標的82 ボンゴレ匣の修業
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「元気してたか?弟分」
「!! ディーノさん!!」
突然現れたディーノに全員驚いていたが、ツナは手をふってディーノの名を呼んだ。
「すげー!馬乗ってるぜ」
「オレンジの炎…。大空の匣兵器だな」
「しっかし、ハハハッ。10年前のお前らは、本っ当ガキだなっ」
「何!」
笑われた上に、子供扱いされたので、もともとディーノが嫌いな獄寺は腹を立てた。
「いったい何時だと思ってんだ?もうガキは寝る時間だぞ」
そこへ、さわぎを聞きつけたリボーンが、ジャンニーニと一緒にやって来た。
「また会えるとはな…。我が師、リボーン…………」
「なんだ、その面(つら)は。10年たっても、ヘナチョコが消えねーな」
この時代では、リボーンは死んでしまっているので、ディーノはなつかしむようにリボーンを見るが、リボーンは変わらず悪態をつくだけだった。
「ちぇっ。何年たっても子供扱いかよ」
それでもディーノは、うれしそうに笑った。
「よっ」
そして、左足の方の鐙に力をいれて、馬から降りようとした。
「いでっ」
しかし、鐙から足をすべらせておっこちてしまい、体を床にぶつけてしまう。
「いっつつ」
頭にはこぶができてしまい、ディーノはぶつけたところをおさえた。
「え!?」
「ドッテーンて…」
「まさか…」
「おい、もしかしてよお…」
この光景に、ツナ、魅真、山本、獄寺は驚く。
「おっかしーなー…。今日は、やけに転ぶっつーか、ドジるっつーか…。1kmも離れてねー場所からここに来るのに、3時間もかかっちまったし…」
「あの…ディーノさん。部下の人は?」
「ん?3時間前に、ロマーリオは草壁と飲みに行かせたぜ」
「「「「「「(やっぱり………)」」」」」」
今のツナの質問に対するディーノの返答に、全員確信した。
「「「「「「(10年たっても、部下の前じゃないと、力が出せない体質なんだーー!!!)」」」」」」
もう30もすぎたというのに、未だに部下がいないとヘナチョコなので、全員ひいていた。
標的82 ボンゴレ匣の修業
次の日、魅真は早めに起きた。
それは、前日の夜の、了平とバジルの歓迎会の片づけをするためだった。
起きて着替えると、大食堂に行き、まずはお皿やフォークなどの食器類から片づけようと、シンクに水をはって、食器の汚れをうかせ、洗えるものから片づけていった。
何分か洗っていると、後ろの入口から足音が聴こえてきたので、手を止めて、顔だけ後ろに向けた。
「あっ!」
「あ……」
足音の主を目にすると、魅真は驚き、相手はドキッとした。
「クロームちゃん!イーピンちゃんも!」
「あ……あの……」
そこにいたのは、クロームとイーピンで、魅真は二人の姿を見ると、作業をしている手を止めて、そばに置いてある布巾で手をふくと、二人のところまで歩いていく。
「どうしたの?こんなに朝早くから」
「え?あの…えっと……。私も、昨日の片づけを…しよう…かと……」
「そっかあ。ありがとう」
魅真がにこっと笑ってお礼を言うと、クロームは照れて顔を赤くした。
「それより、体調はもう大丈夫なの?」
「え?うん…。とりあえずは…。ボンゴレリングの力のおかげで…」
「そうなんだ。よかった」
すべて解決したわけではないが、大丈夫のようなので、魅真はほっとしてもう一度笑った。
ウソいつわりのない満面の笑顔に、クロームは少しみとれた。
「じゃあ、一緒に片づけようか?」
「う……うん…」
魅真が提案すると、三人はシンクの前まで歩いていった。
「それじゃあ…クロームちゃん、お皿洗ってもらっていいかな?私は水で泡をすすぐから」
「わ…わかった」
魅真に言われると、クロームはそでをまくるとスポンジを手にとり、まだ洗っていない食器を洗いはじめた。
「あっ……あの………その…………み……魅真……さん…?」
