標的61 10年後の雲雀恭弥
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「んん…。思い出したぜ。おまえは、もう一人のボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥だ」
「だったら?」
γは、目の前にいる雲雀のことを思い出して聞いてみるが、雲雀はそれには答えなかった。
「おまえには、うちの諜報部も、手を焼いててね。ボンゴレの敵か味方か…行動の真意がつかめないとさ。
だが、最も有力な噂によれば、この世の七不思議にご執心だとか。
匣のことを嗅ぎ回ってるらしいな」
「どうかな」
「得体の知れないものに、命を預けたくないってのは、同感だぜ。で、こいつは本当には、誰が何のために、どうやって創ったか、真実はつかめたのか?」
「それにも答えるつもりはないな。僕は機嫌が悪いと言ったはずだ」
質問をしても、軽く流すかつっぱねるかのどちらかだったが、それでもγは表情を変えることはなかった。
「やはり、雲雀恭弥は、ボンゴレ側の人間だったというわけだな。いざ仲間(ファミリー)が殺られるとなれば、黙って見てはいられない」
「それはちがうよ。僕が怒っているのは」
雲雀はγが言ったことを否定すると、下にさげていた匣を持つ手を、再び上に持ってくる。
「並盛の風紀が汚されていることだ」
そして次に、匣を持っている方とは反対の手につけたリングに、炎を灯した。
それは、魅真と同じ、紫色の炎だった。
「風紀……?」
γもまた、雲雀が言ってることは意味がわからなかったが、自分と戦おうとしていることだけはわかったので、リングに炎を灯す。
「まあいいさ。敵の守護者の撃墜記録を更新するのは、うれしい限りだ」
しかも、どこかうれそうな顔をして、やる気満々だった。
「オレも……」
そして、しゃべりながら、キツネが入っている匣にリングを差し込む。
「男の子なんでね」
リングを差し込むと、匣の中からキツネが出てきた。
と同時に、雲雀も先程の匣を開けて、γに向けて放つと、匣の中からは、先程と同じように、紫色の炎の螺旋を描いたものが飛び出し、γに向かっていった。
標的61 10年後の雲雀恭弥
雲雀が放った、匣に入っていたものはまっすぐにγに向かっていくが、キツネが盾となったので、γにあたることはなかった。
その、キツネが防いでいる、雲雀が放ったものの正体は、ハリネズミだった。
「ハリネズミとはかわいいが何てパワーだ…。これだけの匣ムーブメントを、よくそんな三流リングで動かせる」
「僕は、君達とは、生き物としての性能が違うのさ」
「(波動に耐えきれず、リングが砕けた!?)」
今灯した炎で、リングが砕けてしまったので、γは驚いた。
「さあ、僕らも」
けど、リングが砕けても、雲雀は気にすることなく、新しいリングを指にはめる。
「始めよう」
そして、またリングに炎を灯すと、ハリネズミが入っていた匣と同じデザインの匣を取り出して、穴にリングを差しこんだ。
中から出てきたのは、雲雀愛用の武器の、雲属性の炎をまとったトンファーだった。
これから、強い相手と戦えるのだといううれしさから、雲雀のその顔には、笑みが浮かんでいた。
「(リングを使い捨てにするかよ………。こんな奴は初めてだ)」
リングが砕けても、まったく気にしていないので、γは驚いていた。
驚いていたが、雲雀の戦闘準備が整うと、γは雲雀のもとへ向かって走り出した。
柵を超え、雲雀がいる境内の方まで来ると、雲雀とγは武器を交えた。
一方で、上空では、お互いの匣兵器が戦っていた。
「(雲雀さん、すごい。あのγと互角にやりあってる…。それに、雲雀さんのあの攻撃が通ったあと、地面がえぐれて草一本残っていない。木や石の柵まで破壊されてる…)」
林の中では、自分達ではまったく歯がたたなかったγと、互角にやりあってる雲雀の戦いに、魅真が思わず見入っていた。
その時、突然後ろから肩に手を置かれたので、魅真はビクッとなり、警戒心を露わにして、あわてて後ろへふり向いた。
「あ……。あなたは……!!」
