標的66 決断
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次の日。この日も魅真は、いつも通り、朝食を終えると雲雀のアジトへ行き、まずは体力強化メニューをこなした。
そのあと、午後からはスパーリング、雲雀がツナとの修業のために途中でいなくなると、その間に、死ぬ気の炎の強化などの修業。そして、雲雀が戻ってきたら、またスパーリング。たまに、ほんの少しの休憩を入れて、またスパーリング。そのくり返しだった。
日が暮れ、夕飯の時間になると、ボンゴレのアジトに戻り、みんなと一緒に夕飯をとる。
そして、また昨日と同じで、夕飯を食べ終えると、死んだように眠りについた。
「今日も、ごちそうさまの前に寝ちゃったね」
寝てしまったのは、魅真だけでなく、ツナ、山本、獄寺もで、その様子を見た京子とハルは呆然としたが、京子はすぐにクスっと笑った。
「新しい修業が始まって、3日連続ですよ」
「よほど疲れてるんだよ」
「獄寺さんは、今日も、一人だけ席離れてますし…」
「ケガ……大丈夫かなぁ?」
魅真、ツナ、山本は同じテーブルで食事をしているが、何があったのか、獄寺だけは一人離れたテーブルで食事をとっていたのだ。
「ほっときなさい。自分の修業の不甲斐無さを恥じてるのよ」
京子が獄寺のケガを心配するが、ビアンキはなんとも冷たく言い放つ。
「うまくいってねーのか?」
「ええ…。1分間に、やっと2匹…。何よりあの子、やる気があるのかないのか……」
「ふむ…」
リボーンとビアンキが、獄寺の修業について話していると、当の本人である獄寺が、突然立ち上がった。
「リボーンさん、お先に休ませてもらいます。10代目にも、よろしくお伝えください」
「ああ」
「ハヤト兄、せっかく京子姉たちがお茶……」
自分の伝えたいことだけ言うと、獄寺はフゥ太の言ってることなど聞かずに、食堂を退出していき、扉を強く閉めた。
その様子に、ビアンキは軽くため息をついた。
「おまえと獄寺は、例の件もあるし、水と油だとは思っていたが、やはりこの修業のこの組み合わせは、無理があったのかもな」
「軟弱なのよ。あの子のことは、最後まで見させてください。先におフロいただきます」
「ああ」
「……はひ」
「ビアンキさん……」
そう言って、ビアンキもそこから退出していった。
それから何分か経ったが、魅真達は起きる気配はなかった。
「洗いモノ終了♪」
その間に、京子とハルは食器をすべて洗い終えた。
「じゃあリボーン君!」
「ハル達も、オフロ入ってきますね♪」
「ごくろーだったな。魅真とツナと山本は、オレが起こすから任せとけ」
リボーンに報告すると、京子とハルはイーピンを連れて、浴場へ行った。
「魅真、起きろ」
まずリボーンは、魅真の肩に手をおいて、優しく揺り起こした。
「え………ん……リボーン…君…?」
「ああ」
リボーンに起こされると、わりとすぐに目を覚ました。
「あれ?やだっ!私、またご飯の途中で寝ちゃった。今日こそは寝ないようにって…」
「それだけ修業をがんばってるってことだ。気にすんな」
魅真はリボーンに起こされると、昨日と同じように、またしても食事の途中で寝てしまったので、顔を真っ赤にしていた。
「起きろよ、ダメツナ」
「ふにっ」
リボーンは魅真を起こすと、今度はツナを起こした。
ただ、魅真の時とは違って、優しく体を揺り起こすのではなく、あごの下に蹴りを入れるという、かなり過激なやり方だった。
とても寝ている人間を起こす方法とは思えず、魅真はビクッとなった。
「リ…リボーン…。……そーいや、ビアンキと獄寺君の、例の件って何だよ」
「例の件?」
「何だ、さっき起きてたのか?」
「うん…一瞬ね…。そのまま、眠気に負けて寝ちゃったけど………。
でも、確かに近頃、獄寺君おかしいよ!話しかけても反応薄いし…。例の件って、一体何があったの?」
「私も知りたい。教えて、リボーン君!」
「…………しょーがねーな…」
二人に押されると、リボーンは暗い影を落としながらも、仕方なしに話し始めた。
