標的34 ツナ、覚醒
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そうか…。アルコバレーノ、君の仕業だな」
「ちげーぞ」
レオンはリボーンの相棒なので、その考えに至り、自分についたレオンの糸をちぎりながら問う骸(犬)だが、リボーンはそれを、あっさりと否定する。
「こいつは、形状記憶カメレオンのレオン。オレの生徒が成長すると羽化する、オレの相棒だぞ。どういうわけか、生徒に試練が訪れるのを予知すると、マユになるんだ」
「そ……そーだったの!?」
ツナはそれを聞いて驚いており、魅真は目の前の信じられない出来事に、目を見張っていた。
標的34 ツナ、覚醒
「クフフ…。それは面白い」
「最後に何を見せられるかと思えば、ペットの羽化ですか」
「まったく君達はユニークですね。クハハハハハ」
だが、骸(千種、獄寺、ビアンキ)はバカにしたように笑い、まったくひるんでいる様子はなかった。
「笑われてんじゃん!!何だよ、これ!!これと、ディーノさんが跳ね馬になるのと、どう関係あるんだよ!」
「見てみろ」
「!?」
リボーンに言われてレオンを見てみると、レオンが何かを口の中で噛んでいた。
「膨らんでる?」
「あれって…何してるの?」
「新(ニュー)アイテムを吐きだすぞ。オレの生徒である、お前専用のな」
「ええ!?アイテム…?」
「ディーノん時は、"跳ね馬のムチ"と"エンツィオ"を吐き出したんだ」
「えーーーーーー!?エンツィオって、レオンの子だったの~~~~~~!?」
「?」
ムチだけでなく、エンツィオまでレオンから出てきたことに、ツナはショックを受けるが、魅真はなんのことかわからないので、疑問符を浮かべる。
「(でも、確かにエンツィオみたいなのが出てきたら…何とかしてくれるかも…)」
リボーンの話を聞き、ツナは期待の眼差しでレオンを見る。
「いつまでも、君達の遊びに付き合っていられません。小休止はこれくらいにして」
しかし、骸(犬)が水をさすように割りこんできた。
「仕上げです」
「くるぞ」
「ぶっ」
そして、槍をツナに刺そうとこちらに走ってくるが、魅真はそれを横に移動し、ツナはリボーンに蹴られ、リボーンはその反動で攻撃をよけようとした。
「では、目障りな…
こちらから」
ツナを刺すのは一旦やめて、その勢いのままレオンを真っ二つに斬りさいた。
「あっ!」
「レ…レオン!」
「心配ねーぞ。レオンは形状記憶カメレオンだからな」
ツナと魅真がレオンの心配をするが、レオンは再生しているので、心配無用といった感じだった。
「それより、上に何か弾かれたぞ」
「あ!!」
ツナの頭上には、楕円形のものが二つ浮かんでいた。
「無事みてーだな。あれが新アイテムだ」
「?」
「あれが…」
ツナは、一体どんなすごいものなのかと、期待の眼差しを向ける。
「ん?」
だが、新アイテムが自分の近くまで落ちてきた時、目を丸くした。
「え…?あれ…?」
その、ゆっくりと落ちてきた新アイテムは、ツナの顔の上に落ちる。
「こ…これって…」
そして、やわらかさのあるそれを手に取り、よく確認してみた。
「毛糸の手袋~~!!?」
それは、手の甲の部分に、27という数字が入った、毛糸の手袋だった。
どんなにすごい武器やアイテムが出るのかと思いきや、ただの毛糸の手袋だったので、ツナはショックを受け、隣にいる魅真も、驚きのあまり固まっていた。
「こんなんで、どーやって戦うんだよ!?エンツィオとか武器出るんじゃないのかよ!?手の血行良くしてどーすんだよ!!」
「………さーな。とりあえずつけとけ」
「なっ!?」
出てきたアイテムに対し、ツナが疑問をぶつけるようにツッコミをいれるが、結局のところ、リボーンにも使い道はわからないらしい。
「最後まで面白かったですよ、君達は」
「ひいっ」
「ツナ君!」
ツナとリボーンが話していると、骸(犬)が槍を振り下ろしてきた。
魅真は薙刀を構えて助けようとするが、わずかな差で間に合わず、槍はツナの手にあたった。
しかし、槍の先があたった瞬間、金属の音が響き、それにはじかれたツナは、後ろへふっとんでいく。
「攻撃を弾かれたのか…?」
