標的47 雲の守護者、出陣
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「よっ」
その夜……。霧の守護者の対決が終わった後、ディーノは河原にやって来た。
「魅真とおまえの勝負は明日になりそーだぜ。調子はどーだ?」
そこには雲雀もおり、部下に明日のことを聞いたであろうディーノが、明日の対決のことを、雲雀に報告しに来たのだった。
「試してみなよ」
雲雀はやる気満々で、余裕のある不敵な笑みをその顔に浮かべており、トンファーを構えた。
標的47 雲の守護者、出陣
次の日の朝。
魅真は、学校に行く前に、病院に行くことにした。
と言っても、どこか体の具合が悪いのではなかった。
行き先は、中山外科医院。
以前、バジルがこちらにやって来た時、バジルの手当てをするために、ディーノが手配した廃病院だった。
病院に行く理由は、クロームが心配だったのもあるが、今日の雲の守護者の対決のことが心配だったからだ。
とは言っても、雲雀のことはまったく心配しておらず、どちらかと言わなくても、心配なのは自分自身だった。
本当に、自分の力で、モスカを倒せるのかという……。
そんなことは、ある意味で杞憂に終わるだろうというのはわかっていた。
昨日の夜、家に帰っても雲雀の姿が見当たらなかったため、どちらが雲の守護者の対決に出るかという相談ができなかったが、相談などしなくても、絶対に雲雀が出そうな気がしていたからだ。
というよりも、戦いのことなので、雲雀が絶対に譲らないだろうというのは、容易に想像ができるから…というのが一番の理由だった。
なので、ディーノに相談をしても、いろんな意味で何も進展しないことはわかっているし、自分が強くなれるわけでもないが、それでもジッとしていられない魅真は、ディーノに会うために、中山外科医院に向かっていた。
何分か歩いていき、もうあとちょっとで中山外科医院に着くという時だった。
「きゃっ」
「あ……」
まがり角をまがろうとした時に、タイミング悪く、人とぶつかってしまった。
「すみません、大丈夫ですか?」
「大丈夫……」
今のはどちらにも非はなく、ただの偶然なのだが、それでもぶつかってしまったことに変わりはないので、魅真はぶつかった相手に謝った。
「あ……。あなた、クローム…さん?」
「あ……」
ぶつかった相手は、偶然にも、自分が心配していたクロームだった。
「ごめんなさい。考えごとしてたから」
「平気…」
ぶつかったはずみで、クロームは後ろに倒れて尻もちをついてしまい、同時に、持っていたかばんと三叉槍が落ちてしまったので、魅真は再度謝るが、クロームは魅真と目を合わさずに話しながら、体を起こし、淡々と荷物をひろっていた。
ぶつかってしまったことと、自分と目も合わさずに荷物をひろってるクロームの姿と言動に、魅真は気まずさを感じていた。
「あの、クロームさん」
「…なに?」
「体は……もう大丈夫なの?」
魅真は昨日の戦いで、クロームの内臓がないのを見たので、そのことを心配して、クロームに問いかける。
「…うん……」
特に何が…とは具体的には言われていないが、きっと昨日の対決で、内臓がないことを知られたからだと思ったクロームは、静かにうなずいた。
「ケガとかはしてない?」
「平気……」
「あ……あなたのこと、なんて呼べばいいのかな?」
「別に…どうとでも…」
「…ど、どこに行こうとしてたの?」
「犬と千種が……どこか行っちゃったから…」
「そ、そう…… (そういえば、置き去りにされてたっけ…)」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「(会話が続かない!!)」
何を話しても、クロームが一刀両断で、強制的に話を終わらせようとしているので、魅真はまた気まずくなった。
「(この子、昔の私と似たような感じなのかな?学校で何かあったのかな?それとも、家庭の事情か何か?それか、もとからおとなしい性格?まあ、骸達と違って、マフィアの囚人ではないみたいだから、それだけでわけありって感じはするけど)」
「あの……もういい?」
魅真がずっとだまったまま自分をみつめているので、もう聞きたいことは終わったのかと思ったクロームは、そこから立ち去ろうとした。
「え…?あ…待って!」
クロームがどこかに行こうとしたので、魅真はあわてて呼び止めた。
「…なに?」
「骸、元気かな?」
クロームのことだけでなく、骸のことも気になっていた魅真は、骸について聞いてみた。
「一応は…」
「一応?」
けど、クロームから返ってきたのは、なんとも曖昧でそっけない答えだった。
「昨日、力を使ったから、次はいつ出てこれるかわからないけど…」
「そう……。あ、大丈夫ならいいんだ」
今まで無表情で淡々としていたのに、魅真の口から今の言葉を聞くと、クロームはきょとんとした。
「なんで?」
「え?」
「なんで、骸様のことを気にかけるの?あなたは、前は骸様の敵だったって聞いてる…」
「え?なんでって……。そりゃあ、やっぱり…心配だから…」
