標的87 過去と未来の真実
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「正一君!!死なないで!!」
ツナは再度、正一に呼びかけた。
「う…」
すると、正一はうっすらと目をあけた。
「正一君っ!!」
「!!」
「ほら…メガネだぜ…」
正一が目をさますとツナはほっとし、獄寺は、先程の桔梗の攻撃で倒れた時にはずれたメガネを、正一にかけた。
「……チョイスは…どうなった…?」
「「!」」
「…………」
「……ゴメン、負けたんだ…」
正一に勝敗を聞かれると、ツナは言いにくそうに答えた。
「なんだって!?そんなことは許されない!!」
勝負の結果を聞くと、正一は勢いよく上半身を起こす。
「勝たなきゃ…!!勝つんだ!!まだだ!!戦うんだ!!」
「おいお前っ、動くな入江!!」
興奮して、上半身を半分くらい起こし、手を伸ばす正一を、獄寺は安静にするように叫ぶ。
「チョイスバトルが終了致しましたので、全通話回線を開放します」
近くでは、チェルベッロが、淡々として、すべての通話回線を開放していた。
「白蘭サン!!僕はまだ戦える!!」
「ダメだ正一君!!動いたら、お腹から血が!!」
「てめー、死にてーのか!!」
「死んだっていいさ!!白蘭サンに勝てるなら喜んで死ぬ!!」
血を口から吐きながら、どこか狂気じみた正一に、ツナも獄寺も顔を青くしていた。
「喜んで……」
「(正一君…何、言ってるんだ…)」
白蘭に勝つためなら、死すら恐れない正一に、ツナはわけがわからなくなった。
「……わからない。……わからないよ。なぜ、こんなになってまで、白蘭を倒すことに執念を燃やすのか、わからないよ!!」
ツナは正一に対して思ったことを、正一にぶつけた。
標的87 過去と未来の真実
「…え?」
ツナが疑問をぶつけると、正一はふしぎそうな声を出した。
「確かに、白蘭は悪い奴だし、7³を奪われたら大変だって、言葉ではわかるけど…。しっくりこないんだ……」
「!!」
「人類のためとか、いくら理屈を聞いても…自分には遠い話のようで、ついていけなくなる時があるんだ…」
「…………」
「10代目のおっしゃる通りだ……。過去に戻るためってならいいが、この時代のことを片付けるために、わざわざガキのオレ達が戦うってのは、いまいちピンとこねぇぜ…」
それは、獄寺も感じていたことで、ツナに続いて獄寺も、その疑問を正一にぶつける。
「…………そうか…。そうだったね……。僕はこの10日間、忙しさにかまけて、話すことを放棄してた。いや…君達ならわかってくれると、勝手に思い込んで、甘えていたのかもしれない…」
「正一君、教えてよ。どうして、そこまでして白蘭を…?白蘭と、一体何があったの?」
「…すべて話すよ…。いや、むしろ聞いてもらいたい……。話は11年前にさかのぼるんだ…。君達と同じ並盛に住んでいた僕は、ある日突然ランボさんを助けたことで、ボヴィーノファミリーから、お礼に木の箱をもらうんだ」
「え!?ランボ…かんけーあるの!?」
意外な人物がかかわっていたので、ツナは驚いた。
「そこには、ランボさん宛の、10年バズーカの弾も入っていたんだが、返すタイミングを失ってね…。それが何なのか知らずに、部屋の掃除中に、誤って足に落としてしまった…」
「おい、それって…!!10年バズーカに被弾したってことか!?」
「ああ…。僕は、10年後の自分と入れかわり、初めて未来へ行ったんだ。僕が行き着いた、10年後の自分の居場所は、アメリカの工科系大学だった。僕は何が起きたのかわからずに混乱したよ…。そして、未来の僕の身分証と、新聞の日付けを見て、愕然としたんだ。僕は怖くなって、学校の中庭へ走ったんだ。…そこで、ある男にぶつかってしまう……。白蘭サンだ…」
