標的62 集結する仲間達
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灯篭の中に消えた二人は、地下の通路にいた。
先程の灯篭の下には、長い階段があり、その階段を下りていった先にあった場所は、いくつもの部屋がある、長い長い地下通路に繋がっていた。
それが、今雲雀が歩いている場所だった。
そこは、和の作りになっていた。
和風の丸い窓が、等間隔で設置されており、反対側には部屋に続く障子、上部には、月と雲と鳥が彫られた欄間が、同じく等間隔で設置されていた。
そんな、和を重んじさせる場所を、雲雀は魅真をお姫様抱っこをして、ずっと何もしゃべらずに歩いていた。
魅真はずっと気まずかった。
確かに、ケンカしたとはいえ、それでも雲雀のことが好きで、心配はしていた。
けど、目の前にいるのは、自分の時代から10年後の雲雀で、この前のいざこざも当然知ってるだろうから、緊張し、戸惑っていた。
自分の時代の雲雀でないだけまだ接しやすいかもしれないが、それでもやはり話しかけにくかった。
「あの………雲雀さん…」
だけど、勇気をふりしぼって、雲雀に声をかけた。
雲雀は魅真に声をかけられると、足は止めず、顔を魅真の方へ向けた。
それだけで、魅真はドキッとする。
「ここって……一体どこなんですか?」
魅真に問われると、雲雀は魅真に向けた顔をもとの位置に戻し、再び前を向き
「僕のアジトだよ」
とだけ答えた。
それ以上は、特に何も話すことはなかったが、気まずさがある魅真は、雲雀が何もしゃべらないことにほっとしていた。
標的62 集結する仲間達
雲雀に連れていかれて、しばらくすると、通路の行き止まりに来た。
「あの…行き止まりなんですけど…」
どこか部屋に連れていかれるかと思ったら、通路の突き当たりだったので、魅真はふしぎに思った。
けど、雲雀は魅真の質問に答えず、魅真を下におろすと、扉の隣の壁にあるボタンを押した。
すると、扉は大きな音が響いた後、自動で開いた。
そして、開いた扉の向こうには、見慣れた景色が広がっていた。
「え……ここって……」
「僕のアジトと、ボンゴレのアジトはつながっている」
驚いている魅真に簡潔に説明をすると、雲雀は踵を返して、もと来た道を戻っていく。
「あの……」
「あとはわかるだろ?もうちょっとすれば、沢田綱吉達も来るよ」
「あの……雲雀さん…。ありがとうございました」
どこかそっけない態度だし、気まずいが、助けてもらったし、ここまで連れてきてもらったので、魅真は雲雀にお礼を言った。
魅真にお礼を言われると、雲雀は顔だけ後ろに向けて
「ケガ……治しておきなよ」
それだけ言うと、顔をもとの位置に戻し、今度こそ、もと来た道を戻っていった。
雲雀はここに来る途中にあった、ここから一番近い曲がり角まで行くと、そこを曲がり、魅真は雲雀の姿が見えなくなるまで見ていた。
そして、雲雀の姿が完全に見えなくなると、魅真はボンゴレのアジトに入っていき、痛む体をなんとか動かして、今朝入った部屋へと向かった。
今朝入った部屋は、同じ階にあったので、すぐについた。
と言っても、ケガをしているので、並盛神社に向かう前とくらべると、少し時間がかかった。
「リボーン君!!ジャンニーニさん!!」
「魅真!!」
「魅真さん!!」
部屋に来た時の足音と、自分達を呼ぶ声で、魅真の存在に気づいた二人は、モニターに向けていた顔を扉の方へ向けた。
そこには、扉に手をついて、傷だらけで、荒い呼吸をくり返している魅真が立っていた。
「だ、大丈夫ですか!?魅真さん。ひどいケガをしてますよ」
魅真のケガは、見るからにひどいものだとわかるもので、リボーンとジャンニーニはあわてて駆け寄った。
「大丈夫です……」
「本当か?」
「うん。私は軽傷だから……」
攻撃されている時間は長く感じられたが、実際はほんの短い時間だったので、魅真は獄寺と山本にくらべると、軽傷ですんだ。
そう言った魅真はどこか元気がなかったが、ここまで来たということは動けるということなので、軽傷なのは本当で、そこまで心配はいらないだろうと、リボーンは判断した。
「それより、獄寺と山本はどうしたんだ?」
「隼人君と武君は……もうすぐ来るみたい」
