標的25 水泳大特訓!
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「ん……」
その日の夜中、雲雀はふいに目をさました。
「何…?」
それは、何やら外で、ぶつぶつとつぶやく声が聞こえたからだった。
不審に思った雲雀は一体誰なのかを確かめるべく、障子をあけて、声の主の正体を確かめる。
「!」
そこにいたのは魅真だった。
魅真は縁側にすわり、何やら空に向かって、おがむようにぶつぶつとつぶやいていた。
標的25 水泳大特訓!
そして翌日。
「ねえ、真田」
「なんですか?雲雀さん」
応接室で仕事をしている魅真に、雲雀は話しかけた。
昨晩のことを聞き出そうとしたのだ。
「昨日の夜、縁側で一体何をやっていたの?」
突然の質問に、魅真は目を見開いて固まる。
「えっと……流れ星にお願いごとを…」
けど、それはすぐにとけて、魅真は雲雀の問いに答えた。
それは、とてもロマンチックなものだった。
「なんでまた、願いごとなんか?」
しかし、雲雀にはとても謎な行動であり、何よりも、ちゃんとした答えになっていなかったので、再度魅真に問いかけた。
「あの……。それって……言わなきゃダメですか?」
問われても、魅真ははずかしがって、理由を言うのをためらっていた。
「あたり前でしょ。人の家で、夜中にぶつぶつとつぶやくなんて、あんな気味の悪いことしといて。気にならないわけないだろ」
「ぐ……」
どうしても理由を言わなきゃいけないから…というよりも、雲雀に気味が悪いと言われたことの方がショックで、魅真は黙ってしまう。
「で、どうしてなの?」
でも、雲雀はまったくそんなことは気にせず、平然とした顔で、魅真に問いかけた。
「……実は……私……泳げないんです…」
「は?」
「カナヅチなんです!!私!!だから、泳げるようになりたくて、昨日は流れ星にお願いしてたんです!」
ヤケになって、叫ぶように理由を話すと、雲雀は大きなため息をつく。
「くだらないね」
「んなっ!」
「その上なさけないよ。そんな、たかが願うだけで、泳げるようになるわけないだろ」
「わっ、私は真剣なんです!」
雲雀が言うことはもっともだが、それだけ切実なことなので、魅真は大きな声で叫んだ。
「だって、中学生になっても泳げないなんて、かっこ悪いじゃないですか。それに、今度の夏休み、ツナ君達と海に遊びに行くので、そういった意味でも泳げるようになりたいんです」
次に魅真の口から出た言葉に、雲雀の眉はぴくりと動き、目つきが鋭くなる。
「君……群れに行くの?」
「へ?」
「海なんて言ったら、群れしかいないじゃないか。そんなところに行くの?風紀委員は群れるの禁止だよ。ダメに決まってるだろ」
「い、いいじゃないですか!別に、夏休みに友達と遊びに行くくらい。今までだって、さんざん委員会の関係で、ツナ君達の誘いを断ってきたんですから。私は友達と、夏休みの大事な思い出をつくりたいんです!夏休みは、委員会の仕事はないのでしょう?」
「ないよ。でもダメだよ。群れに行くなんて。大体、泳げないくせに、どうやって海で遊ぶっていうんだい?何?ギャグなの?」
雲雀の鋭い指摘に、魅真はぐうの音も出なかった。
確かにその通りではあるが、雲雀の嫌味に悔しくなって腹を立てた魅真は、はずかしくなって顔を赤くするのと同時に、むかついて額に青筋を浮かべた。
「わかりました!なら、夏休みまでに、絶対に泳げるようになってみせます!!」
「ふーーん。やれるものならやってみれば?もし、奇跡的にでも泳げるようになったら、海に行くことを許してあげるよ」
そんなことは、絶対に無理だと思っている雲雀は、魅真に大きく出た。
