標的44 真実(ほんとう)の話
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次の日、魅真は一人ででかけていった。
雲雀に何も言わず、いつものように、並中風紀委員専用の制服を着て、薙刀を持って…。
標的44 真実(ほんとう)の話
その日、並盛山では、ツナがハイパーモードとなり、修業をしていた。
そこには、リボーンだけでなく、バジルと、もう一人見知らぬ赤ん坊がいた。
三人はツナの修業を見ていたが、ツナはただ両手をあげて、手から炎を出し、そこに立っているだけだった。
そこへ、地面を踏む音が三人の後ろで響いたので、誰かと思った三人は、後ろへふり向いた。
「あ……おぬしは確か…」
「魅真…」
そこに立っていたのは、魅真だった。
「こんにちは、リボーン君」
三人が気がつくと、魅真はにっこりと笑ってあいさつをする。
「よく、この場所がわかったな」
「ディーノさんに、ツナ君がここで修業してるって聞いてたから」
「何をしに来たんだ?」
いつもなら、魅真の前では笑っているリボーンだが、この時は笑っておらず、どこか真剣でまっすぐな目をしていた。
「ツナ君に、聞きたいことがあってね」
けど、そんなリボーンとは対照的に、魅真はにこにこと笑ったままで、リボーンの問いに答えた。
「でも、ツナ君今は修業中みたいだから、休憩時間になるまで待つよ」
絶対に、もう何がなんでもツナと話をしたい魅真は、ツナの修業の邪魔をする気はないが、引き下がるつもりもないので、リボーンの隣に立った。
「リボーン、こいつは誰なんだ?コラ!」
そこへ、リボーンの隣にいる、軍人の格好をして、ライフルを持っている赤ん坊が、リボーンに魅真のことを尋ねた。
「あ、ごめんなさい。あいさつもなしで…。
私は、ツナ君の雲の守護者でツナ君の友達の、真田魅真といいます。
あなたは、リボーン君のお友達?」
赤ん坊が尋ねると、魅真は赤ん坊と向き合い、あいさつをした。
「オレはコロネロっていうんだ。あと、リボーンとは友達じゃねえぞ。ライバルだ、コラ!」
「そっか。よろしくね」
「おう」
コロネロも魅真にあいさつをすると、魅真がコロネロの背にあわせてしゃがみ、にこにこと笑いながら手をさしだすと、コロネロも手をさしだし、二人はあくしゅをかわした。
「あ、それと……バジルさん…でしたっけ」
「はい」
コロネロにあいさつをすると、今度はバジルの方に顔を向けて、その場を立ちあがり、バジルと向かい合った。
「昨日はあいさつできなくてすみません。私、ツナ君のクラスメートで、ツナ君の友達の、真田魅真といいます」
「これはご丁寧に、ありがとうございます。拙者はバジルといいます。ボンゴレ門外顧問の者で、親方様の部下です」
「親方様?」
「家光のことだぞ」
「あ、家光さん」
ボンゴレ門外顧問のことは、先日ディーノから聞いて知っていたが、親方様という呼び方は知らないので、親方様と言われて、一瞬誰のことなのかわからなかったが、リボーンに説明されると、魅真は納得をした。
「ところで、以前スクアーロとの戦いでうけた傷は、もう大丈夫なんですか?」
「お心づかいありがとうございます。親方様とディーノ殿の薬草のおかげで、かなり回復しました」
「そうなんですね。よかった」
そしてふいに、以前スクアーロにやられた時のことを思い出し、心配そうに尋ねると、バジルはにっこりと笑って答えたので、魅真も微笑んだ。
「ところでリボーン君、ツナ君は一体なんの修業をしてるの?」
バジルとコロネロとのあいさつがすむと、再びリボーンに顔を向けて、ツナの修業について尋ねた。
「新技の修業だぞ」
「へーー。がんばってるんだね、ツナ君」
「あーやって突っ立ってんのが修業なのか?コラ!」
「ちげーぞ。死ぬ気の零地点突破のタイミングをはかってるんだ」
「零地点突破?」
「なに?それ」
「まあ見てろ」
見てろと言われても、ツナは表情が微妙に変わっただけで、そこに微動だにせず立っているだけだった。
「………………どれくらい待つんだ?」
「今日中はムリかもな」
「おいコラ、リボーン。だったら早く、呼び出したワケを話せ!!!」
