標的68 作戦開始
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の夜遅く、満月が大きく見える真っ暗闇の中、一つの人影が、月の前に映った。建物の上を跳んでいたのだ。
そして次の瞬間には、何人いるかわからないくらいの、たくさんの同じ格好をした人影が、夜の空を覆いつくすように、建物の上を跳んでいた。
それは、正一の命令をうけて、ボンゴレのアジトに夜襲に来た、ミルフィオーレの隊員達だった。
彼らは、ボンゴレのアジトがある場所に到着すると、この場所であってるかどうかを、手に持っている端末で確認した。
標的68 作戦開始
その頃ボンゴレのアジトでは、全員が眠りについていた。
だが、魅真はかすかに、何かをけずるような音が聞こえたので、目を覚ました。
「なんだろう?」
全員が寝ているはずのこんな夜中に、一体何事かと思い、部屋の外に出た。
「あっ…雲雀さん!」
「やあ」
そこにいたのは雲雀だった。
雲雀はエレベーターがある方から、魅真のところまでやって来た。
「それに、隼人君の匣兵器の猫ちゃん…」
雲雀の手には、首ねっこをつかまれている獄寺の匣兵器の仔猫がいて、壁をひっかいていた。
先程のけずるような音の正体は、この仔猫が壁をひっかく音だったのだ。
「獄寺隼人の部屋はどこ?」
「へ?あ、ここの一つ上の階です」
「連れてって」
「え?はい」
頼まれると断れない性格なのと、雲雀が頼んできたのと、雲雀は獄寺が寝泊りしている部屋の正確な場所までは知らないと思ったのとで、魅真は雲雀を獄寺の部屋まで連れていった。
そして数分後。
先程、魅真が聞いた音を聞いて、ツナは目を覚ました。
「? 何の音だ…?」
その音を聞いたツナは、なんだろうとふしぎに思い、音がする、部屋の外へ出てみた。
「ツナも聞こえたか?」
「うん」
「どーやらあれみたいだな」
ツナだけでなく、山本とリボーンも音に気づいて外に出ると、リボーンが音の正体に気づき、正面を見たので、ツナと山本も、そちらの方を見た。
「酔っぱらって、僕の所まで来たよ」
「ヒバリさんと獄寺君の猫ー!?」
やって来たのは、獄寺の匣兵器の仔猫をつかまえた意外な人物だったので、ツナは驚く。
「それに魅真ちゃんも!どうしたの?こんな時間に」
「あ、いや……雲雀さんに、隼人君の部屋の場所を聞かれたから…」
雲雀だけでなく、下の階にいる魅真までいたので、違う意味で驚いたツナが問いかけると、魅真は簡潔に答えた。
「ああっ!!てっきり匣に戻ってっかと」
「!」
そこへ、仔猫の持ち主の獄寺が、匣を持って部屋から出てきた。
「何してやがったんだ…瓜!!」
「(変な名前つけてるーー!!)」
獄寺は、いつの間にか、匣兵器の仔猫に瓜という名前をつけており、その瓜は、雲雀が手を離すと、獄寺の前にやって来た。
「ンゲェ!!」
「(いまだなついてないし)」
獄寺の前までやって来た瓜は、獄寺にとびつくと、獄寺の顔を連続でひっかく。
「君達…。風紀を乱すと、どうなるか知ってる?」
ツナ達が群れてるのを見た雲雀は、トンファーを構えた。
「おっ、おい!!」
「てめっ」
「ごめんなさい!!」
何故かこんな時にもトンファーを持っており、それを構える雲雀を見て、ツナ達は焦った。
「…眠い。…今度ね」
けど、眠気に負けた雲雀はあっさりとやめ、あくびを一つした。
「魅真、行くよ」
「え?」
「送ってくよ。君の部屋まで」
「は、はい」
てっきり雲雀は、このまま自分のアジトに戻っていくのかと思ったが、わざわざ送ってくれるというので、魅真はうれしくなり、雲雀と一緒に戻っていく。
「ま…待て、ヒバリ!!」
けど、数歩進んだところで、獄寺が雲雀を呼び止める。
「あ…あんがとな…。いずれ、この借りは返す…ぜ」
理由はどうあれ、瓜を届けてくれたので、獄寺は獄寺なりにお礼を言った。
「期待せずに待つよ、獄寺隼人」
獄寺に声をかけられると、雲雀は少しだけ体と顔を後ろに向けて、獄寺に返す。
