標的36 嵐の予感
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
野球部の秋の大会から数日後のこと。
いつも通りのさわやかな朝がやってきた。
魅真は部屋の扉を開けると、朝日をおがみ、にっこりと笑った。
標的36 嵐の予感
魅真は動きやすい服に着替えると、庭に出て、薙刀の素振りをしていた。
日課としている、朝の稽古である。
雲雀の家に居候してから日課にしていたが、以前リボーンに特訓してもらって以来力が入り、一か月前の黒曜戦の時以来、更に力が入るようになった。
理由は、雲雀を好きだと自覚したからだった。
雲雀が好き。雲雀が大切。雲雀を護りたいと思う気持ちが、今の魅真を動かす原動力となっているのだ。
「真田、今日もいい天気だな」
「あ、草壁さん。おはようございます」
そこへ草壁がやってきて、魅真に朝のあいさつをした。
「今日も気合いが入ってるな。黒曜の不良に襲われたあの一件以来、更にがんばっているな」
黒曜戦以来、魅真が気合いが入ってるのは、周りの人間にもわかるくらいだった。
「ええ。なんだか、とてもやる気が出てしまったんです」
「そうか、いいことだ。
じゃあオレは、委員長に用事があるから…。
がんばれよ」
「はい!」
草壁に応援されると、魅真は気持ちいいくらいに、気合いの入った返事をした。
それから一時間ほど稽古をすると、軽くシャワーで汗を流し、普段着に着替ると朝食をとり、その後は部屋でくつろいでいた。
《~♪~♪~♪》
部屋でくつろいでいると、突然机の上に置いておいた携帯が鳴りだす。
「誰だろ?あ…隼人君だ」
携帯のディスプレイを見てみると、そこには獄寺隼人の名前が表示されていた。
「はい、もしもし」
《おう、オレだけどよ》
通話ボタンを押して話しだすと、獄寺がぶっきらぼうに返した。
「隼人君。どうしたの?」
《じ、実はな……》
「うん?」
《い、今から……遊ばねえか?》
「え…。でも隼人君て、今日は確か、ツナ君の付き合いで学校に行くって…」
《それはなしになったんだ。というより、これは10代目をはげますためのものなんだ!》
「はげます?」
何故ツナをはげますのだろうと、魅真は疑問に思った。
《と、とにかくだな……お前も来い》
「いいけど……雲雀さんに許可をとってからでないと……」
《は?》
「あ、いや…。今日は、委員会のことで学校に行かなきゃいけない日だし。それに、雲雀さんは自分以外の人間が群れるのも嫌がるし。私、雲雀さんの家に居候している身だからさ」
《…わかった。じゃあ、遊べるかどうかわかったら電話くれ》
「了解。じゃあ、一度切るね」
魅真は携帯の通話終了ボタンを押して、獄寺との通話を終了させると、すぐに雲雀のもとへ行った。
雲雀のもとへ行くと、遊びに行きたいことを、雲雀に伝えた。
「遊びに?」
「はい。今、隼人君に誘われて……。それで、どうしても行きたくて」
「……ふーん…」
「あの……絶対に学校行って、終わらせなきゃいけないものは、何時間かかってでも終わらせますので、一時間でもいいので行かせてもらえませんか?」
「……………」
「お願いします!雲雀さん!!」
遊び=群れに行くので、機嫌を悪くしたのではないかと思った魅真は、必死になって、頭をさげて頼みこんだ。
「雲雀……さん…?」
「……四時間…」
「へ?」
「昼の二時までに、学校の応接室に必ず来ること。それが条件。この条件が守れるのなら、行ってきてもいいよ」
雲雀の口から出た言葉に、めずらしいと思ったが、それでもうれしさの方が勝っているので、うれしそうな顔をして、目を輝かせた。
「ありがとうございます、雲雀さん。必ず、二時までに応接室に行きます」
魅真はお礼を言うと、自分の部屋に行った。
魅真がいなくなった後、雲雀は小さくため息をついた。
それから魅真は、獄寺に電話をして、遊べることを伝えると、制服に着替え、薙刀を持って、待ち合わせの場所まで行った。
そこにいたのは、ツナ、獄寺、山本、リボーンといういつものメンバー。
