標的48 ツナの決意
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雲雀に戦いを挑まれると、XANXUSは座っていた椅子を立ち上がり、跳躍してフィールドの中に入ると、雲雀に向かって蹴りを出した。
だが雲雀は、トンファーで防御する。
その際に、学ランが肩から落ちるが、まったく気にしていなかった。
標的48 ツナの決意
「!!」
「…………!!」
「雲雀さん!?」
突然の出来事に、魅真達もチェルベッロも驚いた。
XANXUSは、雲雀のトンファーを踏み台にして再び跳躍し、宙返りをして着地をした。
「足が滑った」
「だろうね」
「ウソじゃねえ」
XANXUSが着地をすると、XANXUSの足もとで何か音がしたあと、アラーム音のような音がし、その直後爆発をした。
けどXANXUSは、爆発するほんの少し前によけたので、無傷だった。
「そのガラクタを回収しにきただけだ」
何事もなかったように着地をすると、XANXUSは言葉を続ける。
「オレ達の負けだ」
「ふぅん。そういう顔には
見えないよ」
雲雀はXANXUSに向かって走っていき、XANXUSの前まで来ると、XANXUSをトンファーで攻撃をした。
「ヒバリの奴、何をしとる!!機械仕掛けに勝ったというのに!!」
了平には、雲雀がなんでこんなことをするのか、理解できなかった。
フィールドの中では、雲雀とXANXUSの動きに反応したガトリングが動き、弾丸を連続で撃つが、雲雀とXANXUSはそれをよけながら戦っていた。
「安心しろ。手は出さねぇ」
けど、攻撃をしているのは雲雀だけで、XANXUSはよけているだけだった。
「好きにしなよ。どのみち君は咬み殺される」
そんなのは雲雀にはどうでもいいことで、攻撃の手を休めることはなかった。
「おのれ~~!!ボスを愚弄しおって!!」
「まてよムッツリ」
「ムッツリ!?」
自分が敬愛するXANXUSを愚弄されたので、レヴィは今にも雲雀に襲いかかりそうな雰囲気だったが、そこをベルが冷静に止める。
「勝負に負けたオレらが手ーだしてみ。次期10代目への反逆とみなされ、ボスともども、即うち首だぜ」
ベルがレヴィを止めたのは、それらのことが容易に想像できたからだった。
「では、あの生意気なガキを放っておけというのか!?」
「なんか企んでるぜ、うちのボスは」
「!? 何を…だ……?」
「知らねえよ」
「な…」
「マーモンかスクアーロなら知ってたかもね」
情勢は悪いというのに、それでもベルは、冷静に雲雀とXANXUSの戦いを見守っていた。
そして、雲雀とXANXUSが戦っているフィールドの中。そこに倒れているモスカの目の部分が動いており、雲雀を標的としていた。
だが、そんなことはまったく気づいておらず、雲雀はXANXUSに攻撃を続けていた。
「!」
何度か攻撃をすると、これはやばいと思ったのか、XANXUSは手を光らせると、その手で雲雀のトンファーを止めた。
「!!」
「手……出てるよ?」
手は出さないと言っていたのに、手を出したので、雲雀はそのことを指摘する。
「あやつ、ボスの動きをとらえているだと!?」
「アンビリーばぼーー」
XANXUSの動きをとらえているので、レヴィもベルも驚いた。
「くっ」
今のは無意識だったようで、XANXUSは悔しそうな顔をして、手をひっこめた。
「チェルベッロ」
「はい、XANXUS様」
「この一部始終を忘れんな。オレは攻撃をしてねえとな」
「!?」
手は出てしまったが、攻撃はしてないXANXUSは、チェルベッロにそのことを伝えるが、チェルベッロは、何のことかわかっていなかった。
そして、雲雀が次の攻撃をしようとすると、XANXUSはニヤリと、何か企むような濃い笑みをその顔に浮かべた。
