標的83 男心と女心
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「ム……ムカツクって……どういうこと!?魅真ちゃん!」
魅真が言ってる意味がわからないツナは、その言葉の意味を聞いた。
「どういうって……そのまんまの意味だよ」
「だから、なんでムカツクのかって聞いてんだよ」
今度は獄寺が問うと、魅真は軽くため息をついた。
「それがわからないなら、この問題は解決しないと思うよ」
「え…?」
「なっ!!」
めずらしく挑発的な魅真に、ツナ達は呆然とする。
そして、その呆然としたツナ達をよそに、魅真達は大食堂へと向かっていった。
標的83 男心と女心
大食堂に行くと、京子とハルはそのまま夕飯の支度を始め、魅真は頃合いを見計らって、再び上の階に行ってシャワーを浴びにいき、30分ほどすると、また大食堂に戻ってきた。
戻ると、だいぶ夕飯ができあがっていたが、まだ全部はできていないので、こんな時ぐらい…と、魅真は京子とハルを手伝った。
ビアンキ、クローム、イーピンも手伝っていたため、いつもよりも早くできたので、ツナ達ぬきで夕飯をとった。
「ところで魅真ちゃん…」
「何?京子ちゃん」
「魅真ちゃんは、なんで私達の方についてくれたの?」
夕飯を食べていると、突然京子が質問をしてきた。
「そうですよ。魅真ちゃんはてっきり、ツナさん達につくのかと思ってました」
「私も」
続いてハルが、疑問に思ったことを口にした。
あの時、ツナ達の方に歩いていったのに、京子とハルの側についたので、それが疑問だったのだ。
「んーー…。まあ、いろいろと理由はあるんだけど……。それを知るには、ツナ君達が秘密にしていることを言わなきゃいけないから、ちょっとまだ言えないかな…」
もちろん、京子とハルの側についたのには理由があるが、それには、ツナ達が、京子とハルにかくしていることも関係してるので、ツナ達が言っていないのに言うわけにはいかないので、魅真は答えることはできなかった。
「そう……ですか…」
「じゃあ、いつかその答え、教えてね」
「うん」
けど、京子とハルも、無理強いはせず、いつか話せる時がきたらと、自然にまかせることにした。
次の日も、魅真は一人で外に出ていって、昨日と同じように、修業をするために並盛山に行った。
修業を始める前に、魅真は今アジトで起こっていることを、ディーノに話した。
話を聞くと、ディーノは困ったような顔をしたが、こればっかりはどうしようもないことなので、成り行きにまかせることにして、すぐに修業を始めた。
魅真はとにかく、今よりももっともっと強くなるために気合を入れていたが、雲雀は魅真以上に気合が入っているようで、修業に集中していた。
けど、まだお互いに話すことはできず、微妙な距離を置いていた。
近くにいるのに、遠くにいるように感じる…。この状況に、魅真はもどかしさを感じた。
そしてまた、日が暮れかけてきた頃に、アジトに帰り、シャワーを浴びて、京子達と夕飯をとると、全員で片づけをして、全員でお風呂に入ることにした。
早くに頭や体を洗い終えた、魅真、クローム、イーピンは、先にお湯につかって、湯船の壁にもたれかかり、京子とハルとビアンキは、まだ頭や体を洗っている最中だった。
「お兄ちゃん達、昨日はカップめんみたいだったけど…。今日は、栄養のあるもの食べてるかなぁ…?」
「ツナさん達が、本当のことさえ教えてくれれば、とんでいってごはん作るんですけど…」
京子とハルは、頭や体を洗いながら、ツナ達のことを考えていた。
ボイコットをしていても、京子とハルは、なんだかんだとツナ達のことが気になっていたのだった。
「まあ」
隣にいるビアンキは、頭の泡を流しながら口を開く。
「あなた達は、ツナ達が、すぐに降参すると思っていたみたいね。私はそう簡単にはいかないと思うけど…………」
頭の泡を流すと、今度は湯船につかるために、髪の毛を上の方でくくった。
「理由は二つね。一つは、あなた達に変わって欲しくないのよ」
髪の毛をくくると、大胆にも前をかくさずに、タオルを左肩にひっかける。
一つ目の理由を知ると、京子とハルは動きが止まり、呆然として、ビアンキに顔を向けた。
「秘密を知れば、あなた達は、今までのあなた達とは違う人間になるわ。それを恐れてるの。気になる相手なら、なおさらね」
