標的80 つかの間の休息
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日…。
魅真、ツナ、獄寺、山本、了平は、アジトの小食堂に集まっていた。
小食堂にあるテーブルの一つに、片側には了平が1人ですわり、了平の向かい側には、了平以外の全員が、壁側から、山本、魅真、ツナ、獄寺の順番ですわっていた。
「つまり…。お前達が、この10年後の未来に来てみたら、オレ達の所属するボンゴレファミリーにとって、とんでもなく、ひどく荒んだ世界になっていた…」
そこで魅真達が、この場所はどこなのかということと、今の現状を了平に説明し、了平は話をまとめるために、何故か、スケッチブックにマジックで絵を描いていた。
「そこで、過去に帰ろうと、元凶であろう男、入江を倒しにいったら」
そして、魅真達が話したことを復習するように話しながら、スケッチブックに描いた絵を魅真達に見せた。
スケッチブックには、悪人顔の正一の顔が描かれていたが、お世辞にもあまり上手とは言えない絵だった。
「実は入江はいい奴で」
話しながら、今の絵が描かれたページをめくると、そこには善人顔の正一が描かれていた。
「極限に悪い奴は、7³を集め世界征服を企む、ミルフィオーレというファミリーのボス白蘭と判明!!」
そして、またページをめくると、今度は白蘭の顔が描かれていた。
「奴は、己の欲望のためには手段を選ばず、真6弔花という、恐ろしい部下までいる!!10日後に奴らを倒さねば、過去には帰れぬどころか、人類の危機らしい!!」
更にページをめくると、白蘭を中心に、周りに真6弔花の顔が描かれていた。
「打倒白蘭!!!打倒真6弔花!!!!」
まるで紙芝居をするように、スケッチブックをめくって自分が書いた絵を見せながら、自分が聞いたことを話し終えると、突然立ち上がってスケッチブックを後ろに放り投げ、吠えるように、これからの目標をかかげた。
標的80 つかの間の休息
「………」
目標をかかげると、了平は荒い息をくり返し、そんな了平を、魅真達は呆然と見ていた。
「…というわけだな」
「え…ええ…。た…多分…」
「甘やかすことないっスよ」
「え?」
ツナが煮え切らない返事をしていると、ツナの隣にすわっていた獄寺が口を出した。
「てめー、たったこんだけ理解すんのに、5時間もかけてんじゃねえ!」
「何だと!?」
実は、了平にこの話をしたのは、5時間も前。朝からずっと説明をして、ようやく理解した了平に、獄寺が悪態をつくと、了平は腹を立てた。
「オレは、二転三転する話は、二転目までが限界なのだぁ!!」
「自慢することか!!っバーカ!!」
腹を立てた了平は、立ち上がってテーブルを片手で壁にとばし、獄寺も立ち上がり、更に悪態をついた。
その様子に、ツナはびくびくしており、魅真は呆れ、山本はこんな状況でも平然としてすわっていた。
「バカと言った奴がバカなのだ!!」
「いいや!バカな奴がバカだね!!」
「ひっ!!」
言い争いが絶えず、壁にたたきつけたテーブルが下に落ちて大きな音をたてたので、ツナはびびっていた。
「まーまー」
けど、そこへ山本がいつもの調子で、獄寺と了平に声をかけてきた。
「やっと再会できたんじゃねーか!仲良くいこーぜ」
「おめーは安静なんだろーが。すっこんでろ、野球バカ!!」
そして、獄寺と了平の間に入ると、2人の肩に腕をまわして仲をとりもつが、2人はあまりいい顔をしていなかった。
「聞けばセンパイも、過去で、オレ達が次々と行方不明になっちまって、心配して、日本を5周も捜索してくれたなんて、うれしーじゃねーか!!」
「そうだね。ありがとうございます、笹川センパイ!」
「おかげで、身も心も、極限にたくましくなってしまったぞ!!」
山本と魅真が素直な気持ちを述べると、機嫌が直った了平は、そでをまくって、右腕の力こぶを見せた。
「なーに言ってやがる!妹見つけたとたん。
京子ぉ~っ!!京子ぉ~っ!!」
「当然だ!!」
けど、獄寺はまったく変わらずで、今度は悪態をつかないものの、からかうように、昨日京子と再会した時の了平を再現してみせた。
「宇宙に一人しかいない、かけがえのない妹だからな!!」
