標的27 夏祭り
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「え…。お祭り?」
《そうです。今日は、並盛神社でお祭りがあるんですよ。京子ちゃんも誘ったんですけど、魅真ちゃんも一緒に行きませんか?》
海水浴に行って数日後の昼間。突然ハルから、夏祭りのお誘いの電話が、魅真の携帯にかかってきた。
「えっと……ごめんね、ハルちゃん……。今日は…ちょっと……」
《また委員会ですか?》
「うん……。ほんとは行きたいんだけど…」
《わかりました。じゃあ…残念ですけど、京子ちゃんと二人で行ってきますね》
「本当にごめんね。今度また、うめ合わせするから」
《いいんですよ。それじゃあ》
けど、夏休みだというのに委員会の仕事があるので、あきらめざるをえない魅真は、泣く泣く誘いを断り、電話を切ると、かるくため息をついた。
「真田」
電話を切ると、なんともタイミングよく雲雀が現れる。
名前を呼ばれると、自室の扉の前に立って、自分を見下ろしている雲雀に顔を向ける。
「でかけるよ」
「あ、はい」
短く言うと、雲雀は玄関の方へ歩き出し、魅真もその場を立ちあがると、そばに置いてある薙刀を手にとり、雲雀のあとをあわてて追いかけた。
標的27 夏祭り
それから魅真と雲雀の二人は、他の委員と合流をすると、目的の場所へと向かっていった。
行き先は並盛神社。
京子とハルと行くはずの、夏祭りが行われている会場だった。
「うわああ。すっごいにぎわってますね」
祭りの会場に着くと、魅真は、目を輝かせてはしゃいだ。
食べ物やおもちゃなどの屋台が、ところせましと軒をつらねており、ちょうちんがきれいに光り輝き、どこからかお囃子が聞こえてくる。
まさに、夏祭りといった感じの雰囲気に、魅真はすごく感激していた。
「委員長」
一方魅真の側では、草壁が雲雀の隣に歩みよって来た。
「昨日、ここに出たひったくり犯ですが、まだつかまっていないようです」
「そう…。みつけ次第つかまえておいて」
「わかりました」
それは、この祭り会場に出る、ひったくり犯についての話だった。
「ちょっと、遊びに来たわけじゃないんだよ」
「あ…すみません…」
話が終わり、ずっとはしゃいでいた魅真に注意をすると、魅真は素直に謝った。
「ところで雲雀さん。今日は、委員会の関係で来たんですよね?私達、一体何しに来たんですか?」
肝心なことはまだ聞かされていなかったので、何故風紀委員の活動でここに来たのかを、雲雀に聞いた。
「ショバ代の回収だよ」
「………はっ…?」
雲雀の口から出てきたのは、普通の中学生には関係ない、とんでもないことだったので、魅真は一瞬思考が停止した。
「えっと……雲雀さん…。私、今なんか、ありえない言葉が聞こえた気がするんですけど。もう一回言ってもらってもいいですか?」
「だから…ショバ代の回収に来たんだよ」
「(聞き間違いじゃなかった!)」
しかし、冗談かと思ったら本当のことだったので、魅真はショックを受け、ドン引きした。
「それ……なんのためですか?」
「委員会の活動費だよ」
「(活動費?委員会の?夏祭りの屋台のショバ代が?ていうか、活動費って何!?)」
説明されるが、普通では考えられないことに、魅真はますます意味がわからなくなった。
「さ、さっさと行くよ」
魅真の心中など知らず、雲雀はショバ代の回収を始めるために、行動を開始した。
「(今までも、意味不明な言動はいっぱいあったけど、今回ほど意味不明なことはないわ。みんなもなんだか、あたり前って感じだし…。やだな……。一緒に歩くの。すっごいはずかしいんだけど…)」
他の風紀委員達は、ごく普通のことのように受け止めているようだが、魅真はいろいろとショックすぎる上にはずかしいので、一緒に行くのをためらった。
「真田、何やってるの?」
「あ、はーい」
けど、自分も風紀委員で、一応委員会の活動で来ているので、渋々ついて行った。
ショバ代の回収は、スムーズにすんだところもあれば、逆らうところもあった。
逆らわないところはショバ代を回収しただけだったが、逆らったところは、気の毒なことに屋台をつぶされていた。
