標的46 骸VSマーモン
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「クフフ。クフフフ」
霧の中から突然聞こえる、あの独特の笑い声。
「!!?」
「ムム?男の声…?」
クロームのものでない男の声に、魅真、ツナ、獄寺、山本の四人は目を見張り、マーモンはふしぎに思った。
標的46 骸VSマーモン
声が聞こえたあと、急に床にひびが入り、それは一直線に砕けながら、マーモンのもとへ向かってきた。
「!!」
その攻撃を、マーモンはくらってしまう。
「ムギャ!!」
マーモンは攻撃をくらうと、そのまま仰向けに倒れた。
「クフフフ。随分いきがっているじゃありませんか」
攻撃と同時に霧が晴れていき、そこからクロームではない、ひとつの影が現れた。
「マフィア風情が」
それは、六道骸だった。
「だ…」
「誰だ…?」
骸と初対面のバジルと了平は、当然ながら、目の前にいる骸のことはわからなかった。
「んー?」
「娘が…」
「………」
ベルとレヴィは、クロームが見知らぬ男性に変わったので、どういうことかと思い、XANXUSは何も言わないが、骸を凝視しており、その顔は、先程よりもどこかけわしかった。
「六道骸…!!間違いない」
「やっぱり、骸なんだ。大丈夫だったんだね」
「骸……。無事だったんだ…」
やはり、クロームが骸だったので、魅真とツナと獄寺の三人は目を見張り、魅真とツナは、どこかほっとしていた。
「お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ……………」
骸はその場を立ち上がると、ツナにあいさつをする。
「輪廻の果てより」
「………」
そして、顔だけをツナに向けた。
その顔に浮かべられた不適な笑みを見ると、ツナは背筋が凍った。
「奴が、霧の守護者の正体なのか、コラ」
隣では、コロネロがリボーンに問うと、リボーンは答える代わりに、ニッと意味深な笑みを浮かべた。
その笑みは、コロネロの質問に、イエスと言ってるものだった。
「……………ウム。六道骸…。どこかで聞いた名だと思ったが、思い出したよ」
骸の前では、マーモンが倒れた体を再び宙に浮かせていた。
「たしか、一月程前だ。復讐者の牢獄で、脱走を試みた者がいた。そいつの名が、六道骸」
「なあ!!」
「あの鉄壁と言われる、復讐者の牢獄を……」
「あの、怪しくてあぶなそうな人達から逃げてきたんだ…」
「ま…っ、また脱走したのーー!!?」
「だが、脱走は失敗に終わったはず。更に脱走の困難な、光も音も届かない、最下層の牢獄にぶちこまれたと聞いたよ」
「え…?」
「!!」
「………………」
骸が今おかれている、過酷な現状を聞くと、ツナと魅真は眉間にしわをよせ、千種はどこかけわしい顔をしていた。
「クフフフ。ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網も、たかが知れてますね」
「ム」
「現に僕は、ここに在る」
「面倒くさい奴だなぁ。いいよ、はっきりさせよう。
君は、女についた幻覚だろ」
マーモンのフードの中が再び強く光ると、そこから雪が飛び出てきた。
「おや」
体育館の中を、すごい冷気と吹雪が舞い、骸の足もとが凍りついた。
「うわあ!!」
「きゃあ!!」
「吹雪です!」
「寒い!凍えて死んでしまうぞ!」
戦いを見ている魅真達も、マーモンの幻覚にかかってしまった。
「おやおや?」
