標的29 襲撃
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並盛町。
夜9時。
「うっ ぐはっ」
人を殴るにぶい音と同時に、男のうめき声がした。
その声の主は、今の攻撃で、地面に倒れてしまう。
「うう…」
「よえーーよえーー。風紀委員、恐るるに足らーず!」
この男は、並盛中学校の風紀委員の一人で、二人の男に襲われていたのである。
「貴様ら…何者だ…」
「んあーー?」
体中ボロボロで、血も流れているというのに、彼は、自分を襲った者達の正体を問う。
「遠征試合にやってきたとなり町ボーイズ?」
髪の毛が逆立った男は、彼の問いに間延びした返事をすると、頭の中に、今とっさに浮かんだであろう言葉をつむいだ。
「それ、つまんないよ。早く済ましてよ、犬」
そして、後ろにいるメガネをかけた少年が、ことを済ますように促す。
「こいつ、何本だっけか?ちょっくら頂いていくびょーーん!」
犬と呼ばれた、髪の毛が逆立った少年は、しゃべりながら工具を取り出した。
「なっ、何をする気だ!?」
これからこの少年が、自分に何をするのか、なんとなく予想できてしまった男は、顔が青ざめた。
「恨まないでね~。上の命令だから」
「まて!や…やめ…!!」
しかし、彼が叫ぶのもむなしく、犬は男の髪をつかむと
「ほい」
「うぎゃあああ!!」
その工具で、なんの躊躇もなく、男の歯を抜いた。
標的29 襲撃
次の日の日曜日の朝。
「お願いします、雲雀さん!!」
「ダメだよ」
雲雀家では、魅真が雲雀に頼みごとをしていたが、雲雀にあっさりと却下された。
「なんでですか!?」
「野球部の秋の大会なんて、群ればっかりじゃないか。そんなの許さないから」
理由は、魅真が今度行われる、山本も選手として出場する、野球部の秋の大会を観に行きたいと言ったからだった。
しかし、自分だけでなく、他人が群れてるのも嫌な雲雀は、それを許さなかった。
魅真は雲雀から許可が得られなかったので、ふくれっつらになり、雲雀を軽く睨んだ。
「何その顔?言っとくけど、何言っても無駄だから」
何を言っても、どんな態度をとっても、雲雀はとりつく島もなかった。
「失礼します、委員長!!」
その時、足音が聞こえてきたと思うと、草壁が雲雀家の庭にやって来た。
「何?さわがしいね」
「すみません。実は…」
草壁は雲雀の前まで来ると、昨夜あった出来事を話した。
「風紀委員の一人が……やられた?」
それは、風紀委員が何者かに襲われたということだった。
「はい。それで、やられた者は、歯を抜かれたそうです」
「あの…草壁さん、やられた人は大丈夫なんですか?」
雲雀の隣にいた魅真は、草壁に、やられた者の安否を確認していた。
「ああ、命に別状はないらしい。今は、病院に入院して眠っているところだ」
「よかった…」
襲われはしたが無事だったので、魅真は安堵した。
最初は、魅真も雲雀も、ただ他の不良とケンカをして負けたのだろうと思っていた。
しかし……事態は、この日のうちに急変していった。
その日の夜の6時頃、再び草壁がやって来て、昨日の夜の9時にやられた風紀委員以外に、合計で7人の風紀委員が襲われたという報告をした。
報告を受けた時、もともと鋭い雲雀の目が、更に鋭くなった。
「犯人は……風紀委員にケンカを売ってるのかい?」
「それはまだわかりません。犯人がまだわかっていないので……」
「やられた奴らは、犯人を見てないのかい?」
「黒曜中学の制服を着ていたそうですが…個人の特定は、まだ……」
「やっぱ、犯人は不良……なんですか?」
「いや、見た目は不良ではなかったそうだ。ただ、黒曜中学校は、悪い噂の絶えない荒れた学校だし、不良のたまり場とも言われているからな。だから、一概にそうとは決められない」
「けど、犯人は黒曜中学校の生徒で間違いないんだね?」
「はい」
「そう……」
草壁に確認をとると、雲雀の目は更に鋭さを増した。
もう、これ以上は無理だろうというくらいに、目がつりあがっていたのだ。
「引き続き、やられたヤツから情報を聞き出して。何かわかったら、どんな小さなことでもいい。僕に教えて」
「わかりました」
草壁は了承し、一礼すると、そこから去っていった。
「風紀委員を狙うなんて……いい度胸じゃないか…。必ず後悔させてあげるよ……!」
草壁の姿が見えなくなると、いつもよりも低めの声で、ひとり言を言うようにしゃべる。
「絶っっ対にっ………咬み殺すっっ!!!!!!」
一人だけなら、他の不良と戦ってやられたとだけ受け取っただろうが、こうも連続して襲われたのは、きっと誰かが、風紀委員にケンカを売ってきたのだろうと思った雲雀は、犯人を倒そうと燃えていた。
次の日の月曜日。
並盛中学校は、厳戒態勢になっていた。
校門をはじめ、学校の周りを見張っており、とてもピリピリしているので、登校してくる一般の生徒は、いつもよりもビクビクしていた。
そこへ、ツナがいつも通り登校してくる。
「風紀委員だ!!