そして集まったのは、京子、ハル、ランボ、イーピン、フゥ太といった、これまたいつも通りのメンバーだった。
獄寺と山本が誘ったメンバーが来ると、一行はさっそく街にでかけた。
「アホ共はよぶなって言ったのに」
「誰のことですか!!?」
ハルやランボまで来たので、不服そうに文句を言う獄寺。
誰とは言っていないが、獄寺の口から出た言葉なので、自分のことだとわかったハルは反発する。
「(すごい大所帯になってるし…)」
「ガハハハ」
けど、そのもう一人の対象であるランボは、気づいていないのか単にのんきなだけなのか、いつものけたたましい声で笑っていた。
「(でもやった――。京子ちゃんも来てくれた!!)」
「おい、ツナ」
ツナは京子が来たことに喜び、鼻の下を伸ばしていると、後ろにいる、山本の肩にのっているリボーンが声をかけてきた。
「さぼった分の補習の勉強は、帰ったら、ネッチョリやるからな」
「ネッチョリやだーーー!!」
せっかく補習をさぼって遊びに来て、京子も来てくれて喜んでいたのに、現実をつきつけられて、地獄に落ちた気分になるツナだった。
「僕、ゲームセンター行きたい!!」
「おっ、勝負すっか?」
「負けねーぞ、コラ!!」
「あれ?」
フゥ太の希望通り、さあゲームセンターに行くか!という雰囲気になっていると、突然京子が声をあげた。
「どうしたの?京子ちゃん」
「ランボ君がいない」
「あ、本当だ」
「そういえば…」
「(あ~~。大変な奴を忘れてた~)
!」
いきなり出鼻をくじかれ、ランボを探すはめになったツナ達。
「違和感ないけどさーー!!!」
すぐにみつかったが、何故か、ペットショップのケージに入って眠っていた。
「すいません!本当ごめんなさい!!」
確かに違和感はないが、場所が場所だけに、ツナはすぐにペットショップに行って出してもらい、店員に平謝りしていた。
「(あ~~~っ。京子ちゃんの前でかっこわるいーーっ)」
京子が見ている前での出来事だったので、ツナははずかしそうに顔を赤くしていた。
「もー。こんなことすんなよ、ラン…」
ツナはランボに注意をするが、そこには、すでにランボの姿はなかった。
「!」
ツナは嫌な予感がし、後ろへふり向く。
「目ん玉魚雷発射ーー!!」
「もー。ランボ様、許してください!!」
後ろにはランジェリーショップがあり、あろうことかランボは、下着の胸の部分に目をあてて遊んでいたのだ。
場所と、やっている内容が内容だけに、ツナは更にはずかしくなり、泣きながらランボに頼んだ。
「ランボさん、のどかわいた!」
「わかったわかった」
そしてランボは、次は飲み物を要求する。
どこまでも、ワガママとマイペースをつらぬくランボだった。
「すぐいくね……」
「すぐそこだからな」
ツナは山本達と一旦わかれ、飲み物を買うために、自動販売機があるところに行った。
「ツナ君、付き合うよ」
「え?あ…いいよ。悪いしさ」
「いいからいいから。ツナ君だけお守りなんてかわいそうだからさ」
「あ、ありがとう」
ツナは自分一人で行くつもりだったが、魅真がランボのお守りに付き合うことを申し出た。
「(気のせいかな?なんか魅真ちゃん、黒曜戦が終わってから、やたらオレについてまわってるような…)」
魅真は、黒曜ヘルシーランドで骸との戦いがあって以来、ひまさえあれば、ツナについてまわっていた。
ただの交友といえばそうかもしれないが、ツナは、どこか違和感を感じていた。
「(あっ……。もしかして魅真ちゃん、オレのこと好きなんじゃ!?あ……でも、オレには京子ちゃんがいるからな…。
でも……魅真ちゃんは、京子ちゃんと同じくらいかわいいしな…。
いやいや!オレは、京子ちゃんがダメなら魅真ちゃんでもOK!なんて、生半可な気持ちで、京子ちゃんを好きなわけじゃないんだ!!)」
その違和感を、違う方向に解釈するが、まったくの見当違いであった。
三人はすぐ近くの自動販売機まで行くと、魅真はランボの分だけでなく、ツナの分の飲み物も買った。
「はい、ツナ君の分」
「え…。あ、ありがとう」
「うぅん。いいよ」
飲み物を買うと、三人は自動販売機の前にあるテラス席にすわり、休憩をしていた。