「獄寺ん家はマフィアで父親がボスなんだが、獄寺は、ビアンキとは違う母親から生まれたんだ。獄寺の母親は正式な妻じゃなくってな。何かと待遇がひどかったらしい。最期は、父親の組織の者に消されたって噂だ」
「け……消されたって…。獄寺君のお母さんが?」
「それって、殺されちゃったってこと!?」
噂だが、とんでもない話に、魅真とツナは、思わず席を立ち上がった。
「獄寺の母親は、まだ若く駆け出しだったが、将来を嘱望された才能あるピアニストでな。大変な美貌の持ち主でもあった。そんな彼女に、ビアンキの父親は一目惚れしてな。妻子ある身でありながら、強引に口説き落とした…。やがて二人は付き合いはじめ、彼女は赤ん坊を身ごもり、出産した。それが獄寺だ…。だが、妻でない女との間の子供が、マフィア界では決して許されず、獄寺は、ビアンキの母親との子供と公表された。獄寺の母親は、年に3日しか、子供と会うことを許されず、ピアニストとしての将来も奪われた。
そして、獄寺の3歳の誕生日の5日後…。誕生祝いの密会を許され、組織が所有する、山奥の別荘に向かう彼女の車は……ありえない場所で、謎の転落をした。タイヤ痕は、一切無かったという……。彼女は即死……。幼い獄寺を残してな…。自殺の線も疑われたが、彼女はこの日を心待ちにしていたふしがあり、車内からもプレゼントが発見されている…。
獄寺がそれらのことを知るのは、城を飛び出す前日。お手伝い達の噂話を偶然聞いてしまう、8歳のときのことだ………」
リボーンの口から語られた、獄寺の過去…。
それは、想像以上に過酷なものだった。
標的66 決断
「そんなことが……あったんだ…」
「………なにそれ。そんなひどい話、獄寺君、一言も…」
かなり衝撃的な話に、魅真とツナの顔は沈んでいた。
「それであいつ…家庭が、ドロドロのグチャグチャだって…」
「武君」
「山本!起きてたの?」
いつの間にか起きて話を聞いていた山本がしゃべると、魅真とツナは、山本に顔を向ける。
山本は起きるとお湯をわかし、四人分のお茶をいれた。
「ありがと」
「ありがとう、武君」
「おう!」
お茶をいれてもらうと、魅真とツナは山本にお礼を言った。
「難しいなぁ。何て言って、獄寺君を励まそう…」
「ほっとけ。男なんだ。自分で折り合いつけさせろ」
「なっ。おまえ、こーゆー時冷たいぞ!!」
「周りがとやかく言う問題じゃねーって言ってんだ」
「まーまー、2人とも」
ツナとリボーンが言い合いをすると、山本が割って入り、二人をなだめた。
「気持ちがニッチもサッチもいかなくなった時は、気分転換が一番だと思うぜ」
「「気分転換?」」
「ああ。オレに、いい考えがある。任せとけって!!」
「ランボさん登場!!」
「あ、ランボ君」
「よっ、ランボ!」
「フロ入ってきたのか?」
「んーとねぇ、ビアンキと京子とハルとイーピンもだよ」
話をしてると、そこへランボがやって来た。上半身ハダカで、体から湯気がたっているので、風呂に入っていたことが、一目見てわかった。
「今ねぇ、オフロの中ねぇ、おっぱいがいっぱい」
「えっ」
「なっ」
「ぶーーーっ」
天然なのかわざとなのか、すごいことを言うランボに、魅真、ツナ、山本の三人は顔を真っ赤にし、魅真は湯のみを力いっぱいにぎりしめ、ツナはお茶を吐き出し、山本は持っていた湯のみをテーブルに落とした。
「あっつっ」
「あちっ」
「あちゃちゃ」
「本当ガキだな」
その衝撃で、まだ熱いお茶を体にこぼしてしまったので、魅真達はあわてるが、リボーンは冷静だった。
そして、次の日の朝…。獄寺は朝ご飯を食べるために、食堂へ続く通路を一人歩いていた。
頭をかき、軽くため息をつき、浮かない顔をしていた。
「(10代目、早い…)」
食堂の扉の手前まで来ると、中からツナの声が聞こえてきたので、すでにツナがいるのがわかった。
「おはよーございます!!10代…」
いろいろと思うことはあるが、それでもツナには心配かけまいと、努めて明るい顔であいさつをしながら、食堂に顔をのぞかせる。
「あ、隼人君!おはよう」
「待ってたぜ!」
「おはよう、獄寺君!」
「な!?」
そこには、いつもとは違う光景がひろがっていた。
料理担当の京子とハルは朝ご飯を用意しておらず、魅真、ツナ、山本が、「すし」と書かれたハッピを着ていたのだ。
