標的39 戦いの兆し
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そして、特訓4日目。
生徒達が登校している頃、屋上では、いつもの平穏な学校生活とは、ほど遠い光景が広がっていた。
建物はえぐったようにいくつもの穴があき、まるで、破壊兵器でも落ちてきたのではないかと思うくらいのものだった。
ポタポタと落ちている血は、雲雀とディーノから流れているもので、二人はひどいケガをしており、服も血で汚れ、ボロボロになっていた。
そして、魅真はそれを、ハラハラした様子で見ている。
実は雲雀とディーノは、前日の特訓3日目から、徹夜で戦っていたのだった。
標的39 戦いの兆し
しばらく戦うと、雲雀とディーノは戦いを中断した。
二人が中断するのを見ると、魅真は救急箱を持って、二人のもとへ駆け寄っていった。
「雲雀さん!ディーノさん!手当てします。ケガしたところ、見せてください」
「お!わりぃな、魅真」
ディーノはうれしそうに、にこにこと笑いながら、手当てをしてもらおうとした。
そんなディーノを、雲雀は気にいらなそうに、鋭い目で睨む。
「こんな男の手当てなんかしなくていいよ」
「おいおい、そりゃひでーぜ恭弥」
「そういうわけにはいかないですよ。ディーノさんだって、ひどいケガしてるんですから」
雲雀の冷たい言い分にディーノは苦笑いをし、魅真は相変わらず雲雀が言ってる意味がわかっていなかった。
「この前からちょっと変ですよ、雲雀さん」
魅真がそう言うと、雲雀はムスッとした。
「知らない」
そして、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「変な雲雀さん」
突然機嫌が悪くなった雲雀に、魅真はわけがわからないといった感じだったが、すべてわかってるディーノは、雲雀に同情していた。
雲雀の様子がなんだか変だとは思ったし、気にはなったが、それでも魅真はディーノの手当てをした。
その間、雲雀はずっとムスッとして、ディーノを睨んでいた。
それから、20分ほどでディーノの手当てが終わり、今度は雲雀の手当てをした。
手当てを受けている間の雲雀は、少しだけ表情がやわらいでいた。
雲雀のケガも、ディーノ同様にひどいものだったので、手当てし終えるのに、20分くらいかかった。
「あ、そうだ。ちょっと待っててくださいね」
手当てが終わると、魅真は扉の方まで走っていき、扉のすぐ側に置いておいた紙袋を持って、雲雀のところに戻ってきた。
「はい、雲雀さん。これを」
戻ってくると、持ってきた紙袋を、雲雀にさし出した。
「なんだい?これは」
「着替えですよ。雲雀さん、昨日は家に帰ってこなかったので…」
手渡された紙袋を受けとると、眉間によっていたシワがなくなり、機嫌がよくなった雲雀は、着替えるために、校舎の中に入っていった。
「ボス」
雲雀が着替えに行ってほどなくすると、ロマーリオとは別の、ディーノの部下がやってきた。
「おお、どうした?」
血相を変えてやって来た部下に対し、ディーノはのほほんとした顔で声をかけた。
「実は……」
彼はディーノの前までやってくると、周りに聞こえないように、ディーノに耳うちをした。
「なんだって?そりゃ本当か!?」
「はい。間違いありません」
「マジかよ…」
部下の男が来た時とは違い、ディーノはとても真剣で、深刻な顔になった。
「ディーノさん、どうしたんですか?」
部下の報告に、とても驚いていたディーノが気になった魅真は、ディーノに何があったのか聞いてみた。
「ああ。実はな、昨日の夜、ヴァリアーがこの日本に来ちまったらしい」
「え!?でも、あと1週間近くはバレないはずなんじゃ…」
ディーノが話した内容に、魅真も驚愕した。
