標的81 課外授業
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「チョイスとは、2軍に分かれ、戦場となる土地(フィールド)をチョイス(選択)し、それぞれ兵士ユニットをチョイス(選択)し、チームを作り、本陣となる基地ユニットと、その配置をチョイス(選択)し、戦闘を行い、勝敗をつける。勝者は報酬として、敗者の所有物から、欲しい物を何でも一つチョイス(選択)して、奪うことができる。そんなゲームだよ」
その頃、元メローネ基地の正一の部屋では、正一とリボーン(ホログラム)とスパナとジャンニーニが、チョイスの話し合いをしており、正一が、チョイスとはどんなゲームなのかを説明していた。
《思ったよりシンプルだな》
「ま…まあね~。もともとは、僕と白蘭サンが暇つぶしで作ったボードゲームだからね」
リボーンに率直な感想を述べられると、正一は眼鏡をおさえた後、一回せきばらいをした。
「と…ところが…。ぼ…僕がのめりこんでしまい、できることや設定を増やしたために、コンピューターゲームになって…更に自由度を上げて、どんどんアップデートをしていった結果、ゲーム末期には、自走する巨大要塞が画面(ディスプレイ)の中を走り回ったりしてたかな…。アハハハッ…」
《シュミ悪ーな》
「だからさあ~。ぼっ、僕も若かったんだよ!」
リボーンに悪く言われるが、自覚してるのか、正一はムキになった。
《で、白蘭は、"現実に"これをやると言っていたぞ。どう考えればいいんだ?》
「…そこなんだ。ゲームであるチョイスを、"現実に"なんて、できるわけない!!……だが、白蘭サンのことだ…」
《………………もっと細かいルールを教えろ》
「ああ…微妙にいろんなバージョンがあるんだけど、兵士ユニットの数は、開戦前に、それぞれ話し合いなどでチョイス(選択)するんだ。もし、チョイスされたユニットの数が揃わなければ、負けとなる。土地(フィールド)の場所も、開戦前にチョイス(選択)する。ただし、フィールドの広さは、直径10kmと決められている。基地ユニットは、50m³以下であれば、自分でプログラムして設計したものを、自軍の資金で作り、使用することができる。
これを、現実に当てはめると…まず、兵士ユニットとなるのは、リングと匣兵器で武装した綱吉君達だ。フィールドの直径10kmというと、ちょうど並盛町がすっぽり入る広さと考えていい」
《なるほどな。まさに戦争でいうところの、"局地戦"を再現して行う感じだな》
「ああ、そうだね。そして問題は…宿泊施設でもあり、時には攻撃要塞ともなる基地ユニットが、僕らにはないってことだ」
《え!?ま…まさか…実際に、現物で基地を用意しろっていうんですか!?》
「何度も考えてみたんだけど、そう考えるのが自然だよ…」
《そんなこと急に言われても無茶ですよ!!人手も時間も足りません!!》
「それに、10kmって相当広い…。機動力のある兵器が欲しいとこだな」
《基地ユニットはつくれねーし機動力もねえ。どうするつもりだったんだ?正一》
「ぐ………」
痛いところをつかれ、不安でしょうがない正一は、顔が青ざめて、お腹の調子が悪くなった。
「だから困ってるんじゃないか!!僕だって、考えるたびに冷や汗ザーザーだよ!!」
《……………………》
そして、床にすわりこみ、頭を抱えて叫んだ。
《まあ落ち着け》
「うぐ………」
《ここには、ボンゴレの天才発明家と、元ミルフィオーレの天才メカニックがいるんだ。きっと、優秀な方が何とかしてくれるぞ》
けどリボーンは、正一をおちつかせると、ジャンニーニとスパナをたきつける、なんともうまいことを言った。
リボーンが言った言葉に、ボンゴレのアジトにいるジャンニーニも、正一の部屋にいるスパナも、過剰に反応を示す。
《と、当然ですよ!!天才ジャンニーニ!!スパナより、優れた解決法を、考えてみせますとも!!》
「ウチだって、ジャンニーニよりいいアイデアを考える。安心しろ、正一」
のせられた2人は、対抗意識を燃やして、目の前に相手がいなくても、機械ごしに火花を散らせた。