対して骸は、体全体の半分以上も凍ってしまっているというのに、余裕の表情だった。
「幻覚でできた術士に負けてあげるほど、僕はおひと好しじゃないんだ」
氷はどんどん骸の体を覆っていき、何分もしないうちに、骸は完全に凍ってしまった。
しかし、骸の表情は変わらず、その顔には余裕の笑みを浮かべている。
「ああ!」
「ウソ…。やられちゃった…」
「完全に凍ってしまったぞ!!」
「じゃあ、あの骸は…幻覚!?」
「そんな…」
骸はあっさりとマーモンにやられてしまったので、魅真達は驚愕する。
「さて、化けの皮をはがそうか」
吹雪がやむと、マーモンのフードの中からは、今度は鉄でできたハンマーが出てきた。
「もっとも、砕け散るのは、さっきの女の体だろうけどね」
そして、すごい勢いで、骸に向かってまっすぐに飛んでいった。
「骸っ!」
「ああっ」
「やべぇ!」
全身を氷づけにされて、動けないところを攻撃されたらひとたまりもないので、魅真、ツナ、山本は心配になった。
しかし、そんな心配は杞憂に終わった。
氷づけにされた骸の右目は、数字が「六」から「一」に変化し、その直後、骸の前に、床からつるが出てきてマーモンに絡みつき、がんじがらめにした。
「!!」
「え!?」
「つる…?」
「!?」
そのつるはマーモンに巻きつくと、つるについていたつぼみが開き、花を咲かせた。
「蓮の……花………」
「クフフフ。誰が幻覚ですか?」
「ムグ!!」
骸の全身を覆っていた氷はとけ…正確には、マーモンの幻覚が崩された。
「何て……力だ…!く……苦しい…」
巻きついた蓮のつるは、ギリギリとマーモンをしめあげた。
「うわ……あいつ何者?」
アルコバレーノの一人であり、ヴァリアーの幹部であるマーモンを圧倒している骸に、ベルは驚いていた。
「あのバイパーを圧倒してるぜ…………」
「あれが、ツナの霧の主義者、六道骸だ」
驚いているのは、同じアルコバレーノであるコロネロもで、驚いているコロネロに、リボーンはどこか自慢そうにしていた。
「やっぱり、本物なんだ…」
「やっぱ霧の守護者は、六道骸だったんだね」
「しかし…だとしたら、さっきまでの女はどーなるんですか…」
「クロームと骸をわけて考えちゃダメだぞ。クロームがいるから骸は存在し、骸がいるから、クロームは生きていられるんだ」
「……!?」
「どういうことなの?」
「い…意味わかんないよ」
「今は、こーするしかねーんだ」
リボーンがクロームと骸について説明するも、魅真達にはわけがわからなかった。
ますます疑問に思ったツナ達がリボーンに問うたあとで、リボーンは小さな声で、ボソっとつぶやく。
「さぁ……どうします?アルコバレーノ。のろのろしていると、グサリ……ですよ」
「ムゥ!!」
変わらず、余裕のある笑みで骸に問いかけられると、マーモンはおしゃぶりを輝かせて、力をふりしぼると、蓮を枯れさせた。
「図にのるな!!」
蓮の花から逃れると、マーモンはたくさんの分身を出した。
「惰弱な」
けど、骸は右目に死ぬ気の炎を灯して、目に刻まれた数字を「四」に変えると、持っている三叉槍で、一気にマーモンの分身を消した。
分身の正体は、マーモンが腰に装備しているトイレットペーパーのような紙で、骸が切り裂くと、紙が宙に舞う。
「!!」
「あの目の炎は!!格闘能力(スキル)の修羅道だ!!」
「ムムゥ!!格闘のできる術士なんて、邪道だぞ!!輪廻だって、僕は認めるものか!!」
「ほう」
「人間は、何度も同じ人生を無限にくり返すのさ。だから僕は集めるんだ!!
