標的42 雲の守護者2
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山本とスクアーロが対峙していると、またツナの頭上を、今度は2つの影が飛び越えた。
その影は、このリング争奪戦の審判をしているチェルベッロで、彼女達はスクアーロの隣に降り立った。
「今宵の対決フィールドは、校舎B棟です」
「B棟へおこしください」
「また校舎だ…。今度はどんなフィールドなんだ…?」
「ゔお゙ぉい!それはどこだぁ!?」
「こちらです」
「待ってるぞぉ!」
「あぁ」
「遅れてスマンな!」
山本が返事をすると、後ろから了平の声が聞こえた。
「こいつを連れて来たんでな」
「~~!!」
「ファラオーーッ!!!」
そこにいたのは、了平と、全身を包帯ぐるぐる巻きにされた何かだった。
「ち……違うっス!オレっス!!」
その何かは、あわてて口の部分の包帯をゆるめて、ツナに話しかけた。
「ロマーリオのおっさんが、「これが男の治療だ」とかぬかして、大ざっぱに包帯巻きつけやがったんスよ!」
「ご……獄寺君!?」
その、ファラオの正体は獄寺で、包帯ぐるぐる巻きになっていたのは、ロマーリオが雑な手当てをしたからだった。
「ケガ大丈夫なの?」
「安静が必要なのだが、どーしても行くというので、手を貸したんだ」
「借りてねーよ!勝手についてきたんだろ!!」
ツナの問いに了平が答え、了平の答えに、獄寺はムキになって叫んだ。
「勝負の行方も知れずに殺られたら、たまんねーからな」
「心配性なのな」
「おめーがお気楽すぎんだよ!!」
なんだかんだと、山本の勝負が気になっていた獄寺は嫌味を言うが、山本はまったく気にしておらず、笑顔で返した。
「でもよかったよ、隼人君が無事で。あのあと心配してたんだ。ひどいケガしてたから。大丈夫かなって」
「……どうってことねーよ」
魅真に心配されると、了平や山本の時のような勢いはなくなり、借りてきた猫のように、獄寺は大人しくなった。
「どうしたの?獄寺君」
「あ……い、いやっ…なんでもないっス、10代目!!」
急に大人しくなったので、ツナがふしぎそうに聞くが、獄寺は誤魔化すだけだった。
「さーー、いきましょ…うっ はがっ」
「獄寺君!!」
「隼人君!!」
「大丈夫ですか、獄寺殿!」
「やっぱこいつバカだな…」
今日の戦闘フィールドまで行こうとするが、包帯ぐるぐる巻きの動きにくい状態となっているので、行こうとした途端に倒れてしまい、それを見た魅真達は心配するが、リボーンだけ呆れていた。
獄寺の包帯をほどくと、魅真達は、チェルベッロに言われた戦闘フィールドに行った。
「! あ…あれ?」
戦闘フィールドの校舎B棟まで行くと、ツナはどこかおかしいことに気がついた。
「窓が塞がれてる!!?」
それは、校舎B棟の窓が、すべてガラスか何かで塞がれていることだった。
「入口もだ!!」
しかも窓だけでなく、入口まで塞がれていた。
「ここから入れるみてーだぞ」
「え!?」
今立っているところの近くで、中に入れる入口をリボーンがみつけたので、魅真達はそちらに行った。
「何の音だ………?」
窓と入口が塞がれているだけでなく、中から何やら音がしているので、疑問に思いながら、山本は扉を開けた。
扉を開けると、中は、天井がほとんど破壊されており、柱もボロボロ。壊された天井のものであろう瓦礫が、辺りに散乱している。
それだけでなく、上の階から流れ出る水で、床は水びたしで、もはや校舎の原形をとどめていなかった。
「何これ!?」
「校舎の原形とどめてねーじゃねえか」
標的42 雲の守護者2
「これが、雨の勝負(バトル)のための戦闘フィールド。アクアリオン」
そこへ、前の方からチェルベッロの声が聞こえてきた。
「特徴は、立体的な構造」
