標的31 気づいた想い
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それから雲雀は、少しすると起き上がり、片ひざをたててその場にすわりこんだ。
雲雀が起き上がったことで、ひざまくらが終わってしまったので、魅真は少しだけ残念そうにしていた。
残念そうにしていたが、魅真も雲雀の隣でひざをたててすわりこむと、雲雀を少しはずかしそうにみつめた。
「なに?」
魅真の視線にすぐに気づいた雲雀は、何か用事があるのかと思い、魅真に短く問う。
「い…いえ…。なんでも……」
しかし魅真は、雲雀が自分を見ただけでも顔を赤くしてしまう。
実際、特に何か用事があるわけではないので、曖昧な返事で誤魔化した。
その時、近くもなければ、遠くもないところから、微かに爆発音が聞こえてきた。
「隼人君?」
爆発音がしたので、魅真はもしや!と思った。
他にも、獄寺と、聞きなれない二人の男の話し声が聞こえてきたので、魅真ははっとなり、声が聞こえる壁のむこう側を見た。
少しすると、今度は、自分の方に何かが落ちてくる音が聞こえてきた。
そしてその後、羽音がしたと思ったら、上の長方形のすきまに一羽の鳥が飛んできて、「ヤラレタ!ヤラレタ!」と人語を話した。
更にその後、急に並中の校歌を歌いだす。
そして、獄寺の笑い声がしたと思うと、急に爆発音が響き、壁が崩れ落ちた。
「へへっ……。うちのダッセー校歌に愛着もってんのは…おめーぐらいだぜ…」
「「!」」
壁がすべて崩れ落ちると、そこには、獄寺と黒曜中の制服を着た二人の男が立っていた。
「んあ?こいつ……」
「並盛中学風紀委員長…。
雲雀恭弥───」
今の衝撃で雲雀は、片ひざの上にのせていた腕につっぷしていた顔をあげ、その先にいる人物達を見据えた。
「……元気そーじゃねーか」
「隼人君!」
あまりにひどい状態の獄寺を目にした魅真は、顔が青ざめた。
「ヒャハハハハ。もしかして、この死に損ないが助っ人かーーー!?」
二人のうちの一人、逆立った髪の男…犬は、雲雀を指さしてバカにするように笑うが、犬の後ろにいる、長身で眼鏡をかけた黒髪の男…千種は、己の武器を構えていた。
「自分ででれたけど、まぁいいや」
「へへっ」
そう言いながら、雲雀は立ちあがった。
「そこの2匹は、僕にくれるの?」
そして、瞬時に状況を理解した雲雀は、戦う気満々で、フラついた足で、犬と千種に近づいていく。
標的31 気づいた想い
「こいつ、バーズの鳥手なずけてやんの」
犬が目をやった先には、雲雀の肩に飛んできてとまった、先程並中の校歌を歌っていた、小さな黄色い鳥の姿があった。
「じゃあ、このザコ2匹はいただくよ」
「好きにしやがれ」
「死にぞこないが何ねぼけてんだ?こいつはオレがやる」
「言うと思った」
雲雀の言動に、犬は戦う気満々になり、犬の言葉を聞いた千種は、呆れた顔で返した。
「徹底的にやっからさ」
言いながら、犬は長くて太い牙を口につける。
「百獣の王」
牙をつけると、犬の左頬にライオンのマークが現れ、髪をとめていたピンが、はじけとぶようにとれる。
「ライオンチャンネル!!!」
犬の手足はライオンのそれに変化した。ライオンの毛がはえ、指からは鋭い爪が伸び、お尻にはライオンのしっぽがあり、髪の色も変わっていた。
「(何あれ?牙をつけたら、急にライオンのように変わった!)」
現実ではありえないことに、魅真は目を見張った。
「ワオ。小犬かい?」
対して雲雀は、その姿を見てもまったく動じず……というより気にしておらず、逆に楽しそうな顔をしていた。
雲雀が問うと、鳥は戦いが始まるのを察知したのか、宙に飛び立つ。
「うるへー、アヒルめ!!」
今の発言に怒った犬は、本物のライオンのように、四足歩行で走っていく。
犬が向かってくると、雲雀は足元に落ちていたトンファーを足で蹴り上げて宙に浮かせ、手にとると、そのままトンファーをふり回して攻撃をする。
「ひょい♪」
しかし、犬はそれを難なくよけてしまう。
「!?」
だが、雲雀はそのまま流れるような動きで、左に回転しながら、犬の顔を殴る。
そのことで、犬の動きが止まると、雲雀はもう一発顔をめがけてトンファーをふり、犬を殴りとばした。
殴りとばされると、犬は階段の上にある窓をつきやぶり、外にとんでいってしまった。
「犬!」