XANXUSが笑みを浮かべた次の瞬間、雲雀の後ろから圧縮粒子砲が撃たれ、雲雀の足を攻撃した。
突然後ろからきた攻撃に対処しきれなかった雲雀は、その攻撃をくらってしまい、足の痛みに耐えれなったのか、ひざをついた。
「雲雀さん!!!!!」
この出来事に、魅真は顔をゆがめ、悲痛な声をあげた。
「な!!?」
「!?」
「ヒバリ!!」
山本も、いきなりやられた雲雀を見て、心配そうに叫んだ。
「「「「!!」」」」
その時、ミサイルが四人のもとにとんできて爆発するが、間一髪で了平と山本はよけ、獄寺もとっさに魅真を抱きかかえてよけた。
「? 何だ?」
「やっべ」
何が起こったのかよくわからないレヴィは、目をこらして見ているが、その間にも、ベルとレヴィのもとにもミサイルがとんできたので、ベルはいそいでよけた。
「ぬお!!」
しかし、レヴィはよけきれなかった。
「大丈夫スか?笹川兄!!」
「何が起きているのだ!?」
「大丈夫か?魅真」
「うん、平気。隼人君が助けてくれたから。ありがとう、隼人君」
「いや……」
「でもこれ、どうなってるの?」
あまりに突然のことに、何が起こってるのか、全員状況がつかめていなかった。
「………なんてこった。オレは回収しようとしたが、向こうの雲の守護者に阻まれたため、モスカの制御がきかなくなっちまった」
先程雲雀を攻撃したのも、今ボンゴレとヴァリアーを襲ったのも、すべてはモスカがやったことだった。
なんてこったと言いながらも、まるでXANXUSは、この時を待っていたかのようだった。
「なに!?暴走だと!!?」
その証拠に、XANXUSは口もとに笑みを浮かべていた。
「雲雀さん!!」
暴走したモスカを見た魅真は、雲雀が心配になり、フィールドの中に入ろうとした。
「待て、魅真!!」
けど、当然獄寺に腕をつかまれ、中に入るのを止められる。
腕をつかまれると、魅真は後ろへ顔を向け、獄寺を見た。
「中は危険だ。それに、今動いたらあぶね「はなしてよっ!!!!!!」
止められるが、魅真はつかまれた腕を力ずくでふりほどくと、すごい剣幕で獄寺に向かって叫んだ。
そんな魅真を見て、獄寺は動きが止まってしまう。
「雲雀さんっっ!!!」
そして魅真は、今のモスカの攻撃で壊れた柵の部分をみつけると、なんの躊躇もなく、フィールドの中に入るために、そちらの方へ走っていく。
「おい、待てって魅真!!」
「そっちは危険だぞ!!」
山本と了平も心配するが、魅真はまったくのおかまいなしだった。
山本の隣では、手をふりほどかれた獄寺が、呆然として固まっていた。どんな危険な目にあっても、雲雀を助けに行きたい。魅真の顔がそう言っていたからだ。
そのあと、近くで聞こえた爆発音ですぐに覚醒すると、獄寺は、ふりほどかれた手を強くにぎりしめ、悔しそうに顔をゆがめた。
一方魅真は、フィールドの前まで来ていた。
「! (このグラウンドの土、よく見てみると、ほんのわずかに盛り上がってるところがある。それに、他のところと、少しだけど色が違う。そっか!このフィールドは、生徒や先生が、全員帰った後でつくられたんだ。それから、まだそこまで時間が経ってないから、周りの土と同化せずに茶色い部分が目立ってる。なら…そこをよけていけば!!)」
煙の間に見える土を見て、瞬時にトラップがあるところとないところを見分けた魅真は、柵が壊れたところから中に入ると、トラップがある場所を器用によけて、雲雀のもとまで走っていった。
「ば、爆発しねえ…」
「どうなっているのだ?」
「たぶん、土の色や盛り上がりの具合で、トラップがあるとことないとこを見分けてんだ」