「みたい?どういうことなんだ?」
「実は、並盛神社に行ったら、ラルさんが言っていた、あのγって奴と会って、隼人君と武君と一緒に交戦したの」
「えぇっ!?」
魅真の話を聞くと、質問をしたリボーンではなく、ジャンニーニの方が驚いていた。
「それで、やられそうになった時に雲雀さんが現れて、助けてくれて……。その後に、ツナ君とラルさんも来て…。それで、並盛神社に、雲雀さんのアジトに繋がる出入口があって、雲雀さんのアジトが、ボンゴレのアジトがつながっていて…。そこから来たの。私だけ、先に雲雀さんと一緒に来て、ツナ君達は、あとから来るみたいで……」
「そっか。その出入口まで案内しろ、魅真」
「わかった」
案内しろと言いながら、リボーンは魅真の方に跳んだ。
リボーンが自分の方へ跳んでくると、魅真はいつものようにリボーンを受け止めてだっこをすると、踵を返して、先程の出入り口へと向かった。
出入口は今いる場所と同じ階にあるので、少し歩いただけで、すぐについた。
「ツナ達はまだ来てないんだな」
「結構長い通路だったからね」
「気長に待つしかねーな」
「そうだね」
通路が長いだけでなく、気絶している山本と獄寺も連れてこなくてはならないので、そう早くは来ないだろうと判断し、二人はそこで、ツナ達が来るまで待つことにした。
同じ頃、ミルフィオーレファミリーのアジトでは…。
「精製度Aのリング1つが、神社から3キロの地点で消滅しました!!」
モニターを見ているホワイトスペルの男が、正一に現状の報告をしていた。
「2つ目のリングは、赤河町に移動してます!」
「あっ!……こちらも消滅!!」
「なんだって!?まだうちの部隊は到着しないのか!!」
次々とあがる報告に、正一は焦っていた。
「やはり、第3部隊の凍結をといて、協力させた方が…」
「ダメだ!!彼らは、上司の命令に背いたんだぞ!早く撤退させろ!!これは命令だ!」
チェルベッロの進言を、正一は拒否する。
《不機嫌そうだね》
「!」
その時、正一の上の方にあるモニターの電源がつくと同時に、白蘭の声が聞こえてきた。
《久しぶり、正チャン》
「……………とうとう…始まりました」
白蘭がモニターに映ると、正一はどこか不機嫌そうな顔をした。
《うん。でも、あんまり幸先よくないみたいだね》
「ブラックスペルが、彼らと交戦したらしいです。彼らに協力者のいる可能性も……」
《それって、計画と違うじゃん。言ったはずだよ。彼らがやって来たら、迅速に……》
「やってますよ!!僕はやってるんだ!!」
白蘭に注意されると、正一は白蘭が言うことを遮って、語気を荒くして反論した。
《出たよ。正チャンの逆ギレ》
「………」
《もめるだろーけど、バレたんなら、ブラックスペル側にも、話す用意しとかなきゃね》
「!! どう説明するんですか?」
《どうって?簡単だよ。正直に話せばいい。予定通りに、過去からの贈り物が届いたってね》
「だけど……」
《時計はもう止まらないよ。君は君の仕事を急ぎなよ、正チャン。
僕は次の7³ポリシーを、紡ぎだすまでさ》
その頃、雲雀のアジトでは……。
「やはり、私が2人背負いましょうか?」
魅真が通った通路を、ツナが獄寺を、草壁が山本を背負って歩いていた。
「だ……大丈夫です。それよりここって…」
「我々の日本における、研究施設の一つです」
「研究?」
魅真と同じように、ツナは草壁に、この場所がどういうところなのかを尋ねてみるが、答えが返ってきても、よくわからなかった。
「色々と兼ねてますがね。ほら、あそこ」
「!」
「ちゃおっス」
「よかった。やっと来た、ツナ君」
「リボーン!!魅真ちゃん!!」
草壁に言われて目を向けた先には、ボンゴレのアジトにいるはずのリボーンと、先に雲雀のアジトに行った魅真がいたので、ツナは驚いた。
「どうしてリボーンがここに?それに魅真ちゃん、そこにいたんだ」
「我々の施設と、あなたのアジトはつながっているのです。もっとも、不可侵規定により、今まで一度もここが開いたことはありませんが」
「群れるのを嫌うあいつらしいシステムだな」
ケガ人を背負ってるので、説明もそこそこに、草壁は山本を第一医療室に、ツナは獄寺を第二医療室に運んだ。
ツナは獄寺を第二医務室まで運ぶと、山本の様子を見に行った。
