標的43 悲愴な結末
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スクアーロは走りながら、剣に仕込まれた火薬を山本に飛ばすが、山本は横によけた。
だが、剣をふったことにできた波に襲われ、動きが止まってしまう。
その隙に、スクアーロは校舎の柱を剣で斬り、そのことで砕けた柱の破片が山本を襲い、そのうちの一つが、山本の右目に直撃した。
「ああ!!」
「柱の破片が!!」
今の攻撃で山本は地面に倒れ、その隙にスクアーロは、まっすぐに山本のもとへ走ってきた。
けど、山本はすぐに起き上がり、刀をふるが、スクアーロにはあたらなかった。
それもそのはず。山本の手には、刀がなかったのだ。
「あの技は!!」
そう…。山本は、刀の持ち手を変えて、先程の五月雨を放つ。
しかし、スクアーロはニヤリと笑うと、剣をふった。
剣は山本自身ではなく、山本の刀にあたった。
刀の金属音が鳴り響き、それだけでなく、山本の手まで振動し、その瞬間、山本は動きが止まってしまった。
「!?」
「山本…?」
「どうしたの?一体」
「山本殿!!なぜ動かない!!」
急に動かなくなったので、魅真、ツナ、獄寺、バジルは、何故山本が、急に動かなくなったのか、ふしぎに思っていた。
スクアーロは、山本が動かなくなった隙に、とどめをさそうと剣をふるが、山本は刀を持っている手を、もう片方の手で殴り、なんとか体を動かせるようにするが、間に合わず、スクアーロの剣をその体に受けてしまい、後ろにふっとんでいった。
「山本!!」
まともにスクアーロの攻撃を受けてしまったので、獄寺達は心配そうにした。
一方スクアーロは、休むことなく山本のもとへ走っていくが、山本は痛みを感じながらもすぐに起き上がり、スクアーロの剣をよけた。
「スクアーロが放ったのは、鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)。渾身の一振りを、強力な振動波に変え、相手の神経を麻痺させる衝撃剣」
「自分の腕を打って硬直を解くとは、刀の奴もやるじゃん」
「でも、鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)の衝撃は、素手を、バットで殴られるより強いんだ。しばらくあの手は、使い物にならないだろうね」
先程スクアーロが、自分の剣を山本の刀にあてたのは、山本の動きを封じるための技だった。
スクアーロの動きはまだ止まらず、また山本に向かってきた。
山本は瓦礫を使って上の階に逃げていき、少しでも左手の麻痺をとこうと、左手に息をふきかけるが、その時、突然下から振動を感じた。
その直後に、自分がいた場所の床が破壊され、山本はバランスを失う。
それはスクアーロが、下から剣を何度も素早く突いてきたからだった。
スクアーロの剣は、床を破壊するだけでなく、自分自身にもあたり、腹、肩、腕など、いろんなところにケガを負ってしまい、そのまま仰向けに倒れ、下の階に落ちていった。
「や…山本……」
「武君!!!」
「山本ーー!!」
「な…なんて剣撃だ……。突く…刺すというより…空間をかじるような!!」
「鮫の牙…(ザンナ・ディ・スクアーロ)。
ボス……」
「はっ。何年経っても…変わりばえのしねー野郎だ」
「さすがスクアーロというところかな。ちゃんと最後に、雨の守護者の使命を体現している。
戦いを清算し、流れた血を洗い流す
鎮魂歌(レクイエム)の雨」
標的43 悲愴な結末
「くっ」
「あ……」
「そんな…!」
今のスクアーロの技で、山本が下の階に沈んでいったのを見た魅真とツナと獄寺は、顔が青ざめた。
《さあ小僧!!心臓を切り刻んでやるぞぉ!!》
「!! 山本……!!」
「武君っ」
《ちくしょ~》
魅真とツナが心配そうに叫ぶと、瓦礫の上に倒れた山本は、体を少し動かし、悔しそうにしていた。
《こーも一方的かよ…。負けたなんて知ったらオヤジ怒るんだろーな…》
《ゔお゙ぉい。まだやるか?得意の時雨蒼燕流で》
悔しそうな顔の山本に対し、スクアーロはその顔に、不敵な笑みを浮かべていた。
《どぉしたぁ!!継承者は、八つの型すべてを見せてくれたぜぇ。
最後に八の型、秋雨を放ったと同時に、無残に散ったがなぁ!!!》
《! (八の型秋雨?なんだよそりゃ…。聞いたことないぜ……》
山本は、スクアーロが言ったことに疑問をもった。
《!! そーいうことかよ…。オヤジ》
けど、少し考えると、ある結論に至った。
「山本ーー!!!」
「武君っ!!」
「山本!」
《ゔお゙ぉい!!ガキども!!刀小僧の無様な最期を、目ん玉かっぽじって、よく見ておけぇ!!》
「そんなっ…武君!!」
「「!」」
「山本…!!