「今日は、男子といつも修業をしてる魅真ちゃんが、朝ごはん当番になったんです!」
「山本君指導、竹寿司直伝の手巻き寿司を作るんだって」
「冷凍のネタだけど、結構いい感じにできそうだぜ」
「一緒に作ろう、隼人君!」
「最近修業ばかりだし、たまには息抜きしようよ」
「え……」
なんでこうなっているのか理由を聞くと、獄寺は戸惑った。
「す…すいません、10代目…。今、自分そういう気分では……」
相当落ちこんでいるようで、沈んだ顔になり、ツナの提案を断った。
「で…でも、人手が足りないんだ。オレ、ラル・ミルチの分も、作らなくちゃいけないし。あの人、みんなとごはん食べないけど、結構食にはうるさくて…」
獄寺の事情は知っているが、それでもツナは、獄寺をはげますために無理矢理誘う。
「とにかくやろーよ、ハヤト兄!!」
「おい」
「☆△□!!」
「すっし!すっし!」
そこへ、いつの間にかフゥ太が後ろにやって来て、獄寺の背中を押し、ランボとイーピンが、獄寺の足にまとわりついた。
「こらアホ牛!!米粒ついた手で触んな!!」
「@◆◎!!」
「ベロベロベーー」
「これで、ちったー、修業に身が入るといいがな」
「………………」
ランボと関わって、獄寺はいつもの調子をとり戻した。
だが、少し離れたところにすわっているビアンキは、ムスッとしていた。
同じ頃、雲雀のアジトでは…。
「恭さん」
地下なのに中庭があり、その中庭にある鹿威しが鳴ると同時に、中庭の前にある部屋の中で、草壁が雲雀の名前を呼んだ。
「マークしていた例の男が動きだしたとの連絡が、イタリアから」
「ここへ来るのかい?」
何十畳あるかわからない部屋の扉の前には草壁が、部屋の中心には雲雀がおり、雲雀は草壁からの報告を受けていた。
「まだわかりませんが、油断は禁物。この情報は、沢田側にも提供すべきかと」
「任せるよ。たしか、あれの写真があったはずだ」
「へい」
「ヒバードとの撮影に成功したものが一枚」
雲雀と草壁が話していると、そのヒバードが飛んできて、雲雀の頭の上に着地した。
雲雀に言われると、草壁は準備をして、ボンゴレのアジトを訪れた。
そして、ツナ達は朝ご飯を食べたあとに、作戦室に集まり、草壁はもってきた情報を話した。
「骸に動きがあったって、どういうことですか?」
その情報というのは、あの骸のことだった。
「だって、まだ骸は、復讐者の牢獄に入ってるんじゃ…」
「我々もそう思っています」
「でも、相手はあの骸だから、何かあってもふしぎじゃないわ」
「5年前に、城島・柿本・クロームは、復讐者の牢獄へ骸救出に向かい、失敗。その後、3人は消息を断った………。ただし、半年ほど前、妙な噂が立った」
「妙な噂?」
「骸が倒されたというものです」
「えっ…?」
「!」
「どういうこと?」
「発信元は、ミルフィオーレ。倒したのは、第8部隊長グロ・キシニア。数少ないAランクで、相当腕の立つ強物です」
全員の目の前にある画面には、グロ・キシニアの写真とデータが映っていた。
「考えられるとすれば、何者かに憑依した骸と戦ったのでしょう?骸が大きなダメージを負ったことも考えられますが、少なくとも死んではいないはず。なぜなら、我々はその後、イタリアの空港で、ある男と接触している、クローム髑髏を捉えたからです」
そして次に、サングラスとスカーフで顔をかくしているこの時代のクロームと、後ろを向いているので顔はわからないが、クロームよりも顔半分ほど背の高い男が写った画像が映し出された。
「ク…クローム、生きてたんだ!!ケガはしてるみたいだけど…」
写真のクロームは骨折をしているみたいだが、とりあえずは無事なようなので、ツナはほっとした。
「そうか。骸が死んじまってたら、クロームは生きてられねーんだったな」
「だが、今クロームは行方不明。ってことは、今回動きだしたのは、この密会していた男の方だな」
「! さすがです…。その通り。雲雀は、この男が、骸の何かだとふんでいます」
ほんの数少ない情報だけで、草壁が言わんとしていることを理解したリボーンに、草壁は感心した。
