標的41 雲の守護者
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次の日の夜。
人里から離れたとある山の奥で、雲雀とディーノが修業をしていた。
そこは、月や星の光も届かないような深い闇の中だったが、二人はそんな状況などものともせずに、死闘をくり広げていた。
だが、しばらく戦っていると、突然並中の校歌が聞こえてきた。
もちろんその歌の発信源は、雲雀の携帯からであった。
今の今までくり広げられていた死闘の、ピリピリとした空気を、一瞬で壊してしまうほどのものだった。
「もしもし」
けど、雲雀はそんなのはまったく気にせずに、携帯の通話ボタンを押すと、電話をかけてきた相手に話しかけた。
それをきっかけに修業は終了し、ディーノはロマーリオから受けとったタオルで汗をふいていた。
ロマーリオと同じように、雲雀とディーノの修業に着いてきた魅真はというと、電話の内容を静かに聞いている雲雀を見ていた。
雲雀の交友関係は、雲雀本人が群れるのが嫌いなので、電話をかけてきた相手は、草壁か他の風紀委員の誰かだろうと察しがついたが、電話の内容まではわからないので、魅真は気になっていた。
「おい恭弥。つーわけで修業はここまでだ。オレは用があって先に行くが、おまえと魅真は、おまえが身体(からだ)を休めてから――」
ディーノが話していると、雲雀は携帯の通話ボタンを押して、通話をやめた。
「魅真、行くよ」
「え…?」
そして、携帯をしまうと、魅真のもとに歩いてきて、魅真の手をつかむと、ディーノに背を向けて歩き出した。
「え……おい、どこ行くんだよ?」
ディーノに何も言わずにどこか行こうとしているので、ディーノは雲雀に問いかけるが、雲雀は無視して、魅真を連れて、あっという間にそこから去っていった。
標的41 雲の守護者
数十分後。
魅真と雲雀は、並盛中学校につき、門の前に立っていた。
「うわあ……」
校舎を見て、魅真は驚いていた。
何故なら、普通の中学校であるはずの並盛中学校が、どこの紛争地帯かと言いたくなるくらいの惨状になっていたからだ。
リング争奪戦の舞台になっているのは知っていたが、まさか、これほどまでにすごいことになってるとは思いもしなかった魅真は、口をあけたまま、校舎を見上げていた。
校舎の3階の窓は、ほとんど全部割られていた。
しかも、一部を割ったのではなく、窓の枠に、ガラスがかろうじて残ってるくらいのひどい有り様。
その上、割れた窓からは黒煙が上がっていた。
そして次の瞬間、3階の一部が爆発し、窓からは更にたくさんの黒煙が上がった。
きっと3階では、誰かはわからないが、自分の友人の誰かが、ヴァリアーの人間と死闘をくり広げているのだろう…。
それがわかった魅真は、校舎の中に入って現状を確かめようとした。
「あ……雲雀さん…」
けど、魅真よりも先に、雲雀が校舎に向かって歩いていた。
「行くよ」
魅真に声をかけられると、雲雀は顔だけ魅真の方に向けて、一言言うと、再び前を向いて歩きだす。
「待ってください!」
魅真は走って雲雀を追いかけた。
雲雀は校舎の中に入ると、律儀にも、上履きにはきかえた。
それを見た魅真も雲雀に倣い、上履きにはきかえた。
「誰だ、貴様ら!!」
上履きにはきかえたので、先程爆発が起きた3階に行こうとすると、全身黒ずくめの格好をした男が現れた。
「怪しい奴らだな…」
それはこちらのセリフだと思っていると、黒服の男は、何故かパラボラを構えて、魅真と雲雀に襲いかかってきた。
だが、雲雀の敵ではなく、雲雀はいともあっさりと、トンファーで、一撃で倒してしまい、男は悲鳴をあげる間もなく床に倒れた。
「何者だ!?」
けど、すぐに別の敵が現れた。
その男もまた、今しがた倒した男と同じで、全身黒ずくめの格好をしていた。
だが、雲雀は一瞬で間合いをつめると、その男を一撃で倒してしまう。
男を倒すと、雲雀は階段へ向かっていき、そのあとに魅真も続いていった。