「(はーあ…。結局ランボの世話で、京子ちゃんどころじゃ全然ないし…)」
ツナはせっかく京子が来たのに、話すらできないので、いろいろな意味でぐったりして、テーブルにひじをついていた。
魅真の好意はうれしかったが、それはそれ、これはこれで、とてもぐったりしていた。
「おつかれさま」
「!?」
その時、いきなり京子の声が聞こえてきた。
「ランボ君、すごく楽しそうだね」
「京子ちゃん!? (オレのために戻ってきてくれたの~?)」
何故ここにいるのか不明だったが、京子の姿を見ると、ツナは急にうれしそうに顔になった。
「#@И▽■!」
「どういたしまして」
「!」
目の前には、いつのまにかイーピンがすわっていた。
どうやら、京子はイーピンにせがまれて、ツナ達と同じように、ジュースを買ってあげたようだ。
「(なんだ…。イーピンに、せがまれてきたのか…)」
京子が来てくれたのだが、自分のためではなくイーピンのためだったので、うれしそうにしながらもどこか残念そうで、内心複雑な気持ちだった。
「私、ツナ君が黒曜から帰ってきた時、ホッとしたんだ」
「え?」
京子も、自分の分の飲み物を買い終えると、ツナ達のところに戻ってきて、ツナの隣にすわった。
「もっと、恐い感じになっちゃうかと思ったけど、ツナ君はいつものツナ君で、なんかホッとしちゃった」
「!! (よくわかんないけど…ほめてもらってるっぽい…!?)」
京子がツナの顔をジッと見ながら顔を近づけると、ツナは顔を赤くする。
「それに魅真ちゃんも」
「え?」
「魅真ちゃんも、ツナ君と同じで黒曜に行ったって聞いたから…。無事でよかったよ」
「ありがとう、京子ちゃん」
ツナのことだけでなく、自分のことも心配してくれた京子に、魅真は笑顔でお礼を言った。
「何の音だろ?」
「「え?」」
その時、突然何かを破壊する音が響いてきたので、京子は音がした方へ顔を向け、京子につられて、ツナと魅真も音がする方へ顔を向けた。
ドゴォッ
何回か破壊音がすると、今度はツナ達の目の前の建物で、すさまじい破壊音が響き、すごい量の煙が巻きおこった。
「な…何!!?」
ツナが立ち上がると、煙の中から、金属音とともに何かがとんできた。
「え…」
しかも、その「何か」は、まっすぐツナに向かってとんできたのだ。
「ええ!!?」
とんできたものを見て、ツナは驚き、顔が青ざめた。
「ぎゃああっ」
とんできたのは人で、ツナはよけきれずにその人にあたってしまい、二人一緒に地面に倒れ、ツナはその人物の下敷きになってしまった。
「す…すみませ…」
とんできた人物は、自分がぶつかってしまったので、あわてて起きあがると、ツナに謝罪をする。
「!!」
その時、彼はツナの姿を見て、目を大きく見開いて驚いた。
「いててて」
「……おぬし……!!」
「21世紀に……おぬし…?」
目を開いてはいないが、声は聞こえており、彼が自分に言った古めかしい二人称を、疑問に思った。
「ツナ君!」
ツナと少年のもとへ、魅真が心配そうに駆け寄ってきた。
「ツナ君!大丈………
!!」
少年の姿を見ると、魅真は言葉を止めた。
「(この男の子……ツナ君と同じで…額に炎がある!色は違うけど…)」
それは、少年の額には、ツナがハイパー死ぬ気モードになった時に額に灯る、死ぬ気の炎があったからだ。
「(この子……何者!?)」
魅真は少年を凝視した。
「あの……何か…?」
「へっ!?あっ……ごめんなさい、なんでもないの」
初対面なのに、穴があくくらいに凝視されたので、疑問に思った少年は問いかけるが、魅真は謝って、適当に誤魔化す。
「10代目ー!!」
「大丈夫か、ツナ!!」
そこへ、破壊音を聞いて戻ってきた獄寺と山本が、ツナのもとへ駆けよってきた。
「あいたた」
「ツナ君、しっかりして!」
「ツナ君、大丈夫?」
ツナの側には、魅真だけでなく、京子とランボとイーピンも駆けよってきていて、ツナを心配していた。
「お」
一方ツナ達の側では、リボーンがエスプレッソを飲みながら、騒ぎに気づいて、ツナ達の方へ目を向けた。
「なんで、あいつがここにいんだ?」
