標的21 お花見デスマッチ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
春休みに入り、桜の花が綺麗に咲いた頃のことだった。
「真田」
「はい」
雲雀は魅真の部屋に、ノックもせずに入ってきた。
自分の家だから…というのもあるが、いちいちそんなことはしないという方が大きい。
魅真も、これはもういつものことなので、特に気にせずに返事をする。
「これから、花見に行くよ」
「花見…ですか」
雲雀は魅真の部屋に入るなり、あまりにも唐突なことを言ってきた。
標的21 お花見デスマッチ
「うわぁあ~~。桜の花が雪みたいに舞っていて、すっごく綺麗ですね」
数十分後。
魅真は、薙刀と自分の手作り弁当が入った重箱を持ち、雲雀は手ぶらで、花見をする公園まで来ていた。
あまりの桜の美しさに、魅真は公園に入るなりはしゃいでいる。
「あれ?何かさわがしいですね」
「ああ。委員の一人に、誰も入ってこれないように見張らせているからね」
「そうなんですか。……あっ…!」
そのことを雲雀から聞くと、複数の人の声が聞こえてきたので、きっと委員の人が公園に入ってきた人を追い払ってるのだろうと思った。
だがその時、聞き覚えのある声を耳にした。
「何?大きな声出して……ん?」
突然大きな声を出した魅真を見ていると、広々とした場所に出てきた。
その時、見覚えのある姿を目にしたので、雲雀は、何故魅真が、突然大きな声をあげたのかを理解した。
「何やら騒がしいと思えば君達か」
雲雀は桜の木にもたれかかり、魅真は雲雀の隣に立って、そこにいる人物を見やった。
「ヒバリさん!!魅真ちゃんも」
「ツナ君!!武君!!隼人君!!」
そこにいたのは、ツナ、獄寺、山本のいつもの三人組だった。
彼らも花見に来たのだが、見張りをさせていた風紀委員が強制的に追いだそうとしたとこを、獄寺が問答無用でひざ蹴りをくらわせたのである。
先程の騒ぎはそれだったのだ。
「あ、この人、風紀委員だったんだ!」
雲雀と魅真の登場と腕につけている腕章で、獄寺が倒した相手が、ただの不良ではなく、並中風紀委員だとわかったので、ツナは目がとびでる勢いで驚いた。
「僕は、群れる人間を見ずに桜を楽しみたいからね。彼に追い払って貰っていたんだ」
「(またムチャいってるーー…)」
相変わらずムチャクチャな雲雀に、ツナと獄寺はついていけない状態だったが、魅真は毎度のことなので、大して動じても驚いてもいなかった。
「でも、君は役に立たないね。あとはいいよ。自分でやるから」
「い…委員長」
「弱虫は」
雲雀は倒された風紀委員のもとへ歩みよっていく。
これから何をされるのかわかっている彼は、顔が青ざめ、体が震えていた。
「土にかえれよ」
「がはっ」
「!」
「仲間を」
雲雀はあっさりと、自分の部下をトンファーで殴りとばした。
三人は驚き、魅真もわかっていたとはいえ、見ていてあまり気分のいいものではないので、思わず目をつむる。
「見てのとおり、僕は人の上に立つのが苦手なようでね。屍の上に立ってる方が落ちくよ」
血にぬれたトンファーを片手に、とんでもないことを言う雲雀に、魅真やツナだけでなく、獄寺と山本も、背筋が凍る思いをした。
「いやー、絶景!絶景!花見ってのはいいねーー♪」
その時、ツナ達の後ろから、第三者の声が聞こえてきた。
その声が聞こえた瞬間、魅真は一瞬にして雲雀の後ろに隠れた。
「っか~~~、やだねーーー。男ばっかっ!」
