標的73 最強の剣士
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今の現状を知ると、正一はチェルベッロを連れて、司令室から出ると、ある部屋へと向かっていた。
「入江様!アレを使われるのですか?」
「何か問題があるかい?」
「この機密を知るのは、白蘭様と、我々と入江様のみ」
「これを行えば、他の部隊…特に、ブラックスペルからの抗議は必死です」
しゃべりながら歩いていると、応接室のような場所に来た。
「そんなもの、何もせずに失うものより、ずっと小さい」
他の部隊のことなど、まったく気にすることなく、正一は、入ってきた扉の正面にある額縁に右手をあてる。
すると、それは生体認証だったようで、扉が開いた。
「それと、後付けで設置された基地機能はマヒするでしょう」
「君達は…反対なのかい?」
「いいえ」
「私達には、入江様の命令が全てです」
扉が開くと、その先の通路を進んでいく。
「社交辞令でもうれしいよ」
そして、奥までやって来ると、壁に右手のすべての指をあてた。
これも生体認証のようで、壁の機械の部分が光ると、扉が開いた。
正一とチェルベッロは、更にその先を進んでいく。
その先には、中央に、たくさんの太い管がついた円形の台があり、その台の中央の、円形にくぼんだ部分には、左側には棒のようなものがあり、上部の台には球体のものが、右側には、同じく管がついた棒のようなものがあり、上部の台には匣がついていた。
更に周りには、通路以外の部分に、たくさんの太い管がついた、ほぼ360度の大きなモニターがあった。
標的73 最強の剣士
場所は展示室に戻る。
嵐蛇が了平に襲いかかってきたが、了平は空中であっさりとよけた。
「!」
そして、よけると同時にあるものに気づく。
「バイシャナ、どこへ行く!!まさか、匣兵器を置いて逃げるつもりなのか!!」
「だまれ!!どうしようと我の勝手なり!!」
それは、勝ち目がないと悟り、嵐蛇を置いて逃げようとするバイシャナだった。
だが、それでも嵐蛇は、主であるバイシャナを守るために、了平に襲いかかっていく。
「殺生はせん。おまえの主と共に、しばらく眠ってくれ」
嵐蛇は了平を食らおうと口を閉じるが、了平はよけて、嵐蛇の腹の下に回りこんだ。
「ゆくぞ、極限!!」
腹の下に来ると、腹にまっすぐ向かっていく。
「極限(マキシマム)イングラム!!!」
そして、技を出した。
それは、自分自身とフットワークでできた残像の、強烈な三連発の打撃攻撃だった。
攻撃をくらい、意識を失った嵐蛇は、そのままバイシャナに向かってとんでいく。
「!! のわっ。くっ、くるな!!我!!命だけは所望す――!!」
けど、嵐蛇はどんどんとバイシャナにせまってきた。
「ぐがっ!!」
そして、哀れ嵐蛇の下敷きになってしまった。
いともあっさりと敵を倒したので、山本は口笛を吹いた。
「先輩強いな」
「いとも簡単に倒しちゃった」
「バイシャナ本体弱っ」
結構簡単に倒したので、魅真と山本は了平を称賛し、獄寺は、あまりにも弱すぎるバイシャナに、唖然としていた。
「さあ、次へ急ぐぞ」
バイシャナも匣兵器も倒したので、了平がグローブとクツを戻し、我流を匣にしまうと、魅真達は先へ進んでいった。
そして、先程の部屋では、正一は台の中央のくぼんだところに、チェルベッロはその後ろの、細く長い棒の隣に控えていた。
「入江様」
「バイシャナの無線反応が消えました」
「見えているさ。ここにも司令室と同じ情報が映し出される。想定していたとはいえ、白蘭さんに無理言って、僕が設計した機能を、こんなに早く使うことになるとはな」
そう言うと、正一はリングに炎を灯した。
それは、了平と同じ、晴属性の死ぬ気の炎だった。
炎を灯すと、正一は、右側の台に設置されている匣の穴に、リングを差し込んだ。
「さあ、目覚めてくれ」
匣の穴にリングを差し込むと、モニターの電源が入る。
「僕の匣。メローネ基地」
正一の目の前のモニターには、たくさんの正四角形で区切られた、メローネ基地が映った。
「炎エネルギー。全ブロック内バイパスへの浸透を確認」
次に、そのメローネ基地のすべてのところに、たくさんの線がはりめぐらされた。
「可動ブロック、移動開始!!」
正一は匣にリングを差し込みながら、左側の台の球体を動かす。