11年前に、10年バズーカで10年後に行った正一は、大学の中庭を走っていると白蘭とぶつかり、白蘭はこの時代の正一の身分証を見て、かなり優秀だと言ったが、目の前の正一が幼いので、弟かと思ったようだった。
「この後しばらく走って、僕は過去に戻った」
正一は白蘭から身分証を奪い返すと、そのまま走っていき、5分経って過去に戻っていったのだという。
「白蘭と初めて会ったのは未来だったんだ!」
「……話自体は、いたって普通のタイムトラベルだな」
「ああ、それだけだ…。あの時はまだ、白蘭サンも、「ただの人」だったしね。実際、過去に戻った僕は、白蘭サンのことなどすっかり忘れて、タイムトラベルをしたこと自体に興奮したよ…。でも、その一方で、自分の夢だったミュージシャンに、将来自分がなってなくて、ひどく落ち込みもしたんだ…」
「えっ?正一君…ミュージシャンになりたかったの?」
「笑っちゃうだろ?だから当時の僕は、ミュージシャンになれるように、未来を変えようって考えたんだ…」
「未来を変える?そんなこと…」
「過去を変えれば、未来も変わる…。未来は1つじゃないんだよ」
「パラレルワールドだな」
ツナ達が話していると、リボーンの声がしたので、ツナと獄寺は、声がした方へ顔を向けた。
「みんな!!早く正一君の処置を!!」
そこには、魅真、リボーン、了平、バジル、フゥ太、ディーノ、クローム、ジャンニーニがやって来た。
ツナも獄寺も、手当ての道具を持っていないので、リボーン達に手当てを頼んだ。
「! あ…スパナは!?」
「もう向こうで、毒サソリ達が処置をしている!」
「正一はオレが診てやる」
リボーンは救急箱を取り出すと、正一のケガを診た。
「(ひでー傷だな…)」
だが、とても救急箱にある道具では、手当ては難しいと感じた。
「了平、晴れゴテを開匣しろ」
「おう!!」
「すまない、リボーンさん…」
なので、まずは了平の晴の活性の炎でなんとかしようと、了平に指示をした。
「それより…パラレルワールドの説明を…」
「そういえば、昔、大人ランボも言ってたよ!!」
「その、パラ…」
「パラソルワールドとは何だ!?」
「パラレルだっ。バカ!!」
「パラレルワールドとは、世界はどんどん枝分かれしていってて、いろんなパターンの未来が存在するって考えだな」
「世界が…枝分かれ…?」
「例えば、オレとお前の出会いだ。オレと出会って、お前がすげえ立派でかっこいいマフィアになる未来と、オレと出会わずに、ダメダメの超ダメ人生を送る未来。そのどちらの世界も実際に存在するって考え方だ」
「どっちもヤダな…。っていうか、う~ん。つまり…「もしも」の世界が実際にあるっていうこと?」
「そうだ。「もしも」の数だけな」
「だが、この世に「もしも」なんてことは、たくさんあるぞ!!」
「ああ…。だから、無数の分岐から、無数のパラレルワールドが存在すると考えられるんだ」
「ひっ」
「なんと!」
「だから僕は、きっと、自分がミュージシャンになっている未来のパラレルワールドもあるはずだと思って、もう一度、10年後へ行こうと決めたんだ…」
「え?でも、どうやったらミュージシャンになる未来になんて…?」
「学校の教科書を、全部燃やして、進路指導票に、「ミュージシャンになれなきゃ死んでやる!!」って書いたんだよ…」
「ええっ。 (正一君って、意外とカゲキーー!!)」
見かけによらず過激な正一に、ツナは引き気味だった。
「そしてまた、10年バズーカの弾で、タイムトラベルをした…。確かに僕の未来は、1回目とは違っていたよ。今度行き着いた、10年後の僕の居場所は、外国の町外れの、廃れた飲み屋だったんだ…。見るからにヤバそうな人達がたくさんいて。どうやら未来の僕は、ミュージシャンとして、そこで演奏をして働いていたみたいなんだけど…。お金のトラブルを抱えてたみたいで、ギャングに追われていたんだ…」