「Dr.シャマル!」
桜の木の後ろから酒びんを片手に現れたのは、並中保健医のシャマルだった。
しかも、すでに軽くできあがっている。
「まだいやがったのか!!このやぶ医者。ヘンタイ!スケコマシ!」
シャマルを見た途端、悪態をつく獄寺を、隣にいるツナはなだめる。
「オレが呼んだんだ」
「リボーンも!」
「おめーら、かわいこちゃんつれてこい!」
シャマルの頭上の木の枝には、花さかじいさんのコスプレをするリボーンがすわっていて、何故シャマルがここにいるのかを説明する。
「と思ったら、魅真ちゃんめーーっけ!」
「ゲッ」
雲雀の後ろに隠れていたのに、あっさりとみつかってしまったので、魅真はすごく嫌そうな顔をした。
「ひっさしぶりぃ~~魅真ちゅわ~~ん!オジサンとデートして~~。んでもって、ちゅーしよーー!」
「イヤです!」
めざとく魅真をみつけたシャマルは、魅真にせまろうとするが、魅真は右手に持っていた薙刀をシャマルに向けて、これ以上自分に近づくなという意志を示した。
「赤ん坊、会えて嬉しいよ」
「オレ達も花見がしてーんだ。どーだヒバリ。花見の場所をかけて、ツナが勝負すると言ってるぞ」
「なっ。なんで、オレの名前出してんだよー!!」
「ゲーム…。いいよ。どーせ、皆つぶすつもりだったしね」
自分の名前を勝手に出されたことに、ツナは文句を言うが、雲雀はリボーンの提案を受け入れる。
「じゃあ、君達三人と、それぞれサシで勝負しよう。お互いヒザをついたら負けだ」
「ええ!それってケンカ!?」
勝手に話を進められ、ツナは頭を抱えた。
「やりましょう、10代目。いや、やらせて下さい!」
「一応ルールあるし、花見してーしな」
「みんなやる気なのー!?」
けど、獄寺と山本はやる気満々なので、ツナは焦った。
「ね、ねえ…。それって…ひょっとして私もやるの?」
ここにいるということは、自分も参加しなきゃいけないのかと思った魅真は、全員に問いかけた。
「君は出なくていいよ。君が出たんじゃ、勝てるものも勝てないから」
「えっ…」
「そうそう、魅真は大人しく見てるのな。危ないし」
「えぇっ!?」
「そうだよ、魅真ちゃんは女の子だし」
「ん…」
「魅真が出たら、どうせ1秒で負けるだろ」
「うぐっ…」
「戦いは男どもにまかせとけ」
「そんな…」
「オジサンも、魅真ちゃんがケガするとこは見たくないな」
「………」
けど、雲雀と獄寺にけなされたので、落ちこんでしまった。
他の四人には、心配され、気遣われ、女扱いされたので、うれしいことはうれしいのだが、それでもケガをする前提で話をされ、何気に足手まとい扱いされたような気がして、なんとも複雑な気持ちだった。
「まあ、とにかく心配すんな。その為に医者も呼んである」
「あの人、女しか診ないんだろ!!」
シャマルがここにいる理由はわかったが、彼は男は診ないので、不安はぬぐいきれなかった。
「へーー。おめーが暴れん坊主か。おまえ、姉ちゃんいる?」
一方で、雲雀の怖さを知らないシャマルは、普通に雲雀に近づいていく。
「消えろ」
「のへーー!!!」
しかし、あっさりと雲雀に倒された。
「ふぎゃーーっ!!」
「(医者いなくなったーー!!)」
「アホ」
瞬殺されたシャマルを見て、ツナはますます不安になり、獄寺は呆れていた。
「10代目、オレが最高の花見場所を、ゲットしてみせますよ!」
「えっ。でも獄寺君、相手は……」
自信満々で挑もうとする獄寺だが、相手はあの最強の雲雀なので、ツナは心配だった。