魅真の口から、骸を気にかける理由を聞くと、クロームはびっくりして、目を丸くした。
その時だった。
急にクロームの体を霧が包みこんだ。
そして、霧が晴れると、そこには骸が立っていた。
正確には、クロームの体を介して、骸が実現化した。
「クフフ。昨日ぶりですね、魅真」
「え?そ、そうだね」
骸がクロームを使って実現化するのは、昨日の対決で見たが、いきなり変わったので魅真は驚いた。
それだけでなく、まともに面とむかって一対一で話すのは、一ヵ月以上前に起こった黒曜戦以来なので、ちょっと緊張していた。
「今日…でしたか?あなたか雲雀君の戦いは」
「え?ま、まあ……」
「緊張してますか?」
「うん。まあ……。今日の、私か雲雀さんの戦いに、すべてがかかってると思うと、なんか荷が重いな…って思って…」
「クフフ。別に、そんなこと、気にする必要ないじゃないですか」
「え?」
「君のような弱い力しかもたない者が、勝てるわけないでしょう。しかも、相手は人間ではなく、鉄の兵器ですからね。君のおもちゃのような武器で、敵うわけがない」
めずらしく元気づけてくれるのかと思ったら、以前と変わらずけなしてきたので、魅真は、自分でもそのことはわかっていながらも落ちこんだ。
同時に、昨日と同じで、心のどこかがもやっとした。
「…そんなこと……わかってるよ」
「?」
「私の力じゃ、ヴァリアーの誰にも敵わないことくらいわかってる。武器だって、せいぜい一般人の不良くらいにしか、通用しないことだって…。だから、今夜の戦いも、雲雀さんにまかせるしかないと思う…。
だけど……だからこそ強くなりたい。人にまかせなくてもすむくらいに。最後の砦になった時に、大切な者がやられないようにしたいの。
骸が前にかっこつけだって言ったことは、今は本当だと思ってる。だから、かっこつけで終わらないために、修業してる。だから、雲の守護者になったの」
「おや?この前は、勝てると思ってないけど、そんなのは関係ない…とか言っていませんでしたか?」
「確かにそうだけど……。でも、骸が言ったことも、間違いじゃないと思ったから…」
「そうですか。まあ、せいぜい砦が壊れないようにしなさい」
嫌味なのか激励なのかよくわからない言葉に、魅真はうれしそうに笑みを浮かべた。
「…何故、そこで笑うのです?」
笑うところではないのに、何故か笑ったので、骸はふしぎに思った。
「やっぱり、骸って本当は優しいんだなと思って」
そして、次に出てきた言葉に面をくらい、更にふしぎに思った。
「優しい?僕が?とんだ思い違いですね」
「そうかな?」
「そうですよ。大体、僕は一ヵ月前、あなたの大切な者とやらを傷つけた人間ですよ」
「そりゃあ…そうだけど…。最初は敵だったから、わからなかったけど…。でも昨日、骸を見てわかったの。本当は、仲間想いで優しい人なんだって…。
だって、骸がただ残酷なだけの人間なら、いくら昔助けてもらったといっても、犬と千種が、ここまで慕ってついてくるわけないもの。
だから犬と千種は、契約をして、あなたに自らその体をさしだして、力になろうとしたんだと思う。それが証拠だよ。たとえ自分の体がボロボロになってでも、あなたの力になりたい。
同時にあなたは、自分が犬と千種に憑依することで、あの二人を守っていたんじゃないかと思うの。自分は、強さに自信がある。だから守れる。もっと言えば、二人を守るためにも強くなった。
それだけあなたは……あなた達は、三人が三人とも、お互いに好きで、信頼してるってことだよ」
「……買いかぶりもいいところですね。あの二人は僕の手ゴマでしかない。第一に、僕はいい人間ではないと、昨日も言ったはずですよ」
「そんなことないよ」
骸は魅真が言ったことを否定するが、魅真もにっこりと笑い、骸の言うことを否定した。
「あのゴーラ・モスカって奴に、何があるかはわからないし、XANXUSが何をたくらんでいるのかは知らないけど……。あなたはいい人間じゃないと言いながらも、ツナ君をもてあそばない方がいいってXANXUSに言ってたし。だから、骸は本当は優しいと思うの。復讐者から、犬と千種を助けるために、おとりになったのが証拠だよ」
「……見たんですか?」
「あ………ご、ごめんなさい……。見るつもりはなかったんだけど、勝手に頭の中に入ってきて……」
「そうですか…」
あまり機嫌がよくなさそうな顔でため息をつく骸に、魅真はどこか気まずそうにしていた。
「ということは、あなたが急に僕に優しくなったのは、ただの同情ですか?」
「…えっ?」
「だってそうでしょう?この前までは敵だったのに、急に笑顔を見せて、気にかけて、優しくするなんて。同情以外の何ものでもない」
「そんな…!私は…」
「ただの同情で、僕に優しくしないでもらえますか?正直迷惑なんですよ」
冷たく突き放すような言葉に、なんと声をかけていいのかわからなかったが、次に言った言葉に、魅真はカチンときた。
「同情の何がいけないのよ!!」
そして、声を大きくして骸に叫んだ。
めずらしく声を荒げる魅真に、骸はびっくりした。
「私は骸じゃない!骸と同じ経験をしてすらいない!だから骸の気持ちはわからないもの!