なんの躊躇もなく走っていってるのに、トラップがいっさい爆発しないので、山本と了平はそれをふしぎに思ったが、獄寺は、何故魅真がそれをできているのかを、一瞬で理解した。
それを、あの一瞬の間にやったのだと、三人は信じられないものを見るような目で、魅真が走っていった方向を見ていた。
「雲雀さんっ……。雲雀さんっ!!!」
煙がたちこめる中、魅真は雲雀を探して走っていた。
「あ……。これ、雲雀さんの…」
途中で雲雀の学ランをみつけると、一旦足を止めて学ランをひろい、学ランをひろうと、再び走りだす。
少し走っていくと、煙と煙の間から、雲雀の姿をみつけた。
「雲雀さん!!」
「魅真!?」
魅真が雲雀の名前を呼ぶと、雲雀は魅真の存在に気づき、信じがたそうな目をした。
「雲雀さんっ」
魅真は雲雀の前まで来ると、その場にしゃがみこみ、雲雀を抱きしめた。
「!!」
突然の抱擁に、当然雲雀は驚いて目を大きく開く。
「………魅真……?」
「よかった、無事だったんですね」
「何しに来たの?こんな危険な場所に」
「雲雀さんを助けに来たんですよ」
雲雀は目を丸くして驚いていたが、魅真はそんなことは気にせずに、途中でひろった雲雀の学ランを、雲雀の肩にはおらせると、体を離して雲雀と向かい合った。
「助けにって……どうやって?」
「そ、それは……雲雀さんをかついで…」
「君みたいに非力な女が?トラップがある地面を?この爆発が続いてる中で?」
痛いところをつかれ、魅真は思わずだまりこんでしまう。
「と、とにかく、ここから……」
ここから離れよう。そう言おうとした時、二人の近くにミサイルがとんできて、爆発が起こった。
「きゃっ」
爆発がすると、魅真は体を小さくし、同時に雲雀を再び抱きしめた。
魅真は雲雀を抱きしめ、必死に守ろうとしていた。
抱きしめているだけだし、モスカを止めようとしているわけではないが、それでも、雲雀が傷つかないことをただひたすらに祈りながら、強く抱きしめていた。
どんな考えでここまで来て、自分を助けると言い、どんな気持ちで、今自分を抱きしめているのかはわからないが、必死な気持ちだけは、魅真のその手から伝わってきたのでわかった。
魅真の必死な気持ちを感じとった雲雀も、魅真を守るように、魅真を強く抱きしめた。
モスカの動きは止まることなく攻撃は続き、グラウンドだけでなく、校舎や校舎に続く丘や、いろんなところにミサイルを撃った。
校舎も校庭も、どんどん傷ついていった。
そしてモスカは、ミサイルだけでなく圧縮粒子砲も撃ち、それは校舎に命中する。
「あ……圧縮粒子砲!?」
「無差別攻撃ではないか!このままでは、全員オダブツだぞ!!」
対決というより、もはや戦争と表現した方が正しいこの状況に、全員危機感を抱いていた。
「……フフ…。ぶはーはっは!!こいつは大惨事だな!!!」
しかし、煙がたちこめる中、XANXUSは今のこの状況を見て笑っていた。
「あいつ…笑ってやがる」
「あの野郎。はなっから、勝負に関係なく、事故をよそおって、皆殺しにする気だったんだな!!だからヒバリを挑発したんだ!!」
XANXUSの態度と発言に、獄寺はすべてを理解した。
一方、フィールドの中にいる魅真と雲雀は、XANXUSを睨むように見ていた。
「ハアハアハア…」
同じ頃、フィールドの外では、クロームが必死になって逃げていた。
けど、知らず知らずのうちに、フィールドの中に入ってしまった。
「おい!!!フィールド内は危険だぞ!!」
フィールドの中にクロームが入ったのを見た了平が、クロームに注意を促す。
「!?」
だが、時すでに遅く、了平の方に目を向けると同時に、足もとでカチっという音がした。
そして、電子音が響いた後、トラップが爆発した。
けど、間一髪のところを千種と犬に助けられたので、ことなきを得た。
「!!
