標的3 初めての友達
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「あ…あなたは……この前の…」
魅真は、この並盛町に来て出会った中で、もっとも苦手で、もっとも会いたくないと思っていた人物、雲雀恭弥と再び会ってしまったので、今まで以上に驚き、困惑した。
標的3 初めての友達
「君……」
雲雀の開かれた口から、自分をさす言葉が出てきたので、魅真の心拍数はかなり上昇した。
自分を見る、黒い切れ長の瞳にドキドキしながら、次の言葉を待った。
「君…誰だっけ?」
けど、雲雀の口から出てきたのは、なんとも拍子ぬけするものだった。
また、何か怖いことを言われるのではないのかと、内心びくびくしていた魅真だったが、そうではなかったので、目を丸くした。
「僕を知ってるの?」
「(なんで、一度だけど会ったことあるのに、こんなに簡単に忘れちゃってるわけ?私ってそんなに存在感ないの?)」
今と夏休みの時では、制服が違うだけで、それ以外のものはいっさい変えていないのに、全然気づいてないので、ほっとしたようなくやしいような、複雑な気持ちだった。
「(あ……でも、私のことを忘れてるのは、ラッキーかも。こんな怖い人に関わりたくないし、適当に誤魔化して、さっさと退散しようっと)」
けど、同時にそれはチャンスだと思い、心の中で色々と考えていた。
「いいえ、あなたのことは何も…。
じ……じゃあ、私はこれで失礼します。次の授業の準備をしなければいけないので…」
自分で考えていたように、適当に誤魔化し、そこから逃げようとした。
ガシャッ
しかし、魅真が進んでいく方向を、雲雀がまっすぐ腕を伸ばしてフェンスをつかんだことで、行く手を阻まれた。
「質問に答えなよ」
「あ、あの……本当に…何も…」
行く手を阻まれたので、腕が伸ばされていない反対側から逃げようとしたが、そちらも同じようにふさがれてしまい、逃げ道を断たれてしまった。
「話をはぐらかさないでくれる」
圧迫するように魅真に近づけるその顔は、不機嫌そうに歪められており、本当のことを話すまで絶対にのがさないと顔に書いてあるのが、雲雀のことを全然知らない魅真でもわかった。
「………あの……その………夏休みに、転校の手続きをしに来た時に、ここで会いました…」
「ふーん」
「(ふーん…って、理由を知りたがってたんじゃないの!?なんてマイペースな…)」
魅真が逃げようとしたので退路を断ち、なかなか答えないことで不機嫌になり、絶対に本当のことを言わせようとしていたので、覚悟を決めて話したのに、雲雀は興味なさそうに返事をするだけだったので、魅真は先程とは違う意味で拍子ぬけした。
「ああ…。そういえば、あの時の女子か…。でも僕、君みたいに見るからに弱そうな奴は、男でも女でも興味ないんだよね」
「(じゃあ、なんで聞いたのよ!?)」
非常につっこみたいことを言ってきたが、魅真はそれを怖くて口にはできず、心の中でつっこんだ。
「ところで君さ…」
「はい…」
なおもマイペースを貫く雲雀は、一方的に魅真に質問をしようとした。
「君、群れてないよね」
「へ?」
突然、なんの脈絡もないことを言われたので、魅真の口からは、思わずすっとんきょうな声が出た。
「この学校で、群れたりしたらダメだから」
「えぇ!?」
今度は意味のわからないことを言われたので、驚きの声をあげた。
「何故……ですか?私はこの学校で、友達をつくろうって決めてるんです」
魅真の地雷ワードとも言える言葉に、雲雀は眉間にしわを寄せると、フェンスをわざと強く叩いた。
そのことで魅真はびびってしまい、「ひっ」と短い悲鳴をあげる。
「いいから…。君は、黙って僕のいうことを聞いていればいいんだよ」
その、雲雀の鬼のような形相に、魅真は怖くなり、目じりに涙を浮かべ、何も答えられなくなった。
「わかった!?」
「はい!」
雲雀の言う通りにするのは本当は不本意なのだが、雲雀が怖くて逆らえず、魅真は勢いよく返事をした。
魅真が返事をすると、雲雀は体を離して、魅真に背をむけた。
「あの……」
