標的37 ハーフボンゴレリング
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三人の前に立ち、今にも三人に襲いかかりそうな男。男を警戒する魅真とバジル。男を見てびびっているツナ。彼らの間には、緊張感が漂っていた。
「ゔお゙ぉい。ソレを渡す前に、何枚におろして欲しい?」
「渡してはいけません、沢田殿」
「え!?ちょっ、なんなの?どーーなってんのー!?」
男はツナを脅迫するが、バジルは、ツナに指輪を渡さないように言う。
「あいかわらずだな。S・スクアーロ」
「!?」
その時、男の後ろから、男の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「!! (この声は……!)」
聞き覚えのある声に、もしやと思ったツナは、顔を少し明るくした。
標的37 ハーフボンゴレリング
「子供相手にムキになって、恥ずかしくねーのか?」
男が後ろへふり向くと、そこには、金髪の外国人男性がムチを構え、黒いスーツを着た強面の男を何人か従えて立っていた。
「(え…誰…?この人…。外国人?ムチを持ってる)」
口ぶりからして、この事件に関わりがありそうで、おそらくは味方だろうが、敵である銀髪の男…スクアーロのことを知っている見知らぬ外国人男性に、魅真は少しばかり警戒した。
「!?」
「ディ…ディーノさん!」
「(ツナ君の知り合い!?)」
ツナの知り合いで、ツナの声色からして、相手は自分達の味方なのだという確信を、魅真は得た。
「! 跳ね馬だと!?」
「その、趣味の悪い遊びをやめねーっていうんなら、オレが相手になるぜ」
「(日本のこのガキ、こんなコネをもってやがるのか。跳ね馬ディーノ…。こいつを相手にするとなると、一筋縄じゃいかねーか)」
金髪の男性…ディーノが現れ、状況が一変したことにより、スクアーロはいろいろと考えごとをしていた。
「ゔお゙ぉい、跳ね馬。お前をここでぶっ殺すのも悪くない。だが、同盟ファミリーとやりあったとなると、上がうるせえ。
今日のところはおとなしく…」
ディーノが現れたことで、事態が収束すると思った。
……が、しかし、スクアーロは素早くツナと距離をつめると、ツナの髪をつかんだ。
「帰るわきゃねぇぞぉ!!」
「ぎゃっ」
「ツナ君」
髪の毛をつかむと、そのまま上にもちあげ、ツナは痛そうに顔をゆがめる。
「手を放せ!!」
それを見たディーノは、ツナを助けようとムチをふるうが、スクアーロは剣から火薬をとばして、爆発させて煙幕をつくり、自分を見えないようにした。
「やろう!」
これではスクアーロを狙えないので、ディーノはその場所から動くことができなくなった。
「ゴホ!」
「ガハッ」
「ケホッ」
「んっ!」
だが、すぐ側でツナ達がせきこんでいたので、ディーノはそちらに顔を向ける。
「お前達!大丈夫か?」
「ゴホッ」
「ガハッ」
「ケホッ」
側に行ってみると、そこには思った通りツナ達がいたので、ディーノは心配そうに三人に声をかけた。
「貴様に免じて、こいつらの命はあずけといてやる」
ツナ達のもとへ駆け寄った直後、スクアーロの声が横から聞こえた。
「だが、こいつはいただいていくぜぇ。ゔお゙ぉい」
スクアーロの手には、バジルがツナに渡した、指輪が入った黒い箱があった。
「な」
「ああっ。ボンゴレリングが…」
「!! ボンゴレリング…?」
「(ボンゴレリング?)」
指輪の名前をバジルが口にすると、ボンゴレの名前が出てきたので、ツナと魅真は反応して、バジルを見た。
「じゃあなぁ」
「まっ、まてっ」
ボンゴレリングと呼ばれる指輪が入った箱を持ち、そこから立ち去るスクアーロ。
それを見たバジルは、スクアーロの後を追おうとした。
「ううっ」
「!」
「大丈夫!?」
「おい、無茶すんな」
