標的32 雲雀VS骸
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「こっから3階に行けんな」
魅真達は、ボウリング場を見てからしばらく歩くと、3階へ続く階段をみつけ、そこを上がっていた。
「(私が……雲雀さんを…好き!?なんだか……信じらんないな…。あんなに苦手だった雲雀さんを、恋愛の意味で好きになるなんて…)」
獄寺と雲雀が、真剣な顔で前を見据えながら階段を上がっている後ろで、魅真はぼんやりとしたまま、雲雀の背中をみつめながら階段を上がっていた。
「(でも……今まではわからなかったけど、今ならはっきりとわかる。私は……雲雀さんが…好きなんだってことが…)」
頬を赤くし、胸をドキドキさせながら、雲雀をまっすぐにみつめる。
その目はまさに、恋をする女の目だった。
標的32 雲雀VS骸
3階に上がった場所は、映画館だった。
「な……なんか……不気味なところだね…」
当然だが、明かりはまったくなく、物が床に散乱しており、ポスターはとめている部分を残して破かれ、辺りはぼろぼろ。そして、ぼろぼろのカーテンが、この中に舞いこむ風でそよめく姿は、不気味な雰囲気をかもし出しており、まるでおばけ屋敷のようだった。
「こんくらいでびびっててどうすんだよ。ったく、先が思いやられるぜ」
「し…しょうがないじゃないの。怖いのは嫌いなんだから」
別に、幽霊が出てきたわけでもないのに、この映画館の雰囲気だけでびくびくしている魅真に気づいた獄寺が、呆れ気味に言うと、魅真ははずかしそうに返した。
「まったく…。そんなんで、これから先どうするの?いちいちびびってたら、敵にやられるだけだよ」
「はいっ。すみません、雲雀さん!気をつけます!」
「わかればいいよ」
獄寺と同じような内容なのに、獄寺に注意された時は反論したが、雲雀に注意されると、魅真は背すじをピンと伸ばして、やや大きめの、気持ちのいい声で返事をした。
そんな魅真を見た獄寺は、あることに気がついた。
「何がきっかけかはわからないが、魅真は自分が雲雀を好きだということを、自覚してしまったのだ」
と……。
そのことがわかった獄寺は落ちこんだが、それを決して表に出すことはなく、また、魅真に聞くこともしなかった。
今は、一刻も早くツナのもとに行き、ツナを助けようと思ったのだ。
その時、突然映画館の中から、ツナの叫び声が聞こえてきた。
「ツナ君!?」
「10代目!?」
魅真と獄寺はツナの声に反応し、ツナの身に何か起こったのかもしれないと、あわてて声がした方へ向かっていく。
声がした方へ行くと、そこには、毒ヘビにかこまれて、泣き叫んでいるツナの姿があった。
もうあとちょっとで咬まれそうになっている姿を見ると、雲雀は持っていたトンファーを、骸に向けて投げつけた。
すごい勢いと早さで、骸に向かってとんでいくが、骸はトンファーに気づき、自分に当たる前に、三叉槍ではじきとばす。
「!
トンファー!?」
骸が槍ではじきとばしたことで、トンファーの存在に気づいたツナは、トンファーを見て驚いていた。
「10代目…!伏せてください!」
「え!?」
トンファーがはじかれると、今度は獄寺が、ダイナマイトを取り出して、ツナの周りにいるヘビに向けて投げつけた。
「うわあ!!!」
ヘビはダイナマイトの爆発により、全滅した。
「……!」
「おそくなりました」
「ツナ君、大丈夫!?」
「ヒバリさん!!獄寺君!!魅真ちゃん!!」
映画館の上の扉から、魅真、雲雀、獄寺の三人がやって来た。
「さ…三人とも…」
間一髪のところで助けられたので、ツナは感激の涙を流す。
「わかったか、骸。オレは、ツナだけを育ててるわけじゃねーんだぞ」
下の方では、骸の近くにいるリボーンが、とても得意げな顔をしていた。
「借りは返したよ」
「いでっ」
「ひっ、雲雀さん!!」
「ちょ (す…捨てたー!!)」
獄寺に肩を貸していたが、毒ヘビを倒した途端に、あっさりと獄寺を捨てた雲雀だった。
「これはこれは、外野がゾロゾロと。千種は何をしているんですかねぇ…」
「へへ。メガネヤローならアニマルヤローと、下の階で仲良くのびてるぜ」
「なるほど」