たぶん、もう行ってもいいということなのだろうが、何も言われてないのでどうしたらいいかわからず、立ち往生していた。
「何やってるの?早く行きなよ」
「は、はい」
もう行っていいと言われたので、魅真は返事をすると地面に置いておいた弁当箱をつかみ、雲雀の隣を横切ろうとする。
だが、急に雲雀に腕をつかまれた。
「あの……」
早く行けと言ったのに手をつかんできたので、頭に疑問符を浮かべた。
「言っておくけど…」
「な…なんでしょう?」
「もし……授業に遅れたりしたら…」
「遅れたり…したら?」
魅真は、雲雀が言うことに嫌な予感がしながらも、次の言葉を待った。
「咬み殺すよ」
「(ひぃいいい!)」
そのとんでもない言葉に、魅真は心の中で悲鳴をあげ、顔がみるみるうちに真っ青になっていった。
雲雀はそのことを言うと、魅真の腕を離して、屋上の出入口の裏側へと歩いていき、魅真はその様子を見ると、弁当箱を抱えこむようにして持ち、校舎の中へ入っていく。
「(もーいや!よりにもよって、一番会いたくない人に会っちゃうし。友達をつくるなとか、わけのわからないことを言われるし!なんなのあの人?なんであんなこと言われなきゃなんないの?なんで、あんなに横暴なわけ?)」
返事をしたが、やはり納得いかなかったので、心の中で文句を言っていた。
「(そういえば……この前も思ったけど……あの人、なんで学ランなんだろう?この学校の制服って、ブレザーなのに…)」
今まで文句を言っていたのだが、ふと疑問に思ったので、今度はそのことについて考えごとをしていた。
「(あの人も転校生?いや……でも、そんな感じじゃなかったな。態度からして違うっぽいし。それに、仮にそうだとしても、私みたいに、もうとっくに制服は届いてるだろうし…)」
と、疑問に思ったことを考えてる時だった。
「きゃっ」
顎に手をあて、下を向いて歩いていたために、前から人が来ていたことに気づかず、魅真はその人とぶつかり、その反動で後ろにとんでしまい、尻もちまでついてしまった。
「いたたた…。す、すみません…」
自分がよそ見をしていたのが原因でぶつかってしまったのはわかってるので、魅真は即座に謝罪をした。
「!」
謝罪をしながら、相手の顔を見るために顔を上にあげるが、相手の顔を見た途端に、魅真は驚いて目を見開き、言葉を失った。
「お前、大丈夫か?」
それは、夏休みにあの大きなお屋敷の前で出会った、魅真の苦手な人間に部類される、リーゼント頭の学ランを着た男だった。
「おい、どうした?」
呆然としていたが、次に声をかけられたことでハッとなった。
「はい、大丈夫です!」
「そうか。ならいいが、よそ見をして歩くな。今みたいなことになるぞ」
「はい!ごめんなさい」
見た目があまりに怖いので、別に怒られているわけでないのに、思わず謝ってしまう。
「いや、オレは別に…」
「ごめんなさいごめんなさいすみません!次から気をつけますぅう~~~」
彼は、自分の言ってることをまったく聞かず、謝罪しまくる魅真を見て、唖然としてその場に立っていた。
「(何?何?なんなの!?なんでこの中学校、こんなにヤバい人ばっかりなの~~!!)」
魅真は教室までの道を、早く歩いていた。
「(こんな短時間で、会いたくない人に二人も会っちゃうなんて、今日は厄日よ!今日の私の運勢は、絶対に最悪だわ!)」
とにかく少しでも二人から離れたいといった感じで、魅真は急いで教室へ戻っていく。
それから、次の日のお昼休み…。
魅真は一人屋上に行き、また一人でお昼ご飯を食べていた。
昨日、ここで会いたくない人物に会ってしまったが、それでもまだ友達が一人もできていないのと、女子の視線が痛い教室で食べるのはなんだか気が重いので、屋上に来たのだった。
「(どうか……昨日の怖い人が、ここに来ませんように)」
とりあえず、今はいなかったのでほっとしていたが、いつ来るかわからないのでヒヤヒヤしていた。
魅真はフェンスの前に座ると、お弁当に箸を伸ばしながら、雲雀が来ないことをひたすら祈っていた。
ガチャッ
だがその時、突然屋上と校内を繋ぐ扉が開いたので、もしや雲雀が来たのではないかと思った魅真の緊張は、一気に高まった。