防御をしていないのに攻撃をはじかれたので、骸(犬)は不思議そうにしており、魅真はそれを見てほっとしていた。
「た…助かった~。ん?」
ツナも助かったことにほっとしており、起きあがろうとすると、何やら、左手に違和感を感じた。
「中に何かつまってるぞ」
いつの間にかつけていた手袋をはずすと、中からひとつの弾が出てきた。
「た…弾だ!!!」
「弾!?」
「(特殊弾!!?)」
「そいつだな…」
ツナ、魅真、骸(犬)の三人は、その弾を見て驚いていたが、リボーンは一人だけニッと笑う。
「よこせ、ツナ」
「えっ」
リボーンはツナに、その弾を自分に渡すように言う。
「撃たせるわけにはいきませんよ」
しかし、骸(犬)が槍で攻撃をして邪魔をしてきたので、リボーンはそれをよけ、ツナからもらうことができなかった。
それなら…と、魅真はツナのもとへ走っていった。ツナから弾をもらって、リボーンに渡そうとしたのだ。
だが、それをいち早く察知した骸(千種)によってはばまれたので、魅真はツナのもとへ行くことができなかった。
「ちょっ…邪魔しないでよ!!」
「あの弾を渡すわけにはいきません」
「くっ…」
一方でリボーンは、骸(犬)の攻撃をよけて後ろへ跳んだところを、骸(ビアンキ)に腕をつかまれた。
「!!」
だが、そのつかんだ腕は、とかげのしっぽのようにブチッとちぎれた。
「くっ」
そして、そのちぎれた腕は、レオンへと姿を変えた。
「あ」
「ゲット」
リボーンは骸(ビアンキ)から逃れると、ツナが持っている弾を、ツナから奪った。
「見た事ねー弾だな。ぶっつけで試すしかねーな」
「えーーー!!?ぶっ…ぶっつけーー!?」
初めて見る上に、ひとつしかないので、ぶっつけ本番で弾を撃たれることになり、ツナは顔が青ざめた。
「させませんよ」
「!」
顔面蒼白になっていると、骸(獄寺)の声とともに、たくさんのダイナマイトが、ツナの頭上に降ってきた。
「君の体を無傷で手に入れるのはあきらめました」
「そんな!!うわあああ!!!」
更にダイナマイトを投げる骸(獄寺)。
ツナの周りには、たくさんのダイナマイトがせまっており、絶体絶命のピンチに陥った。
「ツナ君っ!!!!」
魅真は顔が真っ青になり、リボーンはダイナマイトが爆発する前に弾を装填した。
「間に合うものか」
今までよりも大量のダイナマイトが投げられたために、爆発の規模が甚大だった。
「ツナくーーーーん!!!!!!」
爆発してしまっては、もうダメかもしれないという考えが脳裏によぎり、魅真は目じりに涙を浮かべる。
「ボムをまともに食らいましたね」
「おやおや。これは重傷だ」
それを見ていた骸(ビアンキ、千種、犬)は笑みを浮かべており、魅真はツナの安否を確かめるため、すぐさまツナのもとへ走っていった。
「ツナ君!!」
魅真はツナのところへ来ると、その場にしゃがみこみ、呼吸をしてるかどうか確認するため、口に手を近づけた。
「(よかった。生きてる…)」
重傷ではあるが、まだ生きているので、魅真はほっとした。
「何の効果も表れないところを見ると、特殊弾もはずしたようですね」
「…………」
床だけでなく、ツナ自身もまっくろこげな上、なんの反応もなかったので、骸はその結論に至った。
「万事休す──…。あっけない幕切れでした。さあ、虫の息のその体を引き取りましょう」
骸(千種)は、いつの間にか骸(犬)から槍を受け取り、契約をするために、ツナのもとへ近づこうとする。
その骸(千種)のセリフを聞くと、魅真は骸(千種)をキッと睨んだ。
「ツナ君……。ツナ君!!しっかりして、ツナ君!!」
しかし、すぐに顔を戻して、懇願するように、ツナの体に支障がないくらいの力で揺り動かした。
痛い…。体中が…痛いよぉ…。
もう…死ぬのかな……。
もう、いいよな…。よくやったよな…。
みんな、ごめん…。オレ…ここまでだ──…。
もうたくさんだ…。
こんな痛いのも。
………こんな怖いのも…。
かなりの大ダメージをくらったせいか、骸に勝ちたいと言ったものの、もうあきらめていた。
《んまあ、この服っ!!》
「!」
《ツナったら、またちらかしたまま出掛けて~~っ。自分のことは自分でしなさいって言ってるのに~~!》
え………?か………母さん…?