「言いましたね!?受けてたとうじゃないですか!!」
雲雀が、どういう意味で海に行くのを許可したかわかった魅真は、更に腹を立て、雲雀を指さして宣言する。
「お願い!武君!武君しか、頼れる人がいないの!私に、泳ぎ方を教えて!」
次の授業が始まる前の休み時間。
教室に戻った魅真は、山本に手を合わせて、水泳の特訓を頼んでいた。
「ああ、いいぜ」
人のいい山本は、嫌な顔ひとつせず、魅真の頼みごとを引き受けた。
「ほんとに?」
「おう。んで、いつやるんだ?」
「なるべく早いうちに!」
「そっか。んじゃ、今日にでもやるか?」
「え…いいの!?」
「おう」
「ありがとう、武君」
自分の頼みごとを引き受けた上、要望にもこたえてくれたので、魅真は山本に、笑顔でお礼を言った。
「ちなみに、ツナと獄寺も引き受けるって言ってるぞ」
「わっ、リボーン君」
「小僧」
するとそこへ、リボーンが現れる。
毎度のことながら突然の出現だが、魅真は慣れてきたのか、そこまで驚いてはいなかった。
「ていうか、なんだよリボーン。また魅真ちゃんの特訓?」
「そーッスよ。なんでオレが…」
ツナは、自分もつい最近まで泳ぐことができなかったので、力になれるわけがないと思っており、獄寺は単純に面倒なだけで、反論しようとした。
「ツナ君と隼人君も、一緒に特訓してくれるの?」
けど、そんなことをまったく知らない魅真は、うれしそうに二人に聞いた。
「え?あ……うん…」
「…し……しょうがねえ…からな」
「本当に!?」
なんだかんだ言って、結局押しに弱いツナは了承し、獄寺はツナが了承したからというのもあり、頬を赤くそめて了承した。
「うれしい。ありがとう、二人とも」
ツナと獄寺の二人が了承すると、魅真は笑顔でお礼を言った。
そして放課後…。
魅真はツナ、山本、獄寺、リボーンと一緒に、並盛市民プールに来ていた。
「んじゃ魅真、今から特訓すっぞ」
「うん。よろしく」
着替えると、さっそく特訓をするため、学校と同じ大きさのプールに、山本、ツナ、獄寺と一緒に入った。
「んじゃ、とりあえず泳いでみろよ。ここなら浅いから、大丈夫だろ」
「え!?」
「どうした?」
「あの……えと……い………1mも泳げないんだけど…」
「「「え……」」」
まさかの事実に、三人は固まった。
「(オ…オレ以下の子がいたなんて…)」
自分ですら、特訓してもらう前でも5mは泳げたのに、少しも泳げない人物がいたことに、ツナは驚いていた。
「んーーー…。じゃあ、最初はビート板とかうきわとか使っていいから、呼吸の練習から始めるか」
「うん…。なんかごめんね」
「いいってことよ」
けど、山本は嫌な顔ひとつせずに、いつものさわやかな笑顔でにかっと笑った。
こうして、魅真の特訓が始まった。
………しかし……
「いいか?魅真。泳ぎってのはな、ぐっともぐってって、んーぱっんーぱっぐっぐっていくんだぜ」
「へ?」
「そーすりゃ、すいーーっといくからさ!な、簡単だろ?」
「え…えぇ…?」
「そんじゃいっちょ、すっすぃすぃ~っと泳いでみっか。なっ」
「なって言われても…(感覚的すぎて、全然ついていけないんだけど!!)」
山本の指導が、あまりにも感覚的すぎるので、魅真は説明されてもわけがわからない状態だった。
けど……
「いちにーぱっ いちにーぱっ」
なんだかんだと、山本の感覚指導で泳ぎの特訓をすることになった。
あまりにも感覚的すぎてわかりにくいが、山本に自分から頼んだ手前、あまり文句も言えなかった。
「だいぶ呼吸がさまになってきたな。その調子だ」
山本がほめてくれるが、実際は、まだそんなに上達してはいなかった。