「この男については、身元不明で、少なくともあなた達の知らない人間です……。これとは別に、骸の手掛かりとして、気にしているものがもう一つ。この写真に写っています」
「あっ」
話しながら草壁は、一枚の写真をツナ達に見せた。
「それって………前に見せてもらったヒバードの…」
その写真は、以前雲雀を探すための手掛かりとして、10年後の山本が見せてくれた、ヒバードの写真だった。
「でも、どこに骸が写ってるんですか?どう見ても、ヒバードちゃんしか写ってないんですけど…」
目をこらして見てみても、ヒバードしか写っていないので、魅真は顔をしかめる。
「よく見てください。写真の左上に写っています」
「左上って………えっ!?」
草壁に言われて再度見てみると、魅真は目にしたものに驚いた。
「!!」
「これが骸!?」
「これも骸の何かです。雲雀は、イタリア滞在中に、これの視線を何度か感じ、確信したらしいです。運よく我々のカメラに、一枚だけ写りましてね」
「でもよ」
「こいつぁ」
「我々はこれに、骸をもじって名前(コードネーム)をつけました」
「コードネーム…ですか?」
「ええ。ムクロウといいます」
「ムクロウ?」
「ええ、そうです」
「(フクロウに憑依した骸だから!?雲雀さん、わりと安直…)」
そう魅真が思った時だった。
突然、壁にかかったモニターから音が鳴った。
「!」
「何だ、ジャンニーニ」
「一瞬ですが、データにない、強いリングの反応が…。黒曜ランド周辺です」
「!!」
「黒曜ランド!?」
「ただし、このあたりは電波障害がひどく、誤表示の可能性も高いです」
「もう一度、黒曜ランド周辺のデータを分析するんだ」
「了解しました!」
「新たな敵かもな」
「違う…。きっと仲間だ…。ボンゴレリングを持った……クロームかも………」
「てことは、クロームちゃんも、この時代に来ちゃったってこと!?」
「そういうことかも…」
信じがたいが、自分達がここにいる以上は、絶対にないとは言いきれなかった。
ジャンニーニはリボーンに言われた通り、データを分析していた。
「やはりデータ不足ですね…」
しかし、何分か続けてみたが、データが足りないため、分析することができなかった。
「レーダーに映った黒曜の反応が、本物かどうか計りかねます」
「どうしよう………。もしクロームなら、こんなことしてる場合じゃ……」
ツナがそう言った時、再びけたたましい音がレーダーから鳴り響き、画面には、縦横にコンマがズラリと並んでいた。
「!!」
「!?」
「今度は何だ?」
「緊急暗号通信です」
「コードにコンマが並んでるってことは」
「我々の隠語(スラング)で、コンマとは、切り落とした頭…。つまり、殺しの暗号。暗殺部隊のコードです!」
「(え……?暗殺部隊って…)」
「とりあえず、解読してみましょう」
そう言ってジャンニーニは、今しがた送られてきた暗号通信の解読を始めた。
「どうだ?」
ジャンニーニが解読を始めて数分経つと、リボーンは状況をジャンニーニに聞いてみた。
「画像データのようですね。あと少しで解読できます」
「でもよ…暗殺部隊っつったら…」
「あの人達しか思い当たらないけど…」
「私も…」
「しかし、世の中には、多くのそれが存在しますよ」
「おっ、いけそうですよ。やはり暗号コードはボンゴレのものです。デジタル署名も一致」
「つーことはやっぱ」
「ボンゴレ特殊暗殺部隊…」
「再生します」
ジャンニーニは、解読したデータを再生するため、パソコンのエンターキーを押した。
「ゔお゙ぉおい!!!」
エンターキーを押した瞬間、何かを破壊するような、割れるような怒号が、画面から響き渡った。
その声は、作戦室にはいない、別の階にいる、フゥ太、ランボ、イーピン、京子、ハル、ビアンキにすら聞こえ、全員を驚かせるくらいの破壊力をもっていた。
「首の皮はつながってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!!」
その声の主は、あのスクアーロだった。
「出やがった」
「あの人って確か、リング争奪戦で、武君と戦ってた…」
「じゅ…10年後の…」
「スクアーロ!!」
「ボリュームを下げろ!」
「はいっ」
