システムは、山の方へ落ちていった。
「民家のない山へ落ちます」
「これで時間が稼げたな」
「よかったー」
いつかは追ってくるだろうが、それでも時間稼ぎにはなり、しばらくは追ってこれないだろうから、ツナ達はほっとした。
「これで一安心ですね~~。…ところで、我々は今までどこにいたんでしょう?」
「チョイスが行われていたのは、無人島です」
「え!?島?」
どう見ても大都会だったのに、島だと聞いて、ツナは驚いた。
「白蘭は、誰にも発見されてない無人島を改造して、アジトの一つにしたんです。日本(ここ)からは、ずっと遠くにあります」
「まだ見つかってない島があったなんて…」
「恐らく、白蘭の能力を使ったんでしょう」
そこまで話すと、突然転送システムに、電気が走った。
「「「!?」」」
先程獄寺が破壊したはずなのに、電気が走ったので、ツナ達は目を見張る。
そして、転送システムは強い光を放つと、消えてしまった。
「!!」
「き!」
「消えた!!」
「どーいうことだ!?」
「白蘭の元へ戻ったな。破壊できていなかったのか…」
「マズイな。また、すぐに敵を乗せて、戻って来るかもしんねーぞ」
「そんなっ。すぐ来ちゃうのー!?」
せっかく時間稼ぎができたと思ったのに、ほっとしたのもつかの間、すぐにでも来るかもしれないので、ツナは焦った。
「あまり時間はねえ。どーするか決めろツナ」
「そんなこと言われても!!」
ここにいるとわかるのは時間の問題だし、かといって、いい対策も思い浮かばないしで、ツナは頭を抱えこんだ。
「みなさーん!!」
その時、ツナ達とは違う、第三者の声が聞こえてきた。
「無事に帰ったということは、勝ったのですね!!」
「地面から草壁さんーー!?」
それは草壁の声で、草壁がいきなり燈籠の下から現れたので、ツナはびっくりした。
「あっ、そっか!!神社の地下って、ヒバリさんのアジトだった!!」
けど、すぐに雲雀のアジトの出入口だというのを思い出した。
「祝杯をあげましょう!」
すっかり勝ったと思ってる草壁は、出入口から出てきて、のん気なことを言っていた。
「いや……今それどころじゃないんです!!ヤバイ敵が追ってきてて!!」
「てっ、敵!?」
ツナに簡潔に事情を説明されると、草壁の顔は真剣なものになる。
「事情はわかりませんが、ひとまず、地下のボンゴレアジトに戻られてはいかがでしょう。ここからも、アジトへつながっています!!」
「そっ、そうだ!!ボンゴレアジトなら、安全だ!!」
草壁に提案されると、ツナはボンゴレアジトに行くことにした。
その時、空からまぶしいほどの光が放たれた。
「!!」
空に顔を向けると、そこには大きな光を放った転送システムが現れた。
「転送システムが戻ってきやがった!!」
「えぇーー!!もおーー!?」
あっというまに戻ってきたので、ツナは焦って叫んだ。
転送システムの下部に、魔法陣のようなものが現れると、転送システムの中から、6つの光がとびだし、四方に散っていった。
「四方に何か散ったぜ!」
「来たーーー!!!」
彼らがこちらに来たのがわかったので、ツナは更に焦り、頭を抱える。
転送システムは、彼らがとびだすと、直後に山に落ちて壊れた。
「転送システムは、壊れる寸前だったんだ!だから、着地に失敗して、四方に散ったのかも」
「どっちみち、奴らは来たぞ」
「ヤバイよ!!どーしよー!!?」
本当に、もうみつかるのも時間の問題となったので、正常な判断ができないくらいに、ツナは焦っていた。
「!」
「!」
その時、雲雀が一人走り出して、並盛神社から出ようとした。
「恭さん!!どちらへ!!」
急にどこか行こうとしてるので、草壁は雲雀に問う。
「一つ並中の方に落ちた。見てくる」
雲雀が走りだしたのは、光の一つが並中に落ちたからだった。
「(この人、あくまで学校が一番なのねーー!!)」
強い敵とか、世界の危機とかよりも、何よりもまず、並中が一番なので、ツナと獄寺はひいていた。