金をね!!」
マーモンがそう言うと、頭の上のファンタズマは、大きな硬貨のようなものに変わった。
その瞬間、体育館の空間が大きくゆがみ、筒のような形となった。
「きゃっ」
「わあっ」
「うおっ。床が!」
「バイパーの奴、力全開だぜ」
「そーするしかねーだろーな」
このマーモンの幻覚に、魅真やツナや山本は落ちそうになっていた。
コロネロは相棒の鷹につかまり、リボーンは何やら細いものに変化したレオンにつかまって、宙に浮いていた。
「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか。面白い……。だが、欲なら僕も負けません」
こんな状況でも骸は笑っており、せまってくる空間の壁を止めるようにして、三叉槍の槍の先と棍の先を、空間の壁についた。
すると、ゆがんだ壁のいたるところから、蓮の花が巻きついた火柱が、縦横無尽に出現した。
「なに!?」
このすごい幻覚に、マーモンは驚いた。
「す…すんげっ」
「夢でも見ているのか…。う…うぶ」
マーモンだけでなく、ベルとレヴィも幻覚にかかり、驚いていた。
「ぐむ…。ふらつく…」
「…吐き気が…するぜ…」
「幻覚汚染がはじまっているぜ、コラ」
「ああ。脳に直接作用する幻覚を、これだけたてつづけにくらってんだからな」
「う……」
「!! ぐっ」
リボーンとコロネロ以外は、骸とマーモンの幻覚にやられていた。
「ムッ。これほどの幻術能力……。おまえどこで…」
「地獄界にて」
「ふざけるな!!」
今の骸の発言が気にさわったマーモンは、再びフードの中から冷気をとばして、火柱を凍らせた。
それでも骸は、余裕の笑みを浮かべたまま、あの独特の笑い方で笑っている。
「うっ。うう…頭がっ…!!」
「私……も…」
「ツナ…?魅真…?」
「10代目!!魅真!!」
「沢田!!真田!!」
その中で、魅真とツナは、頭に強烈な痛みを感じていた。
「頭が…痛い…!!」
「オレも…。頭が…われそうだ…」
「大丈夫か、ツナ?魅真?」
「何だ……?この感じ…」
「何か……変な感じが…」
二人がそう言った瞬間、二人は水の中に浮遊している感覚になった。
「!? (ここ…は…水の……中…?)
!!?」
そこは、光がまったくあたらない真っ暗闇。
その中に、円柱型のガラスの容器があり、中には水が入れられ、その中に骸が閉じこめられていた。
手足や首に、太い鎖がついた大きな枷をつけられ、体中の至るところにテープがついており、体は太く大きな鎖でがんじがらめにされて、拘束されている。
右目にはチューブのようなものがついており、まるで能力を封印されているかのようだった。
口には酸素マスクがついており、頭の周りにあるたくさんのコードや管で、かろうじて生命を保っていた。
「(骸……?え……何?ここ…)」
突然頭の中に流れてきた映像に、魅真は瞠目した。
「つっ…。頭……が……」
「うっ!!!今度は頭の中に何か入ってくる……」
「魅真!?10代目!?」
ツナも魅真と同じものを見ており、魅真と同じタイミングで苦しみだした。
次に二人の頭の中に入ってきたのは、骸と犬と千種の三人が、復讐者の牢獄から脱獄した時のもの。
三人は、復讐者の牢獄から脱獄したはいいが、すぐに追っ手が来てしまい、もう逃げられないと諦めかけていた。
そこで骸は、三人バラバラになって逃走しようと提案をした。
自分一人なら何とかなるが、犬と千種がいては足手まといだと言った。
けどそれは本心ではなく、二人が自分から離れていくように、ちゃんと逃げきれるようにと、仕向けているようにも思えた。
「(これは……骸の記憶…?)」
結局復讐者達に追いつかれ、骸はつかまってしまった。
否…わざとつかまった。
骸をつかまえた復讐者の一人が、「ナカマヲタスケルタメオトリニナルトハ…………。マアイイ…。シュハンハコノオトコダ」と言い、逃げた犬と千種のことは放っておいて、骸を牢獄へ連れ帰り、先程の最下層の水の牢獄に閉じこめた。