《心強いな、正一》
「う…うん。ありがとう!」
問題が解決したわけではないが、それでも先程よりは、いくらかおちつきを取り戻した。
「僕も、いくつかのプランは一応考えてはいるんだ…」
「!」
「とにかく、今度の戦いは、綱吉君達だけの戦いではない――。僕ら技術屋の戦いでもあるんだ!!」
先は見えないし、大変そうではあるが、それでも正一、スパナ、ジャンニーニの顔は、やる気に満ちていた。
標的81 課外授業
その後、ボンゴレのアジトの大食堂では…。
「じゃあツナ兄達、メローネ基地に、お弁当だけ置いて帰ってきたんだ」
ちょうど夕飯の準備をしており、フゥ太はしゃべりながら、味噌汁をよそっていた。
「うん。入江君もスパナも、何か真剣にやっていて、とても話しかけられる雰囲気じゃなかったからね」
フゥ太と話しているツナも、紙パックの飲み物をトレーにのせて、準備の手伝いをしていた。
「なーに。お前達もすぐに、死ぬほど忙しくなるから、心配すんな」
ツナとフゥ太が話していると、横からリボーンが口をはさんだ。
何やら含みのある言い方をされたので、魅真、ツナ、獄寺、山本は固まり、リボーンを凝視した。
「なんで休み中にそういうこというかな…」
ツナは今までの付き合いから、いやなものを感じた。
「お前達、夕飯くったらちょっとつきあえよ」
「え゙…。ちょっとって何だよ…。 (すごい嫌な予感がする…)」
リボーンが何やら企んでいるようなので、ツナはビクついた。
「…! そういえば、席が空いてるけど、誰の席?」
ふいに目を向けた先の席が、一つだけ空いていたので、疑問に思ったツナは、京子とハルに聞いてみた。
「クロームちゃんです…。帰ってから、一回もごはんを食べてないんです」
「えっ。でも、ごはん食べれるぐらいに回復したって…」
「お部屋の前に、ごはん…置いてきたんだけど…」
来てはいないが、お腹をすかせてるかもしれないので、夕飯だけは置いてきたのだった。
そして、魅真、ツナ、獄寺、山本、了平の全員が夕飯を食べ終えると、リボーンに、今まで来たことのない部屋に連れてこられた。
「なんだよリボーン。こんなとこ連れてきて」
「一体、何の部屋スかね…」
「思ったより、早く、機動力対策はできそうだな」
「ハイ!スパナなんかに、負けられませんからね」
魅真達の目の前にある扉の前には、作業着を着たジャンニーニがいた。
「ここは、この時代の10代目の、コレクションルームの一つですよ」
「!」
「コレクション!?」
10代目の…と聞くと、獄寺は過剰に反応を示した。
「ちょっと失礼しますよ、10代目」
「?」
ジャンニーニはツナのもとまで来ると、しゃがんで、メジャーを取り出して、ツナの足を測った。
「やっぱり短いですね、足」
「なっ!?」
足を測って立ち上がると、いきなり暴言を吐いた。
「何なの、一体!?」
「やはり、サイズ的にも、ヴィンテージのアレがいいでしょうね」
ツナが侮辱されたので、獄寺は腹を立て、ツナははずかしそうにしており、ジャンニーニはツナの言うことを無視して、再び扉の方へ走っていく。
「待っててください。すぐ用意しますんで」
「………………」
そして、ツナ達を置き去りにして、一人中に入っていった。
「わけわかんないぞ!リボーン!!」
「1日早い、課外授業ってやつだな」
「な?」
「白蘭に勝つには、リングと匣だけじゃダメだってことだ」
リボーンが説明していると、突然耳をつんざくようなエンジン音が、部屋の中から聴こえてきた。
「「「「「!!」」」」」
「鼓膜が破れるよ!!何これ!!?」
「すばらしい。ガソリン燃料と、まったく同じレスポンス。これならいけそうです!!」
ジャンニーニは、話しながら、その大きな音がするものを、中からツナ達がいる通路まで持ってきた。
その持ってきたものは、一台のバイクで、リボーンはジャンニーニがバイクを持ってくると、バイクの後ろ側のタンデムシートの部分に乗った。
「バ…!!バイク!?」
