標的33 憑依
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「で、でたーー!!」
「えっ…ウソ!?」
「!」
「祟りだーー!!」
先程、骸の死を目のあたりにしたので、四人は驚き、ツナと獄寺は絶叫した。
「そんなバカなことあるわけねーぞ」
「でも…」
獄寺が言うことを否定するリボーンだが、自分達は骸が自殺したのを見たのだし、ビアンキの右目は確かに骸のものだった。
「やっぱり死んでる!!」
もう一度、骸が生きてるかどうか確認するが、やはり骸は死んでいた。
「クフフ。まだ僕には、やるべきことがありましてね。地獄の底から舞い戻ってきましたよ」
「や…やはり…」
「そんなことが…」
「あと考えられるのは…まさかな…」
ビアンキが骸に憑りつかれてるのを知ったリボーンは、あることを予想し、一抹の不安を感じていた。
標的33 憑依
「10代目、ここはオレに!!」
「! だけど相手は…」
「どうするの?隼人君」
骸に憑かれてるとはいえ、相手は自分の実の姉である。
ツナはそのことを心配した。
「臨・兵・闘・者!!」
「(魔よけーーーー!?どこで、そんな知識をー!!?)」
「(戦うんじゃないんだ。ていうか、意外にオカルト趣味…?)」
一体骸(ビアンキ)に何をするのかと思いきや、顔を青くしながら魔よけをする獄寺の姿に、ツナと魅真はドン引きしていた。
「…うっ。うう…」
「皆・陣・列!!」
「きっ、効いてる………!」
「ウソっ。ほ、本当に!?」
だが、意外にもそれは効いていた。
「う…」
「ビアンキ…!」
「ビアンキさん!」
うめき声をあげると、骸(ビアンキ)はその場に倒れ、床にうずくまった。
「………」
倒れると、ピクリとも動かなくなり、静寂があたりをつつんだ。
「ど…どーしよう………」
「ビアンキさん…。起こした方がいいかな?」
「いや…でも、演技ってことも…」
「わかんねーな」
「ビ…ビアンキ…?」
「ビアンキ…さん?」
骸がまだ憑いてるのか、それとももういないのかはわからないが、それでもビアンキをほっとけないツナと魅真は、おそるおそる近づいてみた。
その時、ツナの後ろに獄寺がやって来た。
ツナの後ろに立つ獄寺の手には、骸の槍があった。
「「?」」
「オレ、やりましょーか?」
急に影ができて暗くなったので、何かと思い、後ろへふり向けば、そこには、にこやかに笑う獄寺の姿…。
「獄寺く…
! 骸!!」
けど、ビアンキの時と同じように、そこに立っているのが、獄寺でないことを即座に見破る。
「わあ!!!」
ツナが骸の名前を言った瞬間に、獄寺が槍でツナを突き刺そうとするが、ツナはとっさに、横にころがってよけたので、槍は床に刺さった。
「は…隼人君…?」
「ひいい!!獄寺君が!!」
「ほう、まぐれではないようですね」
今度は獄寺に憑依したので、ツナはあわてて後ずさった。
「初めてですよ。憑依した僕を一目で見抜いた人間は……。つくづく君は面白い」
獄寺の目は赤く、六の数字が刻まれていた。
先程のビアンキの時と同じように……。
「そんな……どーなってんの~~~!!?」
「なんで…隼人君まで、ビアンキさんと同じように…」
「間違いねーな。自殺と見せかけて撃ったのはあの弾だな」
ツナと魅真はふしぎそうにしていたが、リボーンは獄寺が骸に憑かれていることを知り、どういうことなのかすべて理解した。
「「!?」」
「………」
「憑依弾は禁弾のはずだぞ。どこで手に入れやがった」
リボーンは、いつもよりも、とてもけわしい表情で、骸に問う。
「憑依弾…?な…何言ってんだ…?」
「憑依弾て……一体なんなの?」
「クフフフ。気付きましたか。これが、特殊弾による憑依だと…」
「え?特殊弾って、死ぬ気弾や嘆き弾のこと…?」
「(死ぬ気弾と…嘆き弾!?)」
「そうだ。憑依弾はその名の通り、他人の肉体にとりついて自在に操る弾だぞ」
「なんだってー!!?」
「それで……ビアンキさんと隼人君も…」
「エストラーネオファミリーが開発したと言われる特殊弾でな。こいつを使いこなすには、強い精神力だけでなく、弾との相性の良さが必要とされていたんだ。