その後に流れてきたのは、黒曜ヘルシーランドでの出来事。
クロームの体を借りた骸と、家光が対面していた。
そこで家光は、逃走中の犬と千種の保護の責任をもつ代わりに、ツナの霧の守護者になってほしいと頼んでいた。
骸は、特異な体質をもつクロームの体を借りても、わずかな時間しかこちらにとどまることはできないと言ったが、家光はそれでもかまわないと、骸に、霧の守護者になってもらいたいと頼みこんでいるシーンだった。
「(家光…さん…?そう…だったんだ…。だから……骸は……)」
何故、犬と千種はいるのに、骸はいないのか。何故クロームがいるのか。何故クロームが骸になったのか。何故、マフィアを憎んでいるはずの骸が、霧の守護者になったのか。それらのことを、今流れてきた記憶で、魅真は知った。
「骸!」
「骸……」
その理由を知ったのは、魅真だけでなくツナもだった。
映像が途切れると、ツナと魅真は顔をあげた。
目の前では、クロームの体を借りた骸が、自分に襲いかかってきているマーモンの分身を、三叉槍を回転させて、防御していた。
「とった」
「!」
その横をすりぬけて、本物のマーモンが、骸に近づいた。
「死ね!」
マーモンは、フードを大きく広げると、骸に襲いかかった。
フードは骸を包みこみ、その周りに巨大化し、内側に長く大きなとげがついた、輪になっているファンタズマがかこむ。
そして、ファンタズマは縮んでいき、そのとげで、骸ごとフードを刺す。
その際に、グチャッという嫌な音が響いた。
「きゃああっ」
「ああ!!」
「お…おい!!」
「骸さん!」
「……!!」
この状況には、骸と長年行動をともにしている犬と千種も心配になった。
嫌な音がすると、何も声や音が聞こえなくなった。
「……!! バカな!!」
けど、それは一瞬のことだった。
次の瞬間には、マーモンのフードは、中から破られた。
破ったのは、もちろん骸。
骸は内側から、蓮の花で、マーモンの幻覚を破ったのだった。
「堕ちろ。そして巡れ」
破られたマーモンのフードは、あたりに飛び散った。
そして、蓮の花は姿を消し、骸の指の間には、自分がもつハーフボンゴレリングと、マーモンがもつハーフボンゴレリングがあった。
骸は、フードに包まれた時に、マーモンのリングも奪いとっていたのだ。
「………」
「バカな!あのマーモンが…!!」
レヴィと、ベルも何も言わないが、マーモンが破られたことに、とても驚いていた。
「勝った…」
「圧倒的だぞ…」
「すごい…」
傷一つつくことなくマーモンを倒してしまったので、魅真と了平は称賛していた。
「へへ」
そんな彼らの反応に、犬は得意気に笑う。
「(これが…骸だ…)」
骸の圧倒的強さに、ツナも目を見張っていた。
「このリングを1つに合わせるのですね?」
「は…はい…」
驚いていたのはチェルベッロも同じのようで、骸に問われると、どこか気がぬけたように返事をした。
「まだだよ!!!」
その時、骸の前でマーモンの声が響いた。
見てみると、霧が一か所に集まって、マーモンの姿を形作っていた。
まだやられていなかったのだが、それでも骸は驚くことなく、冷静なままだった。
「ハァ…ハァ…。少し遊んでやれば、図に乗りやがって!!ハァ…ハァ…。僕の力は、まだまだこんなものでは…!
!?」
荒い息をしながら、再度骸に挑もうとするも、目の前に骸の姿はなかった。
「ご存知ですよね?」
骸は、マーモンの頭上…まだ崩れていない、ゆがんだ空間の床に立ち、マーモンを見下ろしていた。
「!!」
「幻術を幻術で返されたということは、知覚のコントロール権を、完全に奪われたことを示している」
「!!?」
骸が話していると、マーモンの頭の上に浮いてるファンタズマが、マーモンの首に巻きつき、マーモンの首を締めあげた。
「グゲッ。やめろ!ファンタズマ!!」
マーモンはふりほどこうとするが、それは叶わず、同時に、マーモンがいるところを中心に床にヒビが入った。
「さぁ、力とやらを、見せてもらいましょうか?」