「このマシンは、私も敬愛するレーサーレプリカですが、最新のテクノロジーで、ちょっとイジってありましてね。燃料には、チャージした死ぬ気の炎が使われ、最高出力もアップしています。更に、対炎レーダーの対策も、ステルス性能を持つ、マモンチェーン素材が、カウルとエンジンカバーに使われ、バッチリです!!」
「いいかお前ら。匣兵器だけじゃなく、こいつも白蘭との戦いの前に、乗れるようにするからな」
「はあ?なんでバイクが、白蘭との戦いと関係あるんだよ!?」
「正一の情報により、白蘭との戦いが、うっすら見えてきたからだ」
「!! あの、"チョイス"っていう?」
「戦場となるフィールドの広さは直径10km。機動力がものをいうんだ」
「10km!?」
「広~っ」
「そんなに大きいの!?」
「ボクシングのリングだとすると……………極限な広さだ!!」
リボーンにチョイスのフィールドを説明されると、魅真、獄寺、山本、了平は驚いた。
「ですがリボーンさん。オレ達ならともかく、すでに10代目は、すばらしい機動力をお持ちですよ」
「「チッチッチッ」」
「な…なんスか!!」
甘いな…とでも言うように、獄寺が言ったことを、リボーンだけでなく、ジャンニーニも、右手の立てた人差し指を左右にふって否定する。
「恐らく、10代目のグローブの炎をはじめとする死ぬ気の炎は、レーダーで探知されます。炎を探知されない移動手段も、視野に入れる必要があるのです」
「なるほど~」
「だからって、オレ達中学生だぞ!?バイクなんて乗ったらケーサツに捕まっちゃうよ!!」
「10年前の世界ならな」
「…………?」
「この時代では、お前達はプラス10歳なんだ。ちゃんと、こいつが発行されてんだぞ」
どこから持ってきたのか、リボーンは、この時代の全員の運転免許証を見せ、全員にそれぞれの運転免許証を渡した。
「「「「「あっ」」」」」
全員が運転免許証を受け取ると、ワンテンポ遅れて、全員同時に声をあげる。
「う…運転免許証~~!!?」
「実際、この時代のお前達が使ってた、正真正銘の本物だからな」
「ただし、周りに迷惑をかけないためにも、教習所で習うことは、みっちり学んでもらいますよ。トレーニングルームには、簡単なコースも作りましたので」
「ちょっ、ヤダよオレ~!!バイクなんてムリムリムリ!!」
「本当にダメツナだな。ふつう大喜びするとこだぞ。考えるより感じろだ。とりあえず、またがってみろ」
この時代ではプラス10歳で、運転免許証があっても、今現在の自分達は、免許なんてとれない年齢なのに、それでももう決定事項のようなので、全員バイクの練習をすることとなった。
こうして、トレーニングルームで、バイクの練習が始まった。
まずは、ツナがまたがってみて、エンジンをかけた。
「決まってますよ、10代目!!」
「よし。んじゃ、左手のクラッチを握ったまま左足を蹴って、ギアを一速に入れてみろ」
「え…こう?」
ツナは、リボーンに言われた通りに動かした。
「よーし。右手でアクセルをぶん回せ!!」
「ええ?」
そして、次も言われた通りに動かす。
「今だ!!クラッチをパッと放せ!!」
次もリボーンに言われた通りに動かしたが、放した瞬間に、前輪が浮き、すごい勢いで走り出すと、そのまま目の前の壁に激突して、ひっくりかえってしまった。
「じゅ、10代目!!」
「ツナ君!!」
「う…う~ん…」
「大丈夫か、ツナ!!」
バイクから落ちて、床にたたきつけられたツナは、仰向けに倒れ、体を痙攣させていた。
「リボーンさん!!なんで間違った運転方法を教えるんですか!?クラッチを急にはなしたりしたら…!!」
「最初に怖さを知っといた方がいい。これがオレの教え方だ」
ジャンニーニは、何故間違った教え方をしたのかリボーンに問うが、リボーンは平然とした顔で、とんでもないことを言ってのけた。
「(なんてお方だ…)」
その、リボーンのとんでも発言に、ツナもジャンニーニもショックを受けた。
「というか、大事なバイクですよ!!」
「どうだ。楽しかったか?ツナ」
ジャンニーニが抗議するが、リボーンはジャンニーニを無視して、ツナに声をかける。