あそこにも…!」
「そりゃあ、あんな事件が多発してるんだ。ピリピリもするぞ」
「やっぱ、不良同士のケンカなのかな…」
「ちがうよ」
「! ヒバリさん!!」
ツナも、土日で風紀委員が8人も襲われたという話は、今朝奈々から聞いて知っていたので、風紀委員がらみということは、そういうことなのかと思ったが、後ろから否定の言葉が聞こえてきたので、ふり向いてみると、そこには雲雀が立っていた。
「あ、おはよーツナ君、リボーン君」
「おはよう、魅真ちゃん」
「ちゃおっス、魅真、雲雀」
「はっ!あ…いや…ボクは、通学してるだけでして…」
「身に覚えのないイタズラだよ…」
リボーンは普通にあいさつをするが、ツナは雲雀が怖いので、魅真には普通にしていたが、雲雀には、何も言われてないのに顔を青くして、説明口調で話していた。
「もちろん、ふりかかる火の粉は、元から絶つけどね」
「! やっぱヒバリさんこえーーっ」
それはつまり、容赦なく相手を咬み殺すということなので、雲雀のいつもよりも怖い顔と、いつも通りの発言に、ツナは背筋が凍った。
《緑~たなびく並盛の~~…大なく小なく、並~が・いい~~…》
「(うちの校歌だ…)」
すると、突然自分の中学校の校歌が聞こえてきたので、何故いきなり聞こえてきたのかとふしぎに思い、ツナはその音を確かめるために辺りを見回した。
「(ヒバリさんの着うたーー!!!?)」
その歌が流れてくるところは、雲雀の携帯だったので、ツナは引いていた。
「じゃあ、失礼します」
ツナは、授業があるのもだが、これ以上は関わりたくないと思ったので、教室に向かおうとした。
「君の知り合いじゃなかったっけ」
「!」
だが、その時雲雀に呼びとめられた。
「笹川了平……やられたよ」
「……!」
ツナを呼びとめると、雲雀は今電話で聞いた内容をツナに伝える。
そのことを聞くと、ツナも、隣にいた魅真も、顔が真っ青になり、ツナはすぐに了平が運ばれたという、並盛中央病院に走っていった。
魅真も了平のことが心配だったので、一緒に行きたかったが、自分は風紀委員の人間なので、立場上無理だというのがわかっていたので、病院には行かなかった。
一方雲雀は、まだ携帯で話をしていた。
電話の相手は、同じ風紀委員の人間で、雲雀は了平から聞いた話を聞いていたのだ。
「うん。……そう………わかった…。じゃあ、引き続き警戒しておいて」
それだけ言うと、雲雀は電話を切った。
「雲雀さん。相手はなんと?」
話している時、段々声が低くなっていったのが気になった魅真は、雲雀に聞いてみた。
「笹川了平も、黒曜中学校の人間にやられたそうだよ」
「そうだったんですか。あの……雲雀さん」
「何?」
「とりあえず、黒曜中学校まで行ってみませんか?犯人が黒曜中学校の人間ってことは、黒曜中学校を探せばいるかもしれませんし……」
「今までにやられたヤツの話を聞くと、犯人は二人いるみたいだ。たったの二人で、もちろん僕の足もとに及ばないが、そこそこ戦えるヤツを倒して、全員を病院送りにまでしている。そんな力をもつってことは、相手もそれなりに強いはずだ。そういう証言もあったしね。まず、一般の生徒ではないだろう…。そんな、一般の生徒でないヤツが……しかも、今さっき笹川了平を並盛町で倒したようなヤツが……また、並中の生徒を襲うかもしれないようなヤツが……黒曜中学校にいると思うかい?」
「あ……そっか…」
「まったく…。君って、勉強はできるのに、どこかぬけてるね」
「……それはバカだと言いたいんですか?」
「まあ、そうとも言うね」
あっさりバカだと認められたが、事実なので、それ以上は何も言えず、魅真は黙りこんでしまった。
「だけど、本当に犯人は、一体どこにいるんでしょうか?並盛町か黒曜町にいるんでしょうけど……でも、どこを探せば……」
魅真は気をとりなおして、再び犯人の居場所について考える。
「そんなもの、知っていたらとっくに行ってるさ」