食器を洗いはじめると、クロームは魅真の方へ顔を向け、ドキドキしながら魅真の名前を呼んだ。
「何?」
クロームに名前を呼ばれると、魅真もクロームの方へ顔を向けた。
「あの……リング争奪戦の時は……ごめんなさい…」
「えっ!?私、クロームちゃんに、何かされたっけ?」
いきなり謝ってきたので、一体なんのことなのかと、魅真は目を丸くした。
「えっと……。あなたと仲良くするって言った時の……」
「え?ああ……」
そこまで言われて、ようやく何を言ってるのかわかった。
「でも、なんで今更そんなこと…。それに、なんでそんなことで謝罪を?」
けど、何故そのことで謝罪をするのかは、理解できなかった。
「えっと……。私、あの時………骸様に、あなたと仲良くするようにって言われたから、仲良くしようと思ったんだけど………でも……今考えたら、ちょっと失礼だったかなって……」
「別に気にしてないよ。それに、そんなことで謝らなくても大丈夫だよ」
クロームは気にしていたが、魅真はまったく気にしていなかった。
「でも、なんで骸は、いきなり私と仲良くしろだなんて、クロームちゃんに言ったの?」
「え!?えっと……それは…ちょっと……」
「ふーん…」
謝罪はするが、骸がクロームに、魅真と仲良くしろという命令をした意味を、言うことはできなかった。
本当はすごく気になるが、クロームが言いたくなさそうなので、それ以上は聞かないことにした。
「あの……それで…………私……あの時は……骸様の命令で、仲良くしようと思ってたんだけど…。でも、今はそれだけじゃくて……その…………あなたと………本当に……」
照れてうまくしゃべれないクロームが、何を言いたいのかわかった魅真は、にこっと笑うと、クロームの両手を自分の両手でにぎった。
「これからよろしくね」
「う…うん…」
魅真がにっこりと笑うと、それがどういう意味なのかわかったクロームはうれしくなり、表情が明るくなった。
その後、魅真がクロームの手を離すと、また洗い物を再開した。
「誰かいますね…」
「「あ」」
「「!」」
洗い物を再開してから少しすると、そこへ京子とハルがやって来た。
「あ!京子ちゃんとハルちゃん!おはよう」
「おはよう、魅真ちゃん」
「おはようございます」
二人が来ると、魅真は笑顔であいさつをして、二人も笑顔であいさつを返した。
「…ご…ごめんなさい」
2日ぶりに姿を見せ、2日前もロクに会話もしなかったので、クロームはスポンジと皿を持ったまま、どこか焦った様子で、京子とハルに話しかける。
「あの…。私、もっと、ちゃんと…」
スポンジと皿を置き、京子とハルと向かい合うと、焦りながら話すクロームだが、京子とハルはそんなことは気にせずに、笑顔でクロームの前にやって来た。
「!」
そして、クロームの右手を京子が、左手をハルがにぎりしめ、魅真とイーピンは、笑顔でその光景を見ていた。
それから、京子とハルも交えて後片づけをすると、一緒に朝ご飯を作った。
時間が経つと、ツナ達がやって来て、みんなで朝食を囲むことになった…のだが……。
「? なんだよ、お前ら」
リボーンとビアンキ以外の者達は、部下がいなくてご飯をこぼしまくるディーノを、呆然として見ていたが、ディーノは、何故魅真達が見ているのかはわからず、にこにこと笑っていた。
そして、朝食が終わると、戦闘員は全員トレーニングルームに集合した。
「よしっ、そろったな。今日から、本格的な匣兵器の修業だが」
そこにはディーノと、いつの間にかやって来たロマーリオと、もう一人の部下が、ディーノの後ろに控えていた。
「リボーンの一番の教え子であるオレが、全体を仕切る、家庭教師をすることになった。よろしくな」
ディーノの前には、ディーノからむかって、左側から、ランボ、了平、山本、魅真、ツナ、獄寺、クロームの順でならんで立っていた。
「ヘナチョコのあいつなんかに、つとまるんスかねー」
「でも、ディーノさん、部下の前だとすごいし…」
ディーノが家庭教師になると知った獄寺は、相変わらず悪態をつき、隣にいるツナは、小声でフォローした。