それに、たとえ骸と同じ経験をしていたとしても、私は骸じゃないから、骸の喜びも、楽しみも、悲しみも、怒りも、苦しみも、悔しさも、痛みも、何もかもわからない!!わかるわけないじゃない!!」
見るからに大人しそうで、以前対面した時も、今も、どう見ても大人しくて弱々しい雰囲気をもつ魅真が、急に強く大きな声を出してきたので、骸は驚いて目を丸くする。
「…でも、想像することはできる…。
あなたが何に喜びを感じ、何を楽しいと思い、何に怒り、何に悲しみを抱いて、どんなことに苦しみを感じ、どんなことで悔しいって思うのか、何に痛みを感じているのか、それを想像することはできるの。だから人は、情というものがある…。だから人は、相手を思いやることができるの。
あなたもそうなんでしょう?情があるから、犬と千種とずっと行動をともにしてきたんでしょう?守ってきたんでしょう?」
「…………」
「前は初対面で、敵だったし、犬と千種を手ゴマだなんて言ってたから、あなたの表層しか見てなくて、あなたの優しさに気づかなかったけど、でも今は違う」
「え……?」
「今は、骸のことを優しいって思ってる。だから知りたいって思ってる。骸が、仮面をかぶって、自分を偽ってまで、二人を守ろうとしている優しさを…。
そして、骸が助けを求めるなら、私は力になりたい。守りたいとも思ってる」
「なぜ……」
前、黒曜戦での戦いで、魅真が自分に言ったことも不可解だったが、敵だった自分を、守りたい、力になりたいと言ってきたので、骸はますますふしぎに思った。
「前は敵だったけど……今は仲間だから……」
けど魅真は、そんな骸の様子を気にすることもなく、にっこりと笑った。
「だから、大切なものを守ろうとしている骸のことを、守りたいって思うの。だって、私も同じだから」
続けて自分の想いを語る魅真に、骸は呆然としていた。
「くっ……。クフフフフフ……クフハハハハハハハハ」
骸は、最初は目を丸くしていたが、急に愉快そうに笑いだす。
突然笑い出したので、今度は魅真が目を丸くして、わけがわからないというように骸を見た。
「僕が霧の守護者になって、君が雲の守護者になったから。だから仲間ですか?」
「そ、そうだけど……」
魅真が質問に答えると、骸は更に笑った。
何故骸がここで笑うのかわからず、魅真は疑問に思った。
「君はバカな人ですね。お人好しにもほどがある。ある意味で、沢田綱吉よりもバカです」
「へ…」
しかも、いきなりバカと言われたので、魅真はますますわけがわからなくなり、すっとんきょうな声をあげる。
この時の骸は、先程よりも幾分かやわらかい笑みを浮かべていたが、その理由は魅真にはわからなかった。
「おっと……そろそろ限界のようです」
「え?」
「この姿は、クロームの体を介して実現化しているだけですから。力のすべてを奪われているので、あまり長いこと、この姿ではいられないんですよ」
「そ……なんだ……」
昨日の霧の守護者の戦いで、どういう事情でクロームの体を借り、どういう事情で霧の守護者になり、今骸がどういう状況にあるのかを知っている魅真は、それだけ大変なのだと、表情を曇らせた。
「そこですよ」
「え」
「そういうところが、バカでお人好しだと言っているのです」
骸が魅真にバカだと言った理由は、もとは敵である自分を、本気で心配しているからだった。
けど、そう言われても魅真は、やはりわかっていなかった。
「それでは、僕は戻りますよ」
「うん。じゃあ、またね骸」
「ええ。arrivederci 魅真」
魅真にあいさつをされ、自分もあいさつを返すと、骸は魅真の頬にキスをした。
「えぇっ!?」
突然の骸の行動に、魅真は驚き、顔が真っ赤になった。
魅真は純日本人で、日本生まれの日本育ちだから、余計にだった。
「あ…あの、骸!ありべでるちって?」
今の言葉は、おそらくイタリア語だろうということはわかったが、それでもどういう意味なのかはわからないので、骸に問いかけるが、骸は何も答えず、クロームに戻った。
クロームに戻ると、クロームの閉じられていた瞳が開かれ、魅真をじっとみつめた。
先程、自分の頬にキスをしたのは骸でも、体はクロームのものなので、なんだか妙な感じもしていた。
そんな、妙な気持ちを抱いていると、クロームは、いきなり魅真の両手を、自分の両手で包みこむようににぎってきた。
「え?な…何…?」
突然手をにぎられたので、魅真は何事かとクロームを見た。
「私…あなたと仲良くする!」
そして、手をにぎってきたと思ったら、骸に変わる前と反対の態度をとられたので、目を丸くした。