「そして、密閉された空間に、とめどなく流れ落ちる大量の水です。
最上階のタンクより散布される水は、1階よりたまり、勝負が続く限り水位は上がり続けます」
「まるで沈没船だな………」
「徐々に、足場の確保が難しくなっていきますね」
「なお、溜まった水は、特殊装置により海水と同じ成分にされ、規定の水位に達した時点で、獰猛な海洋生物が放たれます」
「ええっ!?ドーモーな生物~~!?」
ツナは、自分がここで戦うわけではないのにびびっていた。
「面白そーじゃん♪」
叫んでいると、ツナの意見とは反対の声が、頭上から聞こえてきた。
「ヴァリアー!!!」
そこには、ヴァリアーのメンバーがいた。
「うししし。朝起きたら、リングゲットしてんの。王子すげー」
「くそっ。あんにゃろ!」
昨夜獄寺と戦ったベルフェゴールは、これみよがしにリングを獄寺に見せつけ、そのベルフェゴールを見た獄寺は悔しそうにしていた。
「!!」
ツナはツナで、彼らの中にいる、ある人物に目を見張った。
「XANXUS!!!」
そこにいたのは、独立暗殺部隊ヴァリアーのボスである、XANXUSだった。
彼は、今まで勝負を見に来ることはなかったのに。来たとしても、ランボとレヴィの勝負が終わってからだったのに。今回は最初から勝負を観戦するためにいたので、ツナは驚いたのだった。
「そこの女はなんだ?雷戦の時にはいなかったが?」
「!!」
女と言われたので、明らかに自分をさしているのがわかった魅真は、反応を示し、XANXUSを強くまっすぐな目で見た。
「私の名前は真田魅真。この並盛中学校の風紀委員で、ツナ君達のクラスメートで、ツナ君達の友達です」
ツナの友達という言葉が魅真の口から出ると、XANXUSの眉はピクリと動いた。
「そして……ボンゴレ10代目ボスであるツナ君の、雲の守護者です!!」
「えっ!?」
「なっ!!」
「何ぃ!?」
「まじかよ…」
「なんと…」
魅真の口から出てきた衝撃的な言葉に、ツナ、獄寺、了平、山本、バジルは驚いた。
「ああ゙!?何言ってやがんだ、てめぇ!!」
「雲の守護者は、あの雲雀とかいう男のはずだよ」
「1つのリングに2人守護者がいるなど、聞いたことがないぞ」
「頭イカレてんじゃね?」
「家光のヤローは、一体何を考えてやがるんだぁ!!?」
ツナ達だけでなく、当然ヴァリアーのメンバーも驚き、口々に疑問を投げかけた。
「その、ツナ君のお父さんの、ボンゴレ門外顧問のボスである沢田家光さんから、正式に許可をいただいてきました」
けど魅真は、迫力のあるスクアーロの声にも、臆することなく、彼らの疑問に答える。
「私を、雲雀さんと同じように、有事の際にはツナ君を助け、戦う、もう1人の雲の守護者とすると!!!」
「親方様が…?」
自分のボスの家光が、そんなことを言っていたとは知らず、バジルは先程とは別の意味で驚いていた。
「ゔお゙お゙ぉい!!そんなことが許されんのかあ!!?」
まだ納得できていないスクアーロは、近くにいるチェルベッロに問いただす。
「本来なら、あなたの言う通り、守護者は1つのリングにつき1人です」
「ですが、片方のハーフボンゴレリングを保持している、沢田家光氏が認めているのなら、問題はありません」
「なんだそりゃあ!?」
スクアーロの問いに、チェルベッロは淡々と答えるが、到底スクアーロが納得できるものではなかった。
「あなたの言いたいことはわかります…。ですが、過去に一度だけ、1つのリングに2人守護者がいたことがあります」
「なんだとお!?」
「それは、初代雲の守護者です」
自分と雲雀以外にも、1つのリングに守護者が2人いたことを初めて知り、驚いた魅真は、それが自分と同じ雲の守護者だということに、更に驚いた。
「初代雲の守護者は、今回の沢田氏側の雲の守護者と同じように、1組の男女が務めていたといいます」