「そーだったな」
見てろと言ったくせに、今日中にはムリと言われたので、苛立ったコロネロは、リボーンに頭つきをかました。
これがこの二人流のあいさつなのだが、初めて見た魅真はびっくりしていた。
「コロネロ、おまえ、ヴァリアーのマーモンって奴、どう思う」
「!? あの趣味の悪いカエル乗せたチビか」
「ああ。あのダッセーカエル乗せたチビだ。何も感じなかったか?」
「………!まさか、アルコバレーノだっていうのか?コラ」
「まーな」
リボーンとコロネロの会話に出てきた、アルコバレーノという言葉に、魅真とバジルは反応を示した。
「でも、おしゃぶりは光らなかったぜ。それにアルコバレーノの7人の行方は、欠番も含めて全員わかって…
! あいつだと………?」
「まだわかんねーけどな」
「もしそーなら、こっちの奴に、勝ち目はねーぜ」
「なんでだ?こっちの霧の守護者も知らねーくせに」
「そーだよリボーン!!昨日の夜もわからずじまいだし!!」
その言葉に反応したのは、コロネロではなくツナで、ツナはハイパーモードからいつものツナに戻り、リボーンのもとへ駆けてきた。
「沢田殿!」
「こんにちは、ツナ君」
「…って、魅真ちゃん!?なんでここに?」
「気づいてなかったんだ」
目の前にいるので、いくら修業をしているとはいえ、気づいていると思っていたが、修業に集中しすぎるあまり気づいていなかったので、魅真は軽くつっこんだ。
「あ……えっと…その……」
昨日雨戦を見に来ただけでなく、今自分が修業をしているこの場所に来ているし、ディーノが魅真に全部話したと言っていたが、それでもどこか気まずさがあった。
「修業がんばってるんだね、ツナ君」
「ま、まあね」
「今夜の戦いも楽しみだね。誰なんだろうね、霧の守護者って」
「あ、そうだよ!おいリボーン、もう教えてくれてもいいだろ!!こっちの霧の守護者!!」
「まだだぞ。教えちまうと、修業が手につかなくなっちまいそーだからな」
「逆だよ!!このままじゃ、気になって、修業に身が入らないよ!!」
「……しょーがねーな。じゃあ、山下りてジュース買ってきてくれ。コロネロの分もな」
「なんでそーなるんだよ!!」
教えてくれるのかと思いきや、パシリを頼まれただけなので、ツナは鋭いツッコミを入れる。
「あ、拙者も一緒に行きましょうか」
「じゃあ、私も行くよ」
「甘やかさなくていいぞ、バジル」
「なっ!!」
「あ、でも魅真は一緒に行ってこい」
「へ?」
バジルには行かなくてもいいと言ったのに、何故自分は行けと言われたのか、魅真は疑問に思った。
「ツナに用事があって来たんだろ?」
「あ…」
自分は行けと言われたのは、ただ単に、リボーンが気をつかってくれたからだということを、その短い言葉で理解した。
用事という言葉に、ツナはまさかと思ったが、そう思いながらも、リボーンに言われた通り、魅真と一緒に山を下りて、ジュースを買いに行った。
山を下りている時、ツナはまだ気まずそうにしており、時折魅真をちらちらと見ながら、様子をうかがっていた。
「あのさ、ツナ君」
「な、なに!?」
すると、突然魅真が声をかけてきたので、ツナは焦りながら返事をする。
「私ね、ずっとツナ君に聞きたいことがあったんだ」
「へっ!?な、何を!?」
しかも、核心にふれようとしているので、ツナは更に焦り、声がうわずってしまう。
「ツナ君自身のこと…。そして、今回の戦いのこと…。ボンゴレのこととか…死ぬ気弾のこととか…いろいろと…」
もう魅真が、自分のことやボンゴレのことを知ってるのはわかっていたが、とうとうその時がきてしまったので、ツナはあまりいい顔はしていなかった。
「…で、でも……魅真ちゃんは、もう……」
「知ってる…。でも、ツナ君の口から聞きたいの」
ツナは一瞬戸惑った。だが、魅真のその真剣な目と声に、覚悟を決めて、話し始めた。
自分は、ボンゴレファミリーという、イタリアにあるマフィアの、10代目のボス候補であること。
その、ボンゴレファミリーの初代ボスが、自分のひいひいひいじいさんだということ。
だから、自分がボス候補に選ばれたのだということ。