「えっ…えぇ…?」
「骸様が、あなたと仲良くしろって」
「えっ……!?」
けど、次に出た言葉に目が点になる。
「(すっっっごい怪しい!!)」
当然のことながら、魅真は怪しんだ。
クロームは、骸に変わる前はそっけなかったのに、戻った途端に、急に自分と仲良くすると言い出したからだ。
「(何それ?それって、別にこの子自身が私と仲良くしたいとかじゃなくて、骸に何か言われたから?)」
しかも、それはクローム自身の意志ではなく、骸に言われたというのだから……。
言葉だけでなく、クロームの片方しか見えないその左目が、きらきらと輝いており、骸の役に立つためにがんばる!と言っているのが、ありありとわかった。
「(絶対に何かたくらんでる!!)」
もっと言えば、骸も自分の前に現れた時は、どこか冷たい感じだったのに、急にクロームに、自分と仲良くしろと命令したらしいからだ。
普段、あまり人を疑うことはしない魅真だが、クロームが急に態度を変えてきたことで、クローム自身に他意はないが、骸に何か裏があることはわかったので、クロームが仲良くすると言っても、どこか複雑な気持ちだった。
しかし魅真は、何故骸が、クロームにそのような命令をしたのかは、まったくわかっていなかった。
その後、クロームと別れた魅真は、中山外科医院に行った。
「あれ?ツナ君、リボーン君も」
中山外科医院に入ると、ツナとリボーンと遭遇した。
「あ、おはよう魅真ちゃん」
「ちゃおっス」
「おはよう、ツナ君、リボーン君」
偶然にもばったり出会った三人は、お互いの顔を見ると、微笑みながらあいさつをした。
「ツナ君は、これから修業?」
「うん、まあ……。魅真ちゃんは?」
「えっと……ディーノさんに会いに…」
「そっか…。あのさ、魅真ちゃん」
「何?」
「今日の戦いって……魅真ちゃんが出るの?」
ツナの口からその言葉が出てくると、魅真はドキッとなった。
「そのつもりだったけど…。やっぱり、雲雀さんが出た方がいいと思うし、雲雀さんが戦いに関することでゆずるわけないから、雲雀さんが出るんじゃないかな?」
「まだ話し合いはしてねーのか?」
「うん。昨日も今日も会ってないんだ」
たった数時間会えてないだけなのに、魅真はどこかしょんぼりとしていた。
「それに、話し合いなんて無意味だと思う。今も言った通り、雲雀さんが、戦いに関することでゆずるわけないし」
「そうか……」
「だから、安心して。ツナ君、リボーン君」
「「え?」」
「雲雀さんが出れば間違いないよ。絶対に勝って、リングは私達のものになるよ。
私みたいに弱い人間が出るより………確実…だよ……」
「………………」
「…魅真ちゃ…「ごめんね、ツナ君」
どこか暗い雰囲気になってしまった魅真を、リボーンはだまったままジッとみつめ、ツナは魅真に話しかけようとするが、魅真がそれを遮った。
「私、ちょっといそいでるから。じゃあ、また夜にね」
そして、適当に話を切り上げて、ディーノを探しだした。
そんな魅真に二人は声をかけず、じっとみつめていた。
魅真は、どこか暗い影を落としたまま、ディーノを探していた。
「あれ?魅真じゃねーか」
「ディーノさん…」
その途中で、偶然にもディーノに会ったので、魅真はディーノのもとに駆け寄っていった。
「どうした?こんな朝早くに」
「あ、えっと……」
「恭弥のことか?」
「へ?」
「ツナも獄寺も山本も笹川も、みんな今日のことが心配だったらしくてな。オレに恭弥のことを聞いてきたんだ」
「あ、いえ……違うんです」
「え」
四人とも、全員が同じ理由で自分を訪ねてきたので、きっと魅真も同じかと思ったが、違ったので、目を丸くする。
「えっと……私は、雲雀さんのことは心配ではないんです。雲雀さんは強いので、問題ないです。……心配なのは……自分で………」
「そっか……」
どういった理由で自分を訪ねてきたのかわかったディーノは、優しく笑った。
「茶でも入れてやるよ。こっちに来な」
「…はい……」
そして、魅真の話を聞くために、場所を移動した。
やって来たのは、給湯室だった。
そこでは、獄寺、山本、了平の三人が、よほど早くに来たのか眠っていた。
三人が寝ていることに多少驚いたが、三人が来ていたのは先程ディーノに聞いて知っていたので、そこまで驚いておらず、起こすのも悪いので、起こさないようにそっと歩いた。
ディーノは二人分のお茶を入れると、獄寺の隣の、ソファが置かれていない、テーブルのあいてるところに置き、ソファは三人が使っているので、近くに置いてある椅子を、お茶を置いた隣に持ってきて、向かい合ってすわった。