犬がやられたことで、千種は叫んだ。
「次は君を………」
叫んでいると、雲雀は階段をあがり、千種のもとまでやって来た。
「咬み殺す」
死の宣告を受けると、千種は顔がゆがみ、冷や汗を流した。
そのあと千種は、犬同様に、一瞬にして雲雀にやられてしまい、建物の外にふっとばされた。
「隼人君!!」
雲雀が犬と千種を倒すと、魅真はあわてて獄寺のもとへ走ってきた。
「隼人君、大丈夫?すごいひどいケガしてる」
「ああ、まあな」
「ごめんね」
「は?」
「今は、手当ての道具を持ってないから、手当てすることができないの…。本当にごめんなさい。隼人君、こんなにひどいケガをしているのに……」
謝られる理由がわからなかったが、魅真がその理由を言うと、獄寺は目を丸くした。
「だっ、大丈夫だっつーの。おまえと違って、オレは丈夫にできてるし、鍛えてっからな」
「本当に?」
「ああ」
「よかった」
どう見ても大丈夫そうではないが、それでも本人が大丈夫と言うと(本当は強がってるだけ)、魅真はほっとして笑顔になった。
その笑顔に、獄寺はドキッとして、頬を赤くする。
そんな二人を、雲雀は上の階からジッと見ていた。
「つっ……」
「隼人君…無理しない方が…」
ひどいケガなのに起き上がろうとするので、魅真は止めようとする。
「そうはいかねぇ。上では、10代目が戦ってらっしゃるんだ。右腕のオレが、早く行ってさしあげねーと…」
「ツナ君も来てるの!?」
「ああ…。あと、リボーンさんとアネキと、外で倒れてるが、山本のヤローもな」
「えっ…。武君…大丈夫なの?」
「ああ…。気ぃ失っちまってるが、命に別状はねえ」
「よかった」
山本の無事を知ると、魅真は獄寺の時と同様にほっとした。
上にいた雲雀は、そんな二人を見て、どこか少しだけ不機嫌そうだった。
「なんでもいいけど、早く行くよ」
そして、二人の間に割って入るように、抑揚のない声で話しかける。
「雲雀さん!大丈夫ですか!?」
「今の戦い見てなかったわけ?大丈夫に決まってるだろ」
「でも……それでも、ひどいケガを負っていることには違いないんですよ。心配に決まってるじゃないですか!!」
「…君が心配するほどのものじゃないよ」
「でもっ……」
少し強い口調で言うが、雲雀は心配は無用だと言った。
しかし、魅真は納得していなかった。
「つつっ…。おい、雲雀」
「なんだい?」
獄寺は二人の間に割って入ると、雲雀に声をかけたあと、ポケットから小さな紙袋を取り出した。
「お前にこれを渡すように頼まれた」
「処方箋…?」
それは、患者の名前の欄に雲雀の名前が書かれた、内用薬が入っている紙袋だった。
「こいつは、シャマルからあずかってきた、サクラクラ病の薬だ」
「サクラクラ病って……お花見の時、シャマル先生が雲雀さんにかけた、あの変な病気?」
「ああ……」
獄寺が肯定の返事をすると、雲雀ではなく、魅真の方が、明るくうれしそうな笑顔になった。
「よかった。これで、雲雀さんの病気が治るんだ。ありがとう、隼人君」
「い、いや……」
雲雀の病気が治るのを、誰よりも喜んだのは魅真で、魅真に礼を言われると、獄寺は顔を赤くして、魅真から顔をそらした。
そして、雲雀は獄寺から薬を受け取ると、薬を飲んだ。
「これで……治ったのよね?」
「たぶんな…」
「よかった。じゃあ、いそいでツナ君達のところに行こうか。
隼人君、立てる?」
「だ、大丈夫だっつの…」
雲雀が薬を飲むと、ツナ達がいるところへ向かおうとする。
魅真が獄寺を心配すると、獄寺は心配は無用だと言うように、その場を立ちあがった。
「くっ……」
けど、犬にやられた胸のケガがひどく、足がふらついてしまった。
「大丈夫じゃないじゃないの!隼人君、私につかまって。肩かすから!」
「へ?」
「ほら、早く」
獄寺に近づき、自分につかまれと言うように手をさし出すが、獄寺はその手をとることはしなかった。
「何やってるの?早くつかまって!」
「お…女に肩をかしてもらうなんて、カッコ悪いマネできっかよ。大体、おめーみてーなチビが、どうやってオレをはこぶんだっつの」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。こんな時ぐらいカッコつけないでよ」
相手がお前だからカッコつけるんだっつの!と言いたかったが、自分の気持ちを、今ここで打ち明ける気はないので、何も言えずに黙ってしまう。