ビート板を持ってるし、あまりに必死すぎて、泳いでいるというよりは、もがいているといった方が正しいからだ。
「はぁ…はぁ……」
泳ぐのは疲れるので、しばらく泳ぐと、魅真は一旦足を下につけて少し休憩をした。
「だいぶ泳げるようになってきたし…どうだ?魅真。そろそろ、ビート板なしで泳いでみないか?」
「えっ!?」
まだまだ不安なのに、急に補助道具をなしにすることを提案されたので、魅真の不安と緊張は一気に高まった。
「あ……やっぱ、まだダメか?」
「ん……まあ…」
「ケッ。やっぱおめーの感覚指導じゃダメなんだよ」
魅真が不安がっていると、そら見たことかと、獄寺が割りこんできた。
「オレが教えるぜ」
「へ?」
「(まさか……またあの理論指導!?)」
意外な言葉に、魅真は口をあけてぽかん…としてしまい、ツナは自分が特訓してもらった時のことを思いだし、顔がひきつった。
「いいか?魅真。なんでもそうだが、理屈がわかんなきゃ泳げねーんだ」
「はあ…」
山本と交替して、今度は獄寺が魅真の指導を始めた。
「それでだな、うまく泳ぐには、重力と浮力の重心が重要になるんだ」
そして、どこから持ってきたのか、ホワイトボードに絵や文を書いて説明をした。
「んじゃ、泳いでみろ」
「えぇ…!?」
説明をされるが、山本の時とは別の意味でわけがわからないので、魅真はちんぷんかんぷんな状態だった。
「やっぱ、体で覚えた方がいんじゃねーか?」
「うるせーな。理屈がわかんなきゃ、できることもできねーんだっつの!」
結局獄寺もうまくいってないので、山本につっこまれると、獄寺はいつものように食ってかかる。
「まあ、感覚指導でいくにしろ、理論指導でいくにしろ、そろそろビート板は放した方がいいかもな」
「リボーン君」
そこへ、ずっと傍観していたリボーンが割りこんできた。
「魅真、おまえは水に、苦手意識をもちすぎなだけだぞ。泳げないと脳で考えすぎているあまり、怖がりすぎてんだ。ビート板があるなしは関係ねー。要はおまえの心次第だ」
「え…」
「人間は浮くようにできてるんだ。それに、水は逆らえば襲ってくるが、身をまかせれば襲ってこない。流れのままに進んでいけばいい。少しずつでいいから、体を浮かせて、足を動かしてみろ。そうすりゃ、少しでも泳げるようになるはずだ」
「う…ん…」
まだ怖いが、リボーンの言う通りビート板をプールサイドに置いて、おそるおそる水に体を沈め、手を構えた。
そして、意を決して足を動かしてみると、少しではあるが進んだ。
「す…進んだ!少しだけど!」
「なっ。オレの言った通りだろ?」
「うん!」
「お前は単に、自分で「泳げない」って思いこんでただけなんだ。それで、ずっとビート板に頼ってるから、自分でも、実は泳げるってことに、気づいていなかっただけだぞ」
「うん。うん…!ありがとう、リボーン君!」
「とは言っても、ほんの5m進んだだけだな。せめて15m。できれば25m進めるようになればいいな」
「いや…無理だから。15mだっていけるかどうかわからないのに、25mなんて…」
無理難題をリボーンが言ってくると、ビート板なしで泳げた時の感動と興奮は一気に冷め、リボーンにつっこんだ。
「そんじゃ、ツナと一緒に泳いでみろ」
「え?」
「なぁっ!?」
「ツナも、実はつい最近まで泳げなかったんだぞ。せいぜい5mだったんだ。
けど、特訓のかいあって、15mも泳げるようになったんだぞ。
だから、似たもの同士競いあえば、自然と25m泳げんじゃねーのか?」
「なんだよ?そのムチャクチャな理屈は?」
「その特訓で…本当に、25mも泳げるようになるの?」
「もちろんだぞ」
絶対にできないとは言いきれないが、絶対にできるとも言いきれないというのに、リボーンはできると言いきった。
