標的86 チョイスバトル
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「そうそう。バトルを始める前に、公平にジャッジする審判を紹介しないとね」
花火がなくなり、空が明るくなると、白蘭はまた別の人物を紹介しようとした。
「「我々におまかせを!」」
「「「「「!?」」」」」
そこへ、空から二人の女性の声がしたので、上を見ると、二人の人物が空から降りてきた。
ツナ達の前に着地した二人の人物…。
それは、かつては正一の部下としてメローネ基地にいた、チェルベッロだった。
標的86 チョイスバトル
「き…君達!!」
「チェルベッロ!!」
目の前に現れたのは、正一の部下だったチェルベッロなので、ツナ達…特に正一は驚いた。
「正一の話じゃ、いつのまにかミルフィオーレにいたらしいな。一体お前ら、何者だ?」
「我々は、ミルフィオーレチェルベッロ機関」
「それ以外の何者でもありません」
「ミルフィオーレの…チェルベッロ…?」
「ざけんな!!どのみち、敵の息のかかった審判じゃねーか!!」
リボーンの質問に対する、チェルベッロの答えに、ツナは困惑し、獄寺は文句を言う。
「この娘(こ)達は公平だよ。それがとりえなんだから。それより、ズルをしてるのは君達じゃないのかい?」
「!?」
ズルと言われても、何もルール違反はしていないので、ツナはなんのことかと思った。
「99.99%の殺気を消しているのは、見事としかいいようがありませんが、わずかに0.01%、あなた方の基地(ベース)ユニットから、人の気配を感じます」
「チッ」
桔梗がそう言うと、ボンゴレ側の基地ユニットの中から、スクアーロが舌打ちをしながら出てきた。
「スクアーロいたのーー!?」
「なんでそんなところに!?」
「なんだよ!来てたのかよ!!」
「来て悪いかぁ!!カスガキがぁ!!まぎれこんで、暴れてやろうとしただけだぁ」
「ハハハッ」
スクアーロの言い分に、ツナはかわいた笑いをした。
「立体映像(ホログラム)の君もだ、リボーン」
「!」
「ここには非7³線はないから、本体が基地ユニットから出ても大丈夫だよ」
「気が利くな」
リボーンはそう返しながらニッと笑い、白蘭もまた、同じように笑った。
「では、参加戦士(メンバー)は、基地(ベース)ユニットにお入りください。フィールド内のランダムな位置へ転送します。参加戦士(メンバー)以外の皆様には、各ファミリーそれぞれに、フィールド内に観覧席を用意しましたので、そちらへ」
「観覧席から、参加者への通信は禁止です。観覧席へは、各所に設置されたカメラからの映像と、我々の声と、味方の音声しか入りませんので、あしからず」
「なお、観覧席は、完全防壁で出来ており、観覧席への攻撃は反則とし、負けとなります」
「では、3分後に開始します」
「用意してください」
チェルベッロは、チョイスについての細かな説明をした。
そして、説明が終わると、それぞれ移動を始めた。
バトルに参加する、ツナ、獄寺、山本、正一、スパナは基地ユニットの中に入り、全員が中に入ると、チェルベッロが説明した通りに、どこか別の、ランダムな位置に転送され、バトルに参加しない魅真達は、最初に来た場所からほど近いところにある、ボンゴレ側の観覧席へと移動をした。
そこは、ホテルのロビーのようになっており、窓はガラスばりで、窓の上部には、ツナ達の様子が映しだされるテレビが、何台か設置されていた。
《3分たちました》
観覧席についてすぐに、テレビから、チェルベッロの声が聞こえてきた。
《それでは……チョイスバトルスタート!!》
いよいよバトルが開始されたので、魅真達は、全員テレビに目をやった。
基地ユニットでは、バトルに参加をするツナ達は、リング争奪戦の時のように、円陣をくんでいた。
円陣が終わると、正一が作戦を伝えるが、ツナをさしおいて指示するのが気にくわない獄寺は抗議した。