からかわれるが、了平ははずかしげもなく言い切った。
「この恐ろしい話を、京子は知っているのか!?」
「いえ…。白蘭や、今の詳しい状況については言ってません…」
そこまで言い切ると、急にはっとなり、ツナにそのことを聞いた。
「(なんか、10年前のお兄さんが来て、みんな明るくなったな…。オレが言うのも変だけど…。若さってスゴイな)」
もともとにぎやかな雰囲気だったが、了平が来て、更ににぎやかになった。
ツナはどこか混乱しているようにも見えたが、少しだけ笑顔を浮かべた。
というのも、あまりにもいろいろなことがありすぎたからだった。
昨日アジトに帰ると、ラルは体調を崩して、医療室に運ばれた。
大変なケガを負ったものの、ツナも魅真も山本も獄寺も、見る限りは元気だったが、ボンゴレ匣は、メローネ基地での戦いで気力を使い果たしたせいで、リングの炎が弱くて開匣はできなかった。
それに、あまりにいろんなことがいっぺんに起こったせいで、全員、気持ちと頭が混乱していた。
なので魅真達は、白蘭との戦いの修業に入る前に、2日間しっかりと休むことにしたのである。
獄寺、山本、了平がいつものように、悪態をついたり、笑ったり、さわいだりしている姿を、ツナが見ていた。
そんな中、魅真は、その様子を見ながら、ぼんやりとして、考え事をしていた。
「(雲雀さん…どこ行っちゃったんだろう…。草壁さんが、探しにいってくれたけど…)」
それは、この時代に来た、自分達の時代の雲雀のことだった。
雲雀は、みんながアジトに帰る途中、アジトには行かずに、一人でどこかへ消えてしまい、草壁はその雲雀を探しにいった。
「(なんか……雲雀さんが、このアジトに来なくてよかったような…残念なような…)」
魅真は、雲雀が近くにいないので、少し落ちこんでいた。
「(確かに、昨日アジトに帰る時、ミルフィオーレは影も形もなかったから、今はどこにいても大丈夫だろうけど…。でも…やっぱりな…。だけど、近くにいたら、それはそれで、なんだかすごい話しづらいし…。今そんなことになったら、絶対に、わざとらしいくらいに逃げちゃうだろうしな。そしたら、ますます雲雀さんの機嫌が悪くなりそうな気がする…)」
けど、雲雀のことが心配だが、それでもまだ気まずいので、雲雀がここにいなくてよかったような、よくないような、複雑な気持ちを抱いていた。
「魅真ちゃん」
考えこんでいると、突然ツナが話しかけてきたので、声がした方へ顔を向けた。
「そろそろご飯食べにいかない?京子ちゃんとハルが、用意してくれてると思うし」
「え?そうだね。そうしよっか」
もうお昼ご飯の時間なので、魅真が考え事をしている間に話がまとまり、ぼーっとしている魅真にツナが声をかけた。
そして、今いる小食堂を出て、大食堂に移動している間にフゥ太とランボと会い、みんなで大食堂に行った。
「極限にメシだ!!メシメシ!!」
「あ」
「ツナさん❤」
大食堂に入ると、京子とハルとビアンキとイーピンが、すでにご飯を食べていた。
「オレ達も、そろそろごはんにするよ」
「せっかくのオフがてめーのせいで潰れるぜ」
「黙らんか!!」
獄寺は、まだ先程のことをひきずっており、了平に悪態をつくと、了平は顔を赤くして反発した。
「この後のことで、相談があるんだけど」
「?」
「相談…ですか?」
「ふげっ」
魅真達が入ってくると、ビアンキが話しかけてきた。
けど、今のビアンキはゴーグルをつけていないので、獄寺はビアンキを見るなり、顔色を悪くして倒れた。
「獄寺君!」
「大丈夫?隼人君!」
「ビアンキ、ゴーグルつけて!!」
「ごめんあそばせ」
「獄寺は、姉を見ると気絶するのだったな」
ツナに注意をされると、ビアンキはゴーグルをつけ、すわっていた京子とハルは、ビアンキの両隣に来た。
「食後にこの娘達、地上散策に連れて行きたいんだけど」
「地上(うえ)に!?でも、危ないよ…!!」
「あなた達が帰ってきてから、レーダーに怪しいモノは、何一つ映っていないわ。きっと10日後までは、何も起こらないと思うわ」
「でも…」
そうは言われても、京子とハルは身を守る術がないので、ツナは心配で躊躇していた。