魅真と雲雀と獄寺がここに来たことに納得しながら、骸はため息をつく。
「すごいよ獄寺君!か…体は大丈夫なの!!?」
「ええ…大丈夫っス…。つーか、あの…オレが倒したんじゃねーんスけど…」
ツナは獄寺が倒したと思っていたが、実は二人を倒したのは雲雀なので、獄寺は落ちこんでいた。
一方雲雀はフラフラとした足どりで、骸がいる方へ歩いていき、先程投げたトンファーをひろった。
「覚悟はいいかい?」
トンファーをひろうと、雲雀は鋭い目で骸を睨みつけ、トンファーを構える。
「これはこれは、怖いですねぇ」
そう言いながらも、骸は余裕の笑みを浮かべていた。
「だが今は、僕とボンゴレの邪魔をしないで下さい。第一君は、立っているのもやっとのはずだ。骨を何本も折りましたからねぇ」
「ヒバリさん、そんなヒドい目に…!!」
雲雀がひどいケガをしているのは知っていたのだが、まさかそこまでとは知らなかった魅真は顔が真っ青になり、雲雀と骸の近くにいるツナも、骸の話を聞いて、魅真と同じように顔が青くなった。
「遺言はそれだけかい?」
しかし、雲雀はそんなことはものともしておらず、戦う気満々だった。
「クフフフフ。面白いことをいう。君とは契約しておいてもよかったかな?仕方ない、君から片づけましょう」
骸は雲雀を倒すため、右目の数字を四にして、その右目に死ぬ気の炎を灯した。
「また目から死ぬ気の炎が!! (ヒバリさん、あんなケガ…!やばいんじゃ…!!)」
「(死ぬ気の炎!?)」
雲雀の強さは知っているが、今は大ケガをしており、先程骸の実力を目のあたりにしたので、いくら雲雀でも…と、ツナは心配した。
側では魅真が、初めて聞く言葉に、過剰に反応を示した。
「雲雀さん…」
けど、それはそれとして、魅真も雲雀の心配をしていた。
本当は、今のひどいケガをしてる状態で戦ってほしくはないが、そんなこと言っても雲雀は止まらないだろうし、雲雀は骸から屈辱を受けたから、どうしても骸を倒したいということはわかっていたので、止めることはしなかったが、とても心配な顔をして、雲雀と骸の戦いを見守ることにした。
「一瞬で終わりますよ」
骸は雲雀のもとへ走りだした。
お互い間合いに入ると、骸は槍で、雲雀はトンファーで攻防をくりひろげる。
「(す、すげ~。速すぎてよく見えない……)」
二人の攻撃は目にも止まらない速さで、両者とも一歩もゆずらなかった。
そのあまりに早い攻撃を、ツナはぼんやりしながら見ていた。
「君の一瞬っていつまで?」
骸の槍をトンファーで受け止めた雲雀が、嫌味たっぷりに言えば、骸は顔をゆがめる。
だが、その顔は、どこか笑っているようにも見えた。
そして、その雲雀の一言で、両者は後ろに跳んで距離をとった。
「やっぱり強い!さすがヒバリさん!!」
雲雀の方が押しているので、ツナも魅真もほっとしていた。
「こいつらを侮るなよ、骸。お前が思っているより、ずっと伸び盛りだぞ」
「なるほど、そのようですね。彼が、ケガをしてなければ、勝負はわからなかったかもしれない」
「!」
骸がそう言った瞬間、雲雀は、骸にやられた傷が開き、肩から血がふき出した。
それを見た骸は、愉快そうに笑う。
「時間のムダです。てっとり早くすませましょう」
言いながら、骸は右目の数字を一に変える。
すると、最初の戦いの時のように、雲雀の頭上に、たくさんの桜が咲きほこる。
「さ…桜!?まさか、ヒバリさんのサクラクラ病を利用して…!」
「クフフ。さあ、また、ひざまづいてもらいましょう」
桜が現れたことで、雲雀は足がふらついた。
それを骸は、見下すように…余裕の顔で笑う。
「そんな!ヒバリさん!」
サクラクラ病の効力は、以前花見をした時に知っているので、それを見たツナはヤバいと思った。
「大丈夫だよ、ツナ君」
「え?」
けど、魅真はツナとは逆で、あわててはいなかった。
雲雀は前に倒れると見せかけて、一瞬で間合いをつめて、骸の腹に、トンファーで一撃をいれる。
「!」
それを見て、ツナは驚き、魅真はほっとした表情を見せ、リボーンはニッと笑う。
「おや?」
今の攻撃で骸は吐血し、何故、桜に囲まれているのに、雲雀が動けるのか疑問に思った。