しかもその目線は、ツナ達ではなく、少年の方へ向けられている。
「ゔお゙ぉい!!」
少年がツナを起こしていると、そこへ、別の男の声が、爆発があった方から聞こえてきた。
「なんだぁ?外野がゾロゾロとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」
そこに現れたのは、銀色の長い髪に、全身黒ずくめの、外国の男だった。
「あぁ!?」
「誰?あの人」
「な…何なの、一体!?」
突然現れた男を、獄寺と山本は睨んでいるが、ツナと魅真は、何がなんだかわけがわからないといった感じだった。
「嵐の予感だな」
そして近くでは、男の姿を見たリボーンが、眉をひそめていた。
突如現れた、長い銀髪の男は、己の左手につけた剣を、左右一回ずつななめにふり下ろし、その検圧で攻撃をした。
剣圧は建物をつたって地面まで届き、一般人を巻きこむように、追い払うように、男は剣をふるっていたのだ。
周りにいた人々は、巻きこまれないようにと、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「ゔお゙ぉい!!邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」
「ひいっ。何なの、あの人~!!?すんげーやばいよ!!」
「くそ…」
すごい出来事にツナはびびっており、この光景に、京子は顔が青ざめていた。
そんな時、後ろからリボーンが、京子の体をつつく。
「女子供は避難するぞ」
「リボーン君………!」
相手に気取られないように、京子に避難することを促した。
「魅真ちゃん、行こう」
「ごめん。私、後で行くよ」
京子は魅真に声をかけるが、魅真はそれを断った。
「でも…」
「大丈夫だよ、京子ちゃん。あとで絶対に行くから」
「……わかった…」
「…………」
腑に落ちないようだったが、京子はその場を後にし、リボーンの言う通りにした。
リボーンは、女なのにここに残った魅真を、まっすぐにみつめた。
「(あの人……見るからに、すごいやばそうな人だ。すごく危険そうだし、ちょっと怖いけど……でも…!!)」
リボーンの視線に気づいていない魅真は、薙刀をぎゅっと強くにぎりしめて、ツナの方に目を向けていた。
「すみません、沢田殿」
「え!!?」
「つけられてしまいました」
「(だ…誰だっけ…)」
「(ツナ君の…知り合い?)」
自分は知らないのに、何故か相手は自分のことを知っていたので、ツナはふしぎに思い、誰だったか思い出そうとしていた。
「ああ!!頭にあるのって…。
(死ぬ気の炎!!?)」
更には、その少年の額には、色は異なるが、自分と同じ死ぬ気の炎が額に灯っていたので、それを見たツナは驚いた。
「せっかく会えたのに……こんな危険な状態に巻き込んでしまうとは…」
「え?あ…あの…誰でしたっけ!?」
少年は、危機的状況だからか、ツナの言ったことには答えず、ただ自分のことを話すだけだった。
「来てください!」
「あ!」
しかも、いきなりツナの腕をつかみ、走って連れていってしまう。
「ま、待って!」
雰囲気からして敵ではないようだが、正体がわからないので、勝手に現れ、勝手にツナを連れていってしまったので、魅真は心配になり、後を追いかけた。
「ちょっ、何なの!?」
「安全な場所へ!!おぬしに伝えたいことが!」
「ゔお゙ぉ゙い」
「「!!」」
走っている途中、頭上で声がしたと思うと、その声の主は、ツナと少年の前に着地した。
「もう鬼ごっこは終わりにしようや」
少年はツナを連れて、銀髪の男から離れようとしたが、男は三人の頭上を越え、いとも簡単に追いついてしまった。
「(何?この人…。あの距離を跳んで、一瞬で追いついた!?)」
魅真は、結構距離があったにも関わらず、跳んであっという間に目の前に現れた男に、疑問を抱いた。
「ひいい。でたーーっ!!」
ツナはツナで、突如自分の目の前に舞い降りた男にびびってしまい、魅真は薙刀を構えた。
「で、何だ?そいつらは」
「!!? (奴は沢田殿を知らなかったのか!?しまった!ここはやりすごすべきだった!!)」