「ですので、なんら問題はございません」
「くっ…」
チェルベッロの言うことに、それ以上反論する言葉がなくなったスクアーロは、どこか悔しそうに歯噛みする。
「おもしれぇ…」
そこへ、今まで黙ってたXANXUSが口を開き、魅真を睨みつけた。
「誰が参戦しようと、負け犬はかっ消す」
「!!」
「てめーらか
このカスをだ」
「なっ」
敵であるツナ達はわかるが、味方のはずのスクアーロまで入っていたので、スクアーロは声をあげる。
「ゔお゙ぉい!」
そしてXANXUSに文句を言おうとするも、XANXUSは1人先に、さっさと外へ出ていってしまった。
「XANXUSの奴本気だな」
リボーンの言葉に、ツナはゴクリとのどを鳴らした。
「あんまり勝負前に驚かすなって、リボーン」
「「ディーノさん!」」
そこへ、XANXUSと入れ違うようにして、入口の前にディーノとロマーリオが現れた。
「山本、おまえの勝負、見させてもらうぜ」
「うぃっす」
「恭弥の奴も、昨日突然リング争奪戦の話を聞いてくれてな」
「昨日まで知らなかったのーーーー!?」
「たぶん見にきてるぜ」
修業をしていたのに、リング争奪戦のことを知らなかったので、ツナは驚いた。
そして、その雲雀は、校舎B棟を見下ろせる、屋上にある給水タンクの上にすわっていた。
「皆殺しにすれば早いのに」
戦闘フィールドの校舎B棟を見下ろし、あくびをしながら、とんでもないことを言っていた。
「……?霧…?」
その時、どこからか霧が流れてきた。
街中の学校に霧が発生しているので、雲雀はふしぎそうにした。
「山本武……」
その、霧がもっとも濃くなっている、体育館の上では…。
「勝って、自分のところまで繋いでもらおう」
そこには3人の影があり、校舎B棟を見ていた。
場所は、再び校舎B棟に戻り…。
「もう1勝3敗で後がねーからな。いろんな意味で注目の一戦ってわけだぞ」
「よーし!!そうと決まれば、円陣に真田とヒバリもいれるぞ!!」
「い゙っ」
校舎B棟では、雨の守護者の戦いが始まろうとしており、その前に、今までの戦いの前にもやっていた円陣をやろうと、了平がはりきっていた。
魅真はいいのだが、雲雀もと言ったことに、ツナはギョッとした。
「真田、ヒバリの奴はどこだ!?」
「一緒には来なかったので、はっきりとどこにいるかはわかりませんけど、たぶん、この戦いを見れる、校舎B棟の近くにいると思います。でも……」
「よーーし!!なら真田!!ヒバリをつれてこい!!」
「えぇ!!」
かなりの無理難題を言ってくる了平に、魅真はあわてた。
雲雀を、このたくさん人がいる場所につれてくるなど到底不可能だし、了平は了平で、雲雀が群れるのが嫌いだからという理由で、引き下がるような人物ではないからだ。
「あいつは無理だろ…」
「ハハッ。だな」
「ぜったい殺される………」
「オレもそう思うぜ………」
円陣に誘った時の雲雀が、どういう行動に出るか容易に想像がつくので、ツナ、山本、獄寺、ディーノは、魅真をフォローするように、口々に言った。
「特例など、オレが許さん!!」
それでも、了平は頑として譲らなかった。
「まーまー…。そのかわりってわけじゃないけど、バジル君、いれちゃだめかな…」
「え……。拙者も…?いいんですか?」
自分はボンゴレの守護者ではないのに、自分も誘われたので、バジルは驚いた。
「10代目が言うのなら、オレはいいぜ」
「運命共同体だからなっ」
「私もいいよ」
ツナの提案に、魅真も獄寺も山本も賛成したので、バジルは少し照れくさそうにしていた。
「もちろん、ランボも…」
言いながらツナが取り出したのは、ランボの服についているしっぽだった。
「それ、ランボ君の…。ランボ君に、何かあったの!?」
「あ…うん。あとで話すよ」