椅子にすわると、魅真は出されたお茶を飲む。
「やっぱり、自分に力がないのが心配か?」
「えっ…」
出されたお茶を飲むと、いきなり核心をついてきたので、魅真は驚いた。
「見りゃわかるって。魅真は修業中も、自分の力が弱いことを気にしてたからな」
「そうですか…」
けど、次に言われたことに納得をした。
「まあ、はっきりと言っちまうと、魅真はまだまだ弱いな」
自分でもわかっていたことではあるが、はっきりとディーノの口から告げられると、魅真はつきつけられた現実に、眉間にしわをよせた。
ディーノは裏世界をいくマフィアのボスで、説得力があるので、余計にだった。
「でもな、魅真。そんなことは気にすることはない」
「へ?」
「確かに魅真は弱いが、このままずっと弱いとはかぎらない。実際オレも、ツナや魅真ぐらいの頃には弱かったんだ。そこを、リボーンに師事をうけ、今の強さを手にいれた。人間、やってやれないことはねえ。何もしないままだと強くなれないが、このまま努力を続けていれば、きっと花開く日がくる。自分と仲間を信じて、日々努力と研鑽を続けろ。そうすりゃ、絶対に強くなる。魅真にはその素質がある。オレが保証するぜ」
「ディーノさん…」
ディーノの激励に、落ちこんでいた顔は明るくなり、ディーノの優しさと前向きな言葉に、魅真はうれしくなって、頬を赤くした。
「ありがとうございます、ディーノさん。私、がんばります!今はムリでも、いつか絶対、必ず、確実に強くなって、雲雀さんの隣に立てるように…。そして、雲雀さんや、大切な人達を守れるようになります。雲の守護者としてはじないように」
「おう、がんばれよ」
元気をとり戻した魅真を見ると、ディーノもうれしそうに笑った。
「本当にありがとうございます。なんだか、心がとても軽くなりました。ディーノさんて、本当に優しいから……。私、つい甘えてしまいます」
「オレとしては、いつでも甘えてくれてかまわねーぜ」
「本当ですか?」
「ああ」
「ありがとございます。ディーノさんて、本当に優しくていい人ですね」
優しくて、いつでも自分を受けいれてくれるので、そんなディーノが魅真は好きで、満面の笑顔になった。
けど、魅真とは対照的に、ディーノは落ちこむが、それを表情には出さなかった。
「あ、もうこんな時間。それじゃあディーノさん、私、学校に行かなきゃいけないので。また今夜」
「え?ああ…オレは、今日はちょっと」
「まだいそがしいんですか?」
「ん。まあな」
「そうですか。じゃあ、また明日来ますね」
「ああ、待ってる」
「じゃあディーノさん、本当にありがとうございました!失礼します」
魅真は床に置いておいたかばんをとり、お礼を言い、あいさつをすると、学校に向かうためにそこから去っていった。
ディーノは手をふりながら、笑顔で魅真を見送ったが、魅真がいなくなると、どこか悲しそうな顔をした。
「優しい…か…」
そして、魅真が言ったことをくり返すように、ぽつりとつぶやく。
「よ、ボス」
「うおっ!ロマーリオ」
そこへ突然ロマーリオが入ってきたので、ディーノはびっくりして、ロマーリオの方に顔を向けた。
「まーた告白しなかったのか?」
「こんな状況でできっかよ。つか、聞いてたのかよ?」
「まーな」
実は、扉のすぐ近くにいたので、魅真との会話は丸聞こえだった。
「ボス、好きなら好きだって、ちゃんと言わねーとダメだぜ。どうもあの嬢ちゃんは鈍いみたいだからな。その証拠に、さっきボスが言ってたことを、まったく理解していなかったじゃねーか」
「まーな」
魅真は、先程ディーノが言っていた、いつでも甘えてくれてかまわないという言葉の意味を、理解していなかった。
裏のない言葉だというのに、それでも気づかないというのは、相当な鈍さなので、ディーノは軽くため息をつく。
「そりゃあ、いつかは言うけど、まだ言えねーよ」
「え?」
「今は……特に、今日は大事な日だからな。余計な情報を入れて、混乱させたくねーんだ」
そう…。今日は雲の守護者の対決の日。たとえ戦いには出なくとも、今日の対決のことで悩んでいた魅真には、余計な負担をかけたくないというのが、ディーノが告白しない理由だった。
中山外科医院から歩いて数十分。魅真は並中の応接室に着いた。
「どこに行ってたの?」
応接室にはもうすでに雲雀がいて、魅真が来るなり、いきなり質問を投げかけた。
「中山外科医院っていう病院ですよ。ディーノさんに会いに……」
指定されている時間には、まだまだ余裕があるというのに、何故こんな質問をされるのかわからなかったが、魅真は素直に答えた。