どうやら、男がツナのことを知ってると思っていたので連れ出したらしいが、相手はツナのことを知らなかったので、少年は焦りを見せた。
「んで?そこの女もお前の連れか?」
「「え?」」
「女……?えっ……あ…?魅真ちゃん!?」
「おぬし……」
男に言われてふりむいてみると、二人の後ろには魅真がいた。
二人とも、魅真の存在には気づいていなかったようで、男に指摘されて、初めて魅真の存在に気がついた。
「そろそろ教えてもらおうか?」
「!」
そう叫びながら、男は、少年に向かってまっすぐに走っていく。
「!!」
「ひいっ」
それを見たツナはびびるが、少年がいち早く、己のブーメランのような形をした武器で、応戦しようとする。
「がっ」
「「!!」」
だが、男の方が少年よりも早く、少年の体を、己が持っている剣で斬りさいた。
それを見たツナと魅真は顔が青ざめ、少年はその勢いのまま後ろへふっとんでいき、ガラス張りの建物にあたるだけでなく、ガラスを突き破った。
「き…君!!」
「大丈夫!?」
見知らぬ人物ではあるが、状況が状況だけに、ツナと魅真は少年を心配する。
「うお゙ぉい」
「「!」」
「そーだぁ。貴様らだぁ」
少年が倒れると、今度は自分達に声をかけてくる男に、ツナはびびりながら、魅真は睨みつけながら、男の方へふり向いた。
「このガキとは、どーゆー関係だぁ?ゲロっちまわねーと、おまえらを斬るぜ」
「ひいぃっ。そんなぁっ。えと…あの…」
矛先が自分に向いてしまい、ぶっそうなことを言う男にびびったツナは、焦りながら答えようとするが、うまく言葉が出なかった。
「!!」
その時、突然男の頭上に、大量のダイナマイトが降ってきた。
ダイナマイトは爆発するが、男は建物の壁を蹴って、宙に跳んでよけた。
「なんだぁ?」
いきなり降ってきたダイナマイトをふしぎに思っていると、後ろに二つの人影が現れた。
「………?」
「その方達に手をあげてみろ。ただじゃおかねぇぞ」
「ま、そんなとこだ。相手になるぜ」
それはもちろん、獄寺と山本だった。
「獄寺君!!山本!!」
「隼人君!!武君!!」
そこには、獄寺と山本という強力な助っ人が来たので、ツナは安心して、顔が明るくなった。
「持って来てねーのに、なぜか、オレのバットがたてかけてあったんだよな」
「(あいつの仕業だーっ!!!)」
山本は相変わらずのんきに笑っているが、ツナはすぐに、リボーンの仕業だとわかった。
「てめーらもカンケーあんのか。ゔお゙ぉい。よくわかんねーが、一つだけ確かなことを教えてやんぜ。
オレにたてつくと死ぬぞぉ」
相手側は人数が増えて、自分は一人なのに、男はそれを意にも介さず、逆に余裕のある笑みを浮かべていた。
「その言葉、そのまま返すぜ」
「ありゃ剣だろ?オレからいくぜ」
しかし、獄寺と山本も、そんなものにひるむような人間ではなく、逆にやる気満々だった。
「やめてください!おぬしらのかなう相手ではありません!!」
「ん?」
「!」
「え…?」
「そんな…」
そこへ、いつの間にか起きた少年が、荒い息をくり返しながら、今にも男に攻撃しそうな二人を止めた。
「(やっぱりやばいよ~~っ。そーいや、リボーンはどこ行ったんだよ!!)」
ツナは、一人焦って辺りを見回し、リボーンを探していた。
「後悔してもおせぇぞぉ」
「行くぜっ」
そうしている間にも戦いは始まり、男が剣を構えて山本のいる方へ走っていくと、山本も剣を構えて男の方へ走っていった。
二人は剣を交えると、激しい攻防をくり返す。
「貴様の太刀筋。剣技を習得してないな」
「だったら何だよ」
「軽いぞぉ!!!」
「ぐっ」
そう言って男がふり下ろした一太刀はとても重く、山本は受け止めるのが精一杯だった。
同時に、受け止めた剣から、何やら小さなものがとび出した。
「!!」
山本はそれをよけるが、その直後に、大きな爆発が起こる。
「! 火薬!!?」
「山本ぉ!!」
「武君!!」
爆発が起こった煙の中から、ひとつの影が倒れた。
それは山本で、苦しそうな顔をしていた。
「ヤロッ!!」