「君はやらなくていいよ」
「は?」
「雲雀さん?」
「僕がかすから」
「えっ!?」
「はあ!?」
意外すぎるその言葉に、魅真と獄寺は、信じられないと言うように、同時に声をあげる。
「な、なんで雲雀さんが?」
「どういう風のふきまわしだよ?」
「勘違いしないでくれる?単に、僕がそこから自分で出ようと思っていたら、さっき君が、勝手に壁を壊して出したから、その借りだよ」
「そーかよ」
けどそれは、別に親切で言ったわけではなく、ただ借りを返すためだけに言っただけだった。
「でも…雲雀さんは大丈夫なんですか?雲雀さんも、ひどいケガをしてるじゃないですか」
「僕は大丈夫だよ」
どう見ても大丈夫そうには見えないのに、それでも弱音を吐かない雲雀に、魅真は悲しそうな顔をして、しょんぼりとしてしまう。
「大丈夫だって言ってるだろ」
しゃべりながら、雲雀は魅真の頭に自分の手をのっけた。
雲雀からしてみれば、魅真が獄寺のそばにいるので、獄寺に肩をかすのにジャマだから、そこから離れろという意味で、頭に手をおいただけだった。
けど、そういう深い意味がないとはわかっているが、そんなことは関係なく、雲雀が自分の頭に手を置いたという事実で、魅真は顔を赤くした。
その様子を、今度は獄寺が、不機嫌そうな目で見た。
それから三人は、ツナがいる上の階に向かって出発した。
先頭を雲雀と獄寺。その後ろを、魅真が歩いていた。
借りができたからとはいえ、雲雀が獄寺をかつぎながら歩いている姿は、なんとも奇妙なものだった。
「(雲雀さん、本当に大丈夫かな?本人は大丈夫だって言いはっているけど、目に見えてひどいケガをしてるから、やっぱり心配…。それに、隼人君だって…)」
魅真は、前を歩く二人を見て、とても心配をしていた。
「ここだ。あそこの非常用のハシゴから、上に行ける」
自分と雲雀が閉じこめられていたところから少し歩くと、獄寺が千種と戦う前にみつけたハシゴにたどりついた。
「…あそこしかないの?」
「敵はここ以外の階段をすべて壊したんだ。あの非常用のハシゴしか、上に行く方法がねえ」
「そ…そう…」
獄寺に説明されると、魅真は不安そうな顔で、非常用のハシゴをみつめる。
「ひょっとしてお前……あの非常用のハシゴが怖いとか、そんなんじゃねーだろうな」
「えっ!?そ……そんなことは…」
「図星かよ…」
獄寺が言ったことを否定しようとするが、声がうわずったので、それだけで本当だと知られてしまい、魅真ははずかしくなった。
「ま、お前のまぬけなところやびびりなところは、今にはじまったことじゃねーから、今さら驚きゃしねーよ」
本当のことで、それは自分も認めていることなのだが、面とむかって言われると、魅真はますますはずかしくなった。
「しゃーねーな。それじゃあ、魅真は先に行けよ。もしおっこちても、オレが下にいて受け止めてやるからよ」
「そっ、それもダメ!!」
「はっ?」
「だ…だって……そんなことをしたら……見えちゃうから…。私……スカートだし…」
「あ…ああ……」
自分の提案を拒否したことを疑問に思ったが、すぐにその答えは返ってきた。
そして、魅真が言ったことを想像した獄寺は、顔を赤くした。
そんなわけで、まず最初にはしごをのぼったのは獄寺。その次に雲雀。最後に魅真がのぼっていった。
「あっ」
だが魅真は、はしごの上までのぼり、足を二階の床につけようとした時に足をすべらせてしまい、下に落ちそうになった。
「魅真っ」
それを見た獄寺は、あわてて助けようとした。
だが、獄寺よりも雲雀が、いち早く魅真の体を抱きしめて、魅真を助けた。
このことで、獄寺はムッとした表情で雲雀を見て、魅真は雲雀に抱きしめられたことで、顔を真っ赤にして、心臓をドキドキさせていた。
「やっぱりまぬけだね、君は」
雲雀は魅真を抱きかかえながら立ちあがり、魅真の足が床につくと、体を離した。
嫌味を言われるが、魅真はドキドキしすぎて、返事を返す余裕もなかった。
「大丈夫かよ?」
「うん、大丈夫だよ。隼人君」
けど、獄寺が心配して声をかけるとあっさりと返し、ドキドキも赤くなった顔もなくなっていた。
全員が上にあがると、今度は三階に続く階段を探しつつ、二階に敵がいないかどうかを確認していた。
「ここにはいねーな」