「だったら、オレ達も一緒に行こうぜ。護衛っつーかさ」
「そうだね。私もちょっと気になるし」
「…それなら」
でも、そういうことなら、戦う術がある自分達が一緒に行けば問題ないだろうと、山本と魅真に言われたツナは納得をし、許可が出た京子とハルは、うれしそうにしていた。
「ついでに、入江正一さんに、差し入れ持ってったら?昨日から、不眠不休で働いてるらしいよ」
この後のことが決定すると、京子とハルはツナ達のお昼ご飯の用意をして、用意ができると、ツナ達はお昼ご飯を食べ始めた。
一方、そのメローネ基地跡地では…。
「正一」
ヘッドホンをつけて、音楽を聴きながら作業をしている正一に、スパナが声をかけた。
「装置を隠す、掘削ルートのメドがたった。あとは、嵐モグラで掘るだけだ」
「いいね!助かるよ、スパナ」
ノートパソコンを5台用意して、そのうちの1台を操作して、スパナは装置を隠すための作業をしていた。
装置から伸びた太い配線を持ちながら、正一はスパナにお礼を言う。
「装置自体も、問題なく作動してる………………。綱吉君達と同時期に入れ替わった彼も、そろそろここへ来るはずだ」
「?」
「とはいっても、白蘭サンとの戦い。問題山積みだな…」
いろいろとやることがある上に、先行きが不安なので、正一は頭をかいた。
「一体、何で勝負するんだ?」
その時、正一とスパナ以外の人物の声が聞こえてきた。
「ボンゴレが、コレを置いてった」
スパナが手の上にのせてるのは、ツナの通信機で、そこからリボーンのホログラムが現れた。
今正一に声をかけたのは、リボーンだった。
「ちゃおっス」
「リボーンさんか。ちゃ…ちゃおっス…!」
リボーンがいつものあいさつをすると、正一もどこか言いにくそうにしていたが、リボーン流のあいさつをで返した。
《白蘭が、力比べで、10日後にやると言っていた、"チョイス"ってのは、何なんだ?》
「…チョイスね……………。学生の頃…僕らの間ではやってた自作のゲームのことなんだ…」
《ゲーム?》
「戦争のね」
リボーンがここに現れたのは、正一にチョイスのことを聞きたかったからで、聞かれると、正一はチョイスがなんなのかを答えた。
同じ頃、お昼ご飯をすませ、準備が整うと、魅真達は地上に行くために、エレベーターに乗っていた。
「ワクワクです♪ケーキ屋さんが、10年たってどうチェンジしてるか、楽しみですね!」
「新メニュー、増えてるかなー!」
エレベーターの中で、京子とハルは、うれしそうに笑いながら話していた。
「ねっ、楽しみだね!魅真ちゃん」
「どんな感じになってるのか、わくわくしますね」
「え?そうだね」
2人の後ろで、雲雀のことを考えてぼんやりしていた魅真は、突然京子とハルが自分の方に向いて話しかけてきたので、少しだけ歯切れの悪い返事をした。
「………」
一方で、魅真の隣にいるツナは、どこか重苦しい雰囲気になっていた。
そんなツナを、隣にいるビアンキは、まるで釘をさすように横目で見た。
「! ………」
ツナが重苦しい雰囲気になっているのは、外に出る前に、食料庫でビアンキと話したからだった。
その内容は、京子とハルが本当に地上に行きたい理由で、2人が地上に行きたい理由は、自分の家に行きたい…というものだった。ひきとめる理由はないが、恐ろしい現実が待っているかもしれず、ツナはボスなので、しっかりとフォローをしろと言われたのだ。
「(ビアンキ、女子のことになると、怖いんだよな~…。10年経って、さらにアネキぶりに磨きかかってる気がするし…)」
あの時のことを思い出していたツナは、どこか気が重そうだった。
「(…本当は、行くの止めるべきなんだろうけど…。自分の家に戻りたい気持ち…。家族に会いたい気持ちはわかるしな…)」
お昼ご飯の前に、地上に行くことを了承したものの、京子とハルを連れていくことに、まだ少し躊躇していたが、それでも気持ちはわかるので、絶対にダメとも言いきれなかった。
「(…母さん。…父さん)」
そして、ツナの脳裏には、奈々と家光の姿が思い浮かんだ。
その時、けたたましいサイレンの音が鳴りだした。
「!!」
「何だ!?」