湯船の前まで来ると、足を入れて、魅真達のすぐ近くまでやって来た。
「気になるひとが、いつまでも変わらないなんて、男の幻想にすぎないんだけどね」
ビアンキがもっともなことを言うと、京子とハルも泡を流し、ハルは髪の毛をタオルで包み、湯船に入り、ビアンキとイーピンの間にすわった。
「もう一つは、意地ね。あの子達は、女は男が守るものだと思ってるの…。あなた達に、禍々しい世界を見せないことに、男のプライドをかけてるわ」
「気持ちはうれしいですけど……。ハル達だって、力になりたいんです。それを、一方的に決める権利は、ツナさん達にはないと思います」
ツナ達が自分達のことを思ってくれてるのはわかったが、それでもハルは納得できなかった。
「その通りね。男は身勝手で非合理だわ…。でも、私達女の想像をこえて、男はプライドに命をかけるものなの。むしろ、プライドに命をかけられない男は、男じゃないわ。あの人だってそう…」
「…お先します」
少々話が脱線し、ビアンキはリボーンのことを考えていた。
話がひと段落すると、クロームは先にあがるためにその場を立ち上がり、イーピンはそこから泳ぎだした。
「はーい」
「クロームちゃん、あとで…
…!!」
クロームが声をかけると、京子とハルは、今までビアンキの方に向けていた顔を、クロームに向けた。
「背中どうしたの!?」
「?」
クロームの背中にある大きな傷をみつけると、京子はクロームに聞き出す。
「……今日の、修業のキズ…」
聞かれると、クロームはどこか言いにくそうに答えた。
「でも、ボス達に比べれば、ずっと少ないと思う」
これだけでも痛々しいが、ツナ達はもっと傷ついているかもしれない。そのことを知ると、京子とハルは胸が痛んだ。
「魅真ちゃん…。ひょっとして、魅真ちゃんも…修業のキズを…?」
「……うん…」
京子はもしやと思い、魅真にも聞いてみた。
京子に聞かれると、魅真は言いにくそうにうなずく。
「個人の修業の他に、雲雀さんとも、何度かスパーリングをしてて…。雲雀さん…容赦ないから…」
そう言った魅真の体をよく見てみると、クロームのように大きく目立つものではないが、全体的に細かな傷や、少し大きめの傷、腫れあがってるところ、打ち身やすり傷、赤くなったり青くなったりと、変色している部分も見られた。
自分達と同い年の魅真が、笑いながら、普通の女子中学生はうけないであろう傷の説明をしているのを見て、京子とハルは、また胸が痛み、顔をうつむかせた。
「じゃあ、私もそろそろあがるね」
長いこと湯船につかったし、この後個人で修業をしようと思ってるので、魅真は湯船からあがった。
背中を向けて脱衣所まで歩いていく魅真の体には、傷や腫れてるところや打ち身やすり傷などがあり、見ていて痛々しかった。
「「京子ちゃん!/ハルちゃん!」」
そして、魅真がいなくなると、同時にお互いの名前を呼んだ。
「「あ……」」
同時に名前を呼んだので、京子とハルは顔を見合わせた。
「男のプライドなんて、ハルにはナンセンスで全然ついていけませんけど…」
「……一時休戦にしようか」
まだ真実を教えてもらってないが、それでも、自分達のために、身をけずってまでがんばっているツナ達を、信じることにしたのだった。
次の日も、魅真はいつも通りに朝食をとった後で、並盛山に向かった。
体技の修業、基礎体力の向上、死ぬ気の炎の強化、ボンゴレ匣の修業、ディーノとのトレーニング、雲雀とのスパーリングと、前日と前々日と同じことをくり返していた。
また日が暮れかけてくると、魅真はアジトに戻ることにしたが、いつもと違い、ディーノも一緒に行くことになった。
それは、ツナ達の修業の進み具合をチェックするためだった。
下山をしている時、後ろから、雲雀がディーノを睨みつけており、ディーノは痛いほどの視線と殺意を感じたが、敢えて気づかないフリをした。
アジトに着くと、魅真はディーノと一緒に、作戦室に行った。
作戦室にはすでに、リボーンと獄寺と山本と了平、フゥ太とジャンニーニも来ており、まだボイコットが終わったことを話していないので、魅真は少しだけ気まずさを感じた。
作戦室に来てから少しすると、作戦室の扉が開く機会音が響いた。
「お」
「ディーノさん!!」
「よぉ、ツナ」
扉のむこうからは、ツナが入って来た。