!」
《ん゙?》
ツナ達が心配そうにしていると、山本が立ち上がった。
《ゔお゙ぉい。寝ていろ!!そのままおろしてやるぞぉ!!》
《そーはいかねーよ。時雨蒼燕流は、完全無欠最強無敵だからな》
「頑固だね」
「強がりを言ったところで、あの体じゃ、何もできやしないくせにね」
まったくの無傷なスクアーロに対して、右目をつぶされ、顔も体もボロボロになっていて、実力の差は明らかだというのに、それでもなお、スクアーロが昔つぶしたという、自分が使う時雨蒼燕流で立ち向かっていこうとする姿に、ベルもマーモンも嘲笑っていた。
「あいつ…」
「武君!!」
「山本!!」
けど、マーモンが言ったことは間違いとは言いきれず、山本はスクアーロにかなりのダメージを負わされ、フラフラの状態で、荒い息をしていた。
《カスが!!まずはそのへらず口から切り落としてやるぞぉ!!》
スクアーロは剣を瞬時に何度もふって、剣から火薬を飛ばした。
山本はその火薬を走りながらよけていき、修業をしていた時、父親の剛に言われたことを思い出していた。
それは、剛が八の型を生み出した経緯だった。
山本はそのことを思い出すと、また瓦礫を登って、上の、スクアーロがいる階へと行った。
そして、また時雨蒼燕流を使おうと構える。
「なっ。山本…!」
「あいつ、まだ…!」
「また、あのスクアーロにやられちゃう!」
「いかん!!」
時雨蒼燕流で立ち向かおうとする山本を、ツナ達は心配し、スクアーロはバカにするように笑った。
そしてやはり、今の山本の構えを、スクアーロは知っていた。
山本が自分の方へ向かってくると、スクアーロもまた山本の方へ走っていき、秋雨を打つように挑発した。
「山本!!」
「武君!!」
時雨蒼燕流の技は、先程スクアーロに見切られていたので、また見切られ、山本がやられてしまうかもしれないので、ツナと魅真は心配そうに叫んだ。
けど、それは杞憂に終わった。
何故なら、竹刀を刀に変形させて打った技は、スクアーロが知っている秋雨ではなく、まったく知らない、篠突く雨という技だったからだ。
《な…にぃ…》
「「!!」」
技をくらったスクアーロは、驚愕して口から血を吐き、今の戦いの場面を見て、ツナも魅真もXANXUSも目を見張った。
《ぐはっ》
今の篠突く雨で宙に浮いたスクアーロは、床にたたきつけられた。
「あ…」
「当たった…」
「なんで…」
「どーなっている……!?」
先程五月雨を打った時は見切られ、逆にスクアーロの技をくらったというのに、今度はスクアーロが山本の技をくらったので、ツナ達もヴァリアー側も驚いていた。
《ハハハ。やっぱりな》
《ぐ…。ぐはっ…!》
山本は自分の読みがあたったので笑っており、床に倒れたスクアーロは、そこから起き上がろうとする。
《貴様!!時雨蒼燕流以外の流派を使えるのかぁ!?》
スクアーロは上半身を起こし、血を口から吐きながら、疑問を山本にぶつける。
《いんや。今のも時雨蒼燕流だぜ》
《!!》
《八の型篠突く雨は、オヤジが作った型だ》
先程打った技、篠突く雨は、スクアーロが知らない技だったが、他の流派の技などではなく、れっきとした時雨蒼燕流の技の一つだった。
「え…」
「!?」
「!!」
「なるほどな。それで八代八つの型なんだな」
「ん?」
全員がわけがわからない状態だったが、ディーノの肩にすわっているリボーンは、山本の言ったことを理解した。
「時雨蒼燕流にとって、継承とは、変化のことなんだ」
「……!」
「変化……?」
「それって、どういう意味なの?」