「……あの…この際白状するけど………。オレ…小五になるまで、補助輪ないと、自転車に乗れなかったんだ…。どう考えても、バイクなんて乗れっこないよ…」
「チャリンコとバイクってのは、別もんだ。第一、人間どこに才能が眠ってるかなんて、案外わかんねーもんだぞ」
「(…こいつ、絶対やらす気だ…)」
ツナが弱気な発言をしても、他の者達もだが、ツナがバイクの練習をするのは、もう決定事項なので、あっさりと返されると、ツナは顔が青ざめた。
こうして、休日の2日目は、朝からバイクの練習の日になった。
しかし、獄寺とバジルは、すでに大型バイクの運転までマスターしていたのだ。
ツナと同じで初心者の山本は、あっという間に自分の手足のようにバイクを操り、了平も何度か転んだが、めげることなく練習していった結果、乗りこなせるようになった。
「極限ドリフト!!!」
「なんという危険な…」
「ついに曲がったな」
しかも、曲がる時にスピードを出し、かなり体を傾けるという、危険なことまでやっていた。
魅真は、運動神経はツナと同じく良い方ではないし、初心者で、バイクの運転はしたことがないものの、雲雀と一緒に乗っていたので、バランス感覚はなんとなくつかめていたので、何度も練習しているうちに、乗りこなせるようになった。
そしてツナは……。
「ひ~」
バイクを止めたツナは、バイクからおりながらヘルメットをとった。
「なんとか転ばなくなったけど…。も~ヘトヘト~」
四苦八苦しながらも、なんとか乗れるようになったツナは、見るからに疲れきっており、目の前のベンチに寝ころんだ。
「すばらしい上達ですよ。10代目!」
「やるじゃねーか、ツナ」
「よく言うよ…」
ギリギリ乗れるようになっただけなのに、リボーンとジャンニーニに褒められたので、ツナはぐったりしながら返した。
「山本なんて、ウィリーとかしてるのに」
目の前の山本は、前輪を浮かせて、後輪だけで走行する、ウィリーという技をやっていた。
「あいつは、ボンゴレトップの運動神経を持ってんだ。あれが普通だ。それより、小四まで自転車に乗れなかった奴が、1日でこけずにバイクを乗れるようになった方がすげーぞ」
「…………………たしかに…。こんなに早く上達できたことなんて、人生初めてかも…」
ただ乗れるようになっただけだが、それでも、たったの1日でころばずに乗れるようになったので、ツナは達成感を感じており、ツナが言ったことに、リボーンはニッと笑った。
「やってるわね」
そこへ、ビアンキがやって来た。
「さあ、あなたたち、今夜は歓迎会よ!」
ビアンキがやって来たのは、夕飯及び、了平とバジルの歓迎会の準備ができたからだった。
魅真達は、ビアンキがやって来ると練習をやめて、全員大食堂へ集まり、歓迎会を始めた。
「いいかお前ら!!オレが来たからには、極限に大丈夫だ!!打倒白蘭!!打倒ミルフィ…」
「バーカッ」
「ふがっ」
京子とハルには、ミルフィオーレファミリーのことは秘密にしているのに、危うく言いそうになったので、獄寺が後ろから、了平の首を腕でしめた。
「女子供には、今度の、白蘭達との戦いのことは、言わねーよーにしてんだろがっ!!ジュースで酔ってんじゃねえ!」
「おっ…おっとしまった!!10年前の、相撲大会の話をしてしまった!!」
了平の耳元で、小声で注意をすると、はっとなった了平は、あわてて訂正するが、それはいつものめちゃくちゃなものだった。
そんな二人のやりとり…おもに了平の発言を聞いた魅真は、ぎょっとした。
その後に、京子とハルを見てみると、何も言わずににこにこと笑っているだけだったので、これはまずいかも…と思い、ひやひやしていた。
そんな魅真の心配をよそに、パーティーは進んでいき、2時間ほど楽しむと、各自風呂に入り、部屋へ戻っていった。
風呂に入った魅真は、部屋に戻ると部屋の机にすわり、机に置いてあるリングを装着して、死ぬ気の炎を灯すと、同じように机に置いてあった匣を開匣した。
と言っても、これはボンゴレ匣ではなく、以前雲雀にもらった通常の匣兵器だった。
炎が注入された匣はフタが開き、中からは雲ハリネズミが出てきた。