すると今度は、雲雀のアジトのサーバーに送られてきた、あの内部の施設の図面が映し出される。
その一部にあいている、黒い穴の下の、三角がついたブロックが、黒い穴に向かって移動をした。
「うっ」
すると、突然地鳴りがして、部屋全体が揺れたので、その激しい揺れで倒れないように、チェルベッロは隣の棒につかまった。
揺れているのは、正一達がいる部屋だけではなかった。
「!」
「何だ!?」
「地震!?」
展示室から移動してる、魅真達がいる場所も、同じように激しく揺れていた。
それだけでなく、基地全体が揺れている。
更には、三角がついたブロックが移動すると、部屋の一部分が移動した。
正一がいる部屋のモニターの基地では、とある2つの階の部屋が、下向きの三角がついたいくつかのブロックはそのままだったが、上向きの三角がついたいくつかのブロックが上に移動すると、用水路があった場所が、モニターの通りに移動をする。
「随分遊んでくれたな、ボンゴレの鼠ども。後悔させてやるぞ。今度はおまえ達が、ボンゴレリングを狩られる番だ!!」
正一がこの匣を使ったのは、魅真達に、これ以上好き勝手にさせないためだった。
「連中の位置は分かっている。しかるべきポイントへ連れていってやる」
魅真達がいる場所を把握している正一は、今度は、魅真達がいる部屋を動かそうとした。
「F10ブロックを、2-4-2へ」
そして、画面に現れた、色と三角がついているブロックの、2つうちの1つ、右側のブロックはそのままに、もう1つの左側のブロックを下に動かした。
「!!」
「なんと」
「きゃっ」
「床が」
そこは、今まさに魅真達がいる場所で、獄寺と了平がいる場所はそのまま移動しなかったが、魅真、山本・ラルのいる場所が、下へ移動していった。
「くっ」
「いかん!」
「つかまれ、魅真!!山本!!」
このままでは離ればなれになってしまうので、獄寺は、魅真と山本を助けようと、手を伸ばした。
「隼人君!!」
「獄寺!!」
「手遅れだ!腕をもってかれるぞ」
「おい!!」
けど、もうほとんど隣の部屋との隙間はなく、何よりも山本はラルを背負っているので、手を伸ばすことは不可能だった。
魅真と山本・ラルのいる場所は、どんどん降下していったが、数秒後に止まった。
「……止まった…」
「みたいだな…」
すごい勢いで降下していったので、ようやく止まったことに、魅真と山本はほっとしていた。
「武君、大丈夫?」
「ああ、平気だ。魅真は?」
「私は大丈夫よ。ラルさんも大丈夫みたいね」
未だに目覚めていないが、息はちゃんとしているし、外傷もないので、魅真はほっとした。
「ここ…どこかしら?」
「さあ…。基地の中には違いないみたいだけどな」
「それに、なんで私達がいるところだけ、下に行っちゃったんだろう?」
「わかんねえな。獄寺とセンパイともはぐれちまったし…」
「たぶん…二人は上にいるままだと思うけど……。隼人君も笹川センパイも大丈夫かしら?」
「まあ、獄寺もセンパイも、戦う術は身につけてるし、目的の場所は同じだ。こうなっちまった以上は仕方ねーから、オレ達はここから進もうぜ」
「そうね。ここで考えて、立ち止まってても仕方ないわね」
状況はつかめていないが、それでも進まなきゃいけないので、魅真達は先に進むことにした。
「武君、ラルさん…私が背負おうか?」
「え?」
「だって、さっきから、センパイか武君が背負ってるから…」
「魅真はそんな心配しなくていーのな。ラル・ミルチはオレが背負ってくから…。それより、オレの後ろを頼むぜ。どこから敵がくっかわかんねえからな」
山本は、魅真が自分に対して気をつかっていることに気づいたので、気にしなくていいと言うように、にかっと笑う。
「わかった。まかせて!」
頼まれると、魅真もまた、にこっと笑った。
山本が先に歩きだすと、魅真も山本の後に続いて歩いていく。
二人は端末を取り出して、現在の位置を確認しながら進んでいった。
「あれ?おかしいな…。端末のマップと、現在の位置が全然違う…」
だが、端末に記載されているマップと照らし合わせてみても、まったく合っていなかった。
「本当だわ。ここ、行き止まりじゃないのに。それに、右側に通路なんてなかったわ」
なので、魅真も山本も、頭がこんがらがった。