しかし、追いかけようと立ちあがった瞬間に、深手を負ったせいで、その場に崩れ落ちてしまう。
「深追いは禁物だぞ」
「! リボーン」
「リボーン君」
スクアーロが去り、バジルが崩れ落ちると、そこへリボーンがやって来た。
「なんで今頃出てくるんだよ!!どーして助けてくれなかったんだ!!?」
「オレは、奴に攻撃しちゃいけねーことになってるからな」
「な…何でだよ」
「奴もボンゴレファミリーだからだ」
「えーー!!?何だってー!!?」
「(ボンゴレ…?あの人が…?)」
「オレ、ボンゴレの人に殺されかけたのーーーー!?ど…どーゆーことだよ!?」
「さーな」
同じボンゴレの人間なのに、ツナのことを知らない上、途中で知っても攻撃してきたので、ツナは腑に落ちない様子だった。
そこへ、事件を聞いてやってきた、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「ボス…サツだぜ」
「ああ」
「(ボス?)」
ディーノの近くにいた、黒服で黒髪の男…ロマーリオが言ったことにうなずいたディーノは、バジルのもとへ行き、バジルを抱きあげる。
「ツナ、その話は後だ。廃業になった病院を手配した。行くぞ」
「ま、待ってください!!獄寺君と山本が………!!」
「あいつらなら心配ねーぞ」
「!」
「大丈夫か、ツナ!魅真!」
「いったい何なんすか?奴は?」
「隼人君!武君!」
「二人とも!!」
リボーンがそう言った時、獄寺と山本が、ツナと魅真のもとへ走ってきた。
「お前らの戦闘レベルじゃ、足手まといになるだけだ。とっとと帰っていいぞ」
「「!」」
二人がこちらに来ると、リボーンは、なんともきびしい言葉を二人に投げかける。
そう言われたことで、二人は固まり、その場に動かなくなってしまった。
「リボーン、何てことを…!!」
「行くぞ」
「わっ わっ。ちょっ、おい!!」
「あ……待って!」
リボーンはツナの手をひっぱって、強制的に連れていく。
二人がそこから去ろうとすると、魅真はリボーンとツナの後に着いていった。
「本当は、あいつらも感じてるはずだ」
「!?」
獄寺と山本から離れると、リボーンは口を開いた。
「あれだけ一方的にコテンパンにされて、はらわた煮えくり返ってねーわけがねぇ」
リボーンが言う通り、獄寺と山本は、スクアーロにあっさりやられてしまったので、とても悔しそうな顔をしていた。リボーンに言われて、自分の弱さを思い知ったのだ。
「ほっとけ」
「…………」
そう言われても、二人のことが気になるツナと魅真は、走りながら後ろをふり返っていた。
それから、同じ並盛にある、中山外科医院という廃業された病院にたどり着くと、ロマーリオにバジルの治療をまかせ、ツナ達は終わるまで外で待ち、その間にツナは、制服に着替えた。
「ていうかさ……」
制服に着替え、待合室までくると、怪訝そうな顔で、目の前にいる人物を見た。
「なんで魅真ちゃんがついてきてんの!?」
怪訝そうな顔をしていたのは、魅真がいたからだった。
いつもなら、そんなことは気にとめたりしないが、先程のあの異様な事件には、まったく関係ないといっても過言ではない魅真がいたので、ツナはずっと疑問に思ってたことを魅真に聞いた。
「なんでって…。ツナ君のことが心配だったんだもの。それに、あのバジルって子のことも心配だし」
答えはあっさりと返ってきた。
心配してくれるのはうれしいが、ツナはどこか落ちつかなかった。
自分もまだ、先程の事件のことはよくわからないが、死ぬ気モードになった自分と、ヤバイ人物(スクアーロ)が戦ったところを、間違いなく見られただろうし、普通ではありえない騒動に巻きこまれてしまったからだ。
もしかしたら、自分がマフィアの跡目候補、そうでなくとも、普通ではないということがバレてしまったのではないかと、気が気でなかったのだ。
「あ、そうそう。えっと…ディーノさん…でしたっけ?」