「ちなみに今回、オレはその上の役職、"家庭教師の精"だからな」
「妖精になっちゃったよ!!」
そこへ、ディーノの顔の横に、妖精の羽根がついた本の形の服を着て、鉛筆がついた花の形のぼうしをかぶり、先端が光っている指し棒を持った、上からワイヤーでつって飛んでいるリボーンが現れた。
「ディーノがヘボい時は、オレが制裁をくだすから安心しろ」
「いでで。やめろって、リボッブッ!!」
まだ何もしていないのに、ディーノの左頬を何度も蹴り、今言ったことを実行した。
「ってことで始めるが…その前にクローム」
リボーンが蹴らなくなると、ディーノは修業を始めるために、再び前を向いた。
ディーノは、話しながら蹴られたところをおさえており、後ろでは、10年経っても変わらない師弟関係に、ロマーリオが口をおさえて笑っていた。
「意思確認だ」
そして、修業を始める前に、クロームにだけ声をかける。
「お前はボンゴレ守護者であると同時に、骸の一味でもある。ミルフィオーレとの戦いには、味方として数えていいのか?」
クロームにだけ声をかけたのはこれが理由で、今までとは違い、真剣でまっすぐな目でクロームに問う。
「…………」
ディーノに問われると、クロームは少しだけ間があいたが、何も言わずにうなずいた。
「私、もっと、ちゃんとして…強い人になりたい…。それが…過去に帰ることに、つながると思うから…」
「よし、頼んだぜ。それと、ランボにも本格的な修業をしてもらう。白蘭を倒すには、守護者全員の力が必要だ」
了平の隣では、すでにあきたらしいランボが、床に寝転がって、持ってる鉛筆で遊んでいた。
「………… (本当に、仕方…ないのかな?)」
まだ、子供のランボを修業させることに、ツナはあまり納得していないようだった。
「オレは、この時代のツナに聞いて、お前達のボンゴレ匣のことを、多少は知ってる。そこから考えて、それぞれに、違う修業をしてもらうつもりだ。ちなみに雲雀恭弥は、オレとの修業を、もう開始させている」
雲雀の名前が出ると、魅真は過剰に反応を示した。
「えっ!?ヒバリさんと!?っていうかヒバリさん!!見つかったんですね!!」
「あいかわらず、かわいくねーじゃじゃ馬だけどな」
そのことにツナも反応し、魅真は何も言わないが、みつかったことにほっとしていた。
「じゃあ沢田綱吉!お前から、修業内容を言ってくぞ」
「あ…はい!」
雲雀のことを話すと、いよいよどんな修業をするのかを、発表されることとなった。
「お前は正しく開匣できるまで、一人だ」
「え!?…一人って。一人ぼっち…!?」
修業とはいうが、それでもそんなにすごい内容ではなく、しかもたった一人だというので、ツナは焦った。
「一人といっても、匣兵器と一緒だぜ。匣にトラブルが起きた時は、使い手がずっと一緒にいてやることだ」
「…それだけ…ですか?」
「今のがヒントだ」
「えっ?」
ツナはたったそれだけかと思うも、今言ったことがヒントだったようだが、まだわけがわからない状態だった。
「次に、獄寺隼人。お前は匣初心者である笹川了平と、ランボの面倒をみてやってくれ」
「なにっ!?」
修業の内容というより、指導のお願いだったので、獄寺は激怒する。
「(ディーノのやろ~!!てめーで家庭教師やるっつっといて、人まかせかよ!!しかも、生徒がバカの極限野郎とアホ牛とは、どういう了見だ。ぜっっってー断る!!!)」
よりによって、大嫌いなディーノに、大嫌いな了平と、大嫌いなランボの面倒をまかされたので、獄寺は腹が立ってしょうがなかった。
「すごいね、獄寺君。もう教える立場なんて」
「えっ!?」
しかし、ツナにほめられると、頬を赤くして、うれしそうな顔になる。
「いえいえいえ、もったいないお言葉!!自分なんて、まだピヨッ子です!!ですが、お役に立てるのなら、力の限りやらせていただきます!!」
そして、いつものように勝手に舞い上がり、はりきって、右の拳で左胸をたたいた。