けど、ツナがそれでいいと言ったので、獄寺は唇をとがらせながらも承諾し、いよいよ出陣することとなった。
山本の合図で、ツナはまっすぐ、山本はツナの右隣に、獄寺はツナの左隣に走っていき、正一とスパナは、ツナ達とは反対側の、パソコンなどの機械がある方へ走っていき、ヘッドセットをつけると、正一はツナ達に指示を出した。
指示を出すと、ユニットのシートをはずし、出入口を三つ開け、そこからバイクに乗った、ツナ、獄寺、山本がとびだした。
外に出ると、ツナはそのまままっすぐ走っていき、獄寺は基地ユニットのすぐ前にある交差点を左に、山本は右に曲がっていった。
「すごーい!!みんなバイクにのってる!!」
「イメージしてた、マフィアの戦いとちがいます!!」
こういった戦いを初めて見る京子とハルは、口をあけて驚いていた。
「2サイクルエンジンだろ?電気バイク並に静かだな」
「私の発明した超高性能サイレンサーですよ。今回仕上げたバイクは、音だけでなく、炎の反応も、金属反応もしない設計です。敵のレーダーには、絶対に映らない、忍者のようなステルスマシンなのです!」
京子とハルの近くでは、ディーノがツナ達が乗っているバイクをほめると、隣にいたジャンニーニは得意げな顔で説明をした。
基地ユニットでは、スパナが正一の標的の炎にリトマス試験紙のようなものをあてて、成分分析を行っており、それが完了すると、正一はデータを囮(デコイ)に送信し、データを囮へ反映させると、ユニットの外側にある、上部のフタをあけた。
円形のフタがいくつも開くと、そこから、プロペラがついた、円柱型で透明の、正一と同じ晴の炎が入っている器がいくつも出てきて、空中へ飛んでいき、方々へ散っていった。
ミルフィオーレも、猿という男が手につけている小型のモニターで、正一の標的の炎が複数に増えて散っていくのをキャッチし、囮だとわかると、すべて消すために、各個撃破しようと、桔梗、トリカブト、猿は、3方向へ散っていく。
そのことにスパナが気づき、彼らの行動がわかった正一は、獄寺にその地点で待機するように指示を出すと、獄寺は指示通りに止まり、山本には、1ブロック先を左折した後に3ブロック先の交差点まで行き、迎撃パターンBをとるように指示。そしてツナには、速度維持で前進し、3秒後に停止するよう指示をした。
指示をすると、正一はカウントダウンを開始して、その後に、ツナにストップするように言うと、ツナはバイクを止め、そのすぐ後に、今度はダミーをあげるように指示を出した。
指示を受けたツナは、細長い筒のようなものを出して、ダミーをあげると、回避パターンFをとりつつ攻撃(アタック)という指示を受ける。
「入江殿には、まるで現場の映像が見えているかのようです」
「伊達にメローネ基地の指揮官だったわけじゃないな」
「やる時はやる男だぞ。正一は」
的確な指示を全員に出す正一を、バジルとディーノは称賛し、リボーンはニッと笑う。
同じ頃、ツナが止まった場所の上空では、ビルの影にツナを発見したトリカブトが、手のひらにうめこんでいるリングに炎を灯し、それをツナに向けて撃った。
だが、それは先程あげたダミーで、本物のツナは、素早くトリカブトの後ろに回り込んだ。
「ツナ君!」
「はひっ。飛んでます!!」
ツナがトリカブトの後ろから現れ、飛んでまっすぐ向かっていく姿に、京子とハルはまた驚いていた。
ツナは勢いをつけて、トリカブトの腰に拳で一撃いれると、トリカブトはふっとんでいき、目の前のビルの窓ガラスに激突した。
激突しても壊れないので、ツナがふしぎに思っていると、ツナの後ろから現れたチェルベッロ達が、ビルが雷属性の硬化の炎でコーティングされているので、通常のビルの20倍以上の強度を誇っていることを説明する。
窓に激突したトリカブトは、そのまま下にずり落ちていき、同時に、窓ガラスに何か黒いものがはりついた。