「おそらく、山本の父と、スクアーロが倒した継承者は、同じ師匠から、一から七までの型を継承され、その後、それぞれが違う八の型を作ったんだ」
「え…?」
「同じ流派を名乗りながらですか…?」
「時雨蒼燕流の継承者は、先人の残した型を受け継ぎながら、新たな型を作り、そしてまた弟子に伝えていくんだ」
「で…ですが、それでは継承の度に枝分かれして、無数の型が生まれてしまうのでは?」
「逆だぞ。むしろ、今まで途絶えなかったのが不思議なくらいだ。
一度きりという、シビアな型の継承法。変化には、進化だけでなく退化もある。その中で、最強を謳い、あえて強者から狙われるんだ。まるで、自分で自分を追い込むみてーにな。
ゆえに、時雨蒼燕流は、気と才ある者途絶えた時、世から消えることも仕方なしとした、滅びの剣と呼ばれる」
《ゔお゙ぉい!!ガキ……。正直、ここまでやるとは思ってなかったぞ》
リボーンが説明していると、スクアーロは少し荒い息をしながら、そでで口の血をぬぐった。
《だからこそ、その峰打ちは解せねえ。真剣勝負をナメやがって》
そして口をぬぐうと立ち上がり、剣を構える。
《それとも、まだオレの知る型と違う型があるのか?》
《ん…?ハハハ。残念ながら、一から七の型はあんたが知ってる型と同じだぜ》
スクアーロに聞かれると、山本は敵に、あっさりと自分の攻撃スタイルを話してしまう。
「! バカ正直にバラしやがった…」
素直なのか、何も考えていないのか、あっさりと話してしまった山本に、ディーノは顔はひきつった。
《やはり死ぬしかねぇようだな!!一度喰らった篠突く雨は、すでに見切った!!!》
「そ……そんな!」
《さすがだぜ。そうこなくっちゃな》
やはり、ヴァリアーのボス候補だったというのは伊達ではなく、スクアーロは二度も同じ技を喰らうような相手ではなかった。
そのことにツナは焦るが、山本は全然焦っておらず、逆にスクアーロを称賛する。
《んじゃ、いってみっか》
それだけでなく、荒い息をくり返しながらも、その顔には笑顔を浮かべていた。
《時雨蒼燕流 九の型》
そして、竹刀を野球のバットのように構える。
しかも今から出すのは、一から七の型でもなければ、先程出した八の型の篠突く雨でもない、まったく新しい型だった。
九の型と聞くと、スクアーロも、外にいるベルやマーモンも反応を示す。
「きゅ……九?」
「一から八の型じゃないの?」
「ということは…」
「山本の奴、新たな自分の型を放つ気だぞ」
「なるほど。常に、流派を超えようとする流派…。もし、それができるのならば、確かに時雨蒼燕流は、完全無欠最強無敵!!! (だが、できるのか…………?山本……)」
《何だぁ、そのふざけた構えは。野球でもするつもりか!?》
《あいにく野球(こいつ)しか、とりえがないんでね》
「この一撃でケリがつくな」
「ああ…」
「! で…でもあの竹刀!!時雨蒼燕流でなくちゃ使えないんじゃ!?」
「だからこそ、山本の父は、山本にあれを持たせたんだ。あの竹刀を変形させることができなければ、山本に最強の剣術を継ぐ資格がないということだ」
「え!?そんな危険な賭け……!!」
「!! スクアーロが動きました!!」
ツナ達が話している間に、スクアーロは動き出した。
スクアーロは縦横無尽に剣をふるいながら、山本に向かっていく。
スクアーロが剣をふると、まるで道ができたかのように、水がえぐれた。
「!! 水がえぐられていく!!」
「鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)。まさか、ここで剣帝を倒した、スクアーロの奥義が見られるとは」