「やっぱ、お弁当は屋上で食べるのが一番いいね」
「そうだな」
「外は晴ればれしていて、気持ちいいですもんね、10代目」
そこへやって来たのは、雲雀ではなく、ツナ、山本、獄寺だった。
雲雀でなくてよかったが、自分のクラスメートの中では関わりたくない人物の、No.1とNo.2なので、顔を引きつらせる。
「あれ、真田さん?」
「ゲッ…。ナマイキな転校生女じゃねーか」
「よ、真田じゃねーか」
魅真は扉の近くにいたため、三人はすぐに、魅真の存在に気づいた。
反応は三人とも様々で、獄寺に至っては失礼な反応であったが、そこは自分も同じだし、何より、今はそれどころではなかったので、反論はしなかった。(というより、性格からしてできなかった)
本当は、ツナと獄寺とも会いたくなかった。
山本はいいのだが、ツナは悪夢の張本人だし、獄寺は苦手な人種なので、ビクビクしながら、今すぐにでも、ここから逃げだしたいと思っていた。
「真田さん、いつもここで食べてるの?」
「一緒に弁当食おーぜ。みんなで食べた方がうまいからさ」
「え!?あ…あの……」
魅真の心中など知る由もないツナと山本は、あっさりと魅真と距離を縮めてきた。獄寺は、ツナが魅真の方へ行ったから渋々といった感じだった。
一瞬にして、苦手な人物に一気に距離を縮められたので、魅真はますますビクビクして、体が縮こまる。
「……あの…さ…。聞いてもいいかな…?」
「……な…何…?」
「真田さんてさ……なんでオレの顔を見て怖がるのかな?」
魅真が、明らかに自分を見てビクついてるのがわかってるツナは、真相をおそるおそる聞いてみた。
そのことを聞かれた魅真はドキッとし、体が固まる。
「オレ……真田さんとは、この前の始業式が初対面なのに、なんで、そんなに怖がられるのかがわからなくてさ…。
こんなこと言うのも、おかしいと思われるかもしれないけどさ、オレ、真田さんとは、なんか気が合いそうな気がするんだ。せっかく縁があって、同じクラスになって、隣の席になったんだからさ。だから、せっかくだから、仲良くしたいな…って思ってさ…」
ツナの気持ちを聞いた魅真は、今まで怖がってたのが申し訳なくなり、何も言えず、ただ小さく口を開けているだけだった。
「…ごめんなさい。私、沢田君のこと、知らず知らずのうちに傷つけてた…」
「いや、いいんだよ」
「私が、沢田君を避けていたわけを話すわ。でも、絶対笑わないで。自分でも、頭おかしいと思ってるから」
「笑わないよ」
ツナが微笑んで返せば、魅真も軽く笑って口を開いた。
「実はね、私、転校してきたのは2学期が始まってからだけど、引っ越してきたのは夏休みの頃なの。
それで、転校の手続きをしに行った次の日に、並盛町の探索に行って、その時に、沢田君を見たの」
「オレを?」
「うん…。あそこ、たぶん沢田君ちだと思うんだけど……そこで、最初に爆発が起きたと思ったら、また爆発が起こって、そしたら小さな男の子が大人になったの」
「え…爆発?」
魅真の話を聞いたツナは、とっても嫌な予感がした。
「うん。それで、水着を着た外人の女の人が、その人を追いかけたと思ったら、突然女の人が拳銃を発砲してきて…。それで、慌てて塀の影に隠れたら、今度は沢田君が、眉間から血を流して、塀の向こうから落ちてきて…。それだけじゃないの。突然、沢田君の服が盛りあがったと思ったら、まるで脱皮でもするように、沢田君の中から沢田君が出てきたの。しかも、パンツ姿で…。終いには、赤ちゃんが沢田君に向けて発砲したら、沢田君の顔が風船みたいに大きくなって。それで私、それを見て気絶してしまって…」
魅真は間違いなく、あの時のことを言っているので、まさか見られてたとは思わなかったツナは、顔が青ざめる。
「あの時、すっごく怖かったわ。何度も夢だと思おうとしたんだけど、なかなか忘れられなくて…。
それで、ようやく記憶が薄れてきたと思ったら転校初日で会っちゃうし…。しかも、同じクラスなだけでなく、席も隣だからびっくりしてしまって…」
「そ…そう…」
ツナは、何故魅真が自分を怖がってるのかわかった。