それでも、ここで立ち止まるわけにもいかず、わけがわからないながらも、二人はラルを連れて、先に進んでいく。
それから、四苦八苦しながらも、何分か進んでいった。
「あっれ。どーなってんだ?行き止まり?やっぱ、マップと実際のルートが一致してねーよ」
けど、どんなに進んでも、やはりマップと一致しておらず、頭がこんがらがっていた。
「やべ、閉った!」
歩いていると、後ろで、防火扉のようなものが下がってきた。
「閉じこめられた!?」
道がなくなってしまったので、魅真は匣を取り出して、雲ハリネズミを使って道を作ろうとした。
敵がいないのに、自らみつかるようなことはしたくないし、強引なやり方だし、もしかしたらこれで敵が来るかもしれないが、道がなくては先に進めないので、仕方なく使おうとした。
だが、魅真が雲ハリネズミを使う前に、別の扉が開く。
「ん…?こっちは開いた?」
「…あれ?」
けど、二人の目の前の扉が開いたので、魅真は匣を使うのをやめた。
「「!! (殺気!!)」」
その時、二人は殺気を感じとった。
「武君…」
「ああ…。一つだ…」
二人は、その殺気の主に気取られないように小声で話す。
「私が…」
「…いや、オレが行く。魅真はラル・ミルチを頼む…」
そう言って、山本はしゃがみ、ラルを背中から放して、壁にもたれさせた。
それを見た魅真は、ラルの体が傾いて崩れ落ちないように、背中を支える。
山本は、背中に背負っている袋から時雨金時を出すと、竹刀から刀に変形させ、刀を構えた。
「!? (こいつは!!)」
そこにいたのは、突入する前日、正一をγから守ろうとした、全身タイツを着て、剣を持ったおかっぱの黒髪の男…幻騎士で、山本は目の前の男に目を見張った。
「(体から、霧属性の死ぬ気の炎が…。じゃああいつ、術士なの?)」
目の前にいる人物が、何者かはわからないが、相手が霧属性の死ぬ気の炎を体にまとっていることから、術士であることはわかった。
「待っていたぞ」
「あんた、霧のマーレリングの、幻術をつかう剣士、幻騎士だろ?」
「!」
「(武君…。こいつを知ってる!?)」
何故か山本が、目の前にいる男のことを知っていたので、魅真も幻騎士本人も驚いていた。
「やっぱり」
何も答えなかったが、違うとも言われなかったので、山本は、目の前の男が幻騎士だと確信すると、その場にしゃがんだ。
「ちょっといってくるぜ。すぐ戻るからな」
「気をつけてね」
「ああ」
そして、一度刀を竹刀に戻すと、目の前の、扉が一部突出したデコボコした部分を、ジャンプしてのりこえ、目の前の部屋に着地した。
「!」
着地すると、水の音がした。
この部屋は、足首までしかないが、水がはられていた。
「(水…?)」
「なぜオレを知る」
山本がこの部屋に入ると、幻騎士は疑問を山本にぶつけた。
「スクアーロのDVD(ビデオ)で見たんだ。あんた…「剣帝への道」100番勝負。100番目の相手だったな」
剣帝への道というのはよくわからないが、何故幻騎士のことを山本が知っているのか、魅真は理解した。
「貴様…。この時代の2代目剣帝と、接点があるのか」
「へへっ。まーね」
「………その通りだ。奴にはわざと負けてみせた。ミルフィオーレ結成のためにな」
「「!?」」
けど、幻騎士に、スクアーロにわざと負けたのだと言われると、山本だけでなく、魅真も驚いた。
「スクアーロに、わざと負けた?何…言ってんだ?」
「スクアーロなど敵ではないが、目的のために惨敗したかのように偽装したのだ」
「偽装…?あっ、もしかして負け惜しみ?」
そうだと思ったが、幻騎士は何も答えず、目をつむった。
「貴様にハンデを二つやる」
「?」
「一つは、地の利。雨属性に有利な、人工の雨だ」
床の水は、上から降ってくるスプリンクラーから出ているものだった。
「そしてオレは、素手で戦う」
「な!?刀…使わねーのか!?」
「これは敬意だ。ボンゴレの守護者といえば、伝統と格式を持つ名のある標的。お前への行為を、"殺し"から"戦い"に格上げするためには、枷が必要」
敬意と言いながらも、結構下に見られているので、山本は眉間にしわをよせた。
「随分甘く見られてんだな」
「来い」
戦いは始まり、幻騎士はすごい殺気を出した。
それは、魅真も山本も感じていた。
決して甘く見ているだけではない。口だけではない、本物の力を……。
