標的67 突入前夜
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作戦室から出ていったあと、ツナは雲雀との修業の時間ということで、いつも修業をしているトレーニングルームに行き、雲雀とスパーリングをしていた。
ツナは初めて雲雀と戦った時よりも動きがよくなっており、雲雀の攻撃をよけたりもしていたが、それでも雲雀は、冷静にツナの動きを見極めて、後ろから半回転して、トンファーでツナを殴りとばした。
「ぐっ」
殴られたツナはふっとんでいくが、頭上に手をもってきて、炎を発射させて、壁や地面に激突するのを防いだ。
しかし、すぐにツナのあとを追うように雲雀が走ってきたので、ツナは激突するのを防ぐためではなく、雲雀に向かっていくために炎を出した。
炎の推進力で一気に間合いを詰めたツナは、雲雀に蹴りかかるが、雲雀はあっさりと右側のトンファーで防御をし、防御したのとは反対のトンファーで、ツナに殴りかかる。
だが、ツナは炎を出してよけ、空中で回転しながら天井まで飛んでいき、ぶつかりそうになったところを、また炎を出して防いだ。
標的67 突入前夜
「驚いたな。沢田さんの動きが、格段に良くなっている。ピーキーなあの炎を、モノにし始めてるようですね」
「本当…。ツナ君、やっぱりすごい…」
「それは違うな」
「「!」」
このトレーニングルームには、草壁とラルだけでなく、魅真もいた。
人の戦いを見るのも修業のうちということで、雲雀に連れてこられたのだった。
ラルは体調がすぐれないので椅子に腰をかけており、その隣に立っていた魅真と草壁は、ツナの成長に感心していたが、ラルは2人が言うことを否定した。
「奴は、2種類の炎を使い分けているんだ」
「2種類…?」
「従来のノーマルグローブの炎は、エネルギーが常に分散するため、感覚をつかみやすい、いわば柔の炎。微妙な出力ができるため、姿勢制御やホバリングなどに適している。
対するVer.V.R.で得た純粋な炎は、扱いにくいが、爆発的にエネルギーが上昇していく、剛の炎。直線の加速や、ここ一番でパワーが必要な時にはコレだ」
「なるほど。可変式というわけか…。考えましたね、ラル・ミルチ」
「オレではない。沢田だ」
「! ボンゴレの…超直観ですか」
「確かに、奴の上達ぶりには、何か理由をつけたくなるのもわかるが、そんなくだらぬ迷信、オレは信じない。
それに、動きがよくなったとはいえ、戦闘力はまだ話にならん。沢田は、匣を持っていないんだ。雲雀といえど、匣を使わない相手にこうも手こずっていては、強力な匣を持つミルフィオーレには、とても太刀打ちできん」
「(………確かに)」
ラルの評価はきびしいものだったが、間違いではないため、草壁は心の中で納得をした。
「それは、沢田が、一番わかっていると思うがな」
そう言ったラル目の前では、当のツナが、雲雀にトンファーで殴られ、床にたたきつけられていた。
それは、床が陥没するほどの威力で、魅真は生つばを飲みこみ、ツナは荒い息をくり返していた。
「(ダメだ…!!このまま機動力を上げていったとしても、倒せる気がしない…)」
ツナは雲雀という男の強さを目の前にして、限界を感じていた。
「いつまで、草食動物の戦い方をするつもりだい?」
「!?」
「君はまだ武器を使っていないよ。沢田綱吉」
「(武器!?)」
めずらしくアドバイスをされると、ツナは目を見開いた。
「あっ。え?」
そしてその後、ハイパー死ぬ気モードからいつものツナに戻ってしまった。
「じゃあ、次は魅真の修業だから、そろそろ帰る」
「なっ!!ちょっと待ってください、ヒバリさん!!」
「行くよ、魅真」
「はい!!」
ツナがもとに戻ると、雲雀は自分のアジトに帰ろうとした。
ツナが呼び止めるも、雲雀はマイペースに、魅真の修業を始めるためにアジトへ戻っていく。