そして、ボンゴレファミリーに伝わる、秘弾の死ぬ気弾のこと。
今まで、パンツ姿になって人が変わっていたのは、その死ぬ気弾を撃たれて、死ぬ気になっていたからだということ。
その死ぬ気弾を撃っていたのはリボーンで、リボーンは世界最強の殺し屋だということ。
リボーンが、イタリアから日本にやって来たのは、自分をボンゴレ10代目ボスにするため、教育するためだということ。
自分と魅真が友達になった時に、リボーンが言ったことは、冗談ではなく本当のことだということ。
ボンゴレファミリーの同盟ファミリーである、キャバッローネファミリーの10代目ボスであるディーノのこと。
そして、先日黒曜で起こった戦い。
六道骸は囚人で、日本にやって来たのは、ボンゴレ10代目ボスである自分の体をのっとって、利用するためだということ。
そして、今回のリング争奪戦のことも……。
ボンゴレリングとは一体なんなのか。
ヴァリアーとは、一体何者なのか。
何故、今回の戦いが起こったのか。
守護者は誰なのか。
また、魅真がいなかった時の戦いのことも話した。
初戦の晴戦では、了平が一度はピンチに陥ったが、なんとかヴァリアー側の晴の守護者のルッスーリアを倒したこと。
二戦目の雷戦では、ランボは10年バズーカを使って戦い、ヴァリアー側の雷の守護者のレヴィを追い詰めたが、もうあと少しというところで今のランボに戻ってしまい、逆にやられてしまって、今は病院に入院していること。
三戦目の嵐戦では、獄寺はヴァリアー側の嵐の守護者のベルフェゴールを追い詰めたが、リングを奪う直前に、フィールドを次々と爆発してしまう仕掛けがあり、それが爆発してしまったために、やむなくリングを相手に渡し、ツナ達のもとに戻ってきたこと。
昨日の雨戦は、魅真も見てたのではぶいたが、とにかく、リボーンと出会ってから今までのことを、自分が知っているかぎりのことを、全部話した。
すべてを話した後、魅真は
「そっか」
とだけ返事をした。
「よかった。ツナ君からその話が聞けて」
「へ?」
「ずっと聞きたかったんだ。その話を…。ツナ君の口から…」
「なんで?」
「ツナ君は友達だから。やっぱり、人づてに聞くよりも、本人の口から聞きたかったんだ」
にこっと魅真が笑うと、ツナもつかえがとれたように、その顔に笑顔を浮かべた。
「よかった」
「え?」
「ツナ君、なんだかずっと怖い感じの顔をしていたから」
「あ……」
「話してすっきりしたでしょ」
確かに魅真の言う通りだった。
いくら知られたくなくて、自分の意志でかくしていたとはいっても、ずっとずっと魅真にかくしていたのだから…。
しかも、最初は魅真を誤魔化せていたが、黒曜での戦いで、魅真にハイパーモードで戦っているのを見られてしまい、今回のリング争奪戦のことを知られてしまい、昨日雨戦を見に来ていたので、正直気が気じゃなかった。
でも、魅真に促されてとはいえ、全部話したことで、まるでのどにささっていた小骨がとれたように、とてもスッキリして、またいつもの自分に戻った。
そのことを知り、ツナは更に笑顔になった。
「でも魅真ちゃん、いつからオレのことに気づいていたの?」
「んーーー…。はじめにおかしいって思ったのは、春にツナ君ちに遊びに行った時かな。ビアンキさんやランボ君に会って、去年の夏に見た悪夢は、夢じゃないんじゃないかって思いはじめて…。その後で、明らかにツナ君の様子がおかしかったから」
「えっ…!そんなに前から?」
「うん。その後も、死ぬ気モードっていうの?悪夢の時に見た、パンツ姿のツナ君になることが度々あって、なんかおかしいなって…。だから、それがどういうことなのかを確かめるために、ずっと見てたの。
なんとなく確証を得たのは海水浴の時かな。ツナ君、勝負の途中で女の子を助けたでしょ?」
「うん」
「その後に私、救助活動おつかれさまって言ったじゃない」
「え?あ、そうだったね」