敵がいるのは、昇降口だけではなかった。
階段へ続く廊下にも5人敵がおり、そのうちの1人が、雲雀と魅真を襲ってきた。
だが、雲雀はあっさりと倒してしまう。
「くそっ」
「オレはレヴィ隊長に知らせに行く!お前達はここを頼んだ!!」
「おう!」
「わかった!」
まだ倒していない4人のうち1人は、上の階に、自分の上司にこのことを伝えにいき、残った3人は雲雀と魅真を倒すため、パラボラを構えて、魅真と雲雀の前に立ちはだかった。
その中の、3人のうち2人の男が雲雀と魅真に向かっていくが、雲雀に一撃で倒されてしまう。
「ねえ……」
今の男を倒すと、雲雀は残った1人に、静かに声をかける。
「僕の学校で、何してんの?」
そして、今自分が一番知りたいことを、目の前の男に問うた。
「答える義理などない!!」
けど、男は雲雀の問いには答えず、雲雀に襲いかかってきた。
「そう……」
自分の問いに答えず、攻撃をするという反抗的な態度に、雲雀は目を細めた。
「ギャッ!!」
そして、一撃で倒してしまう。
雲雀は今の3人を倒すと、階段を上がっていき、その都度遭遇する敵を次々に倒していった。
ある者は扉のガラスをつきやぶり、ある者は大量の血を流し、それが窓や消火栓につき、またある者は階段から下に落ちていった。
そうして敵を倒していくと、雲雀と魅真は3階にたどりついたが、そこにも敵がいた。
しかし、雲雀の敵ではなく、雲雀はトンファーで殴りとばして、あっさりと倒してしまった。
「ぐあぁっ」
男は短い悲鳴をあげ、床に倒れた。
そのすぐあとに、男のあとを追うようにして、雲雀と魅真は、踊り場から3階の廊下まで歩いてきた。
「ヒバリさん!!え……魅真ちゃんも!?」
廊下まで歩いてくると、そこにいたツナが、驚きの声をあげた。
「魅真ちゅわ~~ん❤」
ツナの後ろでは、魅真を見たシャマルが、鼻の下を伸ばしていた。
「ヒバリさん…来てくれたんだ。本当に、リング争奪戦に加わってくれるんだ…。あの、最強のヒバリさんが…!!」
雲雀がいれば百人力だと、ツナは歓喜した。
「校内への不法侵入及び校舎の破損。連帯責任で、ここにいる全員咬み殺すから」
けど、雲雀はツナが思っているような理由で来たのではなかった。
「なっ。オレ達もかよ!」
「あの人、校舎壊されたことに怒ってるだけだーー!!」
「あいつ、本当に学校好きな」
雲雀が言ったことに、獄寺は驚き、ツナは顔が青ざめるが、山本は1人のんきに笑っており、どこかずれたことを言っていた。
「むむ…。むこうの守護者ではないのか?」
「どのみちガキかぁ」
「よ…妖艶だ」
相手側では、ロボットの手の上にのっている、フードをかぶった赤ん坊が疑問に思っており、以前町で会ったスクアーロはバカにした態度をとり、赤ん坊の隣にいる黒髪の男は、魅真を気にいったらしく、頬を赤くそめていた。
「ということは、ひょっとして、男の方ではなく、あっちの女の方が守護者か?」
雲雀ではないのなら、もしかしたら魅真の方が雲の守護者かと思った赤ん坊は、魅真に目を向けた。
「あいつがかぁ?この前会った時も今も、大して強そうには見えねぇぞ」
だがスクアーロは、魅真を雲雀の時以上に下に見ており、バカにしていた。
「まあ、どっちにしろ、オレ達の敵には違いなさそうだがな」
黒服の男を雲雀が倒したので、自分達の味方でないことだけはわかった。
「よくも…オレの部下を潰してくれたな」
スクアーロの言葉ではっとなった黒髪の男は、自分の部下をやった雲雀を、鋭い目で睨みつけた。
「あなたは沢田氏側のリング保持者ですか?でしたら、このような行為をされては…」
そこへ、褐色の肌をした、目にマスクをつけた女性が雲雀に近づいてきて、注意をする。
「どけ、チェルベッロ」
男は背中に装備しているパラボラに手をかけ、チェルベッロという、今雲雀に声をかけた女性に命令をしながら、雲雀のもとへ走っていく。
「奴はただの」
走りながら、パラボラをぬくと、パラボラを前に構えた。
「不法侵入者だ!!!」