ちぎれた服のしっぽとツナの雰囲気で、ランボに何かあったとわかった魅真は、何か深い事情があるのだと察して、ツナに問いかけるが、話すと長くなるので、ツナは言葉を濁した。
魅真も、今のツナの反応で、長い話になるのだということがわかったので、今ここでは、それ以上は聞かないことにした。
「よし!!」
そして、ツナから時計回りに、山本、魅真、獄寺、了平、バジルの順で円になった。
「山本、ファイッ!!!」
「「「「「「オーーー!!!」」」」」」
全員が自分の両隣にいる人物と肩を組むと、気合いをいれた。
「(結構はずかしいかも…)」
体育会系でない魅真は、円陣が嫌いというわけではないが、やはりこういう体育会系独特のノリには、少しばかり抵抗があった。
「では、雨の守護者は、中央へお集まりください。尚、今回は水没するため、観覧席は、校舎の外となっており、勝負の様子は、壁に設置された巨大スクリーンに映しだされます。守護者以外の方は、すみやかに退室してください」
「じゃあ、しっかりな山本!!」
「がんばってね、武君」
「負けんじゃねーぞ」
「オッケ」
「じゃ…じゃあ…がんばって…」
「おう!あとでな」
山本はツナに笑顔を向けると、持っている竹刀で肩をたたきながら、チェルベッロに言われた通りに、中央へ歩いていった。
「(山本、気をつけて…)」
山本は余裕の表情だったが、それでも、やはりツナは心配だった。
全員、山本とスクアーロを残して外に出ると、ツナ達は、校舎の外側の壁に設置されたスクリーンの前に、ヴァリアーとは離れてならんだ。
「おい、リボーン!どうなってるんだよ?」
ならぶと、突然ツナが、ディーノの肩にいるリボーンに問いかけた。
「どうなってるって、何がだ?」
「何がだって……なんで魅真ちゃんが、雲の守護者になってるんだよ?」
「さっき、魅真本人が言ってたじゃねーか」
「そうじゃなくて……」
「わりぃ、ツナ。オレが魅真に全部話しちまった」
ツナが何を言いたいのかわかったディーノは、バツが悪そうな顔で、ツナに謝罪した。
「えぇ!!ディーノさんが!?」
「魅真がすごく真剣だったから…。本当にわりぃな」
自分が、魅真にボンゴレのことを知られたくないのは、スクアーロがバジルを追ってきた時に知ったので、魅真には何も言わないでくれると思っていたのだが、期待を裏切られるような形となってしまったので、ツナは驚いた。
「だが、雲雀が雲の守護者に選ばれた以上、遅かれ早かれ、魅真にも知られることになってたぞ。それに、魅真は自分で直接家光に会いに行って、頼みこんだんだ。そうしたのは、魅真の意志だぞ」
「そうかもしれないけど…。あーーあ!父さんの奴、絶対に魅真ちゃんがかわいいから、甘い顔してOKしたんだ」
「それはねーな」
「え…?」
ツナの予想を、リボーンはあっさり否定した。
「確かに、魅真をかわいいと言ってたが、仕事に私情をもちこむ奴じゃねえぞ、家光は」
「じゃあなんで…」
「簡単だぞ。魅真の強い決意と覚悟を感じとったから、守護者にしたんだ」
リボーンにそう言われると、ツナはリボーンに向けていた顔を、魅真に向けた。
ツナとリボーンの会話が聞こえているのかいないのか、了平の隣にいる魅真は、真剣な顔で画面を見ていた。
「なお、制限時間は無制限です」
勝負を行う山本とスクアーロが中央に来ると、チェルベッロから勝負に関しての説明された。
「ゔお゙ぉい!!まだ懲りないらしいな。一週間前に逃げ出さなかったことを、後悔させてやるぞぉ!!」
「ハハ。やってみなきゃわかんねーぜ」
中央に来ると、スクアーロは余裕の笑みを浮かべて、山本を挑発するが、山本は意に介していなかった。
「それでは、雨のリング、S・スクアーロVS.山本武。勝負(バトル)開始!!」
2人が中央に来ると、チェルベッロの口から、勝負開始の合図が出された。