千種……犬……!」
「ったく、世話のかかる女らびょん」
だが、安心したのもつかの間、今度はフィールド内にあるガトリングが反応し、三人の方へ銃口が向いた。
「ゲッ」
この、地面にはいつくばっている状態では、すぐに対応するのは難しいので、三人は顔をゆがめた。
「!!」
「しまった!!」
しかも、すぐ近くには、モスカが三人のもとへやって来た。
「やべえ!」
「挟まれた!!」
モスカは三人の近くまで来ると、体から圧縮粒子砲を撃とうとしていた。
「くそっ」
犬と千種は、自分とクロームの頭を低くさせ、地面に伏せた。
そこへ、ひとつの炎が三人のもとへ、すごい速さで近づいてきた。
ガトリングが発射され、モスカの体からは、圧縮粒子砲が発射された。
けど、その二つの攻撃は、大きな炎の壁によって防がれ、三人にあたることはなかった。
「!?」
「……?」
炎の壁にあたって溶けたガトリングの弾丸は、地面に落ちる。
そして、モスカの目がとらえた先には、グローブをはめた手と、その手から放たれる炎が映った。
「!! あの炎…!」
ガトリングの弾とモスカの圧縮粒子砲を防いだ炎に、XANXUSは目を見張った。
そのあとで、ガトリングは動きを止め、モスカの体からは、圧縮粒子砲がやんだ。
「…ボス」
そう……。その炎を放っていたのは……ガトリングの弾とモスカの圧縮粒子砲を防いだのは……犬と千種とクロームを助けたのは、ツナだった。
「あれは……」
「ツナ君!」
「じゅ…10代目!!」
「……」
ツナがやって来ると、魅真達(雲雀とクロームをのぞく)はうれしそうな顔をした。
「来たか。……だが」
クローム達は、なんとか危機を脱した。
しかし、もちろんこれで終わりではなく、今度はモスカの背中から、たくさんのミサイルが発射され、校舎やグラウンドにあたった。
「一体どーなっているんだ!?」
「モスカの奴、全てを破壊しつくすつもりみてーだな」
この並盛中学校にやって来たのはツナだけではなく、ツナと一緒に修業をしていたリボーンとバジルもだった。
「あの動きは人間じゃねーな。暴走しちまってんのか?」
先程発射されたミサイルは、校舎やグラウンドだけでなく、ツナのことも狙ってきた。
「カスから消えていく。それに変わりはねぇ」
ツナが来ると、何やら意味深なことを口にするXANXUS。
一方ツナは、上からミサイルがとんできたことに気づき、ミサイルをまっすぐに見据えると、グローブに炎を灯して空を飛ぶと、ミサイルに向かってまっすぐ向かっていき、手の炎でミサイルの弾を、すべて空中で爆発させた。
「な、何ー!?」
ミサイルの弾をあっさりと回避したツナに、レヴィは驚く。
「と……飛んでる!!」
獄寺、山本、了平もまた、初めて見るツナの姿に驚いていた。
「さすがツナ君!!」
けど魅真は、このツナの姿と、グローブに灯す炎で飛んだり攻撃したりしているのを、黒曜戦で見ていたので、驚きはせず、あっさりとミサイルを回避したツナに、称賛を送っていた。
ツナは右手のグローブの炎を強くすると、まっすぐ地上にいるモスカに向かって飛んでいき、まだかろうじて胴体とつながっていた左腕をもぎとった。
「な……何をしたんだ!?何だ?今の動きは!?」
「…………」
レヴィにはツナの動きが見えておらず、何がなんだかよくわからなかったが、XANXUSはツナの動きを凝視していた。
「おい、デクの棒」
XANXUSの視線に気づいてか気づかずか、ツナはモスカの腕を持っている方の手に、強い炎を灯す。
「おまえの相手は、オレだ」
そしてモスカのもぎとられた腕は、ツナの炎の力によって破壊された。
ツナの今の言動で、モスカの目には、『OGGETTO PERICOLOSO(危険な物体を発見)』、『CAMBIO BERSAGLIO(標的を変更)』、『DISTRUZIONE POTALE(殲滅せよ)』と出ていた。
モスカはツナだけをターゲットにすると、背中からミサイルを撃った。
全弾がツナにむかっていくが、ツナはそれをすべてよける。
「さ……沢田が!!」
「全弾が、10代目に!!」
「モスカの奴、ターゲットを絞ったな」