「まぁ見てろ」
「え?」
けど、リボーンは全然心配してはいなかった。
そばで見ている魅真は、自分は風紀委員の人間だけど、ツナ達の友達でもあるので、どっちを応援していいかわからない状態だった。
「てめーだけはぶっとばす!!」
獄寺は前に出るなり、いきなりダイナマイトを持って、雲雀がいる方へ走っていく。
「いつもまっすぐだね。わかりやすい」
けれど、雲雀は余裕の表情で、まっすぐつっこんでくる獄寺に向かって、トンファーを振り下ろした。
だが、獄寺はその攻撃をよけた。
そして、すれ違いざまに、持っていた大量のダイナマイトを投げる。
「新技、ボムスプレッズ!!!」
獄寺は今までにないすばやい動きで、雲雀の後ろに立った。
一方雲雀は、獄寺が投げた大量のダイナマイトに囲まれている。
「果てな」
その瞬間、ダイナマイトはいっせいに爆発し、煙が雲雀を覆った。
「雲雀さん!!」
これでは、さすがの雲雀も無事ではすまないだろうと、魅真は心配になった。
「え゙え゙っ。まじでヒバリさんを!!」
「あのスピードと柔軟性は、強化プログラムで身につけたものだぞ」
「(こじつけくせーーっ)」
あっさりと雲雀を倒したので、驚いていると、リボーンはさも自分のおかげだと言わんばかりに説明をするが、ツナはうさんくさそうにしていた。
「で…?」
だが、その時倒れたはずの雲雀の声が聞こえてきた。
目を向けた先には、トンファーを回して爆風をしのいだ雲雀がいた。
「続きはないの?」
ダイナマイトにもまったく動じず、余裕の顔でそこに立っていたのだ。
雲雀が無事な姿を見ると、魅真はほっとする。
「なっ、トンファーで爆風を!?」
「二度と花見をできなくしてあげよう」
今度はこっちの番だと言うように、雲雀はトンファーを回しながら、獄寺に向かっていく。
そして、獄寺の前に来ると、トンファーを鋭く横に振った。
「くっ」
獄寺はその攻撃をなんとかよけるが、下にしゃがんでよけてしまったために、ひざが地面についてしまい、負けとなった。
「獄寺はヒザをついた。ストップだ」
「やだよ」
自分から言ったルールなのに、そんなことはお構いなしに、好戦的な目で、至極楽しそうに獄寺にトンファーを振り下ろす。
「雲雀さん、やめてください!!」
「ああ」
それを見ていた魅真とツナは、顔が青ざめる。
魅真はやめるように叫ぶが、そんなことを聞く雲雀ではなかった。
だが、それは獄寺にあたることはなく、金属音が辺りに響いた。
「次、オレな」
「山本!!」
「武君!」
それを止めたのは、山本だった。
金属音が響いたのは、山本が刀でトンファーを止めたからだった。
自分の攻撃を止められ、獄寺をやりそこねた雲雀は、不機嫌な目で山本を睨んだ。
けど、雲雀とは反対に、魅真は獄寺がやられずにすんだので、ほっとしていた。
「山本のバット~~!?何、物騒なもんわたしてんだよ!!」
「武君、刀なんて持ってたんだ」
獄寺がやられなくてよかったが、刀などという物騒なものを山本が持っていた(恐らくリボーンに渡された)ので、ツナは先程とは別の意味で顔が青ざめる。
「これならやりあえそーだな」
「ふうん」
武器を持ち、雲雀の攻撃を止めたことで自信をもったみたいだが、それでも雲雀は臆すことなく立ち向かっていく。
「どーかな?」
攻撃は全て山本に止められているが、それでも雲雀の顔から、余裕の笑みが消えることはなかった。
「僕の武器には、まだ秘密があってね」
「? 秘密……!?