「実はあれ、なんとなく、ツナ君が普通じゃないって気づいてたからなんだ。みんな、海に沈む前のツナ君と、死ぬ気モードになったツナ君は別人と思ってたけど、私はそうは思わなかった。あの言葉は、『私は、海に沈む前のツナ君と、その後に浮いてきたツナ君は、同一人物だって知ってるよ』っていう意味なの。つまり、ツナ君の秘密を知ってるよっていう意味。そう言った時、ツナ君がお礼を言ってたから、その時に、ツナ君は普通じゃないって確証を、なんとなくだけど得たんだ」
「んなー!!」
あの労いの言葉には、そんな意味がかくされていたことに気づいていなかったツナは、ショックで叫んだ。
「それで、夏休みがあけて、黒曜での戦いが起こって、ツナ君が六道骸と戦ってる姿を見て、完全に確信したんだ。ツナ君は本当に、ただ者じゃないんだって」
そこまで言われて、ようやくツナは、何故魅真が黒曜での戦いの時以来、自分にずっとついてまわってるのかを知った。
自分についてまわってたのは、自分を好きだからだと思っていたが、そうではなく、自分の正体を確かめるためのものだったので、勘違いだとわかったツナは、すごくはずかしくなった。
「でも、なんですぐに、オレに聞いたりしなかったの?」
確証を得ていたのに、すぐに聞いてこなかったので、ツナはふしぎに思った。
「まだ完全に確証がない時に問いただしても、絶対にまた、夢だって誤魔化されるだけだと思ってね。それには、確たる証拠をみつけて、私だけでなく、ツナ君や周りの人…特に私が知らない、ツナ君のことを知ってる人……特に、口裏を合わせないような人にも、私がツナ君のことを知っているということを認識させて、どうやっても言い逃れや、口裏を合わせられない状況にしなきゃいけなかったから。黒曜戦のあとで問いただしてもよかったけど、夢だって、ツナ君とリボーン君に言われるかもしれなかったから…。だから、ずっと機をうかがってたの」
「へ…へえ」
自分が知らないところで、魅真はそんなことを考え、計画していたので、意外とあなどれないと思ったツナだった。
そして同時に、何故骸を倒した後に、自分が話をしようとした時にはぐらかしたりしたのかを知った。
「あーー。でもなんだか、すっごくスッキリした」
「え?」
「私も、今まで話したかったことを全部話したから、なんだか、のどにささった小骨がとれたみたいに、すごくスッキリしたよ」
「そっか」
二人はすべてを話し終えると、お互いに微笑みあった。
胸にあったつかえがとれた、満面の笑顔で…。
「さ!それじゃあ、早くジュースを買って、修業の続きをしないとね」
「あ、そうだった」
長い長い話をしていたので、ちょっとの間忘れていたが、ツナは今は、修業の最中だった。
魅真もまだ、自分のリングの戦いがきていないので、可能なら、リボーンかバジルのどちらかに、修業を見てもらおうと思っていた。
「それにしてもリボーンの奴め!!なんで修業してる本人が、ジュース買いにいくんだよ!!ったく、毎日、どれだけ人が神経すりへらしてるかも知らずに…………………」
リボーンにパシリにされたことを思い出し、ぶつくさと文句を言っていたが、急にだまってしまう。
「(山本……昨日のケガ大丈夫だったかな…)」
それは、昨日の戦いで、山本が重傷を負ったことを思い出したからだった。
「(山本だけじゃない…。お兄さんも、ランボも…獄寺君も…みんなボロボロで…。今日も……簡単に勝てる勝負になるわけない……。だからこそ、戦う仲間が誰か知りたいのに、リボーンの奴)」
山本だけでなく、了平も、ランボも、獄寺も、今回の戦いで重傷を負ったので、今日の勝負が気がかりになり、先程霧の守護者の正体を聞いたのだった。
「あのさ……魅真ちゃん…」
「何?ツナ君」
「あ…いや……。魅真ちゃんはさ、明日雲の守護者の戦いが行われて、戦うことになったら、参戦するつもりなの?」
「もちろん!」
自分の質問に即答されて、ツナはいい顔はしなかった。
もしかしたら、今までの四人と同じように、魅真もひどいケガをするかもしれないからだ。
「そういえば魅真ちゃんて、なんで雲の守護者になったの?」
ふいにそのことを思い出したツナは、昨日からずっと気になっていたことを聞いてみた。
「雲雀さんを……守りたいから…」
「え?」
返ってきた答えは、ツナにとっては意外なものだったので、目を丸くした。
「ん?」
その時、ツナはあることに気がついた。