モスカはミサイルを撃つと、圧縮粒子砲を撃つが、それすらもツナは、横に移動してよけてしまう。
更に、休むひまもなく再びミサイルを撃つが、ツナは手に炎を灯すと、上に飛んでよけた。
「!!」
けど、飛んだ先に、モスカがツナの行く手をはばむような形で、ツナの目の前に跳躍した。
「10代目!!」
これでは、攻撃をされても、よけることは不可能に近いので、獄寺はツナを心配した。
ツナの前に跳躍したモスカは、体から圧縮粒子砲を撃とうとするが、ツナは圧縮粒子砲の銃口に拳をつきだして破壊し、そのままモスカを殴りとばした。
その勢いで、モスカは後ろにふっとんでいき、地面にたたきつけられる。
「すごい!!ツナ君」
「つ……強い!!」
「ああ」
「さすが10代目!!」
あのモスカを圧倒しているので、魅真、了平、山本、獄寺は、ツナを称賛した。
「ボ……ボス!!」
一方、自分達の側が圧倒的に不利になっているので、まずいと思ったレヴィは、ボスであるXANXUSの方を見た。
「……!?」
しかし、こんな圧倒的不利で、形勢が悪い状況であるにもかかわらず、XANXUSは、その顔に笑みを浮かべていた。
XANXUSが笑みを浮かべていることを知らないツナは、地面に降り、モスカの前に立った。
「さすがです!あんな機械兵器、沢田殿の相手じゃない!!」
モスカを圧倒していることで、バジルもツナを称賛していた。
「…だが、一つひっかかるな…」
「え?」
だが、後ろにいるリボーンは、バジルが言ったことを否定はしないが、何やら腑に落ちないことがあるようだった。
「モスカを全力でヒバリと戦わせて、勝ち越しを決めてから、皆殺しにすることも考えられたはずだ。なぜ、こんな回りくどいんだ?」
リボーンがひっかかっているのはそこだった。
「XANXUS……一体これは」
ツナはXANXUSの方に顔を向け、気になってることを問おうとした。
だがその時、まだやられてなかったモスカが、飛んでツナのもとへ向かってきたので、ツナはXANXUSに聞くのを一旦やめて、モスカの方に顔を戻すと、左手だけでモスカを受け止めた。
そして、右手に炎を灯すと、刀で切るように、手を上から下にふりおろした。
「おお!!」
「やったぜ!!」
「さすがツナ君!」
不意をつかれそうになっても、それでもモスカをものともせずに、あっさりと倒してしまったので、魅真、獄寺、山本、了平は喜んだ。
今度こそ倒したようで、モスカはひざをつき、動かなくなった。
その時、今のツナの攻撃で、溶けて隙間ができたモスカの体から、何かがずり落ちてきた。
「!?」
その落ちてきたものに、ツナは目を見張り、XANXUSは笑みを濃くした。
モスカの中から現れたのは人だった。
落ちていくことで、その人物の頭や体につけられていたコードのようなものがはずれ、血を吐きながら、その人物は、力なく地面に落ちていく。
地面に落ちたのは、ツナの祖父と言っていいくらいの年齢の、白髪の男の老人…。
その人物に、ツナと、特にリボーンは目を見張り、驚愕した。
いきなりモスカの中から人が出てきたので、目を見張り、驚愕したのは、もちろんツナやリボーンだけではなかった。
バジルも、レヴィも、ベルも、クロームも、魅真も、獄寺も、山本も、了平もだった。
「な…なんと…中から人が……!!」
額に灯った炎が消え、ツナはハイパー死ぬ気モードから、いつものツナに戻った。
「………え……こ……この人…9代目……!?」
モスカの中から現れたのは、ボンゴレファミリーの現ボスである、ボンゴレ9代目だった。
「!! そんな…なぜここに!?」
バジルが驚いていると、リボーンは救急箱を持って、9代目のもとへ走っていく。
そしてXANXUSは、こんな状況であるというのに、濃い笑みを浮かべていた。
「ど……どうなってんだ………?……え?なんで……モスカ……から!?」
当然ながら、この事態に、ツナは驚愕するだけでなく、顔が青ざめ、体が震え、混乱しているせいで、うまく言葉がつむげなかった。
そこへ、ツナの隣にリボーンがやって来た。
「おい、しっかりしろ!