突然サイレンが鳴りだした、音からしても、ただごとじゃないのはわかった。
《Aハッチに、リング反応です!!ミルフィオーレの可能性もあります!!》
サイレンが鳴った後に、ジャンニーニからサイレンが鳴った原因を知らされた。
「10代目!!」
「見に行くべきじゃねーか?」
「心配だし、行ってみましょう」
「え!?あ…そうだね…」
魅真、山本、獄寺に促されると、ツナは魅真、獄寺、山本、了平と一緒に、ジャンニーニに言われた場所へ行ってみることにした。
「ちょっと行ってくるね!」
ツナは、京子とハルをビアンキにまかせて、エレベーターから出ようとした。
「…あ…」
けど、京子とハルは、不安そうな目でツナを見た。
「だ…大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから…。そしたら、行きたい場所へ行こう!」
京子とハルが不安そうに見た理由がわかると、安心させるように、努めて明るい顔を見せた。
「ツナさん………」
「ツナ君…」
ツナが明るい顔を見せると、京子とハルは、まだ少し不安は残っているものの、少しだけ明るくなる。
ツナ、魅真、獄寺、山本、了平は、ジャンニーニが言っていたAハッチに行き、そこから外に出て、リングの持ち主を探していた。
「この辺りだね」
「まちがいありません」
草と木が鬱蒼と生えている森の中なので、みつけるのは困難のように思えた。
「?」
その時、葉がこすれる音が上からしたので、そちらの方へ顔を向けた。
「え。ひっ、人~~!!」
音がした方からは、突然人が落ちてきた。
「ちょ、どーしよ」
よけるなりなんなりすればいいのだが、ツナはそのことが頭にないのか、その場であわてていた。
「で」
「ぐっ」
そうこうしているうちに、その人物とツナの頭がぶつかってしまい、その痛みで、ふってきた人物だけでなく、ツナもその場に倒れ、ツナは痛みをこらえるように後頭部をおさえた。
「あだーー!!」
「ツナ君!!」
「沢田!!」
「大丈夫か、ツナ!!」
突然のアクシデントで頭を痛めたツナを、全員心配した。
「てめー、何モンだ!!」
ツナにぶつかったのと、突然現れた人物に、警戒した獄寺は、ダイナマイトを構えた。
「申し訳…ありません…」
「?」
「沢田…殿…」
「あ」
「ああ!!」
相手は謝罪しながらゆっくりと起き上がる。
聞き覚えのある声と、独特の呼び方に、全員目を見張った。
「き、君は…」
何よりも、見覚えのある顔に、ツナはとても驚いた。
「助太刀に参りました!!」
「バジル君!!!」
そこに現れたのは、自分達の時代のバジルだった。
「こ…こいつ、オレ達の知ってる、10年前のバジルっス!!」
「うっ…」
「おい、大丈夫か!?」
「どこかケガしたの!?」
「情けない話ですが…体に、力が…」
バジルは一度起き上がるが、再び倒れたので、魅真と山本は心配した。
「何か欲しいの!?水!?」
「できれば…おむ…すび…を…」
倒れたのは、ツナとぶつかった時の衝撃というよりは、単にお腹がすいているからで、大きなお腹の音が鳴った。
リング反応が敵でないとわかると、ツナ達は、一度バジルを連れてアジトに戻った。
そして、バジルがお腹がすいてるので、京子とハルにご飯を作ってもらい、席をはずしてもらった。
ご飯ができると、バジルはすごい勢いで食べ始めた。
多めに作ったのだが、その食料は、どんどんバジルのお腹の中におさまっていった。
「バジル君…よく食べる」
「よっぽどお腹がすいてたのね」
「あいつ、ちっこいくせに、マンプクキャラだったんすね…」
「見ていたら、極限にオレも腹へってきたぞ」
「食ったばっかじゃないっスか!!」
バジルの意外な食べっぷりに、ツナと魅真と獄寺は驚き、山本は了平が言ったことに笑っていた。
ツナ達が話していると、バジルは食べ終わったようで、息を吐くと、手をあわせた。
「ごちそうさまでした」
感謝の気持ちを述べた時のバジルは、とても満足そうな顔をしていた。
「とてもおいしかったと、京子殿とハル殿にお伝えください」
「きっとよろこぶよ!」
「それにしても、驚きました。本当に、並盛の地下に、こんな立派なアジトができていたなんて!」