「修業の進み具合をチェックしにきたぜ。家事にばかり、うつつをぬかしてねーだろーな」
「え…は…はい。京子ちゃんにヒントをもらって、少しだけ匣(こいつ)のことがわかってきたんだ。多分、もう暴れたりはしないと思う…」
と言いつつも、まだ自信がなさそうだった。
今のツナの言葉を聞くと、魅真はもしや…と思った。
「お?」
「ついに!」
「すげっ!!」
「さすが10代目っス!!」
だが、獄寺達は何も気づいておらず、ツナを称賛する。
「でも、まだ、やってみないとわからないけど…」
実戦はしていないので、あくまでも多分…で、まだどこか自信なさそうだった。
《ラン♪》
その時、画面から何やら声が聞こえてきた。
「?」
《ラン♪》
突然聞こえてきた声に、なんだろうと思いながら、全員声がした方へ顔を向けた。
《ラン♬ラン♪》
そこにはモニターがあり、モニターが映ると、モニターには、パックマンのようなものが、いくつも映っていた。
「何の放送だ?」
《ラン♪ラン♬》
「ジャンニーニ、何これ?」
機械の関係のことなら、ジャンニーニに聞けばわけるだろうと思い、ツナは聞いてみた。
「それがわかりません。何者かに、回線をジャックされてます!!」
けど、ジャンニーニにも、なんなのかわからなかった。
《ラン♪ランラン♬ランランランランラーン》
モニターには、パックマンのようなものが、モニターの中心部分から、どんどん増えていく。
《ビャクラン♪》
最後には、モニターの中心部に、蘭の花と、蘭の花の上に、デフォルメの白蘭がのっている姿が映った。
「なぁ!?」
《ハハハハッ!!》
そして、デフォルメの白蘭が映ったかと思ったら、その画像がガラスのように中心から割れ、同時に白蘭の笑い声が聞こえてきた。
《どう?面白かったかい?》
今までの画像がなくなると、今度は本物の白蘭が映り、白蘭は、笑いながらパフェを食べていた。
「白蘭!!」
《退屈だから、遊びにきちゃった。食べるかい?》
「やろう。おちょくってんのか!?」
《なーんてね。本当は、"チョイス"についての業務連絡さ》
「ぎょうむ…れんらく?」
《ほら、日時については言ったけど場所は言ってないよね。6日後、お昼の12時に、並盛神社に集合》
「!!」
「並盛で戦うの…!?」
《んー。どーだろーね。とりあえず必要な準備して、仲間は全員つれてきてね。少なくとも、過去からきたお友達は、全員だよ》
「なに!!」
「全員って」
「京子ちゃんやハルも!?」
「なんだと!!?」
「なんでそんなこと…」
《そこに意味があるんじゃないか。みんなで来ないと、君達は失格だからね》
「な!?」
「ちょっと待て!!」
《じゃあ、修業がんばってね~♪》
白蘭は、一方的に現れて、すべてを一方的に決めつけ、一方的に言うだけ言って去ろうとしていた。
「!」
「おい!」
ツナ達が何か聞こうとするも、モニターは切れてしまう。
「あ…!」
とんでもない事態になったので、ツナは目が真っ白になる。
「そんな…。京子ちゃん達を、戦闘の真っ只中へ!?」
「こりゃ、秘密どうこうって話じゃなくなってきたぜ」
「こうなると、ツナが京子やハルに、状況を説明しちまったのは、正解だったかもな」
「「「「!!」」」」
リボーンが言った言葉に、魅真、獄寺、山本、了平は反応し、ツナの方へふり向いた。
「ゴ…ゴメン。オレ、話したんだ。やっぱり、京子ちゃん達にも、事実を知ってもらうべきだと思って…」
みんなの知らないところで、相談もなしに、独断で話してしまったので、ツナは申し訳なさそうに謝った。
魅真は、京子とハルに、ツナが事実を話したことを知っても、あまり驚いておらず、やっぱり…と思った。ツナが先程、京子にヒントをもらった…と言ったからだった。
「沢田あぁ!!」
「!! ………」
しかし、周りは冷静だったが、唯一了平だけはそうではなく、ツナの名前を呼びながら、壁を殴った。
それは、壁にひびが入るほどの威力だった。
「京子は…どうなった…」
「お兄さん…あの…」
「てめえ、何暴れてやがる!!」
顔が下を向き、体が震えているその様子は、誰が見ても怒っているのがわかるほどで、ツナは冷や汗をかき、顔が青ざめていた。
「おちつこーぜ、センパイ」
「京子はどうなったー!?」
後ろから、山本が肩から首に腕を置いて、軽くおさえるも、了平は気がおさまらず、大声で叫んだ。