雲雀のアジトに一緒にいった魅真は、さっそくトレーニングルームで、雲雀と修業を始めた。
トレーニングルームからは、薙刀とトンファーがぶつかりあう金属音が響いていた。
ツナの決意を聞いて、更にやる気になった魅真は、午前中の時のような弱気な態度ではなく、何がなんでも強さを手にいれるというのが顔に表れており、はりきっているのが、誰が見てもわかるほどだった。
「(魅真さんの動きが、以前よりも格段によくなっている。修業の成果か!?)」
気持ちを切り替えたからか、それとも魅真が成長したからか、その両方か、魅真は一番最初に修業を始めた時よりも、強い攻撃力と防御力、素早い動きで雲雀と戦い、その戦っている時間が今までよりも長くなっていた。
それは、戦闘においては素人に近い草壁も、戦闘狂の雲雀も感じていることだった。
2人がそのことを感じてると、魅真は薙刀で攻撃するのをやめて、死ぬ気の炎をリングに灯し、匣を開匣して、雲ハリネズミを出して攻撃をした。
雲ハリネズミは螺旋を描いて雲雀に向かっていくが、雲雀は自分が持っている雲ハリネズミを出して、同じように魅真を攻撃すると、お互いの雲ハリネズミは相殺され、そこで修業は中断された。
「うん…。ずいぶんと良くなったよ」
「本当ですか?」
「ああ…。だけど、まだまだ動きに無駄があるよ。足の動きと薙刀をふる手の動き、匣を開匣する時の動きが別々になっている。それではダメだ。同時に、流れるように動けるようにしないとね。あと、死ぬ気の炎をもっと大きくすること。炎の純度をあげること。増殖スピードを早くすること。今よりも、もっともっと体力や力を向上させること」
「わかりました!」
前よりは強くなったが、それでも課題はまだ山積みだった。
しかしそれは、逆にいえば可能性は未知数で、伸びしろがあるということだった。
以前の魅真なら落ちこんだだろうが、以前にも増してはりきっている魅真は、誰が聞いても気持ちのいい返事をした。
「突入するまであと5日。ギリギリまで修業をするよ。そして5日後、君がどれだけ強くなったのか、最終試験を行う」
「最終試験……ですか?」
「そう…。僕に一撃でもいれることが最低条件だ。でないと、突入しても死ぬだけだからね」
魅真は、動きはよくなったものの、未だに雲雀に一撃もいれることができていなかった。
もともと冗談を言わない雲雀だが、今言ったことは真剣なのだと、魅真は固唾を飲んだ。
だが、ふしぎと不安はなかった。
雲雀が指導してくれるなら、絶対にやりとげられると思っているからだ。
その後は、雲雀は了平と会わなければいけないので、草壁とともにトレーニングルームから離れたが、魅真は休憩するように言われたので、息抜きにボンゴレのアジトへと行った。
そして、ボンゴレのアジトに入ると、突然すさまじい轟音が聞こえてきた。
「な、何!?今の音」
轟音が響くのは、きっとツナか獄寺か山本が修業しているから、その音だろうと思ったが、突然響いたので、気になった魅真は、トレーニングルームまで見に行った。
エレベーターに乗りこみ、地下8階まで行き、扉が開くと、そこにはツナだけでなく、地下10階で修業をしていた山本とリボーンがいた。
「ん?魅真じゃねえか。どうしたんだ?こんなところまで」
エレベーターの扉が開いたのに気づいたリボーンが、魅真に声をかけてきた。
「リボーン君、武君も…。えっと…今は休憩中なの。雲雀さんが、笹川センパイと話し合いをするから…。それで、息抜きにこっちのアジトに来たら、すごい音が響いたから、なんだろうと思って…」
「そっか」
「実はオレ達もなんだ。小僧と修業してたら、突然すごい音がしたからさ。ツナんとこに来てみたら、こうなってたわけだ」
そう言った山本の前には、修業をしていたせいで倒れているツナがいた。
「ツナ君!!」
目の前でツナが倒れていたので、魅真は心配になる。
「大丈夫だぞ。眠ってるだけだからな」