……夢なのか……?
《なんだよこれ?日直日誌に沢田のテストまぎれてんじゃん!しかも…2点!!!》
あ……。国語のテストだ…。
《あいつ、マジでダメツナだな~~っ。京子モノにしたいんなら、もーちょっとしっかりしろよ~~~~~~っ》
「つーか、何で黒川の悪口が…?」
《特殊弾の効果みてーだな》
「ん!?」
何故か、奈々に続いて花の声まで聞こえてきたので、ふしぎに思ってると、今度はリボーンの声が聞こえてきた。
「(リボーン!!)」
《お前が感じてるのは、リアルタイムで届く、みんなからお前への小言だ》
「(!? 小言…!?)」
特殊弾の効果を聞くと、ツナはショックを受ける。
な…なんでこんな時に…小言聞かされなきゃならないんだよ…。最後の最後に、またダメツナって思い知らされるのかよ………。
《はひーー!!何やってるんですか!?犯人のアジトに乗り込むなんて、正気じゃありません!》
「(ゲッ…。ハルだ…)」
《ガハハ。ハル泣いてるもんね!》
《な…泣いてません!!ハルは、マフィアのボスの妻になるんです。こんなことで泣きませんよ。
ツナさん、がんばってください!》
「!」
《落ち着け、京子》
《だって…シャマル先生が、ツナ君達がのりこんだって…》
《心配するな》
《…でも》
《あいつはオレが手を合わせたなかで、最も強い男だ。負けて帰ってきたら、オレが許さん》
《そうだよね…。大丈夫だよね…。
ツナ君、元気で帰ってきてね》
「………」
《オレと同じ過ちを繰り返すな》
「!」
《仲間を守れ…。
お前がその手で、ファミリーを守るんだ》
奈々や花、ハル、了平、京子だけでなく、外で戦った、もとは敵だったランチアからも、ツナへのメッセージが届いた。
「ツナ君……」
「!」
ランチアの声が聞こえると、今度は、魅真がツナの名前を呼ぶ声が、直接聞こえた。
「(魅真ちゃん……)」
「ツナ君なら、絶対に勝てるよ」
ツナが、魅真の方にゆっくりと顔を向けると、魅真はにこっと微笑んで、エールを送った。
魅真の想いが聞こえてくると、ツナは、何か決心したように、歯を強く噛みしめる。
「オレの小言は言うまでもねーな」
リボーンがそう言った次の瞬間、ツナの目には生気が戻り、大きく目を開いて、その体勢のまま、目の前にいる骸(千種)を、睨むように見上げた。
「ほう…。この期に及んで、そんな目をしますか。ですが、もう幕引きにしましょう。
このまま死なれても困りますからね」
ツナの目の前まで来ていた骸(千種)は、ツナと契約をしようと、ツナに槍を振り下ろし、それを見た魅真は、考えるより前に体が動き、薙刀で応戦しようとした。
しかし、槍はツナには刺さらず、三つ又にわかれている、槍のひとつをつかんで止められる。
「!」
それを見た骸(千種)と魅真は、驚きの目をしていた。
ツナが槍をつかむと、槍をつかんだその手……正確には、手袋が光を放つ。
「な……!!?」
手袋が光ったことにより、骸(千種)と魅真は、更に驚きの表情を見せた。
光は次第におさまっていき、光がおさまると、手袋は、手の甲に「Ⅹ」の文字が刻まれたグローブに変化した。
グローブに変化したことで、ツナがつかんでいた部分の槍は折れ、それ驚いた骸(千種)は、あわてて槍を下げた。
「骸…。おまえを倒さなければ………」
そして、変化したのはグローブだけではなかった。
「死んでも死に切れねえ」
額には死ぬ気モードの時の炎があり、更には、ツナの目の色や雰囲気も変わっていた。
ツナが立ち上がると、骸(千種)は後ろに跳んで距離をとる。
「その頭部の闘気(オーラ)…。なるほど…。特殊弾が命中していたのですね」
