標的23 ダブルバースデー
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二年生に進級して、半月が経った時のこと…。
「おお真田、ちょうどよかった」
「あ、草壁さん」
朝、教室に向かおうとしていた時、草壁に会った。
「どうしたんですか?」
「実はな、5月5日の予定をあけておいてほしいんだ」
「5月5日?なんでですか?」
「誕生日なんだ」
「誕生日?誰のです?」
「委員長のだ」
「………へ…?」
まさかの返答に、魅真はその場で固まってしまった。
標的23 ダブルバースデー
「もうすぐゴールデンウィークだね。連休楽しみだな」
教室に行くと、いつものようにツナ達とおしゃべりをしていた。
ツナは、もうすぐ連休ということで、とてもうれしそうな顔をしている。
「オレ、母さんがペットボトルの抽選プレゼントが当たって、豪華客船の旅をすることになったんだ」
「へー…いいなあ」
「やったじゃねえか、ツナ」
「さっすが、10代目のお母さまっす。普段の行いがいいんすね」
うれしそうに話すツナを、魅真はうらやましそうに見ていた。
「ねえねえ、魅真ちゃん」
そこへ、後ろから京子が声をかけてきた。
自分に声をかけられたわけではないが、憧れの京子がやって来たので、ツナは顔を赤くして舞い上がる。
「何?京子ちゃん」
「今度のゴールンデンウィーク、あいてないかな?」
「特に用はないけど……なんで?」
「ほら、前に魅真ちゃん、誕生日は5月5日だって言ってたじゃない。だから、その日にお誕生日祝いをやろうって、ハルちゃんと」
「え…」
「あ、もし迷惑だったら……」
「うぅん、迷惑じゃないよ!今のは、まさか二人がそんな企画してくれていたなんて思わなかったから、ちょっと感動しただけで…」
「そうなんだ、よかった」
京子がほっとしてにっこりと笑えば、魅真はまた感動した。
「へぇ~。魅真ちゃん、今度誕生日なんだ。おめでとう」
「おめでと」
「ありがとう」
お祝いの言葉をもらい、心からうれしくなった魅真は、満面の笑みでお礼を言う。
そしてそこを、偶然にも草壁が通りかかったのだが、魅真はツナ達とおしゃべりをしていたので、気づいていなかった。
放課後になるといつも通り応接室に行き、業務をこなしていた。
「失礼します、委員長」
そこへ、草壁がやって来た。
草壁は、委員会の仕事に関する相談を雲雀にしに来ており、しばらく雲雀と話していた。
「そういえば真田」
机にむかって、もくもくと作業をしていると、相談を終えた草壁が、突然魅真に話しかけてきた。
「さっき、2-Aの教室の前を偶然通った時に知ったんだが、来月の5月5日、お前の誕生日なんだってな」
「え?ええ…」
今の会話に、雲雀は過剰に反応を示す。
まさか、こんな身近なところに、自分と同じ誕生日の人間がいるとは思ってもいなかったからだ。
「何かほしいものはあるか?高いものは無理だが、何か送るぞ」
「プレゼントはいいです。気持ちだけで充分ですから。ありがとうございます、草壁さん」
魅真にそう言われると、草壁はおだやかな表情で、「そうか…」と言って去っていき、草壁がいなくなると、魅真は業務に戻った。
雲雀もいつも通り業務をこなすが、魅真と自分が同じ誕生日ということが、頭から離れなかった。
その日の帰り道、魅真はいつも一緒に帰ってる雲雀と別行動をとり、一人寄り道をした…。
そして、その週のGW前の日曜日…。
「「「「「誕生日おめでとう、魅真(ちゃん)!」」」」」
ツナの家で、魅真の誕生日会が催された。
誕生日会に集まったのは、ツナとリボーン以外には獄寺、山本、京子、ハルといった、いつものメンバー。他には、この家の居候である、イーピンやランボ(ごちそう目当て)、フゥ太、ビアンキも、その中にいた。
場所がツナの家なのは、魅真が雲雀の家に住んでいるからということと、リボーンの「魅真の誕生日会なら、ツナんちでやればいいじゃねーか」という一言により決まったためで、日時が早いのは、全員の都合をあわせたところ、あいているのはこの日だけだからであった。