「よかった」
けど、リボーンにツナの状態を説明されるとほっとした。
「魅真、ツナがこんな状態だから、オレ達は、今度は獄寺の修業を見に行こうと思ってるんだが…。一緒に行くか?」
「うん。隼人君がどうなっているのか気になるし」
山本に誘われると、魅真はツナに毛布をかけ、リボーンは書き置きをして、ツナの体の上にのせると、魅真と山本とリボーンは、獄寺を探しに行った。
最初は、獄寺が初めて修業をしたという、地下16階にあるストームルームに行ったが、そこにはビアンキがいるだけで獄寺はおらず、仕方ないので、1階ずつ上に上がっていきながら、一部屋ずつ、しらみつぶしに探していった。
そしてようやく、地下12階の資料室で、獄寺をみつけた。
「いたな」
「そうだね。でも、なんで資料室で修業?」
3人は扉の隙間からこっそりとのぞき、戦闘の修業なのに、何故資料室にいるのか、そして、ペンを持って紙とにらめっこしながら何をしているのか、ふしぎに思いながらも、獄寺の様子を見ていた。
獄寺は、資料室にある机の上に、匣と、匣から出てきた兵器とにらめっこをしながら、何やらいろいろと悩んでいたが、次第に閃いていき、たくさんある匣の中から次々と兵器を出していった。
「リボーンと山本と魅真ちゃん!!」
そこへ、トレーニングルームで寝ていたツナがやって来た。
「(何のぞいてるんだろ?あの部屋の中に、獄寺君いんのかな?)」
しゃがんで、扉の隙間から中をのぞき見ている3人を、ふしぎに思いながら、3人のもとへ歩いていく。
すると、ツナの存在に気づいた魅真と山本は、こっちに来たらまずいと言うように、顔と手を横にふってジェスチャーをするが、ツナはまったくわかっていなかった。
「え!?」
すると、周りの空気がゆらぐと同時に魅真達が走り出し、ツナのもとへ駆けてきた。
「こっち来ちゃダメだよ!!」
「逃げろツナ!!」
魅真達がツナのもとへ走って来たのは、中の状況がやばいことになっているからだった。
「ギャ」
今いち状況が飲みこめていないツナを、魅真と山本が両側から抱えこみ、同時にリボーンがツナの頭を蹴り、4人は床にすべりこむようにふせる。
その直後、資料室の中から、爆発するようなすさまじい炎がとび出してきた。
それはもう、4人がいる場所のギリギリのところまで及んでいた。
そして、次第に煙が晴れていくと、そこには見覚えのある影が立っていた。
それは獄寺だった。
更に、空中にあった何かも、獄寺のもとへ向かっていくと、獄寺が腰につけている複数の匣に戻っていく。
「よし。SISTEMAC.A.I.の完成は見えたぜ。あとは10代目に…」
煙が完全に晴れると、獄寺の姿が見え、その獄寺の頭の上には、ヒョウがらの仔猫がのっており、獄寺に威嚇をしていた。
「こいつをどう説明すっかだな」
当の獄寺は、修業とその仔猫にひっかかれたのとで、ぼろぼろになっていた。
「隼人君!!」
もう炎もおさまったので、大丈夫かと判断した魅真は、起きあがって、獄寺のもとへ走っていく。
「ん?あ……魅真…。それに10代目!!リボーンさんと山本も…。どうしたんスか?」
「今休憩中で……それで、他のみんなはどうしたのかと思って、こっちに来たの。それで、トレーニングルームでツナ君が寝ていたから、リボーン君と武君と一緒に、隼人君の様子を見に来たのよ。ツナ君は今来たの」
「そ、そうか……」
どんな形であれ、魅真が自分のことを気にかけてくれたので、うれしくなった獄寺は、頬を赤くする。
「ところで、その仔猫何?」
「ああ、こいつか?こいつは……オレの匣兵器だ…」
「隼人君の!?」
そう言われて見てみると、仔猫は目が赤く、耳からは嵐属性の死ぬ気の炎が出ていた。
「へぇ~~。名前は?」
「ま、まだ決めてねえ…」
仔猫を見て、目をキラキラと輝かせた魅真が顔を近づけると、獄寺はそれだけで更に顔を赤くした。