「(この殺気…。小僧よりも痛え…。こいつ…本物(ホンモン)だ) …やっべえ…」
山本はのどをならし、ぽつりとつぶやく。
一体何がやばいのか、魅真は疑問に思った。
「竦んだか」
「…いんや。ゾクゾクしてきちまった」
先程のやばいというのは、相手の強さに高揚しただけだった。
「だからこそ、あんたとは、剣士として戦いてえ。嫌でも、剣を抜かせてやるぜって方向で」
山本は、リングに炎を灯すと、匣を開匣した。
匣からは雨燕が出てきて、竹刀を再び刀に変形させ、炎をまとわせた。
「このオレの、時雨蒼燕流でな!!」
「全ての御託は無駄となる」
「そいつは、闘(や)ってみてからだ!!」
山本は幻騎士と戦うため、幻騎士に向かってとび出していき、まっすぐに走っていく。
頭上では、雨燕も一緒に、まっすぐに飛んでいった。
「時雨蒼燕流攻式一の型 車軸の雨」
雨の炎をまとった渾身の突き。それは幻騎士にあたった。
「たいした突きだ」
「!」
しかし、幻騎士は普通にしゃべっていた。
「だが」
そして、次の瞬間には、前にいたはずの幻騎士は、山本の両側に1人ずつ…合計2人もいた。
「スクアーロの剣技同様」
「子供騙しだ」
「がっ」
これは幻騎士の幻覚だった。
2人の幻騎士は、山本ののどを同時に突き、指はのどにささり、山本は口から血を吐いた。
「武君!!!」
この惨状に、魅真は顔が青ざめた。
しかし、山本の様子はどこかおかしかった。
「?」
幻騎士がおかしいと思ってると、その山本は、段々溶けて水になっていった。
そこからは、雨燕が上に飛翔していった。
今の山本は、雨燕が形づくったニセモノだったのだ。
「(水面に映した姿か)」
今倒したのは山本ではなかったが、幻騎士はあわてず冷静だった。
「時雨蒼燕流攻式九の型」
「!」
その時、幻騎士の正面から、山本が跳躍してこちらに向かってきた。
「うつし雨」
けど、その攻撃も、幻騎士は跳んでよけると、空中で二人の自分を一つにした。
「うつし雨から、守式二の型 逆巻く雨」
そして山本は、幻騎士が宙に跳んでいる隙に、刀で水を巻きあげて、幻騎士にぶつけた。
「逆巻く雨から特式十一の型」
「!!」
更に、まだ水が幻騎士にぶつかっている間に、息つく間もなく次の技を出す。
水の中からは、たくさんの刀が出てきた。
「燕の嘴(ベッカタ・ディ・ローンディネ)」
それは、たくさんの刀が出ているのではなく、刀を高速で何回も突く、山本の新しい技。スクアーロの鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)を参考にしたような技だった。
山本がその技を出すと、幻騎士は剣を抜いて、山本の腕をまっすぐ突いた。
「ぐわっ」
その攻撃で、山本は仰向きに倒れ、幻騎士は山本の後ろに着地をし、それと同時に、山本は素早く起き上がる。
「やっぱ強え。すさまじい殺気は伊達じゃないな。でもよ、剣、抜かせたぜ」
「よかろう」
山本が挑発的に言うと、幻騎士は剣を構えて走り出す。
「悔いるがいい」
「そうこなくっちゃ」
山本もまた、刀を構えて、幻騎士がいる方へ走っていく。
幻騎士は走っている途中で、霧となって散っていき、そこへ雨燕が、幻騎士にむかってまっすぐ飛んでくるが、霧となって消えた。
「(また幻覚か)」
今山本に剣を構えて走ってきたのは、幻術で作られた霧の分身だった。
その時、霧となって消えずに残った剣だけが、一人でに襲いかかってきたが、山本はそれを刀で止める。
「(本体は!?)」
「(剣だけ!?)」
ここにいるのは違いないが、肝心の幻騎士本体が見当たらないので探していると、幻騎士は山本の後ろから、剣を両手に1本ずつ構えて跳んできて、2本同時に剣をふり下ろした。
山本はその剣を、今さっき受け止めた剣を受け止めながら止めると、刀を薙いで、全部の剣をふりはらい、切っ先を下にして構えた。
「攻式五の型!!」
そして、下から上に刀をふって幻騎士を斬ろうとするが、途中で刀の持ち手を入れ替える。
「五月雨」
その技は、一太刀のうちに刀の持ち手を入れ替えて、軌道とタイミングをずらす変幻自在の斬撃・五月雨だった。
けど、五月雨で幻騎士を斬るも、またしても幻術だった。
「(こいつも幻覚!!どこだ!?)」
なので山本は、幻騎士が今どこにいるのか探した。
「!!」