「オレは嫌だぞ。タコヘッドの指導なんぞ。極限にクサクサする!!」
「ランボさん、あの愚か者嫌~い」
だが、嫌がっているのは了平とランボもで、ランボはまったくやる気のない表情で、屁までしていた。
「何とでも言えっ!!オレは、10代目にまかされたんだ!!ひきずり回してでも教えこむからな!!」
「(オレまかせてないー!!)」
先程とは違い、妙にはりきりだした獄寺は、自分の都合のいいように、ツナの言葉をとらえていた。
「次に、クローム髑髏。お前は匣兵器強化のためにも、半分の時間を、アルコバレーノマーモンの残した、幻覚強化プログラムで修業し、残りの時間を、格闘能力アップに使うんだ…。あそこの2人に手伝ってもらってな」
「?」
あそこの2人と言われてわからなかったが、ディーノが指をさした先を見てみると、イーピンを抱きかかえたビアンキがおり、2人は手をふっていた。
「そして、山本武」
「うす!」
クロームの修業内容が発表されると、今度は山本の修業内容の発表となった。
「待ってたぜ!!ディーノさん!何やんだ?」
「…………」
ようやく自分の修業内容の発表なので、山本はうれしそうに笑っていた。
「(幻騎士にコテンパンにされて、ヘコンでると思ったが…明るいまんまじゃねーか…。山本(こいつ)らしいといえば山本(こいつ)らしいが…)」
メローネ基地での戦いのことは、ディーノの耳にも入っており、一見そんな風に見えないが、実は負けず嫌いな山本は、幻騎士に負けておちこんでいるのかと思いきや、いつもと変わらないので、ディーノは少しばかり驚いていた。
「お前はパスだ。待機」
「へっ?」
修業を始めるのに、修業内容を言われなかったので、山本は呆然とした。
「パ…パス!?」
「ナイス!!」
「修業…するのに?」
まさかパスと言うとは思わず、ツナも魅真も呆然としたが、獄寺だけは笑っていた。
「つーか、お前には手ーだせねーんだ。お前にヘタなこと教えれば、あいつにぶっ殺されるからな」
「…?あいつ?」
ディーノの口ぶりからして、どうやら、他に山本に教える人物がいるらしいが、誰のことなのか、山本はわからなかった。
「お前の才能の一番の理解者は本気(マジ)だぜ。今回の修業で、山本武。お前、すげーことになるかもな」
修業はパスだと言われたが、それでも、飛躍的に戦闘能力がアップするのではないかと、ディーノに予想された。
「そんじゃあ…最後に、真田魅真」
「はい!」
ツナ、獄寺、ランボ、了平、クローム、山本ときて、あとは魅真だけとなった。
魅真は一体どんな修業をするのかと、ドキドキしながら待っていた。
「お前は、外で修業をしている雲雀恭弥のもとへ行き、一緒に修業をするんだ。そこで、基礎体力の向上、体技の向上、死ぬ気の炎の強化、ボンゴレ匣の使い方などを学べ」
「えっ!?」
まさかの内容に、魅真は驚いて口を大きくあけた。
魅真だけでなく、事情を知ってるツナ、山本、獄寺も、びっくりして目を丸くしていた。
「なっ、なんで……雲雀さんと…一緒なんですか…!?」
「なんでって……。お前は恭弥と同じ、雲の守護者だろ。なら、同じ雲の守護者同士、一緒の方がいいだろう」
何故雲雀と一緒なのかという理由は、結構シンプルだった。
だが、今はまだ、雲雀と顔をあわせづらい魅真は、顔が青くなったり頬を赤くしたりと、表情がいそがしくなっていた。
「なーに、心配すんなって。恭弥がいるところまで、案内してやっから」
「いえ……そのっ……そういう意味じゃ……」
「修業の説明は以上!!魅真以外、各自修業場所は自分で選べ。バジルは、自分の修業をしながら、みんなをサポートしてくれるからな」
「よろしくお願いします!」
魅真が何かを言おうとしていたが、ディーノは修業の内容を全員に言い終えたので、解散させた。
「芝生頭とアホ牛!!ノートとえんぴつを持って、図書館に来い!!まずは、理論を頭に叩き込む!!」
「(獄寺君の理論指導きたー!!)」