けど、肩に手を置いた人物の正体を知ると、魅真からは警戒心がなくなった。
「草壁……さん?」
そこにいたのは、この時代の、もと並盛中学校風紀副委員長の、草壁哲矢だった。
名前を呼ばれると、それに答えるように、草壁はにこっと笑った。
「大丈夫ですか?魅真さん」
「え?はい。私はなんとか…」
「それはよかった」
「でも、武君と隼人君が…」
「そうですね。あちらの方が重傷だ」
魅真が獄寺と山本の方に顔を向けると、草壁も二人の方へ顔を向け、二人を見た。
「大丈夫です。命に別状はありません」
「よかった…」
ケガはかなりひどいが、それでも生きていたので、魅真はほっとした。
一方境内の前では、雲雀とγが、お互いの武器で、何度も攻撃をくり返していた。
けど、どんなに攻撃をしても、雲雀に傷一つつけることすら叶わなかった。
「(こいつぁハンパねぇ)」
γも強さには自信がある。
実際に、周りからは「電光のγ」と呼ばれ、恐れられてきた。
しかし、目の前にいるこの黒髪の男は、自分と互角にやりあっており、まったくひけをとらなかった。
「くっ」
それどころか、自分の方が、少しだが押されていた。
今の攻撃も防いだが、盾にしたキューがビリビリと振動するくらいのすさまじい力をもっており、γは一瞬ではあるが動きが止まった。
その隙に、雲雀はトンファーで殴りとばそうとする。
「ちっ」
キューでは防ぎきれないだろうから、γはリングの炎で防ごうとした。
「!!」
しかし、雲雀はそんなものはものともせず、γの炎を打ち破り、そのまま殴りとばした。
「(硬度で勝る雷の炎を、雲の炎で破っただと……!?)」
それは、γにはとても信じがたいものだった。
殴りとばされたγは、そのまま、壊れた柵のあたりまでふっとんでいった。
「立ちなよ」
普通なら今のでやられていただろうが、雲雀はγがまだやられていないことを見抜いていた。
「うまくダメージを逃がしたね」
倒すことはできなかったのに、雲雀は笑っていた。
「ふ~~、さすがだ。もし守護者だったなら、最強だって噂も本当らしいな」
やられなかったのは、球で防御をしたからだった。
「いやー、まいった」
だが、笑っているのは雲雀だけではなかった。
「楽しくなってきやがったぜ」
笑っているのはγも同じで、γは球をついて雲雀を攻撃した。
球は、一番最初についたものが、その先にあった二つの球にあたり、更にそのうちの一つが別の三つの球にあたった。
そのうちの一つが、雲雀に向かってとんでくるが、雲雀は笑みをたやさず、余裕の顔で球をよける。
しかし、あたるごとにどんどんと動く球が増えていき、雲雀を包囲するように動いた。
「!」
「あいにく、このショットの軌道には、人が生きられるだけの隙間はないんだ」
γが言ったことを表すように、動く球は、容赦なく雲雀を攻めたてた。
「へぇ」
それでも雲雀は冷静で、まったくあわてていなかった。
「それはどうかな」
先程γの炎を破った際に、炎が消えてしまったので、走りながら、左のトンファーにのみ炎を灯した。
「3番ボール」
γが命令すると、3と書かれた球が、雲雀に向かってとんでいった。
「ぐっ」
その球を、雲雀はなんとか左のトンファーで防ぐが、すさまじい威力に血が吹き出た。
「ビンゴ」
狙い通りに攻撃があたったので、γはニヤっと笑った。
「雲雀さんっ!!」
遠目からでも、雲雀がケガしたのがわかった魅真は、心配そうに雲雀の名前を叫んだ。
「たしかに、全ては避けきれそうにない」
けど、雲雀は気にすることなく、再びγのもとに向かって走り出した。
「だから当たるのは、この一球だけって決めたのさ」
「!」
言われて見てみると、これだけ球が飛んでいるというのに、雲雀は一撃もあたることなく走っていた。
「(一瞬にして、最低限のダメージで済むルートを見切ったのか…………。どーりで最初から、左手だけに防御の炎を集中してるわけだ…。何て奴…)」
雲雀は最初からそのつもりで、左のトンファーにのみ炎を灯していたこと、そして、言ったことを実行してしまっているので、γは初めて冷や汗をかいた。