ふいに上を見ると、幻騎士が…おそらくは幻覚だろうが、背中に腕を2本はやし、その腕で4本の剣を持ち、その合計4本の剣の先を1つに合わせた状態で、すごい勢いで降下してきて、攻撃しようとしていた。
「上か!!」
結構ギリギリのところで気づいたので、山本はとっさに刀を上に持ってきて、防御をした。
「くっ」
4本の剣の切っ先は刀にあたり、山本は直接の攻撃は免れたものの、その力ではじかれて、後ろにふっとんだ。
「ぐぁ!!」
そして、そのまま後ろにある、太いパイプに激突してしまう。
「うう…」
上半身は支えられず、下にさがるほどのダメージを山本は負ってしまい、気をたもつために、頭を横にふった。
「武君!!大丈夫!?」
「おお、なんとかな…」
今のは、見ていてもかなりのダメージであることがわかったので、魅真が心配そうに声をかけると、山本は問題ないというように答えるが、いつもの余裕のある笑顔ではなかった。
「しかし、あっぶね…」
ほんのわずかでもずれていたら、確実に体を貫かれていたので、山本は身震いがした。
だがその時、持ちあげた刀を見てみると、ある異変に気がついた。
「!!」
それは、今の幻騎士の攻撃で、刀にひびが入ってしまったことだった。
しかも、刀の切っ先があたったところだけではなく、全体の半分ほど入っており、今でもひびが入っていた。
「時雨金時が!!」
「えっ!?」
刀にひびが入ってしまい、それこそ、あと一回でも技を出したら折れてしまいそうなものなので、山本は焦り、顔が青ざめる。
「これで、貴様の勝利は、万に一つもなくなった」
悔しいが、確かにその通りなので、山本は口をつぐむ。
「オレとボンゴレの剣士では次元が違う。スクアーロも例外ではない。奴との勝負を偽装し、負けて見せられたのは、オレの剣技が、奴よりはるかに優れていたからだ」
先程は負け惜しみと思ったが、たったの一撃で刀にひびが入ったのを見て、負け惜しみでもなんでもないと感じた山本は、更に顔が青くなった。
「覚悟はいいか」
「ぐっ」
「あっ」
そして、幻騎士から放たれる殺気…。
「(恐え!!)」
「(なんて恐ろしい殺気なの…。まるで、雲雀さんみたい…)」
幻騎士の殺気に、戦っている山本だけでなく、近くで見ている魅真までも気圧された。
山本はその時、修業をしている時、剣帝への道を見ている時のことを思い出した。
それは、スクアーロが80人目を倒した時のもので、山本へのアドバイスだった。
上を目指せば、一生に何度か、心底恐いと感じる相手と対峙することがある。けどそれは、悪いことではなく、命の危険を察知する大事な本能なので、そういう相手とは戦わないのが一番かしこい選択だというものだ。
けど、同時にこんなことも言っていた。
剣士としてさけて通れない戦いもあるので、そういう時は是が非でも勝てと…。
負けて死んだら、得るものなんて何もない。勝って手に入れられるものにこそ価値がある。そのリングもそうだったろうが…というエールも送られた。
「(スクアーロ…)」
そのことを思い出した山本は、刀をにぎっている右手の中指にはめている、雨のボンゴレリングをみつめた。
「ハハッ (そうだなっ。サンキュ!)」
それは、勝って手に入れることができた、価値のあるものだった。
「こりゃ、是が非でも勝たねーとな!!」
あの時見た、DVDの中のスクアーロが言っていた言葉を思い出した山本は、スクアーロのエールに元気づけられたのだった。
「…見苦しいぞ。まだ足掻くか」
「…ああ」
やる気になった山本は、立ちあがりながら幻騎士の言うことに答える。
「わりーけど、思い出しちまったんでな。時雨蒼燕流は、完全無欠最強無敵ってさ」
「下らん」
「それにスクアーロが、あんたが思うよりずっと、すげー奴だったってこともな」
「!?」
何を言ってるかわからず、幻騎士は、ずっと後ろを向けていた顔を、少しだけ山本の方へ向けた。
「今ならハッキリわかるぜ。スクアーロは勝つことで、あんた攻略のヒントを教えてくれたんだ」
ずっと無表情だったが、幻騎士は、今の山本の言葉に反応を示した。
「2代目剣帝は見抜いてたぜ。あんたがわざと負けたことを!!」
そして、次に山本の口から出てきたのは、幻騎士にとって信じられないものだった。
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