「なっ、期待せずだと!?」
その雲雀の返答に、獄寺は腹を立てた。
「あ、ヒバリさん!」
獄寺が腹を立てていると、今度はツナが雲雀に声をかけた。
「明日…一緒にがんばりましょうね」
明日の作戦には雲雀も参加するので、ツナは雲雀にエールを送る。
「いやだ」
だが、やはり雲雀は雲雀で、一言のもとに切りすてた。
「「「!!」」」
その返答に、ツナ達はびっくりしたが、魅真は小さく吹き出した。
「僕は死んでも、君達と群れたり、一緒に戦ったりするつもりはない。強いからね」
雲雀が、ツナが言ったことにノーと言ったのはこれが理由だった。
「おやすみ」
「「「!!」」」
それだけ言うと、雲雀は再び背を向けて、今度こそそこから去り、魅真も雲雀の後に着いて行った。
「お…おやすみ…」
「じゃーな」
「…のやろ……」
「おやすみなさい」
なんだかんだあいさつをしていったことに、呆然としながらも、ツナ達はそれぞれあいさつを返すが、獄寺だけは、何かブツブツと言っていた。
「ハハハ!やっぱヒバリは、何年経ってもヒバリだな!」
「オレ達も寝るとするぞ」
「お騒がせして申し訳ありません!!」
「い…いいって、獄寺君」
みんなが起きたのは、自分の匣兵器が原因なので、獄寺はツナにだけ頭を下げて謝罪をした。
「じゃあ明日な」
「だな!」
「おやすみ…」
ひと段落したので、全員明日のために眠ることにして、部屋に戻っていった。
一方、魅真は雲雀と一緒にエレベーターに乗っていたが、一つ下の階なので、すぐについた。
1つ下の女子部屋がある階につくと、エレベーターを降り、魅真の部屋まで行くが、2人とも無言だった。雲雀はもともとおしゃべりな人間ではないし、魅真は気まずさもあり、雲雀につられた形で無言になっていた。
それでも、この状況がうれしくて、魅真は頬をほんのり赤くして、雲雀の隣を歩いていたが、あっという間に部屋についてしまったので、少しだけがっかりした。
「わざわざ送ってくださってありがとうございます、雲雀さん。じゃあ、おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
部屋の扉の前に来ると、魅真は雲雀にお礼とあいさつを言い、雲雀も返事を返す。
「魅真、明日のことだけど…」
「はい…」
「絶対死なないでね」
「えっ」
いつもは他人に冷たい雲雀が、死ぬなというあたたかい言葉をかけてくれたので、魅真はドキッとなった。
「君が簡単にやられたら、僕が特訓をした意味がないからね」
「そっ……そうですか…」
結局いつものパターンだったので、魅真はがっくりとした。
「君ならできるさ」
けど、次にはその顔に笑顔を浮かべて激励したので、魅真はまた頬を赤くする。
「じゃあ、おやすみ」
もう一度あいさつをすると、雲雀は踵を返して自分のアジトへ戻っていった。
「おやすみなさい」
魅真ももう一度あいさつをすると、うれしそうに微笑み、雲雀の姿が見えなくなるまで見送った。
同じ頃、作戦室にはジャンニーニがいた。
「もーー飲めまひぇん」
だが、ジャンニーニは酒の飲みすぎで、顔を真っ赤にして眠っていた。
そのジャンニーニの隣にあるモニターには、並盛のいろんなところに設置しているカメラがいくつも映っていた。
モニターにはミルフィオーレの隊員が映っており、次の瞬間にはノイズが起こった。カメラを破壊したのである。
そして、そのノイズが起こった画面に映っていた場所では…。
「他にもカメラがあれば破壊しろ」
「了解(ラジャ)!」
数えきれないほどの、ブラックスペルとホワイトスペルの隊員がいた。
「始めるぞ」
そこは、ちょうどボンゴレのアジトがある場所の真上…。チェルベッロが正一に報告した場所だった。
隊員の一人は、合図を出すと、リングに炎を灯し、匣を開けた。
同じ頃、ミルフィオーレ日本支部では…。
「ボンゴレ地下アジト上に、部隊が到着。3隊に別れ、匣兵器での掘削作業を開始しました」
司令室では、先程の場所で作業を始めた隊員からの報告を受けたチェルベッロが、正一に報告をしていた。