「ん?ああ」
魅真は今度は、ツナの隣にいるディーノに声をかける。
「先程は、助けてくださってありがとうございました。おかげで助かりました」
「いや、どうってことないぜ」
ディーノに声をかけたのは、あの騒動の時に助けてもらったからだった。
いつ、どこで、自分のことがバレるかわからないので、ツナは自分に声をかけられたわけじゃないのにドキッとした。
「ディーノさんて、ツナ君のお知り合いなんですか?」
「ん?まあな」
「どこの国の方ですか?」
「イタリアだ」
普通に会話をしているだけだが、魅真がディーノに質問をして、ディーノがその質問に答えるたびに、ツナはドキドキしていた。
「そうなんですか。それじゃあ、リボーン君と同じですね。それにしてもディーノさん、すごい流暢な日本語しゃべるんですね。目をとじてると、日本人と話してるみたいです」
「まあ、仕事でこっちにちょくちょく来るからな」
「へえ~~。どんなお仕事なんですか?」
「ああ、それは「わあああーーーー」
ツナは、ディーノが最後まで言う前に、大声を出して、ディーノの言葉を遮った。
ディーノの仕事は、マフィアのボスだからだ。
「どうしたの?ツナ君」
これだけで十分怪しいのだが、魅真は大して気にする様子もなく、ツナに問う。
「あ、いや…なんでも…。と、ところでさ…魅真ちゃん「あっ!」
挙動不審なツナは、誤魔化して話題を変えようとするが、魅真が突然大きな声をあげたので、ツナはびくっとなって話をやめた。
「いっけない!もうこんな時間」
魅真が声をあげたのは、目の前…ツナの後ろにある時計が、1時30分をさしていたからだ。
「ごめん!ツナ君。私、これから学校に行かないと!」
「え?」
「約束してるの。昼の2時までに、学校の応接室に行くって。ここからだと、走って行っても15分はかかっちゃうから…。だから、早く行かなきゃ!ごめんね。また明日ね」
「え…?あ……うん。また明日…」
魅真が大きな声をあげたのは、雲雀との約束の時間がさしせまっていたからだった。
かなりのギリギリの時間なので、魅真はあわてて、まくしたてるように説明をすると、嵐のごとく去っていった。
そしてツナは、魅真の姿が見えなくなると、大きなため息をついた。
「とりあえず、魅真ちゃんにマフィアのことがばれなくてよかった…」
一番危惧していたことはまぬがれたので、ツナは緊張の糸がとけたようにほっとしていた。
「えっ!ひょっとしてあの子、ボンゴレのこと知らないのか?」
「はい……」
「そっか…。悪いことしたな。聞かれたこと、ついペラペラとしゃべっちまった」
「いえ…。結果として、マフィアのことも、ボンゴレのことも話さなかったので、大丈夫ですよ」
「そうか?」
「はい」
マフィアに関する話題は出なかったので、ツナはほっとしていたが、その側では、リボーンがきびしい顔をして、魅真が去っていった方向を見ていた。
次の日……。
朝の7時50分頃、魅真と雲雀は学校の応接室にやって来た。
魅真はカバンを部屋のすみに置くと、ソファにすわり、雲雀は執務机に行った。
「ん?」
執務机まで行くと、雲雀は机の上に置いてあるものに気がついた。
「どうしたんですか?雲雀さん」
雲雀の声が気になった魅真は、雲雀に何があったのかを問う。
「机の上に、指輪が置いてある…」
「え?」
そして、雲雀の答えを聞くと、魅真も執務机まで歩いていく。
「!?」
魅真は、その指輪を見て驚いた。
「(これって……昨日のあの騒動で、バジルって子がツナ君に渡していた、あの指輪?)」
それは、昨日見た、ボンゴレリングと呼ばれていた指輪だったからだ。
「(でも……。ボンゴレリングとか言っていたあの指輪、確かスクアーロって奴が奪っていったはず…。なんでこんなところに…)」
確かに昨日、ボンゴレリングと呼ばれていた指輪を、ツナから、スクアーロというあの長髪の男が奪っていったのを目にしたのに、何故ここにあるのかわからなかった。