「ありがとう、みんな」
ケーキに立てられたローソクを魅真が吹き消すと、そこに集まった者達は、口々に魅真にお祝いの言葉を言った。
お祝いの言葉をかけられると、魅真は笑顔でお礼を言う。
「(自分の誕生日を、家族以外に祝ってもらえるなんて初めて!)」
魅真は、初めて友達に自分の誕生日を祝ってもらったことに、痛く感激していた。
「じゃあ、ケーキ切りわけてくるわね」
「ありがとうございます、奈々さん」
近くにひかえていた奈々は、ケーキを持つと、切りわけるために下に行った。
「はい、魅真ちゃん。プレゼント」
「わあ、ありがとう。ツナ君」
奈々が下へ行くと、ツナはさっそく誕生日プレゼントを魅真に渡した。
「じゃあ私からも」
「これはハルからです」
「オレも」
「これはオレからな」
「これはオレからだぞ」
続いて京子、ハル、獄寺、山本、リボーンも魅真にプレゼントを渡し、彼らだけでなく、ビアンキ、フゥ太、イーピン、ランボまでも、魅真にプレゼントを渡した。
「みんな、本当にありがとう。あ……感動で涙が…」
プレゼントをもらったこともうれしいが、みんなの心遣いに、魅真は感激のあまり、目じりに涙を浮かべる。
「そんな……大げさな……」
「大げさなんかじゃないよ。だって、初めてなんだもの。家族以外の人に、誕生日を祝ってもらうの」
「!」
「ほら、私…今まで、友達っていなかったからさ。
だから、友達に誕生日を祝ってもらうのって初めてで…。
それで、すごくうれしくなって。感動しちゃった」
ツナは、魅真の心の内を聞いて、痛いほどに魅真の気持ちがわかった。
自分も、こんな風に気軽に話せる友達はいなかったし、去年(リボーンと一緒に。しかもついでだが)初めて、家族以外の人間に祝ってもらったからだ。
「だから、本当にうれしいの。本当にありがとう、みんな」
感謝してもしきれないので、魅真は再度笑ってお礼を言う。
「はーい、ケーキが切れましたよ」
その時、下の階に行った奈々が戻ってきて、切りわけたケーキを持ってきた。
「ありがとうございます、奈々さん」
「いいえ」
そのことに、魅真はお礼を言った。
そして、魅真がお礼を言うと、他の者達も、口々に奈々にお礼を言う。
それから魅真達は、出されたケーキや料理に舌つづみをうちながら、楽しく話をしていた。
料理がだいぶなくなってくると、出し物が始まった。
その出し物を、魅真はうれしそうに…楽しそうに見ており、出し物の内容に笑ったり、終わると拍手を送ったり、感想を言ったりしていた。
そして、出し物が全て終わるとお開きとなり、魅真はツナ達にお礼を言うと、沢田家を後にした。
それから数日後のGW。5月5日の子供の日。
「委員長!!誕生日、おめでとうございます!!」
「「「「「おめでとうございます!!」」」」」
この日は学校が休みということで、草壁と他の風紀委員のメンバーは、わざわざ雲雀の家までお祝いをしにやって来た。
しかし……
「僕の前で群れないでくれる?」
雲雀は冷たく言い放った。
いつものことであるが、風紀委員達は固まり、魅真は雲雀の隣で苦笑いを浮かべていた。
雲雀の機嫌が悪くなったということで、彼らは誕生日ケーキと誕生日プレゼントを置いて、即行で帰っていった。
「もぉ~~。別に、そんなに目くじらたてることないじゃないですか。みなさん、せっかく雲雀さんの誕生日のお祝いに来てくれたのに…」
自分の前で群れられたということで、雲雀は不機嫌になるが、魅真は、彼らは雲雀の誕生日祝いをしに来てくれたので、不機嫌になった雲雀をなだめる。
「別に、誕生日なんてうれしくもなんともないよ。ただ、ひとつ年をとるってだけだろ。何がめでたいのさ?」
「そんな…身もフタもないことを…」
「そもそも、誕生日なんて、そんな覚えるほどのものじゃないよ。自分の誕生日を覚えていたのも、たまたま自分が生まれた5月5日が子供の日で、学校が休みだという理由からだしね」