「念のため、周辺道路は封鎖しておけ。突入準備が整い次第、僕に繋いでくれ」
「はっ」
報告をうけた正一がチェルベッロに指示を出すと、チェルベッロは短く返事をした。
ボンゴレのアジトがある上の場所では、作業が続いていた。
そして、夜があけ、空が明るくなり始めた頃、匣兵器のもぐらが掘削作業を終えており、アジトの天井部分にいた。
「敵アジトの、天井部分と思われる防壁を発見!!」
そこには、隊員も数人おり、正一に報告をしていた。
「B・C班も同じく。防壁を確認!!」
掘削作業は三ヵ所で行っており、全ての班が掘削作業を終えていた。
「これより、ボンゴレアジトに、攻撃をしかける。カウント3で防壁を爆破し、一斉に突入せよ!!」
全ての箇所で掘削作業を終えたことを知ると、正一は命令を下した。
「了解(ラジャ)」
隊員は爆破装置をしかけると、そこから退避する。
「カウントを開始する」
隊員が爆破装置をしかけ、退避したのがわかると、正一はいよいよ作戦を開始しようとしていた。
「3、2、1」
しかし、ボンゴレのアジトでは、人々がまだ眠りについていた。
「爆破!!」
正一の合図で、爆破装置を作動させると、三ヵ所同時に、すごい音をたてて爆発した。
爆発の影響はアジトの中にまで及んだ。そこは壁や天井の雰囲気からして、トレーニングルームのようだ。
「全隊突入!!」
爆発がおさまり、正一の合図が出ると、そこにいた隊員達は、全員自分の近くの穴の中にとびこんだ。
全員、ロープを使ったり、斜面をすべるようにして降りていき、アジトの中へ突入する。
「ボンゴレリングの回収を優先せよ。守護者は生け捕りだ」
「抵抗する場合は、いかがなさいますか」
「………………殺せ」
「了解(ラジャ)!!」
正一の指示に了解すると、彼らは全員上を見上げた。
「なんだここは…?」
「大広間か……?」
ただ広いだけの、何も置かれていない場所なので、どこなのかと思っていると、突然穴があいた天井部分の二ヵ所から、鉄の棒が交差するように伸びて穴をふさいだ。
「!」
交差された鉄の棒は網のようになり、彼らを出られなくした。
「なっ」
「なんだ!?」
いきなりのことに、何事かと思った。
「弱いばかりに」
すると、その穴の一ヵ所の鉄の棒の上に、一人の人物が立った。
「群れをなし」
その後に、クロームのカバンに入れられていた発信機が床に落ちる。
「!!」
その、突然現れた人物に、隊員達は目を見張った。
「咬み殺される
袋の鼠」
それは雲雀だった。
雲雀はトンファーに炎を灯し、雲ハリネズミを出し、いつでも攻撃できるように構えていた。
「わ!!」
「罠だ!!」
そう……。雲雀はこの場所まで発信機を持ってきて、彼らを、この場所におびき寄せたのだった。
同じ頃、ツナ達が寝泊まりをしているスペースでは…。
「何なんだ?」
ツナ達が殴り込みに行くために、廊下を走っていた。
眠りについていたのは、クロームとランボ、非戦闘員であるイーピンや京子やハルで、実は、ツナ達はすでに起きていたのだ。
「出撃って………?予定より早くない!?」
殴り込みの時間はもうちょっとあとの予定だったのに、早まったので、ツナは無線機で、ジャンニーニとリボーンに問いかける。
《敵の急襲です!!2km離れた倉庫予定地に、大部隊が集合している模様》
《ヒバリがすでに向かっているぞ》
リボーンとジャンニーニは、ツナの疑問に答えた。
あの場所はトレーニングルームと思われたが、実は壁や天井部分が似ているだけで、ツナ達が居住区として使っている場所ではなかった。
「!!」
「ヒバリさんが!?」
「(雲雀さん…!!)」
雲雀が一人で敵と対峙しているというので、全員驚き、魅真は雲雀の身が心配になった。
「敵は大勢いるんでしょ?一人じゃ無理だ!!オレ達も行かなきゃ!!」
「ならん!!それでは、ヒバリが体をはる意味がなくなる!!」
ツナは雲雀のもとに行くことを提案するが、そこを了平に止められた。
「え!?」
