標的64 ツナの試練
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トレーニングルームで爆音が響く中、ツナがいる下の方では、エレベーターが音をたてて開いた。
「うわっ…。やってる!」
「花火だもんね!!」
エレベーターから出てきたのは、フゥ太とランボだった。
「(将来のことを自分で考えなくなるからって、この時代の情報を教えすぎるのは、リボーンに禁止されてるけど) 実はね、ランボ。3年前まで、ランボの保育係は僕だったんだよ。
……って」
「すごい!」
「聞かないよな…」
フゥ太が話しているのに、ランボはまったく聞いておらず、笑いながら、ツナの方に目を向けていた。
「子供のおまえを、戦いに巻き込むことに、ツナ兄は大反対だけど、そうも言ってられないんだ。僕が自己満足で勝手に説明するから、「これは危ない」ぐらいは覚えようね。ランボだって、ボンゴレの一角を担う、雷の守護者なんだから」
とは言われても、ランボは何もわかっていなさそうだった。
標的64 ツナの試練
一方ツナは、雲雀の匣兵器の雲ハリネズミを止めるので精一杯だった。
「赤ん坊から聞いたとおりだ。僕の知るこの時代の君には程遠いね」
「くっ」
止めるので精一杯で、どうすることもできないならと、ツナはやり方を変えた。
炎がノッキングするように不規則な動きをしたあと、グローブから炎が消え、雲ハリネズミが凍ってしまった。
「死ぬ気の零地点突破。初代(ファースト)エディション!!!」
それは、リング争奪戦で習得した、死ぬ気の炎を凍らせる技。初代ボンゴレボスが使っていたという、死ぬ気の零地点突破初代エディションだった。
「雲ハリネズミが…凍った!?」
「!! すげっ」
「さすが10代目!!」
ツナのこの技を初めて見た魅真は、目を丸くして驚き、山本と獄寺は称賛していた。
「いいや、まだだ!!」
ラルが叫んだので、ツナは周りを見てみると、そこにはγと戦った時のような、トゲがついた紫色の雲がどんどんと増えていき、ツナを囲うように球体になっていった。
「(これは…!!)」
「紫色の雲……。増殖しているのか!?」
「くうっ」
このままでは閉じこめられてしまうので、ツナは死ぬ気の零地点突破初代エディションを使って凍らせた。
けど、それでも間に合わないくらいのスピードで、雲はどんどん増えていく。
「速い!!追いつかない!!」
雲ははいでる隙間もないくらいに増えていき、やがてその隙間がなくなると、完全な球体となり、ツナを中に閉じこめてしまった。
その様子を見ていた魅真、山本、獄寺は、言葉も出ないほどだった。
球体が完成すると、雲雀がつけていたリングが砕け散り、壁から針がぬけると、球体は下に落ちた。
「ツナ君!!」
「ツ…ツナ!!」
「10代目!!」
「何あれ…?」
「ボールになっちゃった!!」
今の出来事に、魅真達はツナが心配になってツナの名前を叫び、フゥ太はふしぎそうにしていた。
「球針態。絶対的遮断力を持った、雲の炎を混合した密閉球体。これを破壊することは、彼の腕力でも、炎でも不可能だ」
球針態の中に閉じこめられたツナは、炎で球針態を壊そうとするが、傷一つつけることができなかった。
「密閉され、内部の酸素量は限られている。早く脱出しないと、死ぬよ」
閉じこめられても、外の声は聞こえるので、雲雀の声が聞こえたツナは焦りを見せた。
「そんなっ!!」
「ふざけんな!!てめーら、10日ぶりに現れたと思えば、10代目を殺す気か!!出しやがれ!!」
この事態に、魅真は顔色が悪くなり、獄寺は激怒した。
「弱者が土に返るのは当然のことさ。第一、沢田綱吉を殺す理由があっても、生かしておく理由が、僕にはない」
「え…」
「!」
「(ヒバリ…。やっぱ、こいつは味方じゃねぇ!!)」
「んじゃあ、オレ達も修業始めるか」
「!!」
「ま、待ってくださいリボーンさん!!このままじゃ10代目が!!」
「こんな状況で修業って言われても…」
「ヒバリはやるっつったらやるぜ…」
ツナが、生きるか死ぬかという状況の中で、のん気に修業を始めると言ったリボーンに、魅真達は声をあげる。