第一医療室では、山本を運んだ草壁がそのまま山本の手当てをしており、手当てを終えると、草壁は雲雀のアジトへ戻っていった。
一方、獄寺の手当てはリボーンと魅真が行い、獄寺の手当てが終わると、今度は魅真の手当てをリボーンが行った。そして、二人の手当てが終わると、三人は交代で山本の様子を見に行った。
魅真とリボーンは、5分ほど山本のところにいたが、ツナは二人よりも長いことそこにおり、獄寺のいる第二医務室にやって来たのは、それからもうちょっとあとだった。
「獄寺君はどう?」
「まだ……起きねーぞ」
「ごめん、ツナ君…。リボーン君…」
「え…。なんで魅真ちゃんが謝るの?」
今回のことは、特に誰が悪いというわけでもないのに、突然魅真が謝ってきたので、リボーンもツナも疑問に思った。
「こうなったのは、私のせいなの!!私が弱いから!!」
「お…落ちついてよ、魅真ちゃん」
「一人でγを倒そうとした隼人君に、偉そうに説教をしたくせに、弱すぎて、役に立たなかった。隼人君を助けるつもりが、結局敵にやられて、助けられて、足手まといになって……。私のケガが軽いのは、二人が私を助けてくれたからなの。私がもっと強ければ……こんなことには…!!」
興奮して、今にも泣きそうな魅真を見て、ツナはなんともいえない気持ちになった。
「だがまあ、つくづくよかったな」
「え?」
「なっ。何が、どこがよかったんだよ!!」
けど、リボーンは魅真やツナからしてみると、意味がわからないことを言ってきた。
ツナはつっこみ、魅真も何がよかったのか疑問に思っていた。
「よかったじゃねーか。ミルフィオーレを相手に、オレ達が生き残るため残された道は、成長しかねーんだ」
リボーンは笑っているが、それでも納得がいってないのか、ツナは眉間にしわをよせ、魅真もあまりいい顔をしていなかった。
「それに、ピンチの次には、いいこともあるはずだ」
「おまえな!!みんなケガしたんだぞ!!」
「10代目……」
「!!」
ツナがリボーンに反論をすると、隣のベッドから、獄寺の弱々しい声が聞こえてきたので、三人はベッドの方に顔を向けた。
「すいません………」
ベッドの上では、獄寺が意識をとり戻し、目覚めたばかりだからか、左目だけを薄く開いていた。
「獄寺君!」
「よかった。気がついたんだ」
「すいません、10代目…。全て、オレの責任です…」
「!」
「え…?」
「………………」
「オレ……本当は…こっちの世界に来て…びびってたみたいっス…。テンパって、魅真と山本に当たって、あんなことに…」
「獄寺君…」
「そんなっ…。それは、私も同じだよ。私だって、生きたいって思い始めたら、急に怖くなって…それで……。本当にごめん、隼人君」
「いいって」
魅真が謝ると、獄寺は軽く笑った。
「山本も、そう言ってたぞ。いっぱいいっぱいで、獄寺に言わなくていーことまで言っちまったってな」
「な!!じゃあ山本は!!」
「生きてるよ!結構元気に!!」
「………」
ツナの口から、山本の無事を聞くと、獄寺はほっとした表情を見せ、そんな獄寺に、魅真とツナは口元に笑顔を浮かべる。
「ちぇ。まだ生きてやがったか…」
「(いつもと同じだーー!!)」
「(隼人君て、素直なんだか素直じゃないんだか…)」
けど、数秒後には、またいつもの獄寺になったので、魅真は笑顔を浮かべたままだったが、ツナはショックを受けた。
「(……オレ、自分のことばっかりで、全然気づかなかった…。みんなも、こんなに余裕なかったなんて…)」
いくら見知った土地とはいえ、いきなり知らない時代にとばされ、命を狙われたので、全員余裕がないのはあたり前なのに、ツナは自分のことばかり考えていたので、眉間にしわをよせ、どこか悔しそうだった。
「そりゃーそーだぞ。京子も獄寺も山本も魅真も、まだまだ乳くさいガキンチョだからな」
「え…」
「!! なぁ!?」
「おまえらは経験不足で、不安定で、すぐに血迷って、イタイ間違いをおかしやがる」
「そ……そこまで言うか!?」
そこへ、ツナの心を読んだリボーンが、遠慮なくズバズバと魅真達の欠点を言ってきた。
容赦ない、歯に衣着せぬ言い方ではあるが、間違いではないので、魅真は何も返せなかった。
「だが、今は死ななきゃそれでいいんだ」