スクアーロの姿を見て、喜んでいるのは山本だけで、あまりの声の大きさに、ラルは苛立っていた。
「いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!」
「! 黒曜ランドのことだな」
まるで、この場所にいるかのようなスクアーロの発言に、リボーンはすぐになんのことか理解した。
「じっとしてりゃ、わっかりやすい指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪」
リボーンが問うと、答えたのはスクアーロではなく、スクアーロがすわっているソファの後ろからひょっこり現れた、10年後のベルフェゴールだった。
「ナイフ野郎!」
「(指示…?)」
と言われても、ラルはなんのことかさっぱりだった。
そして一方で、ジャンニーニはあるものに気がついた。
「ゔお゙ぉい。てめーー、何しに来た!」
「王子ヒマだし。ちゃちゃいれ」
「口出すとぶっ殺すぞぉ!!」
「やってみ」
「ゔお゙ぉい…」
「しししっ。いてっ」
「(相変わらず荒くれ集団だ……)」
話の途中だったというのに、ベルの挑発で、魅真達そっちのけで、ケンカに発展してしまう。
「またこの世で会えるといいなぁ!!それまで生きてみろぉ!!」
ベルと戦いを始めたスクアーロは、それだけ言うと、電源を切ってしまった。
「あ」
「切れた!」
「こ…これだけ…?」
「どういうことなんだろう?」
結局、重要なことは何も言わなかったので、魅真達は、何がなんだかさっぱりだった。
「あいつら、変わってなかったな!」
「怖かった………。わかりやすい指示って何だろ………」
「どーやら、あの方のことのようですよ。イタリア帰りの」
「「「!」」」
ジャンニーニがそう言うと、魅真達の後ろの扉から、この作戦室に入ってくる足音がした。
「笹川了平、推参!!!」
それは、この時代の了平だった。
そして、クロームを抱きかかえていた。
「笹川センパイ!」
「芝生…!」
「お兄さん!それに!クローム髑髏!」
了平の腕の中にいるクロームは、何か動物を抱えており、ケガを負い、服はボロボロで、気を失っていた。
クロームのケガの手当てをするために、ビアンキが呼ばれ、了平はクロームを第一医療室へ連れていくと、ビアンキにクロームをまかせ、作戦室へ戻り、魅真達に黒曜ランドのことを話した。
「そ…そーだったんですか…。やっぱり、黒曜ランドの反応は、クロームだったんだ…」
話を聞くと、思った通りだったので、ツナは納得していた。
「お兄ちゃん!!」
そこへ、了平が帰還した話を聞いた京子が、ハルとともに、おわてて作戦室に入って来た。
「おお、京子。10年前は、こんなに小さかったか」
「よかった、無事で!!」
「な……泣くな…。見ての通り、オレはピンピンしている!!なっ」
「うん…」
了平の無事な姿を見ると、京子はほっとして、了平に抱きついた。
「(二人を見てると、10年前と一緒だな…。お兄さんも、昔のままみたいだ……)」
まったく変わらない光景に、ツナはほっとしていた。
「つか、なんでお前がここに来るって、ヴァリアーが知ってたんだよ!」
「もちろん、オレもそこにいたからだ!そして伝言を持ち帰った!」
「(お兄さんがヴァリアーに!?)」
「ベルフェゴールの言ってた指示のことだな」
「伝言て?」
「一体何スか?」
「それが、極限に忘れた!!!」
「(んなーーっ。むしろこの人、全然成長してねー!!)」
10年前と何一つ変わってないので、ツナはショックをうける。
「だが、心配はいらん!ちゃんと、メモしてある!」
「お」
「10年で1つ覚えたな」
けど、忘れた時のための対策はしてあったようだ。
「ふむふむ!そーかそーか!」
さっそくそのメモを読んでみるが、読んでいる途中でハッとなり、顔が青くなった。
「イタリアには、出張相撲大会があって行ったのだった!楽しかったぞ。京子!!ハル!!」
「え?」
「(ごまかし方、相変わらずメチャクチャー!!)」
誤魔化したのは、京子とハルがいたからなのだが、忘れた時の対策をするという成長はあっても、やはり了平は了平で、相変わらずものすごい誤魔化し方をしていた。