それだけでなく、床全体が崩れはじめ、たくさんの瓦礫が落ちていく。
「さあ」
骸の右目は、いつの間にか数字が一変わっていた。
これは、骸の地獄道だった。
「ムギャ!!!」
マーモンがいるところは完全に床が崩れ、足場をなくしたマーモンは、下へ落ちていった。
「落ちるー!」
「おっと!」
この空間にいるツナも幻覚にかかり、幻覚にかかって落ちそうになっているツナを、山本が腕をつかんで阻止した。
「クハハハハ!!どうですか?アルコバレーノ。僕の世界は!!」
マーモンを追うように骸も一緒に落ちていき、細く蛇のようになると、マーモンの口の中に入っていった。
「「!!」」
この光景に魅真とツナは驚き、目を見張った。
骸は、マーモンの口に、吸いこまれるように入っていく。
「んぷっ」
そして、完全にマーモンの中に入ると、マーモンの体がふくれあがった。
「ンムーッ!!!」
すると、次々に泡がたつようにふくれあがり、それがくり返されると、一気に丸く、大きくなっていった。
「ムムム!!!やめろ!死ぬっ!死ぬ~~!!」
フードはどんどんふくらんでいき、マーモンを圧迫していく。
それは、死んでしまうと思うくらいの、強い力だった。
「君の敗因はただ一つ。僕が相手だったことです」
マーモンの中では、骸の右目が怪しく光っていた。
「ギャ」
そして、とうとう中から破裂し、マーモンは粉々に砕け散った。
「「………!!」」
「「!!」」
破裂したことで、ボンゴレ側もヴァリアー側も驚いた。
マーモンが破裂すると、マーモンが創った、ゆがんだ空間は消えていった。
もとに戻った体育館の上部には、破裂した際に起こった煙があり、床の煙が漂う場所には骸がいた。
骸の周りには、マーモンのフードの切れ端が舞っていた。
「な……」
あまりに圧倒的、なんの苦戦もせずに倒してしまったので、ツナ達は呆然としていた。
「これで………いいですか?」
骸は、勝利条件となる、二つのハーフボンゴレリングを組み合わせて、完成されたボンゴレリングを、チェルベッロに見せた。
「―――………」
「………」
完成された霧のボンゴレリングを骸に見せられると、チェルベッロの二人は、何事か話していた。
「霧のリングは、クローム髑髏のものとなりましたので、この勝負の勝者は、クローム髑髏とします」
少しすると、チェルベッロの一人が、骸…クロームの勝利を宣言した。
「あのバイパーが…」
「粉々かよ」
コロネロとベルは信じられずにいたが、特に心配するわけでもなく、ベルに至っては笑っていた。
「え…ちょ……っ、そんな…。そ…そこまでしなくても…」
「そうよ。あんなにするなんてかわいそうじゃない」
けど、マーモンの敵である魅真とツナは、マーモンの身を案じていた。
「この期に及んで、敵に情けをかけるとは…。どこまでも甘い男ですね、沢田綱吉。それに君も、相変わらず甘い女だ、真田魅真」
二人が言ったことに、骸は呆れて魅真とツナを見た。
「心配無用………といっておきましょう」
「!?」
「え……?」
「あの赤ん坊は逃げましたよ。彼は最初から、逃走用のエネルギーは、使わないつもりだった…。抜け目のないアルコバレーノだ」
骸が言った通り、マーモンは霧となって、体育館にある上の窓から逃げていた。
「………ゴーラ・モスカ。争奪戦後、マーモンを消せ」
XANXUSの口から出たのは、なんとも無慈悲なもので、命令されると、ゴーラ・モスカは返事をする代わりに、口の部分から煙を吐いた。
「まったく。君は、マフィアの闇そのものですね、XANXUS」
XANXUSが命令をした後、突然骸が、XANXUSに話しかけたが、XANXUSは何も言葉を返したり、反応したりしなかった。
「君の考えている恐ろしい企てには、僕すら畏怖の念を感じますよ」
けど、次の言葉に、XANXUSは眉をピクっと動かした。
XANXUSだけでなく、ボンゴレ側にいるリボーンも、骸の言葉に反応を示す。
「なに、その話に、首をつっこむつもりはありませんよ。僕は、いい人間ではありませんからね。