「あっ…!ひょっとして犯人は……不良のたまり場にでもいるんでしょうか?並盛町にもそういう場所がありますし、黒曜中学校は悪い噂が絶えない、不良のたまり場のようなところだって、草壁さんも言ってましたし。きっと、黒曜町にも、そういうところがあるのかも…」
そこまで言われると、雲雀はハッとなる。
「そうか……。そうだったんだ」
「え?」
雲雀は一人納得すると、突然歩き出した。
「雲雀さんっ!どこへ行くんですか!?」
「犯人のところ…」
「えっ!犯人の居場所、わかったんですか?」
「まあね」
「どこなんですか?そこは!」
「……黒曜センター…」
「黒曜……センター?」
「映画館やカラオケや動植物園とかがある、複合娯楽施設だったところだよ。改築計画もあったらしいけど、一昨年の台風で土砂くずれがおきてしまい、今は閉鎖して廃墟になってる。そしてそこは、黒曜中の不良達のたまり場で、悪事のためによく利用されてる場所なんだ」
「そうだったんですね。それじゃあ私も……」
「ダメだよ」
「え?」
自分も行くと言おうとしたが、最後まで言う前に、却下された。
「君が一緒に行ったって、足手まといになるだけだよ。戦いは僕の本分。僕が一人で行ってくるよ」
「でも私はっ…」
「? 私は……何?」
「私は……ただ……」
「?」
「ただ………雲雀さんのことが……心配で…」
うつむき加減でぽつりぽつりと話すと、雲雀は小さく息をはいた。
「余計なお世話だよ」
「なっ!?」
「僕がやられるわけがないだろ?僕は強いからね」
「あ……」
「くだらない心配してないで、ここで彼らと一緒に、不審者がいないかどうか見張ってなよ」
それだけ言うと、雲雀は黒曜センターに向かって歩き出した。
魅真はどこか不満そうな…心配そうな顔で見送った後、他の風紀委員と一緒に、不審な人物がいないかどうかをチェックしていた。
けど、それも10分ほどのことで、やはり雲雀のことが心配な魅真は、あとで雲雀に叱られるのを覚悟の上で、周りに何も言わず、こっそりと黒曜センターに向かっていった。
魅真が黒曜センターに向かってから30分ほど経った頃、雲雀は目的地である、黒曜センターに着いた。
雲雀は中に入って調べようとしたが、入った途端に、黒曜中学校の生徒が襲いかかってきて、雲雀を倒そうとした。
しかし、雲雀の敵ではなく、雲雀はトンファーを素早くとりだすと、一撃で相手を倒してしまった。
今のことで、雲雀は、ますます犯人がここにいる可能性が高いとふんだ。
敵は、隠れている者もいれば、隠れずに堂々と目の前に立っている者もいた。
それが道標となり、雲雀は黒曜ヘルシーランドと書かれた建物に向かって歩いていく。
中に入るために階段をあがっていくが、もちろんそこにも黒曜生がいたので、雲雀は進むごとに敵を倒していった。
雲雀が進むごとに黒曜生が倒れていき、明らかに何かがあったと思わせるものだった。
全員一撃でやられ、血を流して、地面に点々と倒れていた。
その者達をやった雲雀の顔やトンファーには、彼らの返り血がついているが、それでも雲雀は気にすることなく進んでいく。
この時の雲雀は、まるで草食動物を捕食した肉食動物のように目がぎらついており、どこか楽しそうな顔をしていた。
雲雀は、建物に続く階段をあがりきると、そこにある出入口から、建物の中に入っていく。
その奥の壁の向こうには、一人の黒曜生が、斧を持って待ち伏せしていた。
「オラァァ!!」
その黒曜生は、雲雀が近くまで来ると、斧をふって襲ってくるが、雲雀はそんなのはものともせず、斧をよけると、相手の懐に入って、トンファーで殴りとばした。
黒曜生は、殴りとばされた勢いで、後ろのガラスを突き破って部屋の中に入ると、床に倒れてそのまま気絶した。
「やあ」
「よくきましたね」
黒曜生が倒れた部屋の奥……そこにはソファがあり、そのソファにはひとつの人影があった。