その姿は、もはや中学校の風紀委員というよりは、ただのチンピラである。
「(気の毒すぎる…)」
いくら払おうとしなかったからって、そこまでやるか?と思ったが、そんなことを言ってもムダだということがわかっている魅真は、つぶされた屋台の人に同情しながらも、雲雀に何かを言うことはしなかった。
「(あれ?あれって…ツナ君?それに、隼人君と武君も)」
進んでいるうちに、魅真の目には、よく見知った人物…ツナ、獄寺、山本の姿が映った。チョコバナナ屋をやっていたのだ。
やはりというかなんというか…ここに来ても、風紀委員を恐れる声があり、ツナ達に忠告する者もいた。
雲雀は特に気にする様子もなく、ツナ達のもとへ歩いていき…
「5万」
「ヒバリさんー!!?」
ツナ達の屋台からも、ショバ代を回収しようとした。
まさかの雲雀の出現に、当然のことながら、ツナは驚いていた。
「あ、やっぱツナ君と隼人君と武君だ。お店やってるんだね」
「魅真ちゃん!」
「魅真!」
「よっ」
雲雀の後ろから、雲雀と行動をともにしていた魅真が現れたので、三人は声をかけた。
「そんなことより、雲雀てめーー、何しに来やがった!」
「まさか」
「ショバ代って、風紀委員にーーーー!?」
「活動費だよ」
まさか、ショバ代を風紀委員に払うとは思わなかった三人は、驚きをかくせなかった。(獄寺はただ雲雀に噛みついているだけ)
「払えないなら、屋台をつぶす」
雲雀は目を鋭くして、なんとも恐ろしいことを口にする。
「待ってください!やっぱり払います!払いますから!!」
「(実際につぶされてるーー!!)」
けど、それは冗談でもなんでもなく本当のことで、すぐ近くでは、実際に屋台をつぶされていたので、ツナはショックを受けた。
「たしかに」
「(うちの風紀委員、地元最凶~~~~!?)」
屋台をつぶされたら困るし、最初から払うつもりだったので払ったのだが、自分の中学校の風紀委員が地元最凶なことに、ツナは恐れをなしていた。
「ツナ君、チョコバナナ一本ちょうだい」
「え?」
「見てたら、なんかほしくなっちゃった」
「ほんとに?ありがとー」
たったの一本ではあるが、少しでも多く売れることに、ツナは感謝していた。
「ほらよ」
少しすると、獄寺ができあがったチョコバナナを魅真に渡した。
「わあ、おいしそー。ありがとう、隼人君!」
「お、おう…」
にっこりと微笑みながらお礼を言われると、獄寺は頬を赤くして、ぶっきらぼうに返す。
チョコバナナを買うと、魅真はツナ達のもとから去っていき、雲雀の隣を歩きながらチョコバナナを食べていた。
「ちょっと……委員会の活動中に、僕の前でものを食べるのやめてくれる」
当然雲雀はいい顔をしておらず、睨むように魅真を見ていた。
「いいじゃないですか。ちゃんと活動はしてるんですから」
「そういう問題じゃないよ」
「それに、このチョコバナナは一本400円と微々たるものですけど、これも積もり積もればたくさんのお金になります。それが、めぐりめぐって雲雀さんのもとに来るなら、ひとつでも多く売れた方が、いいにこしたことはないでしょう?」
「……好きにすれば…」
だが、魅真に説得(?)されると、一理あると思ったのか、それ以上は何も言うことはなかった。
それから何十分か経つと、すべての店からショバ代の回収が終わった。
「雲雀さん、もう帰るんですか?」
ショバ代の回収を終えたので、これで帰れるのかと思った。
…というより、ショバ代の回収などというはずかしい行為をしていたので、早くここから立ち去りたいというのが本音だった。
「いや……これから、ひったくり犯を探そうと思ってね」
「ひったくり犯…ですか?」
「そう。昨日から、この祭り会場に出没してるんだ。聞いてなかったの?」
「…すみません」
「今度から、ちゃんと聞いておきなよ」
「はい…」
「じゃあ、とりあえず探しに行こう」
「え?待ってください雲雀さん」
一人だけ先に歩いていく雲雀に置いていかれないように、魅真もあとを追いかける。
「あの…雲雀さん」
「何?」
「なんでひったくり犯を探すんですか?警察にまかせておけばいいんじゃないですか?」
「ダメだよ」
「え…。何故ですか?」