(仕込み鉤!!!)」
山本が疑問符を浮かべてると、雲雀のトンファーから鉤が出てきて、刀をとらえ、動けなくする。
「うそー!!何あれ!!何かでたー!!!」
「ていうか、あれ本当にトンファーなの?」
まさか、トンファーから鉤が出てくるとは思わず、戦ってる山本だけでなく、戦いを見ているツナと魅真も驚いた。
「ぐわっ」
刀を封じられ、山本の動きが止まると、雲雀は刀を封じた方のトンファーで、そのまま殴り倒した。
「くっそー。またかよ」
「山本!」
「武君!」
倒れた山本はひざをついてしまい、負けとなってしまった。
「次はツナだぞ」
「ええー!?オレは無理だよ。なんにも強くなってねーし!」
獄寺と山本でも無理だったのに、戦う力をもっていない自分が、雲雀に敵いっこないとわかりきってるツナは焦る。
「んなことねーぞ。昔のおまえが、体を張ってライオンから京子を守れたか?」
「えっ」
けど、リボーンは、ツナが言ったことを否定した。
「さっさと暴れてこい」
「ちょっ、まてよ!!」
そして、拳銃を取り出すと、問答無用でツナに死ぬ気弾を撃った。
「復活(リ・ボーン)!!!
死ぬ気でヒバリを倒す!!」
パンツ姿のツナが現れると、魅真は目を丸くしたが、何も言わずにツナを見ていた。
「レオンーーー!!」
ツナの呼びかけに、いつもリボーンの頭にいるペットのレオンは、はたきに姿を変える。
「はたき……!?」
「あ、あんなので戦うの?それに、なんでカメレオンが…」
「し…しぶい!」
雲雀相手にはたきで戦うのもだが、カメレオンが物に変化したので、魅真は驚いた。
ツナははたきを持つと、雲雀に向かって振り下ろすが、雲雀ははたきをトンファーで止める。
止めた時に、はたきの先が雲雀の頭にのっかるようにあたる光景は、なんとも奇妙なものだった。
「うおお!!」
「君は変わってるね。強かったり弱かったり。よくわからないから」
いきなりパンツ姿になって強くなったツナや、はたきに変化したレオンを見ても、雲雀は特に反応を示さず、冷静で無表情なままだった。
「殺してしまおう」
「だぁ!!」
雲雀がトンファーで攻撃をすると、ツナははたきで応酬していた。
けど、お互いの攻撃は、なかなかあたらなかった。
「すげー」
「互角だ………!」
「雲雀さんもツナ君もすごい」
なかなか自分の攻撃があたらず、ツナは一旦雲雀と距離をとる。
「い゙!?」
だがその時、いきなり額の炎が消え、元のツナに戻ってしまった。
「わっ。ちょっ、まって!」
その間にも、雲雀は両方のトンファーをふりまわして、ツナにとどめをさそうとする。
まさに、絶体絶命のピンチに陥った。
この状況にツナは焦るが、雲雀は待てと言われて待つような男ではなく、容赦なく襲いかかってきた。
「ひいっ!」
ツナはきたる衝撃にそなえて目をつむる。
同時に、何かが落ちるような音が響いた。
「い゙っ!!!」
「えぇっ!?」
目の前の光景に、ツナと魅真は驚いた。
何故なら雲雀が、ツナが何もしてないのに、急にひざを地面につけていたからだ。
「おぉ」
「やった!」
これには山本も驚き、獄寺は歓喜の声をあげていた。
「えー!?うそっ!?オレがやったの~!?」
ツナは、自分がやった覚えはないし、自分がやれるわけがないとわかっているので、何がなんだかわからない状態だった。
「ちがうぞ。奴の仕業だぞ」
「!?」
リボーンはツナが言ったことを否定しながら、指をさした。
「おー、いて。ハンサムフェイスにキズがついたらどーしてくれんだい」
「Dr.シャマル!」
リボーンが指をさした先には、雲雀の攻撃をくらって倒れたシャマルが、意識をとり戻して、殴られた頭をおさえていた。
「シャマルは殴られた瞬間に、トライデント・モスキートをヒバリに発動したんだ」
「あの酔っぱらいが、そんな器用なことを?」
有名な殺し屋というのは聞いていたが、まさかあのシャマルがそんなすごいことをするとは思わず、ツナは驚いた。