剣をふっただけで、水がえぐられるように、壁のように立ったので、バジルは驚いていた。
しかもその技は、剣帝を倒した奥義なのだという…。
《死ねぇ!!》
己の剣でえぐった水に包まれたスクアーロは、山本のすぐ目の前まで来ていた。
《いくぜ》
一方で、山本も自分で編み出した技で攻撃しようとしていた。
スクアーロが山本の前に来て剣を横にふると、そこには山本の姿はなかった。
「………!!」
「武君が」
「消えた!!」
スクアーロがとらえた先に山本がいなかったので、スクアーロも、ツナ達も驚いていた。
《時雨蒼燕流 攻式九の型》
山本はスクアーロの後ろに移動しており、九の型を放とうとする。
竹刀は刀へと変形していた。
「かわした!」
「まだだぞ」
今の攻撃はかわしたが、スクアーロは余裕の笑みを浮かべ、方向を変えて、山本がいる方へ走っていく。
「何て反応速度だ!」
「方向が!」
スクアーロが目の前まで来ると、スクアーロの剣撃が山本を襲った。
山本は刀で防御するが、すべての剣撃を防ぐことはできず、顔に傷ができてしまい、やばいと思った山本は、後ろへとびのいた。
「山本ォ!!」
「ギリだぜ!!」
今のは、皮一枚のところで助かったといった感じなので、ツナ達側の心配は絶えなかった。
「(やはり無理なのか…)」
流派を超えるのではなく、あくまでも時雨蒼燕流で戦う山本は、スクアーロに勝つことはできないのかと、ディーノは思った。
一方、スクアーロの動きは止まらず、とどめをさそうと山本に向かっていく。
だが、前にいたはずの山本が、背後に現れた。
それにはスクアーロもツナ達も驚き、スクアーロは少しだけ山本を称賛したが、そんなことは問題視していなかった。
そして、突然スクアーロの腕が逆の方向に曲がり、山本の体を貫いた。
「!」
「きゃっ」
「義手!?」
スクアーロの左手は義手だったので、ツナ達は驚き、同時に山本が剣で貫かれたので、魅真は顔が青くなり、短い悲鳴をあげた。
だが、やられたと思ったのもつかの間、スクアーロは違和感を感じた。
そのあとで、大量の水が、スクアーロに降りかかる。
「あ……。もしかして、あの武君て……」
「水面に映った影か」
そのことで、切ったのが山本ではないことに、スクアーロも魅真もリボーンも気がついた。
スクアーロがそのことに気をとられてる隙に、本物の山本はスクアーロの前にいて、跳んで剣をふりかぶっていた。
スクアーロはすぐに、本物の山本の存在に気づいた。
「うつし雨」
しかし、一瞬遅く、山本は自分で考えた九の型で攻撃した。
ふりおろされた刀の峰でスクアーロは倒され、スクアーロは初めて敗北を味わっていた。
スクアーロはその場に倒れ、山本は刀の先で、スクアーロがつけている雨のハーフボンゴレリングをとり、宙に浮いて落ちてきたリングは、山本の手の中におさまった。
流派を超えるのではなく、時雨蒼燕流でスクアーロを倒してしまったので、ツナ達はうれしそうな顔をすると同時に驚いていた。
「おそらく、逆巻く雨の応用だな。
最初の一太刀で、すでに山本は、波を作っていたんだ。おびきだしたスクアーロのちょうど背後に自分を反射させるためのな」
「そんなすごい…技を、とっさに……?」
「だからいっただろ?あいつは、生まれもっての殺し屋だってな」
「ぶっ、物騒なこと言うなって!!」
「見ろ」
リボーンの言葉で、画面を見てみると、山本は自分が持つハーフボンゴレリングと、奪いとった、スクアーロが持っていたハーフボンゴレリングを合わせていた。