もちろんツナは…
「(うさんくせぇ~~…)」
と思っていたが、魅真は…
「本当に?じゃあ、やってみる」
素直にリボーンの言うことに従った。
「(魅真ちゃん、素直すぎる!)」
そんな魅真に、ツナは軽くショックを受けていた。
「それじゃあツナ君、よろしくね」
「え?うん。…って、オレもつい最近まで泳げなかったから、あまり手本にならないけどね」
実は魅真と大差ないツナは、苦笑いを浮かべるが、それでも魅真はにこにことしていた。
「そんじゃ、スタートだぞ」
そして、リボーンの合図で、二人は泳ぎだす。
「う~~ん…。大体6mくらいか…」
「(この前より落ちた…)」
1mだけだが長く泳げた魅真に対し、ツナは最高記録より短かったので、軽くショックを受けていた。
「やったな、魅真。だが、まだまだだぞ。最低でもあと9mは泳げるようにならなきゃな。まあ、単純計算で、あと9回繰り返せば、15m泳げるようになるんじゃねーか?」
「え…」
何気にスパルタ発言をするリボーンに、魅真は顔をひきつらせた。
「ならば、このオレの出番だな!」
そこへ、魅真の後ろで名乗りをあげる者が出てきた。
「並盛の闘魚(ランブルフィッシュ)と呼ばれるこのオレのな!!」
「え?あ……笹川センパイ」
「京子ちゃんのお兄さん!」
そこにいたのは、京子の兄の了平だった。
「いいか、真田!!スポーツが最後にたどりつくのは、いつだって、熱血指導だーーー!!」
「(い…一番受けたくない指導だ…)」
確かに、教えてもらっている立場ではあるが、それだけは勘弁してほしいと思う魅真だった。
「いくぞ、真田!!とうりゃ!!!」
嫌だと思ってる間にも、了平は指導する気満々のようで、魅真がいるプールに入ってきた。
それも、普通に入るのではなくて、プールサイドからとんで中に入った。
しかもその格好は、水泳選手のようなとびこみ方ではなく、カエルがとんでる姿と似ており、その姿に、魅真はびっくりしていた。
その上、水にたたきつけられ、とても痛そうな音がしたので、魅真は更にぎょっとする。
「あ、あの……笹川センパイ…?」
音からして、かなりの大ダメージをくらったであろう了平を心配した魅真は、了平に声をかける。
すると、今度は水の下に沈んでいった。
「え!?ち…ちょっと…」
指導するはずが、おぼれてしまったので、魅真はあわてて手を伸ばす。
しかし、了平はおぼれたと思ったら、水面下で手足を前後に動かして、奇妙な動きをした。
「(え……何?この動き…。まさか…!!)」
その奇妙な動きにぎょっとして、一瞬なんなのかわからなかったが、水の中で動いていることで、魅真はまさか…と思った。
「いやーー。泳いだ泳いだ!!」
「やっぱ泳いでたんですか!?」
とてもそんな風には見えないが、了平的には泳いでいたようで、魅真は驚愕した。
「さあ!!オレは手本を見せたぞ。次は真田の番だ!!」
「(手本?あれが!?)」
泳いでいた上に、手本だと言い切った了平に、魅真は心の中でつっこむ。
「(私よりも、全然泳げていないのに……。それなのに、自信満々で泳いでいると言い切るなんて…。センパイを見ていたら、なんてゆーか…その…)」
あれで泳いでるつもりな了平に、ある意味で感心し、ある感情がわき起こってきた。
「なんか……妙な自信がわいてきちゃった。泳げる気がしてきたかも…」
それは、自信というものだった。
まだ自分の方がマシかもしれない…と思うものだったが、それでも了平のムチャクチャな泳ぎで、自信がわいてきたのだった。
「(あ…やっぱ、魅真ちゃんもそうなんだ)」
自分も同じように、了平のムチャクチャな泳ぎで自信がわいてきて、それで泳げるようになったので、そのことを予想していたツナは、とても納得していた。