実は、バジルが持っていたのはニセモノで、本物はディーノが持っていたのだ。
だが、そんなことは知らない魅真は、とても疑問に思っていた。
雲雀は魅真が疑問に思ってる間に、指輪と日誌を持って、ソファまで歩いていった。
そんな雲雀を魅真も追いかけて、向かい側のソファにすわり、仕事をしながら、雲雀が指輪を指の中でころがしながら、日誌を読んでいる姿を見ていた。
「何?」
「あ……いや……なんでも……」
穴があくくらいにずっと見られていたので、気になった雲雀は魅真に問うが、魅真からは曖昧な返事が返ってくるだけだった。
「ウソだね。魅真がそう言う時は、何かあるってことだよ」
「(見抜かれてる!!)」
けど、今の返事だけで、雲雀は魅真のウソをあっさりと見抜いてしまった。
「何をかくしてるわけ?」
「へ!?あ……いえ………あの……その……」
「何?僕には言えないの?」
「えと……」
じっとみつめて質問をされてるので、言いにくいのもあるが、好きな雲雀にみつめられて、はずかしいやらうれしいやらで、いろんな感情がまじりあって、顔が赤くなっていた。
「!」
するとその時、雲雀は突然ひとつの気配を感じとり、応接室の扉の方へと目を向けた。
そして、雲雀が扉に目を向けると、その扉が開く音がした。
「おまえが雲雀恭弥だな」
「……誰……?」
「あっ…」
「オレはツナの兄貴分で、リボーンの知人だ。雲の刻印のついた指輪の話がしたい」
そこへやってきたのは、昨日の騒動で魅真を助けたディーノだった。
「ふーん。赤ん坊の…。じゃあ、強いんだ」
それを聞いた雲雀は、喜びの笑みを浮かべる。
そして、雲雀がそう言った時、ディーノは首もとに違和感を感じた。
「おまえは…!」
それは、魅真が自分を睨みながら、薙刀の切っ先を自分の首にあてていたからだ。
「あなた、この指輪のことを知っているんですね」
魅真が、昨日自分を助けてくれたディーノに敵意を向けたのは、あのスクアーロが狙っていた指輪を知っていたからだった。
自分を助けてくれたが、もしかしたら敵かもしれないからだ。
「ひょっとしてあなた、昨日のあの騒動では私達のことを助けてくれたけど、本当は敵なんですか!?」
ツナが親しげにしていたので、可能性はかぎりなく低いが、それでもまったくのゼロではないので、敵意を向け、薙刀を向けたのである。
「もし………雲雀さんに、危害を加える気なら…いくら恩人だからって、許さないわ!!」
魅真が自分の心の内を叫ぶと、ディーノは一瞬目を丸くするが、すぐにやわらかくなり、小さく笑い出した。
「何がおかしいんですか!?」
何故ディーノが笑うのかわからない魅真は、声を荒げた。
「いや…わりぃわりぃ。おまえの気にさわったなら謝るが、そうじゃないんだ。実は、あの指輪は……」
「僕は、指輪の話なんて、どーでもいいよ。あなたを咬み殺せれば…」
そこへ、間に割って入るように、雲雀がソファから立ち上がりながら、ディーノの言葉を遮った。
立ち上がった雲雀は、すでに戦う気満々といった感じで、指輪の話を聞く気なんてまったくなかった。
「なるほど、問題児だな」
雲雀のことは、おそらくリボーンに聞いたのだろう…。
ディーノは、一人納得をしていた。
「いいだろう。その方が、話が早い」
納得すると、ディーノは自分の武器のムチを構え、それを見た雲雀もまた、己の武器であるトンファーを取り出し、構えた。
雲雀とディーノは、戦うために屋上に行った。
そして、指輪のことが気になる魅真と、ディーノの部下であるロマーリオも一緒に屋上に行った。
屋上に着くと、雲雀とディーノはお互いに武器を構え、対峙しており、魅真とロマーリオは、フェンスに背中を向ける形で、二人の戦いの行く末を見守っていた。
「学校の屋上とは、懐かしいな。好きな場所だぜ」
「だったら、ずっとここにいさせてあげるよ」