「ちゃ…ちゃんと聞いてくれました…」
「! ………………」
「ツナの判断は間違ってなかったと思うぜ、了平。この状況では、遅かれ早かれだ」
「く………」
京子に事実を話したのは許せないが、ディーノが言ってることも間違っていないので、了平は言葉がつまった。
「お兄さん…」
「………」
「にしても白蘭の奴、どーやって回線に入りこんだんだ?」
「セキュリティがザルなんだぁ」
了平がおちつき、ふいにリボーンが、疑問に思ったことを口にすると、扉から第三者の声が聞こえた。
「アマチュア共がぁ」
そこに立っていたのはスクアーロで、何故かマグロを持っていた。
「あっ」
「てめーは、ス…」
「スクアーロ!!」
「なんでここに!?」
イタリアにいるはずのスクアーロがここに来たので、魅真、ツナ、獄寺、山本は驚いたが、ディーノは驚いていなかった。
「みやげだ」
「(なぜにマグロ…?)」
中に入ると、持っていたマグロをディーノに渡し、ディーノは何故みやげがマグロなのかと疑問に思った。
「遅かったな、スクアーロ。生徒がおまちかねだぜ」
ディーノが驚いていなかったのは、スクアーロがここに来ることを知っていたからだった。
声をかけられても、スクアーロは何も答えず、早足で山本がいる方へ歩いていく。
「え?生徒…?」
「! もしかしてよ…」
ディーノの言葉で、山本ははっとなり、声が明るくなった。
「オレの修業の家庭教師って…」
山本はうれしそうに笑い、自身を指さすが、スクアーロは何も答えないどころか、殺意のこもった拳で、山本の顔を殴りとばした。
更に連続で、体にひざ蹴りをくらわせる。
「がはっ」
それだけでなく、何度も何度も、無言のまま殴り続けた。
「「「!!」」」
容赦のないスクアーロの攻撃に、魅真もツナも獄寺も言葉をなくし、驚愕して大きく目を見開いて、その光景を見ていた。
「ぐあっ」
そして、また殴ると、その衝撃で歯が一本ぬけた。
「山本ぉ!!」
ぬけた歯は、床で一回はね返ると、静かにその場所に落ちた。
今のがとどめとなって、山本は動かなくなり、動かなくなった山本を、スクアーロは肩にかついだ。
その際に、血が落ちるが、まったく気にしていなかった。
「山本!!」
「武君!!」
「殺しやがったのか!?」
「まったく、殺してやりてえぜ」
血を流しているが、気絶しているだけで、死んではいないようだった。
「このカスはあずかっていくぞぉ」
「ええ!?そんなこと!」
山本を連れていこうとするスクアーロに、ツナは抗議しようとするが、そこをディーノに、手で制された。
「ここはスクアーロにまかせるんだ」
「でも…」
「山本のことは、オレ達よりわかっている」
ツナはおろおろしてるが、ディーノは冷静で、山本をスクアーロにあずけた。
「そんな…」
それでもツナは、どこか納得がいかなかった。
こうして山本は、スクアーロとともに、姿を消していった。
「メチャクチャだ…。あんな、暴力的なやり方…」
ディーノには考えがあるようだし、スクアーロも、ただ山本に暴力をふるうためだけに来たわけではなさそうだが、ツナはまだ納得していなかった。
「沢田」
「?」
そして、一人ごとを言っていると、後ろから了平に声をかけられたので、後ろへふり向いた。
ふり向くと、了平は渾身の一撃を、ツナの顔にお見舞いする。
「ぐはっ」
殴られたツナは、後ろへふっとんで、仰向けに倒れた。
「ツナ君!!」
「おい、了平!」
「10代目!!」
いきなり殴ったので、魅真と獄寺はツナを心配し、ディーノはとがめるように了平の名前を呼ぶ。
「やはり、京子を巻き込んだことは許せん。……だが、オレも男だ…」
了平がツナを殴ったのは、どんな理由があろうとも、京子に事実を話したからだ。
先程白蘭が提示した条件だと、どちらにしても話さなければいけなかったし、ディーノが言った通り、この状況では、遅かれ早かれ知られることになるのだが、それでも了平は、心では納得できていなかった。
「この一発で、次に進むことにする!!」
殴ったのは、京子を巻き込んだのが許せなかったのと、あとは了平なりのけじめだった。
了平は荒い息をすると、目じりにわずかに涙を浮かべ、強くにぎった拳を、自分の顔の前までもってきた。
ツナは、殴られたので鼻血が出てしまい、鼻を手でおさえ、あまりの痛みに、荒い息をして涙を浮かべていた。
