標的85 チョイス
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「てめーらおせーぞ!!」
匣が開匣されると、獄寺は、いきなり山本と雲雀に文句を言った。
しかし、本当に間一髪のところだったので、獄寺が文句を言うのも、無理はないことだった。
「わりーわりー」
「僕は個人として来てるんだ」
「キュ」
「君達とは関係ないよ」
「ちっ」
山本は素直に謝るが、雲雀は謝るどころか、悪びれもしなかったので、獄寺は舌打ちをした。
「だが沢田、よく来るとわかったな!!」
「…いや、わかってたのは全員揃わなくては、白蘭には勝てないということだけだ」
ツナの言葉に、魅真と山本は微笑み、獄寺、クローム、了平は、目を丸くしており、雲雀は目を細め、リボーンはニッと笑っていた。
「うん、いいねぇ。見事500万FVを超えて合格だよ」
一度は炎の威力で消えて、ゼンマイだらけの機械になってしまったが、白蘭の顔に戻った。
指定した数字の倍の数字を出したので、リボーンだけでなく、白蘭も笑みを浮かべる。
「じゃあさっそく、チョイスをはじめよう」
「ああ」
死ぬ気の炎を転送システムにぶつけて合格をもらうと、いよいよチョイスの開始となった。
「まずはフィールドの"チョイス"をするんだけど」
白蘭がそう言うと、白蘭の右頬のあたりから、たくさんの何かが、ツナ達のもとへ向かっておりてきた。
「君達の、そのすばらしい炎を讃えて、フィールドのチョイス権は、君達にあげよう」
「!」
それは、トランプより少し大きめのカードで、列になってとんできた。
何列にもなってとんでくるそのカードは、ツナの前にやってきた。
「? 何かしら?」
「トランプ…ですか?」
「正チャンから、チョイスのルールは聞いてるだろ?チョイスとは、選択のゲーム。戦うフィールドと戦士を、最初にチョイスしなければはじまらない。人のもつ、運命によってね。
さあ、そのカードを一枚ひくんだ、綱吉君。それが君自身の"選択(チョイス)"だ」
「しかし、敵のつくったカードでは…」
「大丈夫!白蘭サンは、チョイスでだけは、不正をしない男だ」
「よし。チョイスしよう」
ツナは、動き続ける目の前の列のカードに手を伸ばすと、その中のカードを一枚手にとった。
ツナが手にすると、カードは光り、絵と文字が浮かび上がる。
「お」
カードに何かが浮かびあがると、白蘭は目を見張った。
「フィールドのカードは、雷」
カードに浮かび上がったのは、大空属性の雷のマークと、FULMINEという文字だった。
「じゃあいこう」
フィールドのチョイスが終わったので、いよいよチョイス会場へ行くこととなった。
白蘭の合図とともに、装置は強く光り、ツナ達も、基地ユニットも、匣兵器も宙に浮かびあがる。
そして、より強い光が装置から放たれると、その先に見える装置へ向かっていった。
標的85 チョイス
白い雲が浮かぶ、青い空。
その青い空には、先程ツナ達が向かっていった装置が、魔法陣のように大きく描かれており、そこから複数の光が、矢のようにまっすぐおりてきた。
結構な早さでおりてきたが、その光は地面に激突することなく、真下にある床に降り立ち、その際に煙が起こった。
「ぐ」
「きゃっ」
「お~…いて~!!」
降りてきたのはツナ達で、ツナはハイパーモードからもとのツナに戻っていた。
ツナはうつぶせになってしまい、多少の痛みを感じたが、特にケガをしているということではなかった。
「み…みんな、大丈夫?」
「ええ」
「こっちも大丈夫です!!」
ツナは起き上がり、全員に無事を確認すると、全員問題ないようだった。