勝負開始の合図が出されると、スクアーロはすぐにとびだした。山本に向かってまっすぐ走っていき、左手につけられた剣をふりかざす。
山本もまた、スクアーロに向かってくると、スクアーロに向かって走っていった。
そして、スクアーロが剣を横にふると、体勢を低くして剣をよけて、スクアーロの後ろに行った。
けど、スクアーロは剣を横にふった体勢のままで、剣から火薬をとばし、山本はその火薬にあたりそうになった。
「そーだ。あの武器!!刀の刃から!!」
「仕込み火薬!!」
「武君!!」
ツナ達が心配したが、山本は横に移動して、火薬をよけた。
火薬は、山本がいるところのすぐ隣…かなりすれすれのところで爆発したので、まさに間一髪だった。
だが、スクアーロは休むことなく、再び山本に向かって走っていったが、山本のもとに来る前に消えてしまった。
けど、消えたのではなく、目にも止まらぬ早さで山本の後ろに移動しただけだった。
そのことに山本は気づき、容赦なく剣をふるうスクアーロの攻撃を、竹刀で受け止めた。
「何だ、今の!?」
「速い!!」
「いつの間に…」
ものすごいスピードに、ツナもバジルも魅真も驚いた。
スクアーロは剣を止められるが、そのままの状態で、また剣から火薬をとばした。
「あの距離では!!」
あんなに距離が近くてはよけることができず、火薬は山本を巻きこんで爆発した。
「!!」
「武君!!」
「山本!!」
ツナ、獄寺、魅真は山本を心配し、スクアーロはこれで山本をやったと笑みを浮かべた。
だがその時、煙が火薬が爆発した時のものではなく、円を描いた。
「な…なんだ!?あの煙の形…!?」
「山本の奴、抜いたな」
「えっ!?」
「これが、時雨蒼燕流守式七の型 繁吹き雨」
煙の形が変わったのは、山本が竹刀を刀に変化させて、技を出し、火薬の爆発を防いだからだった。
それを見て、スクアーロだけでなく、外にいるボンゴレとヴァリアーのメンバーも、全員が目を見張った。
「す……すごい!ロン毛の爆風をかわしたよ!!」
「あれが、山本の時雨蒼燕流。まだ粗さはあるが、この短時間で、よくここまで…」
「まったくだぞ。この一週間、山本が他の守護者の勝負の時以外、ほとんど寝ずに稽古していたのは知っていたが…。いくら、野球で鍛えた体力と反射神経があるといっても、型を覚えるのと実戦で使うのとでは、まるで次元の違う話だからな。ましてや、命がけの勝負だ。カタギの人間が、いきなり臆することなく戦えるとしたら、よほどのバカか…生まれながらの殺し屋だぞ」
「な!?山本が殺し屋って…。何言ってんだよリボーン!!」
「ま、どっちみち、山本に目をつけたオレが、一番すげーんじゃねーか?」
「結局自分の自慢話かよ!!」
「………だが…これ以上、時雨蒼燕流に頼るのは危険だ」
「! またディーノさん、そんなこと…。だって、実際に技が効いたんですよ!」
「そうですよ。一体どうしてですか?ディーノさん」
山本は時雨蒼燕流でスクアーロの攻撃を防いだのに、なんでそんなことを言うのか、魅真もツナもふしぎでならなかった。
一方スクアーロは、山本の方へ走っていくと、また火薬をとばした。
火薬は山本の両隣で爆発したので、大きな水しぶきが起こり、山本は退路を絶たれてしまい、スクアーロに切られそうになった。
だが山本は、刀の先を水につけると、勢いよく上にふりあげる。
そのことで、水がカーテンのように形づくられた。
そして、反対側からも、同じように刀を水につけて勢いよくふりあげ、カーテンのような水の壁をつくりあげた。
水の壁ができたことで、スクアーロは山本の姿が見えなくなった。
「な…何だ!?」
「時雨蒼燕流、守式弍の型」
それは、時雨蒼燕流の技だった。
スクアーロはかまわずに、水の壁ごと山本を斬るが、手応えはなく、舌打ちをする。
「逆巻く雨」
スクアーロに斬られたことで、水の壁はなくなり、山本の姿が見えた。