答えると、雲雀の眉間にしわがより、目が鋭くなる。
「なんであの人に会いに行ったの?」
「なんでって……。ディーノさんに話したいことがあったからです」
「何を話してたの?」
「それは秘密ですよ」
さすがにプライベートなことなので、いくら雲雀が好きといっても、詳しいことは話さなかった。
ディーノに会いに行ったということは話してくれても、話した内容までは教えてくれなかったので、雲雀は不機嫌になる。
「あ、そうそう。そういえば、以前嵐の守護者の対決の時に、リボーン君が、遠くない将来、骸と戦えるかもしれないって言ってたじゃないですか。あの意味がわかりました」
そんな雲雀の心情などは露知らず、魅真はずっと話そうと思っていたことを、雲雀に話し始めた。
不機嫌だったが、骸の名前が出ると、雲雀は過剰に反応を示す。
「なんと!骸が霧の守護者だったんですよ。昨日、霧の守護者の対決に参戦してたんです」
次に魅真が言った言葉に、雲雀は更に反応し、ソファから立ち上がると、魅真の前まで来た。
「あいつは……復讐者とかいう奴らに連れていかれたんじゃなかったっけ?」
「なんか、特異な体質をもつ女の子の体を借りて、実現化してたんですよ。ちょっとの間しかいませんでしたけど、あっという間に敵を倒してしまって。黒曜戦の時は脅威を感じましたけど、味方側にいると、こんなにも頼もしいんですね」
昨日の対決のことを簡潔に説明する魅真。
本人はそんなつもりはないのだが、骸のことをほめる魅真を、雲雀は気にいらなそうにしていた。
「それに、前は気づかなかったんですけど、骸って意外と優しいんですよね。今日も話してみたら、そんなに悪い人ではなかったですし」
そして、今聞いた言葉に、更に眉間にしわをよせて、目を鋭くさせた雲雀は、魅真の腕をにぎる。
「え……雲雀…さん?」
いきなり自分の手をにぎってきたので、顔を赤くすると同時に、何故こんなことするのかわからない魅真は、雲雀をジッとみつめた。
「今日も話したって……どういうこと?」
「え?だから、中山外科医院に行く時に、偶然会ったんですよ。さっき話した女の子と。そしたら、いきなり骸に代わって、ちょっと話をしたんです」
「何かされた?」
「え…何かって?」
「六道骸にだよ。あいつが何もしないわけがない。何かされた?」
「な、何か…って……」
雲雀に言われ、魅真は、骸が去る時に頬にキスされたことを思い出し、顔を真っ赤にした。
「やっぱり何かされたんだね」
今の魅真の反応で、確実に何かされたのがわかったので、雲雀は問いつめる。
「…それは……」
内容が内容なので、魅真は言いにくそうにしていた。
「何……されたの?」
けど、雲雀は絶対に引き下がるつもりはないので、魅真に顔を近づけて詰め寄った。
「………頬に……キス…されました……」
仕方なしに、小さめの声で話すと、雲雀は今まで以上に不機嫌になった。
「君は…敵に対して無防備すぎる」
「敵って……。さっきも言いましたけど、骸は今は霧の守護者で、私達の仲間ですよ」
魅真が、自分が言うことに反論すると、雲雀は余計に不機嫌になる。
「知らない」
そして、顔を魅真からそらして、応接室から出ていってしまった。
魅真は、雲雀が不機嫌になったのはわかっていたが、何故不機嫌になったのかも、何故応接室から出ていったのかも、まったくわかっていなかった。
そして夜となり、魅真は雲雀と一緒に、並中へ行った。
「今日の対決は、僕が出るから」
「え?」
「君は外で見てればいい。これは決定だ」
「はあ……わかりました」
有無を言わせない感じだったが、自分でも、今夜の対決には雲雀が出た方がいいと思っていたし、雲雀がこう言うのは予想していたことなので、特に反対することはなかった。
だが、魅真は気づいていなかった。
何故、雲雀が今夜の対決に出ると言ったのかを……。
確かに、雲雀は戦闘マニアなので、自分が戦いたいからという理由もあった。
けど、もうひとつの理由は、昼間魅真が骸のことをほめていたから…というのも、大きな理由だった。
要は、骸に対抗意識を抱いていたのである。
その頃、並盛中学校では……。
「いいかてめーら!!何が何でも勝つぜ!!」
すでに、獄寺、山本、了平が集まっており、その中で獄寺が、自分の戦いでもないのに、妙にはりきっていた。
「おい、何言ってんだ?戦うの、魅真かヒバリだぜ」
「お前がいきりたってどーするのだ?」
「ぐっ。んなこたわーってんだよ!!」
当然獄寺の発言に対して、山本と了平はつっこんだ。
「10代目は、オレらを信頼して、留守にしてんだ。オレらの目の前で、黒星を喫するわけにはいかねーだろーが!!」