「待ってください、雲雀さん!!」
「魅真ちゃん!?」
すると、魅真が雲雀のあとを追いかけたので、ツナ、獄寺、山本は驚いた。
「私も行きます!!」
「恭弥っ、オレも行くぜ!!」
続いて、草壁とディーノも追いかけた。
「なっ、ディーノさんも!?」
「どのみち戦う相手だ。分散している方が倒しやすい」
ツナに声をかけられると、ディーノは一度立ち止まって、ツナの方にふり返る。
「ディーノさん!!あの…オレは…どうしたら!?」
「お前はまず、ユニを安全なアジトへつれていけ!!」
まだどうしたらいいのか悩んでいるので、ディーノにアドバイスを求めると、ディーノは簡潔に指示をする。
「……そしてあの感じじゃ、必ず白蘭もくる。ここをうまく凌げば、奴を倒すチャンスもきっとあるぜ」
「え!!」
遅かれ早かれ、白蘭と戦うことになるので、ツナはドキッとした。
「だが、まずはユニの安全の確保だ!!後で会おうな!」
話が終わると、ツナに顔を向けながら、ディーノは再び走りだす。
「!」
だが、よそ見をしていたせいで、階段で足をすべらせてしまった。
「あっ」
「ぐっ がっ つっ ぐへっ」
「!」
ディーノは器用にも、階段を10段以上すっとばして、毬のようにはねて落ちていき、階段を降りてる最中の草壁よりも早く一番下にたどり着き、最後は地面に顔を直撃した。
そして、ディーノの前には、ちょうどロマーリオが、買い物袋を持って立っていた。
「ディーノさん!?」
「相変わらず、部下の前じゃねーとシマんねーのな」
「超ダセー…」
結構な段がある階段を、一気に転げ落ちていったので、ツナは心配し、山本は笑っており、獄寺は呆れていた。
「なんだボス、戻ってたのかよ」
「……ロマーリオ…」
顔面を地面に強打し、顔から下の体は階段にのっかっているという、結構マヌケな状態のディーノに、いつものことなので、ロマーリオは普通に話しかけていた。
ちなみにロマーリオがここにいるのは、草壁と飲むための酒を買いに行ってたからだった。
「こーしちゃいられねー」
ロマーリオが来たので、ディーノは起きあがると、鼻血を手でぬぐう。
「並中へ行くぞ。ついてこい!!」
「ういっ」
ディーノは起きあがると、雲雀のあとを追いかけていき、ロマーリオも、酒が入った買い物袋を持って、ディーノのあとを追いかけた。
雲雀は並盛神社を出ると、並中への道を、一心不乱に走っていた。
「雲雀さん!!待ってください!!」
その雲雀の数メートル後ろを、魅真が走っていた。
魅真は雲雀の名前を呼ぶが、雲雀はその呼びかけに答えず、ふり返ることはなかった。
「……………………」
わかってはいたが、いっさい反応を示さない雲雀に、魅真は落ちこんだ。
「(雲雀さん……。目の前にいるのに、なんだかとても遠くに感じる…)」
雲雀と離れている距離が、まるで今の自分と雲雀の心の距離を表している気がした。
「(わかっていた……。私が話しかけても、雲雀さんは、答えてくれないこと……。とても悲しいし、寂しい………。とても怖い………。ある意味で、白蘭よりも………。また、チョイス会場にいた時みたいに、つきはなされるかもしれない……。今度は、罵詈雑言をあびせられるかも…。もっと嫌われるかもしれない…)」
この現状に、魅真はマイナスのことばかり考えて、どんどん沈んでいく。
「(嫌われる…?)」
けど、最後に思ったことに、ハッとなった。
「(バカみたい、私。『嫌われる』なんて…。それじゃあまるで、雲雀さんが、私のことを好きみたいじゃないの…)」
それは、今までずっと、雲雀が自分のことを好いてる前提で、物事を考えていたことだった。
「(嫌われたとみんなに話していたけど、その嫌われたという言葉は、私が雲雀さんに好かれている前提じゃない。私は、とんでもないカン違いをしていたのかも……。初めて会った時からは優しくなったから、嫌われてないかもしれないって舞い上がっていたけど、本当は、最初からずっと嫌われていたのかも…。雲雀さんの心は、雲雀さんにしかわからないけど、本当にそうだとしたら、すごくはずかしい)」