骸(千種)の言葉に、ツナは何を言うでもなく、ただ骸(千種)をまっすぐに見据えていた。
「しかし、ランチアと戦っていた時には、もっと荒々しかったようですが…」
「小言弾は、ツナの、静なる闘志を引きだすんだ。死ぬ気弾とはまるでちがう、まったく新しい力を秘めた弾だからな」
「(死ぬ気弾と……小言弾…?)」
「フッ。僕には、戦意喪失し、意気消沈しているようにしか見えませんがね。どのみち、僕の能力(スキル)の前では、君は敵ではない」
骸(千種)がそう言うと、ツナの背後から、骸(犬)が、アニマルチャンネルを使って素早い動きで襲いかかってくるが、ツナに顔をつかまれ、あっさりと止められてしまう。
「!?」
体勢を変えず、前を向いたまま、片手だけで止めているのに、骸(犬)はそれ以上進むことができず、ツナはもう片方の、止めていない左手の方で、裏拳で骸(犬)を殴りとばした。
骸(犬)は、そのまま後ろにふっとんでいき、仰向けに倒れる。
「まだですよ」
けど、倒したのは犬の体のみだった。
骸(千種)は、ツナをはさみうちにするようにヘッジホッグを放ち、そこから出る毒針でツナを倒そうとした。
「(奴は幻覚)」
しかし、ツナは目の前にいる骸(千種)が幻覚であると見破る。
「(そこだ)」
そして壁の方を睨むように見ると、壁の方へ走っていき、何もないところを殴ると、骸(千種)が姿を現した。
「!」
「なに!?」
本物は幻覚を使って姿を見えなくしていたのだが、それを見破ったツナを見て、骸(獄寺とビアンキ)は驚いていた。
骸(千種)が後ろへふっとんでいくと、彼が持っていた槍が手から離れ、壁の溝に刺さった。
「バカな…」
「奴は、地獄道の幻覚を見やぶれなかったはず……」
ツナの力に骸は驚いたが、驚いたのは彼だけではなかった。
「あれが……ツナ君…?」
魅真も骸同様に、今までとは違うツナの姿に驚いていた。
「これこそ、小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠る、"ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)"が目覚めたんだ。
死ぬ気弾が、危機によるプレッシャーで外部からリミッターをはずすのに対し、小言弾は秘めたる意志に気づかせることにより、内面から全身のリミッターをはずす弾だ。
そして同時に、内面にある感覚のリミッターも解除するんだぞ。
ツナの場合、それは、ここにきて、時折見せるようになった、ボンゴレの血統特有の"見透かす力"、超直感だ。
まだ、グローブの使い方が、なっちゃいねーがな」
「(ブラッド・オブ・ボンゴレ…。超直感…)」
リボーンが説明し終えると、ツナは骸(獄寺とビアンキ)のもとに近づいていく。
「!」
「おっと。忘れてしまったわけじゃありませんよねぇ。これはお仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
骸(獄寺)はそう言うと、右目の数字を四に変える。
「クフフ」
そして、余裕の顔で笑いながら、ツナのもとへ走っていった。
「できますか?」
「がっ」
ツナの前まで来て、肘鉄で攻撃をすると、それはツナの顔面に直撃した。
「できるんですか?」
「ぐはっ」
続いて骸(ビアンキ)も走り出し、ツナのお腹にひざ蹴りをくらわせた。
「クフフ。やはり、手も足も出ませんか」
「いいサンドバッグですね」
「ちげーぞ。これほどの攻撃力だ。ガードしても、よけても、ビアンキ達の体に、負担がかかっちまう。ツナは今、自分の体で攻撃をいなして、2人の体を守ってるんだ」