「ボス…。何か埋まってる」
「え?」
クロームの前に、何か黒いものが埋まっていたので、クロームはツナに声をかける。
「それ、ランボだよ」
「あ」
「いたい~~」
ランボだけ床にめりこんでしまい、ケガはないようだが、痛みを感じたランボは、いつものように泣きだした。
「しかし、本当に、すさまじい炎を消費してんな。瓜が匣に戻っちまった」
並盛神社で炎を灯した時、全員で1000万FVもあったのに、全員の匣兵器が、匣に戻ってしまっていた。
「やっ♪ようこそ、チョイス会場へ」
そこへ、着地した際に起こった煙の向こう側から、白蘭の声が聞こえてきた。
「びゃっ、白蘭!?」
白蘭の声がすぐ近くで聞こえたので、ツナは警戒して、声がした方へ顔を向ける。
「んな!?」
ふり向いたその先にあるものに、ツナは驚く。
「「え?」」
「………」
「これは…一体…」
「な…なんということだ」
「ここは…」
段々と煙が晴れていき、ツナだけでなく、魅真達も、目の前にあるものを見て驚いた。
「超高層ビル群の、ド真ん中!!!」
ツナ達が目にしたものは、たくさんの高層ビルだった。
「何度も会っているような気がするけど、僕と会うのははじめてかい?綱吉君」
そして、目の前には、白蘭と真6弔花がいた。
「でっ、でたー!!白蘭と真6弔花!!」
ホログラムや映像では見たことあるが、本物を目にしたのははじめてで、ツナは本物の白蘭達を見て、すでに腰がひけていた。
近くでは、戦闘員ではなくても、白蘭達の恐ろしさを感じたのか、京子とハルは、背筋が凍っていた。
「ここで戦闘をするからね」
「!」
「いいロケーションだと思わないかい?」
「こ、こんな人の多い所で、戦えるわけないでしょ!!」
「そう言うと思って、人は、ぜーんぶよけといたよ。ここには僕ら以外、人っこ一人いないんだ」
今ツナ達がいるところは、周りのビルとくらべると、比較的低いビルの屋上の、ヘリポートがある場所だった。
高層ビルがところせましと建っているので、人がたくさんいるかと思われたが、実は、ツナ達以外の人間は誰もいなかった。
「!?」
「どういうことだ?」
「おって説明するよ」
獄寺に聞かれても、白蘭ははぐらかして、何も答えなかった。
「なはーんだ。ちびっ子ばっかりじゃない」
その時、白蘭の左隣にいたブルーベルが、右手で口をおさえながら笑い、左手を上にあげた。
「こんなのぜ~んぶ、ブルーベル一人で、殺せちゃうもんね」
上にあげた左手は、雨の炎の槍に変化した。
「!」
「!」
「!」
「ひい!!手がー!!」
手が槍に変わると、ツナはますますびびった。
「ハハンッ。あわてないで、ブルーベル」
だが、白蘭の右隣にいる桔梗が、ブルーベルに向けて、何かをとばした。
「ニュ」
「白蘭様が楽しみにしておられたお祭りなのですよ。ゆっくり楽しみましょう」
そのとばした何かは、ブルーベルの技を封じるように、ブルーベルの左腕に巻きついた。
しかも、桔梗の左腕が、そでの中になかった。
「こ…今度は何!?」
「人間技じゃ…ない…」
「マグマ風呂といい…こいつら人間じゃねーのか!?」
あまりにも彼らが人間ばなれしているので、ツナ達は驚きの連続だった。
「フン」
しかし、まったく驚いていない雲雀は、彼らの技を見て、すでにやる気満々でトンファーを構え、リングに炎を灯す。
「ハハンッ。どうやら、私と同じ雲属性の守護者は、学生服の君のようですね。私は桔梗。お見知りおきを」
「すぐにはじめようよ」
「だーから、ダメなんだって。ひっばーりチャン♪」
しかし、そこを白蘭に止められる。