「あいつらは並盛の風紀を乱したし、それに何より、集金の手間がはぶけるから」
「…へ……?」
「祭りは明日もあるからね」
雲雀の性格からして、ひったくり犯をつかまえるのは、きっと並盛の風紀を守るとかそんなものだろうと、魅真は思っていた。
もちろんその理由もあるのだが、それだけでなく、もうひとつの理由がとんでもないものだったので、魅真はすっとんきょうな声をあげ、目が点になった。
もしかしなくても、自分は犯罪の片棒をかつごうとしているのでは?と思ったが、とりあえず着いていって、雲雀が聞いてくれるかどうかはわからないが、もしひったくり犯をみつけることができ、ひったくった金を奪おうとしたら、全力で止めようと考えていた。
そして、ひったくり犯を探し始めてから、数十分が経った頃…。
「みつからないね、ひったくり犯」
「そうですね…。今日はもう、出ないんじゃないでしょうか?」
それならそれでラッキーだと思った魅真は、雲雀に早いとこ帰るよう促そうとした。
「あの…雲雀さ…「あ…」
すると、話している途中で、雲雀が短い声をあげた。
「ど…どうしたんですか?雲雀さん」
「みつけた…」
魅真の問いかけに、答えてるような答えてないようなことを短くつぶやくと、雲雀は急に走り出した。
「待ってください、雲雀さん!」
何がなんだかよくわからなかったが、魅真も雲雀に続いて走り出し、雲雀の後を追いかけていった。
「(あれ?小さくてよく見えないけど……目の前の階段を走ってるのって……ひょっとして、ツナ君!?)」
走っていると、神社の本殿に続く階段を、二人の人が走っているのが見えた。
遠くなのでよくわからなかったが、下の方を走っている人物がツナに見えたので、魅真は驚いていた。
そうこうしているうちに、雲雀も魅真も階段までたどり着き、ひったくり犯と、ひったくり犯を追いかけていた、ツナらしき人物が上がっていった階段までたどりつき、階段を上がっていく。
上がっていく途中で、鳥居の前に武器を持ったたくさんの人間が見えたので、雲雀はうれしそうな顔をしていた。
もうすぐで上につくという時に、ツナの震える声が聞こえたが、それを気にしたのは魅真だけで、雲雀はまったく気にせずに上がっていき、目の前にいる、自分に背を向けている無防備な男を一人、トンファーで殴り倒した。
「うわ!!」
叫び声に気づいた、ツナにナイフを向けている主犯格であろう男が、ナイフを持っている手を止めた。
「うれしくて身震いするよ。うまそうな群れをみつけたと思ったら、追跡中のひったくり集団を、大量捕獲」
「大丈夫?ツナくん!!」
「ヒバリさん!!!魅真ちゃんも!!!」
「んだっ、こいつらは」
「並中の風紀委員だ」
「(まさかヒバリさん、オレを助けに…?)」
突然現れた雲雀と魅真に男達はざわつき、ツナは淡い期待を抱いた。
「集金の手間がはぶけるよ。君達がひったくってくれた金は、風紀が全部いただく」
「(やっぱり…)」
「ああっ!?」
「(またあの人自分のことばかりーーっ!!)」
雲雀がここに現れたのは、自分の予想のななめ上をいくものだったので、ツナはショックを受けた。
「ん?なんだお前、この前海で会ったネーチャンか」
「そっちこそ、この前海で会った、卑怯者のライフセイバーのセンパイじゃない」
「んだと!?」
見た目に反してケンカごしできたので、茶髪の男はあっさりと頭に血がのぼった。
「お金のひったくり及び、罪なき男子生徒への暴力。許すわけにはいかないわ!!」
魅真は戦いを挑むように、持っていた薙刀を男に向ける。
「…いい度胸じゃねーか。それに、ムカツクアホがもう一人。ちょうどいい」
茶髪の男は、魅真と雲雀を見るとツナをつきとばした。
「中坊一人しとめるために、柄の悪い後輩を呼び過ぎちまってな」
男の言葉が合図のように、先程よりも、更に多くの後輩達が出てきて、魅真達三人をとりかこんだ。
「やつら、力もてあましてんだわ」
「何人いるのーー!?」
あまりの人数の多さに、ツナは顔が青ざめ、魅真は少しだけドキドキしていたが、雲雀はまったく動じていなかった。
「加減はいらねぇ!!その、いかれたガキどももしめてやれ!!」
「ヒバリさんでもこの数はヤバイんじゃ…!」