だが、使用法があまりにもムゴかったため、マフィア界で禁弾とされ、弾も製法も葬られたはずだ」
「マインドコントロールの比では、ありませんよ。操るのではなくのっとるのです。そして、頭のてっぺんからつま先まで支配する。
つまり、この体は──…
僕のものだ」
それを証明するように、骸は、今自分がのっとっている獄寺の首を、爪で切って傷つけた。
傷つけた部分からは、真っ赤な血がふき出る。
「や……!やめろ!!!」
「やめてっ!!!!」
意識はのっとられているが、体は獄寺のものなので、ツナと魅真は焦って叫ぶ。
「ランチア程の男を、前後不覚におとしいれたのも、その弾だな。だが、なんでおまえがもってんだ?」
「僕のものだから─…とだけ言っておきましょう」
リボーンに問われるも、曖昧なことを言うだけで、質問にちゃんと答えてはいなかった。
「さあ、次は君に憑依する番ですよ、ボンゴレ10代目」
「え…?」
「なっ…。オ、オレ!!?」
「やはり、お前の目的は………」
「クフフフ。目的ではなく、手段ですよ。若きマフィアのボスを手中に納めてから、僕の復讐は始まる」
「な…何言ってんの~~~!?」
骸が言うことに、ツナは、何故自分が狙われるのかわからないというように叫んだ。
「そんな~~っ。オレは…っダメダメでいいことないって!!」
「奴の剣に気をつけろ」
「「え!?」」
「あの剣で傷つけられると、憑依を許すことになるぞ」
「そ!そんな!」
リボーンの警告に、ツナはますますおびえ、魅真は警戒して薙刀を構えた。
「よくご存知で」
「わっ」
話しながら、骸(獄寺)は槍を、ツナと魅真がいる方向へ投げるが、ツナと魅真はそれを、下にしゃがんでよけた。
「その通りです」
「!?」
槍を投げると、獄寺の体は床に崩れ落ちる。
そして骸は、ツナの後ろにいたビアンキに再び憑依し、ビアンキの体で槍を受け取った。
「もっとも僕は、この行為を、"契約する"と言っていますがね」
骸(ビアンキ)は、骸(獄寺)から槍を受け取ると、雲雀の体をその槍で切った。
「な!!?」
「あっ…」
雲雀を切ると、ビアンキの体は、また床に倒れた。
「「え…!?」」
自分を攻撃するのではなく、雲雀を切るだけで何もしなかったので、魅真とツナはふしぎに思った。
「「…………」」
骸が誰にも憑依していないので、静けさがあたりをつつみこんだが、突然雲雀の体が動いた。
「あ……」
「ま…まさか…!!」
嫌な予感がしたツナは、少し後退する。
「ヒバリさんの中にまで!!」
その、まさかだった。
体を槍で切られたのと、ビアンキの体が崩れ落ちたことを踏まえ、ツナはそのことを感じとった。
「がっ」
「ツナ君!!」
雲雀に憑依をした骸は、ツナに近づくと、トンファーでツナを攻撃する。
「いで!」
「おや?」
攻撃をされると、ツナは倒れるが、同時に骸(雲雀)も、何もされてないのに倒れてしまう。
「この体は使いものになりませんね。これで戦っていたとは、恐ろしい男だ、雲雀恭弥……」
骸は雲雀の体を起きあがらせようとしたが、雲雀の体はかなりぼろぼろのようで、雲雀はまた倒れた。
「ああっ、骸の気配が消えた……!ヒバリさん!!」
「大丈夫ですか!?雲雀さん」
あまりにもひどいケガをしていることは、ここに来る前から知っていたのと、骸が使いものにならないと言っていたことで、魅真はますます心配になって、声をかける。
「気をつけろよ。また、獄寺かビアンキに憑依するぞ」
「えっ!?」
「! ひいい!そ……そんな…!!」
次はどっちに憑依するかわからず、ツナは警戒しながら、二人を交互に見る。
「ご…獄寺君に!?」
すると、獄寺が憑依されて立ちあがった。
「え!?ビアンキにも!?」
と思ったら、ビアンキにも憑依をして立ちあがる。
「「!」」
二人が立ちあがると、後ろから扉が開く音がした。
後ろを見てみると、そこには、憑依された千種と犬が立っていた。
「! あれは…!!」
「もしかして…!」
「奴らもだな」
「んなーー!!?骸が四人…!?」
「同時に四人憑依するなんて、聞いたことねーぞ」
「それだけでは──」