構えたパラボラは電気をまとい、男は電気をまとったパラボラで、雲雀を攻撃しようとした。
だが、雲雀は男を横目で見ると、左足で男の足をひっかけた。
男はその勢いのまま、床にころんでしまう。
「まずは、君から咬み殺そうか」
そして、自分が言ったことを実行するために、トンファーを構えた。
「なに!?」
まさか、自分がこんなにもあっさりやられるとは思わず、男は驚きがかくせなかった。
「おーおー。かっこいいねーー」
そう言ったのは、何故かこの場にいるシャマルだった。
「あのバカ。出てくるなり。メチャクチャしやがって」
「でも、やっぱりすごいよ。ヴァリアーの攻撃を、いとも簡単に」
「ああ、さすがだな」
「できる…!何者なんですか?」
雲雀の身のこなしに、ツナと山本とバジルは称賛していた。
「奴は、うちの雲のリングの守護者にして、並中風紀委員長。雲雀恭弥だ」
「じゃあ、女の方じゃなく、男の方が守護者だったんだ。雲ということは、ゴーラ・モスカの相手だね」
「マーモン、奴をどう思う」
「たしかにレヴィは、ヴァリアーでも鈍重なうえに、故障しているが、それを差し引いても、なかなかの身のこなしだね」
「おのれ~っ」
マーモンと呼ばれた赤ん坊は、敵である雲雀を称賛した。
「やはり貴様は術士だな。剣士のオレには止まって見えたぞぉ」
だが、スクアーロにはそうは見えなかったようで、雲雀だけでなく、マーモンのこともバカにした。
「ゔお゙ぉい!!貴様、何枚におろして欲しい!!」
「ふうん。次は君?」
スクアーロが剣を構えると、雲雀はやる気満々で、うれしそうな顔をした。
「おやめください。守護者同士の、場外での乱闘は、失格となります」
「えっ!?」
「なに!!」
「やばいよ!」
チェルベッロの言葉に、魅真、ツナ、了平が反応し、どうしようかと頭を悩ませた。
雲雀を止めなきゃいけないが、人に言われてやめるような性格ではないからだ。
「まーまー。落ちつけってヒバリ。怒んのもわかっけどさ」
「!」
そこへ、山本が雲雀の前にやってきて、雲雀を止めようとした。
「邪魔だよ。僕の前には」
けど、やはり雲雀は聞く耳もたずだった。
「立たないでくれる」
それどころか逆効果で、雲雀は山本に向けて、トンファーをふり下ろした。
だが、山本は素早く雲雀の後ろに移動し、トンファーをつかんで雲雀の動きを止めた。
「そのロン毛は、オレの相手なんだ。我慢してくれって」
「!」
「「「!!」」」
山本の目を見張る動きに、魅真も雲雀もツナも獄寺も驚いていたが、リボーンだけがニッと笑っていた。
「(ん゙ん?刀小僧の今の動き……)」
また、一方でスクアーロも、何か思うところがあるのか、山本を凝視した。
「邪魔する者は、何人たりとも」
「!!」
「咬み殺す」
だが、山本の今の行動は、火に油をそそぐ行為であり、更に怒った雲雀は、トゲを出したトンファーを構えた。
「やっべ!怒らせちまった…!!」
「ひいっ。ヒバリさん!ちょっと待って下さい!」
ますます怒った雲雀を見て、山本もツナも顔が青ざめ、冷や汗を流した。
やめろと言われたが、そんなことを雲雀が聞くはずがなく、雲雀は今にも爆発しそうな雰囲気だった。
「ダメです、雲雀さん!!」
「魅真…」
そこへ、雲雀と山本の間に、魅真が割って入ってきた。
魅真が間に入ったことで、雲雀の顔つきは、幾分かやわらかくなる。
「今ここで戦っちゃダメです!」
「何故だい?」
ツナ達だけでなく、今自分と一緒にここに来たばかりの魅真までも、ツナ達と同じように止めてきたので、当然雲雀は疑問に思った。
「何故って……。今ここで、あのヴァリアーって人達と戦ったら、この戦いで、ツナ君達が失格になってしまうからですよ。さっき、そこの女の人が言ってたでしょう。そうなったら、ツナ君や、隼人君や、武君や、笹川センパイだけでなく、私や雲雀さんもやられてしまうからです!!」
「!」
「え…?」
このリング争奪戦の事情を知っているだけでなく、ヴァリアーのことも知っており、更にはやられる人間の中に魅真自身もカウントされていたので、雲雀だけでなく、ヴァリアーやツナ達も驚いた。