山本がやられたことで、獄寺はダイナマイトを構える。
「おせぇぞ」
「!?」
煙の向こうから、ひとつの影が見え、声が聞こえた。あの男だった。
そして男は、煙でよく見えないだろうに、正確にねらって、一瞬でダイナマイトを切り落とした。
「!!」
そして、ダイナマイトを切ると、煙の中から姿を現し、流れるように足をふりあげて、そのまま強烈な蹴りを獄寺にお見舞いする。
「ぐあっ」
「獄寺君!!」
「隼人君!!」
今の攻撃で、山本だけでなく獄寺までもが倒されてしまったので、二人は心配そうに叫ぶ。
「ゔお゙ぉい。話にならねーぞぉ、こいつら。
死んどけ」
「ダメっ!!」
男は剣を構え、獄寺を切ろうとした。
魅真は、獄寺と山本でも敵わなかったのに、自分などでは到底敵わないだろうとわかっていたが、それでも二人がやられるところをだまって見ていることはできないので、薙刀を構えて、男に立ち向かおうとした。
「くっ」
しかし、それよりもわずかに早く少年が走ってきて、男と獄寺の間に立ち、荒い息をくり返しながらも、武器で男の剣を受け止めた。
それを見た魅真は、何故初対面の彼が、身を挺してまで獄寺を守ってくれるのか、ふしぎに思った。
「いよお゙ぉ、ゴミ野郎。そろそろゲロッちまう気になったかぁ?」
「断る!!」
「なら、ここが貴様の墓場だぁ」
今にも倒れそうなのに、自分の武器を手に、男とすさまじい攻防をくり広げた。
魅真は魅真で、いつ何があってもいいように、ツナの前に立ち、構えをとった。
「ひいいっ。やばいよ!!ど……どーしよー」
ツナは、自分ではどうしようもないが、それでもあの少年を見捨てるわけにもいかないので、オタオタしていた。
その時、ツナの頭の上に、やわらかい感触のものが落ちてきた。
「な…え……?」
一体何が落ちてきたのかと、ツナは手にとって確認してみる。
「この手袋はーー!!」
その、頭に落ちたものの正体は、骸との戦いで得た手袋だった。
「手相を見せる時も、真夏のうだるような暑い日でも、その手袋はつけとけ」
「なっ、おまえ!!」
「え…。リボーン君!?」
それは、リボーンが落としたもので、リボーンは植木のコスプレ姿で、ツナの後ろにある自動販売機の上に立っていた。
「おまえ、この大変な時に、今までどこにいたんだよ~!?」
「オレにも、いろいろ事情があるんだ」
非常時ではあるが、魅真はリボーンとツナのやりとりをジッと見ていた。
その時、三人の近くでは、少年が男の剣に切られ、その勢いで、後ろへ倒れてしまっていた。
「うう……」
倒れるだけでなく、彼の額からは、死ぬ気の炎が消えてしまった。
「ゔお゙ぉい。まさか、オレに勝てるとでも思ってたのかぁ?野良犬の分際で……。話は、そっちのガキどもから聞くことにしたぞぉ」
少年が倒れた様子を見て、男は余裕の笑みを浮かべ、少年を見下していた。
「てめぇは死ねぇ!!」
男は少年にとどめをさそうと、剣をふりおろした。
それと同時に、近くで銃声がした。
「復(リ)…」
その直後、ツナの手が、男の剣をつけている方の腕をつかみ、男の行動を阻止する。
「活(ボーン)!!!!」
けど、そのツナは、グローブをつけてはいるのだが、この前骸と戦った時のハイパー死ぬ気モードのツナではなく、通常の死ぬ気モードのツナだった。
「!」
ツナの姿を見た男と少年……特に男の方は、大きく目を見開いた。
「ロン毛!!!死ぬ気でお前を倒す!!!」
「ゔお゙ぉい。なんてこった…。
死ぬ気の炎に…
このグローブのエンブレムは…。
まさかおまえ、噂にきいた日本の…。
そうか……。お前と接触するために……」
口ぶりからして、どうやら男は、ツナの存在だけは知っていたようで、何やら一人で納得していた。
近くでこの様子を見ている魅真は、ツナの姿や言動だけでなく、少年や男の発言や、一挙一動にも目を見張り、耳をかたむけていた。
「ますます貴様ら、何を企んでんだぁ!?死んでも吐いてもらうぞぉ、オラァ!!!」
「うおおお!!!」
男がそう言うと、ツナは右拳で男に殴りかかるが、男はそれを、いとも簡単に、片手で止めてしまう。
「!?」
「ゔお゙ぉい」