「次のチョイスをはじめなきゃ」
雲雀を止めると、白蘭は、どこからかジャイロルーレットをとりだした。
見た目がガラガラのようで、上部には、オレンジ色の、大空属性の死ぬ気の炎が灯っていた。
「!!」
「なっ、何アレ?」
「(あれは、ジャイロルーレット?)」
「みんなが見やすいように映しだそうね」
白蘭がそう言うと、全員の両サイドに、画像が映し出された。
スコアボードのような形のもので、ツナ達から向かって、左側には、上部にボンゴレの紋章が描かれており、その下の行には、ボンゴレの紋章、晴、霧、雲、雨、雷、嵐、四角のマークが描かれ、右側には、上部にミルフィオーレの紋章が描かれており、下の行には、ミルフィオーレの紋章、晴、霧、雲、雨、雷、嵐、四角のマークが描かれていた。
「なんだ、この記号の羅列は……。紋章に…属性?」
突然映し出された、何がなんだかよくわからないものに、獄寺は目を見張る。
「リングの手を歯車の側面にそえて、綱吉君」
「え…?」
「ほら、こうするんだ」
ツナがよくわからない様子だったので、白蘭は手本を見せるように、8段のたくさんの数字が並んでいるところに手をそえてみせた。
ツナは、白蘭がやったように、数字がならんでいるところに手をそえた。
「こ…こう?」
「チョイスのかけ声で、歯車を右に回すよ」
けど、白蘭はツナが言ったことには答えず、淡々と進めていった。
「え…ちょ、ちょっとまっ…」
ツナは心の準備ができていないのか、とまどった様子で声をかける。
「チョイス」
しかし、白蘭はまたしてもツナの言うことなど聞かず、勝手に進行してしまい、歯車を回す。
「わっ」
いきなりのことに、ツナはうまく回すことができず、手が数字の列に軽くふれただけで、白蘭だけが回した、ジャイロルーレットの歯車の側面にある数字は回り出した。
「!?」
一体なんなのかと見ていると、次第に速度が弱まっていき、ジャイロルーレットに描かれている紋章や属性の隣の枠に、数字が止まっていった。
「ん。止まるね」
画像には、ボンゴレの方は、ボンゴレの紋章、雨、嵐が1、四角が2、晴、霧、雲、雷は0。ミルフィオーレは、晴と雲が1、霧が2、ミルフィオーレの紋章、雨、雷、嵐、四角は0という数字が、紋章や各属性の隣に映し出された。
「これで決まったからね」
「!?」
「バトル参加者♪」
今のは、チョイスに参加する者を決めるためのもので、参加者が決まると、白蘭はその顔に笑みを浮かべた。
「な…何なの!?なんか数字が並んでる…!」
「属性マークの横に…。そうか…!!各属性の参加人数!!」
「さすがいい勘してるね、正チャン。そ♪ジャイロルーレットでチョイスされたのは、実際にフィールド内で戦う、各属性の戦士の数だよ」
「!! 属性によって、人数ちがうのかよ」
「でも、ボンゴレとミルフィオーレで合計がちがう?」
「これがチョイスの醍醐味だよ♪ボンゴレは、大空に嵐に雨が一名か~。いい引きしてるじゃないか、綱吉君」
「おい待て!!だったら、一番下の、□はなんだ!?あんな属性見たことねぇ!」
「ん?」
大空属性のマークに、四角はないので、獄寺は指摘する。
「あぁ、あれは無属性。つまり、リングを持たぬ者を示しているんだ。君達は"2"だから、二名を選出しなくちゃならない」
「それで、全員つれてこいってわけだったんだな」
先日、白蘭が何故、京子達もつれてこいと言ったのか、リボーンは腑に落ちた。
「みんな戦いに参加なんて……そんな!!」
闘うことができない京子やハルを巻きこむことになるので、ツナは驚愕し、同時に焦った。
「「キャッ」」