部屋は暗がりの上、後ろのボロボロのカーテンからのぞく太陽の光が逆光となってるので、そこにいる人物がどんな顔なのかはよくわからないが、すわり方と、雲雀が話しかけた時に返ってきた声と、シルエットから、そこにいる人物が、男であることがわかった。
「ずいぶん探したよ。君が、イタズラの首謀者?」
「クフフ。そんなところですかね。そして、君の街の新しい秩序」
「ねぼけてるの?並盛に二つ秩序はいらない」
「まったく同感です。僕がなるから、君はいらない」
それを聞くと、雲雀は見るからに機嫌が悪くなる。
「それは叶わないよ」
しゃべりながら、雲雀はトンファーに仕込まれたトゲを出現させる。
「君はここで
咬み殺す」
トゲが出たトンファーを構えた雲雀は、敵意と殺意がその体からあふれ出ており、目だけで相手を殺せてしまいそうな雰囲気だった。
「座ったまま死にたいの?」
雲雀は相手を倒すため、トンファーを振り回しながら、相手のもとへ歩み寄っていく。
「クフフフ。面白いことを言いますね。立つ必要がないから座ってるんですよ」
「………」
その言葉に、更に気分を害した雲雀は、ムッとして、眉間にシワを寄せる。
「君とはもう、口をきかない」
「どーぞお好きに。ただ、今喋っとかないと、二度と口がきけなくなりますよ」
「!!」
彼がそう言うと、雲雀は突然寒気を感じ、冷や汗を流す。
「んーー?汗がふきだしていますが、どうかなさいましたか?」
「黙れ」
「せっかく心配してあげてるのに。ほら、しっかりしてくださいよ。
僕はこっちですよ」
「!!!」
雲雀は相手をまっすぐ見据えていたはずなのだが、いつの間にか違う方向へ向いており、足がふらついていた。
相手の声でそのことに気づき、先程よりも更にたくさんの汗をかきながら、顔を相手の方へ向ける。
その顔は、とても気分が悪そうだった。
「海外からとりよせてみたんです。クフフフ。本当に苦手なんですね」
彼の手にはいつの間にかスイッチがあり、しゃべりながら、その手ににぎられているスイッチを押す。
「桜」
彼がスイッチを押すと、薄紅色の美しい桜が、天井一面に咲き誇った。
それを見た雲雀は、驚きのあまり、目を大きく見開く。
同じ頃、黒曜センターの入り口の前では……。
「やっと…ついた…」
やっと黒曜センターについた魅真が、黒曜ヘルシーランドと書かれた建物を見上げていた。
「よしっ」
そして、持ってる薙刀を強くにぎりしめると、中へ入っていった。
場所は雲雀がいるところに戻る。
「おっと」
そこでは、鈍い音が部屋の中に響いていた。
鈍い音が響いた後、男は雲雀の髪の毛を強くつかんで、そのまま無理矢理、雲雀の顔を上にあげ、自分の方を向かせた。
「なぜ、桜に弱いことを知っているのか?って顔ですね」
雲雀の顔にはたくさんの傷や痣ができており、頭や額、鼻、口など、いたるところから血が出ているという、ひどい状態だった。
「さて、なぜでしょう」
彼が髪をつかんでいた手を離すと、雲雀は床にくずれ落ちた。
けど、床に手をついたので、うつぶせになることはまぬがれた。
「………」
「おや?もしかして、桜さえなければと思ってますか?」
ボコボコにやられて血まみれになり、床にはいつくばるというのは、雲雀にとって屈辱以外の何ものでもないので、そのままの体勢で相手を睨んだ。
そんな雲雀を見た男は、それだけで雲雀が考えてることがわかり、問いかける。
「それは勘違いですよ。君レベルの男は何人も見てきたし、幾度も葬ってきた」
話しながら、男はその場を立ちあがり、雲雀を見下ろした。
「地獄のような場所でね」
雲雀を見下ろした男は、並中生を襲った者と同じ黒曜中の制服を着た、「六」という数字が書かれた、不思議な右目を持つ男だった。
「さあ、続けましょう」
それから、彼の雲雀に対する暴行は続いた。
「……!」
そしてその様子を、一人の少年が、感情のない目で見ていた。
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