《集中した敵の兵力を、ヒバリが一手に引き受けることで、地上と敵アジトの戦力は、手薄になるんだ。ヒバリの行動に報いたければ、殴り込みを成功させろ》
そしてリボーンにも、雲雀のところではなく、敵のアジトに向かうように言われる。
「(あいつ…。このこと知ってたんじゃ…)」
「(そ…そんな…)」
「(あの野郎!!かっこつけやがって!!)」
「(雲雀さん…。どうか無事で!!)」
それでも、魅真もツナも山本も獄寺も、雲雀のことが心配だった。
《地上監視ポイントより、信号確認!!コースクリア。10代目!!今なら、そのままFハッチより、ルート312で、敵アジトへつっ切れます!!》
「ぐっ…」
《おまえは、ヒバリの強さを知ってるだろ?ツナ》
「…わかった (ヒバリさん、頼みます!!)」
雲雀のことは心配だが、殴り込みを成功させなくてはいけないので、苦渋の決断ではあるが、雲雀を信じて、敵のアジトへ殴り込みに行くことを決意する。
「開けてくれ、ジャンニーニ!!」
《了解!!Fハッチ開口!!》
そして、ジャンニーニにFハッチを開けるように指示をした。
指示を受けると、ジャンニーニはFハッチの出入口を開ける。
Fハッチが開くと全員真剣な目をして、敵のアジトへ行くために、Fハッチから外へとび出した。
外へ出ると、ツナ達は並盛駅に向かった。
そこにある地下ショッピングモールに、敵アジトの入り口があるからだ。
その地下ショッピングモールの、地下駐車場の発電室にあるダクトへと、ツナ達は足を進めていく。
先日の会議で、ビアンキとフゥ太がもち帰った情報の、ショッピングモールに何か所か不自然にあったダクトと、雲雀のアジトのサーバーに流れこんできた図面の、ミルフィオーレアジトのダクトの位置が、一致したことが判明。その2つの図面を重ね合わせたことで、敵アジトの正確な位置をつかみ、それを元に検討した結果、ショッピングモール地下駐車場の、発電室にあるダクトから潜るのがベストだと判断したからだった。
「こっちよ」
「ビアンキ!」
もうすぐで、発電室に着くというところで、発電室がある近くの柱から、ビアンキが姿を見せた。
「見送りに来たわ。この中の、ダクトから行ける」
「こんな危険な所まで………」
「京子やハルやチビ達のことはまかせなさい。安心して暴れてくるのよ」
「うん…。いってきます!」
「ありがとうございます、ビアンキさん!」
京子達の面倒を見てくれるというので、ツナはほっとして、安心した顔になり、魅真もお礼を言って発電室の中へ入っていく。
「しっかり頼むぜ」
「!!」
ツナや魅真だけでなく、獄寺も、すれ違いざまにビアンキに頼んだ。
「いつまでも、過去に縛られてたまっかよ。敵の主要施設を破壊し、入江を倒した後で、話がある…」
「ハヤト!」
ついこないだまでは、ビアンキと顔すら合わせず、話すらしなかった獄寺が、背中を向けながら、信じられないことを口にした。
「待ってください!」
「…………」
それだけ言うと、獄寺はツナ達の後を追いかけた。
「(私も、話したいことがあるわ) いってらっしゃい」
獄寺が心を開いてくれたことがうれしいのか、ビアンキは優しい顔で笑い、獄寺を見送った。
「じゃ」
最後に、一番後ろにいる山本が軽くあいさつをすると、全員地下へと潜っていった。
ハシゴを降りていくと、今度はやわらかいビニールのようなところに潜りこみ、匍匐前進で進んでいく。
先頭はラルが進んで、その次にツナ、山本、獄寺、了平、魅真と続いていた。
「まさかこんな映画みてーなことするとはな」
「本当にこうなってるんだね」
ツナと山本がしゃべっている中、ラルはゴーグルに映しだされた図面を確認していた。自分のゴーグルに、敵アジトの図面をインプットしていたのだ。