あまりにも大ざっぱな覚え方なので、魅真は驚き、目を丸くした。
けど、次の瞬間には、口もとをおさえて笑いだす。
「何がおかしいの?」
「いえ、すみません。でも、誕生日を祝ってもらうのってうれしいものですよ」
「そうかい?」
「そうですよ」
そう言われても、孤高を貫く雲雀には、理解しがたいものだった。
「あ!!ちょっと待っててくださいね、雲雀さん」
雲雀が顔をしかめていると、急に思いたったように、魅真が声をあげた。
魅真は雲雀を縁側に残すと、すぐ目の前にある自分の部屋の中に早足で入っていき、何やらごそごそとしていると、数秒で雲雀のところへ戻ってくる。
「はい、これ雲雀さんに」
戻ってくると、魅真は雲雀にやや小さめの箱を渡した。
「…何、これ?」
「誕生日プレゼントです」
「……そう…。まあ、もらっといてあげるよ」
ぶっきらぼうな言い方ではあるが、それでも気にとめることなく、魅真はにこにこと笑っていた。
「こっち来て」
雲雀はプレゼントを受け取ると、魅真を手招きする。
雲雀に招かれて入ったのは雲雀の部屋で、雲雀はプレゼントを机の上に置くと、ひきだしの中から、魅真と同じように、小さな箱を取り出した。
「これ…」
そして、その箱を魅真の前に差し出す。
「これは?」
「…プレゼントだよ。君の……誕生日の…」
そう言われると、魅真は一瞬固まってしまう。
「えっ!?」
そして、やや遅れて反応をした。
「えっ!?ひ、雲雀さんが……誕生日の……プレゼントですか!?私に!?…あの……何か、変な病気にでもかかったのですか!?」
「失礼だね、君…」
言いたい放題言われて、さすがの雲雀も、心外だと言うように、目を細めて魅真を睨むように見た。
「君には、この前の花見の時に借りができたからね。借りは返さないと、僕の気がすまないんだよ」
相変わらずの独特のペースを貫く雲雀だが、借りでもなんでも、雲雀からプレゼントをもらえたことにうれしさを感じた魅真は、口もとをゆるめ
「ありがとうございます、雲雀さん」
少しだけ頬を赤くして、笑ってお礼を言った。
「さ、それじゃあケーキでも切りわけましょうか」
礼を言うと、台所から包丁を持ってきて、風紀委員達が持ってきたケーキを切りわける。
「これは、今日思ったことなんですけど、ケーキをこうやって切りわけるのにも、ちゃんと意味があるんじゃないかと思うんです」
「ホールケーキは複数で食べるものだから?」
「ん~…。まあ、それもあると思いますけど……」
雲雀の意味もへったくれもないような答えに、魅真は苦笑しながらケーキを切っていた。
「ケーキを切りわけるのは、ひとつのものを、たくさんの人達と分けあい、喜びをわかちあうためにあるんだと思うんです。この前は私の誕生日でしたけど、きっとこれが逆で、ツナ君とか京子ちゃんとか、他の人の誕生日だったら、私もすごく喜んだと思います」
「……………」
「私……この前の日曜日、ツナ君達に誕生日を祝ってもらったんです。みんなにお祝いの言葉をもらって、誕生日プレゼントをもらって、ケーキまで用意してもらって…。そんなの初めてで……それがすごくうれしかったんです。
これは私の価値観なんですけど……誰かに誕生日を覚えてもらってるってだけでも、すごくうれしいですよ。私は、もうお父さんもお母さんもいないから、余計にそれがうれしかったんです…」
「…そう」
「ええ。だから大丈夫ですよ」
「何が?」
「私、雲雀さんと同じ誕生日ですから、これからは忘れたりしません。たとえ、雲雀さんが自分の誕生日を忘れたとしても、私が覚えています。これからは、私が雲雀さんのことを、毎年お祝いします」
にこにこと笑いながら話すと、雲雀は心がどこかあたたかくなり、少しだけ口角があがった。
「誕生日おめでとうございます。雲雀さん」
満面の笑顔でお祝いした魅真に、「君もね」と小さく返す。
今年の誕生日は、二人とも、去年までよりちょっぴり特別な誕生日になった。
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