ツナにほめられたのがまだきいてるようで、獄寺ははりきりまくっていた。
「ありゃあ、大変そーだな」
「だね…」
「ところで、山本は修業どーするの?」
「まっ、よくわかんねーから、修業が始まるまで自主練だな」
修業は待機と言われたが、何もしないわけにもいかないので、山本は自分なりに修業をすることにした。
「クローム、来なさい。鍛えてあげるわ」
「…はい」
ビアンキとイーピンと修業をすることになったクロームは、2人のあとについていった。
「それじゃあ魅真、行くぞ」
「は…はい!」
こうして、説明が終わると、それぞれ修業をする場所へと移動していった。
ディーノに着いていくこと、約数十分。
魅真は、以前ツナが、リング争奪戦の時に修業をしていた、並盛山へやって来た。
「ここで…修業ですか…?」
「ああ!この上に、恭弥はいる」
雲雀の名前を出されると、それだけで魅真はドキッとした。
足を進めるごとに、雲雀に近づいていってるので、ようやく会えるという気持ちと、気まずいから会いたくないという、相反する想いが交錯していた。
山を登り始めて数十分立つと、以前ツナが修業していた、開けた場所にやって来た。
「魅真さん!」
そこには、雲雀と草壁がいた。
草壁は笑っていたが、雲雀は鋭い目で、睨みつけるように見たので、魅真は萎縮してしまう。
「恭弥!今日から魅真も、ここで修業するからよろしくな」
「……………」
そう言われても、雲雀は何も言わずに、魅真から目をそらした。
「おい恭弥、何か一言くらい…「うるさいよ」
何も言わない雲雀に、ディーノは注意するが、雲雀は反発するだけだった。
「一緒に修業なんて聞いてないよ。僕はおりるよ」
「えっ!?おい、おりるって…」
「修業をやめるってことだよ」
「何言ってんだよ!!白蘭を倒すには、守護者全員の力が必要なんだ!!」
「知らないよ」
そう言うと、雲雀は本当に山を降りていってしまった。
「おい、恭弥!!」
「恭さんっ!!」
ディーノと草壁が雲雀を呼び止めるが、雲雀はふりむかずに、さっさと下山していった。
「どうしよう…。やっぱり、私が来たから…」
雲雀が修業をおりると言ったのは、自分が雲雀と一緒に修業をすることになったからだと思った魅真は、顔が青くなり、おろおろした。
「大丈夫ですよ、魅真さん」
「え?」
けど、草壁は魅真が言ったことを否定するように、おちつかせるように声をかけた。
「ここは、私におまかせください」
そう言って、草壁は雲雀のあとを追いかけていった。
「あっ……草壁さん!!」
この時代では、雲雀の部下となっている草壁だが、それでも、相手は群れるのが嫌いな雲雀だし、何よりも10年前の、虫の居所が悪い雲雀なので、魅真は心配になって、草壁を追いかけようとした。
「待て、魅真」
「ディーノさん」
けど、そこをディーノに止められる。
「お前はここに残って、修業を始めるぞ。恭弥のことは、草壁にまかせるんだ」
「………………」
草壁のことは心配だが、今自分が行っても火に油をそそぐだけだろうし、ここには修業をしに来たので、ディーノの言う通り、この場所にとどまった。
一方、山を降りている雲雀は、いつになく不機嫌だった。
あの時、魅真が消える前の時よりも、更に…。
「お待ちください、恭さん!!」
そこへ、草壁が手を伸ばしながら、必死になって追いかけてきた。
しかし、雲雀は無視して下へ進み続ける。
「恭さんっ!!あなたは雲の守護者です!!全員が修業をして、力をあわせないと、ミルフィオーレに勝つことはできません!!そうしないと、この並盛もなくなってしまいます!!」
草壁が説得をすると、雲雀はその場に足を止めた。
足を止めた雲雀を見て、草壁は、めずらしく言うことを聞いてくれるのかと、淡い期待を抱いた。
「うるさいよ」
しかし、顔だけ後ろに向けた雲雀の口から出てきたのは、冷たい一言だった。
目がいつもよりもつりあがって、鋭くなっており、声も低くなっていて、不機嫌なのをかくそうともせず、まるで八つ当たりをしているようだった。