ディーノは笑っていたが、雲雀はディーノと違い、無表情だった。
「はいつくばらせてね」
雲雀はトンファーを回し、ディーノに立ち向かっていく。
ディーノの前まで来ると、右のトンファーを薙ぐようにふるが、ディーノはそれをあっさりとよけた。
右のトンファーがダメなら、次は左のトンファーと、休む間もなく攻撃をしていくが、それでも攻撃がディーノにあたることはなかった。
そして、横にふる攻撃がダメならと、今度はトンファーを下から上にふるが、ディーノは、トンファーにムチをひっかけて、あっさりと止めた。
しかも、余裕の笑みまで浮かべている。
「ディーノさん…すごい…。かっこいい……」
雲雀も強いが、その雲雀の攻撃をいとも簡単によけたり止めたりしているディーノに、魅真は見惚れていた。
その言葉を聞いて、魅真を見た雲雀はムッとして、不機嫌そうに眉間にしわをよせた。
「その歳にしちゃ、上出来だぜ」
そんな雲雀の心など露知らず、ディーノは雲雀を称賛した。
「何言ってんの?手加減してんだよ」
けど、それすらも気にいらない雲雀は、更に不機嫌になり、ディーノの顔を狙って、左のトンファーをふるうが、ディーノはその攻撃を、またしてもよけた。
しかし、雲雀はすぐに足を方向変換させ、右のトンファーで、後ろから回転するように攻撃をすると、ディーノの髪の毛をかすった。
「(こいつ…。末恐ろしいガキだぜ)」
トンファーがかすったことで、髪の毛が何本か落ち、そのことで、ディーノの顔からは、今まで浮かべていた余裕の笑みがなくなる。
「ほーう…」
「すごい、雲雀さん…」
今の雲雀の攻撃を、側で見ていたロマーリオも感心していた。
そして、ロマーリオの隣で見ていた魅真も、雲雀を称賛しており、そのことで、雲雀の不機嫌そうな顔つきが、少しだけやわらいだ。
「(だからこそ、ツナのファミリーには、絶対に必要。手を出すまいと思っていたが…)」
その間にも、雲雀の攻撃は続き、ディーノは考えごとをしながらも、余裕で防御をする。
「しょーがねえ」
そう言いながら、ディーノはムチをふるった。
「甘いね」
けど、雲雀はそれを、いとも簡単によける。
「死になよ」
ディーノの攻撃をよけると、とどめをさすために再び攻撃にうつり、トンファーをふろうとした。
だが………
「!!」
後ろの建物についているパイプとハシゴを通したムチは、攻撃をしようとしていた雲雀の左腕を、トンファーもろともしばりつけていた。
それは、何重にもなって巻きついているので、ほどくことは不可能に近かった。
「あの技術…。すごすぎる、ディーノさん…」
ディーノの超人的な神技に、魅真は感嘆の声をあげた。
けど、また魅真がディーノをほめていたので、雲雀は再び不機嫌な顔になり、ムスッとした。
「おまえはまだ、井の中の蛙だ。こんなレベルで満足してもらっちゃ困る」
「………」
けど、そんな雲雀におかまいなしに、ディーノは口を開いた。
つまり、自分はまだまだひよっこだという意味なので、自分をザコ扱いしてきたディーノを、雲雀は無言で睨んだ。
「もっと強くなってもらうぜ、恭弥」
ディーノも、雲雀にはその可能性があるからこそ言っているのだろう…。
「やだ」
だが、指図されるのが嫌いな雲雀は、しばられてる方とは反対の右手をふりあげ
「なっ」
そのまま、ディーノの顔を殴りつけた。
予想外の答えと行動に、ディーノは驚き、攻撃を喰らってしまう。
「てっ、てめーなあ!」
「(直撃を避けた…?)」
雲雀の答えと行動にディーノは抗議をし、雲雀は、直撃を避けたのをふしぎに思っていた。
「(さて、このじゃじゃ馬。どーやって手懐けようか)」
直撃を避けたといっても、頭からは血が出ており、ディーノは難しい顔をしながら、これからのことを考えていた。
そして夕方になり、日が暮れかけると、今日の修業は終わりとなった。(と言っても、雲雀は不満そうで、渋々といった感じ)