その時、後ろの方にいる京子とハルが、短い悲鳴をあげたので、ツナ達は後ろへふり向いた。
「あ!!いつのまに!!」
「何なの、あなた!」
そこにいたのはデイジーで、デイジーはいつのまにか、京子とハルの前までやって来ていた。
いきなり目の前までやって来たので、京子とハルは怖がり、ビアンキは2人の間に立って、かばうように2人の肩を抱きよせる。
「僕チン……デイジー……」
けど、デイジーはおかまいなしに、京子とハルに話しかけた。
「これ……あげる」
そう言ってデイジーは、炭のように黒いボロボロの花を京子に差し出し、その花にすら、京子は恐怖した。
「ハハンッ」
すると、桔梗の笑い声とともに、空気を切るような音が響いた。
「ガハァ」
「「キャーーッ!!」」
音がした後に、先程ブルーベルの技を封じた長いものが、デイジーの首に巻きつく。
「スイマセンね。ちょっと目を離したスキに。デイジーは、あなた達のように美しく…」
その巻きついたものごと、デイジーを自分のもとにたぐりよせると、桔梗は京子とハルに謝罪をする。
「滅びゆくものに目がないんです」
しかし、桔梗の言ってることもまた恐ろしく、笑みを浮かべる桔梗に、京子とハルは、ますます恐怖した。
「何なの、この人ー!?」
「くっ」
今のを見ていただけで、ツナはびびり、京子に危害が加えられそうになったので、了平は焦った。
「さーて、それじゃあ、お互いの参加戦士(メンバー)を発表しよっか。あ、ここは唯一相談して決められるとこだからね」
話がひと段落したので、白蘭は変わらず笑みを浮かべながら、次に進めようとした。
「白蘭サン…。リングを持たない僕は…無属性でいいですよね!」
すると、そこへ正一が前に出て、白蘭に打診をした。
メローネ基地では、隊長として、晴のリングを使って、匣の操作をしていたので、少々無理があるかもしれないが、それでも今はリングを持っていないので、正一は白蘭に願い出たのだった。
正一は冷や汗をかきながら白蘭の返答を待ち、白蘭の顔からは笑みが消えたので、正一と白蘭の間には、緊張が走った。
「んん。ま、特別にいいかな」
正一が打診をした時は、笑顔が消え、真剣な目で正一を見ていたが、すぐに笑顔に戻り、許可を出した。
「だったら綱吉君、僕らのメンバーは決まりだよ」
「え?」
「ボンゴレの参加戦士(メンバー)は―――
大空に綱吉君。
嵐は獄寺君。
雨は山本君。
無属性は僕と、スパナが適任だ」
「おい待て入江!!だれがてめーの指示に従うかってんだ!ボスは10代目だぞ!!」
正一が、ツナをさしおいて勝手に決めてしまったので、獄寺は怒って抗議をする。
「だがオレも、全員戦闘経験者の、このメンバーでいいと思うぞ」
「なっ、リボーンさん」
けど、リボーンがいいと言ったので、獄寺は勢いがなくなった。
「待たんか!」
だが、もう1人異議を唱える者が現れた。
「オレが出れんのはおかしいではないか!!極限に、我流と修業をしたんだぞ!!」
それは了平で、選ばれなかったことが不服な了平は、噛みつくように抗議をした。
「ここは我慢してくれ。条件は向こうも同じ。これがチョイスなんだ。それにジャイロルーレットの結果は決して悪くない!!向こうは一人少ない上に、白蘭サンも出られないんだ!!」
けど、正一は冷静に了平を説得した。
「そんな理由で納得すると思ってるの?僕は出るよ」
だが、またもう一人、この結果を不服に思った雲雀が、トンファーを構えて参加することを宣言した。
「ひっ、ヒバリさん」
「ちょっ、そんなこと言われても」
よりによって、一番やっかいな雲雀が出てきたので、ツナも正一もあわてた。