「僕にはそんなこと関係ないよ。並盛のピンチで、強い奴と戦えるから修業をしてやっていたけど、魅真と跳ね馬が一緒の姿を見るなら、もう修業なんかやらない。僕は好きにさせてもらうよ」
魅真とディーノが一緒にいる姿を見て頭に血がのぼり、これ以上は見ていたくないので、下山することにしたのだ。
「(並盛のことを出せば、修業をしてくれるかと思ったが…ダメか…。しかし……跳ね馬も言っていたが、今回の戦いは、ボンゴレファミリーの全員が力を合わせなければ、とてもじゃないが、ミルフィオーレには……)」
並盛町の名前を出せば、雲雀は動くと思っていたが、まったく動かず、草壁にとっては大誤算だった。
「(こうなったら……仕方ない…!)」
並盛町の名前を出してもダメならと、草壁はある決意をした。
「恭さん…。将来のことを、自分で考えなくなるからと、この時代のことを教えすぎるなと、リボーンさんに言われていましたが……お話します」
草壁の決意…。それは、この時代の情報を、10年前の雲雀に教えることだった。
「恭さんっ!! ………………!!」
草壁は、話そうと思っていたことを、雲雀に話し始める。
その話の内容は、とても衝撃的で、草壁が話すごとに、雲雀は驚愕して、これ以上は開かないのではないかというくらいに、大きく目を見開いた。
それは、雲雀の今までの人生の中で、一番の驚きと言ってもいいくらいのもので、めずらしく心を揺さぶられた。
そして、草壁の話が終わると、雲雀の頭は冷えて、自分が今までいた上の方を、強くまっすぐな目で見た。
その頃頂上では、魅真がディーノに指導をしてもらいながら、ボンゴレ匣の修業をしていた。
草壁が雲雀を追いかけていってから十数分後、魅真の後ろで、二つの足音がした。
足音がすると、魅真は後ろへふり向き、ディーノもそちらに目を向けると、そこには雲雀と草壁が立っていた。
しかも雲雀は、今までよりもずっと真剣な目をしていたので、魅真は驚いた。
それからは、雲雀も一緒になって、魅真とともに修業をした。
雲雀は急にやる気になり、今までよりも更に熱が入っていた。
魅真は気まずさがあったが、そんなことを言ってる場合じゃないと割り切って、修業に集中した。
そして、日が暮れかけてきた頃に、その日の修業は終わり、雲雀は学校に、魅真はアジトに戻っていった。
「(汗かいたし、まずシャワーかな…)」
休憩時間以外ずっと動いていたので、かなり汗をかいた魅真は、まずはシャワーをあびるために、部屋に着替えを取りに行き、着替えを持つと、シャワールームがある上の階に行った。
「あれ?」
シャワールームに向かっていると、途中でツナ達の姿をみつけた。
「ツナ君、隼人君、武君。それに、笹川センパイにランボ君も。みんなどーしたの?こんなところで」
ツナ達が一ヵ所に集まってそこに立っているので、どうしたのだろうと声をかけた。
「「魅真っ」」
「魅真ちゃん」
「真田!」
後ろから魅真の声がしたので、ツナ、山本、獄寺、了平は、後ろへふり向いた。
「「魅真ちゃん!」」
魅真の声に気づいたのは、ツナ達だけでなく、京子とハルもだった。
ツナ達の前には、距離を置いて、京子、ハル、ビアンキ、クローム、イーピンもいた。
「あれ…。京子ちゃんとハルちゃんとクロームちゃんとビアンキさんとイーピンちゃんもいたんだ」
京子とハルがプラカードを持って立っており、その後ろにビアンキ、クローム、イーピンがいた。
だが、なんでそんなところにいて、しかもツナ達とは距離をあけていて、プラカードを持っているのかもわからなかった。
「何やってるの?みんな集まって…」
「「魅真ちゃん!!」」
魅真が全員に質問していると、京子とハルが、素早くプラカードを壁にたてかけて、魅真のもとまで走っていき、京子は魅真の左腕を、ハルは右腕をつかむと、もといた位置に魅真を連れていった。
「え!?えっ……え………な、何…?」
突然、連行されるように、ビアンキ達がいる方へと連れていかれたので、魅真は理解が追いつかなかった。