「魅真、帰るよ」
「あ……今日は私、ちょっと……」
「え?」
雲雀は魅真に帰るように言うが、魅真は言葉を濁した。
「ちょっと用があるんです。なので、今日は別々に…」
「しょうがないな。で、一体何しに行くの?」
「あの……重大な用事で…」
「?」
行き先を聞いているのに、なおも言葉を濁す魅真を、雲雀は疑問に思った。
「すみません、雲雀さん。今は、まだ言えないんです。でも、いつか必ず言いますし、なるべく早く帰ってきますから!」
魅真は、雲雀の返事を待たずして、屋上から校内へ走っていった。
「ディーノさん!」
階段を降りていくと、同じように階段を降りているディーノとロマーリオの姿があったので、魅真は声をかけた。
「おう、魅真か。どうした?」
魅真に声をかけられると、ディーノは人なつっこい、どこか幼さが残る笑顔を魅真に向けた。
「あのっ…私、ディーノさんにお話したいことがあるんです!!」
けど、次に出た言葉に反応し、笑顔からまじめな顔になる。
「そっか。で、話って?」
「あ……その……ここじゃなんなので、場所移動しませんか?」
ここは学校の校内で、聞かれてはまずい話のため、場所の移動を提案した。
魅真がディーノ(とロマーリオ)とともにやってきたのは、高級ホテルのカフェだった。
「あの……ディーノさん、ここは?」
何もかもが、自分が生きている世界とは違うので、高級感あふれるこのホテルの雰囲気に、魅真は緊張のせいで縮こまっていた。
「オレが泊まってるホテルだ。魅真が、場所を移動したいって言ってたからな」
「(確かに言ったけど…。でも、こんな高級ホテルに?ディーノさん、実はお金もち!?)」
ロマーリオのような、いかつい顔をした黒服の男を何人も連れているので、ただ者ではないと思っていたが、まさかのおぼっちゃんだったので、魅真は驚いた。
「んで、魅真の話ってのはなんだ?」
優しげな顔で問われると、緊張感がなくなり、ディーノを誘った目的を思い出す。
「あの……ディーノさんて、一体何者なんですか?」
けど、魅真の口から出た言葉に、笑顔が消え、またまじめな顔になった。
「昨日、ディーノさんの隣にすわっているロマーリオさんに、「ボス」ってよばれてましたよね。それに、昨日質問した時は聞きそびれてしまいましたけど、ツナ君とは、どういったご関係なのですか?あと、どんなお仕事をされてるんですか?」
「……なんで…そんなこと聞きたいんだ?」
「ただ知りたいからです。
昨日、あの銀髪の…スクアーロって人が持っていったはずの指輪が、何故か今朝、応接室の執務机の上にありました。
ツナ君は、スクアーロって人のことは知らないみたいですけど、あなたは知っていた。
それにスクアーロって人も、ツナ君のことを直接は知らなくても、なんらかの形で知ってるみたいだった。
それに、ツナ君の様子も明らかにおかしかったですし。スクアーロって人のことや、昨日の騒動のことは知らなくても、何か重大なことをかくしているのは確かです。今までも、そういうことありましたから」
「(おいおい…。ツナの奴、全然大丈夫じゃねーじゃねーか)」
ツナ本人は、昨日大丈夫と言っていたが、もうすでにバレバレだったので、ディーノは頬をひきつらせた。
「だから知りたい。ツナ君が、一体何をかくしてるのか?そして、何者なのか……。
そして、今回の騒動のこと。あと、指輪のことも」
指輪という単語が出ると、ディーノは一変して真剣な目になる。
「知ってどうするんだ?お前は指輪に選ばれてないんだぞ」
もうすでに、雲雀が雲の指輪に選ばれているので、指輪のことが魅真に知れるのは時間の問題なのだが、それでも、ツナが魅真には知られたくなさそうだったので、きびしい顔で問う。