山本は、技を放った後に、その場にしゃがんだので、スクアーロの剣で斬られることがなかったのだ。
「…………」
「水の壁で姿をくらました上に、身を縮めて防御。あれでは当たりません」
「刀であんなことが…」
逆巻く雨は、ふりあげた刀で水を持ち上げることによって水の壁をつくり、姿をくらます防御の技なので、魅真達はその技を見て感心していた。
「(これなら…大丈夫。大丈夫だよ!) ほら、ディーノさん!!やっぱりすごいよ!!山本も時雨蒼燕流も!!」
「だと、いいんだけどな…」
「!?」
これなら、ディーノの考えも杞憂に終わるだろう。ツナはそう思ったが、ディーノはツナの意見を否定した。
「スクアーロが…喜んでいる様に見える…」
ディーノが言う通り、スクアーロは喜びの笑みを浮かべていた。
《ゔお゙ぉい、小僧!!なぜ、防御の後打ちこんでこなかった!!》
《!?》
勝負の最中だが、スクアーロは疑問に思ったことを、山本に問うた。
《愚かなアホがぁ!オレに唯一傷をつけることができた、最後のチャンスを潰したんだぞぉ!!》
《!?》
「え……?」
「最後のチャンス…!?」
「どういう…こと?」
「ししし」
「どうやらスクアーロは確信したみたいだね」
「負け惜しみを言いおって!ハッタリに決まっている!」
山本も、ツナも、バジルも、魅真も、了平も、スクアーロが言ってることの意味がよくわかっていなかったが、ベルとマーモンは理解していた。
《ハハ…。最後って…。ずいぶん言ってくれるな》
絶望的に聞こえるスクアーロの言葉にも、山本は笑っていた。
《言っとくけど、時雨蒼燕流は、これだけじゃないんだぜ》
そして、不敵な笑みを、スクアーロに向けた。
「そうだぞ。時雨蒼燕流は、守型四式、攻型四式の、状況に応じた八つの型が存在するんだ」
リボーンがそう言った後、山本は刀を構えた。
「! 山本が初めて…前に出た!!」
山本はスクアーロのもとへ走っていき、刀を強くにぎると、下に向けていた刀を上にふった。
「(速い!!)」
それは結構な早さで、スクアーロはその攻撃を自分の剣で防ごうとしたが、刀はスクアーロにもスクアーロの剣にもあたらず、空を切った。
「山本殿の手に、刀がない!!」
そう……。山本の手ににぎられていたはずの刀は、左手から離れ、下にある右手に移動させていた。
「時雨蒼燕流、攻式五の型 五月雨」
山本は右手で刀をとると、刀を横にふった。
その攻撃はスクアーロにあたり、スクアーロは後ろに倒れた。
「「「!!」」」
「い…今のは…っ」
「五月雨。一太刀のうちに、刀の持ち手を入れ替え、軌道とタイミングをずらす、変幻自在の斬撃だ」
「ま…まーまーやるじゃねーか」
「すげぇ…。山本…」
「ほんと…。すごいよ、武君」
魅真とツナは感心しきっていて、獄寺も、顔をひきつらせてはいるが、獄寺なりに山本をほめていた。
「めでたい連中だな」
「うむ…。ヴァリアーのボス候補になるということが、どれほどかわかってないね」
だが、一方でベルとマーモンは、スクアーロがやられたというのに、余裕の表情だった。
《ゔお゙ぉい!!》
ベルとマーモンがそう言った時、スクアーロの声がした。
声がしたと思うと、山本の前では、スクアーロが仰向けになった状態から跳んでいる姿があった。
《効かねぇぞ》
着地をしたスクアーロは、余裕の笑みを浮かべており、まったくの無傷だった。
「「「!」」」
《あり…?》
確かに、先程の自分の攻撃は当たっていたというのに、無傷だったので、山本はふしぎそうにした。
「スクアーロは、無傷だ…!!」
「な…なんで!?間違いなく当たってたのに!」
「一瞬だ。山本の刀の軌道に合わせ、一瞬身をひいたんだ…」
「! そんなことって」
「奴に動きを読まれていたとしか考えらんねーな」