「魅真、なん「ひっさしぶりぃいい~~~!魅真ちゃああ~~~ん❤」
雲雀が事情を聞こうとすると、今の重い空気ににつかわしくない雰囲気で、シャマルが魅真に近づき、肩に手を置いた。
「ますますかわいくなったね~~。いやあ~~~、オジサンますますほれちゃうよ~❤」
「場の空気を読んでください!!」
何故、今このタイミングでこんなことをしてくるのかはわからないが、まったく空気を読まずに、高いテンションで話しかけてきたので、さすがの魅真も怒った。
それを見ていた雲雀も、先程とはまた違う意味でも怒り、ますます不機嫌になった。
「ちょっと……魅真と群れないでくれる?」
そして、シャマルの首にトンファーをあてた。
そんな雲雀を見て、シャマルはニヤッと意味深な笑みを浮かべる。
「なんでだよ?オレが魅真ちゃんにどんな感情を抱いていようと、どんな風に接しようと勝手だろ?」
言いながら、シャマルはわざとらしく魅真の肩を抱きよせる。
それが、ますます雲雀の怒りに拍車をかけることとなり、雲雀は今まで以上に目が鋭くなり、シャマルに対して殺気を放った。
「ちゃおっス、ヒバリ!」
「!」
これは一波乱あるかと思われたが、そこへリボーンが間に入ってきた。
「赤ん坊かい?悪いけど今取り込み中なんだ」
リボーンが間に入ったことで、雲雀の動きは止まったが、それでも怒りがおさまることはなかった。
「ここで暴れちまってもいいが、でっけえお楽しみがなくなるぞ」
「! 楽しみ…?」
「今すぐってわけじゃねーが、ここで我慢して争奪戦で戦えば、遠くない未来、六道骸と、また戦えるかもしんねーぞ」
「え!」
「骸?」
リボーンの口から骸の名前が出ると、ツナと魅真だけでなく、雲雀も強く反応を示した。
「ふうん。本当かな」
骸の名前を出すと、雲雀は大人しくなり、トンファーを下におろした。
「校舎の破損は完全に直るの」
「はい。我々チェルベッロが責任をもって」
「そう……。気が変わったよ」
すっかり大人しくなった雲雀は、山本に背を向けた。
「僕とやる前に、あそこの彼に負けないでね」
「え…」
「行くよ、魅真」
「え?ちょっと待っててください。隼人君がひどいケガをしているので、隼人君の手当てをしてから…」
魅真のその言葉に雲雀はムッとして、魅真の腕を、少し強めにつかんだ。
「いいから行くよ」
「え…ちょっ………雲雀さん!?」
「じゃあね」
「ヒバリ…」
雲雀はそこから去ると同時に、魅真の腕をひっぱって、強引に連れていった。
雲雀は魅真を連れて、外へ歩いていった。
「雲雀さん!雲雀さんてば!!」
「何?」
「何?じゃないですよ。なんで、隼人君のケガの手当てをさせてくれなかったんですか?隼人君、ひどいケガしてたのに」
魅真が獄寺を気づかう発言をすると、雲雀はまた不機嫌になる。
「僕は群れるのは嫌いだよ。それに、君じゃなくても、他にも小動物がいるから、その中の誰かがするでしょ」
「そういう問題じゃ…「そんなことより」
雲雀の言い分に抗議しようとすると、雲雀は魅真の言うことを遮った。
「君に聞きたいことがあるから、ちょっとついて来てくれる」
そう言って、魅真の腕をつかんだままひっぱっていき、学校の外へ出ていった。
魅真の腕をひっぱって雲雀が来たところは、河原だった。
河原まで来ると、今までつかんでいた腕を放した。
「雲雀さん、話ってなんですか?」
腕をつかんでいた雲雀の手が放れたので、ここが雲雀が連れてきたかった場所だとわかった魅真は、雲雀に聞きたいことというのは何かを問いだした。
「魅真……君……学校で行われていたバトルがなんなのか、あの黒服の連中がなんなのか知っていたみたいだけど、なんで知ってるの?」
「え?そ、それは…」
「それに、この前から君がかくしてることも、まだ教えてもらってないんだけど…。君が、僕にいつか話すって言ってたことって、一体なんなの?」
「えっと……」
「いい加減教えてくれる?」