「! お前、10年前から来たのに、このアジトのこと知ってんのか?」
ボンゴレのアジトのことを最初から知ってる口ぶりだったので、獄寺は反応をした。
「はい!全てはボンゴレの勅命である、死炎印のついた、この「助太刀の書」に記してありましたから」
バジルは話しながら、その助太刀の書と匣を取り出した。
「す…助太刀の書!?」
「はい。このアジトへのルートと、この時代での戦い方が記されており、いざという時は燃えてなくなる、極秘文書です。拙者、この時代に来たのは10日前で、場所はスペインだったのですが…その時、パスポートと匣兵器と共に置いてありました…」
「CEDEF…。たしか門外顧問組織のことです」
「父さんやラルと同じ組織の!」
獄寺は、テーブルに置かれたバジルの匣を持ちあげると、匣に刻まれた文字を読みあげた。
「残念ながら、ここに来るまで、仲間には誰にも会うことはできませんでしたが、この書と匣兵器のおかげで、途中で出くわしたミルフィオーレファミリーを、何とか撃退できたんです」
「え!バジル君、もうミルフィオーレと戦ってるの?」
「ええ!6回ほど戦闘を」
「つまり、何者かの指示で、バジルはツナ達とは別のルートで鍛えられ、ここに合流したと考えられるわね」
そこへ、京子達と一緒にいたはずのビアンキがやって来て、バジルが何故ここにやって来たのかという、自分の考えを述べた。
「鍛えられるって…メローネ基地でのオレ達みたいに?でも…何のために…?」
「にぶいわね。CEDEFは、普段は外部の機関だけど、いざという時にはボンゴレを支える特別機関よ」
「その通りです。「助太刀の書」は、こう締めくくられていました。若きボンゴレ達と共に、白蘭を砕けと!!」
「おい…」
「っということはだ!!」
「それじゃあ…」
「極限に、打倒白蘭の仲間だな!!」
「よろしくお願いします!!」
「バジル君、強いし、心強いよ!!」
バジルが味方になるためにここにやって来たとわかり、全員喜んだ。
「でも一体、誰がこんな手のこんだこと…」
「そりゃ、この時代の10代目に決まってますよ!!」
「! またオレー?(うれしくないんだけど…)」
バジルをここに来るように指示したのは、恐らくこの時代の自分だと知ったツナは、顔がひきつった。
「ツナ、さっきから、ハルと京子がおまちかねよ。そろそろ地上へ行きましょ」
「あ…そうだね」
そのことを伝えるために来たビアンキは、話がひと段落したところを見計らって、ツナに声をかけると、ツナはビアンキに顔を向けた。
「よかったら、バジル君も一緒に…」
バジルを誘いながら、再びバジルの方へ顔を向けた瞬間、何か固いものがぶつかる音がした。
それはバジルがテーブルに顔にぶつけた音で、バジルは眠ってしまっていた。
「あ…」
「寝ちゃった…」
「………電池切れたみてーに」
「よほど疲れていたのだな…」
「ああ…」
バジルも誘おうと思ったが、こんな状態ではそれもできず、空いている男性用の寝室にバジルを運んで、ベッドに寝かせた。
そして、バジルを寝かせると、ツナ達は京子達と合流して、地上へとでかけた。
ある程度歩いていくと、途中の十字路で、ツナとハルとビアンキはハルの家に行くために、京子と了平は自分の家に行くために、他は、山本とランボとイーピン、魅真と獄寺で分かれた。
「隼人君は、自分の家に行くの?」
「いや、たぶん引っ越してるだろうから、時間まで、適当にヒマつぶそうと思ってる」
「そっか」
「一緒にその辺ぶらつくか?」
「いいの!?」
「ああ」
「じゃあ、よろしくね」
「…おおっ…」
一緒に行くことを提案されると、魅真はうれしそうに笑い、獄寺は魅真の笑顔と、一緒に行ける喜びで、顔を赤くした。
獄寺が一緒に行くのを提案したのは、単純に魅真と一緒にいたかったのと、あとは、魅真はこの時代に来る前に雲雀とケンカしたから、きっと雲雀の家に行きづらいし、行くことはないだろうという考えからだった。
2人は適当に、街や店を見てまわっていたが、魅真はたまに、獄寺と話したり街を見たりしながらも、どこかきょろきょろしていた。そして、辺りを見回しながら、たまに沈んだ顔もしていた。