「ハハハ!変な理屈だな」
「てめーには一生わかんねーよ!!このっバカッ!!」
「タコヘッド!!オレもわからんが、なぜか極限燃えてきたぞ!!」
三人が話していると、そこへ、魅真と雲雀がやって来た。
「今日の主役達の登場だぜ」
「あ、武君!隼人君!笹川センパイ!こんばんは」
「君達……何の群れ?」
魅真と雲雀は三人をみつけると、魅真は気さくにあいさつをするが、雲雀は冷たく言い放つだけだった。
「んだと、てめー!」
雲雀の冷たい言い方に、獄寺はあっさりと血がのぼり、雲雀にくってかかった。
「まーまー。えーと、オレ達は…」
「応援に来たぞ!!」
「わあ、ありがとう」
「ふうん…」
ここでも、魅真は笑顔でお礼を言うが、雲雀は冷たい態度で顔をそらす。
「目障りだ。消えないと殺すよ」
そして、ぶっそうなことを言い放つ。
「ちょっ、雲雀さん」
雲雀がこういう性格なのは知っているが、言ってることが言ってることなので、魅真はあわてる。
「なんだ、その物言いは!!極限にプンスカだぞ!!」
当然今の言い方に、了平もブチ切れた。
「まーまー、落ち着けって。オレ達は、ぐーぜん通りかかっただけだから。気にすんな、ヒバリッ。なっ」
そんな中、唯一山本だけがにこにこと笑っており、大人の対応をした。
その時、魅真と雲雀の後ろに、モスカがやって来た。
モスカが地面に降り立った時の音に気づいた魅真と雲雀は、顔を後ろに向ける。
「そうか…。あれを」
モスカを見ると、雲雀は口もとに、うれしそうな笑みを浮かべる。
「咬み殺せばいいんだ」
もうすでに、戦う気満々な雲雀は、トンファーをとりだして構え、モスカもまた、体を起こすと構えをとった。
それからすぐにチェルベッロが来て、今夜の戦闘フィールドに案内された。
「ところで、魅真はいいのかよ?」
「いいって…何が?」
フィールドに向かって歩いている途中、獄寺が魅真に質問をしてきたが、いいのかと言われても、なんのことかわからないので、魅真は獄寺に聞き返した。
「今日の戦いのことだ。雲雀が出ることになっちまってるけど」
「ああ、そのことね。別にいいのよ。雲雀さんに、一方的に決められちゃったけど、私も雲雀さんが出た方がいいと思ってるし、雲雀さんは絶対に勝つって信じてるから」
にこにこと笑って、まるで心配していないというのは、雲雀のことを絶対的に信頼しているということなので、獄寺は少し落ちこんだ。
そして、少し話して歩いているうちに、すぐに戦闘フィールドがある運動場にたどり着いた。
魅真達よりも先に行った、今から戦う雲雀とモスカは、すでに戦闘フィールドの中に入っている。
「こ……」
「ここが…」
フィールドを見ると、全員呆然とした。
「そう。これが、雲の守護者バトルの戦闘フィールド」
「クラウドグラウンドです」
その戦闘フィールドは、有刺鉄線で囲われている、出入り口などどこにもない、円状の、プロレスのリングのようなフィールドだった。
「何ということだ…。運動場が!!」
更に、フィールドの中には、ガトリングが設置されていた。
「ガ…ガトリング!?」
有刺鉄線で囲われているだけならまだしも、一歩間違えたら死んでしまいそうな武器があったので、当然了平や獄寺は驚いていた。
「雲の守護者の使命とは、何ものにもとらわれることなく、独自の立場からファミリーを守護する、孤高の浮き雲。
ゆえに、最も過酷なフィールドを、用意しました。
四方は有刺鉄線で囲まれ、8門の自動砲台が30m以内の動く物体に反応し、攻撃します。
また、地中には、重量感知式のトラップが無数に設置され、警報音の直後爆発します」
もはやそこには、平々凡々な中学校の面影はなかった。
「まるで戦場ではないか!」
もうそこは、学校の運動場ではなく、戦場のようになっていたので、さすがの了平も冷や汗をかいた。
「怖けりゃ逃げろ」
「!?」
「てめーらのボスのようにな」
「ししし」
けど、裏世界の住人で戦いを常としているヴァリアーは、こんなものはどうってことはなく、更には了平達を挑発した。
「ふざけんな!!10代目は、逃げたんじゃねぇ!!!」
もともと気が短い方だが、自分が敬愛するツナをバカにされたので、獄寺はレヴィにくってかかる。
「ツナは来る必要ねーのさ」
けど、そこを山本が、獄寺の肩に手を置いて止めた。
「ヒバリはうちのエースだからな。あいつは負けねーって」
しかも、何気に挑発で返した。
「そうよ!雲雀さんは、誰よりも強いんだから!!絶対にモスカって奴には負けないわ!!」