リボーンがそう言うと、骸(獄寺)の右目が二の数字に変わった。
「ありませんよ」
右目が二に変わると、骸(獄寺)は、ツナに向けて何かを放った。
「ダイナマイト!!」
「あれって…隼人君の!?」
それは、獄寺の武器のダイナマイトだった。
「うわああ!!」
「きゃあああ!!」
それをツナと魅真は、間一髪でよける。
「憑依した奴の技まで使えんのか。
!」
「クフフ」
傍観していると、突然骸(犬)がアニマルチャンネルで攻撃をしてきたが、リボーンはそれを難なくよけた。
「君も、自分の命の心配をした方がいい、アルコバレーノ」
「ちっ」
今度は骸(千種)が、ヘッジホッグから毒針をとばしてきたが、リボーンはスーツの上着を素早くぬぎ、上着を盾にして針をかわす。
「きゃあ!!」
「ひいいっ!!」
「こいつは圧倒的にやべーぞ」
ツナと魅真は、叫びながら獄寺のダイナマイトから逃げており、リボーンは着地しながら、今の状況を冷静に見極めていた。
「第二の道餓鬼道は──…技を奪いとる能力(スキル)」
能力の説明をすると、骸(獄寺)はダイナマイトを、今度はツナだけに向けて投げた。
「ひいいいい!!!」
「ツナ君!!」
そのことで、ツナは逃げまどう。
「ぐわっ!!」
けど、爆発した時の衝撃で、床に倒れてしまった。
「乗っ取った上に、前世に刻まれたという能力も使えるのか」
「クフフフ」
今度は骸(ビアンキ)が、数字を六のままにして、何やら術をかけた。
「え!?」
すると、突然ツナの目の前の床から、何かが煮えたぎるような音がした。
「うわあぁあ!!!」
音がしたと思ったら、そこから火柱が発生したので、それをとっさによける。
「ツナ君、大丈夫!?」
「大丈夫じゃないよ。助けてーー!!!」
ツナを囲むように、何本もの火柱が周りに発生したので、恐怖のあまり、ツナは床にすわりこみ、頭を抱えた。
「できれば君は、無傷で手に入れたい」
「降伏してくれていいんですよ」
骸(犬)と骸(千種)は、ツナを手に入れるために、ツナのもとに近づいていく。
「ひいいい!!!もーダメだあ!!」
聞こえているのかいないのか、ツナはこの状況にパニックを起こし、頭を抱えたまま叫んだ。
「ツナ君!!こっちへ!!」
「学習しねー奴だな。これは幻覚だぞ」
叫ぶツナを見て、魅真はツナを助けようと、リボーンは目を覚まさせようと、ツナのもとに行こうとする。
「おっと、君達は─…」
しかし、そこへ骸(獄寺)が立ちはだかり
「自分の心配をした方がいい」
「「!」」
言いながら、ダイナマイトをリボーンと魅真に投げた。
「うわあああ!」
ダイナマイトは、ツナの目の前で爆発する。
「リ…リボーン!!!魅真ちゃん!!!」
ただ爆発しただけでなく、魅真とリボーンが巻きこまれたので、ツナは心配して、魅真とリボーンの名前を叫んだ。
「くっ……」
そこへ、煙の中から魅真がふっとんできた。
「魅真ちゃん、大丈夫!?」
「う、うん…。リボーン君が…助けてくれたから…なんとか……」
「よかった…」
魅真は爆発が起こる寸前に、リボーンが蹴りとばしてくれたので、なんとか無事だった。
「それより…リボーン君は…?」
「そ、そうだ…。リボーン!!」
「こんなものではないはずだ。アルコバレーノ」
まだ晴れていない煙の方を見ると、リボーンは煙の中から出てきた。
けど、それを狙っていたかのように、骸(犬)が不敵な笑みを浮かべ、槍を強くにぎった。
「見つけましたよ」
「ああっ!!」
「きゃああっ!!」
骸(犬)はリボーンをその目でとらえると、容赦なくリボーンを、頭から突き刺した。
その悲惨な光景に、魅真とツナは顔が青ざめ、短い悲鳴をあげる。
「!」
けど、槍に刺さったのは帽子だけだった。
そして、それを見て固まっていた骸(犬)の隙をついて、リボーンは帽子を奪い返した。
「久々に感じる実戦の空気だな」
「リボーン…!」
「リボーン君…」
余裕の顔で、帽子の汚れをはらい落とすリボーンを見て、魅真もツナもほっとした。
「オレは手ェ出せねーんだ。ツナ、早くなんとかしやがれ」
「なっ!?」
ほっとしたのもつかの間、問題の解決を自分に丸投げしてきたので、ツナは短く声をあげる。