「いいっ!?」
「そんな…」
「そんな大変なことに…?」
「ハハ…。おかしいだろ…?僕は、ミュージシャンには向いていなかったみたいだ…。一目散に、店から飛び出したよ……。しばらくして、人通りの多い大通りに出たところで、運命の悪戯(イタズラ)なのか…また、あの男にぶつかってしまった……。そう――――白蘭サンだ」
場所は違うはずなのに、偶然にも、その未来でも、正一は白蘭と出会ったのだという…。
今話されたことに、ツナと英ボーンは顔をしかめた。
白蘭と出会った正一は、またアメリカの大学にタイムトラベルした時のように、白蘭に声をかけられる。
「僕はおどろいたけど、そのまま去れると思った。だって、この世界の白蘭サンは、僕と初めて会ったわけで、僕を知らないはずなんだ」
そう思っていたようだが、去ろうとした時に白蘭に肩をつかまれ、どこかで会わなかったっけと尋ねられた。
その問いに対して、正一が人違いだと思うと言った時、白蘭は急に頭に痛みを感じ、頭をおさえてひざをついた。
心配になった正一は、白蘭に声をかけた。
白蘭は痛みをこらえながらも、大事な事が解けそうだと言い、顔をあげると、正一に、「君とは全然どこか違う場所で会ったことがある…」と言った。
正一は、きっと自分と似た人と勘違いしてるのだと思ったが、その後で白蘭が言った、「違う世界で!!」という言葉に、驚愕した。
更に白蘭は、大学で出会ったことと、正一の名前まで言い当てた。
「!」
「!」
その事実に、ツナとリボーンも驚愕した。
11年前の正一は、何でこの世界の人間が、自分のことを知ってるのかと動揺する。
「僕は、気味が悪くなって走り出した。とにかく、走って、走った…。気付いたら…過去に戻っていたよ…」
「!? え?ど……どういうこと!?」
「だって……白蘭は、その世界では、正一さんとは初めて会ったんですよね?」
「この時は、僕も、何がなんだかわからなかったさ……。白蘭サンが、この時手に入れた能力は、この後のタイムトラベルでわかることになる…」
「後って…。また行ったの?」
「ミュージシャンになった、あの未来が許せなくてね……。夢をあきらめて、再び大学を目指したんだ…。そして、1年後に、どうしても未来を確認したくなったんだ…。…ところがだ……3回目のタイムトラベルで見た未来は、僕の想像を、またもや裏切った…。世界は荒廃し…戦争で、焼け野原となっていた…。携帯端末から流れてくるのは、この戦争を起こし、世界征服を成し遂げた、独裁者の演説だけだった…。
白蘭という男のね」
「白蘭が!?」
「!! そんな!!」
「なぜ奴が!?」
「僕も何かの間違いだと思ったよ…。悪い夢だとね…。だから、その後もできる限りの変化を起こして、何度もタイムトラベルを試みた。
…だが何度試しても、わずかな違いこそあれ、全ての未来が白蘭サンに支配されてしまっていたんだ…」
「!!」
「なんでそんなことに…」
「白蘭の奴、何をしたんだ?」
「僕が目覚めさせてしまった能力を…己の欲のために悪用したんだ…。彼は…どのパラレルワールドでも、誰よりも知識を有し、先端技術を獲得し、強力な軍隊を作った……」
「そ…そんなこと…。白蘭の能力って、何なの!?」
どの世界も白蘭に支配されているという、驚愕の事実を聞くと、ツナは白蘭の能力について聞いた。
「パラレルワールドとは、現実と平行して存在している、独立した、別の世界だ…。どんな人間も、他のパラレルワールドにいる自分のことは、知る術もないし、交わったり関わったりすることはない。だが、白蘭サンは、同時刻のパラレルワールドにいる、全ての自分の知識と思惟を共有できるんだ」
「すべての……。それで…」
魅真は今の説明で、何故、全ての世界が白蘭に支配されているのかがわかった。