もしかしたら、とんでもないカン違い女かもしれないので、魅真はそう考えると、すごくはずかしくなり、頬を赤くする。
「(でもっ……そんなことは関係ないわ!!)」
けど、すぐに真剣な顔になった。
「(雲雀さんに嫌われていようと、そんなことは関係ない!!たとえ雲雀さんが、私のことをどう思っていようと、私は雲雀さんを守りぬくだけよ!!!!)」
魅真は、雲雀にどこまでもついていくと決めてるので、雲雀の背中を追いかけていく。
「(みんなとの未来を…雲雀さんとの未来を…絶対に守ってみせる!!)」
そして、力強い目で、まっすぐに、目の前にいる雲雀を見据えた…。
走っているうちに、ディーノ、草壁、ロマーリオも追いつき、何分か走っていくと、並中についた。
並中は校門が開いてたので、雲雀、ディーノ、草壁、ロマーリオは普通に入っていくが、魅真はこの時代に来る前に、並中からも出ていってもらうとも言われていたので、少し躊躇した。
けど、雲雀の後ろ姿を見ると、意を決して中に入っていき、真6弔花がどこにいるのか探しながら、辺りを警戒して歩いていた。
入ってすぐのところにはいなかったので、もしかしたら校舎の裏側かもしれないと思い、そちらの方へ行くと、角をまがるなり、いきなり、晴属性の死ぬ気の炎をまとったサイが襲いかかってきた。
魅真達はあっさりとよけ、突進してきたサイの前足は、めりこむように、地面に激突した。
「来たね。待っていたよ…」
「「「「「!!」」」」」
サイが地面に激突すると、男の声が聞こえた。
「あなたは…デイジーとかいう…」
そこにいたのは、真6弔花のデイジーだった。
「ん?君達だけ?」
「そうよ」
サイを匣に戻し、デイジーが魅真達に質問をすると、答えたのは魅真だった。
「他の奴らはどこだい?」
「教えない」
「ユニ様は?そこにはいないみたいだけど。もしかして、ボンゴレ達と一緒にいるの?」
「教えない」
デイジーはユニの居場所を聞くが、当然だが、魅真達が言うわけがなかった。
一刀両断されると、デイジーはやつれたようなその目で、魅真を睨みつける。
「なら……力ずくで吐かせるよ…」
何がなんでもユニの居場所を知りたいデイジーは、リングに炎を灯すと、サイが戻った匣に差し込んだ。
魅真もまた、応戦しようと、匣を開匣するために、リングに炎を灯そうとした。
だが、リングは炎が灯る前に、粉々に砕け散った。
「え……」
突然リングが壊れたので、魅真は呆然としてリングを見た。
デイジーの匣兵器のサイは匣からとびだし、魅真に向かってまっすぐ突進してきたので、魅真はあわてて、もう1つのリングをスカートのポケットから出すと、指につけて、炎を灯そうとした。
だが、同じように、炎が灯る前に砕け散って、使い物にならなくなってしまう。
「うそ……そんなっ……」
今持っているリングは、今壊れたのと、先程壊れたものの2つだけなので、もう匣をあけることができなくなった魅真は、焦りを見せた。
「(魅真さんのリングが壊れた!!バカな…。あれは、ボンゴレリングほどではないが、ボンゴレリングの次にランクが高い、ランクAのリングのはず…。まさか……)」
魅真がこの時代の雲雀にもらったリングは、実はA級のリングだった。それなのに、炎が灯る前に壊れたので、草壁はふしぎに思ったが、ある可能性が、草壁の頭の中によぎった。
「魅真さん!!あぶない!!」
その時、サイが魅真との距離をかなり詰めていたので、草壁は魅真に注意を促すよう、大きな声で叫んだ。
草壁が叫ぶと、魅真は顔をあげて前を見た。
すると、サイがすぐそこまでせまってきていたので、それを見た雲雀は、魅真のもとへ走りだそうとした。
魅真はよけるために、足に力をいれようとしたが、魅真が足に力をいれるよりも、雲雀が魅真のもとに走ってくるよりも先に、ディーノがいち早く魅真のもとへ走ってきて、魅真の体を抱きしめると、横にとんでよけた。