「わりーけど、超えてきた死線の数がちがうのよ。ちなみに、こいつにかけた病気は、桜に囲まれると立っていられない、「桜クラ病」つってな」
「(またヘンテコな病気だーー)」
「桜…クラ?」
魅真はシャマルのことをよく知らないので、変な名前の病気を聞いて、眉間にしわをよせた。
「ヒバリさん!」
シャマルが病気の説明をしていると、ツナのそばでは雲雀がふらつきながら起き上がる。
「約束は約束だ。せいぜい、桜を楽しむがいいさ」
「あ…(桜クラ病にかかったまま…)」
雲雀はふらふらになりながらも、決して倒れることなく、そこから去っていった。
「あ……ごめんね、ツナ君。私、行かなきゃ」
「あ、うん」
「待ってください、雲雀さん!」
ツナ達は友達だが、もともと自分は雲雀についてきたわけだし、そうでなくとも、あの状態の雲雀を放っておくことはできないので、魅真はツナに一言断りをいれると、雲雀のもとへ走っていった。
「待って!待ってください、雲雀さん!」
雲雀が、桜クラ病のせいでうまく歩けない状態なので、魅真は重箱を抱え、薙刀を持ちながらも、簡単に追いついた。
それでも、雲雀は頭だけ後ろに向けて魅真を見やるものの、歩みを止めることなく先に進んでいく。
「もう……何をそんなに急いでるんですか?」
「さっきの医者の言うことを聞いてなかったのかい?桜に囲まれていたら、この状態が続いてしまう。僕は地べたにすわりこんで、無様な醜態をさらしたくないからね」
ふらふらしながらも歩き続けてるのは、雲雀のプライドからくるものだった。
魅真と話している間も、雲雀は少しでも桜から離れようと歩き続ける。
そんな、いじっぱりで強がりな姿を見て、魅真は顔をゆがめた。
「雲雀さん!!」
そして、雲雀が数歩歩いたところで、大きな声で呼び止める。
大きな声に、雲雀は足を止め、魅真の方へ振り向いた。
「…何?」
「肩……つかまってください」
「……え…?」
いきなりのことに、魅真が何を言っているのかわからず、疑問符を浮かべる。
「そんなに辛いなら、私が手をかしますから」
「笑えるね。僕のどこが、そんなに辛そうだっていうの?君の目の錯覚だよ。それに、手をかす?そんな両手がふさがった状態で、何ができるっていうの?」
「両手はふさがっていても、肩ならあいています。だから、雲雀さんが手を置くぐらいはできます。それだけでも、全然違ってくると思いますよ。
それに、そんなにふらふらして、真っ青な顔して、眉間にしわよせて……。それのどこが辛そうじゃないって言うんですか?意地はるのもいい加減にしてくださいよ!!」
まさか、あの気弱で自分を恐れていた魅真が、こんな風に自分を心配して、強気に出て叱責するとは思わなかった雲雀は、驚いて目を丸くした。
けど、いつまでも魅真の肩に手を置くことはなく、それに業を煮やした魅真は、弁当箱を薙刀を持ってる方の手で一緒に持つと、強制的に雲雀の手をつかみ、自分の肩にもってこさせた。
「いつまでも意地はらないでください」
その強引なやり方に、雲雀は更に驚く。
この手は、すぐに肩からどかそうと思えばどかせるのだが、雲雀はそうしようとせず、魅真の肩に手を置いたまま、桜並木を歩いていた。
「雲雀さん」
「何?」
「ここから出たら、遠くからでも桜が見える公園かどこかに行って、お弁当食べましょう。囲まれなければ、足がふらつくこともないんですよね」
本当は、桜を楽しみたかったのに、負けてしまったのと、桜クラ病という変な病気にかかってしまったのとで、花見自体が無理になってしまった。
けど魅真は、あきらめて家に帰るという選択をするのではなく、どこでもいいので、なんとか桜を見ようという選択をとった。
魅真自身のためではなく、自分を気遣う魅真の優しさに、雲雀は戸惑った。
何故、自分のためにここまでしてくれるのかということが、ふしぎでならなかったのだ。
「……うん…」
けど、ふしぎと嫌な気持ちにはならなかった雲雀は、二つ返事で了承し、魅真の肩に手を置いて、ゆっくり…ゆっくりと、桜並木を歩いていった。
.