そして、トリカブトがツナに声をかけると、その黒いものが窓からはがれ、更にはトリカブトのマントが細かくちぎれ、ちぎれたものはツナに向かっていくと、トリカブトとツナの間で、8の字を描きながら空中を浮遊した。
その浮遊しているものの正体は、霧の炎をまとったウミヘビだった。
「ウミヘビだ!!」
「ん…」
その時、ハルに抱きかかえられているランボが目を覚まし、偶然にもテレビの画面を見た。
「ぐぴゃー!!!」
けど、見た途端に叫び声をあげた。
テレビに映っているトリカブトは、頭と背骨だけを残して飛んでいるという、ホラーそのものだったからだ。
「オ・バ・ケへ~」
「ランボちゃん!」
そして、目覚めたばかりなのに、白目をむいて気絶してしまった。
「幻術なのか…!?しかし、幻術ならば、モニターには映らないはず!」
「アホガキがぁ」
「!」
「強力な幻術は、機器をも翻弄する。しかもこいつは、幻術と匣兵器の併用だぁ。相当できる術士だ」
トリカブトは、暗殺部隊の隊長のスクアーロですら認めるほどの、霧の術士だった。
8の字を描いて浮遊しているウミヘビは、トリカブトの言葉を発した後に、ツナに襲いかかってきた。
しかも、雷属性の炎をまとっており、ツナがよけると、ビルを貫いた。
「超硬度のビルを貫いた!!」
「ウミヘビに、わずかだが、雷属性の"硬化"の炎が見える。あのトリカブトという術士、獄寺と同じように、複数の炎を扱えるのか」
ウミヘビが直撃したビルは、真っ二つになって崩れ落ちると、ウミヘビはツナの方に戻ってきて、更に後ろからも遅いかかってきた。
ツナは後ろからくるウミヘビを、炎の力でなんとかよけるも、別方向から来たウミヘビに行く手をはばまれてしまった。
ウミヘビは鉄の棒のように伸びて、ツナの四方を囲い、檻のようにツナを中に閉じこめた。
しかも、間隔までせばまっていく。
その時、腰につけているボンゴレ匣が揺れ動くと、ツナはボンゴレ匣を開匣した。
中からは、小さなライオンが出てきた。
「あの子がツナ君の匣兵器!」
「キュートです!!」
「本当!かわいい」
ツナにナッツと名前を呼ばれた天空ライオン(レオネ・デイ・チエーリ)を見ると、魅真と京子とハルは、ナッツのかわいさに目を奪われた。
「(クソボスと同じ、大空属性のライオン…。だが、細部の形状が異なる…)」
一方でスクアーロは、XANXUSが持つ天空ライオンと、ツナの持つ天空ライオンを見比べていた。
それもそのはずで、XANXUSがもつ天空ライオンは、めずらしい白いライオンとトラの混血のライガーと呼ばれるもので、外見も野生にいるようなタイプのものだが、ツナのは、手のりサイズで、マスコットのような顔つきをしているからだ。
ナッツが吠えると、ウミヘビの檻は石化し、ツナはそこに体当たりをして外に出た。
そして、そのままトリカブトにとどめをさそうとするが、トリカブトの背後のビルにひびが入ると、そこからまた、ウミヘビが矢のごとく襲いかかってきた。
「ビルの中から!!」
「ツナさん!!」
「まだだぞ」
京子やハルやビアンキは、ツナが心配になったが、ガラスの破片がツナの頬をかすめる様子を見ても、リボーンは心配していなかった。
よけきるのは無理と判断したツナは、ナッツに声をかけた。
「ツナの修業は、最後まで見たのか?」
「! いいや、忙しくてな……」
「んじゃ、見てんのはオレだけか」
リボーンがディーノに問うと、ディーノは最後までツナの修業を見れなかったようで、それを聞いたリボーンは、口もとに笑みを浮かべる。
ツナはナッツに、形態変化(カンビオ・フォルマ)防御モード(モード・ディフェーザ)と言うと、ナッツが額につけている、テニスキャップのようなものに描かれたボンゴレの紋章が強く光り、ナッツが吠えると目は鋭くなり、黒目の部分が3つ並んでいるような目になり、その後に、ツナの左手のグローブに、ボンゴレのエンブレムの上にⅠと書かれた盾が現れた。
すべてのウミヘビがツナに襲いかかっていき、ツナに突き刺さると、まるで細長いウニのような形となる。