何故そんなことをしているのか、何故そんな顔をするのか、獄寺はわかっていたが、その時はあえて何もつっこまなかった。
それから、何十分か町を歩くと一休みすることにして、近くの公園まで行くと、ベンチにすわった。
「ふーー。多少変わっているところはあったけど、10年後の世界も、そんなに変わらないね」
「ん?ああ…」
ベンチにすわると、周りに誰もいないのを確認した魅真が、にこにこと笑いながら話しかけたので、獄寺は適当に返事を返す。
「……なあ…魅真…」
けど、魅真はどこか無理をしているようにも見えたので、獄寺は深刻そうな顔をして話しかけた。
「何?」
「お前……雲雀を探しにきたんだろ?」
「えっ…」
そのことを言われると、魅真はドキッとして、頬を赤くする。
「図星かよ」
特に何も言ってないが、今の魅真の反応と表情で、図星だとわかった。
「なっ、なんで…それを…?」
「わかりやすいんだよ、お前は。見てればわかるっつーの」
「そ…そう…」
何も言ってないのに、あっさりとバレたので、魅真は顔を真っ赤にした。
魅真が獄寺と一緒に来た理由は、ハルと京子に気をつかって…というのもあるが、雲雀の家には行けないのと、山本と行くと、ランボとイーピンがいて、雲雀を探すどころじゃなくなるだろうから…というものだった。
「……心配か?」
「…うん。まあ…」
獄寺には、以前告白されたことがあるので、気まずい魅真は答えにくそうに返事をする。
「別に気ぃつかわなくていーよ。お前の気持ちは、全部知ってっから」
「うん…」
そう言ってくれても、やはり気まずさはあり、小さくうなずいた。
「…魅真……」
「何…?」
「悪かった…な…。昨日……。その……守って……やれなくて……」
けど、次に獄寺が謝ってきたので、魅真は目を丸くした。
「えっ…。なんで隼人君が、そんなことを謝るの?」
「いや……修業に入る前に、守るって約束したのに……それができなかったからよ…」
「あれはどうしようもないことだよ。まさか基地が動くなんて、誰も想像できなかったし。それに、それを言うなら私だってそうだよ。私だって、隼人君達を守るって決めたのに、離ればなれになって守れなかったし、結局武君に守られてたところもあるし…。それに、幻騎士のミサイルからは守ってもらったし…」
獄寺は、魅真が幻騎士との戦いでケガを負ったことに、負い目を感じていた。
修業前に守ると約束したのに、それができなかったので気にしていたが、魅真は特に気にしていなかった。
「それに私……隼人君がそう言ってくれただけで、すごくうれしいんだよ」
「え…?」
「小学校の頃は、周りにそういう人はいなかったから…。だからうれしいの」
「いなかったって……お前……」
短い言葉で、魅真が小学校の頃に、どういう境遇だったのか、獄寺は大体想像がついた。
「…私ね……小学校の頃は、友達いなかったんだ」
「!!」
思った通りだったが、獄寺は衝撃を受け、同時に、何を言っていいかわからず、口を開けなかった。
「正確にはいなくなったんだけど…。私、3年生の頃までは、普通に友達もいたんだけど…。4年生になった時、突然周りが、好きな子の話で盛り上がりはじめて…」
「はぁ?ガキのくせに、愛だの恋だの言ってたのかよ?」
「こういうのは、女の子の方が早熟なんだよ」
「そ、そんなもんか?」
「うん。それで……私の友達も、そういう話で盛り上がってたんだけど、当時の私はまったく興味なかったから、適当に相槌をうってただけなんだ。でも、それだけなら全然害はなかったの。
ある日、学校で一番かっこいいって噂の、サッカー部のエースだっていう男の子から告白されて…。私は興味なかったから断ったんだけど、そうしたら、友達を含めたクラス中の女の子が怒って、無視しはじめて……」
「(そいつぁ妬みだな…)」
「それで、それからイジメに発展して、友達も私のこといじめるようになって、数少ない友達もみんないなくなっちゃった…。告白してきた子も、手のひら返して罵倒してきたし…。たまに告白してくる子もいたけど、その度にイジメはひどくなって、私……どんどん孤立していって…」
「…センコーには言わなかったのかよ?」