「てめー、よくも10代目に!!ぶっ殺してやる!!」
「ダメよ、隼人君!!」
「おちつけ、獄寺!!」
ツナが殴られたので、怒り心頭な獄寺は、了平に襲いかかろうとするが、そこを後ろからディーノに肩をつかんで止められ、前からは、魅真に体をおさえて止められた。
けど、ツナが京子とハルに事実を話したので、ボイコットも終わり、その日の夜から、また前のように全員で夕飯を囲むことになった。
全員のモヤモヤが一気に吹き出したような日だったので、多少ギクシャクしているところもあるが、それでも前とは雰囲気が変わっていた。
そして、夕飯を終えると、魅真は先に風呂に入りにいき、数十分経つと風呂場から出てきた。
「あっ…」
出ると、出入口から少し離れている、風呂がある方の壁際に、ツナと獄寺が立っていた。
「ツナ君、隼人君、どうしたの?」
「魅真ちゃんに話したいことがあってさ。小食堂まで来てもらっていいかな?」
いきなりだったが、断る理由もないので、魅真はツナと獄寺と一緒に、小食堂まで行った。
小食堂に行くと、そこには了平が、出入口から一番遠い奥の席にすわっていたので、ツナと獄寺が了平がいる側のあいてる席にすわると、魅真はツナ達の向かい側にすわった。
「それで、話したいことって何かな?」
席につくと、魅真はさっそく、どんな話があるのかをツナ達に聞いた。
「あ、いや……。今回のボイコットで、オレ達が変に意地をはっていたから、変な空気になっちゃって、すごい気まずかったから…。京子ちゃん達だけでなく、魅真ちゃんにも、嫌な思いさせちゃったし…。だから、謝っておこうと思って…。本当にごめんね」
ツナが話したいことというのは、今回のボイコットについてだった。
「えっ…。そんな……それはお互い様だよ。私だって、なんだかんだ言って、京子ちゃんとハルちゃんに味方しちゃったから、それで変な空気になっちゃったし…。それに、それを言うなら、私も謝らないと…。ムカツクとか言っちゃったし…。私こそごめんね」
いきなり謝られると、魅真は魅真で謝った。
「いいよ。それに、ボイコットされた時はどうしようかと思ったし、さっきは、みんなのモヤモヤが一気にふきだしたような、ひどい雰囲気になっちゃったけど…。でも、みんな本音でぶつかりあって、結果としては、これでよかったと思うんだ」
「そうだね。たまには、お互いに本音でぶつかりあうのも大事だね」
ボイコットが起こって、お互いギクシャクしてしまい、今日は散々な日になったが、それでも一つにまとまり、それはそれでよかったので、魅真とツナは笑いあった。
「それより魅真ちゃん…。すごく気になっていたことがあるんだけど…」
「ん?」
「あの時魅真ちゃんが言っていた、ムカツクとか、それがわからないならこの問題は解決しないと思うっていうのは、どういう意味なの?」
「え……」
「あれから何度か考えたんだけど、全然わからなくって…。どうしても気になってさ」
「あー……」
あの時は半分勢いのようなものがあったが、冷静になった今は、少々はずかしいので、気まずそうな顔で目をそらし、頬を指でかいた。
「……ツナ君達はさ、私のことは、守護者だって認めてくれてるんだよね?それってつまり、イコール戦闘員として認めてくれてるってことなんだよね?」
「え?うん」
「うむ」
「まあな」
一呼吸おくと、ツナ達に質問をするが、返事をしながらも、何故その質問をするのか、ツナ達は全然わからなかった。
「でも、ツナ君達って、戦闘員扱いしているけど、たまーに私のこと、女扱いもしてるよね」
「え?そりゃあそうだよ。だって、魅真ちゃんは女の子なんだから」
「つーか、それが一体なんなんだよ?」
「極限に意味がわからんぞ」
ツナ達は、説明されても、魅真が言わんとしていることが、まったくわからなかった。
「それが嫌なのよ」
「「「えっ…?」」」
「私のことを、女扱いしているってことは、京子ちゃんやハルちゃんと同じように、私のことを、女性として守ろうとしてくれてるってことだよね?」
「うん」
「うむ」
「まあな」
「それはうれしいんだけど、それがなんか嫌なの」
うれしいけど嫌と言われ、ますます魅真が何を言いたいのかわからなくなり、ツナ達は頭がこんがらがる。