!」
リボーンは心配して、9代目の頭に手を置くが、それだけで、重傷で相当にヤバいのだということを理解した。
「ちっ、モスカの構造………。前に一度だけ見たことがある………。9代目は……ゴーラ・モスカの動力源にされてたみてーだな」
「! 動力源!?」
「そんな!」
「ど……どーして!?」
「どーしてじゃねーだろ!」
「!?」
何がなんだかわけがわからず、まだ混乱しているツナの後ろから、XANXUSが声をかけた。
「てめーが9代目を、手にかけたんだぞ」
「オ……オレが……?」
XANXUSに事実をつきつけられると、ツナはますます混乱した。
「あ……」
けど、確かに自分は、先程モスカをその手で破壊した。そのせいで、9代目は重傷を負った。それは、間違いなかった。
そのせいで、ツナは更に動揺し、混乱し、顔が青ざめ、冷や汗をかき、9代目を傷つけてしまった、ふるえているその手を見た。
「!!」
その先に、9代目の姿が映る。
「やべーな。応急処置でなんとかなる傷じゃねえ…」
「そんな…!」
リボーンが、9代目が着ているスーツのようなものを勢いよくはがすと、体からは大量の血が流れていた。
「誰だ?じじぃを容赦なくぶん殴ったのは」
「! ハァ ハァ ハァ」
知らないとはいえ、間接的にとはいえ、9代目を思いっきり殴ってしまったのは事実なので、ツナはビクッとなり、目の前が真っ白になり、荒い呼吸をくり返した。
「誰だぁ?モスカごと、じじぃを真っ二つに焼き切ってたのはよぉ」
「!! そ、そんな…。ハァ ハァ」
それでもXANXUSは、容赦なくツナに事実をつきつけ、ツナの心をえぐるようにせめていく。
「オ……オレが…9代目を…」
成人していても、自分の意志とは関係なく人を傷つけてしまうのは辛いのに、まだ未成年で、体も心も未熟なツナには、あまりにも残酷な事実だった。
「………ちがう…」
だがその時、9代目の手が動くと同時に口から言葉が発せられ、ツナやXANXUSが言うことを否定した。
その言葉に、ツナ、リボーン、XANXUSは反応を示した。
「悪いのは……私だ……」
そう言った9代目は、口から血を吐いており、顔色は悪く、脂汗がその顔に浮かび、小さく呼吸をくり返していた。
「9……9代目!!」
「やっと会えたね…。綱吉君…」
「!!」
「すまない…。こうなったのは、すべて私の弱さゆえ…。私の弱さが………XANXUSを、永い眠りから、目覚めさせてしまった……」
「!!」
「!?」
9代目の言葉に、リボーンは過剰に反応を示し、ツナは意味がわからず、XANXUSは鋭い目を9代目に向けた。
「眠りとはどーいうことだ?XANXUSは、揺りかごの後、ファミリーを抜け、ボンゴレの厳重な監視下に置かれたはずだぞ」
「ゆりかご……?」
「8年前起きた、ボンゴレ史上最大のクーデターのことだ。反乱軍の首謀者が、9代目の息子XANXUSであるという恐ろしい事実は、機密扱いにされ、知るのは上層部と、この時戦ったボンゴレの超精鋭のみだがな……」
「XANXUSは…8年間、止まったままだったのだ…。あの時のまま、眠り続けていたのだよ。恐ろしいほどの、怒りと執念を増幅させて………」
9代目が言った通り、この時のXANXUSは、とても恐ろしい顔をしていた。怒りや憎悪といった感情をその心に抱いているのが、見てわかるほどに…。
「え……!??ど…どーゆー…」
「一体何が………」
「ゴホッ」
「ああっ」
ツナとリボーンが問うが、9代目が血を口から吐き出したので、その答えは聞けなかった。
「大丈夫ですか!?しっかりして下さい!!」
「綱吉君…」
「無茶しないで下さいっ」
「………いつも…」
「!?」
「いつも、君のことは…リボーンから聞いていたよ…。………好きな女の子のことや…学校のこと……友達のこと………。君は、マフィアのボスとしては……あまりにも不釣り合いな心を持った子だ……。君が、今まで一度だって、喜んで戦っていないことも知っているよ……。いつも眉間にシワを寄せ……祈るように拳をふるう…。だからこそ、私は君を……ボンゴレ10代目に選んだ……」
「……!? (XANXUSを選んだんじゃ…?)」
もう片方のハーフボンゴレリングをXANXUSに渡したので、てっきりXANXUSを選んだとばかり思っていたが、そうではなかったので、ツナは疑問に思った。
そして、その言葉を聞くと、XANXUSは反応を示す。
9代目は指をツナの額につけると、死ぬ気の炎を灯した。
「? (…死ぬ気の炎……………?すごくあったかくて懐かしい…………。懐かしい…?)