「「魅真ちゃん!!」」
「は、はい!」
「魅真ちゃんは、ハル達の味方ですよね?」
「ツナ君達の方には行かないよね?」
「えっ……。なんのこと…?」
要点を言わずに質問責めをされたので、魅真はわけがわからなかった。
「オイ!!魅真はこっちの側の人間だぞ!!解放しろっ!!」
「嫌ですよ!」
更には、獄寺までもわけのわからないことを言い出し、ハルは拒否しながら、男性側には渡さないというように魅真を抱きしめるので、ますます頭がこんがらがる。
「あの……ごめん…。まずは事情を話してくれる?」
理解が追いつかないので、ちゃんとした理由を話すよう、要求した。
魅真に促されると、ハルは魅真を放し、京子とハルは事情を話し始めた。
京子とハルは、今朝、魅真達の目をぬすんで、こっそりトレーニングルームに行き、バイクの後ろに隠れていたこと。
そこで、魅真達の話を聞いたこと。
そして、今この場所に、ちょうどツナ、獄寺、山本、了平、ランボがそろっていたので、ミルフィオーレや白蘭や匣のこと、今起きてることを、もっと詳しく教えてほしいと、ツナ達にお願いしたこと。
けど、ツナ達は教えることなく、オレ達を信じてもう少し我慢してくれないかと言ったこと。
なので京子達は、それなりの措置として、家事と共同生活をボイコットしたこと。
そして、一緒にやって来たビアンキ、途中でイーピンを抱えてやって来たクロームも、京子とハルの側について、まさに、女性対男性の構図ができあがったこと。
魅真がいない間に起こったそれらのことを、すべて話した。
「というわけで、京子ちゃんとハルは、ツナさん達と対立することに決めたんです!」
「そ…そう……」
京子とハルの迫力におされた魅真は、とぎれとぎれで返事をした。
「(やっぱりこうなったのね…)」
いきなりこんな事態になったことに、少々驚いていたが、心の中で、どこか納得してもいた。
「それで、魅真ちゃんはどっちにつくの?」
「え…?」
「こうなった以上は、魅真ちゃんも、どちらかについてもらいます」
「うん」
「えぇ…」
遅かれ早かれ、いずれこんなことになるだろうとは予想していたが、それでも、まさかボイコットまでするとは思わなかったし、いざ直面すると、どうしていいか迷ってしまう。
京子やハルもそうだが、ツナ達も大切な友達なので、どちらかについて対立というのは、気がひけた。
「おい、魅真!!迷うこたねーだろ」
「でも…」
「お前はオレ達の友達で、ともに戦ってきた仲間だろーが!」
「そうだよ。魅真ちゃんは、オレ達と同じ戦闘員じゃないか」
けど、獄寺とツナにそう言われると、はっとなって固まった。
「…わかった」
そして、静かに返事をすると、ツナ達の方へ歩いていく。
魅真がこちら側に歩いてくると、ツナと獄寺と山本と了平はほっとし、京子とハルは、魅真は男性側につくのだと、ショックを受けた。
だが、魅真はツナ達と京子達の間で止まると、京子達に背を向け、ツナ達と向かい合った。
「私……京子ちゃんとハルちゃんにつくわ」
「「「「えっ」」」」
魅真は男性の側につくかと思われたが、女性の側についた。
男性側の方に歩いてきたのに、女性の側についたので、ツナと獄寺と山本と了平は、間のぬけた声を出した。
「なっ、なんで!?」
「どういうことだよ!?」
魅真の答えに納得のいかないツナと獄寺は、理由を聞き出す。
「だって……」
「「「「だって…?」」」」
ツナと獄寺に問われると、魅真は答えるために口を開き、ツナ達男性は、魅真が何を言うのかドキドキしていた。
「ツナ君達……ムカツクんだもの」
魅真の口から出たのは、意外な答えで、ツナ達男性は、全員目を丸くした。
「「「「ええぇええええーーーーっ!!???」」」」
魅真らしからぬ答えに、ツナ、獄寺、山本、了平は、大きな声で叫んだ。
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