「さ…沢田殿!!」
この惨状に、京子、ハル、フゥ太、ジャンニーニ、バジルは、顔を青くする。
「ボンゴレ匣ってのはな」
「!」
「匣アニマルが、武器そのものになる、ボンゴレが、独自に改造した匣兵器なんだ。しかもその武器は、初代ボンゴレファミリーのものだ。ツナの天空ライオンのこの形状は―――
すべてに染まりつつ、すべてを飲み込み、包容する大空。Ⅰ世のマント(マンテッロ・ディ・ボンゴレ・プリーモ)!!!」
ナッツは初代ボンゴレのマントへと形を変え、ツナはそのマントのおかげで、無傷で助かったのだった。
「ボンゴレⅠ世のマント!!」
「マントで…攻撃を防いだの?」
「大空属性の特徴、"調和"により、ウミヘビをビルと同じコンクリートにして、攻撃を無効化したんだぞ」
攻撃を防ぐと、ツナはナッツにお礼を言い、ナッツはもとの姿に戻る。
そして、トリカブトのもとへ飛んでいくと、トリカブトもツナの方へ向かっていき、ツナに噛みつこうとする。
しかし、ツナはその攻撃をよけると、トリカブトの後ろにあるビルに着地し、もう一度トリカブトに向かっていくと、トリカブトの首に、左手で打撃を与えた。
その後、炎圧の高いパンチでトリカブトを殴りとばすと、トリカブトはビルを貫き、地面に直撃し、めりこんだ。
トリカブトを倒すと、京子、ハル、ビアンキは驚いており、魅真、リボーン、ディーノ、スパナは、うれしそうな顔をした。
トリカブトを倒したツナに、正一は連絡をとった。
ツナは正一に称賛されるが、標的を倒さなければ勝利とはならないことを、正一に確認する。
そのことに正一はうなずき、いつのまにか後ろにやってきたチェルベッロが答えた。
チェルベッロの答えに、勝利条件となる、標的のデイジーを倒しにいくために、空中から敵の標的に向かおうとしたが、正一に止められ、炎を消してバイクで向かうように指示された。
「常に最悪の事態を考えて手をうつ。やるな、正一」
正一がツナを止めたのは、敵が2人以上残ってると、はさみうちにされる危険性があるからで、リボーンは正一を称賛した。
一方で、スパナは山本の近くに敵が接近しているのを確認し、正一は山本に、敵は視認できるかどうかを聞いた。
山本の目の前には囮が2つ飛んでおり、その囮には異変はなかった。
山本は今のところは見えていないが、正一は炎反応を確認しているので、恐らく幻覚で姿を隠しているということと、敵は囮を撃破してくるはずなので、山本の刀が届くところまで囮の高度を下げて近づけるから、敵が囮にひきつけられている隙を逃さずに、先制攻撃をするよう指示した。
その時、山本は何かいるのを感じとった。
山本から応答がないので、正一が山本に声をかけると、何かいることを正一に告げて、バイクからおりた。
そして、なるべく敵にみつからないように、ビルの壁にピタリと体をくっつけて、刀を構え、近くまで来た囮を注意深く見ていると、上空にある囮の炎が一瞬揺らめくと、何かが囮から四方にとびだしたので、山本はそれを破壊しようとした。
すると、今度は目の前の囮から植物のつるが出て、囮を破壊すると、あっという間に巨大化した。
山本がそれを見ていると、今度は地面から植物のつるが出てきて、山本の足に巻きつき、更にそのつるの一部から、分裂したように生えて伸びたつるが、山本の刀をはじいた。
刀はとばされ、回転しながら宙を舞って、山本から離れた山本の後ろの地面につきささり、竹刀に戻った。
そしてその直後、先端が鋭い矢に変化したつるが、両側から2本ずつ、計4本山本に襲いかかってきたが、山本はなんとかよけた。
だが、その勢いで仰向けに倒れ、つるは山本の顔の横すれすれのところにささった。
その時、囮から現れ、巨木のようになった植物のつるから、猿が現れた。
しかも、猿は山本のことを知っていた。
それは、猿の正体が、魅真と山本と雲雀とツナがメローネ基地で戦った、あの幻騎士だったからだ。
「!」