「もう逃がさないよ」
考えてる間にも、雲雀はすでに、目の前までせまってきていた。
「ふっ。それとこれとは、話が別だ」
しかしγは、不敵な笑みを浮かべると、雲雀がふったトンファーを、くつに炎を灯し、上に飛んでよけた。
「残念だな」
「………………」
そのまま敵前逃亡をはかるのか、それとも一旦上に逃げて作戦を練り直すのか、γは空中へと飛んでいく。
「……!」
だが、上へ飛ぶと、どうにもγの様子がおかしかった。
そして次の瞬間には、口から血を吐き出した。
「………な……なんだぁ…?こりゃあ…」
顔を後ろに向けると、たくさんのトゲがついた紫色の球体があった。
γが口から血を吐き出したのは、その球体についているトゲが、体に刺さったからだった。
上の方では、γの匣兵器のキツネまでも、トゲに刺さって捕われている。
この光景に、魅真は驚いて目を見張った。
「言ったはずだよ。逃がさないって」
自分の思い通りにことが運んだので、雲雀は笑っていた。
「あの…ハリネズミか…」
逃がさないというのは、雲雀がトンファーでγを仕留めることだけではなく、最初に放ったハリネズミのことも意味していた。
「そう……。君のキツネの炎を元に、彼がこれだけの針を発生させたんだ。まるで、雲が大気中のチリを元に発生して拡がるようにね」
「そーか…。雲属性の匣の特徴は……増殖……だったな」
雲雀に説明されると、γは何故こんな巨大な球体ができたのかを理解した。
「だが、こんな量の有機物を増殖させられるなんて、うちの雲の奴からは聞いていない…。ナンセンスな匣だぜ…」
「すばらしい力さ。ゆえに興味深い」
今言っていることを表すように、雲雀は匣を見た。
「さぁ、終わるよ」
匣を見たのはほんの数秒のことで、匣をしまうと、再びトンファーに炎を灯した。
その時、魅真達がいる反対側の林から、葉っぱがこすれあう音がした。
「!」
「!! あれは!!」
そこから姿を現したのは、ツナとラルだった。
「遅すぎるよ、君達」
ツナとラルの存在に気づいた雲雀は、γにとどめをさすために走りながら、横目でツナ達を見た。
「……!! あのガキは………まさかな」
γもツナ達の存在に気づき、ツナの姿を見て、ある考えに至った。
その間にも、雲雀は球体の周りにある、針がついている雲の踏み台を使ってγのところまであがっていく。
「!!」
その雲雀の姿を見て、ツナは驚いて目を見張った。
そして、γのもとまで詰め寄った雲雀は、γをトンファーで強く殴り、その時の衝撃で、球体も破壊された。
殴られたγは口から血を吐き、地面に仰向けに倒れた。
それとほぼ同時に、雲雀も地面に着地し、ハリネズミも匣に戻った。
地面に落ちたγは、口や鼻や体から血を流し、白目をむいて気絶していた。
「やった…」
それを見た魅真は喜んだ。
目を輝かせ、さすがだと思った。
「雷のリングはいらないな」
一方雲雀は、着地した、足を折りまげている状態から、ゆっくりと立ちあがっていた。
そして、雲雀の後ろには、林の中から境内に出てきたツナとラルがいた。
「あ……あれって…!!」
先程見た横顔、そして現在目にしている見覚えのある後ろ姿、聞き覚えのある声に、ツナは目を見張った。
「何してたんだい?沢田綱吉」
「ヒバリさん!!」
一番探していた人物がみつかったので、ツナは目を輝かせた。
「真田魅真と山本武と獄寺隼人は、その林の中だ」
「! え!?」
雲雀の言葉と、先程遠くから見た煙に、ツナはもしや!と思い、自分とラルが来た林とは反対の林の中へ走っていった。
「!!!」
そこには、ケガをして、血だらけで、気を失って倒れている獄寺と山本、その二人をすわって見ている魅真と草壁がいた。
「獄寺君!!山本!!」
思った通りひどいケガをしていたので、ツナは顔が真っ青になり、涙を浮かべて駆けよった。
「ツナ君!!」
「魅真ちゃん!!魅真ちゃんは無事!?」
「うん。私のケガは軽い方だから大丈夫。二人が助けてくれたから」
「よかった」
獄寺と山本は重傷だが、魅真だけでも無事だったので、ツナはほっとしていた。
だが、逆に魅真は、どこか沈んだ顔をしていたが、ツナは今は、それどころではなかった。