「選ばれるとかよくわかりませんけど、そんなの関係ありません。あの指輪にどういう意味があるのかは知りませんけど、ただごとではない…何か、危険なことが関わっているのは確かです。その指輪に選ばれてしまった雲雀さんに、もし何かあったら嫌なんです。
だから、雲雀さんのことを守るためにも、指輪のことを知りたいんです」
「ツナのことを知りたいってのは?」
「ツナ君て、たまにすごいパワーを発揮するんです。いつものあの優しいツナ君からは、考えられないくらいに…。だから、ツナ君のパワーの秘密がわかれば、私も強くなれるかもしれない。強くなって、雲雀さんを守れるかもしれない。
あと、ツナ君は友達だから…。
そういった意味でも知りたいんです」
魅真が知りたい理由を話すと、ディーノは一呼吸おいて、口を開いた。
「オレは、イタリアの、キャバッローネファミリーのボスだ」
「キャバッローネ?ファミリー?」
そして、自分の身分を魅真にあかした。
よくわからない、聞いたことのない名前に、魅真は疑問符を浮かべる。
「イタリアンマフィアだ」
「マフィア!?」
けど、マフィアという単語を聞くと、魅真は驚いて目を丸くした。
マフィアという単語は、今までリボーンの口から何度か出ていた言葉だからだ。
「そしてツナは、同じイタリアンマフィアであるボンゴレファミリーの、次期10代目ボス候補なんだ。オレも、昔はリボーンに師事を受けていた。いわば兄弟弟子なんだ、ツナとは。
キャバッローネファミリーは、ボンゴレファミリーの同盟ファミリーでな。ボンゴレファミリーはかなりでかいファミリーだ。イタリアどころか、世界中のどのファミリーと比較しても、伝統、規模、格式、どれをとっても一番だ。
キャバッローネも結構な規模だが、ボンゴレには敵わねぇ。それぐらいでかいんだ」
以前、初めてリボーンと会った時、リボーンが言っていたことは本当のことなのだと、魅真は確信を得た。
そして、自分が初めて敵を倒した時に誘ってきたのは、遊びなどではなく、もしかしたら、本当の本当にボンゴレファミリーに勧誘してきたのではないか…とも。
「んで、ボンゴレリングとよばれているあの指輪は、そのボンゴレファミリーのボスの証の指輪なんだ。恭弥が持っていたのは、ボンゴレボスを守護する、守護者の指輪だ」
「守護者?」
「文字通り、ボンゴレのボスを守護する者のことだ。守護者は六人いてな。雲、雨、嵐、雷、晴、霧の、六種類の指輪がある。その指輪を、選ばれた守護者がつける。恭弥は、六人いる守護者のうちの一人、雲の守護者に選ばれた。だから指輪が送られたんだ」
「あのスクアーロって人が、指輪を欲していたのは?それに、なんでその人が奪っていった指輪が、雲雀さんのもとに?」
「あいつは、ボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーの一員だ。オレとは昔、マフィア関係の子供が多く通っていた学校の同級生なんだ。
指輪を奪っていったのは、ヴァリアーがボンゴレのボスと守護者になろうと思っているからだな。
指輪があるのは、実はスクアーロが奪っていったのはニセモノで、本物はオレが持っていたからだ」
「そうだったんですか。でも、何故指輪がくばられただけで特訓を?」
「あの指輪は、正式名はハーフボンゴレリングといって、対となる2つのカケラがそろって、はじめてボンゴレの後継者の証のボンゴレリングになるんだ。逆に言えば、2つそろわなければ、後継者にはなれない。
スクアーロが奪っていったニセモノのハーフボンゴレリングは、相当よくできているが、ニセモノだってわかるのは時間の問題でな。おそらく、10日ほどでバレるだろう…。
だから、ツナや恭弥にくばられた本物のボンゴレリングを、そのヴァリアーが奪い返しに来るだろうから、ヴァリアーに本物の指輪を奪われないように、ツナ達が本当の後継者になるために、特訓をしてるんだ」
「なるほど。そうだったんですね」
ディーノからいろいろと説明されると、魅真は得心がいった様子だった。