ボウリング場をのぞいてみたが、人は一人もいなかった。
「先行くか」
ここにいないということは、別の部屋にいるということなので、もう用はないというように、獄寺は雲雀に支えられながら、別の場所に移動をはじめた。
「おい魅真、行くぞ」
「え?あ…うん…」
ボウリング場を見たまま動かない魅真を見た獄寺が声をかけると、魅真は力ない返事を返しながら、獄寺と雲雀の後ろを歩きだした。
「敵陣でぼんやりしちゃダメだよ」
「は、はい。すみません、雲雀さん!」
雲雀に注意されると、急に覚醒したようにしゃきっとなり、頬を赤くしながら、少し大きな声で返事をした。
「(あれ…?)」
返事をすると、魅真はちょっとした違和感を感じた。
「(なんで…隼人君に声をかけられた時は、なんてことなかったのに、雲雀さんに声をかけられた時は、あんなに緊張したり、ドキドキしたんだろう…?)」
それは、獄寺と雲雀に話しかけられた時に感じたものだった。
獄寺に話しかけられた時はなんともなかったのに、雲雀に話しかけられたら、それだけで顔が赤くなったり、ドキドキしたりしたので、そのことを考えていた。
「(それに……さっき雲雀さんに助けられた時も……閉じこめられてた時だってそう…。なんか…心臓がうるさくなった。
さっき、はしごから落ちそうになって抱きしめられた時も、顔が赤くなるのがわかった。だけど、隼人君が心配してくれた時は、そんな風にはならなかった。
雲雀さんが六道骸にやられてるのを見た時、顔から血の気が引いていくのがわかったし、気絶した時は、目の前が真っ白になって、切れてしまった。骸が憎くなった。どうしようもない怒りがこみあげてきた。許せないと思ったし、自分はどうなってもいいから、雲雀さんを護りたいとも思った。戦いは嫌いなのに、敵わないってわかってるのに、戦わなきゃ、絶対に後悔すると思った。それに、雲雀さんのおかげで勇気が出たし、雲雀さんのこと…嫌いじゃないって思った。むしろ、大切だって思った。
閉じこめられてる時も、雲雀さんが無事だってわかると、うれしくて涙が出たし、雲雀さんが死ぬんじゃないかと思ったら、怖くて不安だったし、体が震えてきた。
でも、隼人君の時は、大丈夫だって隼人君が言ったら、妙に納得しちゃって…。
隼人君が、あの二人にやられたんだってわかった時も、すごく相手に対して怒りがこみあげてきたけど、なんか、雲雀さんの時とは違う感じがするっていうか……。それに、隼人君が大丈夫って言ったらそれで納得しちゃったけど、雲雀さんが大丈夫って言っても、すごく心配だった。
なんで…?どうして、隼人君とは違うの?)」
けど、いろいろと考えても、答えはわからなかった。
「………い……おい…………おいっ!!」
「えっ!?」
その時、突然獄寺の声が聞こえてきたので、魅真は少しうつむき加減だった顔をあげた。
「えっ!?じゃねーだろ。何立ち止まってんだよ?」
自分の世界に入って考えごとをしていて、それでまたぼんやりとしてしまったようで、獄寺は短い時間に二度もぼんやりとする魅真に呆れていた。
「敵陣でぼんやりしちゃダメだって、さっき言ったばかりじゃないか。もう忘れたの?そんな年でもないだろ」
「あ……すっ、すみません!!」
嫌味を言われるが、魅真はまた顔が赤くなり、胸がドキっとなる。
「(あっ……。また……)」
魅真は雲雀を見ただけで照れてしまい、体が熱くなっていた。
「(なんか……雲雀さんに見られただけで…ドキドキする…)」
それだけでなく、心臓が破裂しそうなくらい胸が高鳴っていた。
「(ドキドキ?)」
そこで魅真はハッとなる。
「(そっか……。そういうことだったんだ)」
そう…あることに気がついたのだ。
「(同じように敵にやられても、雲雀さんの時は涙が出たけれど、隼人君の時はそうならなかった。
無理しようとしても、雲雀さんの時は怒ったのに、隼人君の時はそうならなかった。
近くにいるだけで、雲雀さんにはドキドキするのに、隼人君だとしない……)」
それは、先程考えていたことの答えだった。
「(私は……いつのまにか……こんなにも…)」
そう……その答えは……
「(雲雀さんのことを………好きに…なってたんだ…!)」
それは……自分が雲雀を「好き」だということだった。
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