「それより二人は…」
「大丈夫。命に別状はありません」
「あっ、あなたは…」
「草壁哲矢。雲雀の部下です」
「(風紀副委員長だった!!)」
「とはいえ、すぐに治療は必要だ…。アジトへ運びましょう」
「ふ…二人とも…」
それぐらい二人が重傷だとわかったツナは、顔が真っ青になるだけでなく、体も震え、冷や汗をかき、力なく地面にひざをついた。
一方、ツナと一緒に林の中に行かなかったラルは、目の前にいる雲雀を凝視していた。
そんなラルの視線に気づいた雲雀は、ラルの方を見る。
「(信じられない…。ボンゴレリングを使わずにあのγを……)」
ラルが雲雀を見ていたのは、激強と言われているγを、ボンゴレリングなしで、いとも簡単に倒してしまったからだ。
雲雀はラルに顔を向けたが、またすぐに顔をもとの位置に戻し、林の中に歩いていく。
「待て。負傷者もいる。今、彼らを抱え、あの距離を引き返し、ハッチに戻るのは危険だ」
「その心配はいりません。我々の出入口を使えば」
「!」
雲雀は無視したままだったが、雲雀の代わりに草壁が答えた。
「(我々の出入口……?)」
雲雀の代わりに草壁が答え、ラルがなんのことかと思ってると、雲雀は林の中を歩きながら、γと戦ってた時とは違うリングを指にはめた。
すると、何か重いものが動く音がした。
「何の音?」
「さあ…」
当然、ツナと魅真は、この音の正体がわからなかった。
何事かと思っていると、雲雀は魅真の目の前までやって来た。
「あ……」
魅真はすわった体勢のまま、雲雀を見上げた。
「ひ………ば…り……さん……」
何故、雲雀が自分の前まで来るのかわからなかった。
10年後のこの時代の雲雀ということは、当然自分とケンカしたことも知ってるだろうし、そうでなくとも、魅真はただただ気まずかった。
けど、そんな魅真の心境をよそに、雲雀は何も答えずに、魅真にあわせてしゃがんで、魅真の背中と足の裏に手をまわすと、魅真を抱きあげた。
お姫様抱っこというものをされ、魅真も、抱きあげられている魅真本人ではないツナも、びっくりして、目を丸くして雲雀を見た。
「あ、あの……雲雀さん!!」
魅真は顔を真っ赤にして雲雀の名前を呼ぶが、雲雀は何も答えず、境内の方へ歩いていった。
そんな二人…おもに雲雀を見ていたツナは、呆然としていたが、ツナの前にいる草壁は、口角をあげて小さく笑っていた。
境内まで戻ってきた雲雀は、ラルの横を通りすぎ、灯篭の方へ向かっていった。
そこへ、空を飛んでたヒバードが下りてきて、雲雀の左の肩に止まる。
雲雀は灯篭の前まで来ると、一旦魅真を縦に抱き直し、再び歩き出した。
「あの…雲雀さん、前!!」
目の前には灯篭があるので、このまま進んでいってはぶつかってしまう。
けど、雲雀はおかまいなしに、灯篭の台に足をかけると、そのまま進んでいく。
すると、雲雀と魅真の姿は、灯篭の中に消えていった。
「きっ、消えた!!」
いきなり、しかも灯篭の中に消えたので、ツナは驚いていた。
「(隠し扉!?霧系のリングを使ったカモフラージュか……)」
けど、ラルはこの時代の人間なので、何故消えたのかすぐにわかった。
「ただ、このまま立ち去るには、一つ問題が残っています。雨と嵐のボンゴレリングだ」
「!」
「敵のレーダーに映っているでしょう。ここで反応を消すわけにはいかない」
草壁は、獄寺と山本からとったリングを手にのせて、頭を悩ませた。
確かに、ここで反応を消すという行為は、自分のアジトの出入り口は、ここにあると言っているようなものだった。
「わかった。その仕事はオレが引き受けよう」
ツナはケガをしているし、草壁はツナ達を連れて、先程言っていた、「我々の出入り口」へ案内しなければならない。
となれば、この時代を熟知し、なおかつケガをしておらず、戦闘能力があり、身軽に動けるといえば、ラルくらいしかいなかった。
ラルはボンゴレリングをなんとかするために、ひと役買って出た。
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