話の内容が内容なだけに、ツナは別の意味で笑えず、顔がひきつっていた。
「沢田君、失礼だけど、変身能力かなんかないかな?あ、変なことを言ってるのはわかってるわ。
でも私、あの時のこと、どうしても夢だとは思えないのよね。意識はちゃんとしてたし、やたらリアルだったから…」
「な、なな…ないよ、そんなの!夢だよ夢、絶対に!」
「そう……かな…?」
「絶対にそう!」
死ぬ気弾やマフィアのことをしゃべるわけにはいかないので、必死に誤魔化すが、声が裏返っていて挙動不審なツナは、端から見ると怪しかったが、魅真はそれを疑うことはなかった。
「じゃあ、やっぱり夢だったのかな?」
ツナの不自然な態度を疑ってない魅真は、夢だと納得した。
「あ、変なことを言ってごめんね。よく考えたら、人間が鉄砲で撃たれて無事なわけないし、人の中から人が出てくるわけないし、風船みたいに顔が大きくなるわけないわよね」
「うん、そんなわけないよ」
ツナに説得(?)され、納得した魅真に、ツナは苦笑いを浮かべた。
そんなやりとりをしていると、隣から山本の笑い声が聞こえてきたので、二人は山本の方へ振り向いた。
「ハハッ。真田って、おもしれー奴な」
「あの…笑わないで…」
「わりーわりー」
そう言いながらも、山本は顔に笑みを浮かべており、そんな山本を見て、魅真もぎこちない笑顔を返す。
「あの……沢田君、今まで本当にごめんね、怖がったりして…。私、昔からびびりなところがあるから、怖いこととかあると、すぐに逃げだしちゃうの」
魅真が言ったことに、どこか他人と思えないツナは、本当に気が合いそうだと思っていた。
「いや、いいんだよ。(悪いのはこっちだし)
それで、もしよかったら、オレと友達になってくれないかな」
「ええ、喜んで!」
ツナの申し出に、魅真は笑顔で答える。
先程までのぎこちないものではなく、満面の笑顔だったので、ツナや山本だけでなく、獄寺までも、魅真の笑顔を見てドキッとして、微かに頬を赤くした。
「やったわ。転校してきて4日目、やっとお友達ができたわ。人生初めての友達ね」
「え…?」
「ひょっとして、今までいなかったのか?」
「ええ、まあ。おはずかしながら…。私、びびりなだけでなく、怖がりだし、消極的で、ひっこみ思案で、受け身で、人見知りも激しいし、積極性もないし、逃げぐせもあるから、なかなかつくれなかったの」
それを聞いたツナは、ますます他人とは思えなくなっていた。
「だけど、今回の転校を機に、お友達をつくって、少しずつでも変わろうと思ったの」
魅真は、自分の決意を笑顔で話した。
「すげーな、おまえ」
「へ?」
すると突然、ツナ、獄寺、山本とは違う、第三者の声が聞こえてきたので、魅真は声がした、下の方へ目を向けた。
「おまえも見習ったらどうだ?ツナ」
そこには、黒いスーツに黒い帽子をかぶった赤ん坊がいた。
その赤ん坊を見ると、魅真の表情が変わる。
「リボーン!」
「こんにちは、リボーンさん」
「よっ、小僧」
「ちゃおっス」
三人ともリボーンを知ってるので、名前を呼んだり、あいさつをしたりしていたが、魅真は面識がないので一人取り残されていた。
「リボーン!また勝手に学校に来て!」
「いいじゃねーか、そのくらい」
「よくない!」
「沢田君、この子…」
リボーンと話していると、魅真から声がかかったので、ツナはギクッとなった。
先程、魅真が言ってた赤ちゃんというのは、間違いなくリボーンのことだからだ。
「夢ってふしぎね…。この学校に来たら、沢田君だけでなく、あの時の赤ちゃんもいるんだもの」
「え?あ…いや……」
魅真が言ってることに、ツナは焦り、話が見えないリボーンは、頭に疑問符を浮かべた。
「オレはリボーンっていうんだぞ。今のはどういう意味だ?」
「ん~…。話せば長くなるんだけどね。夏休みに、沢田君とリボーン君の夢を見たのよ。それでね、そこでは沢田君が、拳銃で撃たれても死ななかったり、沢田君の中から沢田君が出てきたり、リボーン君が沢田君に向けて拳銃で撃ったり、沢田君の顔が大きくなったりという、怖い夢を見ちゃったの」
「…そうか。でも、そいつは夢なんかじゃねーぞ」