どんなに雲雀が強くても、多勢に無勢という言葉があるので、ツナは動揺した。
だが、動揺していたのはツナだけだった。
「だったらお前も」
ツナが叫んでいると、いつの間にかリボーンがやって来て、拳銃を構えていた。
「戦え」
そして、いつものように死ぬ気弾を撃った。
「復活(リ・ボーン)!!!死ぬ気でケンカー!!」
ツナはいつものように、死ぬ気モードになる。
そんなツナを、魅真はまっすぐな目で凝視していた。
「オラァ!来やがれ!」
「余計だな」
助っ人としてツナが参戦したが、それを雲雀はよく思っておらず、不機嫌そうな顔でトンファーを構え、隣では魅真も薙刀を構えた。
「たかが中坊三人だ!一気に仕掛けろ!!」
そう叫んだ時、突然鳥居の方から爆発音がしたので、何事かと思い、茶髪の男は音がした方へ顔を向ける。
「10代目!!」
「助っ人とーじょー」
そこには、ダイナマイトを構えた獄寺と、バットを持った山本が立っていた。
「気にくわねーガキどもがゾロゾロと」
「ヒバリと魅真との、初の共同戦線だな」
「冗談じゃない。ひったくった金は、僕がもらう」
「なぁ?」
「ちょっ、雲雀さん!」
「やらん!」
「当然っス」
獄寺と山本が来ると、周りの男達はいっせいに魅真達に襲いかかってきた。
だが、魅真達は各々の武器を構えて(ツナだけは素手)、襲いかかってくる敵を、次々と倒していく。
「うわぁ!!」
「こいつら本当に中坊か!?」
すごくたくさんの人数がいたが、そんなことはものともせず、魅真達は敵を倒し、勝利を治めた。
そして……
「さて……。それじゃあ、このひったくった金は、僕がもらっていくよ」
「えっ!?」
「なっ!!」
「てめっ雲雀!!ふざけんじゃねーぞ!!」
「ふざけてなんかないよ」
雲雀はあたり前のように、ひったくられた金を持っていこうとした。
「ダメですって、雲雀さん!!」
だが、そこを魅真に、腕をつかまれて止められた。
「…邪魔しないでくれる?」
「これだけは絶対に邪魔します!!それだけはダメですってば!!」
自分の腕にしがみついて、必死になって止める魅真を見ると、雲雀は持っていた金を地面に置いた。
「…わかった」
「え?」
「君には、新学期の時の借りを、まだ返してなかったからね。今日のところは、君に免じて見逃してあげるよ」
「あ…ありがとうございます!」
めずらしく引き下がった雲雀を見て、魅真はお礼を言い、ツナ達三人は口をあけて呆然としており、リボーンはニッと笑い、意味深な笑みを浮かべていた。
戦いも終わり、金も手に入らなかったので、雲雀はもうここには用はないと言うように、そこから去っていった。
「あ、待ってください雲雀さん!」
雲雀が来た道を戻っていくと、魅真はあわてて追いかけていった。
二人は神社の階段を降りると、会場の出入口まで歩いていく。
「雲雀さん、もう帰るんですか?」
「あたり前だろ。集金も終わったし、ひったくり犯をどうにかするよう、副委員長にも連絡したらかね。もうここには用はないよ」
「あの……どうせなら、花火を見に行きませんか?この近くに穴場があるんですよ」
「一人で見れば?」
群れるなんて冗談じゃないと、雲雀は一人でさっさと帰ろうとした。
「いいじゃないですか。ちょっとだけ付き合ってくださいよ」
しかし、魅真は雲雀の腕をつかむと、強制的にひっぱっていった。
こんな女のか細い腕など、ふりほどこうと思えばふりほどける。
だが、雲雀はそんなことはせず、魅真にひっぱられていった。
魅真にひっぱられてついて行った場所は、並盛神社の本殿の下の方の、傾斜になっているところだった。(ツナ達がいるところとは、また別の場所)
「ここなら、群れるの嫌いな雲雀さんでも大丈夫でしょ?」
にこっと笑う魅真を見て、「君がいるじゃないか」という言葉を飲みこんで、空を仰ぎ見た。
すると、雲雀が顔をあげたちょうどその時、赤や青、みどりや黄色といった、色とりどりの花火が、次々と打ち上げられていった。
その綺麗な花火を、魅真は一生懸命に見ていたが、雲雀はときどき、花火を見て目を輝かせている魅真を見ていた。
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