すると、獄寺の頭の上にいた仔猫は、魅真の胸にとびついた。
「わっ」
突然のことに、魅真はびっくりした。
「かわいい~~」
けど、動物は好きで、何よりもこの仔猫が愛らしいので、魅真は片手でだっこをして、もう片方の手で仔猫の頭をなでた。
「ハハッ。本当、かわいいのな」
「本当だね」
「ああ」
仔猫はリラックスして目を細め、のどをゴロゴロと鳴らしながら魅真の体にすりよっており、そのかわいさに、ツナも山本もリボーンも、魅真の腕の中にいる仔猫を見て顔をなごませた。
すると、急に仔猫のお腹が鳴った。
「お腹鳴ったね」
「うん。お腹すいてるのかしら」
「それじゃあ、食堂でも行こうか」
「そうね」
仔猫がお腹をすかせているので、魅真達は全員食堂に行くことにした。
その頃、ミルフィオーレ日本支部では…。
「白蘭サン!!」
《ん》
午前中に白蘭と通信した時の録画映像を見て、違和感に気づいた正一は、もしやイタリアにいる白蘭に、何かあったのではないかと思った。
それで、急いで白蘭と通信を繋いだが、画面に映った白蘭は、のんきにマシュマロを食べていた。
「んじゃないよ!!無事だったんですね!?」
《うん、元気》
「あの伝達係!伝達係は今どこに!?」
正一が感じた違和感というのは、白蘭の後ろに映っていた伝達係…レオナルド・リッピのことだった。
レオナルド・リッピは、正一が推薦した男だったのだが、本当は60歳の小男なのだという…。
それなのに、白蘭の後ろには10代の若い男が映っていたので、疑問に思った正一は、急ぎ白蘭に連絡をとったのである。
《ああ、レオ君?明日の新聞に載るんじゃないかな?変死事件か何かで。名前はちょっと変わるけどね》
「え…じゃあ…」
《そーそー。彼の中身ね、六道骸君だったよ》
白蘭の口から出たのは、衝撃的なものだった。
白蘭のそばにいた伝達係は、レオナルド・リッピの名と姿を借りた、骸だったのだから…。
その衝撃的な事実に、正一もチェルベッロの2人も驚いていた。
「六道骸…って、ボンゴレの、霧の守護者ですか…!?」
《うん》
「じゃあ白蘭サン…。六道骸を葬ったと?」
《まぁね》
「まぁねって…」
《それより面白くなってきたよ、正チャン。骸君からは直接聞き出せなかったけど、近々ボンゴレは、残った力で、なんか大きなことを企んでそうだ。諜報部の情報と、僕の勘を合わせるとほぼ間違いないね》
更に出た情報に、正一は大きく目を見開く。
「…………大規模な攻撃作戦ですか?」
《うん。恐らく、全世界規模のね。もちろん、日本も含まれるよ》
「しかし…ここには、過去から来た10代目ファミリーしか…。
!! まさか、彼らもこの基地に攻撃してくると?」
《そーいうこと》
「……………………」
そして、更なる情報をもたらされると、正一は少し考えこんだ。
「確かに、そうなれば、僕らにとっては願ってもないことですが…。イタリアの現ボンゴレ本部が、彼らを作戦に組み込むでしょうか…?第一、彼らが命を懸けてまでここに来る理由がないと…」
《彼らは、まがりなりにも、γとグロを倒したんだ。戦力に数えられるのは当然さ。それに、理由だってあるよ。正ちゃんには謝んなきゃなんないけどね》
「?」
《骸君にしてやられててさ。ミルフィオーレの情報が、ネットワークから少しずつ漏れるように、コンピューターに細工されてたんだよね》
「な…!!では、ここの情報も!!」
《アレの存在を10代目ファミリーが知ったら、何が何でも行くだろうね、そこ》
ツナ達が、こちらに来るという信憑性が高まると、正一はけわしい顔つきになる。
《まあ、でも心配いらないよ。もう情報漏れは止めたし。ボンゴレ本部がそれを知っても、日本に増員する余裕もない。これはビッグチャンス♪ボンゴレリングを一網打尽にするね》
「………」
《ってことで、忙しい正チャンのために、スペシャルボーナスを用意したんだ。僕が思うに、正チャンと肩を並べられる、数少ない…》