《勝ったぜ》
その顔に笑顔を浮かべ、山本は完成させたボンゴレリングを画面に向けた。
「あいつ…」
「山本…」
「やったあ武君!」
「やりましたね!!」
勝負に勝ったのと、山本が無事だったのとで、全員山本の勝利を喜んだ。
「ぶったまげ」
「まさか、こんな事がね…」
一方でヴァリアー側では、ベルとマーモンは、スクアーロが負けて悔しがるのではなく、スクアーロが負けたことに驚いており、レヴィはうれしそうに笑っていた。
「ボス」
「………」
スクアーロが負けた姿を見てくれと言わんばかりに、レヴィは画面を指さすが、XANXUSは何も答えず、画面を見ながら、昔のスクアーロとのことを思い出していた。
「………スクアーロ………」
思い出した後、XANXUSはスクアーロの名前をぽつりとつぶやき、顔を震わせた。
「ざまぁねえ!!負けやがった!!!カスが!!!」
そして、大口をあけて笑い出した。
顔を震わせていたのは、悲しんでいるのでも悔しがっているのでもなく、笑いをこらえていたからだった。
「用済みだ」
ひとしきり笑った後、XANXUSは手を上にあげて、攻撃の構えをとった。
「ボスが直接手をくださなくとも」
「僕がやってこよーか?」
「お待ちください」
スクアーロに手をくだそうとした時、中にいたはずのチェルベッロの一人が、ヴァリアーの前にやって来た。
「今アクアリオンに入るのは危険です。規定水深に達したため、獰猛な海洋生物が放たれました」
彼らを止めたのは、試合前に言っていた獰猛な海洋生物が、フィールドの中に放たれたからだった。
「!! そんな…」
試合に勝ったというのに、中にはまだ、山本もスクアーロもいるというのに、獰猛な海洋生物が放たれたので、ツナは声をあげた。
「ん?」
フィールドの下の方では、今まで閉まっていた扉が開かれ、大きな鮫がアクアリオンに入ってきた。
「ちょ…。待ってよ。スクアーロはどーすんだ?」
「スクアーロ氏は敗者となりましたので、生命の保証はいたしません」
「なっ」
自分は勝ったので助かるだろうが、負けたスクアーロの安否を尋ねると、チェルベッロから返ってきたのは、なんとも残酷な言葉だった。
「やっぱな。んなこったろーと思ったぜ」
けど、それは山本も想像していたことで、残酷なことを言われながらも笑っていた。
「よっ」
山本はスクアーロの腕をつかんで、スクアーロをかついだ。
「!」
「武君」
「山本」
「何だよあいつ」
「まさか、助けるつもりじゃないだろーな」
「てめー、バカかっ」
「普通助けね?」
ヴァリアーや獄寺には、山本の行動は信じがたいものだったが、山本にはあたり前のことだった。
「んなこと言ってんじゃねーよ!!」
「その体では、スクアーロをかついでいくのはムリです!」
けど、獄寺がバカと言ったのは、スクアーロを助ける助けないではなく、山本の安否を気にしていただけだった。
普通の状態ならともかく、今の戦いで、ひどい傷を負ったのだから…。
「あれ?」
思った通り、山本はケガのせいでよろめいてしまった。
「げっ」
その時、水をかきわける音に気づき、音の方に目をやると、目の前に鮫がやって来た。
二人から流れ出ている血に反応してやって来たのだ。
「血の臭いに反応してサメが寄ってきたぞ!」
「で……でけえ!!」
「ハハッ、おっかねー。でもまだ届かねーさ」
目の前といっても、自分とスクアーロがいるところよりも下の階におり、自分達がいる階にはまだ水は浸水してないので、大丈夫だと思っていた。
だが、サメは柱に体当たりをした。
