標的75 雲の守護者、立つ・2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幻騎士の匣からとび出した匣兵器は、ジャングルを作りだした。
背が高い木と、背の高い草が生え、鬱蒼とした雰囲気の、構築されたこの森は、幻騎士と雲雀を中心に円となり、まるで闘技場のようになっていた。
草は、山本やラルを覆うように伸び、出入口をもふさぎ、逃げ道をなくす。
「ふうん」
だが、雲雀はまったく動じていなかった。
「どうやら君は、霧の幻術使いのようだね」
話しながら、雲雀はリングを一つ取り出す。
「君に個人的な恨みはないけど」
リングを出すと、右手をあげ、そのリングを右手までもってきて、リングを右手の中指にはめた。
「僕は、術士が嫌いでね」
そして、リングをはめた右手を、顔のあたりまであげる。
「這いつくばらせたくなる」
そして、リングに炎を灯し、不敵な笑みを浮かべた。
標的75 雲の守護者、立つ・2
「魅真、匣をしまって…」
先程の雲雀の球針態で、魅真が出した球針態がいくつか壊れたが、まだ消えていない球針態が部屋の中にあるので、雲雀は魅真に、雲ハリネズミをしまうように言う。
「あ、はい!」
雲雀に言われると、魅真は急いで雲ハリネズミをしまう。
すると、雲ハリネズミだけでなく、雲ハリネズミが出していた球針態や台も、部屋から消えてなくなった。
「雲雀恭弥…。ボンゴレ最強の守護者だという噂は聞いている。それが真かどうか、確かめよう」
幻騎士がそう言った後、何かが雲雀に向かってきた。
「「!! (何かくる)」」
それには雲雀も、これから始まる戦いを見ている魅真も感じとり、雲雀は上に高く跳んだ。
その直後、雲雀がいたところで爆発が起こる。
それだけでなく、今度は左横から何かが向かってきたので、今度は球針態の壁で、爆発を防いだ。
「よく見えぬはずの攻撃を…」
幻騎士は、剣を2本抜くと、雲雀に向かって走っていく。
「まぐれか?」
しかも、体に霧の炎をまとっていた。
雲雀は着地すると素早く立ち上がり、トンファーを取り出して炎を灯し、目の前から向かってきている幻騎士に対抗するためではなく、頭の上にやった。
目の前にいる幻騎士は幻覚で、本物はいつの間にか上におり、頭上から降下してきて攻撃する幻騎士の2本の剣を、1本のトンファーで防いだのだった。
「(見えている!?)」
「雲雀さん、すごい…」
幻覚に惑わされることなく戦っているので、幻騎士は驚き、魅真は称賛していた。
「幻術には詳しいんだ。嫌いだからこそね」
不敵な笑みを浮かべた雲雀が、幻騎士に顔を向けると、空気を切り裂くような音がした。
幻騎士がそちらに目を向けると、巨大な球針態が、まるで隕石のように向かってきて木にあたり、幻騎士をつぶした。
その後、雲雀のリングが砕ける。
「行こう」
勝負はついたと判断した雲雀は、雲ハリネズミに声をかける。
「キュゥゥ!!」
「!」
「え…」
その時、雲ハリネズミが泣いたので、雲雀は上を見た。
その直後、幻騎士が、剣で球針態を切り裂いて現れた。
つぶれたと思ったが、実はそうではなかった。
雲ハリネズミがやられても、雲雀はあわてず無表情のままで、幻騎士は、上にあるジャングルの木のつるに足をからませて、体を宙で固定した。
「なるほど、できる。貴様なら、オレの好敵手になりえるかもしれんな」
「それはどうだろうね」
「?」
「僕の好敵手には、そう簡単にはなれないよ」
雲雀は話しながら、匣兵器を匣にしまう。
「君にその資格があるかは、まず、その横行な霧の幻術を」
そして、雲ハリネズミが匣に戻ると、もう一つのサブ匣を取り出し、横に並べるように左手で持つと、リングに炎を灯して、素早く炎を注入し、2つの匣を開ける。
「解いてからだ」
匣からは、螺旋を描いた雲ハリネズミが2匹とび出し、直後にリングが砕けた。
雲ハリネズミは、幻騎士ではなく、幻騎士が出した、匣兵器によって構築されたジャングルに向かっていき、破壊し始めた。
