標的20 訪問、沢田家
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春休みに入るちょっと前のこと……。
魅真はいつも通り、見廻りをしていた。
「だぁーかぁーらぁー!有り金全部よこせって言ってんだろ」
そのさなか、街中で、一人の女性が、いかにもガラの悪いガタイのいい男にからまれているのを目にした。
制服を着てるのでせいぜい高校生なのだが、どう見ても未成年には見えない風貌であった。
「あの……お買いものしたから、もうお金はないのよ」
「それでも小銭ぐらい持ってんだろ?全部よこせ!!」
「困ったわね」
いかにも不良といった男を相手をしているというのに、女性はなんとも落ちついていた。
「コラぁ!!」
そこへ、魅真はしかりつけるように、男に声をかけた。
二人は声がした方へ振り向く。
「何してるの?そんなとこで!」
「うおっ!おまえは……雲雀恭弥の女!!」
「………………」
もう魅真の顔は、不良になら全員に知れわたっているようで、男は魅真の顔を見るなり顔が青ざめる。
毎度同じパターンに、魅真は、もはや訂正する気力すらなかった。
「スイマッセンしたァァァ!!」
そして、先程女性にからんでた時とはまったく逆で、血の気が引いた、青ざめた顔で逃げていく。
「あの、ありがとう」
「あ、いえ…。いいんです」
男が逃げていくと、女性は魅真にお礼を言う。
「どうした?ママン」
そこへ、今度はまた別の、幼い声が聞こえてきた。
「あら」
「リボーン君!?」
それはリボーンで、リボーンは赤ん坊なのに、コーヒー片手にこちらに歩いてきた。
「ん?なんだ、魅真じゃねーか」
「リボーン君、どうしたの?こんなところで」
「オレか?オレはママンのおつかいに着いてきただけだぞ」
「ママン?え?じゃあ、この人…リボーン君のお母さんなの?」
「ちげーぞ」
「へ…?」
ママンと呼んでいるのに、母親ではないと言われ、魅真は頭がこんがらがった。
「リボーン君、この子…知ってる子なの?」
「ああ、ツナと同じクラスのやつで、ツナの友達だぞ」
「まぁあ!ツナのお友達?」
今度は女性の方がリボーンに話しかけ、魅真のことを聞くと、急に顔が明るくなる。
「え…!?ツナ君?じゃあひょっとして…」
ツナの名前が出たことで、魅真はもしや!と思った。
「ツナの母です。はじめまして」
そう……彼女は、ツナの母親の沢田奈々だったのだ。
標的20 訪問、沢田家
魅真がツナの友達と知った奈々は、助けられたこともあり、魅真を家に招待した。
「魅真ちゃん。さっきは本当にありがとう」
「いえ……私…そんな、大したことは…」
「そんなことないわ。助かっちゃった」
魅真、奈々、リボーンの三人は台所の食卓にすわっており、奈々は、改めて魅真にお礼を言っていた。
「さあ、遠慮なくめしあがれ」
そして、食卓にすわる前に淹れた紅茶とクッキーを、魅真に勧めた。
「ありがとうございます。いただきます」
奈々に勧められると、魅真はクッキーをひとつ手にとり、口にいれる。
「わっ!おいしい」
クッキーを口にすると、魅真は顔をほころばせた。
「よかったわ、口にあって」
「これはママンの手作りなんだぞ」
「えっ、そうなんですか?お料理上手なんですね」
「まあ、うれしい。もっと食べて」
「はい」
ほめられると、奈々は天にも昇る気分になり、魅真は勧められるがままにクッキーと紅茶を口に運んでいく。
「ただいまー」
その頃、玄関には、学校から帰宅したツナがいた。
「あれ?なんだろ、このくつ?」
くつをぬいでいると、見知らぬくつがあったので、それを見たツナはふしぎに思った。
「あら、ツー君。お帰りなさい」
「あ、母さん。ただいま」
扉が開く音とツナの声がしたので、奈々は廊下に出てツナを出迎えた。
「ツー君、お友達が来てるわよ」
「友達?京子ちゃん?それともハル?」
さっきの見知らぬくつは女物だったので、この二人のどちらかかとツナは思った。
「ううん。魅真ちゃんていう子よ」
「魅真ちゃん!?」
けど、二人のどちらでもなく、今まで自分の家に来たことがなかった魅真が来ていることにツナは驚いて、制服のまま台所に行った。
「あ、ツナ君。お帰りなさい」
奈々が台所から出てきたので、恐らくそこにいるのだろうとふんで入ってみたら、予想通り、そこには魅真がいた。
「魅真ちゃん。どうしてうちに?」
「街中で、お金を出せってからまれてたところを助けてもらったのよ」
「え、そうなの?ありがとう、魅真ちゃん」
事情を奈々から聞くと、ツナは自分のことではないのに、魅真にお礼を言う。
「ツナ、おまえも見習って、もっと勇気出して立ち向かわなきゃダメだぞ」
「ほっといてくれよ」
赤ん坊のリボーンにダメ出しされたので、ツナは顔を赤くしてつっこんだ。
「ただいま」
「あら、お帰りなさい。ビアンキちゃん」
するとそこへ、髪の長い外国人女性が、家の中に入ってきた。
「あーーーーっ!!あなたはっ!!」
その女性を見て、魅真は驚いた。
何故ならその女性は、魅真がこちらに引っ越してきたばかりの頃、去年の夏休みに見た、悪夢に出てきた一人だからだ。
「あら、魅真ちゃん。ビアンキちゃんのことを知ってるの?」
「知ってるも何も……。この人、私が去年ここに引っ越してきたばかりの時に見た、悪夢に出てきた人ですよ」