!
(オレ……この人を知ってる……!!)」
その時、ツナの頭に入ってきたのは、昔の思い出…。
幼い頃の……大体3~4歳くらいのツナと、そのツナをひざにのせて笑っている9代目、そして、昔の若い頃の家光と奈々。
そんな、心あたたまる光景だった。
「!!」
けど、その光景が頭に浮かぶと、9代目の炎が小さくなった。
「(火が、どんどん…小さく……!そ…そんな!!)」
9代目の指に灯っている死ぬ気の炎が、小さくなっていってるので、それがどういうことなのかわかったツナは涙を流す。
「すまない…。だが、君で……よかった…」
その言葉を最後に、9代目の手がツナの額から離れ、落ちていく。
「あ…。待って…!!」
ツナは落ちていく手を途中でとる。
「そんな……待ってください…!!9代目!!9代目ー!!!」
けど、どんなに呼びかけても、9代目は目を覚ますことはなかった。
ツナは涙を流し、リボーンは怒りをこらえるように、口をきつく結ぶ。
「よくも9代目を!!!」
「!?」
「9代目へのこの卑劣な仕打ちは、実子であるXANXUSへの、そして崇高なるボンゴレの精神に対する挑戦と受けとった!!」
「な!??」
「しらばっくれんな!9代目の胸の焼き傷が、動かぬ証拠だ!!ボス殺しの前には、リング争奪戦など無意味!!オレは、ボスである我が父のため、そして、ボンゴレの未来のために、貴様を殺し、仇を討つ!!」
「―――!!?」
「!」
「な…」
「なに!」
XANXUSが言ってることの意味がわからず、ツナ達は全員わけがわからない状態だった。
その言葉に反応した雲雀は、どこか気にいらなそうにXANXUSを睨みつけていた。
「な…なに言ってやがる!あいつが、9代目を!!」
「これが狙いだったんだな」
「え!?」
全員がわけがわからない中、いち早く、リボーンがXANXUSの狙いを察した。
「ただリング争奪戦に勝ち、次期ボスになったとしても、揺りかごの一件を知る連中は、XANXUSの就任に反対し、これからも抵抗するだろう。
だが、ツナを悪役に陥れ、弔い合戦で、9代目のカタキを討ったとなれば別だ。多くのファミリーから、絶対的な信頼を得ることができる。
それに、本来10代目となるはずだったツナより強ければ、自分が真の正統後継者であることの証明にもなる。そうなれば、抵抗勢力の排除もわけはねーぞ」
「ではXANXUSは、ボスとなるのと同時に、独裁体制をつくるために…!?」
「ああ、仕掛けられた罠だったんだ。事故であろうと、モスカがツナの守護者を殺れば、遅かれ早かれ、必ずツナが倒しに来ると読んでたんだろう」
「そんな…」
リボーンがXANXUSの狙いを話すと、ツナの目からは、ひっこんだはずの涙が再び流れ、手の上に雫が落ちた。
「そ……そんな事のために……!!」
「憶測での発言は、つつしんで下さい。リボーン」
「全ての発言は、我々が、公式に記録しています」
「あいつら…」
「やはりチェルベッロは、XANXUS側についてやがったんだ!!」
「好きにしやがれ。オレはもうキレてんだ」
「「!!」」
怒りに満ちているリボーンが、いつもよりも低い声で返せば、チェルベッロの二人は恐れを感じ、固まった。
「だが、9代目との誓いは守って、手はださねーぞ。………生徒の勝負にはな」
今にも攻撃しそうな雰囲気ではあるが、リボーンは攻撃をする気はなかった。
「オレがそう言っても、戦いが嫌いなオレの生徒がどーするのかは知らねーけどな…」
「……」
リボーンの発言のあとに、ツナはその場を無言で立ちあがる。
「XANXUS」
そして、静かにXANXUSの名前を呼んだ。
名前を呼ばれると、XANXUSは反応を示す。
「そのリングは……返してもらう……」
名前を呼ぶと、雷戦の時に奪われた自分のリングを返すように要求した。
「おまえに9代目の跡は、継がせない!!」
ツナはXANXUSの方へ顔を向け、強い決意をした、まっすぐな目でXANXUSを見た。
.