「キュッ♪」
雲ハリネズミは机の上に着地すると、すぐに魅真をみつけ、うれしそうな顔をした。
魅真は匣を机に置くと、人差し指を伸ばして、雲ハリネズミの頭をなでた。
なでられると、雲ハリネズミは目を細め、心地よさそうな顔をする。
「明日からまた、修業が始まるんだ。また、頼ることもあるかもしれないけど…。その時はよろしくね」
「キュゥ」
人語は話せないが、それでも魅真が言ってることが理解できている雲ハリネズミは、魅真の言葉に答えた。
そんな雲ハリネズミになごんだ魅真は、にこっと笑い、もう一度頭をなでようとした。
だがその時、指が雲ハリネズミの頭にふれるかふれないかというところで、ものすごい爆発音が、男性用の寝室がある、上の階から響いてきた。
「なっ、何!?」
この音にびっくりした魅真は、音がした上の方…天井を見上げた。
「(まさか……そんなことはないと思うけど、ミルフィオーレ!?)」
魅真はまさかと思ったが、それでも可能性はゼロとは言い切れないので、雲ハリネズミを匣に戻し、すべてのリングと匣を持つと、上の階へと急いだ。
上に向かっている間も爆発音は続いており、上に着くと、周りには、特にミルフィオーレらしき影は見当たらなかった。
それなら、一体なんなのかと、魅真はますます疑問に思った。
「あっ」
爆発音が聞こえた方へ進んでいくと、そこには獄寺、山本、了平、バジルが、ツナの部屋の前に立っていた。
「みんなっ」
魅真は彼らの姿を見ると、声をかけた。
「「魅真っ」」
「魅真殿!」
「真田っ」
声をかけられると、全員魅真の存在に気づき、魅真の方に目を向けた。
「(あそこはツナ君の部屋の前…。まさか、ツナ君に何か…)」
他のみんなはいるのに、ツナだけがおらず、しかも彼らがいるのはツナの部屋の前なので、まさか…と思った魅真は、足を早くした。
「ツナ君!!」
魅真は、ツナの部屋の、壊れた扉の前まで来ると、部屋の中をのぞいてみた。
「!!」
部屋の中には、巨大な炎の化け物と、ハイパーモードになって、化け物の口をおさえているツナがいた。
「ツナ君!!」
どこからどう見ても、ただごとではない雰囲気に、魅真はツナの名前を叫んだ。
「なんだ!!あの炎のかたまりは!?」
今しがた来たばかりの了平も、ツナを襲っているものがなんなのかわからなかった。
「!! 沢田殿の足元に!!」
「!!」
その時、バジルがツナの足の下にあるものを発見した。
バジルに言われて見てみると、そこには、フタが開いた状態の、オレンジ色のボンゴレ匣がころがっていた。
「ボンゴレ匣!!ってことは、10代目の匣兵器!!」
ツナを襲っている炎のかたまりの正体は、ツナの匣兵器だった。
「あれが、匣兵器?」
「どう見ても怪物だぞ!!」
「それに、どうしてツナ君の匣兵器が、ツナ君を襲ってるの!?」
見たことのない姿の上、主であるツナを襲っているので、魅真、獄寺、山本は疑問に思った。
「危険だ。下がってろ!!」
ツナは匣兵器をおさえながら、魅真達に注意を促す。
そして、匣兵器をおさえている手を放すと、横に移動をした。
匣兵器はツナのあとを追ってくるが、ツナは匣兵器が近くまでせまってくると、自らも距離をつめて、頭を殴り、ひるんだ隙に、上に移動をして、半回転して体勢を立て直すと、そこから炎を噴射した勢いで、口の上に蹴りをくらわせた。
今のは効いたのか、匣兵器は叫び声をあげて、ツナから離れていく。
「!!」
だが、後ろの部分の炎を伸ばして、ツナの手足を縛ると、再びツナに襲いかかってきた。
「(なんてパワーだ。ほどけない!!)」
ほどこうとはしたが、匣兵器の力が強すぎて、それは敵わなかった。
「がっ」
その隙に、匣兵器はツナの腹に体当たりをしたので、ツナは勢いのままに、壁に激突した。
「10代目!!」
「ツナ君!!」
「ツナ!」
ツナがやられると、魅真、山本、獄寺は、ツナの名前を叫ぶ。
「ぐあっ…」
ツナは劣勢に立たされ、苦しみ、先程までの勢いがなくなってしまった。
「のやろ!!」
「待ってください!!」