「やっぱり戦闘員扱いしてるからには、戦闘員扱いしてほしいの。なんだか、頼りないって言われてる感じがするから…。女の子扱いされるのは嫌ではないけど、戦闘員としてカウントしてるなら、そういう扱いをしてほしいんだ。
あとは、京子ちゃんとハルちゃんがボイコット宣言した時、ツナ君や隼人君が、京子ちゃんとハルちゃんのことは女の子扱いしたのに、自分のことは戦闘員扱いしたから…かな。
戦闘員扱いしてほしい。戦闘員扱いするなら、女の子扱いはしてほしくない。でも、女としては、女の子扱いしてほしい。すごい複雑な気持ちなの…。自分でも、メチャクチャ言ってるのはわかってるし、矛盾してると思うけど、でもやっぱりそう思っちゃうんだ」
「確かにメチャクチャだな…」
「説明されても、極限に理解できんぞ」
「うん…」
「女心だからね。男の子のツナ君達には、理解できなくて当然だよ。私も、男心はわからないし」
魅真個人の感情もあるが、それでもやはり、ツナ達には理解不能だった。
「あとは、ツナ君達が、男性だけになっちゃって、なんだか、私の家事をあてにしてるのを感じられたから…かな」
「「「うっ…!!」」」
確かに、実際家事で苦労していたので、その辺は否定できないツナ達だった。
「それに…今のとは関係なしに、ずっと思ってたんだけど…」
「「「?」」」
「みんな、あんなにかくしたがっていたミルフィオーレや、それに関することを、京子ちゃんとハルちゃんの前で言ったりしてて、あれでバレないと思ってたんだ」
「「「う…」」」
魅真の感情や、京子とハルの側についた理由とは関係ないが、それでも鋭いことをつっこまれて、三人は言葉がつまる。
「ツナ君には言ったじゃない。女の子を甘く見ない方がいいって。女の子は結構カンが鋭いんだよ。気づいていても、気づいてないフリしてることもあるし」
「そういえば……」
言われてみると、リング争奪戦の時に、魅真もそういうところがあったので、魅真が何故、以前女の子を甘く見ない方がいいと言ったのか、ツナは理解した。
「それに、女の子は、男の子が思ってるほど、弱くないんだよ」
そして、魅真は甘く見ない方がいいと言ったことの、もう一つの意味を話しながら、にこっと笑った。
「まあ、女心はよくわからないけどさ。でも、オレが魅真ちゃんを守りたいと思ってるのは、女の子だからってのもあるけど、仲間だからだよ。魅真ちゃんだから、守りたいんだ」
ツナが自分の気持ちを伝えると、魅真は一瞬目を丸くするが、すぐに優しい笑顔を向けた。
「…ありがとう、ツナ君…」
女の子だから…仲間だから…と言われると、正直うれしい。けど、やはり少し複雑だった。けど、やはりうれしいことはうれしいので、満面の笑顔でお礼を言う。
それから、少しだけツナ達と談笑すると、魅真は、京子達と約束をしているのもあり、小食堂を出た。
京子達とは、女子会をする約束をしていた。
小食堂を出た魅真は、同じ階にある自分の部屋へ向かっていった。
部屋に入ると、そこにはすでに、京子、ハル、ビアンキ、イーピン、クロームがいた。
「みんな!」
「あ、魅真ちゃん!お邪魔してます」
「こんばんは」
「やっと来たわね」
魅真が来ると、京子、ハル、ビアンキは、それぞれあいさつをした。
「ごめんね。ツナ君達と、ちょっと話をしていたから」
遅れてしまったようなので、魅真は軽く謝罪をする。
「いいよ。それより、お茶とお菓子持ってきたよ」
「うわあ。ありがとう」
京子が、持ってきたお茶とお菓子を出すと、魅真は目を輝かせて喜んだ。
そして、テーブルを全員の真ん中に持ってくると、そこにお茶とお菓子を置いた。
お菓子は、クッキーやカップケーキなどの焼き菓子だったので、切り分けたりする必要はなかったが、お茶はポットに入れていたので、持ってきたカップをならべて、カップの中にそそいだ。
「それで魅真ちゃん、ずっと聞きたかったことがあるんですけど…」
お茶をいれ終わると、自分の分のカップを手にとり、お茶を一口飲んだハルが、先程のツナのように、魅真に真剣な顔で聞いてきた。
「何?ハルちゃん」
「魅真ちゃんがボイコットの時、私達についてくれた理由って、なんなんですか?」
「前聞いた時に、それはツナ君達が秘密にしていることを言わなきゃいけないから、まだ言えないって言ってたよね?だけど、もうボイコットも終ったし…」
「あー……それは……」
魅真は京子とハルに、ツナ達に話したことを話した。