「待てって恭弥」
そこへ、基地ユニットの中から、雲雀を止める者が出てきた。
「ったく、しょーがねー奴だなぁ」
「ディーノさん!」
それはディーノだった。
「なんでディーノさんが、この場所に…?」
「いつのまに!?」
「転移(ワープ)の時にまぎれこんだんだ。ずっといたぜ。おまえらの家庭教師なんだ。こないわけにはいかねーだろ?」
ボンゴレファミリーでも、過去からやって来た人物でもないのに、何故かここにいたので、その疑問を、魅真とツナがぶつけると、ディーノは、その経緯を簡単に説明する。
「びゃくらん、何アレ?」
「はね馬ディーノ♪」
ミルフィオーレ側では、ブルーベルが白蘭の服をにぎりしめて、少々警戒をした様子で、白蘭にディーノのことを聞くと、白蘭は簡潔に答えた。
「考えてみろよ。ツナ達がミルフィオーレに勝てば、その後は、どいつとでも、好きなだけ戦えるぜ。少しの辛抱じゃねーか。なっ」
「………」
ディーノは雲雀の隣までやって来ると、雲雀を説得し、そう言われると、雲雀は少し考えこんだ。
「急いでよ」
「ああ、わかった」
「(ディーノさん、ヒバリさん説得するの、うまくなってるー!!)」
一番やっかいではあるが、結構素直なところもある雲雀は、あっさりと納得したのだった。
「それによかったじゃねーか」
ディーノは説得した後、今度は顔を雲雀の耳によせ、小さな声で話しはじめる。
「何が?」
顔が近くなったので、雲雀は不快そうな顔をした。
「もしも、雲属性も参加しなきゃいけなかったら、魅真が、自分が出るって言ってきかなかったかもしれねえぜ。とりあえず、バトル中だけでも、魅真の安全は保障されるしな」
雲雀が不快感を感じていたのはわかってたが、それでもディーノは構わず続けた。
その説得力のある言葉に、雲雀は魅真の方へ顔を向けると、そうかもしれない…と、更に納得をした。
魅真は、雲雀がいきなり顔を向けたことにドキッとし、頬を赤くする。それは、乙女心半分、気まずさ半分といったところだった。
「ツナ、お前が決定しろ。そのメンバーでいいのか?」
ディーノは雲雀から顔を離すと、今度はツナの方に向け、決定をゆだねた。
「え…。は…はい!」
ディーノに促されてだが、自ら決定をくだしたツナを見て、リボーンはニッと笑う。
「ところで、ジャンニーニはいいの?スルーされてるけど。同じ無属性で、メカニックの、スパナが選ばれちゃったけど」
「ヨヨ…」
迷うことなく、無属性は正一とスパナが選ばれたので、フゥ太は聞いてみた。
「ざ…残念ですが、仕方ありませんね♪まかせましょ!!」
「(本当は出たくないんだ…)」
「(メチャクチャ嬉しそう!)」
チョイスの準備をしている時、ジャンニーニはスパナに対して、すごいライバル意識をむき出しにしていたのに、それなのに何も言わないのは、バトルに参加したくないからで、言葉とは反対に、親指をたて、表情は超がつくほどの笑顔だった。
「ああ~~あっ」
その時、ミルフィオーレ側から、なんともやる気のない、だらけた声が聞こえてきた。
「だり~~~」
その声を発したのはザクロで、ザクロはヤンキーずわりをして、顔を足の間に入れてうつむかせていた。
「!!」
「あいつ…」
「メローネ基地で見た…」
「口笛吹いてた……」
「マグマ風呂野郎!!」
魅真達は、声を発したのが、メローネ基地で見た、あのマグマ風呂に入っていた男だとわかった。
「白蘭様、悪いが出番もねーし…。正直イヤになってきました~」
そう言いながら、ザクロは、顔や手などが、床につくくらいにずり落ちていく。
「申しわけありません、白蘭様。ザクロがダレてきました」