「木の幹がえぐられてる………」
「え?あ…本当だ」
魅真の後ろにある木が、鋭い爪でひっかかれたような痕があったのだ。
「何かの動物…………!?前にもこんなことあったような…」
デジャヴのような光景に、ツナは冷や汗をかいた。
「と…とにかく不気味だ。魅真ちゃん、急ごう!!」
「え?うん」
気味が悪くなったツナは足を早め、魅真もその後に続いていった。
そして、山の麓までつくと、そこにある町の中を歩いていく。
「あれ?こんな所に黒曜生だ」
「本当だ」
町にある駄菓子屋に、いくら隣町といっても、ここからだと遠いところにある黒曜中学校の生徒がいたので、二人はふしぎに思った。
「っひゃ~~。このガムうまそ~!!」
「さっき買っただろ?」
「らって、ガムってフルーティーだから、みんなのっくんじゃうんらもん」
「(中学生にもなってガム飲みこむなよ…)」
「(小さい子供みたい…)」
ガムを飲みこんでしまうのは、幼児くらいなのに、中学生になってもまだ飲みこんでいる人物がいたので、ツナと魅真は呆れていた。
「じゃあ、一箱買ってこ」
「当たりつきのイチゴ!!」
「箱で買ってる!!」
「駄菓子を大人買い?」
「どんな奴らだよ」
しかも駄菓子を大人買いしてるので、気になった二人は、駄菓子屋をそーっとのぞきこんだ。
「レシートいい。めんどい……」
そこにいたのは、ここにはいるはずのない人物……。
柿本千種だった。
「えっ……えぇええっ!?」
「んな゙ーー!!!?え゙ーー!!?」
当然二人は驚き、大声をあげた。
ツナに至っては、顔が青くなり、たくさんの冷や汗をかいていた。
「うそ!そんな!!疲れてんのかな。それだけは起こっちゃいけないよ!それだけは!」
「ツナ君、落ちついて」
幻かとも思ったツナはパニックをおこし、目を両手でこすっていた。
「相変わらずムカツク面(つら)してんな」
「あ…」
もうひとつの聞き覚えのある声が目の前ですると、ツナはびくっとなり、顔をあげる。
「んあ!?」
それは、もう一人の、ここにいるはずのない人物……。
城島犬だった。
「ぎゃーーーでたーー!!!」
犬の出現に、ツナは顔面蒼白となり、恐怖のあまり絶叫し、涙や鼻水やよだれまでもが出ていた。
「う…そ」
そして、ショックのあまり、気を失ってその場に倒れてしまった。
「ツナ君!」
ツナが倒れると、魅真はその場にしゃがみ、心配して声をかけた。
「何でこんな情けない奴に負けたのかわかんねーびょん」
自分の顔を見ただけで絶叫し、気絶して倒れたツナを、犬は蹴りまくる。
「ちょっと!乱暴はやめてよ!!」
「うるへーーっ」
「…………」
よくわからない理由でツナに暴行する犬を魅真は止めるが、犬は聞く耳もたずで、その光景を千種はだまって見ていた。
「ちゃおっス」
そこへ、千種の後ろから、リボーンの声が聞こえてきた。
「リボーン君!」
ツナが修業している場所にいるはずのリボーンがここにいるので、魅真は驚いた。
「ひさしぶりだな。柿本千種、城島犬」
「でやがったな。アルコバレーノの家庭教師!!」
「もう一人はどーしたんだ?」
犬がツナへの暴行をやめてリボーンの前にしゃがむと、リボーンは気になったことを問う。
「ツナの霧の守護者は」
「え……?」
今のリボーンの言葉と、千種と犬がいるということで、もしや!と魅真は思った。
「………雲雀恭弥を……見に行った……」
「えっ!?」
「あいつがか……?ヒバリにみつかったら、大騒ぎになるぞ」
もう、霧の守護者が誰なのかわかってしまった魅真は、リボーンの言葉を聞き、「確かに…」と、心の中で思った。
同時に、そういった意味で、リボーンはツナに山を下りさせて、ジュースを買いに行かせたのだと理解した。
「あの……リボーン君…」
「なんだ?」
「ひょっとして、霧の守護者って…」
「ああ、そうだぞ」
「六道…骸…?」
もうわかっていたが、確かめずにいられない魅真は、リボーンに問いだす。
リボーンから返ってきた、自分が思った通りの答えに、魅真は信じられない思いでいっぱいになった。