「増援でしょ?いりませんよ」
《!》
「足手まといなんです。そーいうの」
今までも真剣だったが、より真剣な声で話しながら、懐から、丸い小さな箱を取り出した。
《正チャン?もしかして》
「研究したかったけど、後回しにします。僕だって、隊長らしく振る舞おうとがんばってきたんだ」
その箱を、箱を持っている親指の腹で押し上げると、中身を取り出す。
「でも、人のやり方見てるとハラハラするし、お腹が痛くて、仕事が手につかない…………」
そして、中身を取り出すと、それを、右手の中指にはめた。
「僕が直接やりますよ。彼らの迎撃と、ボンゴレリングの奪取は」
それは、色が違うが、γがつけていたのと同じもの…。
黄色のマーレリングだった。
正一はいつになく真剣で、どこか怖い顔で、画面の向こうにいる白蘭を、まっすぐ見据えた。
《……………ついに来たね。最も信頼する部下がそう言うなら、止める理由は何もないや。まかせたよ、正チャン》
そう言った白蘭は、信頼しているように思える言葉を笑顔で言うが、何か企んでそうな笑みだった。
そんな白蘭も、正一も、何か一物抱えてそうな目で見る。
「じゃあ、しばらくほっといてくださいね、白蘭サン」
《あっちょっまだ……》
まだ白蘭は話があるようだったが、正一は強制的に画面を切って、話を終わらせる。
「非常招集だ。ハンガーを全部上げてくれ。白いのも黒いのもだ」
「はっ」
正一はさっそく行動に移し、チェルベッロに命令を出した。
一方、ボンゴレのアジトの食堂には、魅真、ツナ、獄寺、山本、京子、ハル、フゥ太がおり、食卓の上では、先程の獄寺の匣兵器の仔猫が、魚を食べていた。
「わー、猫ちゃん!」
「キュートですねー♪」
魚を食べている仔猫を、京子とハルは微笑みながら見ていた。
「すいません、10代目!!修業で、資料室の壁をぶっ壊してしまって…」
その隣では、獄寺がツナに、何度も頭をさげていた。
「何で資料室で修業してたの?それにこの猫…本当に、嵐の匣兵器なの?」
京子達が隣にいるが、どうしても気になったのか、ツナは小さな声で獄寺に聞いてみた。
「オレの場合、修業は紙とエンピツから入るんです…。こいつは誤って出しちまって…。匣にしまおうとしたんすけど、ひっかいて反抗してくるんスよ」
「そういう場合は、リングの炎を与えなければいいんだよ。匣兵器は、炎が切れれば、活動停止するはずだから」
「んなことわーってるけどよ…。炎が切れかかってきた時の、こいつの辛そーな顔見ると、つい…」
「(それって、情が移ってんじゃん!!)」
対処法をわかっていながら実行に移さず、むしろ炎を与えていたので、ツナは引いていた。
「この子、手足が大きいから、きっと大きくなるよ」
「いっぱい食べていいですからね」
テーブルの上では、魚を食べ終わった仔猫が、京子に頭をなでられて、ゴロゴロとのどをならしてくつろいでいた。
「匣兵器が人間の食料食べるなんて、聞いたことないけど…」
「! マジかよっ!?何でもかじるから、空腹だとばかり…」
てっきり、普通の動物のように食事をするのかと思っていたが、そうではなかったので、獄寺はショックを受ける。
「やっぱ、匣にしまっちまうか………。兵器としてもイマイチだしな…………」
獄寺は、仔猫を匣に戻そうと、仔猫の背中を指先でつついた。
だが、仔猫は怒って威嚇をすると、獄寺の手をたたいた。
「ゲッ」
少しつついただけで反抗されてしまったので、獄寺はびっくりした。
「だあぁ!!」
しかも、結構痛かったらしく、強烈な猫パンチをくらった獄寺は撃沈し、仔猫は威嚇をしていた。
「(全然なついてないし…)」
仔猫の主人であるはずなのに嫌われており、むしろ主従関係が逆になってるようにも見えるので、ツナはまた引いた。
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