ツナが無抵抗なのは、自分の能力には歯がたたないからだと思っていた骸だったが、横からリボーンが否定する。
1回目の攻撃の時はくらってしまったが、次の攻撃からは、ツナは二人の攻撃をただいなしているだけだった。
そして、骸(獄寺)が攻撃してきた瞬間、その拳を受け止めていなすと、拳を受け止めていない方の右手で、素早く首の後ろを打撃した。
そのことで、獄寺の体は力が入らなくなり、床に倒れていく。
「ク…。体が…」
「打撃で、神経をマヒさせる戦い方を直感したな」
「直感しただと?ふざけたことを!」
そんなことあるわけないと言うように、骸(ビアンキ)は拳をふって攻撃しようとする。
「!」
しかし骸(ビアンキ)も、同じように拳を受け止めていなされ、首を打撃された。
「くそ……」
そのことで、ビアンキの体もマヒしてくずれ落ち、もうビアンキの体にも憑依していられなくなったとわかった骸は悔しがった。
二人の体が落ちていくと、ツナは両手を出して二人を支えた。
「…………待たせてごめん……」
二人を助けることができたものの、ずいぶんと傷ついてしまったので、ツナは悔しそうな顔をしていた。
「隼人君!ビアンキさん!」
もう大丈夫だとわかると、魅真はツナのもとへ走っていった。
「リボーン、処置を頼む」
「急にいばんな」
ツナは、二人を床にそっと寝かせ、リボーンに手当てを頼んだ。
リボーンはそう言いながらも、救急箱を手に、ツナ達のもとへ走っていく。
「魅真……二人を見ててくれ」
「…わかった」
魅真にも二人のことを頼むと、ツナは壁の方を見た。
「出てこい、骸。生きてるんだろ?」
「クフフ」
独特の笑い方で現れたのは、自殺したはずの骸だった。
額に血がついてはいるが、確かに彼は生きていた。
不敵な笑みを浮かべて、ツナを見据えていた。
「魅真、あぶねェから、もうちょっとさがってろ」
ツナと骸の対決が始まろうとしているので、巻き添えをくわないようにと、リボーンは魅真に声をかける。
しかし、魅真からはなんの反応もなかった。
「!」
リボーンが魅真を見ると、魅真はまっすぐにツナを見ていた。
ツナのその姿を…骸との戦いを…少しももらすことなく、自分のその目に…その脳に…すべてを焼きつけるように……。
その魅真の真剣な表情を見たリボーンは、それ以上は何も言わなかった。
「フッ。戦闘センスが、格段に向上していることは認めましょう。だが、この程度で図に乗ってもらっては困りますね」
ツナの前に来て、ツナの覚醒した姿を見ても、勝つ自信があるというような、不適な笑みを浮かべていた。
「僕が持つ6つある戦闘能力(スキル)のうち、まだ1つだけ、発動していないことにお気付きですか!?」
「第5の道、人間道だな」
問われると、ツナの代わりに、リボーンがその問いに答えた。
「その通り。我々の生きるこの世界が、人間道です。そして実は、6つの冥界のうち、最も醜く危険な世界だ」
「!」
「皮肉ではありませんよ。ゆえに僕は、この世界を嫌い、この能力(スキル)を嫌う」
骸はしゃべりながら、右手を右目に近づける。
「できれば、発動させたくなかった──…」
「「「!?」」」
骸が、右目にふれられそうなくらいに手を近づけると、三人は目を見張った。
「この人間道は、最も醜く」
「きゃっ」
骸はふれるどころか、目の中に、躊躇なく指をつっこむと、目を何回かかきまわした。
そして、目から指を引き抜くと、右目は「五」の数字が刻まれ、指を目につっこんだ際に流れてきた血が、涙のように流れ出ていた。
「最も、危険な能力(スキル)ですからね」