「「……え?」」
「イタイ間違いにぶつかるたびに、ぐんぐん伸びるのが、おまえ達の最大の武器だからな」
「リボーン…」
欠点を言われると、今度は長所を言われ、ほめられたので、三人とも頬を赤くした。
「つーか、赤ん坊のおまえに言われたくないよ!!」
年齢は自分よりも幼いのに、まるで、酸いも甘いも経験した大人の意見を言ってきたので、ツナはつっこむが、リボーンはニッと笑う。
「いいかな」
「!?」
四人で話していると、突然扉の方から声が聞こえてきた。
「話」
「ひいっ。ヒバリさん!!」
そこにいたのは雲雀だった。
「(雲雀さん……)」
いきなり医療室に現れた雲雀に、魅真は頬を赤くするが、すぐに気まずそうにして、顔をそらした。
そんな魅真を、雲雀だけでなく獄寺もじっとみつめるが、魅真は二人の視線に気づいていなかった。
「会いたかったぞ、ヒバリ」
「僕もだ、赤ん坊」
けど、リボーンがあいさつをすると、雲雀はリボーンの方へ顔を向けて返事を返した。
「あのー」
「!」
リボーンと雲雀があいさつをすると、ジャンニーニが現れ、扉の外から、中の様子をうかがうように立っていた。
「ちょっとよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「グッドニュースですよ!情報収集に出ていたビアンキさんとフゥ太さんが、帰ってきましたよ」
「! フゥ太!?」
「アネキが!?」
思わぬ情報に、ツナと魅真は目を輝かせ、獄寺も驚いて声をあげた。
ジャンニーニの情報と、魅真達の反応に、リボーンは口角をあげて、ニッと笑う。
「言っただろ?ピンチの次には、いいことがあるってな」
リボーンがそう言った数秒後…。
「リボーン!!」
この時代のビアンキとフゥ太が、ツナ達がいる第二医療室にやってきた。
特にビアンキは、大きな声でリボーンの名前を呼びながら走って入ってきた。
「!!」
「あぁッ」
そして、感極まって、目に涙を浮かべながら、一直線にリボーンのもとへ駆けていく。
「もう放さない!!愛しい人!!!」
リボーンの前まで来ると、ビアンキはその勢いで、リボーンを抱きしめた。それはもう、リボーンの頭の上にのっているレオンが、とんでしまうほどの勢いだった。
「(10年後のビアンキ、見た目変わんないけど、なんか激しくなってる?)」
自分の時代のビアンキも、リボーンを抱きしめているが、それでもここまでの激しさはなかったので、ツナはどこか引き気味だった。
「ムリないよ、ツナ兄。この時代では、リボーンもツナ兄も死んじゃったんだ」
「もっ、もしかしてフゥ太ぁ!?」
そこへ、この時代のフゥ太が、ツナの心を読んだように答えた。
しかも、自分よりも小さかったあのフゥ太が、すごい成長しているので、ツナは驚いた。
「へへっ、やった!!ツナ兄より高い!」
目の前にいるのは10年前のツナで、今の自分よりも年下だが、それでもやはり男の子なので、ツナよりも背が高いことに、フゥ太は喜んでいた。
「おまえ伸びすぎっ」
「ふげ!!」
「あ!ビアンキを見て獄寺君が!!」
「大丈夫!?隼人君!!」
目の前に、顔をかくしてないビアンキが現れたので、獄寺は毎度のごとく、顔面蒼白になり、ベッドから落ちてしまった。
「期待できそうだぞ、ツナ。こいつらも、新しい情報を持ち帰ったらしい」
「! (そうか!!みんなの情報を集めれば、過去に戻る新しい手がかりが見つかるかも!!)」
リボーンの言葉に、ツナは突然明るくなった。
「ヒバリさんも、何か知ってそうだし」
話があってここに来たようなので、もしかしたらいい情報を持っているのかもと、ツナは期待をしながら、後ろにいる雲雀の方へとふり向いた。
「これ以上群れれば、咬み殺すよ」
「ひいいっ!!」
けど、雲雀は目が据わっており、どこか怖い顔でトンファーを構えていた。
そして……。
「では、雲雀の代わりは私が務めます」
「…………」
第二医療室にいた者は、獄寺以外応接室に移動をした。
応接室に来たのは、魅真達とラルと、それともう一人…第二医療室に来た雲雀ではなく、草壁だった。
「(結局咬み殺されたし…。帰るし……。やっぱり、ヒバリさんはヒバリさんだった…。でも…まあ…草壁さんから情報を聞ければいいか…)」