雲雀は、今回は引く気はないらしく、魅真にせまっていく。
「ここにいたのか、二人とも」
その時、ディーノがロマーリオとともにやってきた。
「ディーノさん!ロマーリオさんも!」
「……何か用?」
雲雀は機嫌が悪いのをまったくかくさず、ピリピリとしたオーラを放ちながら、ディーノに話しかけた。
「お前に、その指輪のことや、今回のバトルのことを話そうと思ってな」
機嫌が悪い雲雀だったが、ディーノの口からそのことを聞くと、目がピクリと動いた。
「ちょうどよかったよ。そのことを聞きたかったんだ」
まさに今、魅真に聞こうとしてたことなので、雲雀は魅真に向けていた顔をディーノに向けると、ディーノに問う。
「まず、今回の戦いを説明するには、ボンゴレファミリーについて話さねぇとな」
「ボンゴレファミリー?」
雲雀の質問に、ディーノは順をおって説明しようとした。
ディーノの口から出た、聞いたことのない言葉に、雲雀は疑問符を浮かべる。
「ボンゴレファミリーってのは、イタリアに拠点を置くマフィアだ」
「マフィア…」
「伝統、格式、規模、勢力、どの点においても世界中のマフィアの中で別格の、超巨大ファミリーでな。
ちなみにオレは、そのボンゴレファミリーの同盟ファミリーである、キャバッローネファミリーの10代目ボスで、リボーンには昔師事を受けていたんだ」
「ふーーん」
「んで、お前が持っている指輪は、ボンゴレリングっつってな。ボンゴレボスとボンゴレファミリーの守護者がつける指輪だ」
「守護者?」
「文字通り、ボスを守護する者のことだ。言ってみれば、ボンゴレの幹部だな。
守護者は、晴、雨、嵐、雲、雷、霧と、全員で6人いて、お前はその、雲の守護者に選ばれたんだ。だからお前に、その雲の刻印がついたリングがくばられた。
今お前が持ってるリングは、正式にはハーフボンゴレリングっつってな、それだけだと、本当のボンゴレリングにはならねぇんだ。対となる2つが揃って、はじめて、後継者の証であるボンゴレリングになるんだ。そして、そのもう1対のハーフボンゴレリングを持ち、こちらのハーフボンゴレリングを奪うためにやってきたのが、独立暗殺部隊のヴァリアーっていう、さっきの黒服の連中だ。
それで、みんなが納得するために、ボンゴレ公認の決闘を開始したんだ。同じ種類のリングを持つ者同士の、1対1のガチンコバトルをな」
ガチンコバトルと聞いて、雲雀の目がピクリと動く。
「それがさっき学校で行われていたものだ。お前には、雲の守護者の後継者として、そのリング争奪戦に参加してもらいたい」
「じゃあ、そのリング争奪戦で戦えば、さっき赤ん坊が言っていた通り、六道骸と戦えるんだね?」
「おそらくな」
今回の事件について聞きたかったのは、骸と戦えるかもしれないとリボーンに言われたからというのもあり、曖昧ではあるが、ディーノの返事を聞くと、雲雀はうれしそうな笑みを浮かべた。
「あの……雲雀さん…」
「なんだい?」
「さっき雲雀さんが言っていた、私がかくしてたことなんですけど…」
「そういえばそうだったね。一体なんなの?」
魅真に話しかけられると、雲雀はディーノに向けていた顔を魅真に向けた。
「実は……私も、雲の守護者になったんです」
魅真は今の話の勢いにのって、今までかくしていたことをカミングアウトした。
予想していなかった事実に、雲雀は固まる。
「ごめんなさい、雲雀さん。私、知ってたんです。今回の事件のこと。ディーノさんが来た初日に、ディーノさんに教えてもらったので。でも、言ったら雲雀さん、反対するかもしれないので、雲雀さんがこのことを知るまで待ってたんです」
真実を聞くと、雲雀は眉間にしわをよせ、拳を強くにぎりしめた。
「騙し討ちみたいなことをしてしまったのは謝ります。けど私は、決して生半可な気持ちでなったわけじゃ……」
「勝手なことしないでくれる」
「え…?」
「君みたいな弱者が……戦闘のプロに敵うわけないだろ」
「た…確かにそうかもしれないですけど……でも、私は」