「あいつは……幻騎士…!!」
「とんでもねーのが紛れてやがったな」
相手はもと6弔花の幻騎士だったので、魅真達は驚いた。
幻騎士は山本に、ツキのない男だと見下し、とどめをさそうと剣をふりあげると、剣を何度かふって攻撃をした。
だが、山本は対抗するために、ボンゴレ匣を開匣する。
「ツイてねえのはてめーだぁ、幻騎士」
ボンゴレ匣を開匣した山本は、束縛していた植物のつるから逃れ、雨の炎で形づくられた刀を両手に持ち、幻騎士にリベンジができるので、うれしそうな笑みを浮かべていた。
そして傍らには、雨燕ではなく、山本のひざよりも少し低いくらいの犬が、山本が持つ刀と同じ刀をくわえていた。
山本のボンゴレ匣を見た幻騎士は、それが山本のボンゴレ匣なのかと聞くと、山本は能天気にも、匣兵器の自己紹介をする。
その犬は秋田犬で、小刀3本の面倒をみてくれてるのだという。
山本が次郎の体をなでると、次郎も山本の頭を甘噛みしてじゃれていた。
「わぁ、かわいいワンちゃん!」
「すごい甘えっぷりです」
「(確かにかわいいけど……。でも、武君の匣兵器って…犬じゃなくて、燕だったのに…)」
「(あのカスガキ……。くだらねぇより道してんじゃねぇ!!)」
京子とハルは、ナッツの時同様に次郎に目を奪われていた。魅真もかわいいと思ったが、中から出てきたのが、雨燕ではなく秋田犬だということに疑問を抱いており、スクアーロは呆れはてて、顔を右手でおさえていた。
次郎の自己紹介をすると、山本は、本当は幻騎士みたいに刀4本使うので、能天気にも、4本目とりに行っていいかと幻騎士に尋ねた。
その様子に幻騎士は、多少は成長したことを認めたが、それでも、一度攻撃を凌いだだけなので、図にのるなと怒ると、山本を幻海牛で攻撃した。
「(目に見えねぇ、幻海牛(スペットロ・ヌディ・ブランキ)のミサイルがくるぞ!)」
4本目はとれてないし、攻撃もくるが、山本は冷静で、右手に持っている1本の小刀を空中で回転させると、それをとり、炎を灯して鍔の先から雨の炎を出して、それをツナのグローブのように使い、後ろに移動よけると、後ろにあった時雨金時をとり、もう1本の小刀を使って、同じように雨の炎を灯して飛んで、幻騎士と距離をとり、回転しながら下に降りていくと、着地する前に、2本の小刀に炎を灯して、幻騎士のもとへ直進しながら、時雨金時を刀に変形させ、幻騎士に斬りかかった。
幻騎士は剣で山本の刀を防ぐが、顔や頭を検圧で斬られてしまった。
そして、刀をはじくと、幻覚の植物のつるを山本の周りに発生させ、檻に閉じこめるように囲った。
「!! 幻騎士が消えた!!」
円状に発生した植物のつるは、山本を閉じこめて、その上幻騎士の姿が消えてしまったが、それでも山本はあわてず、リングに炎を灯す。
その時、見えない幻海牛がとんできたが、また小刀でよけた。
「山本の奴、飛んで戦えるようになっただけでなく、リングの炎で、幻海牛の位置を察知できるようになってるな」
「武君…。前と全然ちがう……」
「でも、相手が見えなければ、攻撃を与えられないわ!!」
ビアンキは焦っていたが、スクアーロは不敵は笑みを浮かべていた。
幻海牛の攻撃が続くが、山本はよけ続け、爆発で起こった煙の中から出ると、持っていた2本の小刀を投げつけた。
小刀は、幻騎士の顔の両隣に刺さり、自分がいる場所を見破られたことに、幻騎士は驚いていた。
そして次郎が、持っていた3本目の小刀を投げて渡すと、山本はそれを受けとり、そのまま幻騎士にむかって時雨金時をふり、つるを破ると同時に幻騎士の腹を切り、幻騎士の腹からは、真っ赤な血がふきだした。
「すごい!!」
「!」
幻騎士をものともせずに、流れるような攻撃をする山本を、フゥ太は称賛し、雲雀も目を見張る。
山本は、幻騎士を斬ると地面に着地し、幻騎士も同時に着地をした。