草壁が来たのは、群れていたツナを咬み殺したからで、あわれにも、ツナの左目には青タンができており、鼻血が出たので、左側の鼻の穴にはティッシュがつめこまれていた。
「まずヒバードですが、黒川花からの要請で、我々が飛ばしました」
「え?く……黒川花!?」
ヒバードを見つけた裏には、自分のクラスメイトがかかわっていたので、ツナは意外そうにした。
「そうです。笹川京子に対する、黒川の救援要請です。これは、我々とボンゴレの取り決めでして、ある経路からのSOSがあった場合、その現場に、ヒバードを飛ばすことになっているのです」
「何でそんな変わった方法で……?」
「予備の救援伝達システムだな」
「その通り。通信が困難な場合などに使われる、10通り以上ある、予備のSOSの手段の1つです」
「しかし、なぜSOS信号が、神社で消滅したのでしょう?」
「恥ずかしながら、バッテリーの、接触不良です」
草壁は話しながら、あの時ヒバードの足にとりつけられていたものを、目の前のテーブルに置いた。
「やはり故障でしたか…」
「で、おまえらの組織は何なんだ?」
「はい。ひらたく言えば、並盛中学風紀委員を母体とした、秘密地下財団です」
「まだ風紀委員関係してんのー!!?」
自分達がいた時代から10年後のこの世界では、自分達はもう学生ではなく大人で、雲雀もどう見ても成人しているのに、未だに並中の風紀委員が関係しているというので、ツナはショックを受けた。
「ツナ兄に聞いたことがあるよ。その財団でヒバリさんは、匣の研究や調査をして、世界を飛び回ってるって」
「匣の…?」
ツナが聞き返すと、草壁は、その口もとに、わずかに笑みを浮かべる。
「ここから先は、直接雲雀に聞いてください。雲雀はしばらく、ここに滞在するつもりですので」
「本当ですか!?それは心強いです!」
「私からは、こんなところです」
「大変だったわね、ツナ」
「え……」
草壁の話が終わると、今度はビアンキがツナに声をかけてきた。
「リボーンに聞いたよ。おとといツナ兄が、10年バズーカで10年後の未来に来てみたら、そこは恐ろしい世界に変わっていた…。しかも、過去には帰れない。そんな現状を打破しようと、昨日はこの時代の守護者を集めに出たけど、途中で出会ったみんなも、10年前と入れ替わってしまって…。それでも、やっと過去に帰るための方法を見つけて、修業をはじめたら、今度は京子姉がアジトを飛び出してしまい、それがもとで、隼人兄達が敵の隊長と交戦…」
「……未来に来て、2日しかたってないんだ…。随分昔のことみたいだ…」
「だが、こうして、心強い仲間と合流できたんだ。これで、過去に帰るために、本腰をいれられるぞ」
「その通り!僕らも、ツナ兄達が過去に帰れるように協力するよ」
「今の所、あなた達と我々の目的には、いくつか共通点がある。我々も、力をお貸しできると思いますよ」
「ほ…本当?」
フゥ太と草壁の心強い言葉に、ツナは顔が明るくなった。
「過去に戻るためには、ミルフィオーレの入江正一を倒せばいいのよね」
「あ…うん」
「ミルフィオーレは私の敵でもある。倒すのには、何の躊躇もないわ。それに、あなた達が10年前に戻って、過去が変われば、私の愛する人や、たくさんの仲間を失う、こんな未来にはならないかもしれない…」
「(ビアンキ…)」
「(ビアンキさん…)」
ビアンキが、先程第二医療室で再会してから、ずっとリボーンを抱きしめたままだったのは、もちろんリボーンが好きだからというのもあるが、この時代では、リボーンはすでに死んでしまっていたからだと思うと、魅真はちょっと切なくなった。
そんなビアンキの言葉に、ラルは強い反応を示し、失ってはいないが、愛する者がいる魅真やツナは、しんみりとした。
「今日まで、私達のしてきたことも、役に立つはずよ」
「そう。僕らは日本にいるミルフィオーレの情報集めをしていたんだ。ミルフィオーレは、全部で17部隊あるんだけど、その中でも、Aランク以上の隊長は6名だけ。そして、その中の2人が、日本を任されてるんだ」
「γと…入江正一か?」
「そう、入江正一は日本支部に帰ってきてる」
「ええ!?そうなの!?」
「標的は、すぐそばってわけさ」
「もっと遠くにいると思ってたよ…。なんか緊張してきた…」