「わからん!!極限にわからんぞ!!パラレルワールドの知識を共有できるとは、どーいうことだ!?白蘭の、何が一体スゴイんだ!?」
けど、了平はまったくわかっていなかった。
「さっきも話したように、「もしも」で分岐するパラレルワールドには、色々なパターンの未来が考えられる…。軍事技術の発達した未来。古代文明の発掘に成功した未来。医療科学の発達した未来。本来人は、どれか1つの世界でしか生きられないし、体験できないが、白蘭サンはそれらの未来全部を体験して、知っているということだ…」
「つまり、いろんな未来のいいとこどりができるってことだな」
「いいとこどり?」
「すべての「もしも」を体験できるんだぞ。その知識と体験を、他のパラレルワールドで使ってみろ。この世の中、情報に勝る武器はねぇ。誰よりも有利に生きられる」
「…誰よりも…有利に…」
「ありえねえことも起こせるってわけだ」
「その通りだ…。白蘭サンは、他のパラレルワールドで得た知識を使い、まだ、その世界で発見されていない、ワクチンの知識を知っていたり、日陰の身で、姿をかくしていた王族を発見したり、何百という"偶然"の発明なくしては生まれえない兵器の開発に、技術を提供し、猛スピードで完成させたりしたんだ…」
「だが、白蘭が能力に気づいたのは、ほんの少し前ということになるぞ。わずかな時間でこれだけのことをするのは不可能だぞ」
「…それは…タイムトラベルで行き来するうちに、僕が過去の白蘭サンにまで、能力に気づかせてしまったからなんだ…」
「!? 過去の!?」
「え?ど…どーいうこと?」
「僕が過去に戻る時に、白蘭サンの手のものに発信装置を仕掛けられて、過去の白蘭サンにメッセージを伝えてしまったんだ…」
「ってことは、白蘭は、10年前からその能力を使えたの?」
「ああ」
「入江!!その間、お前は何をしておったのだ!!白蘭の悪事を知りながら、ほうっておいたのか!!」
「お兄さん!!」
「……」
すべてを知りながらも放置しておいたということになるので、了平は正一を責めるが、ツナがあわてて止めた。
「僕は、記憶を失っていたんだ」
「え!」
「記憶を…?」
「!?」
そこまで話すと、スパナの手当てをしていた京子達がやって来た。スパナは、いつのまにか戻ってきた山本とビアンキに肩をかつがれ、こちらに来た。
「8度目のタイムトラベルで、未来へ行った時、10年後の世界で、未来の僕が仕掛けた装置によって、タイムトラベルと、白蘭サンについての記憶を抹消されたんだ…。5年間ね…」
「ごっ、5年も!?未来の正一君は、何でそんなこと?」
「もちろん、白蘭サンを倒すためさ。未来の世界では、白蘭サンを倒せないと考えた未来の僕は、過去にさかのぼって、白蘭サンを消そうとしたんだ…。過去の僕をつかってね…。未来の僕は、過去の僕が白蘭サンに、余計な敵意などをもって怪しまれないように、記憶を消してから、白蘭サンに近づけようとした…。過去に戻った僕には、未来の自分の残した手紙が置いてあってね…。やるべきことの指示が書いてあるんだ…。バラされたくないことも書いてあるので、従うしかない…。君達に10年バズーカを当てたのも、その手紙の指示に従ってだ…」
「何も知らずに、オレ達を?」
「ああ…。そして僕は、手紙のススメの通り海外の大学へ進み、白蘭サンと友達になる。皮肉なことに、人生で一番楽しい時だったよ…。チョイスもこの頃つくったんだ…。
だが、5年がたち、僕は全てを思い出す。あの恐ろしいタイムトラベルと、荒れ果てたいくつもの未来をね…。更に、その元凶が白蘭サンで、自分の使命が、彼を阻止することだとわかり、パニックにおちいったよ…。
しばらくして、スパイとしてやっていく覚悟はできたが、自分の記憶と、この世界で起きている出来事を整理して、今いる自分の世界の状況を把握して、再び愕然としたんだ…。