「……言ったけど……気のせいだって……私にも、悪いところがあったんじゃないか?って…言われちゃった…」
「っんだよ、それ!?」
イジメが気のせいなわけないし、そうでなくとも、一人の人間が嫌な思いをしているのに、気のせいと言われたり、いじめられてる本人が責任を問われたというので、獄寺は腹を立てた。
「中学生になってもそれは変わらなくて…。同じ学区の子もいるから、変な噂がどんどんひろまって…。私、その時は本当に勇気なんてなかったから、今ではできそうなことが、その時はできなかったの。
だから、並盛町に引っ越してきたの。お父さんは、ちょうど引っ越しが決まった時に辞令が出たから、お父さんだけ別の地域に引っ越して、単身赴任したんだけど…」
続けて魅真が、前の中学校のことや、並盛に来た経緯を軽く説明すると、獄寺は腹を立てていたが、静かに聞いていた。
「ちょっとトラウマはあったし、人と接するのがますます苦手になったけど…。でも、このままじゃいけないと思ったから、並中では勇気出して、友達を作ることにしたの。
確かにあの時は、なんで?って思ったし、辛くて苦しかったけど……。だけど、並中に来て、ツナ君と武君と隼人君と友達になれたし、他にもいろんな人達と友達になれたから、結果としてよかったって思う…」
「そっか…」
魅真の小学校の同級生には腹を立てたが、それでも、結果として魅真が満足してるなら、それでいいかとも、獄寺は思った。
「だから……うれしかった。この前、隼人君が……私を守るって言ってくれたの…」
そこから、また最初の話に戻ると、魅真はにこっと笑う。
「本当にありがとう」
「あ……いや……」
笑顔で再度お礼を言われると、獄寺はうまく言葉を発せなかった。
「!」
その時、魅真の後ろにあるものを見ると、目を大きく見開き、その後すぐに、それを睨みつけた。
「魅真……」
「え…。何?隼人く……」
そして、突然魅真を抱きしめた。
「!!」
抱きしめられると、初めてではないが、魅真は顔を真っ赤にした。
「はっ…隼人君…?」
「魅真……改めて誓うぜ」
「え…何を…?」
魅真が聞き返すと、獄寺は、更に強く抱きしめた。
「お前は……このオレが守る!!」
その誓いというのは、魅真を守ることだった。
「前も言ったが、魅真のこと、本気で好きだかんな。お前に好きな奴がいようが関係ねえ。どんな敵からも、どんな困難からも、絶対に、オレがお前を守るぜ」
「隼人君…」
獄寺のその言葉に、魅真はうれしくなった。
何よりも、自分のことを、こんなにも真剣に好きになってくれることに、とても感激した。
けど、獄寺の想いに感激しているが、抱きしめ返すことはしなかった。
それが魅真の答えであり、また獄寺も、そのことは理解していた。
そして、その答えである目の前にあるものを、魅真を抱きしめながら、獄寺は更に強く睨みつける。
獄寺の目の前にあるもの………。
それは雲雀だった。
獄寺は、魅真に改めて約束したから…というのもあるが、一番は、雲雀への宣戦布告だった。
確かに以前したことはあるが、それはこの時代の雲雀で、自分の時代の雲雀ではなかった。
雲雀がこの公園の前を通ったのは偶然で、獄寺が雲雀をみつけたのも、雲雀が獄寺に気づいたのも偶然だが、獄寺はいい機会だと思い、「魅真は渡さない」、「魅真を傷つける奴は許さない」。そういった意味で、獄寺は魅真に、告白と守ることを改めて宣言し、雲雀にみせつけるように、魅真を抱きしめたのである。
雲雀と獄寺は、お互いを敵視して、強く鋭い目で睨みあった。
あの後、雲雀はすぐにいなくなり、雲雀がいなくなると獄寺も魅真をはなして、時間がくるまで他愛のない話をした。
そして、約束の時間の何分か前になると、別れた場所へと戻った。
「よ」
「そろったな!!」
戻ると、ちょうどタイミングよく、他のみんなも戻ってきた。
「魅真ちゃんと獄寺君と山本は、自分家いったの?」
「オレはチビ達と遊んでた」
「自分はどうせ引っ越してると思ったんで、ブラブラと…」
「私は隼人君に付き合って、同じく…」
「いいかお前ら!!極限にファイトだ!!!」
ツナが、魅真と獄寺と山本に、どうしていたのかを聞いて3人が答えると、突然了平が叫びだした。
「?」