ただ一つ…。君より小さく弱い、もう一人の後継者候補を、あまりもてあそばない方がいい」
「!?」
自分の企てを知っており、そのことを遠まわしに話す骸を、XANXUSは睨むように見た。一方で、骸いわく、XANXUSよりも小さく弱い後継者候補のツナは、何がなんだかわけがわからない状態だった。
そうして、話が終わると、骸はボンゴレ側に歩いていった。
「骸様!!」
「すんげーー!!やっぱつえー!!」
「クフフフフ」
ボンゴレ側の近くまで来ると、犬と千種は骸のもとへ近寄っていった。
「てんめーー。どの面下げてきやがった!!」
「ちょっ…」
「おい!獄寺!!」
「隼人君!」
他の者はそうでもないが、唯一獄寺だけは、骸に対して警戒心をむき出しにしており、ダイナマイトを構えた。
「それくらい警戒した方がいいでしょうねぇ。僕もマフィアなどと、馴れ合うつもりはない」
「!」
「僕が霧の守護者になったのは、君の体をのっとるのに都合がいいからですよ、沢田綱吉」
話しながら、骸は不敵な笑みを浮かべ、霧のリングを差し出した。
「なっ」
「え?」
「(うそだ…。それだけじゃないくせに)」
「やはりてめーっ」
「あっちょっ、待って獄寺君!!」
「!?」
骸が言ったことに、獄寺は更に怒り、今にもダイナマイトを投げそうだったが、そこをツナが止める。
「と、とりあえず…あ……ありがとう」
なんだかんだ言っても、霧の守護者として戦ってくれたので、ツナは骸にお礼を言った。
ツナにお礼を言われると、骸はフ…と小さく笑う。
「少々……疲れました……………。この娘(こ)を…」
全てを言い終える前に、骸は前に倒れていき、床に体をぶつけると同時に、クロームの姿になった。
「また女になったぞ。どーなっている」
「(骸のやつ、無茶したな…。自分を実現化するほどの力を使ったんだ。しばらく、こっちにはでてこれねーかもな…)」
「どーなってんだ?骸が幻覚だったのか…!?それともこいつが幻覚……!?」
「! そ!そーだ!!この子、内臓は!?」
「心配ねーぞ。クロームの内臓は、骸の強力な幻覚によって、機能している」
リボーンに言われて見てみると、クロームは先程の苦しそうな顔はしておらず、安心した顔で眠っていた。
「ね…寝てる」
「よかった」
そんなクロームを見ると、ツナと魅真は安心した。
「こいつ、すぐくたびれるびょん。これだから人間は…」
「(てめーも人間だろ!!)」
眠ってるクロームに対して、意味のわからないことを言う犬に、獄寺は心の中でつっこんだ。
「犬、いこう」
「うい」
「え!?」
「置いてっちゃうの!?」
「ちょ、この娘(こ)放置ですか!?」
ここまで一緒に来たのに、あっさりと置いて帰ろうとしている犬と千種に、ツナと魅真は問いかける。
「起きりゃ自分で歩けんだろ?その女、ちやほやする気はねーし」
それでも犬は冷たく返して、千種と帰ろうとした。
「そいつは、骸さんじゃねーからな」
「??」
クロームの存在は、二人にとってはとても異質なものだった。自分達と同じ、エストラーネオファミリーの実験台ではない。ぽっと出の、強くもない、ただ骸と同じ幻覚を操り、骸が実現化することができる体質の持ち主。それだけだった。それなのに、急に自分達三人の絆の中に割りこんできた存在……。そのため、クロームのことをよく思っておらず、とても複雑な思いを抱いていた。ここに来たばかりの時にいい顔をしていなかったのは、それが原因なのだが、獄寺はよくわからなかった。
「………… (そうだ……。骸は今、寒くて真っ暗な……)」
「(骸……あんな…苦しそうなところに…)」
けど、ツナと魅真ははっとなり、先程頭に流れてきた映像を思い出すと、骸の今の境遇に同情していた。
「同情すんなよ」
そこへ、ツナの心を読んだリボーンが冷たく言い放ち、ツナだけでなく魅真もギクッ…となった。
「ツナ…お前は、骸のやったことを、忘れちゃならねーんだ」
「! ………」
確かにその通りかもしれないが、それでもツナは、納得がいかなそうに顔をゆがめていた。