「わかってるぞ。だからこそヒバリなんだ。歴代ボスが超えてきたボンゴレの試練には、混じり気のない、本当の殺意が必要だからな」
「「「(ボンゴレの試練?)」」」
雲雀がいきなり攻撃してきて、ツナをこのような状況にした理由を話すと、雲雀は口角をあげて、笑みを浮かべていた。
「さぁ、私達も、入江正一を倒すために、レッスンを始めましょ」
「ちけっ!!」
いつの間にか獄寺のそばまできたビアンキは、獄寺の肩をつかんで自分の方に向かせる。
「ふげがご!!」
「しょうがない子ね」
「隼人君!!」
「ご…獄寺!!」
目の前にビアンキがいたので、獄寺はその場に倒れた。
「山本、オレは着替えてくる。地下10階にこいよ」
「ふげっ」
「な…。おい、小僧!!」
山本との修業を始めるために、リボーンはトレーニングルームから去っていく。
リボーンが行ってしまったので、ツナのことは気になるが、修業を始めるというので、山本は言われた通りに地下10階へ行った。
リボーンも山本もいなくなると、ビアンキも獄寺を連れて、トレーニングルームからいなくなった。
「魅真、沢田綱吉の試練が終わったら修業をはじめるから、そこで待ってて」
「わ、わかりました」
四人がいなくなると、球針態の前に立っている雲雀に声をかけられたので、魅真はドキドキしながら返事をした。
「ツナ君…」
返事をすると、球針態に目を向け、ツナのことを心配した。
それから何分か経ったが、事態は進展せずにいた。
トレーニングルームに残ってる、魅真、雲雀、草壁、ラルは、ツナが出てくるのを、ただだまって待っていた。
魅真、草壁、ラルは立っているだけだったが、雲雀はヒバードを手にのせて遊んでいた。
けど、いつまでも進展しないので、眠くなってきたのか、あくびをしていた。
「(そろそろ酸素が切れる…)」
雲ハリネズミの持ち主ではないが、長年雲雀とともにいたので、いつ球針態の中の酸素が切れるのかわかっている草壁は、眉間にしわをよせた。
一方、その球針態の中では、苦しそうに息をするツナが、最大の炎を1点に集中させて、球針態を溶かそうとしたが、それでもビクともしなかった。
わずかに溶かされているものの、それでも隙間すらできていなかった。
ツナは、この球針態の弱点は、より純度の高い炎だとわかったが、弱点がわかっても、球針態を破るほどの、巨大な高純度の炎を生み出す方法まではわからなかった。
その上、かなり苦しくなってきたので、とうとうその場に倒れてしまった。
その時、急にリングが光り、リングに刻まれている、ボンゴレの紋章の光は、ツナの額に映った。
すると突然、過去に起こった、ボンゴレの血塗られた記憶が、ツナの頭の中に直接流れこんできた。
銃殺、放火、爆発、あらゆる手段をもって、敵を殲滅する。
あまりにもむごい、目をそらしたくなるこの光景に、ツナは息が荒くなり、涙を流す。
一体何なのかと思っていると、突然後ろに、顔に大空の炎で形づくられたマスクをしている、スーツを着た人物が数人立っており、これはボンゴレの血塗られた歴史だと言った。
そして、この業を引き継ぐ覚悟があるのかと問われた。
その後も、助けを求める声、断末魔の叫び声、恨み、憎しみ、悲しみ、様々な映像が頭の中に流れこみ、ツナは更に涙を流した。
「やめろぉぉ!!!」
目の前で起こっているわけではない、過去の映像に、ツナは大声で叫んだ。
「ツナ君っ!!!」
「(沢田…!)」
突如、球針態の中から聞こえてきたツナの叫び声に、魅真とラルは顔をゆがめて、心配そうにしていたが、唯一、雲雀だけは笑みを浮かべていた。
「酸素量は限界です。精神的にも肉体的にも、危険な状態だ…」
「これでは、無駄死に以外の何物でもない!ただちに修業を中止すべきだ!!」
「君だろ?手にリングをつけて戦うよう、沢田綱吉に指示したのは」
「!」
「それは正しい。そして、君の求める沢田綱吉になれるかどうか、彼は極限状態の中、器を試されているんだ。最も、この若さでこの試練を受けた、歴代ボンゴレはいないそうだが」
「!」
雲雀がラルから顔をそらすと、その先には、地下10階に行ったはずのリボーンがいた。
「(リボーン!!)」
リボーンは猿のスーツからいつもの黒いスーツに着替えており、とても真剣な目で、球針態を見ていた。