そのせいで、山本とスクアーロがいる場所の床が崩れ落ちてしまう。
「山本ーー!!!」
「武君!!!」
せっかくまだ大丈夫だったのに、ピンチに陥ってしまったので、ツナと魅真は心配そうに叫んだ。
「やべっ」
水の中には落ちなかったが、床が水面のギリギリのところになったので、さすがにこれは、山本もヤバいと思った。
二人が落ちると、サメは二人のもとに向かってくる。
「おろせ」
「?」
その時、意識を取り戻したスクアーロが、静かに山本に言い放った。
「剣士としてのオレの誇りを、汚すな」
「でも…よ」
敗北した者には死あるのみ。スクアーロは、それを最初から覚悟していたが、到底山本が納得できるものではなかった。
「ゔお゙ぉいっ。うぜぇぞ!!」
山本が離さないならと、スクアーロは山本を蹴りとばした。
幸いにも、山本は水の中には入らず、崩れた瓦礫の上に落ちた。
「!」
瓦礫の上に落ちた山本が、スクアーロに目を向けた時には、サメはすでに、スクアーロのすぐ目の前までせまっていた。
「ガキ…。剣のスジは悪くねぇ。あとは、その甘さを捨てることだぁ」
まるで、遺言のような言葉。
その言葉を最後に、スクアーロはせまってきたサメに襲われ、水の中に沈んでいった。
「スクアーロ!!!」
スクアーロが、サメとともに沈んだ水の中からは、小さな泡が浮かぶと、そのあとに血が浮かんできた。
その悲惨な光景に、ツナ達は呆然として画面を凝視し、ヴァリアーは特に悲しむでも悔しがるでもなく、ディーノとリボーンは、その顔に影を落としていた。
「ぶはーーっははは!!!最後がエサとは、あの―――――ドカスが!!」
誰も何も言わない中、XANXUSだけが、スクアーロの最後を笑い、けなしていた。
「過去を一つ、清算できた」
自分の部下が負け、その上サメに食われたというのに、XANXUSは笑みを浮かべていた。
同じ頃、アクアリオンの中では、瓦礫の上にすわっている山本が、めずらしくけわしい顔をしていた。
震える手で竹刀をにぎり、口元をゆがめる。
「っくしょー…」
そして、口元をゆがめると、悔しそうに小さくつぶやく。
「……んだよっ」
後味が悪すぎる結末に、ボンゴレ側は、全員顔をゆがめていた。
《雨のリング争奪戦は、山本武の勝利です。それでは、次回の対戦カードを発表します》
けど、ツナ達が顔をゆがめていても、チェルベッロは淡々と話を進めていった。
「こ……こんな終わりかた…」
いくら敵といえども、最後がサメに食われて亡くなるというのは、釈然としないし、納得ができるものではなかった。
ツナよりは闇の世界に深く関わっているバジルですら、いい顔はしておらず、みんなだまってしまった。
「(こいつらは、まだ中学生なんだ…。酷な戦いだな…)」
一般人であり、まだ子供であるツナ達には、今の戦いの結末はあまりに残酷だったので、ディーノはツナ達のことを心配した。
《明晩の対戦は……》
ツナ達が沈んでいると、チェルベッロが、次の対決のカードを発表しようとする。
《霧の守護者同士の対決です》
発表されたのは、雲ではなく霧の対決だった。
「おいリボーン、来たぞ!!どーすんだよ!?霧の人って一体…!」
まだ霧の守護者が誰なのか、ツナも知らないので、ツナは不安そうにリボーンに問う。
「いよいよ、奴の出番だな」
けど、ツナとは対照的に、リボーンはニッと意味深に笑っていた。
次の日の対戦カードが発表されると、体育館の上にいた三人の人物は、そこから姿を消した。
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