横によけると、2人は地面に落ち、勢いがあったので、地面に体がぶつかった時、こすれるように動いたが、こすれたのはディーノの背中で、魅真はディーノの上にのっかっている状態なので、特にケガもなく無事だった。
草壁とロマーリオはほっとしてたが、雲雀は、魅真が助かったのは別として、ディーノが魅真を助けたことにムッとしていた。
「ててて……」
ディーノは痛みを感じながらも、魅真を抱きかかえながら上半身を起こし、魅真も一緒に上半身を起こされた。
コートを着ているので、特にケガはしていないが、背中をこすったので、多少の痛みはあり、ディーノは少しだけ顔をゆがめた。
「大丈夫ですか?ディーノさん!!」
「ああ、平気だ」
「すみません。私がぼーっとしていたから…」
「いいって」
自分のせいで、ディーノが体を痛めたので、魅真は落ちこんだ。
「今ので、リングが壊れたみたいだね」
そこへ、デイジーが話しかけてきたので、魅真達は、デイジーに顔を向けた。
「もしかして、リングはそれだけ?じゃあ、君はもう戦えないね」
核心をつかれると、魅真は不安を感じた。デイジーの言う通り、もう戦うことができなくなったからだ。
「くっ……」
これでは、足手まといもいいとこなので、魅真は悔しそうに顔をゆがめる。
「でも、僕チンは君が戦えようが戦えまいが、どっちでもいいよ」
「え…?」
「僕チンの目的は、ユニ様の居場所を知ることだ。もちろん、君達を殺すことも目的の一つだけど、一番の目的はユニ様だ。だから、ユニ様の居場所さえわかれば、君達は用済みさ。それに、君が戦えなくなっても、僕チンは手をゆるめることはしないよ。ボンゴレファミリーは全員殺す。もちろん君も、標的の一人だ」
デイジーの目的はあくまでも、ユニを探して捕えることと、ボンゴレファミリーを全員殺すことなので、別に魅真が戦えなくなっても、問題視していなかった。
「まずは……戦う術を失った、君からにしようか…」
「!!」
しかも、魅真を一番最初の標的にしたので、魅真は更に焦りだす。
だがその時、ディーノが魅真から手を離すと立ちあがり、魅真を守るように、魅真の前に立ちはだかった。
「ディーノさん…?」
魅真は自分の前に立ったディーノを、すわった状態で見上げる。
「こいつをやらせるわけにはいかねーな」
「何?お前が最初に僕チンとやるのかい?」
「ま、そういうことだ。こいつに手出しはさせねーよ」
そう言って、ディーノはムチを構えた。
「まあいいさ。ユニ様の居場所を知れるなら誰だって。それに、ボンゴレファミリーではないけど、同盟ファミリーのお前も標的の一人だからね。一緒に殺してあげるよ」
「こい」
デイジーもまた、リングに炎を灯し、匣を開匣しようとしていた。
「魅真、もっと後ろにさがってろ」
「は、はい…」
この位置だと、魅真を巻きこんでしまうので、ディーノは魅真に離れるように言うと、魅真は立ちあがって、ディーノから離れた。
「ちょっと」
そこへ、ディーノの隣に雲雀がやって来た。
「あれは僕のエモノだよ」
雲雀もトンファーを構え、やる気満々の様子だった。
「恭弥…」
「手出し…しないでくれる?」
誰にも邪魔されたくないようで、雲雀はディーノよりも前に立った。
対抗意識むき出しだが、ディーノは口もとに笑みを浮かべる。
「そういうわけにはいかねえな。相手は真6弔花だからな」
「じゃあ、早いもの勝ちだね」
「ま、そういうことだな」
雲雀とディーノは武器を構え、デイジーがいつ来てもいいようにした。
そこから少し離れた場所では、魅真が悔しさと羨望がまじった目で、雲雀とディーノを見ていた。
そして、二人を見ると、先程までリングをつけていた右手を見た。
「………… (……どうしよう…)」
リングが両方とも壊れてしまったので、これでは匣を開匣できず、もう戦えなくなってしまったので、呆然としていた。
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