なぜなら、考えられる全てのパラレルワールドの中で、今いるこの世界だけが、白蘭サンに滅ぼされていない世界だったからだ」
「え!?」
「なんだって!?」
「だって、パラレルワールドって、たくさんあるんでしょ?」
「ここ以外の全ての「もしも」の世界が、白蘭のものになっているということになるぞ!!」
いくつあるかわからない、たくさんのパラレルワールドは、ここ以外全て白蘭に支配されてると知り、ツナ達は驚愕する。
「その通りだ…。5年前の段階で、白蘭サンの能力による世界征服を阻止できる確率は、少なく見積もって、8兆分の1…」
「はっちょう!?」
「言いかえれば、世界征服をされていない、パラレルワールドの存在する確率でもある…。そして、その奇跡的条件を満たす世界が…8兆分の1の世界が、ここだったんだよ…。つまり、無数のパラレルワールドの中でもこの世界だけが、唯一、白蘭サンを倒すチャンスのある未来なんだ!!」
「そんなことって…」
「それは、未来のお前が、過去のお前に指示をしてつくった未来だからなんだな」
「それだけじゃない…。僕と綱吉君が、唯一、偶然出会えた世界でもあるんだ」
「オ…オレと!?」
「中3になった君の自転車のパンクを、僕が直すんだ…。だからこそ、この世界は、この後…奇跡的に、ボンゴレ匣がつくられる未来になるんだ…」
それはつまり、ボンゴレ匣があるのは、8兆分の1の確率のこの世界だけで、ちょっとした出会いと偶然の出来事で、変わっていった未来だとも言えた。
その事実に、魅真、山本、獄寺、クロームは驚いていた。
「それでお前は、白蘭を倒すには、この時代しかねえって言ってたんだな」
「ああ。他のどのパラレルワールドでも、7³は奪われ、ボンゴレファミリーも壊滅しているだろう…」
「……」
「壊滅…」
「そーいや、ヴァリアーとの戦いで現れた、20年後のランボが」
以前、リング争奪戦の雷戦で、20年後のランボが現れた時、20年後のランボは、「あなた達にまた会えるとは…。懐かしい…。なんて懐かしい面々…」と言っていたのだった。
「そ…そっか…。あれは、20年後のパラレルワールドで、オレ達が死んでるから…!!」
点と点がつながり、あの時ランボが言っていた言葉の意味を、ツナはようやく理解した。
「! って…この世界のオレも、結局殺されてるんだった…」
けど、そこまで言うと、この時代にタイムトラベルしてきた時、この時代の自分が入っていた棺桶を思い出し、沈んだ顔になる。
「それはちがうよ、綱吉君」
「!!」
だが、正一はそれを否定した。
「ミルフィオーレに射殺された時に使われたのは、"特殊弾"だ。僕がすり替えた。"死ぬ気弾"のような弾で、未来の君は仮死状態だったんだ」
「!! じゃあ、あの棺桶は……」
正一が否定すると、ツナは顔が明るくなる。
「敵の目をあざむく為の、カモフラージュだ……」
「!!」
「…10代目は、生きてた………」
「仮死状態ではあったが、彼は棺桶の中で、綱吉君が来るのを、楽しみに待ってたはずだ」
「!」
「彼は、処刑の前日に言ってたよ」
この時代のツナが言っていた言葉…。それは、「もうすぐ、一番可能性を持っていた頃の、オレが来る」だった。
「え!?」
「たしかに、経験も、体力も、知力も、今の自分よりはるかにおとる…。でも、あの時の自分が、仲間との毎日の中で、成長力と意外性がある、白蘭を倒せる、一番の可能性をもった自分だって」
「それならオレも同感だぞ。お前らの伸び盛りっぷりは、何度もミラクルをやってのけてきたからな」
「…じゃあ、未来のオレは本気で…この…10年前の…オレ達を…?」
「そうだ…。君達を待ってたのは、ボンゴレリング目的の白蘭サンだけじゃない…。むしろ、白蘭サンを倒せる君達を、誰よりも待ってたのは、この時代の綱吉君や僕だ!!」