「いい訳はいいよ」
何故雲雀が怒るのかわからない魅真は、自分も守護者になった理由を話そうとするが、不機嫌になった雲雀は、それだけ言うと、魅真を置いて、先に帰ってしまった。
魅真は雲雀が去っていった方向を、雲雀の姿が見えなくなってもずっと見ていた。
「…大丈夫か?魅真」
「はい…」
雲雀がいなくなると、ディーノが魅真を心配して声をかけた。
はい…と言ってるが、魅真はしょんぼりとしていて、見るからに元気がなさそうだった。
「大丈夫です。雲雀さんが、突然不機嫌になるのは、いつものことですから…」
そのことを聞くと、ディーノは苦笑する。
「確かに最近は、なんだか機嫌悪いことが多いですし、冷たいですけど…。でも私、決めてますから…」
「決めてる?」
「どんなに冷たくされても、どこまでも、雲雀さんについていくって…」
決意を話す魅真は、真剣そのものだった。
その魅真を隣で見ていたディーノは、悲しそうな顔をしていた。
次の日の夜。
魅真は、リング争奪戦が行われている並中に、雲雀と一緒に行こうとしたが、雲雀の姿が家のどこにも見当たらないので、仕方なしに一人で行った。
「あ、ツナ君。みんなも」
並中に着くと、校舎の前で、ツナ、リボーン、山本、バジルと会った。
「魅真ちゃん…」
「よ、魅真」
「ちゃおっす、魅真」
「こんばんは」
4人も魅真の姿を見ると、名前を呼んだりあいさつしたりした。
「(魅真ちゃん…。ここに、こんな時間に来たってことは、やっぱり今回の戦いのこと…)」
ツナは、自分のことや、今回の戦いのことを知ってるであろう魅真とは、どこか接しにくく、今まで魅真と接していた時とは違い、前のように話すことができなかった。
「どうしたの?ツナ君」
「えっ!?あ……いや…なんでもないよ」
対して魅真は、いつも通りの態度でツナに接していた。
「そういえば、隼人君と笹川センパイは?」
「あとで来るってさ」
「そっか」
魅真の問いに山本が答えると、魅真は納得してにこにこと笑っていた。
「ゔお゙ぉいっ!!!」
その時、ツナの頭上を、聞き覚えのある声とともに、黒い影が通過し、ツナ達の目の前の、通路の屋根の上に降り立った。
「よく逃げださなかったな、刀小僧!!活け造りにしてやるぞおぉ!!」
それは、ヴァリアー側の雨の守護者の、スクアーロだった。
「S・スクアーロ!!」
「でっ、でたーっ!やっぱこえーーっ!!」
スクアーロを目にすると、ツナはいつものようにびびっていた。
「そうはならないぜ、スクアーロ」
対して、スクアーロの対戦相手である山本は、持っていた竹刀を横にふった。
「オレがあんたを、この刀でぶっ倒すからよ」
横にふった竹刀は真剣に変わり、山本はとても自信にあふれた顔をしていた。
「ん。変形刀か」
竹刀が刀に変わっても、スクアーロは動じていなかった。
「ってことは、流派を超えるんじゃなく、時雨蒼燕流で――…」
「オヤジが無敵ってんだから、無敵なんじゃね?」
「無敵だぁ?オレは、自ら無敵とほざいたバカ共を、何百と葬って来たぞぉ!!」
「!! ひいいっ、そんなぁ!!山本!!その選択は、やっぱりやばいんじゃ……!!」
スクアーロが言った言葉に、ツナは叫び、頭を抱える。
「本当…やべーよな…。サヨナラのチャンスにバッターボックスに立つみてーに、ゾクゾクするぜ」
だが山本は、まったく動じておらず、逆に楽しそうな顔をしていた。
「!! ……山本…」
「武君…」
「山本殿…。こんな時に何を……?」
「………そっか…。そーだよな。………忘れてた…」
「え?」
そんな山本を見たツナは、急に安心した顔になり、そんなツナを見たリボーンはニッと笑う。
「あれが山本なんだ…。昨日、スクアーロの話を聞いても、自分の修業に集中できたのは…。
山本なら、何とかしてくれそうな気がするからだ」
ツナが納得し、安心した顔になったのは、ツナの山本に対する信頼だった。
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