自分の名前は呼ばれなかったが、魅真もツナと同じように、納得がいかなそうだった。
「勝負は互いに3勝ずつとなりましたので」
「引き続き、争奪戦を行います」
その中でチェルベッロは、淡々と争奪戦を進行していた。
「明日はいよいよ、争奪戦守護者対決、最後のカード」
「雲の守護者の対決です」
モスカは、いよいよ自分の出番が来たので、それに答えるかのように、口から煙を吐き出していた。
一方魅真は、いよいよ自分の番が来たのだと、ドキッとなった。
「ヒバリと魅真の出番だな」
「ああ!」
「あの…チェルベッロさん」
「「なんでしょう?」」
そこで、一つの疑問を抱いた魅真は、挙手をして、チェルベッロに声をかけた。
ボンゴレもヴァリアーも、魅真が声をあげたので、反応して魅真を見た。
「明日の対決……私と雲雀さんの、どちらが試合に出ればいいのでしょうか?」
「どちらでもかまいません」
「ただし、実際に試合に出られるのは、どちらか一人です。よく話し合って決めてください」
魅真に質問をされると、チェルベッロは淡々と答えた。
話し合って…と言われても、雲雀の性格からして、雲雀は自分が出ると言って聞かないだろうから、あまり意味ないだろうと思ったが、それでも魅真は緊張した面持ちで、生つばを飲みこんだ。
「おいXANXUS、どーするんだ?次に、魅真かヒバリが勝てば、リングの数の上では4対3となり、すでにお前が大空のリングを手にいれているとはいえ、ツナ達の勝利は決定するぞ」
「!」
「え……?」
「そーいやぁ」
確かにリボーンの言う通りだった。
いくらXANXUSが、ツナが持っていた、大空のハーフボンゴレリングを手にいれているとは言っても、明日の雲の守護者戦で魅真か雲雀が勝てば、リングの数はボンゴレ側が多くなり、数の上では、自分の側は負けてしまう。
そうなったら、自分達ヴァリアー側の負けが決定してしまう。
そのことを、リボーンがXANXUSに質問をすると、双方はっとなった。
「そん時は、約束通り負けを認め、後継者としての全ての権利を放棄するんだろーな」
リボーンに問われると、XANXUSはその口もとに笑みを浮かべる。
「あたりめーだ。ボンゴレの精神を尊重し、決闘の約束は守る。雲の対決で、モスカが負けるようなことがあれば、全てをてめーらにくれてやる」
そう言ったXANXUSの顔は、言ってることとは逆で、余裕のある不敵なもので、絶対にそんなことはないと言ってる感じのものだった。
あれだけ後継者の座にこだわっていたはずなのに、あっさり放棄すると、XANXUSは宣言したのだ。
そんなXANXUSの言葉や表情に、魅真はドキッとなり、固まった。
「!!」
「あと一つか!!」
「認めたくねーが、あいつなら…」
そして、了平の言葉に緊張感を抱いた。雲雀か自分の肩に、ボンゴレの勝利がかかってるからだった。雲雀なら心配はないが、もしも自分だった場合は、モスカに太刀打ちするのはかなり難しいと思っていたからであった。
一方で、獄寺の言葉には、少し落ちこんだ。獄寺の言う「あいつ」というのは、明らかに雲雀をさしており、自分の力では、モスカを倒すのに役不足だと言われているような気がしたからだ。
しかし、それは自分でもわかっているため、そのことに関しては、何も言うことはなかった。
なかったのだが、どこかもやもやした思いを、魅真は抱いていた。
「そいつは甘いぜ、コラ」
「え」
その時、ツナの後ろにいるコロネロが、了平と獄寺の言葉を否定した。
「あのXANXUSがここまで言い切るということは…あのモスカって奴が、絶対に勝つという確信があるからだ」
「………それって…魅真ちゃんか、ヒバリさんが……」
リボーンの言ったことに、ツナは一気に不安になった。
魅真だけでなく、もしかしたら、並盛最強とうたわれている雲雀でさえも、モスカにやられてしまうと思ったからだった。
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