「へへ…甘かったな。シャマルからこいつをあずかってきたのさ。サクラクラ病の処方箋だ」
「それじゃあ!!」
魅真は薬が効いていたことにほっとしており、ツナは先程魅真が言っていた意味がわかった。
雲雀は鋭い目で骸を睨むと、両側からトンファーを交差させ、上に打ちあげるように攻撃をした。
そのことで、骸は上にふきとび、大量の血を口から吐いた。
骸はそのまま後ろに落ちていくと、体を床に打ちつけ、同時にもっていた槍は、今の衝撃で、棍の部分と槍の部分が分断され、槍の方は、ビアンキのすぐ側までとんでいった。
今の攻撃が致命傷となったようで、骸は床に打ちつけられると、そのまま目を閉じる。
「桜は、幻覚だったんだ!っていうか…これって…」
骸が倒れたことで、頭上の桜は姿を消した。
骸は倒れたが、雲雀はその場に立っており、勝敗は明らかだった。
「やったあ。雲雀さんが勝った!」
「ちっ。おいしいとこ全部もってきやがって」
雲雀が勝ったことで、魅真はうれしそうに笑っていたが、獄寺はふてくされていた。
「あ…ああ…」
「ついにやったな」
「……!」
ツナが、雲雀の勝利を喜び、顔をほころばせていると、横からリボーンが話しかける。
「お……終わったんだ…。これで家に帰れるんだ!!」
短いようで長い戦いがようやく終わり、ツナは喜んだ。
「しかしお前、見事に骸戦、役に立たなかったな」
「ほっとけよ!!」
痛いところをつかれ、ツナは激しくつっこむ。
「ひ…ヒバリさん。大丈夫ですか…!?」
大ケガをして、フラフラになりながらも骸と戦っていたので、ツナは心配して雲雀のもとへ歩いていく。
「!」
ツナが雲雀の前まで来ると、雲雀は前に倒れていった。
「雲雀さんっ」
「大丈夫ですか、ヒバリさん!」
「こいつ、途中から無意識で戦ってたぞ。よほど、一度負けたのが悔やしかったんだな」
「ヒバリさん、すげー…」
雲雀は倒れると、そのまま気絶してしまうが、ツナはそんな雲雀を見て、いろいろと感心していた。
「!!
早くみんなを、病院につれて行かなきゃ!!」
「それなら心配ねーぞ。ボンゴレの優秀な医療チームがこっちに向かってる」
「これであとは安心だね」
「よかったっスね」
「獄寺君、ムリしちゃダメだよ」
「そうよ」
雲雀ほどではないが、同じように深手を負い、フラフラと歩いてくる獄寺を見て、ツナと魅真は心配する。
「その医療チームは不要ですよ」
「「「「!」」」」
その時……突如、骸の声が聞こえた。
「なぜなら、生存者はいなくなるからです」
そこには、上半身だけ体を起こし、拳銃をツナ達に向けている、吐血しながらもピンピンしている骸の姿があった。
「てめー!!」
「ご、獄寺君!!」
骸の姿を見ると、獄寺が、魅真とツナをかばうように前に出て、これ以上後ろには行かせないというように、手を上にあげた。
魅真もまた、突然のことに薙刀を構える。
「クフフフ」
骸は、笑いながら銃を上に持ち上げると、何を血迷ったのか、銃口を自分の頭にあてた。
「「「「!?」」」」
それを見たツナ達は、一体何をするつもりなのかと、骸を凝視した。
「Arrivederci ―また会いましょう―」
そう言うと、骸はなんの迷いもなく引き金を引いた。
弾丸が発射する音が聞こえると、床に重いものが倒れる音が、ほぼ同時に響いた。
「………!」
魅真達の目の前には、頭から血を流して倒れている骸がいた。
「や…やりやがった」
「……そんな…。なんで…こんなこと」
リアルな死を目の当たりにしたツナは、当然ながら、顔を真っ青にして震えていた。
隣では、魅真は声も出ないほど驚愕しており、ツナ以上に、顔を真っ青にして震えている。
「捕まるぐらいなら、死んだ方がマシってヤツかもな」
「く…」
「う…」
「っ……」
リボーンは裏世界の人間なので、こういうのは見慣れているが、そういうのを見たことのない魅真やツナ、いくらマフィアの家の出身といっても、そういうことを経験したことがない獄寺は、気分を悪くして、体がふらついていた。
「やるせないっス……」
「(何だ…この感じ…)」
魅真と獄寺は気分を悪くしているだけだが、ツナは何やら違和感を感じており、口をおさえていた。
そして……その後ろ……。
倒れているビアンキの目が、大きく見開く。