右目の数字が五に変わった骸は、体の右側が黒く、左側は妙な模様が浮かびあがっており、体全体からドス黒いオーラがあふれ出ていた。
「「!!」」
「どす黒い闘気(オーラ)だな」
それを見たツナは身構え、魅真も、戦ってはいないが警戒心を抱いた。
「見えますか?闘気(オーラ)を放出しながら戦うタイプの戦士にとって、吹き出す闘気(オーラ)の大きさがすなわち」
骸は、槍のない棍を構えて、素早くツナのもとへ走って行き
「強さ!」
棍をツナに向けてふり下ろした。
「ぐわっ」
ツナはそれを両手で受け止めたが、押し負けてしまった。
「がはっ」
押し負けたツナはバランスを崩し、骸はその隙をついて、すかさずツナの鳩尾に一発いれた。
そのことで、ツナは宙に浮く形になる。
「君と僕では」
更に骸は、棍を回転させると
「力の差がありすぎる」
棍でツナを殴りとばした。
ツナは遠くまでとばされ、体を壁に強く打ちつけてしまい、壁が崩れたことで煙が舞った。
「ツナ君!!」
すごい音がしたので、魅真は顔を青くして、心配そうにツナの名前を叫ぶ。
「クハハハハ!脆いですね。ウォーミングアップのつもりだったのですが」
骸は自分が優位に立ったことで、高らかに笑った。
「で、なくっちゃな………」
「なっ!」
けど、ツナは無事で、煙の中、瓦礫が崩れる音とともに立ちあがる姿を見て、魅真は安堵の表情を浮かべるが、骸は驚いていた。
「なに!?闘気(オーラ)がはじけた……!?」
そして、頭部の炎が大きく燃え盛るのを見て、骸は更に驚いた。
「わかってきたみてーだな。グローブの意味が」
「おまえの力がこんなものなら」
頭部だけでなく、額の前で合わせた両手にも、大きく炎が灯る。
「拍子抜けだぜ」
「クフフフフ。まったく君は、楽しませてくれる」
頭部と両手に灯る大きな炎。挑発的なセリフ。
そんなツナを見た骸は、眉間にしわをよせながらも、楽しそうな笑みを浮かべた。
「Ⅹグローブは、死ぬ気弾と同じ素材でできていて、死ぬ気の炎を灯すことができるんだぞ」
「フッ。まるで、毛を逆立てて、体を大きく見せようとする猫ですね。だが、いくら闘気(オーラ)の見てくれを変えたところで無意味だ」
リボーンに、ツナのグローブのことを説明されても、骸は強気な態度をとった。
「死ぬ気の炎は闘気(オーラ)じゃない」
「ほう…。面白いことを言う。
ならば見せて…」
ツナに否定されると、骸は、自分の強さに絶対の自信をもち、その余裕からくるものなのか、棍を遊ぶように回すと、それを持ち直して構える。
「もらいましょうか!?」
そしてツナのもとへ走っていき、ツナの前までくると、棍を勢いよくふり下ろすが、それは、ツナに片手でつかんで止められてしまう。
それだけではなく、グローブに灯された炎で、骸の棍をとかした。
「な!?」
まるでチョコレートのようにとかされたので、骸は驚いて固まった。
その隙に、ツナはもう片方の手を、横に薙ぎはらうように動かす。
「つっ!!!」
手の先が少しかすった程度なのだが、それでも骸には、微量ながらもダメージが与えられる。
「(熱い……!!!闘気(オーラ)が熱を帯びている!?)」
「死ぬ気の炎と闘気(オーラ)では、エネルギーの密度がちがうからな。限られた人間の目に見えるだけの闘気(オーラ)とちがって、死ぬ気の炎は、それ自体が破壊力をもった、超圧縮エネルギーだ」
「そのグローブは焼きゴテというわけか…」
「それだけじゃない」
「くっ」
今度は、ツナの方が骸に向かって走っていく。
それを見た骸は、ツナが目の前に来ると、先程と同じように棍をふり下ろす。
「!?