「え?」
「今言ったことは、すべて現じ……モガ」
魅真の話を聞いて、それが夏休みのあの時のことを言ってるのだとわかったリボーンは、それは実際に起こったことだと言おうとしたが、ツナによって口をふさがれ、最後まで言うことができなかった。
「ぎゃっ」
しかし、口をふさがれたことにより、リボーンはツナの腕を、片手でつかんで投げ飛ばした。
まさか、赤ちゃんがそんな芸当をやってのけるとは思わなかった魅真は、驚きのあまり目を見開き、口をあけていた。
側では、獄寺がツナのもとへ駆け寄り、心配そうにしている。
「すごいね、リボーン君。赤ちゃんなのに、そんなことできるなんて…」
「フッ。あたりめーだぞ。オレは、世界最強の殺し屋だからな」
「殺し屋?」
いきなりぶっそうな単語が出てきたので、魅真はきょとんとし、ツナは顔面蒼白になった。
「んでもって、ツナの家庭教師なんだぞ」
「家庭……教師…?」
「わーーー!!」
更には、今度はぶっそうなものではないが、現実に考えてありえないことを言ってきたので、ツナは慌てて叫んだ。
「そっか。そうなんだ。すごいのね、リボーン君」
「へ?」
普通なら疑うところだが、魅真はそれを信じ、にこっと笑う。
てっきり、怪訝そうな目を向けられると思っていたツナは、すっとんきょうな声を出した。
「あの……真田さん。こいつ、赤ん坊だよ?」
「わかってるよ」
赤ちゃんだとわかってるのに、それでも納得してたので、ツナはますますふしぎに思った。
「かわいいじゃない、リボーン君。ほら、私達も小さい頃、おままごととかお姫様ごっことかやってたじゃない。あ、男の子は刑事ごっことかヒーローごっことかかな」
「(なーーーーっ!!)」
「だからリボーン君も、殺し屋ごっこや家庭教師ごっこをしてるのよ」
「(真田さんて……山本なみのド天然?)」
山本のようにごっこ遊びだと思ってる魅真に、ツナはショックを受けた。
「ちなみにオレは、ただの殺し屋じゃねーぞ。世界一のマフィア、ボンゴレファミリーに所属してるんだ」
「そうなんだ」
「ちなみにボスはツナで、獄寺と山本も、ボンゴレの一員なんだぞ」
「そっかそっか」
「おまえもボンゴレに入るか?」
「えっ!?」
「なっ!!」
リボーンの発言に、ツナと獄寺は、それぞれ違う意味で反応を示した。
「私はいいわ。だって、それって男の子の遊びでしょう?」
「そんなことねーぞ。女だっているからな。(ボンゴレの本部に)」
「そうなんだ」
「そうだぞ。そういやおまえ、見ない顔だが、名前はなんてーんだ?」
「名前は真田魅真よ。2学期の初めに、この並盛中学校に転校してきたの。沢田君達と同じクラスよ。改めてよろしくね」
「そうか、よろしくな。ところで魅真」
「なぁに?」
「おまえ、オレの愛人にならねーか?」
リボーンがとんでもないことを言うと、全員鳩が豆鉄砲をくらった顔になる。
「リボーン、そんなこと、真田さんが承諾するわけが…」
「いいわよ」
「えっ!?」
まさか、こんなにあっさりと承諾するとは思わず、三人は勢いよく魅真に顔を向けた。
「さ、真田さん…。何度も言うけど、リボーンは赤ん坊…」
「うん。だから、マフィアごっこの遊びなんでしょ?そういう世界の人には、何人も女の人がいるって聞いたことがあるわ」
「(まだ遊びだと思ってるーー!!)」
リボーンに愛人にならないかと言われたのも、自分は「そういう役」なのだと信じて疑わない魅真は、にこにこと笑いながら、その「役」を受け入れていた。
「そんじゃあ、よろしくな魅真」
「うん、リボーン君」
この日魅真は、並盛中学校に来てから、初めて友達ができた。
それだけでなく、リボーンという名前の赤ん坊の愛人(魅真本人は、ごっこ遊びの役だと思っている)になった。
この時魅真は、夏休みに起こったあの時の出来事が夢じゃないということも、リボーンが言ってたことが本当だということも気づいていなかった。
それが真実(ほんとう)だと知るのは、まだ先のことである。
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