「そのはずなんだがな…。だが、ヴァリアーが日本に来たのは事実だ。そして、ツナ達と接触したらしい」
「えっ……。ツナ君達、大丈夫だったんですかっ!?」
「ああ、ツナ達にケガはないみたいだ」
「よかった」
ヴァリアーと接触したが、ツナ達はなんともなかったと知り、魅真はほっとした。
「それで、同じ種類のリングを持つ者同士の、一対一のガチンコバトルが、この並中で行われるみたいなんだ」
「えぇっ!?」
近いうちに、ヴァリアーと戦うことになるのは知っていたが、乱闘ではなく一対一の戦いで、しかもその戦いをこの並中でやるといい、そのことを想像すらしていなかった魅真は、驚きの声をあげた。
「それ……まずいです…」
「なんでだ?」
「雲雀さんですよ。雲雀さんは、この並中を心から愛してるんです!もし、バトルで校舎が壊されたりしたら、怒りが爆発して、誰にどんな危害がおよぶかわかりません!もしかしたら、自分以外の人間を全員咬み殺して、ガチンコバトル自体、めちゃくちゃになるかもしれないです!」
ディーノの問いに、魅真はとても緊迫した雰囲気で説明した。
「確かに、そりゃまずいな…」
「でしょう?」
魅真から説明されると、ディーノは顔を青くして、納得した。
雲雀と出会ってまだ日が浅いが、出会ってからの雲雀の態度を考えると、魅真の説明はかなり信憑性があったため、その言葉を信じたのだった。
「でもよ、それなら今回のバトルのこと、どうやって恭弥に伝えんだ?」
「ん~~。難しいですね…。並中がかかわってなければ、バトルマニアの雲雀さんですから、喜んで参戦してくれるかもしれませんが…。ツナ君達がいるので、微妙なところですけど…」
一年以上の付き合いがあり、委員会や家で毎日顔を合わせているので、雲雀の性格を熟知してる魅真は思い悩んだ。
「…あのさ、魅真…」
そんな魅真をじっとみつめていたディーノは、ふいに、昨日ホテルで言われたことを思い出して、口を開いた。
「なんですか?」
魅真は名前を呼ばれると、考えごとをして、下を向いていた顔をディーノに向けた。
「そ「あ、ディーノさん!」
「な、なんだ?」
話をしようとすると途中で遮られたので、ディーノは話すのをやめた。
「顔にまだ手当てできてないところが…。すみません、いそいで手当てしますね」
魅真が声をあげたのは、まだ手当てをしてないところをみつけたからだった。
見逃してしまっていた傷を手当てするために、少し離れたところに置いてある救急箱を取りにいった。
「すみません、ディーノさん。ちょっとすわっていただけますか?」
ディーノとは身長差がありすぎるので、手当てをしやすいよう、すわるように促した。
「ん?ああ」
ディーノは魅真に促されるとその場にすわり、ディーノがすわると、魅真もディーノの前にすわった。
そして魅真は、手当てをしやすいように、ケガをしてる反対の方の頬に手をそえた。
それだけで、ディーノはドキッとなり、頬を赤くする。
その時、着替えに行っていた雲雀が、屋上に戻ってきた。
目の前の光景を見た雲雀は、目を大きく開いて固まった。
そこには、ディーノの顔に自分の顔を近づけている魅真がいたからだ。
ディーノは、ちょうど雲雀に背を向けており、魅真がディーノにかくれている状態なので、キスをしているように見えたのだった。
そのために、雲雀はその場で固まり、二人を凝視していた。
「これでよし…っと」
一方、雲雀の存在に気づいてない魅真は、ディーノの頬にバンソーコーを貼って、手当てを終えると、ディーノから離れた。
「これで全部終わりです。すみません、全部手当てできてなくて」
「いや、いいんだ。それより「あ!」
ディーノが先程の話の続きをしようとすると、またしても、魅真に言葉を遮られた。
「おかえりなさい、雲雀さん!」
魅真が声を出したのは、雲雀の姿が見えたからだった。