けど、黒曜戦で復讐者に連れていかれ、いるはずのない千種と犬がここにいるのと、先程のリボーンの言葉と千種の言葉。それらを総合して考えると、もう霧の守護者は骸しかいないことになる。
それに、一昨日の嵐戦の時にリボーンが雲雀に言った、「遠くない将来、六道骸と戦えるかもしれない」という言葉にも納得がいったので、信じられないながらも、霧の守護者は骸で間違いないのだと納得をしていた。
「あ、そうだ!ツナ君!」
リボーンに霧の守護者のことを聞くと、ツナのことを思い出した魅真は、駄菓子屋の外にあるベンチに、気絶しているツナを寝かせた。
魅真がツナを寝かせると、リボーンはツナの頭側にすわり、もうすわるスペースがないので、魅真と千種と犬は、ベンチの前に立った。
「おまえら大人しくしてると、ただの嫌な感じの中学生だな」
「うっへー。嫌な感じはよけーら!!」
開口一番に、リボーンにけなされたので、千種からは反応がなかったが、犬は過剰に反応を示し、リボーンに噛みついた。
「あんまなめってっと!」
今リボーンが言ったことに怒った犬は、アニマルチャンネルのカートリッジを取り出すと、それを口にはめた。
カートリッジをはめたことで、左の頬にはサイの絵が現れる。
「ど突くっつの!!」
サイの絵が現れると、犬の耳はとがり、鼻にはサイの角が出現した。
「お、でたな。カバチャンネル」
「ちげーっつの!!」
けど、リボーンはわざとなのかマジなのか、サイの角があるというのにカバと言った。
「サイだっつの!これ角らっ、角!!ぶっ殺すっ、角!!」
そのことにすら怒った犬は、リボーンの前まで来て、角を指さしながら、必死になって説明していた。
「もーやめなよ犬。今は他にやることあるし」
「うるへーっ。殺す!こいつも、ボンゴレも!!」
冷静な千種は犬をなだめるが、犬は聞く耳もたずだった。
「ツナの奴、情けねーな。もっと喜ぶかと思ったのに」
「?」
さっきまでは自分をけなしていたのに、急に話題を変えたので、千種と犬はなんのことかと思った。
「黒曜ランドでの戦いの後、ツナの奴、オレが何か情報をつかんでるんじゃないかと、あの戦いを想い出す度に聞いてきてな。よほど、おまえ達が心配だったみてーだぞ」
「そうだったんだ…」
「何言ってんだ?おまえもだろ、魅真」
「へ?」
「おまえも、骸やこいつらのことを心配してたじゃねーか。たまにため息ついてたしな」
「えっ…。なんでわかるの?」
「オレは読心術を習得してるからな」
「そう……」
まさか、ばれてるとは思わなかった魅真は、力なく返事をした。
「で、心配だったんだろ?」
「そ、そりゃあ、やっぱ…敵とはいえ、あんなヤバそうな奴らにつれていかれたし、バツを受けるって言ってたし…。だから…ひどい目にあってないか心配で……」
リボーンと魅真の言葉を聞くと、犬と千種はなんだか複雑そうな表情になった。
敵だというのに、自分や自分の仲間を傷つけたというのに、それでも敵である自分達の心配をしていたのだから…。
「ゲッ。こいつら何でできてんの?なんでこんなにウゼーの!?」
けど、犬はその感情をかくすように、ツナと魅真に悪態をついた。
「こいつら触ると、ウザいのうつる!!いこーぜ、柿ピー」
「……」
まるで小学生のようなことを言いながら、犬は踵を返した。
「てめーにはもったいない霧の守護者らって、ボンゴレに言っとけ!んじゃあ夜な」
なんだかんだ言ってもちゃんと今夜の対決に来てくれるので、リボーンはニッと笑っていた。
「さてと、んじゃあオレ達も、戦いの会場に向かうか」
「え、もう!?」
犬と千種がいなくなると、リボーンは魅真にリング争奪戦が行われる学校に行こうと言うが、いくら日暮れがせまっているといっても、まだ時間としては早すぎるので、魅真は驚いた。
「ああ。ツナは気絶しちまってるから、いつ修業を再開できるかわからねぇ。それに、オレや魅真では、ツナをおぶって、山を登って連れていくなんてのは、無理だろうからな」
「そ、そうだね」
「ああ、だからオレがひとっ走り行って、バジルを呼んでくるぞ」
「え?いいよ、私が行くよ」
赤ん坊のリボーンに、そんな重労働はさせられないと思った魅真は、自分が行くことを申し出る。
「いいから休んでろ」