「(こんなことをして何になる!おまえ達は、沢田の人格を変えてしまうつもりなのか?)」
「リボーン君!!お願い、やめさせて!!」
その時、リボーンをみつけた魅真が、リボーンに向かって叫んだので、そこにいる全員が、魅真の方へ顔を向けた。
「試練だかなんだか知らないけど、このままだと、ツナ君が壊れちゃう!!いくら、強くならなきゃいけないっていっても、ツナ君が壊れたら、修業どころじゃなくなっちゃう!!私、ツナ君がツナ君でなくなるのは嫌だよ!!」
ラルと似たようなことを叫ぶが、それでもリボーンは、わかったとは言わなかった。
「…魅真」
いつもとは違う調子で、少し低めの真剣な声で名前を呼ばれたので、魅真はドキッとなる。
「ツナを信じて待ってろ」
リボーンの口から出たのは、たった一言だけ。
魅真はそれ以上は何も言わず、球針態の方へ顔を向けた。
同じ頃、球針態の中では、ツナが頭をおさえ、涙を流しながら、やめろと叫び続けていた。
ツナの前に現れた人物の一人が、目をそらすなと…これは、ボンゴレを継ぐ者の宿命だと…ツナが生を授かったことの意味そのものだと言うと、ツナは、こんなひどいことはできないと拒む。
すると、また別の一人が、代価を払わずに力を手に入れることは叶わないと言い、また別の一人が、偉大な力が欲しければ、偉大な歴史を継承する覚悟が必要と言う。
「いやだ…。みんなを守るためなら、何だってできるって思ってた……。でも……こんな…こんな力なら、オレはいらない!!」
けど、ツナはまた相手が言ったことを拒んだ。
そのことに、相手はとても驚いた。
「こんな間違いを引き継がせるなら……オレが…」
ツナは大きな決意をするように、強く右手をにぎる。
「オレがボンゴレを、ぶっ壊してやる!!!」
それは、ツナの覚悟の叫びだった。
その叫びは球針態の外まで聞こえており、ツナの本心を知ると、リボーンはうれしそうに笑っていた。
思いっきり叫んだツナは、限界がきたのか、その場に倒れそうになるが、目の前にいる人物に支えられた。
それは9代目だった。
驚いて周りを見ると、今までいた場所と、空間が変わっていた。
目の前の床にはボンゴレの紋章があり、紋章の両隣に7人の男性と1人の女性。奥の椅子に、男性が1人すわっていた。
彼らは歴代のボンゴレボス。そして、奥の椅子にすわっていたのは、初代ボンゴレだった。
顔がツナにそっくりな初代ボンゴレは、ボンゴレの証をここに継承すると言い、ツナに力を授けた。
その瞬間、球針態の中から強い光が発せられると、球針態にヒビが入った。
「なんだ!?何が起きている!?」
「何、この光…」
「恭さん、これは!?」
「球針態が………壊れる」
雲雀がそう言った瞬間、中から爆発が起こり、全員が目を見張る。
そこから出てきたのは、新しいグローブを手につけたツナだった。
「わっ」
「ふぅん」
「あれは!!」
「ツナ君…」
「越えたな」
魅真達は、いつもと雰囲気が違うツナに目を見張った。
「(これだ……。これを待っていたんだ。この時代の沢田は、指に装着したリングを手の甲に宿し、力を引き出したという…) まさか、試練の末の形態だとはな…」
「オレも半分自信なかったけどな」
「!」
「飛躍的なパワーアップと言われて、この伝説の試練しか思いつかなかったのが、正直なところだ。あんな答えで試練を乗り越えたのは、歴代ボンゴレで、ツナだけだろうがな」
リボーンの目の前にいるツナは、新しくなったグローブをみつめると、グローブに炎を灯してみた。
「!!」
それは、試練を受ける前とはまったく違う、澄んだオレンジの炎だった。
「ワオ」
「いつもと…違う…」
澄んだ色の炎。それは、混じり気の少ない、純度の高い炎だった。
今までとは、明らかに違う炎を見て、雲雀はうれしそうに笑う。
「ランボ、見て」
「んん…」
「ツナ兄のキレイな炎!!」
遠くで見ていたフゥ太は、興奮気味にランボに声をかける。
「混じり気の少ない、純度の高い炎は、ああいう澄んだ色になるんだ。大空ならオレンジ、晴はイエロー、雨はブルー、雷はグリーン、嵐はレッド、雲はバイオレット、霧はインディゴにね。そして純粋な炎ほど、属性の持つ特徴を、より強く引き出すと言われる」