雲雀の姿を見た魅真は、うれしそうに満面の笑顔を浮かべていたが、逆に雲雀は、ムスッとしており、不機嫌な顔をしていた。
魅真は、雲雀が不機嫌なのは見てすぐにわかったが、何故不機嫌なのかは、やはりわかっていなかった。
「……何してたの?」
その不機嫌な感情を、雲雀はまったくかくそうとせず、魅真に問いかける。
「何って……ディーノさんの手当てをしていたんですよ。まだ、手当てできていないところがあったので」
けど、雲雀とは対照的に、魅真は落ちついた表情で、あっさりと答えた。
それが、余計に雲雀を不機嫌にさせたのだが、魅真は気にすることなく、扉の近くに置いておいた、自分の荷物を取りに行った。
「それより、朝ご飯にしましょう。何も口に入れないのは、体に悪いですから」
持ってきたのは、朝ご飯が入った重箱だった。
魅真が重箱のふたをあけると、雲雀はとり皿に自分の分をよそって食べ始めた。
「どうですか?雲雀さん」
「まずくはない…」
ぶっきらぼうな言い方だが、おいしいと言ってくれてるのだとわかった魅真は、うれしそうに顔をほころばせ、雲雀も機嫌がよくなった。
「あっ、ディーノさんとロマーリオさんもどうぞ」
「お、サンキュー魅真」
「わりぃな、嬢ちゃん」
ディーノとロマーリオも、とり皿に自分の分をよそうと、離れた場所に移動をした。
「あの嬢ちゃんは、いい嫁さんになれるな。なあ、ボス」
魅真と雲雀が話している姿を見ていると、突然ロマーリオが、魅真の話題をディーノにふってきた。
「なっ!!いきなり何言ってんだよ!?ロマーリオ。オレは成人してっけど、魅真はまだ未成年…女子中学生だぜ。大体、歳だって10歳近くも離れてるし…」
ロマーリオが言うことに、ディーノは顔を赤くしながら、必死になって話した。
「誰もボスの…なんて言ってねーよ」
けど、ロマーリオはニヤニヤと笑いながら、揚げ足をとるように返した。
その言葉に、ディーノはしてやられた!と思いながら、先程とは違う意味で、顔を赤くする。
「それとも、自分の…とか思ってたのか?」
顔を赤くしているディーノを見て、図星だとわかったロマーリオは、からかいながら、大きな口をあけて、ガハハと豪快に笑った。
「まあ、オレ達の世界じゃ、10歳くらい離れてても、全然変じゃねーから安心しろよ」
背中をバンバンとたたきながら、更にからかってくるロマーリオに、ディーノは更に顔が赤くなり、動きが止まり、何も返せなかった。
「まあ、それはそうと、どうするよ?今回のリング争奪戦のこと…。さっきの嬢ちゃんの言ったことが本当なら、かなりまずいぜ」
ディーノをからかっていたが、急に真剣な顔になり、今後のことを相談してきた。
「そうだな。絶対にリング争奪戦は、めちゃくちゃにしたらダメだからな…。
こうなったら、多少強引にいくしかねぇな」
ディーノはある方法を思いつき、当の問題児である雲雀をジッと見た。
40分ほど経つと朝食の時間が終わり、雲雀はお茶を飲んでひと息ついていた。
「恭弥」
そこへ、ディーノがやって来る。
「何?」
お茶を飲んでいる最中に話しかけられたので、雲雀はコップから口を離し、ディーノの方に顔を向けた。
「実は、この後の修業なんだがな、ちょっとやり方を変えてみようと思ってな」
「やり方?」
「そうだ。屋上でばかりやっていても、動きが制限されて、単調になっちまう。だから、並中以外での、あらゆるシチュエーションの勝負をすんぞ」
もちろんこれは、雲雀を並中から遠ざけるための作戦で、魅真はディーノの意図に気づいた。
「ふーーん。僕は別にどこでもいいよ。あなたを咬み殺せればね」
「んじゃ、さっそく修業開始だな」
突然の提案に、雲雀はやる気満々だった。
雲雀とディーノは武器を持ち、屋上を出た。
そして、魅真とロマーリオも、二人の後に着いていった。
.