山本だけでなく、魅真も便乗するように、ヴァリアーに言い放つ。
けど、それは雲雀に対する信頼で、挑発などではなかった。
「何を?」
「……フッ。エース……………」
ベルの隣にいるXANXUSは、山本が言ったことをつぶやいた。
「ぶはーはっはっ!!そいつぁ楽しみだ!!!」
そしてその後に、何故か大きく口をあけて笑い出す。
「………」
「!」
「あの野郎!」
そんなXANXUSを、雲雀は鋭い目で見ており、魅真と山本と了平は何も言わなかったが、獄寺はバカにされたと思って睨みつけた。
そして、XANXUSの声に反応したのか、モスカの体から機械の音が響き、雲雀はモスカに向き直った。
その後に、クローム、犬、千種が来て、彼らは丘にすわった。
「ヒバリーッファイッ!!!」
「「「「オーー!!!」」」」
対決が始まる前、魅真達はいつもの円陣を行った。
「コラ、芝生頭!!声が小ーせーぞ!」
「なぬ!?」
けど、いつもはりきっている了平が、今日は声が小さいので、獄寺はダメ出しをした。
「ヒバリ本人が入らんので、イマイチ燃えんのだ!!」
「(雲雀さんが円陣をやっていたら、それはそれで怖い気がする…)」
「しっかし、最初に一番円陣嫌がってた獄寺がこんなにやる気とはな」
「ったりめーだ!!10代目がいたら、きっとこうしたはずだ!! (負けんじゃねーぞ、ヒバリ……。10代目のために!!)」
獄寺の気合が入っていたのは、ツナを思ってのことだった。
「それでは始めます」
円陣が終わると、フィールドの中では、雲雀とモスカのリングの確認も終わり、いよいよ雲の守護者の対決が始まろうとした。
「雲のリング、ゴーラ・モスカVS.雲雀恭弥。勝負(バトル)開始!!!」
開始の合図が出されると、モスカの足の後ろの部分からジェットのような装備が出てきて、その直後に出てきた機械が発動すると、モスカは飛んで、雲雀にまっすぐに向かってきた。
「な!?」
「飛んだ!!!」
まさか飛ぶとは思っていなかったので、了平と獄寺は驚く。
モスカは雲雀に向かって飛びながら、右手の指の先から弾丸を撃つが、雲雀はまったくあわてておらず、トンファーを構えると、まずモスカの顔に一発お見舞いし、その後に、両方のトンファーで、モスカの両腕を破壊した。
顔の部分は陥没し、右腕は完全にちぎれてしまい、左手も、切断はされていないが、かろうじてつながっているくらいで、今にもちぎれそうなものだった。
両腕を破壊されたモスカは仰向けに倒れ、機械がスパークする音が何度かした後、爆発してしまった。
「………………」
しかもそれだけでなく、あの一瞬の間に、モスカが持っているハーフボンゴレリングを奪った雲雀は、無言のまま、自分が持つハーフボンゴレリングと、モスカから奪ったハーフボンゴレリングを組み合わせて、雲のボンゴレリングを完成させた。
「やったあ!さすが雲雀さん!!」
あっさりと勝った雲雀を見て、魅真は目を輝かせて喜んでいた。
「な……」
けど、喜んでるのは魅真だけで、他の、獄寺、山本、了平の三人は、口をあけて呆然としていた。
「え…」
ヴァリアー側では、レヴィもベルも、暗殺部隊のボス補佐のモスカを一瞬で倒してしまったので、呆然としている。
「……」
更には、この対決を仕切っているチェルベッロも、呆然としていた。
「これ、いらない」
「へ?」
それだけでなく、この争奪戦の目的のものであるボンゴレリングをいらないと言った上に、自分に渡してきたので、リングを渡されたチェルベッロはショックを受け、戸惑っていた。
「あの…」
雲雀はリングを渡すと、そのチェルベッロの前を通りすぎ、ヴァリアーの前に立った。
「さあ、おりておいでよ」
「!」
「そこの座ってる君」
ヴァリアーの前に立つと、XANXUSに声をかける。
「サル山のボス猿を咬み殺さないと、帰れないな」
雲雀がヴァリアーの前に立ち、XANXUSに声をかけたのは、XANXUSと戦う気だったからだ。
雲雀はやる気満々で、今モスカと戦ったばかりだというのに、再びトンファーを構えた。
「なぬ!」
「なぬじゃねーよ、タコ。それ以前にこの争奪戦、オレらの負け越しじゃん。どーすんだよ、ボースーー」
「………」
確かにベルの言う通り、今の戦いで、雲雀がモスカを倒して、雲のリングを手に入れてしまったので、ボンゴレの勝ちとなってしまい、自分達の負けとなってしまった。
けど、ベルに問われても、XANXUSはモスカに目をやると、不敵な笑みを浮かべた。
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