ツナ達は他にも、敵アジトに侵入するというので、ジャンニーニから、リングを使わない時に自動でフタが閉じ、リングの力を封じて敵に探知されなくする、オートマモンチェーンリングカバー。よーいドンで、一斉に送受信両方の周波数が変化するため、盗聴の心配がない上、機器同士の周波数は、寸分違わず同調変化するので、音質もクリアするという、個人同士の連絡を取り合うための無線機。リボーンからは、レオンの体内で生成された、死ぬ気の炎に強い糸で織ったシャツ。そして、地図をインプットした携帯情報端末を持っていた。
ラルのゴーグルに映しだされているのは、事前に準備して渡されたものの一つで、ラルは携帯情報端末ではなく、ゴーグルにインプットしていた。
「地下3階の、C5ポイント。第二格納庫の上だな。よし、図面通りだ。このまま中央の施設を目指すぞ」
確認をすると、図面の通りに来ているので、ツナ達はラルの指示通りに、中央の施設へ進んでいくが、その様子を、ダクトの下の第二格納庫から、一人の人物が見ていることには、気づいていなかった。
「ラル・ミルチ、体調はどう?」
「………………」
ラルはツナに体調を聞かれるが、答えることはなかった。
「でっ」
その時、ラルが止まったので、ツナはラルの靴底に顔をぶつけてしまう。
「赤外線センサーが張られている」
ラルが止まったのは、目の前に赤外線センサーがあったからだった。
「!」
「5mというところか」
ラルの目の前には、誰がどこからどう見ても、回避不可能というくらいに、せまい感覚で、縦横無尽に、赤外線センサーが張りめぐらされていた。
「これに感知されると、奥に設置してあるレーザーの餌食になるな」
それだけでなく、奥にはレーザーが4台も設置されていた。
「訓練通りに、"くぐり抜け"を実行する。ジャンニーニ特製の擬光フィルターで、5秒間赤外線を止める。その間に通り抜けるぞ」
「わ…わかった…」
こんなにたくさん人数がいる上に、たったの5秒でくぐり抜けなければならず、失敗すれば、たちまちレーザーの餌食になってしまうので、ツナは生つばを飲みこんだ。
「OKだ」
「私もよ」
ツナだけでなく、全員が、緊張した面持ちだった。
ちょっと訓練を受けただけの素人だし、敵にみつかってはいけないからだ。
ラルはツナ達が返事をすると、擬光フィルターを、赤外線センサーがある方へ投げこんだ。
フィルターが下に落ちると、フィルターのフタが開き、アンテナが出てきて、何やら周波数のようなものを出していた。
すると、赤外線センサーが消えた。
「今だ!!」
赤外線センサーが消えると、ラルの合図で、全員くぐり抜けを行った。
「どうだ!?」
ある程度進むと、ラルは、全員くぐり抜けられたかどうかを尋ねる。
ラルが尋ねると、ツナは後ろへふり向いた。
「わっ」
一番後ろの魅真は、ギリギリのところでくぐり抜けていた。
「な……なんとか…大丈夫…。でも……すごい心臓に悪いわ、これ…」
もうあと少しで、足の先が赤外線センサーにふれるというところだったので、魅真は心臓の音が早く大きくなっていた。
「よし」
全員くぐり抜けられたので、ラルは先に進もうとした。
「……?」
だが、前を向いた時、レーザーが作動しているのを目にする。
「バカな!!レーザーがくる!!」
「!!」
「回避だ!!」
しかし、人一人がようやく通れるというこのせまい通路では、回避は難しかった。
ラルがそう叫んだ次の瞬間、レーザーが撃たれたが、魅真と山本がダクトを切って下に落ちたので、難を逃れた。
「ギャ」
全員下の格納庫に降りたが、着地に失敗したツナは、短いうめき声をあげる。
「っぶねー」
「ギリだぜ」
「本当…。みんな無事でよかったわ…」
「なぜだ?赤外線には触れなかったはず…」
赤外線に触れていないのに、それなのにレーザーがきたので、ラルはふしぎに思った。
「ハハァ~。オレが、スイッチを押したからだ~」
「!」
ラルの疑問に答えるように、ツナ達以外の者が声をかけたので、全員そちらに顔を向けた。
「ハァ~~。モグラでなく、人間のガキだ~」
そこにいたのは、モヒカン頭の、筋骨隆々で、縦にも横にも大きい、鎧のような装備を肩にひっかけている男だった。
「でけっ」
「うわあぁ!!」
男の風貌にみんな驚き、ツナは悲鳴をあげた。