けど、リボーンは一方的に魅真にここに残るように言うと、一人でさっさと山へ行ってしまった。
魅真は、どこか納得していないところもあったが、せっかくだからと、リボーンの好意に甘えることにした。
それから一時間半が経過し、日が傾きはじめた頃、リボーンはバジルとコロネロを連れて、魅真のもとに戻ってきた。
「魅真殿!」
「待たせたな、魅真」
「あ、リボーン君、バジル君、コロネロ君」
「ツナの奴は、まだ気絶してんのか?」
「うん、まあ……」
あれからだいぶ時間が経ったのに、まだ寝ているので、リボーンは少々呆れていた。
「んじゃあ、行くぞ」
「え……うん……」
「心配すんな、魅真」
「え?」
いきなり、意味がわからないことを言われたので、魅真は一体なんのことだろうと思った。
「学校についたら、オレが修業を見てやるからな」
「ほ、本当に?」
「ああ」
読心術を習得しているリボーンは、魅真のほんの少し沈んだ表情を見ただけで、魅真が何を考えているのかわかった。
自分の心を理解してくれると、魅真はうれしそうに顔をほころばせた。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうね」
バジルがツナを背負うと、魅真達は並盛中学校へ出発した。
「で、どうだ魅真」
「え?」
「ツナに聞きたいことは聞けたのか?」
歩きはじめると、リボーンは魅真に、ツナへの用事が終わったかどうかを聞き出した。
「うん。私もだけど、ツナ君も、話してなんだかスッキリしたみたい」
「そっか。よかったな」
「うん!」
「でもおめぇ、なんで、ずっと何も言わなかったんだ?黒曜戦の時から一ヵ月以上も経ってるし、いくらでも聞き出す機会はあっただろ?」
「だって、まだ確証を得ていない時に問いただしても、絶対にまた、夢だって誤魔化されるだけだから。だから、確たる証拠をみつけて、私だけでなく、周りの人や、私が知らない人で、ツナ君の秘密を知ってる人…特に、口裏を合わせないような人にも、私がツナ君のことを知っているということを認識させて、もうどうやっても言い逃れや、口裏を合わせられない状況にしなきゃいけなかったから。黒曜戦のあとで問いただしてもよかったけど、夢だって、ツナ君とリボーン君に言われそうだったからね。だから、機をうかがっていたの。ずっとずっと、この時を待っていたのよ。それに、ツナ君の口から聞けば、もうこれからもウソなんかつけないしね」
「お前、意外に策士だな」
ツナに聞かれたことと、似たようなことをリボーンに聞かれると、魅真は、ツナに話したことと同じことをリボーンに話した。
確かに、偶然とはいえ、黒曜戦やリング争奪戦が行われ、ハイパー死ぬ気モードのツナを見たり、日常ではあり得ない戦いを経験した。それに、魅真と初めて会ったディーノやバジル、家光、友人の獄寺や山本や了平。口裏を合わせたり、誤魔化したりすることはしないだろうヴァリアーのメンバー、チェルベッロ、黒曜のメンバーに、魅真が今回の戦いを見ていたことを認識させ、自分がボンゴレ側の雲の守護者だと、昨日雨戦の時にいた全員に宣言したことで、もう言い逃れも、口裏をあわせることもできない状況になってしまったので、魅真の計画は成功と言える。
普段のほほんとしていて、あまりそういうことをしなさそうなのに、実はずっと水面下でねらっていたことを知り、リボーンはどこか感心していた。
そして、一時間ほど歩くと並盛中学校につき、魅真、リボーン、バジル、ツナは学校に入ったが、コロネロは一旦笹川家に帰っていった。
あまりに早く来たので、時間があまりにあまってしまったため、魅真は約束通り、リボーンに修業を見てもらった。
そんな風に過ごしてると、山本、獄寺、了平、ヴァリアーのメンバーやチェルベッロがやって来て、今夜の戦いのフィールドに移動した。
けど、今日対戦する、肝心の霧の守護者が来ていなかった。
「!」
そして、彼らがそろい、霧の対戦が始まる数分前に、ツナはようやく目を覚ました。
「やっと起きたか…?」
「リボーン…。ここ…どこ?」
「霧のリング争奪戦の、戦闘フィールドだぞ」
「そーだ!争奪戦!!は!