消えた?」
微かにツナに灯っていた炎が残るのみで、自分の視界から突然いなくなったので、さすがの骸も驚きを隠せなかった。
「!!?」
そのすぐ後に、ツナは骸の背後に現れる。
「バカな!いつのまに!?」
骸は、今までいくつもの修羅場をくぐってきているので、背後にツナが来たのはわかった。
しかしだからこそ、そのことに驚いていた。自分の力に絶対の自信をもってるし、まさか、先程までずっと弱音ばかりはいていた弱々しかったツナが、こんなにもすごい動きをするとは思わなかったからだ。
そんな骸の言葉に、リボーンはニッと笑う。
骸が後ろへふり向くと、ツナが拳をつきだしてきたので、とっさに棍で防御するも、棍ごと後ろへふっとんでいき、そのことで棍は、また殴られた箇所が曲がってしまった。
ふっとんでいった骸だが、防御したからか、すぐに起き上がった。
「何だ、今のは……?奴は何をしたんだ……」
「ウォーミングアップは、まだ終わらないのか?」
「くっ」
形勢逆転してしまったので、骸は苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
「………クフフ…。クハハハハハハッ」
しかし、何を思ったのか、突然高らかに笑い出した。
「ここまでとはうれしい誤算だ。君の肉体を手に入れれば、知略をはりめぐらさずとも、直接ファミリーに殴り込み、マフィア間の抗争を起こせそうだ」
「!」
「マフィア間の抗争が、おまえの目的か」
「(マフィア…?)」
「クフフ…。まさか…。僕は、そんなちっぽけな男ではありませんよ。僕はこれから、世界中の要人の体をのっとるつもりです。そして、彼らをあやつり、この醜い俗界を、純粋で美しい血の海に変える」
笑うのをやめると、骸は立ちあがりながら、なんとも恐ろしいことを語りだす。
「世界大戦…なんて、ベタすぎますかねぇ」
恐ろしいことを話しながらも、どこか楽しそうな笑みを浮かべる骸を見て、魅真とツナとリボーンの三人は、顔が強張った。
「だが、手始めは、やはりマフィア──…。マフィアの殲滅からだ」
そう言った時の骸の顔は、とても冷たく、恐ろしく、怖いものだった。
「なぜ、マフィアにこだわる」
「恨みか」
「おっと。これ以上話すつもりはない。君は、僕の最強形態によって、僕のものになるのだから」
再び余裕を見せる骸は、見下すように不適な笑みを浮かべる。
「見るがいい!!」
骸がそう言うと、骸の体から、体が黒く、髪が白い、オーラのような幻覚が飛び出してきた。
「………幻覚だ」
それは、ツナにまっすぐ向かってくるが、ツナはそれを、いち早く幻覚だと見抜いた。
「こんなもので…」
なので、攻撃も防御もおろか、逃げたりよけたりすることもせず、ただその場に立っているだけだった。
「!!?」
しかし、その幻覚がツナの体をすりぬけると同時に、顔に衝撃が走る。
「くぅ…」
「あっ…」
「幻覚に、つぶてを潜ませたな。油断しやがって。バカツナめ」
ツナがうめき声をあげたのは、骸が幻覚に潜ませた石つぶてが、顔にあたって血が出たからだった。
リボーンがツナを叱責している間に、本体の方はツナの真上に跳び、とどめをさそうとしていた。
「(もらった―――…!!!)」
ツナに隙が出き、今ならやれると思った骸は、笑みを浮かべる。
「ツナ」
「わかってる!!」
リボーンに名前を呼ばれると、それだけで、リボーンが言わんとしていることがわかったツナは、グローブを構え、炎を灯した。
「!!」
そして、一瞬にして骸の背後に飛び、間合いをつめる。
「また背後に!?」
何故、先程のように、一瞬にして背後にまわったのかがわからなかったが、それに驚きながらも、防御しようとしたが間に合わず、骸は空中で、たたき落とすようにしてツナに殴りとばされ、その勢いで床に激突した。
.