「なーんだ」
「そういうことだったんですね」
話し終えると、京子とハルは、ツナ達とは違って、あっさりと納得した。
「あと、もう一ついいですか?」
「うん」
ボイコットの話が終わると、再びハルは、真剣な顔で魅真に聞いた。
「魅真ちゃんは、どうやってツナさん達の秘密を知ったんですか?」
それは、今回のことではなく、ツナが秘密にしていたこと……すなわち、ツナがボンゴレファミリーというマフィアの10代目ボス候補であることや、これまでの戦いを、どうやって知ったのか…ということだった。
「本当に知ったのはリング争奪戦の時だけど、怪しいと思いはじめたのは、初めてツナ君の家に遊びに行った時かな。もっと遡ると、私が並盛に引っ越してきたばかりの頃、町の散策をしていた時に、偶然ツナ君ちの前を通りかかった時、死ぬ気モードになったツナ君を見て、その時にビアンキさんやランボ君も見て…死ぬ気弾を撃たれて、顔が巨大になったツナ君を見て気絶した時からなの。その時のことは、最初は夢だと思ったんだけど、ツナ君の家に遊びに行った時に、ランボ君とビアンキさんと見て、夢じゃないんじゃないかって思いはじめて…。それからしばらく経って、海水浴に行った時、ツナ君が救助活動をした時に、ツナ君は普通じゃないって確信を得たの。それから、黒曜での戦いで、本当にタダ者じゃないって確信して、そしたらリング争奪戦が起こって…。私は指輪に選ばれなかったけど、ツナ君のお父さんの家光さんに、無理言って頼みこんで…雲の守護者にしてもらって…。ツナ君達以外の、口裏をあわせたりしないような人にも、私が雲の守護者だって認識してもらって…。それからかな。ツナ君に本当のこと聞いたのは…。もう、口裏をあわせたり、言い逃れしたりできない状況にしてから聞いたから、ツナ君も本当のことを話してくれたんだ」
聞かれると、魅真は、以前ツナとリボーンに話したことと同じことを、京子とハルに話した。
「魅真ちゃんて、見た目おとなしいけど……」
「意外とあなどれませんね」
「魅真…すごい…」
「やるわね、魅真…」
その内容に、イーピン以外の全員が、感心したり称賛したりしていた。
「でも魅真ちゃん、選ばれなかったのに、自分から、雲の守護者にしてもらうために頼むなんて…。よっぽど雲雀さんのことが好きなんですね」
「えっ!!」
やや話が変わり、ハルに図星をつかれると、魅真は心臓がはねあがり、顔を赤くした。
「だって、守護者は6人いるのに、わざわざ雲の守護者にってことは、雲雀さんのことが好きって証拠ですよ!」
結構鋭いハルに、魅真は更に顔を赤くする。
「……雲雀さんのことは…好きだよ…」
「きゃあーーー」
「やっぱりそうなんですね」
魅真の告白に、京子もハルも興奮し、何も言わないが、ビアンキとクロームも興味をもって聞いており、楽しそうにしていた。
しかし、唯一イーピンは、眉間にしわをよせていた。
「好きだから……守りたいから……雲の守護者になったの……。だから……もっと強くなりたいの……。雲雀さんの隣を歩きたい。雲雀さんの背中を守りたい。背中合わせで戦いたい。でも……」
「「「「でも?」」」」
「今までは、隣にいるだけで幸せだったけど………今は、隣にいるだけで怖いの…」
「な…なんで…ですか?」
「……この時代に来る前に……雲雀さんと、ケンカしちゃったから…」
「「「「ケンカ!?」」」」
少し言いにくそうに理由を話すと、まさか、温厚な性格をしている魅真が!?と、京子とハルは驚き、ビアンキとクロームも、何も言わないが驚いていた。
「ケンカ……とは…ちょっと違うかもしれないけど…」
魅真はあの時のことを思い出すと、沈んだ顔をして、この時代に来る前のことを、京子達に話しはじめた。
リング争奪戦が終わって、イタリアに帰国するディーノの見送りに行ったこと。
本当はその日は、風紀委員の仕事があったが、雲雀に2時までに応接室に行くことを条件に、許可をもらったこと。
けど、ディーノの見送りから並盛町に帰ってきた時に、ツナに会い、リボーンがいなくなったのを聞くと、時間があったので一緒に探しているうちに、委員会のことをすっかり忘れてしまい、気づいたら夕方になり、町で雲雀と遭遇した時に約束を思い出したこと。
約束を破ったことで責められ、自分からしてみるとわけのわからない、ディーノやベルや骸のことで責められたこと。