「ん。じゃあ急ごうか」
腕と足と上半身が床にへばりつき、おしりをあげて、顔を前に向けるという、とても大人がするとは思えない体勢をしており、その姿は、まるでよっぱらっているようだった。
「フン!どっちが電波よ」
ここに来る前に、アジトでザクロに言われたことを根にもってるブルーベルは、舌を出し、下のまぶたを指でひっぱって、ザクロをバカにした。
「それじゃあ、今度は僕らミルフィオーレの、参加戦士(メンバー)を紹介するよ」
ボンゴレの参加者が決定し、ザクロもダレてきたので、白蘭はミルフィオーレの参加者を発表することにした。
「雲は最も頼りになる、真6弔花の優しいリーダー、桔梗」
「ハハン」
紹介されると、桔梗は、アジトで白蘭にあいさつした時のポーズをとる。
「晴は殺したいほど生ける屍、デイジー」
そして、デイジーも紹介されると、あの独特のポーズをとった。
「霧は真実を語る幻影の巨人、トリカブト♪」
ミルフィオーレ側は、桔梗、デイジー、トリカブトの三人で、紹介を終えた。
「……! それじゃ足りてない!お前達の霧の数は2だぞ!!」
けど、ミルフィオーレ側の戦闘に参加するメンバーは、合計で4人。そのうち、霧属性の者は2人のはずなのに、霧はトリカブトしか紹介されてなかった。
「まあ!」
「困った」
バジルの言うことに、白蘭とブルーベルは、わざとらしい反応をした。
「なーんて言わないよ。前に言ったように、真6弔花には、Aランクの部下が、一人につき、百人ついてるんだ」
「べー」
「もう一人の霧のプレイヤーは、ここにすでにいるよ」
「!!」
白蘭がそう言うと、白蘭の前に霧が集まった。
「トリカブトの部下、猿ね♪」
そこに現れたのは、忍者のような格好をして、四本の刀を背中に装備している、翁の面をつけた男だった。
「どこから湧いてきやがった!」
「術士が2人…」
白蘭の口ぶりからして、もう最初からこの場所にいたみたいだが、周りの者は誰一人として……超直感をもつツナや、術士のクロームですら気づいていなかった。
「奴ら、人員には困らないってわけか」
「卑怯な…」
ボンゴレはメンバーに限りがあるが、ミルフィオーレはどんなにたくさんの参加人数が出たとしても、メンバーを選出できないということはなかった。
「さーて。いよいよ、一番大事な勝敗のルールだけど、数あるチョイスのルールの中から、最もシンプルかつ手っとり早い――――ターゲットルールでいくよ」
「「「「!?」」」」
「タ…ターゲット…ルール?」
「簡単なルールだ。お互いに、敵の標的(ターゲット)となるユニットを一人決め、その標的(ターゲット)がやられた方が負けとなる」
「なるほど。大将をたてるんだな。標的(ターゲット)は、取られたら負けの、将棋でいう"王将"ってわけだな」
「ちなみに標的(ターゲット)は、さっきのルーレットで、すでにチョイスされているんだよ」
「!?」
「ルーレットボードの属性のマークに、炎が灯っているだろう?」
白蘭がそう言うと、ツナはルーレットボードに目を向けた。
「ミルフィオーレは、晴!ボンゴレは、無属性に!」
ルーレットボードには、ミルフィオーレは晴属性に、ボンゴレは無属性に炎が灯っていた。
「標的(ターゲット)となる属性に、二人以上いる時は、ルーレットがランダムに一人を選ぶんだ」
そして、ルーレットからは、二つの光が放たれた。
「!」
「!」
「うん。これで決まったね♪ミルフィオーレの標的(ターゲット)は、デイジー。ボンゴレの標的(ターゲット)は、正チャンだ♪」
その光は、デイジーと正一の心臓部に、標的のマークをつけた。
「入江君!?」