その右目は赤く、「六」の数字が目に刻まれていた。
「生きたまま捕獲はできなかったが、仕方ねーな」
「……」
頭から血を流す骸。それを見て、あまりいい顔をしていないリボーン。気分を悪そうにしている、魅真とツナと獄寺…。
「(なんだろう……。すごく、嫌な感じがする……)」
だが、ツナが気分を悪くしているのは、それだけではなかった。
「ついに…骸を倒したのね」
「「「!」」」
その時、3人のすぐ側で倒れていたビアンキの意識が戻り、3人に話しかけながら起きあがった。
「うう」
「アネキ!」
「よかった!ビアンキの意識が戻った!」
「本当によかった。ビアンキさん」
「無理すんなよ」
意識は戻ったのだが、フゥ太にやられた傷の痛みは相当のもののようで、痛みを感じたのか、ビアンキはうめき声をあげる。
「肩、貸してくれない…」
「……? (……あれ……?)」
嫌な感じがしたものの、いつものビアンキだったので、ツナは顔をしかめた。
「しょーがねーなー。
きょ…今日だけだからな」
「!!」
ビアンキに頼まれると、獄寺は、先程とは違う意味で顔を青くしながらも、ビアンキに近づいていく。
「獄寺君!!いっちゃだめだ!」
それを見たツナは、とっさに叫んだ。
「え?」
「ん?」
「どうしたの?ツナ君」
突然の叫び声に、魅真も獄寺もリボーンもふしぎそうにする。
「どうかしたの?ツナも肩を貸して…」
「え…!?あ…うん…。(あれ……?何言ってんだ、オレ…?)」
今の叫びは無意識だったようで、いつもと変わらないビアンキに頼まれ、ツナもうなずいた。
「いいっスよ、10代目は。これくらいのケガ、大丈夫っスから」
「そうだよ。私も手伝うから」
「…でも…」
「すまないわね、隼人。それに魅真も…」
「いいえ、いいんですよ」
「ほら、手」
「はい」
獄寺は、胸の傷を押さえながらもビアンキに手を差し出し、魅真も少し遅れて、ビアンキに手を貸そうと、手を伸ばしかけた。
「「!!」」
だが、獄寺の手をとろうとしたビアンキの手には、骸の槍がにぎられており、獄寺の手をにぎろうとした時に、槍で獄寺の頬をかすめた。
「なっ、何しやがんだ!!」
「!」
「えぇ!?」
「ビアンキ…さん…?」
突然のことに、獄寺は抗議し、魅真とツナとリボーンは驚いた。
「まあ!私ったら…!!」
「ビアン…!!」
ツナはビアンキの名前を呼ぼうとするが、途中でやめてしまう。
「(やっぱり変だ…。なにかちがう…!!)」
それは、ビアンキに対する違和感をぬぐいきれず、戸惑いを覚えたからだった。
「何やってんだ、ビアンキ」
「リボーン」
「リボーン君」
そこへ、リボーンがビアンキのもとへ跳んでいく。
「しっかりしろ。刺したのは弟だぞ」
「私、なんてことを…」
リボーンはビアンキの前まで来ると、ビアンキの鼻を何度かたたく。
「したのかしら」
そう言いながらもビアンキは、またしても槍を使い、今度はリボーンを刺そうとした。
だが、リボーンは跳んで軽々とかわす。
「ああっ!」
「リボーン君!」
「リボーンさん!」
「こいつは厄介だな」
「まさか…マインドコントロール………!?」
「ちげーな。何かに憑かれてるみてーだ」
「それって呪いスか?」
「そんなことが…」
「そんなの…ありえるの?」
「だが事実だ」
「何言ってるの。私よ」
いろいろと予想をたてるが、ビアンキはいつもと変わらなかった。
「(やっぱりちがう…。ビアンキじゃない。この不自然な感じ…前にも…)」
しかし、やはりツナは違和感を感じていた。
その雰囲気を、なんとか思いだそうと頭をひねる。
「(あ………) ………ろくどう…むくろ…?」
考えていると、ふいに骸の顔が思い浮かび、彼の名前を口にしていた。
「はっ」
これもまた無意識だったようで、口にした後、ツナは顔が真っ青になった。
「クフフ」
名前を呼ばれると、骸の独特の笑い声が、ビアンキの口から、ビアンキの声で聞こえてきた。
「また会えましたね」
声はビアンキだが、口調は骸。
ビアンキの右目は、六道骸と同じように赤く、六の数字が浮かんでいた。
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