「君の幻覚は、頭の中の想像を、映像化したものだ。映像処理が、間に合わない程の負荷を、君に与えたら?」
雲ハリネズミにまかせるだけでなく、雲雀は雲雀で幻騎士に向かっていき、雲の台を使って跳躍すると、幻騎士をトンファーで攻撃する。
しかし、幻騎士は剣で防御をしたので、ダメージは与えられなかった。
その後も、雲雀と幻騎士は、それぞれの武器で攻撃をし続けた。
幻騎士は雲雀が、ジャングルは雲ハリネズミが攻撃をし、何度か猛攻をくり返すと、幻騎士は木の横に着地する。
「く…」
着地すると、幻騎士は短く声をあげる。
その後、雲雀も地面に着地した。
「…綻びはじめたようだね」
着地すると、上を見た。
周りは、雲ハリネズミの螺旋攻撃と雲雀の幻騎士への攻撃で幻術を保てなくなり、雲ハリネズミが螺旋で攻撃した部分が、黒くなっていた。
更に、幻覚を構築していた、幻騎士の匣兵器がいくつか落ちてくる。
「これが君の匣兵器」
落ちてきたそれは、海牛だった。
「!!」
「海牛!?」
「幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)。姿を見たのは、おまえと真田魅真が初めてだ。そして最後の人間となる」
落ちてきた幻海牛は、空中で止まる。
「!」
止まったかと思ったら、いっせいに雲雀に向かってきて、途中で姿を見えなくした。
「…………」
けど、雲雀は冷静で、リングをつけると炎を灯し、その場を跳躍する。
その直後、雲雀がいた場所で爆発が起こった。
「(幻覚を構築する海牛自体が、破壊力を持った誘導兵器…)」
雲雀は、幻海牛がどんな役割をもっているのかを、瞬時に理解した。
「!」
すると、下の方に気配を感じたので、球針態を2つ前に作り、防御をすると、地面に着地した。
「読めたぞ。リングの炎をレーダーの代わりにしているのだな」
幻騎士は、雲雀が一体何をしたのかを理解し、着地すると同時に雲雀が何をしていたのかを説明する。
「リングより、雲の炎を薄く広範囲に放射し、反射による炎の揺らぎで、目に見えぬ幻海牛の位置を把握しているのだ」
更に幻騎士は、理解したことを話したが、雲雀は何も答えることはなかった。
今の技を使い、雲ハリネズミは匣に戻り、リングは砕けてなくなった。
「………… (残るリングは、Cランクが2つにDランクが1つ。あれをやろう)」
手持ちのリングも、残りはあと3つとなってしまい、それだけで幻騎士を倒せるかわからないので、雲雀はケリをつけようとした。
「だが、タネさえわかれば恐くはない。対処すればいいだけの話だ」
「いいや、もうその必要はないな」
雲雀は残る3つのリングを、Cランクのリングの1つを左手の小指と薬指の間に、もう1つのCランクのリングとDランクのリングを、薬指と中指の間にはさんで取り出す。
「?」
「君は、かつて味わったことのない世界で」
そして、1つのCランクのリングを右手の人差し指に、もう1つのCランクとDランクのリングを中指にはめる。
「咬み殺してあげる」
雲雀はリングをつけると、不敵な笑みを幻騎士に向けた。
「いくよ」
リングをつけると、3つのリングに同時に炎を灯した。
「(3つの雲のリングを、同時に…?何をする気だ?)」
見たことないやり方に、幻騎士は目を見張る。
雲雀はリング3つに炎を灯すと、3つのリングを匣の穴に差し込んだ。
「!! (無理矢理3つのリングを!!あれでは匣が…)」
「匣を殺してしまわぬように、炎を注入するのが、難しくてね」
無理矢理3つのリングの炎を注入したためか、リングを差し込むと、匣にひびが入った。
炎を注入すると、リングは砕け、同時に匣も砕けてしまう。
すると、その中からは、光るものが出てきて、雲雀の手の中にあった。
「裏球針態」
雲雀の手の中にあるのは、小さな球針態に包まれた、雲ハリネズミだった。