「いいニュースは、それだけではないわ。その敵の、日本支部アジトの入口をつきとめたの」
「!!」
「敵アジトの入口!?」
「灯台下暗しだったんだよ。同じ並盛の地下。並盛駅地下のショッピングモールだよ。その先に、入江正一はいる」
「え!?で…でも、駅に地下なんてあったっけ…!?」
「10年前に着工されて、3年前にできたんだ」
「あっ (そういえば10年前(あのとき)…)」
フゥ太に説明されると、ツナは、この時代に来る前に、ハルが、並盛駅に地下商店街をつくる計画を聞いたかと言っていたのを思い出した。
「この情報の意味は大きいぞ。これで、こちらから攻め込める」
「せっ、攻めるー!?で…でも、みんなケガしてるし…」
今のラルとツナの言葉に、魅真は反応した。
戦いが好きでないツナは、過去に帰るために、なんとかしなくてはと思っているものの、どこか乗り気ではなかった。
「ああ。今のオレ達の状態では、成功はしないだろうな。γとの戦闘で、ミルフィオーレの本当の恐ろしさは、よくわかったはずだ」
「入江正一も、γと同じ隊長ってことは、そう簡単に倒せる相手じゃねーぞ」
「それに、敵ももう10年前のお前達の存在に気付いていると考えた方がいい。奴らは、ボンゴレであるお前達を狩るために、血眼になってこのアジトを探しているはずだ。このヤバい状況の中を生き延びて、日本支部の入江正一を倒せるかどうかは、お前達が、短時間にどれだけ強くなれるかにかかっているんだぞ」
「(短時間に強く……)」
リボーンの説明に、ツナだけでなく、魅真も強く反応をした。
「守護者の情報収集は僕らがするよ。だからツナ兄達は、自分の修業だけに専念してよ!」
「おまかせを!」
「私が来たからには、家事と、京子達のことはまかせなさい。あの子達に、惨めな思いはさせないわ」
「!! みんな…」
そして、フゥ太達が協力を申し出ると、ツナの顔は明るくなり、何か決意をするように、骨折してない方の手を強くにぎりしめる。
「ありがとう。そうする」
ツナは明るく、また、うれしそうに笑った。
突然、10年バズーカで10年後の未来にとばされてしまい、とばされた10年後の未来は他のファミリーに支配され、自分やリボーンは死に、ボンゴレファミリーの者だけでなく、知り合いの命も標的にされているという、最悪なことになっていた。
自分の時代には戻れず、自分の仲間…しかも、よりによって、戦えない京子やハルまでも、この時代にとばされてきた。二人に本当のことを言うわけにはいかないので、事実をかくしながら、過去に戻るための方法を探し、リボーンに言われて守護者を探し、またこの状況を打破するために、強くなるための修業をしなきゃならない。それだけでなく、京子やハル達のことも気にかけなくてはならず、自分の肩にかかる負担は相当なものとなっていた。余裕などなかった。
けど、フゥ太とビアンキが無事にアジトに戻ってきて、雲雀がみつかり、ビアンキとフゥ太だけでなく、雲雀ではないが、代理の草壁も、こうして協力を申し出てくれたおかげで、肩にかかる負担はかなり減った。
もちろんそれで、すべての問題が解決されたわけではないが、それでもうれしくなって、ツナの顔には明るさと笑顔が戻った。
一方魅真も、フゥ太とビアンキと草壁、何よりも雲雀が無事だったので、明るい顔で笑っていた。
だが、すぐに沈んだ顔になった。
「まだだめ、ランボ君!」
その時、部屋の外から京子の声と、廊下を走る音が聞こえてきて、その後に扉を開ける音が響いた。
「あっ……」
「ビアンキさん……」
「□△◆〇!!」
「フー太めっけだもんね!!」
扉の向こうから現れたのは、イーピンを抱えた京子と、ランボを抱えたハルだった。
「あなたたち…………」
「京子姉!ハル姉!ランボにイーピン!!」
京子達はビアンキとフゥ太と会ったことで、ビアンキとフゥ太は京子達と会ったことで、明るい顔になる。
「小さくなってるー」
京子とハルはビアンキに抱きつき、ビアンキは二人を優しく抱きしめ、フゥ太はランボとイーピンを抱きかかえて笑っていた。
その様子を見て、ツナとリボーンは、顔を合わせてほっとしたように笑った。
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