そして、声をかけると、フゥ太は炎の色や特性を説明した。
「(不思議な炎だ。頼りなさげだけど、底からあふれてくるような…)」
そのツナは、グローブから出ている、いつもとは違う感じの炎を、ジッとみつめていた。
「少しだけ、僕の知ってる君に似てきたかな」
「!」
前までと違う炎をみつめていると、雲雀が声をかけたので、顔をあげる。
「赤ん坊と同じで、僕を、ワクワクさせる君にね」
そう言って雲雀は、持っていた匣を取り出す。
「ここから先は、好きにしていいんだろ?赤ん坊」
「ああ……。そういう約束だからな…」
「じゃあ」
リボーンから許可が出ると、雲雀はリングに炎を灯し、匣を開匣した。
匣の中からは、雲雀の武器のトンファーが出てきた。
「始めようか」
雲雀はトンファーを手にとると、トンファーに炎を灯して構え、やる気満々な鋭い目で、ツナを見据える。
「ぐっ」
「きゃっ」
「ひっ」
「なっ」
その瞬間に雲雀から放たれた殺気に、全員がひるんだ。
それは、非戦闘員であるフゥ太も例外ではなかった。
「(なんて炎!!……いや、殺気!!今まで抑えていたというのか…!!これが雲雀恭弥!!)」
歴戦の猛者であるラル・ミルチですら、雲雀の強い殺気に目を細めていた。
「この闘いにルールはない。君が選べるのは、僕に勝つか……死ぬかだけだ」
「勝つさ」
「来なよ」
「(奴は、沢田を本当に殺す気だ………)」
雲雀のその顔は、ツナを殺すことに、少しのためらいもないと物語っていた。
そのことをラルは読みとっており、魅真も顔を青くして、これから闘いを始めるツナと雲雀を見守っていた。
本気なのはツナも同じで、静かに構えると、炎を出した。
今までよりも一番強い炎が、ツナのグローブから放出されると、ツナは消えてしまった。
「消えた!?」
フゥ太の目にはツナが消えたように見えたが、実際には消えたのではなく、目に見えないほどの速さで高速移動をしていただけだった。
フゥ太の目には見えなかったが、雲雀の目には見えており、雲雀はツナがまっすぐに移動したあと、ツナがいる方に向かって走りだし、ツナの前まで来ると、ツナの頭を台にして、手で支え、跳んで宙返りをしながらとび越えた。
そのせいで、ツナは頭から壁にぶつかりそうになった。
「くっ」
けど、なんとか方向転換して、足を壁側に向けて、着地するように壁に足をつけたので、事なきを得た。
しかし、あまりに強い力だったので、壁はツナが足をつけたところを中心にヒビが入り、大きく破壊される。
「つぅっ」
そのせいでダメージを負ったが、止まったら雲雀にやられてしまうので、ツナは再びグローブに炎を灯し、雲雀に向かっていった。
「ぐっ」
しかし、自分の炎だというのに、ツナはどこか苦しそうで、リボーンの顔はあまり思わしくなかった。
「何て炎だ!!」
ツナは高速スピードで雲雀に向かっていくが、雲雀はツナが近づいてきてもまったく動じておらず、今度はよけるのではなく、自らツナに向かってまっすぐに走っていく。
そして、ツナの額に灯された死ぬ気の炎が、自分の額にかぶるくらいまで近づくと、ツナの腹に、強烈な一撃をお見舞いした。
「がはっ」
雲雀の攻撃を受けたツナは、口から血を吐いて宙を舞った。
「くっ」
それでも、現状をなんとかしようと、グローブから死ぬ気の炎を出そうとするが、とても弱い炎しか出なかった。
だが、雲雀はあっというまにツナの背後まで跳んで、距離をつめていた。
「体が流れてるよ」
「(炎が弱い!!殺られる!!) くっ」
雲雀が背後にやってきて、今にもやられそうなので、ツナは炎を出した。
すると、先程のは弱かったのに、逆にすごい強い炎が出た。
「なっ」
それにはツナも驚き、そのまま床に激突した。
「え!?」
「ツ…ツナ君!?」
「(じ……自爆!?)」
床に激突したせいで、ツナは起き上がってこなかった。
「あ……うぅ……」
というよりも、大きなダメージを負ったので、起き上がってこられないといった方が正しかった。
それでも雲雀は、着地をすると、ツナがいる方へ歩いていき、容赦なくツナとの距離をつめていく。
「何のマネだい?」
ダメージをくらっていようがなんだろうが、勝負はまだ続いているので、ツナは痛む体を起きあがらせる。