「しかし、拙者の見る限り、山本殿が持ち手を替えるための、モーションの不自然さは見当たりませんでしたよ…」
「じゃ…じゃあどうして……!?」
《ゔお゙ぉい。お前の使う、無敵の流派とやらは、こんなものかぁ!?》
《!》
「(まずいな…。やはり怖れていたことが…)」
「(山本……)」
《それとは別に、一つ、腑に落ちねえことがある。貴様、なぜ今の一太刀に、刃ではなく、峰を使った?》
「!」
「峰打ち?」
《そりゃあ、オレはあんたに勝つためにやってんで、殺すためじゃねーからな》
「! あの野球バカ。そんな甘っちょろいことを…」
「(山本……)」
「ナンセーンス」
「ふざけてるね」
自分がやられれば、自分や他の仲間達も殺されてしまうという極限状態の中、刀をぬいて戦っているというのに、甘いことを言ったので、獄寺は呆れ、ベルとマーモンはバカにしていた。
《ゔお゙ぉい。ずいぶんナメてくれたなぁ!!まだ、自分の置かれた状況がわかってねぇようだなぁ!!その生意気な口をきけなくしてやる!!》
スクアーロは剣を構えて、山本にまっすぐに立ち向かっていった。
対して山本は逆巻く雨を出すが、スクアーロはニヤッと笑うと、山本と同様に水柱を出した。
「ロ……ロン毛も」
「同時に水柱を!?」
「これではお互いに視界が!!」
「先に見つけた方が勝ちだな」
お互いに水柱を出したので、山本は動きが止まってしまった。
その時、スクアーロは山本の背後に現れた。
山本はスクアーロの存在に気づいたが、山本が技を出すよりも早く、スクアーロは山本を切った。
「「!!」」
「武君!!」
「山本!!」
今度は確実に切られたので、魅真とツナは、心配そうに叫んだ。
山本は肩から胸にかけてななめに切られ、そこからは血がふき出た。
そして、スクアーロに斬られると、山本は地面にひざをついてしまう。
《どうだぁ!痛いかぁ!?最後に絶望的なバッドニュースを教えてやる。貴様の技は、すべて見切ってるぜぇ。
その時雨蒼燕流は、昔ひねりつぶした流派だからなぁ!!》
《!》
《!!》
スクアーロの口から出た真実に、山本もツナ達も驚いた。
「時雨蒼燕流を、昔つぶしただって…!?」
《剣帝という男を倒し、極めた剣を試すため、オレは強ぇ相手を探していた。
そんな折、細々と継承されている完全無欠の暗殺の剣が、東洋にあると聞いた。それが時雨蒼燕流。
見つけたぜぇ。継承者と弟子の3人をな。貴様と同じ八つの型を使いやがった。
だが所詮は、古典剣術(ロートルけんじゅつ)の亜流!!すべての型を受け!!見切り!!切り刻んでやったぞぉ!!》
「そ…そんなことって!」
「恐らく本当の話だぞ。スクアーロの技の見切りは、反射レベルより、もう一ランク早い」
「………!!!」
「なんて奴だ…。山本殿の時雨蒼燕流まで」
「(スクアーロ…。剣帝を倒したのは伊達じゃない…)」
「! じゃ…じゃあ、山本の技は、もう全部効かないってこと…?」
「そんな……」
《聞いてねーな。そんな話…》
けど、山本は傷口をおさえながら、スクアーロの話を否定する。
「……!」
「山本!」
「武君!」
《ん゙ん?》
《オレの聞いた時雨蒼燕流は ハァ… ハァ ハァ 完全無欠、最強無敵なんでね》
山本は、自分の父親から聞いたことを信じて疑わず、荒い息をくり返しながら、その場を立ちあがった。
「あくまで山本殿は…」
「いかん!!」
《ゔお゙ぉい!!バカか貴様は!!》
山本が言った言葉に、スクアーロは見下すように笑う。
《やってみなきゃわかんねーって》
《もう加減はしねぇぞぉ》
「!」
「……」
「スクアーロが牙を剝く」
スクアーロは剣を構え、山本に向かって走り出し
「いくぜ」
山本もまた、刀を構えて、スクアーロに向かって走り出した。
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