「沢田さん、ムクロウですが、やはり匣兵器のようです。本当に、これ以上の調査はいいのですか?」
そこへ、ムクロウのことを調べていた草壁が、こっそりツナに話しかけてきた。
「うん。だって、それもクロームの持ち物だもん。勝手にいじられたら嫌だと思うし…」
「………そうですか…。 (この男は、あくまで骸とクロームを、仲間(ファミリー)として扱うのだな…) 現在彼女は、ビアンキさんが手当てを」
ツナは草壁と話すと、京子とハルにお昼ご飯を作ってくれるように促し、二人をこの部屋から遠ざけた。
「京子ちゃん達、ご飯作りに行ってくれましたよ」
「では話そう…」
京子とハルがいなくなったので、場所を応接室に移し、ビアンキが戻ってくると、了平は本題に入った。
「オレはある案件について、ボンゴレ10代目の使者として、ヴァリアーに出向いていてな」
「オレの!?」
「その最中、ボンゴレ狩りが始まったんだ。10年前から来たお前達のことは、ある情報筋よりヴァリアーに伝えられ、オレもそこで知った。このことを知るのは、残存しているボンゴレと同盟ファミリーのトップのみ……。信じぬ者も多いがな」
「同盟ファミリーって、ディーノさんのキャバッローネも!?」
「ああ、あそこも健在だ」
「よかった」
「そして、お前達がいると仮定し、ファミリー首脳により、大規模作戦が計画された」
「作戦…ですか?」
「ここにいる10代目ファミリー(オレ達)への指示は、5日後に、ミルフィオーレ日本支部の主要施設を破壊することだ」
「(それって…殴り込み…)」
「…急だな」
了平の口から聞かされた言葉に、そこにいる全員が、真剣な顔つきになる。
「5日後に……殴り込みに行くんですか?」
「そうだ。それが、ボンゴレと同盟の首脳が立てた作戦だ。我々も、足並を揃えて、この作戦に参加する必要がある」
「5日後って、すぐだ…」
「だが、この機を逃すと、次にいつ、ミルフィオーレに対し、有効な手立てを打てるかわからんのだ」
「オレ達のアジトだって、敵にいつ見つかるかわからんのだ。早くて悪いことはない」
「でも…なんか…こんな、マフィアの戦争みたいなのに参加するって…。オレ達の目的と違うっていうか…」
「目的は、入江正一を倒すことだろ?合致している!」
「! …でも…」
確かにその通りではあるが、ツナはあまり乗り気ではなかった。
「了平がクロームを連れてきたことで、オレが出した、最初の条件もクリアしたしな」
「条件?」
「守護者集めっスよ、10代目!」
「あっ、そういえば!!」
獄寺がいい顔で笑いながら言うと、ツナはリボーンに言われたことを思い出した。
「なにげに、全員そろってる────!!!」
「意外と早かったね」
「だな。よほど、みんなの日頃の行いがいいんだな」
「バカか!!ノーテンキな言い方すんな!」
獄寺は、山本の意見に噛みついた。
「ボンゴレの守護者としての宿命が、オレ達8名を引き合わせたんスよ」
「(この人照れずに言ったーーーーーー!!)」
けど、ツナに対しては、すごくいい顔で、すごくはずかしいことを、照れもせずに言ったのだった。
「まあ、他にも話すことはいくつかあるが、それは後だ。いいか沢田。たしかにこの作戦は、ボンゴレの存亡をかけた重要な戦いだ。だが、決行するかどうかは、お前が決めろ」
「なぁ!?オレがーーー!?」
この指示は本決まりではなく、すべてはツナの心しだいで、決断をゆだねられたツナは焦りを見せるが、了平は真剣な顔のままだった。
「現在ボンゴレの上層部は混乱しているし、10年前のお前達を、信用しきったわけではない。ヴァリアーもあくまで、ボンゴレ9代目の部隊という姿勢だ。おまえの一存で、作戦全てが、中止になるようなことはないだろう。だが、このアジトのことは、ここの主である、ボンゴレ10代目が決めるべきだと、極限にオレが言っておいた!!」
「(お…お兄さん…)」
「でかくなったな、了平」
了平の成長に、リボーンはうれしそうにニッと笑う。
「期限は本日中だ」
決断の時間はあまりないので、ツナはビクッとなる。
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