それは大きくなると、雲雀を包みこみ、雲雀が包まれると、雲雀の胸ポケットに入っていたヒバードは、ポケットから出て宙に飛びたった。
球針態はどんどん広がっていくと、鋼鉄の柱をはじきとばし、幻海牛をはじきとばし、山本を押し出し、幻騎士だけを包みこんだ。
「!」
雲雀だけでなく、自分も中に入ってしまったので、幻騎士は驚いた。
けど、幻海牛ははじかれてしまい、中には入れなかった。
「! (幻海牛のみはじかれた!?)」
自分は入れたのに幻海牛は入れなかったので、更に驚く。
「(裏球針態…。雲雀さん、リングがないから、一気にケリをつける気なんだわ…)」
何も説明されずとも、何故雲雀が裏球針態を使ったのか、魅真は理解した。
「(大丈夫かしら…。いくら雲雀さんが強くても……リングがないんじゃ…)」
雲雀の強さは知っている。しかし、幻騎士の強さも、目の当たりにした。いくら雲雀が強くても、リングがなければ匣は使えないし、武器に炎を灯すこともできない。それだと、いくら匣兵器を封じたとは言っても、リングを持っている幻騎士に、勝てるかどうか微妙なところなので、雲雀が裏球針態を使った意図がわかった魅真は、心配そうに、不安そうに、裏球針態を見ていた。
心配していると、宙へ飛び立ったヒバードがやって来て、魅真の肩にとまった。
「ヒバードちゃん」
ヒバードが肩にとまると、魅真は顔をヒバードに向けるが、すぐにまた、裏球針態の方へ顔を向けた。
その裏球針態の中では、雲雀と幻騎士が対峙していた。
「戦う人間以外は、展開される匣兵器もすべて排除する、絶対遮断空間。それが、裏球針態。密閉度の高い雲の炎で作られたこのドームは、頑丈にできていてね。長時間僕に背を向けて、破壊にのみ集中しなければ、脱出はできない」
「なるほど…」
そして、雲雀が幻騎士に裏球針態の説明をすると、幻騎士は納得した。
「これで、幻海牛での幻覚を封じられたということか……………
!?」
しゃべっている途中で、幻騎士はあることに気がつく。
「うっ (呼吸が…?)」
それは、突然息苦しくなったことだった。
「球針態をつくる時は、雲の炎の燃焼に、多大な酸素を消費するんだ。そして、これを維持するためにも、酸素は急速に減り続けるよ」
何故息苦しくなったのかを説明しながら、雲雀は地面に落ちているトンファーをひろう。
「……………………四方を囲む無数のトゲと、酸欠状態でのデスマッチか」
「手っ取り早く終わらせたくてね。スケジュールがつまってるんだ」
雲雀はトンファーをひろうと、やる気満々での笑みを浮かべる。
「うそぶくな。貴様の戦い方を見て、気づかぬとでも?」
「!」
「この空間はリング不足を補うためのものだ」
裏球針態を使ったわけを、あっさりと見抜かれたので、雲雀の顔からは、一瞬笑みが消えた。
「リングを使い果たし、匣兵器での戦いに不利になる前に、残りのリングを全て使い、この空間をつくり、肉体での戦いに、持ち込む魂胆だな。よほど体術に自信があると見える」
雲雀が裏球針態を使ったわけを説明するが、雲雀は何も答えなかった。
「よかろう…。だが、自信があるのが、自分だけとは限らんぞ」
けど、次に言われた言葉には、反応を示す。
「誤解しているようだが、幻海牛の幻覚は、剣技を補うものではない。その、強すぎる我が剣を、隠すためのものだ」
「ふうん。つまり、これでやっと、君の本気が見れるわけだ」
雲雀は楽しそうな笑みを浮かべ、トンファーを構えた。
だが、リングがないので、炎を灯すことはできなかった。
「貴様のもな」
幻騎士もまた、剣を構え、雲雀に向かって走っていく。
「奥義・四剣」
そして、走りながら技をくり出した。
それは、手ではなく、右足の親指と人差し指の間で剣の柄をにぎって、剣をふり上げるというものだが、雲雀はしゃがんでよける。
「!! (足…!!)」
雲雀は剣をよけたが、休む間もなく、幻騎士は今度は左足で剣の柄を押して攻撃をした。
「くっ」
けど、なんとかトンファーで防御する。
「死ね」