「……選ばれたツナ達と…選ばれた時代か…」
「…難しくてよくわからない所もあったけど……それだけはしっかりわかった。なのに…負けちゃった…」
正一の話を聞き、改めて勝負に負けたことを実感したツナは、沈んだ顔になった。
それは、魅真達も同様だった。
「そんな大きな意味や、想いがあるなんて知らずに…」
ただ過去に戻るためだけだと思っていたが、思っていたよりもずっと深刻で、もっと大変なことだったので、ツナは顔が真っ青になり、冷や汗をかいた。
「そ。君達の負け♪」
その時、追いうちをかけるように、白蘭の声が聞こえてきた。
「僕の事、こんなによくわかっているのに、残念だったね、正チャン」
ツナ達の後ろには、道路の車線一つ離れたところに、白蘭と真6弔花が立っていた。
「白蘭!!」
「結局どの世界でも、僕には勝てないのさ」
確かにミルフィオーレは強いが、この戦いは、白蘭が最初から、すべての主導権をにぎっており、もっと言えば、チョイスを行うことを決定した時も、チョイスの業務連絡も、チョイスで選ばれたお互いの参加メンバーも、正一が無属性で参加することを許可したのも、ターゲットがデイジーと正一に決まったのも、すべては白蘭が有利になるように仕組まれていたかのようなものだったのに、白蘭はひょうひょうと言い放った。
「約束は守ってもらうよ。ボンゴレリングは全ていただいて…。君達はどうしよーかなー」
「待ってください!約束なら、僕らにもあったはずだ…」
「?」
「覚えていますよね……。大学時代、僕とあなたがやった最後のチョイスで僕が勝った……。だが、支払うものがなくなったあなたは、こう言った……」
大学時代の白蘭は正一に負けた後、「次にチョイスで遊ぶ時はハンデとして、正チャンの好きな条件を、何でものんであげるよ」と言ったのだという…。
「…今、それを執行します」
「……」
「僕は、チョイスの再戦を、希望する!!」
「!」
「!」
「うーん。悪いけど、そんな話、覚えてないなあ」
笑みが消えた白蘭の目は、本当は覚えてるが、しらばっくれてると言ってるようだった。
「! うそだ!!あなたが勝負事を忘れるなんて!!」
「ムシがよすぎるよ」
「でも、約束は約束だ!あなたはチョイスには誠実だったはずだ……」
「だから、そんな話なかったって。ない話は受けられないよ」
白蘭は、正一がどんなに訴えても、知らぬ存ぜぬをつらぬき通した。
「ミルフィオーレのボスとして、正式に、お断り♪」
そして、はっきりと断った。
「くっ…」
一縷の望みをかけたのに、断られてしまったので、正一とツナは苦い顔をした。
「私は反対です」
だがその時、ボンゴレのものでも、ミルフィオーレのものでもない、1人の女の子の声が聞こえてきた。
「!」
「!?」
それと同時に、リボーンのおしゃぶりが光り出し、全員何事かと、声がした方へふり向いた。
「白蘭」
その声の主は、ゆっくりと、ツナ達の方へ歩いてきた。
「!!」
「!!」
声の主を見ると、ツナと、特に白蘭は驚愕し、目を大きく見開いた。
「ミルフィオーレの、ブラックスペルのボスである私にも」
その少女は、リボーンと同じで、首におしゃぶりをさげており、そのオレンジ色のおしゃぶりは、リボーンと同じように光を放っていた。
「…お前は」
まさかと思ったリボーンは、おしゃぶりに向けていた顔を、少女の方へ向けた。
「決定権の、半分はあるはずです」
その少女は、長い黒髪で、黒と白のふくらんだぼうしをかぶった、全17部隊長ミーティングに出席していた少女…ユニだった。
「ユニ…貴様…!」
ユニの姿を目にすると、白蘭はわずかに冷や汗をかいて、ユニを、動揺した鋭い目で睨みつけた。
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