しかも、ただ受け止められただけでなく、男の力は強く、びくともしなかった。
「よえぇぞ」
「ぎっ」
それだけでなく、剣でふっとばされてしまう。
「ぐあぁ!!」
「ツナ君っ!!」
ツナはとっさに防御をしたので、切られはしなかったが、まったく歯が立たなかった。
「死ぬ気弾じゃ、歯が立たねーのか」
そう言ったリボーンを、下(自動販売機の隣)にいた魅真は、無言のままちらっと見た。
ツナや、少年や、男の言動だけではない。リボーンの言動も、注意深く見て聞いていたのだ。
「本当は、小言弾で、ハイパーな死ぬ気モードにしてえとこだが、あれを使うと、ツナは2週間筋肉痛で動けなくなるからな」
今の戦いで、リボーンが、黒曜戦で使った小言弾を使わなかったのは、これが理由だった。
「どりゃあ!!」
その間にも、ツナと男の戦いは続いていた。
ツナは拳で、男は剣で戦う。
「ぐっ!」
しかし……
「ぎゃ!」
聞こえてくるツナの声は、次第にうめき声になっていき、情勢は悪化していった。
「はっ」
そうしている間に5分が経ってしまい、死ぬ気モードから、いつものツナに戻った。
「ゔお゙ぉ゙い。いつまで逃げる気だぁ!?」
「ひいいっ」
「腰抜けが!!」
男は、山本を倒した時のように、剣から火薬をとばして、ツナにとどめをさそうとする。
「わ!うわあああ!!」
死ぬ気モードは終わってしまったので、絶体絶命のピンチに陥ったツナは、顔を青くして泣き叫ぶ。
そこへ、少年の武器が飛んできて、武器をすべての火薬に当て、ツナに届く前に、空中で爆発させた。
「ぐっ」
そのことで、辺りに煙がたちこめ、男はツナの姿が見えなくなった。
「ハアハア」
「あ…ありがと…」
ツナは少年に連れられて、自動販売機と倒れたテーブルの間に来ていた。
「ツナ君、大丈夫?」
その自動販売機は、先程リボーンと魅真がいたところなので、そこにいた魅真は、心配そうにツナに声をかけた。
「みっ、魅真ちゃん!?え……あ………う、うん……。大丈夫…だよ……」
もう、今の戦いをばっちりと見られてしまったのは、ツナもわかっていたのだが、それでもあまり見られたくはなかったので、どこかおどおどしていた。
それでも魅真は、何事もなかったかのように平然としていた。
「ハアハア」
「あ…。き…君!だ…大丈夫なの?」
「ひどいケガだわ」
魅真の方に顔を向けていたが、少年が荒い息をくり返しているのに気づいた二人は、少年の方に顔を向けた。
ケガをして血を流している上に、荒い息をしているので、二人は心配そうに、少年に声をかける。
「拙者は、バジルといいます。親方様に頼まれて、沢田殿に、あるものを届けにきたのです」
「は?オレに?…つーか、親方様って…」
男だけでなく、少年…バジルも自分のことを知っていたので、ツナはパニックになるが、その間にもバジルは話を進めていき、話しながら、上着のポケットから、ある物を取り出す。
「ハアハア。これです」
「「?」」
バジルは箱を取り出して、ツナの前に差し出すと、それを開けて見せる。
箱の中には、変わった形の指輪が7つ収まっていた。
「なに……コレ……!?」
「指輪?」
「何かはリボーンさんが知ってます」
「えっ。君、リボーンを知ってんの?」
「リボーンさんは、わけあって戦えません。これを持って逃げてください」
「!! ちょっ、急にそんなこと言われても」
バジルは強制的に箱を渡すが、話が見えないツナはまごまごしていた。
「ゔお゙ぉい」
その時、突然男の声が聞こえたので、三人はビクッとなった。
「そぉいぅことかぁ。こいつは見逃せねぇ一大事じゃねーかぁ」
「「「!!」」」
男はしゃべりながら、剣でテーブルをはじきとばして、三人の姿が見えるようにした。
「貴様らをかっさばいてから、そいつは持ち帰らねぇとなぁ」
「くそ」
「ひいいいっ。なんなの~!!どーしよー!!」
自分達を殺る気満々な男を前に、ツナは顔面蒼白となり、魅真は薙刀を構えながらも不安そうな顔になった。
「………やべーな」
そして、その様子を自動販売機の上で見ていたリボーンの顔色も、あまりよくなかった。
.
1/2ページ