「そっか。じゃあ、目標を達成するまで、特訓あるのみだな」
魅真の心の内を聞いたリボーンは、いい顔で笑った。
「んじゃ、すっすいすい~~っともう一本泳いでみっか。なっ」
「じゃあ、次の理論を試してみるか」
「よし、真田!100本泳げ!そうすれば、絶対に泳げるようになる!!」
「(なんか一気にきた…)」
自信がわいた魅真を、絶対に泳げるようにしようという気持ちはあるのだが、全部いっぺんにきたので、魅真は少し引き気味だった。
そして……。
「よし!それじゃあ、ラスト一本、泳いでみっか」
「う、うん……」
もう夕方となり、空が赤くそまりはじめてきた頃、もうすぐプールも閉まるということで、最後の特訓となった。
「よーい、どん!」
山本の合図で、魅真は泳ぎだした。
まだぎこちない動きではあるが、魅真は精一杯泳いだ。
プールサイドでは、みんなが魅真に声援を送っていた。
魅真はなんとか泳いでいたが、段々と苦しくなってきたので、足をついてしまった。
「はあ……もうダメ…。
………ん……?…あっ」
けど、よく見てみると、スタート地点とは反対側のとびこみ台の前で足をついていたので、魅真は顔が明るくなった。
「やっ…やったぁああーーー!」
最初はまったく泳げなかったのに、25メートル泳ぎきったので、魅真は大喜びした。
「おめでとう、魅真ちゃん」
「やったな、魅真」
「ありがとう、みんな」
その後も、練習に練習を重ねた魅真は、少しずつではあるが、記録を更新していった。
そして……約束の、1学期の終業式の日…。
「じゃあ、特訓の成果を見せてもらおうか」
プールを貸し切り、魅真の特訓の成果を雲雀が見ることになった。
貸し切っているので、プールの中には、雲雀と魅真。あとは、草壁がいるだけだった。
魅真が雲雀に言われて、プールの中に入り、とびこみ台の前まで来ると、雲雀は手をあげて、草壁に合図を送った。
雲雀の合図を受けると、草壁は持っていた競技用のピストルを上にあげ、引き金を引いて、スタートの合図を出す。
合図が出ると、魅真は泳ぎ始めた。
どこか拙い動きであったが、それでも足を下につけることなく、先へ先へと進んでいく。
そして、何分か経つと、魅真は往復して50メートルを泳ぎきった。
最後の方は、もう段々と疲れていて、泳いでいる…とは言いがたいものであったが、なんとか泳ぎきったのだ。
特訓の成果を見て、雲雀は目を丸くして驚いていた。
まさか、カナヅチで、流れ星に願いごとをするほどせっぱつまっていた魅真が、短期間でこんなに泳げるようになるとは思いもしなかったからだ。
「やったぁ。泳げた!!これで海に行けるわ」
雲雀の心情をよそに、魅真は50メートルも泳げたことに感動していた。
「ね、雲雀さん。これで、海に行ってもいいんですよね?
………雲雀さん?」
約束通り泳ぐことができたので、うれしそうにしていると、雲雀が固まっているのに気づいた魅真は、雲雀に声をかけた。
「…………好きにすれば」
絶対に無理だと思っていた雲雀は、意外にも泳げるようになった魅真を見て、驚きのあまり固まっていたが、魅真に声をかけられたことで覚醒した。
そして、約束は約束なので、魅真に海に行く許可を出した。
許可を出されると、魅真はうれしそうな顔をする。
「ありがとうございます、雲雀さん!!」
そして、笑顔でお礼を言った。
雲雀は魅真に礼を言われると、学ランをなびかせて、そこから去っていった。
それは、夏本番になる、7月も半ばの終業式の日のことであった。
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