「無茶いうなよ!!ひいいっ!!オレの、なんとか出来るレベル超えてるよ!!」
再び骸(獄寺)に投げられたダイナマイトから、魅真と一緒に逃げながら、ツナは反論する。
「オレの教え子なら、超えられるはずだぞ」
「そんな、メチャクチャな理屈ってあるかよ!?」
骸(千種)の毒針をよけながらしゃべるリボーンに、ツナは更に反論する。
「クフフフ。焦っているんですよ、先生は。生徒の絶体絶命の危機に…」
今度は骸(ビアンキ)が、ポイズンクッキングを両手にこちらへやって来て
「支離滅裂になっている」
「ウソじゃねーぞ。おまえの兄貴分、ディーノも超えてきた道だぞ」
リボーンをポイズンクッキングで攻撃するが、リボーンはそれを、あっさりと跳んでよけた。
「(え……?ディーノさん!?)」
ディーノの名前に反応し、ツナは頭の中でディーノのことが思い浮かんだ。
「うわっ」
「あっ…」
考えていると、また側で火柱が発生し、それを二人はギリギリのところでよける。
「ディーノがオレの生徒だった時も、絶体絶命のピンチがあってな──…。あいつはそれを乗り超えた時、"へなちょこディーノ"から、"跳ね馬ディーノ"になったんだ」
「なった…って、意味わかんねーよ!だいたいオレは、ディーノさんとは」
「上だぞ」
話しながら逃げていると、リボーンに声をかけられ、リボーンの言葉通りに上を見てみると、ダイナマイトがツナと魅真の頭上にあった。
「うぎゃ!」
「きゃあっ!」
直撃はさけたものの、二人の背後でダイナマイトは爆発し、少しだけくらってしまった。
「がはっ」
「うっ」
そして、爆風であおられてとんでいき、床に体を打ちつけてしまう。
「さあ、おしゃべりはこれぐらいにして、終わりにしましょう」
「うう…」
「く…」
「! 死ぬ気の炎!!」
ツナと魅真のもとにやって来た骸(千種)は、槍を片手に、死ぬ気の炎を右目にともした。
「ひぃぃぃ!!きたぁぁ!!」
槍を持って走ってくる骸(千種)を見て、ツナはおびえ、魅真は薙刀を構えた。
しかし、途中で骸(千種)の体が大きく傾いた。
「「「?」」」
それを見て、何事かと思った三人は、疑問符を浮かべる。
「「「………!?」」」
更には、そのまま床に倒れたので、ますますふしぎに思った。
そして、倒れたことによって手から槍が離れ、回転しながら移動した槍を、骸(犬)が受け取った。
「なあに、よくあることです。いくら乗っ取って、全身を支配したといっても、肉体が壊れてしまっていては動きませんからねぇ」
「え…。壊れるって……」
「………それって…ケガで動かない体を、無理矢理に動かしてるってこと─…?」
「それでヒバリには、憑依しなかったんだな」
「クフフフ」
「!」
「千種はもう少し…いけそうですね」
よろめきながらも、骸は千種の体を無理矢理に起こした。
その時に、頭から大量の血が流れ落ちる。
「ダメよ、ムリさせちゃ!!」
「ああ…っ。ムリヤリ起こしたりしたら…ケガが…!!」
「クフフフ、平気ですよ」
「平気って…?」
「僕は痛みを感じませんからね」
「えっ!」
「な…!」
自分の仲間の体なのに、まるで他人事のように冷たく言い放つ骸に、魅真とツナは驚いて口をあける。
「何言ってんの!!?仲間の体なんだろ!!?」
「そうよ。そんな言い方って……」
「違いますよ。憑依したら僕の体です。壊れようが息絶えようが、僕の勝手だ」
「……な……」
「そんな……」
「そんなの…おかしいよ」
「二人とも、あなたと行動をともにする仲間なのに……」
先程、魅真達が来る前に骸が言った、人をおもちゃだと思ってるという言葉を表すかのような発言に、ツナも魅真も驚愕する。
「他人の心配をしているヒマが、あるんですか?」
そこへ、背後からビアンキの声がしたので、二人は後ろへふり向いた。
「自分がやられるという時に──…」
「君は面白い男だが、マフィア向きではありませんね」
「あ…っ」
「隼人君…ビアンキさん…」
「(き…傷口から…あんなに血が…!!)」
後ろからは、骸(獄寺)と骸(ビアンキ)がやって来た。
彼らの体もまた、フラフラとしており、傷口からはたくさんの血が流れ出ていた。