「話してくれて、ありがとうございます。それで、その話とは別に、ディーノさんに言いたいことが…」
「なんだ?」
「今朝はすみませんでした。武器を向けてしまって…」
「ああ、そんなことか。いいぜ。全然気にしてねぇからな」
魅真が今朝のことを謝罪をすると、ディーノはまったく気にしてない様子で、人のよさそうな笑顔でニカッと笑った。
「ありがとうございます、ディーノさん」
ディーノが許してくれた……というより、まったく気にしていなかったので、魅真はほっとして、満面の笑顔をディーノに向けた。
そんな魅真の笑顔を見ると、ディーノはドキッとした。
「よかった。実は、あれからずっと気になってたんです。いくらなんでも、失礼だったかなって……。本当によかった…」
「あ……ああ…。まあ、気にすんなよ」
そしてディーノは、少し頬も赤くなり、緊張しながら言葉をつむいだ。
「ツナ君と同じで、ディーノさんて優しいんですね」
もう一度満面の笑顔を見せると、ディーノは更に顔を赤くして、胸がドキドキした。
「そ……そんなことねぇ………ない…ぜ」
借りてきた猫のように、緊張してうまく話せないでいるディーノを見たロマーリオは、ディーノの今の気持ちを理解し、ニヤリと笑った。
そして、ニヤニヤと笑いながら、ひじでディーノをつついた。
「何、今更女のことでもじもじしてんだよ。ウブだねぇ~、ボスも」
「なっ!!うるせぇよ」
魅真に聞こえないように、小さな声で話しかけると、ディーノは照れながら、同じく小さな声でロマーリオに返した。
「どうしたんですか?ディーノさん。それに、ロマーリオさんも」
小さな声で話しているので、魅真には二人の会話の内容が聞きとれず、きょとんとしていた。
「あ………いや……その……」
「すまねぇな嬢ちゃん。なんでもないからな」
「そうですか?」
何かありそうだったが、あまり追究されたくなさそうだったので、疑問に思いながらも、それ以上は何も聞かなかった。
魅真がディーノとカフェで話してから、二時間以上が経った。
今は夜の8時半をすぎたところで、雲雀は自分の家の門の前で魅真を待っていた。
「遅い…!」
早く帰ると言ったのに、女子中学生が外に出ている時間としては遅い時間になっているので、雲雀はイライラしていた。
同時に、心配してもいた。
もうとっくに、夕飯の時間もすぎているし、早ければ、風呂に入っていてもおかしくはない時間だからだ。
「どこまで行ってるの?それに、なんであの男と……」
イライラの原因は、魅真が帰ってくるのが遅くて、風紀を乱しているから…というのも少しはあるが、根本的なものは、もっと別のもの。魅真が、ディーノと一緒にでかけていることだった。
その時、門の近くで、暗闇を照らすまぶしい光が見えてきた。
そしてその後、車が止まる音が響いた。
その車は、この平々凡々な町にはにつかわしくない、高級車のフェラーリ。
そしてフェラーリから出てきたのは、ディーノと、自分が待っている魅真だった。
後部座席にすわっていた魅真は、運転席から出てきたディーノに扉を開けられると、ディーノにエスコートされながら車から出てきた。
ディーノが扉を開けると、魅真は体を扉の方に向けて、ディーノがさしだした手をとって車から出ていて、まるでお伽噺の王子様とお姫様のようだった。
二人はどこかいい雰囲気になっており、門の前にいる雲雀には気づいておらず、笑顔でお互いを見ていた。
けど、魅真とディーノの存在に気づいている雲雀は、明らかに不機嫌だった。
眉間にしわをよせ、目を鋭くさせて、二人を凝視していた。
この時……魅真も雲雀も気づいていなかった。
実は……この時から、お互いの間に、亀裂が入り始めていることを……。
今はまだ……知らなかった……。
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