「…心配ない。望むところさ」
「つまり、我々は入江正一を、あなた達はデイジーを先に倒せば、勝利というわけです」
「わかりやすくていいじゃねーか。気に入ったぜ」
「だな」
「………シンプルなだけに、奥が深そうだ…」
「スパナの言う通りだ…。
?」
そこまで言うと、正一は、突然胸に痛みを感じた。
「…!?」
胸を見てみると、先程ついた標的のマークが光り出す。
「!!!」
そして、標的のマークには炎が灯った。
「ぎゃあっ」
しかも、その炎は顔に届くくらいに大きくなった。
「うわっ!!何だこれはあぁ!?」
「いっ、入江君!?」
「大丈夫ですか!?」
「胸から炎が!!」
突然の事態に、全員が驚き、正一の方へ顔を向ける。
「それは"標的の炎(ターゲットマーカー)"だよ」
「!」
「標的者は、胸に、自らの死ぬ気の炎を灯すことにより、他のプレイヤーとの差別化をするんだ。標的者が倒されずに、生きている証明にもなるだろ?」
淡々と説明をする、白蘭の隣にいるデイジーの胸にも、同じように晴の死ぬ気の炎が灯っていた。
「ぐっ。とれない!!」
正一はなんとか標的の炎(ターゲットマーカー)をとろうとするが、はずれることはなかった。
「バトルが終わるまで、はずすことは不可能だよ。"標的の炎(ターゲットマーカー)"が消えたら負けだからね」
「待て白蘭。生命エネルギーである死ぬ気の炎をこんなにただ流しにしちまったら、あっというまに体力を消耗し、ぶっ倒れちまうぞ」
「それが、このバトルのタイムリミットになるんじゃないか」
「!」
「…………」
それは、デイジーや正一も、最悪死んでしまってもかまわないという口ぶりだった。
白蘭は笑顔で言い放つが、その言葉に、白蘭もツナも驚愕し、正一とデイジーは冷や汗をかいた。
「もう一度言うけど、どんな理由であれ、"標的の炎(ターゲットマーカー)"が消えたら負けだからね」
いつもの笑みは消え、とても冷酷な目で、冷静に言い放つ。
「なっ、なんてことを…」
「いいんだ。はじめよう…」
「! で…でも入江君!ムリしないで!!」
「そうですよ!」
「ヘタすりゃ、炎出してるだけで、死んじまうぞ」
「……それは、敵も同じこと…。それに、僕は犠牲心でやるんじゃない!」
「!?」
「白蘭サンを、こんなにしちゃったのは僕なんだ!!僕が逃げるわけにはいかない!!」
「……?」
正一は冷や汗をかいているが、それでもこの戦いに挑もうとしていた。
よくわからないことを叫ぶ正一に、ツナは何がなんだかよくわからなかったが、リボーンは反応を示す。
「へぇ~。正チャン、そんな風に考えてたんだぁ」
その白蘭は、いつもの笑みを浮かべ、何やら意味深なことを口にした。
「まぁいいや」
そしてその後、急に辺りが暗くなり、ミルフィオーレの後ろから、花火が三つ上がった。
「前に言ったけど、この盛大なチョイスの勝者の報酬は」
そして、白蘭が話している途中で、花火は音をたてて、暗い空に花を咲かせる。
「全てのマーレリングに……。全てのボンゴレリング……。そして、全てのアルコバレーノのおしゃぶり…。すなわち、新世界を創造する礎となる。
僕が今一番欲しいもの。7³だよ♪」
これは、トリカブトの幻術で、空にあがったのは、以前会議の時に各部隊長に見せた、三つの円の中に描かれた、7つのおしゃぶりと、7つのボンゴレリング、そして、7つのマーレリングの形をした花火だった。
その花火を、ミルフィオーレと、まっすぐな目をしたツナ達が見ていた。
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