だが、幻騎士は息をつかせず、両手で剣を構えると、両手両足の剣で攻撃をした。
雲雀もまた、トンファーで応戦する。
しかし、何度目かの攻撃で、雲雀は幻騎士にふっとばされ、しゃがんだまま後ろへさがるが、その際に、裏球針態のトゲがあたり、右の頬の皮膚が微かに切れてしまう。
幻騎士は雲雀をふっとばすと、4本の剣を両手両足で構えてその場で止まった。
「(…………この男…)」
だが、その幻騎士も、雲雀と同じように左の頬が切れてしまい、血が流れる。
「できるね」
そして、雲雀の切れた頬からも、血が流れていた。
お互い、強さには自信があるので、この一瞬のうちに、ほんのかすり傷とはいえ、自分に傷を負わせたので、二人はお互いの強さを認めた。二人はそれほどの男だった。
雲雀は一瞬にして立ち上がると、再びトンファーを構えて幻騎士のもとへ走っていき、幻騎士もまた、剣を両手両足で剣を構えたまま、雲雀のもとへ走っていく。
トンファーと剣で応酬をするが、お互いに互角で、なかなか決着はつかなかった。
幻騎士の強さがわかった雲雀は、楽しそうに、うれしそうに笑っていた。
笑いながら、幻騎士との戦いを楽しんでいた。
「(やはり…)」
雲雀の戦い方を見て、幻騎士はあることを確信する。
そして、右手で剣をにぎりながら、3本の刃を幻覚で作り出した。
けど、雲雀はニッと笑うと、左手のトンファーから羽形の刃を出した。
その間も攻撃の手は休めず、幻騎士は左の剣で攻撃をするが、雲雀は右手のトンファーではじく。
「シッ」
剣をはじかれると、幻騎士は先程作り出した刃を投げるが、雲雀は左手の羽形の刃を出したトンファーを回し、疾風を起こして、刃をはじきとばした。
それも、笑みを浮かべるほどの余裕である。
刃がはじきとぶと、雲雀は後ろに跳んで距離をとり、幻騎士は剣を使ってその場に立った。
「だいぶ息が上がってきたね」
雲雀が言った通り、幻騎士は息が荒くなってきていた。
「(何という男だ…。体技でオレと互角に渡り合うとは…。だがわからぬ…)」
幻騎士は雲雀の体術を認めたが、一つの疑問も浮かんだ。
「なぜ、笑っていられる」
「?」
そして、その疑問を雲雀にぶつけた。
「裏球針態とやらは、匣兵器こそ封じたが、リングの力を封じてはいない」
そう言った幻騎士のリングには、炎が灯っていた。
「リングを持つ者と、持たざる者の力の差は知っていよう。体技がほぼ互角だということは、今わかったはず。リングを持たぬ貴様に、勝機はないのだぞ」
幻騎士が疑問に思ったのはそれだった。
けど、現実をつきつけられても、雲雀の顔から笑みは消えなかった。
「確かに君の強さは予想外だったよ。君のおかげで、スケジュールにも狂いが出たしね」
「(またスケジュールだと…?)」
「でも、それ以上に、久しぶりに血をしたたらせた姿を見たくなるほどの獲物に出会えてうれしいんだ。これで、強力なリングがあれば、文句はないんだけどね」
「(…………何か秘策があるのか…?)」
雲雀の今の言葉と、絶やさない不敵な笑みに、まだ何か奥の手でもあるのかと、幻騎士は思った。
「(いいや。奴には何も残ってはいない) よかろう」
だが、幻騎士はすぐに否定をして、リングの炎を剣に灯した。
「手加減せずに葬ってやる」
そして、とどめをさすために、雲雀に向かって走っていく。
雲雀もまた、トンファーを構えて、幻騎士に向かって走っていった。
距離をつめると、お互いに攻撃をする。
だが、その攻撃で、雲雀のトンファーの先が、少しだけ切れてしまった。
「硬度の低い霧の炎も、一点に集中すれば、鋼鉄を焼きちぎるなど造作もない」
トンファーを切ると、幻騎士は宙に跳び、何故トンファーが切れたのかを説明する。
「知ってるよ」
けど、雲雀はそのことを知っていた。
まったく使えないことはないが、トンファーを切られたというのに、それでも雲雀はあわてておらず、それどころかまだ笑っていた。
「!! (何がおかしい…!?)」
何故雲雀が笑ったのか、幻騎士はわけがわからなかった。