「(なぜだ!?大空の炎の純度が上がり、7属性随一と言われる推進力は、飛躍的にアップしてる。何をやっているんだ、沢田………)」
「どうやらVer.V.R.ってのは、随分ピーキーな特性らしいな」
「ピーキー?」
「ああ。ツナの顔を見る限り、あいつの思い通りの炎が出せてねえみてーだ」
「……たしかに沢田の動きはぎこちないが…。それは、炎のパワーに圧倒されているからではないのか?」
「だったら、自分のコントロールできるパワー内で戦えばいいだろ。今は、それすらできてねぇ。恐らくノーマルのXグローブが、ツナの意志の強さに比例して、なめらかに出力を上げていくのに対し、Ver.V.R.では、ある地点から、急にパワーが跳ね上がる特性なんだろう。だから扱いきれず、吹かしすぎたり、つんのめったりしちまう」
「………なるほどな」
「先代達が、ツナに授けた新兵器ってのは」
まだ扱いきれていないということは、それだけすごいパワーなので、リボーンはしゃべってる途中でニッと笑う。
「とんだじゃじゃ馬ってわけだな」
「何を嬉しそうに言っている!まだ、とても実戦で使える代物ではないということだぞ」
「ああ、距離感もタイミングもつかめねーだろーしな」
「(このグローブ…。思ったより気力の消耗が激しい…。しかも、炎をコントロールできずに、どうにかできる相手じゃない…)」
雲雀は強く、一部の隙もない…。それだけでなく、新しく授かったこの力を、思うようにコントロールすることができない。それでは、雲雀には到底敵わない。それがわかっているため、ツナはどうしようかと悩んでいた。
「ねぇ、君。僕が言ったこと、覚えてる?」
悩んでいると、雲雀がツナに話しかけてきた。
「………勝つしかないんだろ?」
この勝負は、生きるか死ぬかのどちらかしかないので、生き残るには勝たなきゃならない。ツナは雲雀をどうこうする気はないが、雲雀はツナを殺す気なので、勝負に勝たなければ、ツナに先はなかった。
雲雀に問われると、ツナは難しい顔をして、歯を噛みしめて、雲雀の問いに答えた。
ツナが答えると、雲雀は濃い笑みを浮かべる。
「(気にいらないやり方だが……生き残る方法はあれしかない…。イチかバチか…)」
炎をコントロールすることはできないが、ツナは一つだけ策を思いついたので、その策を実行するために、グローブから炎を出し、飛んで雲雀のもとへ直進していった。
「(超高速での一発勝負!!だが、雲雀ほどの男に容易につっ込めば…) ダメだっ。カウンターの餌食に!!!」
ラルが思った通り、ツナは雲雀にカウンター攻撃をくらってしまった。
「ぐあっ」
ツナは口から血を吐いて、後ろへふっとんでいき、床にたたきつけられた。
「ツナ君!!」
「ツナ兄!」
魅真とフゥ太は心配するが、雲雀は機嫌が悪くなった。
「君にはガッカリだな。弱い草食動物には興味ないよ」
それは、ずっと自分にやられっぱなしだった上に、勝つしかないんだろと言ったわりには、あっさりと攻撃をくらってしまったからだ。
「直接手をくだす気にもならないよ」
ツナに背を向けると、もうトンファーでの攻撃はやめて、匣で倒そうと思った雲雀は、上着のポケットにいれてある匣を取り出そうとした。
「匣で…。 !」
だが、ポケットに手をつっこむと、匣がないことに気がついた。
匣はツナが持っていた。
ツナは先程カウンターをくらった時に、雲雀のポケットから匣をとっていたのだった。
ツナが匣を使うため、リングに炎を灯す。
「あれって、ヒバリさんの匣!」
「ヒットした際に!!」
「頼む……」
ツナはこの前ラルに教えられた通り、リングに灯した炎を匣の穴に差しこみ、匣を開匣した。
すると中からは、雲の紫色の炎ではなく、大空のオレンジ色の炎をまとったハリネズミが出てきて、雲雀にまっすぐ向かっていった。
「速い!!」
ハリネズミは、すごいスピードで雲雀に向かっていく。
だが、ハリネズミのスピードは速いが、雲雀はツナの方に顔を向け、ハリネズミが向かってくるのを目にしても、冷静なまま立っていた。
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