「たのむ!!やめてくれ!!このままじゃ死んじゃうよ!!」
「クフフフ、思い出しましたよ。君はバーズとの戦いで、ガールフレンドのために、自分にナイフを突き立てようとしたんでしたね。
───…それでいきましょう。君はその甘さゆえ、僕に乗っ取られる」
「!」
「え…」
「どういう…こと?」
何かをたくらんでる顔で、笑みを浮かべる骸(獄寺)を見て、三人は固まった。
「いいですか?君の仲間を、これ以上傷つけられたくなければ」
「逃げずに、おとなしく契約してください」
「な…!」
バーズがやったのと同じように、骸は今乗っ取っている獄寺とビアンキの体を人質に、ツナに脅迫してきた。
「そ…そんな…」
「なんてことを…」
それを聞いてツナは迷い、魅真は骸の卑劣なやり方に、不快感を示した。
「やはり迷うのですね。どのみち、君のような人間は、この世界では生き残れない。ボンゴレの10代目には不適格です。
さあ、体を明け渡してもらいましょう」
「どうしよう…………リ…リボーン、どうしよう!!」
八方ふさがりなこの状況に、ツナはリボーンに助けを求める。
「オレは何もしてやれねーぞ。自分で何とかしろ」
「そんなぁ」
最後の希望も絶たれたので、ツナは泣きべそをかいた。
目じりに涙を浮かべ、鼻水をたらすその顔は、中学生というより、小さな子供のようだった。
「いつも助けてくれるじゃないか!!見捨てないでよ、リボーン!!」
「情けねぇ声出すな」
「ブフッ」
リボーンは泣きごとを言うツナのもとへ跳んでいくと、そのままツナのあごに蹴りをいれる。
「だ…って…オレ…どうしたら…」
「いいか、ツナ」
更に泣きごとを言うツナだが、今度は、いきなりリボーンに胸倉をつかまれ、リボーンのもとに引き寄せられた。
「おまえは誰よりも、ボンゴレ10代目なんだ」
「!?」
「(ボンゴレ…?10代目!?)」
聞き覚えのある単語に、魅真は目を大きく見開いた。
「おまえが気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ」
「! オ…オレの…きもち…?」
「クフフフ。家庭教師もサジを投げましたか。彼の気持ちは、"逃げ出したい"ですよ。それとも、"仲間のために逃げられない"……かな?」
そこへ骸(犬)が、ツナの心を見透かし、代弁するかのように話しかけてきた。
「…ちたい…」
「!?」
うつむきながら、言ってることを全部聞きとれないくらい、小さくぽつりとつぶやくツナに、驚いている骸(犬)。
ツナの隣では、リボーンと魅真が、静かにツナが言うことを聞いていた。
「骸に……勝ちたい──…」
そして、今言ったことをもう一度はっきりと言うと、それに呼応するかのように、リボーンの後ろにいるレオンが、かすかに震えた。
「ほう。これは意外ですね。だが、続きは乗っ取った後にゆっくり聞きましょう。君の手で、仲間を葬った後にね」
話しながら、目の数字を四に変え、死ぬ気の炎をともす。
「……こんなひどい奴に…負けたくない…」
「ツナ君…」
今まで見たことないツナを目にした魅真は、ツナを凝視する。
「こいつにだけは
勝ちたいんだ!!!」
ツナの、強い意志をもつ叫びに、レオンは先程よりも大きく震える。
「終わりです」
ツナの思いは関係なく、骸(犬)は槍をツナに向けてふり下ろそうとした。
だがその瞬間、レオンの目が大きく見開かれ、体が光り、体から糸のようなものを、辺り一面にとばした。
「!」
「うわあ!!」
「きゃっ」
その糸は、床や壁、天井だけでなく、周りにいる人間にもくっついた。
「ああ…」
「何…あれ?」
レオンが光り、更には糸のようなものをとばして、形体が変わったので、ツナと魅真はびっくりしていた。
「ボンゴレ、何をした!?」
「オレは何も…ああっ」
骸(犬)に問われ、それに答えようとした時、ツナは上を見て驚いた。
「レオン!!!?」
目の先には、光って糸をとばしたままのレオンが、リボーンから離れて宙に浮いていたのだ。
「ついに羽化したな」
「羽化!?」
「あの時と一緒だ。
ディーノが"跳ね馬"になった時とな」
そう言った時のリボーンは、うれしそうに笑っていた。
.