そして、魅真をいらないと言ったり、風紀委員をやめて、並中から出ていけと言われたこと。
それだけでなく、並盛町からも出ていくように言われ、魅真にとって、一番望まない展開になったこと。
へたりこんで、涙を流し、それでも雲雀を引き止めようと声をかけた時、後ろから10年バズーカにあたり、この時代に来てしまったこと。
雲雀に完全に嫌われてしまったので、生きる気力もなくなり、一度は死を望んだが、ツナ達にはげまされて、もう一度雲雀と話し合おうと決意したこと。
でも、この時代の10年後の雲雀と話すだけでも気まずいのに、10年前の、自分がいた時代の雲雀と会って、今もなお気まずいこと。
それらのことを、すべて話した。
「今は、そんなことを言ってる場合じゃないから、なんとか割り切って、雲雀さんと一緒に修業しているけど、やっぱり気まずいの。もとの時代に戻ったら、話し合おうと思ったけど、話をするのは、正直怖いの…。許してくれなかったらどうしよう…。話すら聞いてもらえなかったらどうしようって…。そんな、不安な思いばかりが押しよせてきて…。
でも、それでも、雲雀さんのことを守りたいと思ってる…。強くなりたい。隣を歩きたい。お互いの背中を守りあって、戦いたいって思ってる……」
そして、不安な気持ちを吐きだすと、京子もハルもクロームも、なんと言っていいかわからなくなり、だまってしまった。
「魅真は……よほど、雲雀恭弥のことが好きなのね…」
その時、ビアンキが静かに口を開いた。
「え?はい…」
「話をするのは怖いと言っていたけど、怖いのは、あなたが、雲雀恭弥に期待をしているからよ。だから怖いの。好きだから余計にね…。気まずいのもそう…。人と向き合うのは怖いかもしれない。不安かもしれない。でもね魅真、肝心なのは、不安や恐怖といった感情ではなく、思いよ。「どうしよう…」ではなく、「どうしたいのか」よ」
「どうしたいのか?」
「そう。あなたは雲雀恭弥に、どうしてほしいのか?何を望むのか?そして、あなたは雲雀恭弥とどうしたいのか?ただそれだけ……。
魅真、私達の世界は、常に二択しかないの。それは、やるか…やらないか…」
「やるか…やらないか…」
「私達の世界では、迷うことは許されない。それは、死につながるから。そして、それは一般人の世界でもそうよ。やるのか…それともやらないのか…。人間だから、迷うこともあるだろうけど、そんなの、時間がもったいないわ。特に、自分がどうしたいのかがわかっている時はね。だから常に、やるかやらないかの二択で選ぶの。もしわからないなら、とりあえずやりなさい。やらない後悔よりも、やった後悔よ。そして、やる時はどうやればできるのかを考え、徹底的にやりなさい。中途半端はダメよ」
「ビアンキさん…」
「魅真、私は相談にのることはできるけど、実際に行動するのはあなたよ。行動しなければ、欲しいものは手に入らない。雲雀恭弥と、本当に一緒にいたいなら、迷わずに行動しなさい」
きびしく、それでも魅真のことを思って激励してくれるビアンキに、魅真は元気になり、笑顔になった。
「ありがとうございます、ビアンキさん」
そして、微笑みながら、ビアンキにお礼を言った。
魅真の話が終わると、それからはみんなで他愛のない話をして盛り上がった。
ここに来てからというもの、魅真は修業ばかりで、なかなかこんな風に集まる機会もなかったので、かなり盛り上がったが、2時間ほどするとお開きになり、魅真以外は、それぞれ自分の部屋に戻った。
京子達が部屋に戻る時に、扉の前まで移動して見送ったが、全員がいなくなると、魅真は再び椅子にすわり、机の上に置いてあるボンゴレ匣をみつめた。
「(決戦の日まで、あと6日……)」
京子達と話していた時は笑顔だったが、ボンゴレ匣をみつめ、ミルフィオーレとの決戦が6日後に控えていることを思い出すと、急に真剣な顔になる。
「がんばって…ミルフィオーレを倒して…過去に戻ったら……もう一度、雲雀さんと話をしよう。絶対……!!」
真剣な顔になったのは、再度決意をしたから。ビアンキに激励してもらったからだった。
ミルフィオーレファミリーとの決戦まで、あと6日……。
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