この状況をなんとかしようと思った獄寺は、匣を取り出して、リングに炎を灯すが、そこをバジルに止められる。
「獄寺殿の嵐の匣兵器の特性は、"分解"!!ヘタをすれば、沢田殿の匣兵器を傷つける恐れがあります!!」
「だったらどーしろっつーんだ!!これ以上、苦しむ10代目を見てらんねー!!」
「拙者が沈めます」
「!!」
ツナの匣兵器を沈める役を買って出たバジルの顔は、どこか自信に満ちていた。
「皆さんは、下がっていてください」
そして、一歩前に出ると、匣を取り出し、リングに炎を灯した。
「おい!!」
「バジル!!」
「バジル君!!」
みんなが叫ぶが、バジルはツナのもとへ走っていった。
「いくぞ、アルフィン」
ツナの前に来ると、バジルは匣に目を向けて、匣兵器の名前を呼んだ。
「開匣!!」
そして、リングに灯った、山本と同じ色の、青い死ぬ気の炎を、匣の穴に差しこんだ。
すると中からは、雨属性の死ぬ気の炎をまとったイルカが出てきた。
「イルカ!!」
バジルの匣兵器に、魅真達は目を見張る。
「(アルフィン…。あれでいこう)」
バジルはテレパシーで作戦を伝えると、イルカは了解するように鳴いた。
すると、アルフィンの胸びれが光り、そこからたくさんの、ドルフィンエッジという名の、バジルの武器のような形の三日月型の刃が、ツナの匣兵器をめがけてとんでいった。
「ギャアア!!!」
命中すると、匣兵器は苦しみの声をあげる。
「……!! 怪物が苦しんでる…」
「ドルフィンエッジは、体内をえぐる雨の鎮静の炎の刃。いわば、対匣兵器用の麻酔弾です」
バジルが今の技について説明していると、匣兵器は鋭い目で、後ろにいるバジルを睨みつけ、体の炎を槍のように複数伸ばすと、ドルフィンエッジを消してしまった。
「!! (効いていないのか!?)」
くらったはずなのに、それでも動きは鎮静化されていないので、バジルは驚いていた。
更には、アルフィンを檻に閉じこめるようにして、炎で包みこもうとした。
「しまった!! (予想した力を、はるかに上回っている!!)」
このままではやられてしまうと、バジルは思った。
すると、アルフィンの後ろから、バジルと同じ青い死ぬ気の炎が匣兵器の炎に向かってきて、匣兵器に襲いかかった。
「!?」
「!!」
「あれは…」
「同じ…青い炎…」
それは、山本の雨燕だった。
「お前だけが、雨属性じゃないぜ」
「山本殿!!」
なんとか危機を回避することができ、雨燕とアルフィンは、一気にたたみかけるように、匣兵器に雨の炎をあびせた。
「ギャアアア」
匣兵器は再び苦痛の叫び声をあげると、今度は効いたようで、匣の中に戻っていった。
「助かりました!!」
「協力プレーだな!」
危ないところを助けてもらったので、バジルは山本にお礼を言った。
「うう…」
壁の方では、なんとか助かったツナが、壁に力なくもたれかかっていた。
「!! 10代目ぇ!!」
「大丈夫か、沢田!?」
「ツナ君!!」
「みんな…ゴメン…」
バジルと山本の匣兵器が匣に戻ると、全員ツナのもとへ駆けていく。
「やはり、今のは、沢田殿の匣兵器………………」
「う…うん…。普通に炎を注入したつもりだったんだけど…」
ツナの目の前までやってくると、バジルがツナに聞き、ツナは簡潔に答えた。
「いきなり、あんなのが飛び出してきて…」
「ですが、おかしいです!匣は全て、地球上の生物を模しているはず!」
「……」
ツナの答えに頭を悩ませたバジルに、獄寺はハッとなった。
「……!! まさかっ、入江の奴が、不良品を!!」
「そんなぁ!?」
「いいや、今のはツナが悪いぜ」
ツナがなげいていると、後ろから、このアジトにはいない第三者の声とともに、オレンジ色の炎をまとった、細長く白い足の動物が現れた。
「あれは、お前の匣兵器、本来の姿じゃない。特に、大空の匣はデリケートなんだ。こんな開匣をくり返していたら、使いものにならなくなるぞ」
それは、オレンジ色の炎のたてがみをもつ白い馬に乗った、ディーノだった。
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