「んん~?ガキ…?確か、ボンゴレ10代目達もガキだと言っていたな~。でも、奴らは今、攻められてボコボコにされてんだもん。違うよな~」
「!」
「(よし。敵はまだ、オレ達が来ていることに気づいてねぇ…)」
ツナ達の情報は手に入れているものの、カン違いをしているので、獄寺は好機だと思った。
「ってことは一般人がまぎれこんだんだな~。ま~いいや。おまえ達のおかげで、格納庫(ここ)に届いた、武器の試し撃ちができるな~」
男はしゃべりながら、肩にひっかけている、その武器を肩にセットした。
「!」
「え?」
一般人とカン違いしているのに、武器の試し撃ちをしようというので、ツナ達は驚いた。
「兵器の威力を見るのは、生身の標的が一番だからな~」
男はおかまいなしに、リングに炎を灯すと、兵器を作動させるための穴に差し込んだ。
すると、右肩と左肩にある計6つの銃口に、雷属性の死ぬ気の炎が光った。
「「「「「「!!」」」」」」
「バァ~ハハ~イ!!!」
そして、ツナ達に向かって炎の弾が撃たれ、ツナ達がいるところに命中した。
「ハハァ~~~。なかなかの威力だなこれは。使えそうだ~。これじゃ、骨も残らんな~」
すごい破壊力をもっていたので、男は愉快そうに笑い、武器をたたいた。
「今の誰だ?」
「ぬ!!」
しかし、やったと思ったのに山本の声が聞こえたので、男は目を見張る。
「オレではない」
「同じく」
「私もよ」
「オレも何も…」
「オレっス」
今の攻撃を防いだのは、獄寺だった。
「ありがとう、獄寺君」
「いえいえっ」
「本当、助かったわ。隼人君」
「どってことねえよ…」
今度は獄寺が危機を回避してくれたので、ツナと魅真はお礼を言った。
手で匣を上に投げているところを見ると、今のは匣兵器で防いだのだというのがわかった。
「なっ、なにィっ!!!」
まさか一般人に防がれるとは思っていなかったので、男はかなり驚いた。
「道を開けろ、ムダマッチョ。遊んでるヒマはねぇ」
「ム…ムダ!!?」
獄寺は匣をもとつけていた腰に戻すと、腕を組み、悪態をつく。
「チキショー!!こんのガキィ~~!!オレのこと何も知らずに~~!!!」
あっさりとキレた男は怒りを燃やし、再びリングに炎を灯した。
「許さんっ。殺してやる!!!」
そして、今度は兵器ではなく、自身が持っている匣にリングを差し込んだ。
「デンドロ様の、この電槍(ランチャ・エレットリカ)でな~!!!」
その匣は収納用の匣で、中からは、大きな雷をまとった槍が出てきた。
「こいつは…「一番槍(アラッタッコ)」の異名を持つ、切り込み重装兵のデンドロ・キラムだ。後方に配置すると、背後から味方ごと串刺しにする、キレた男だと聞く」
「ああ…。槍を持った奴の突破力は、ミルフィオーレ随一。雷の匣の特徴である"硬化"によりコーティングされた電槍に、貫けぬものはないとも聞く」
「ハァ~」
「やっかいだな」
「いったん間合いを取るぞ」
了平とラルは相手のことを知っており、ここは慎重にいった方がいいと判断した。
「ハァ~?間合い!?そんなものやるもんか!!」
けど、デンドロは今すぐにつっこもうと、槍をまとう炎を強くする。
「ぶっ散れ!!!電撃突き(コルポ・エレットロ・ショック)!!!」
デンドロは、槍をツナ達に向けて突き出した。
「(会心の一突きだな~~~♪)」
確かに何かがつぶれる音がしたので、手ごたえを感じたデンドロは、ニタァと不気味に笑う。
「ハハァ~。飛び散った!!
?」
相手をやっつけたので、槍を引こうとした。
「引けないぞ?」
だが、槍を引くことはできなかった。
「なんでだ?おかしいな~」
ふしぎに思いながら何回か引くと、槍の先に人影が見えた。
「なっ、なにィ!!!」
その人影を見ると、デンドロは驚愕する。
「聞こえなかったのか?遊んでいるヒマはない」
槍を止めたのはツナだった。
デンドロが手ごたえを感じたのは、ツナが槍をつかみ、同時に槍を溶かして、槍の先が炎で溶かされて、グチャグチャになっていたからだった。
.