幻騎士は、完全に幻海牛と同調した自分の幻覚を見破るなどありえないと、腑に落ちない様子だったが、山本は、作戦が成功したので笑っており、次郎に気をとられて、上の方には気がいってなかったみたいだと種明かしをする。
山本に言われて上を見てみると、上空には雨燕が飛んでいた。雨の炎を幻海牛が作った巨木にまいていたので、鎮静の作用で幻海牛の動きはどんどん鈍くて遅くなるが、幻騎士自身のスピードは変わらず、ズレが生じたので、幻覚の動きのあっていないところから、幻騎士がいた位置をみつけたのだという。
「幻覚の動きの合ってないところが、幻騎士の位置ってわけだな」
山本の説明に、リボーンは納得したように笑っていた。
幻騎士の疑問に答えると、山本は、また能天気にも、今度は自分の指にとまった雨燕…小次郎の紹介をした。
「(そっか。メローネ基地に突入した時の匣は、雨燕だけだったけど、ボンゴレ匣には、あの秋田犬も一緒に入っていただけなのね)」
今の山本の説明と匣兵器の紹介で、何故ボンゴレ匣に入っていたのが、秋田犬だったのかがわかり、魅真は納得をした。
「次郎と小次郎だって!おもしろーい!!」
「すごいネーミングセンスですね…」
近くにいる京子は、雨燕と雨犬の名前に笑っていたが、ハルはどこか唖然としていた。
雨燕が再び空に飛ぶと、山本は立ち上がり、オレ達の本気はこれからだと、不敵な笑みを浮かべ、その笑みを見た幻騎士は、以前の山本じゃないと確信する。
「匣兵器にも驚くが、それを使いこなす、山本の成長がハンパねぇぜ」
「ああ。今までにねえ気迫が、奴の剣を、これまでとは別次元の強さにしてんな。一体何があったんだ?」
「剣への覚悟だぁ」
「「!」」
「あのカスは、超一流剣士に必要な素質を十二分に備えているが、一つだけ弱点があった。剣士になりきれねぇ甘さだぁ」
リボーンとディーノの疑問に、後ろにいるスクアーロが説明した。
今話したことは、数日前に、山本を殴って気絶させた後、山で野宿をしている時に話したことだった。
スクアーロは言った。本当に強くなりたいのなら、野球か剣か、どちらかを選べと……。
すると山本は、なんの迷いもなく、剣一本でいくと答えた。
でも、それは期間限定だと言い、スクアーロは納得できずにいた。
「動機と期間が気にいらねぇが、全てを剣に捧げるその覚悟が、奴を本物の剣士にした」
「2択を迫られ、剣を選ぶってのは、初代雨の守護者そのものだな」
「! 初代ボンゴレファミリーのですか?」
「ああ。奴の剣は、世紀無双と言われ、その才能は、誰もが認めるところだったが、本人は何より音楽を愛し、自分の剣を一本も持たなかったという。だがある時、異国の友であった、ボンゴレⅠ世のピンチを聞きつけた奴は、なんの躊躇もなく、命より大事な楽器を売り、武器と旅費にかえて、助けに向かった。友のために、全てを捨てることをいとわなかったんだ。楽器とひきかえに作った奴の武器は、3本の小刀と1本の長刀だったという」
リボーンが初代雨の守護者について話していると、山本は小次郎に、形態変化(カンビオ・フォルマ)と叫んだ。
小次郎は一回鳴くと、まっすぐに山本に向かって飛んでいき、その途中で、ナッツと同じように、目は黒目が三つならんだ状態になり、時雨金時と合体した。
「時雨金時とツバメが合体した!!」
「あれは長刀だ。やはり山本のボンゴレ匣は
すべてを洗い流す、恵みの村雨と謳われた、浅利雨月の変則四刀!!!」
形態変化し、雨燕と合体した時雨金時は、柄が西洋の剣のようになり、ボンゴレのエンブレムの上にⅠと刻まれたひし形の鍔に、雨燕の羽根がついた、雨の炎をまとった刀だった。
「燕と時雨金時が合体して…長刀(ロングブレード)に!!」
「あれが、山本殿のボンゴレ匣!!」
山本は形態変化すると、準備ができたと幻騎士に声をかけた。
幻騎士は、全力で葬るに値する剣士と認めてやると、どこか上から目線で言うと、ヘルリングを使った。
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