た、体育館!!?」
まだ少し寝ぼけていたツナだったが、リボーンに説明されると、ようやく自分が今どこにいるのかを理解した。
「よかった。起きたんだね、ツナ君」
「10代目!!お加減は!!」
「! みんな!!」
「やっと起きたか」
「バジルがここまでおんぶってくれたぞ」
「あ……ありがと。
!」
バジルにお礼を言ってると、目の前の山本を見てハッとなった。
「山本……」
「?」
「大丈夫なの?その…目…」
「ああ。ロマーリオのおっさんが、心配ねーってさ」
「よ……よかった」
昨日のケガを心配していたが、山本本人の口から大丈夫だと言われると、ツナはほっとした。
「………? (それにしても、何でオレ、寝てたんだ??そーいえば、寝る前に、誰かに会ったような…)」
どうやらツナは記憶がとんでいるらしく、何故自分が寝てしまったのかを覚えていなかった。
「10代目…。まだ霧の奴…姿を現しません…」
「ええ!?そんな!!」
「本当に存在しているのか?そいつは……」
「敵も、もう来てるってのに………」
獄寺に言われると、ツナは自分達がいる場所とは反対の、壇上の方を見た。
壇上の前にはXANXUS、レヴィ、ベル、モスカがおり、今夜の対戦相手であるマーモンと、審判のチェルベッロの二人は、真ん中に立って、すでに待機していた。
「(あの小さいのが、敵の守護者…。そうだ、オレ。味方の守護者のこと聞こうとして、ジュース買いに行って…)」
マーモンを見て、段々と眠っていた記憶が甦ってきた。
「ん?あれ?なんだっけ!?何か、大事なことを忘れてるよーな。
ねえ、魅真ちゃん」
「何?」
「オレさ……
!!」
あの時、あそこに魅真も一緒にいたのは覚えていたので、魅真に何があったのかを聞きだそうとした時、ツナは突然寒気を感じた。
「………!! (え!!?)」
その寒気がした方向に、ツナは顔を向けた。
「こっちの霧の守護者のおでましだぞ」
「あ……」
「……」
「!」
ツナが気配を感じた扉の方へ顔を向けた後、リボーンがそう言うと、千種と犬がやって来た。
「あ゙あ゙!!そうだった!!」
「あ……あれ…?あいつらって」
「バ…!バカな!!」
彼らは復讐者に連れていかれたはずなのに、ここにやって来たので、ツナはようやく、昼間二人に会ったことを思い出し、顔が青ざめ、冷や汗が流れた。
当然、黒曜戦で戦った山本と獄寺も、信じられない思いでいっぱいになり、ツナと同じように顔が青ざめ、冷や汗が流れた。
「なぜこんな時に!!」
よりによって、もうすぐ霧の守護者の対決が始まる時に現れたので、獄寺は警戒してダイナマイトを構えた。
「おちつけ、おまえ達。こいつらは、霧の守護者をつれてきたんだ」
「何言ってるんスか、リボーンさん!だってこいつら…。
!」
そこまで言うと、獄寺はハッとなる。
「ま…まさか…!霧の守護者とは…」
「…………こいつらが、つれてくるってことは…」
「う……うそだ。………霧の守護者って……ろ…六道骸!!!」
霧の守護者が、すでに誰なのかを知っている魅真は冷静だったが、千種と犬と会ったことを忘れていたツナ、千種と犬がここに戻ってきたことを初めて知った獄寺と山本は、霧の守護者の正体に驚愕していた。
「クフフフフ。クフフフフフフ」
そして、千種と犬の後ろから、骸のあの独特の影が見え、独特の笑い声が聞こえてきた。
しかし、笑い方とシルエットは骸のものだが、その声は男の声ではなく、声の高い女のものだった。
「Lo nego (否)」
千種と犬の後ろにいた人物は、黒曜中学校の学ランをぬいで放ると、イタリア語で何やら話しだした。
声がしたことで、ツナ達は目を見張り、対戦相手のマーモンも、声がした方へ顔を向けた。
「Il mio nome e' Chrome (我が名は、クローム)」
だが、千種と犬の後ろから現れたのは、六道骸ではなく……
「Chrome髑髏 (クロームドクロ)」
黒曜中学校の制服を着て、骸の三叉槍を持ち、骸と同じ髪型をしてはいるが、骸ではなく、ツナ達と同じくらいの年の少女だった。
「六道骸じゃ……ない!!?」
千種と犬が現れたので、てっきり守護者は骸かと思われたが、まったく知らない女の子だったので、ツナはびっくりしていた。
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