「!?」
「なに興奮してんだ?」
「何かあったんですか?」
「お兄ちゃん、家に戻ってから、ずっとこうで…」
「極ゲーン!!!」
大きな声で叫ぶのはいつものことだが、いつもとどこか様子が違うみたいなので、どうしたのか問うのだが、了平は叫ぶだけだった。
「輝かしい、この未来のため!!!愛するかもしれぬ者のため!!!」
了平はかなり燃えていた。
これもいつものことだが、いつもよりも、更にはりきっているようだった。
「魅真…10代目…。よく考えたら、いつも大体こんなんです」
「そ…そお?」
「そう…なのかな?」
「次はどこへ行くのだー!?」
いつもと違うようにも思えたが、こうやって極限と言って、吠えるように叫んでいるのは、いつものことだった。
「あなた達、他に行きたい所はないの?」
ビアンキに促されると、次に行ったのは並中だった。
「わ~、変わんないっ!!」
「10年間、増築も改築もされずに…」
「極限に健在だな!!」
「ハル!あそんで~」
「はいはーい♪」
並中は、自分達が通っている10年前から、何一つ変わることなく、そこに建っていた。
そして、外から見るだけでなく、校舎の中に入ることにしたのだが、魅真は躊躇していた。
「魅真ちゃん、行こう」
けど、ツナに促され、みんなの笑顔を見て緊張がとけた魅真は、10年後の学校だから…と、心の中で小さく言い訳をして、入ってみることにした。
やってきたのは、魅真達がいるクラス。2-Aの教室だった。
「おおっ!」
「わあっ!!」
教室に入ると、それぞれの席にすわる。
「オレの席はここだったな」
「なつかしー!」
今は現役でも、時代は10年後で、もうしばらくの間学校に行ってなかったので、なつかしさを感じていた。
「この角度だと、寝てても気づかれねーんだよな」
ちょうど机の上に教科書が置いてあったので、山本は教科書をたてて、居眠りする時の体勢になり、イタズラっぽく笑った。
「オレはそんなことしなくても、教師に一発ガンくれてやりゃ寝れたけどな」
山本に対し、正反対な獄寺の意見に、魅真もツナも京子も笑った。
その後は、教室の外で待っていた、ハルとビアンキとランボとイーピンと了平と合流して、屋上まで行った。
「この風この風」
「…ツナ」
「気持ちいいな」
みんな心地いい風を感じて、心が充電されたような、おだやかな顔になった。
「(やっぱり……並中にいたい…。雲雀さんと…みんなと…また笑いあいたい…。過去に戻ったら、まず最初に、雲雀さんと話し合おう…。絶対に…この楽しさをとり戻すんだ…!!)」
体だけでなく、心も回復していった魅真は、決意を新たにした。
「ねえねえツナ~」
「ちょっとは大人しくしろよ~」
みんながおだやかな気分でいる中、それを壊すように、ランボがツナに再度話しかける。
「しっこでちゃった~」
「んなー!!?」
ランボがツナに声をかけたのは、すでにもらしてしまったからで、ランボをだっこしているツナと、同じくツナにだっこされている、ランボの隣にいるイーピンは、とんでもないことを聞かされて焦ってしまった。
「何やってんだ、ランボ!!」
「ウンコもでる…」
「ちょっ、まてー!!」
なごやかなムードでいたが、仕方ないので、全員屋上から校舎に入り、トイレへ向かっていった。
そして、ツナ達がいる隣の校舎の屋上……ちょうど今、ツナ達がいるあたりの、真横に位置する屋上の出入口の裏側には、雲雀がいた。
雲雀は左手をまくら代わりにして、屋上に寝ころんでおり、組んだ左足のつま先にはヒバードがとまって、羽根づくろいをしていた。
そして、上にあげている右手には、昨日もらったボンゴレ匣がにぎられており、雲雀は寝ころんだ状態で、下からボンゴレ匣をジッと眺めていた。
「あいつら、いい顔してんな…………」
「!!」
「しばらくほっといても大丈夫そうだ」
その時、屋上の出入口の上から声がしたので、雲雀は起き上がると、匣をしまい、トンファーを出して構えた。
「まあ待て、恭弥」
その声の主の腰には、馬がデザインされた匣。そして、隣にはムチが置いてあった。
「そうあわてなくても、みっちり鍛えてやっから」
そこにいたのは、この時代のディーノだった。
.