わけがわからなかったが、それでも、着地をすると、流れるように剣で攻撃をする。
幻騎士が攻撃をする度に、トンファーはどんどん細かく切れていき、短くなっていった。
「いいね」
それだけでなく、雲雀の腕や頬も切れていく。
致命傷ではないが、切れて血まで流れてるというのに、どんどん不利になっていってるというのに、それでも雲雀は笑ったままだった。
「貴様…死を望んでいるのか?」
「どうして僕が?咬み殺されることになるのは君なのに」
「!? この状況で、何を言っている!!」
得物のトンファーは、切れて使い物にならなくなっていき、戦闘手段を奪われ、どんどん体が切れていくのに、笑っているだけでなく、勝利宣言までされたので、幻騎士は雲雀のおかしな発言を疑問に思った。
そして、とうとうトンファーが、持ち手の黒いところの近くまで切れてしまい、両方とも宙にはじかれたので、雲雀は武器と戦闘手段を失った。
「うらやましいな」
だが、それでも血を流しながら、不敵な笑みを絶やさず、手を伸ばして幻騎士の目の前にせまってきた。
「くっ」
雲雀の奇妙な言動を恐れた幻騎士は、思わず後ろにさがって距離をとった。
「(何だ、この不敵な目は…!!何だ…。何なんだ、この男は!?)」
この雲雀の言動に、幻騎士は不気味なものを感じた。
「えぇい!!死ねい!!!」
そして、その不気味さをかき消すかのように、とどめをさすために、両手に持つ2本の剣をふりかざした。
「(まかせたよ)」
けど、雲雀は微動だにせずに、そこに立っていた。
しかし、それはあきらめているわけではなさそうだった。
幻騎士は両手に持った剣を、クロスさせて雲雀を斬った。
雲雀は消え、近くには匣が舞った。
そしてその後、術者がいなくなったので、裏球針態にひびが入った。
「!!」
突然ひびが入ったので、魅真は目を見張った。
「(壊れる…。裏球針態が…)」
裏球針態が壊れるということは、どちらかが倒されたということなので、魅真はドキドキしていた。
「あっ」
その時、突然ヒバードが、魅真の肩から飛び立った。
けど、今はそんなことは、あまり気にしていなかった。
ひびが入った裏球針態は壊れ、瓦礫が下に落ちていく。
そんな中、幻騎士はなるべく瓦礫があたらないように、身をかがめていた。
「(殺(と)った…)」
ようやくとどめをさしたので、幻騎士は荒い息をしながら立ち上がり、足で使っていた剣を鞘におさめた。
「(どっち…?どっちなの!?)」
魅真は、雲雀と幻騎士の、一体どちらが勝ったのかと、凝視する。
「!!!??」
だが、煙が晴れて見えた人物は幻騎士だったので、魅真は顔をゆがめた。
「(これで、ボンゴレも終焉だ…)」
ボンゴレ最強の守護者と言われている雲雀を倒したので、これでもう、ボンゴレ側に勝機はないと、幻騎士は思った。
「雲雀さっ…」
魅真は驚愕しながらも、雲雀の安否を確かめるために、走り出そうとした。
「ミードーリータナーービクーー…」
「「!」」
その時、上の方から、ヒバードの並中の校歌を歌う声が聞こえてきた。
「ナーミーモーリーノー…ダーイナークショウーナクー」
「(雲雀のトリか…)」
「ヒバードちゃん…?」
魅真と幻騎士は、上を見上げると、ヒバードを見た。
「ナミーガーイイー…」
そのヒバードは、ゆっくりと降下していく。
その時、煙の中…雲雀が倒れた位置からは、一つの手が伸び、ヒバードはそこにとまった。
「「!!」」
その様子に、魅真と幻騎士は目を見張る。
手を伸ばしたその人物は、左のそでには風紀の腕章、右手の中指には、雲のボンゴレリングをつけていた。
「ふぁ~あ。さわがしいなあ…」
そしてその人物は、瓦礫の上におり、あくびをしながら起き上がり、同時にヒバードは宙に飛んだ。
「君…誰?僕の眠りを妨げると、どうなるか知ってるかい?」
そこにいたのは、雲雀には違いないが、この時代の雲雀ではなく、魅真がいた時代の、10年前の雲雀だった。
.