「「悪夢?」」
なんのことなのかさっぱりわからず、ビアンキだけでなく、奈々も疑問に思いながら、同じことを同時に問う。
隣では、いつ死ぬ気弾のことやマフィアのことが、奈々や魅真にばれるかわからないので、ツナがおろおろしていた。
「そうなんです。実は…」
「まあ落ちつけ、魅真」
「リボーン君」
説明しようとすると、リボーンが魅真のひざの上に跳んできた。
「いつまでも、そんなことを言ってても仕方ないぞ。嫌なことは、もう忘れろ」
「でも…」
「いいから。ママンの淹れた紅茶でも飲め。落ちつくぞ」
「うん」
リボーンが魅真のひざにのったのと、優しくしたのを見て、ビアンキは目を鋭く光らせる。
「あ…すみません、ビアンキ…さん。変なことを言ってしまって。それと、あいさつが遅くなってしまいました。私、ツナ君のクラスメートで、ツナ君のともだ………ビアンキさん?」
あいさつをしていたが、途中でビアンキの様子がおかしいことに気づき、どうしたのかと名前を呼んだ。
「あの~……ビアンキさ…」
「あなたっ」
「はい!」
鋭く、少し低めの声で呼ばれると、魅真は勢いよく返事をする。
「あなた……リボーンとはどういう関係?」
「どういうって……リボーン君とは、友達ですけど…」
「本当に?」
「ええ」
もしかしたら、ただならぬ仲なのではと思ったが、再度確かめてみても同じだった。
「何言ってんだ?オレの愛人だろ、魅真は」
「リボーン!!」
けど、最悪なタイミングで、リボーンが爆弾を投下してきたので、ツナが大きな声で名前を呼ぶが、もうすでに遅かった。
「愛人…ですって…?」
「そうだぞ。五番目だ」
リボーンがそう言うと、ビアンキの顔中に青筋がたくさん浮かんだ。
「ちっ……違うんだよ、ビアンキ!!愛人って言っても、これは、学校のマフィアごっこなんだ。魅真ちゃんは、ただそういう役なだけなんだよ!」
「役?」
「そうそう。だから、別にビアンキが思ってるような関係じゃないから!」
「そう…」
それを、何故か魅真本人ではなく、ツナの方があわてて説明をする。
説明をされると、ビアンキはあっさりと落ちついた。
落ちついたビアンキを見て、魅真だけでなく、ツナもほっとした。
あれからツナは私服に着替え、その後魅真はツナの部屋に場所を移した。
「本当にごめんね、魅真ちゃん」
魅真が部屋に入り、机の前にすわると、初対面にも関わらず、あのような態度をとったビアンキのことで、ツナは頭をさげる。
「あ、いいよ別に。ビアンキさんだって、別に悪気があったわけじゃないし…。それだけ、リボーン君のことが好きだってことだよ。ね、リボーン君」
「ああ、オレはモテモテだからな」
けど、魅真は特に気にしてないようで、それどころか結構余裕の表情だった。
少し前では、考えられないことである。
「それにしても……まさか、こんな形でツナ君の家におじゃまするとは思わなかったわ」
「オレもだよ」
「でも、なりゆきだったけど、どんな形でも、ツナ君の家に来れてうれしいな。初めて誘われた時から、なんだかんだと機会がなくなっちゃって、行けなかったから」
「そうだね。あ、魅真ちゃん。お菓子どんどん食べなよ」
「ありがとう」
上にあがっていく時に、奈々が持ってきたお茶とお菓子を勧められると、魅真はお菓子に手を伸ばした。
「ガハハハハ」
「◎☆×■!!」
その時、けたたましい笑い声と、日本ではない異国の言葉が聞こえてきた。
「ガハハハハ!!ランボさん参上ーー!!」
「◆○□▲」
大きな笑い声とともにやって来たのは、牛柄の服に、頭につのをつけた男の子と、チャイナ服を着た、弁髪の女の子だった。
二人の姿を見ると、魅真は目を丸くする。
そして、男の子の方を見ると、魅真の表情が固まってしまい、ツナはやばい!と思った。
「ツナ君、この男の子…」
それを聞くだけで、ツナはギクッとなる。
「この子も…ここの子だったのね。じゃあ、やっぱりあれは…」
「いや、夢だって!魅真ちゃん、引っ越してきたばかりの頃、オレんちの前を通りかかったんだろ?そん時にビアンキやランボを見て、それで夢ん中に出てきちゃったんじゃないかな?」
「ん~~~…。いや……私もそうじゃないかと思うんだけどね。現実にはありえないことだったし。でも…さすがにここまでそろうとね。なんだか、やっぱり夢だとは思えなくなってきてるのよね」
今までは夢と思っていたが、さすがに疑いはじめているので、ツナは内心冷や汗ものだった。
「ツナ」
「ん?なんだ、リボーン」
「イーピンが魅真のこと、「この人は誰だ?」って聞いてるぞ」
「ああ、この人はオレのクラスメートで、オレの友達だよ」
けど、途中でイーピンが質問してきたことに、ツナは天の助けとばかりにほっとしていた。
ツナが説明すると、リボーンはイーピンに、イーピンの国の言葉で、ツナが言ったことを説明をする。
「おまえ、ツナの友達なのか?」
今度は、ランボが魅真の方に歩いてきて、魅真に質問をした。
「うん、そうだよ。魅真っていうの。よろしくね」
「よーし!魅真、ランボさんと遊べーー!!」
魅真が自己紹介をすると、ランボは無遠慮な態度で接する。
「ちょっ、ランボ!魅真ちゃん、今日はお前と遊びに来たわけじゃ……」
「ああ、いいのよツナ君。気にしないで」
けど、魅真はまったく気にしていなかった。
ランボの、自由奔放でワガママな要求にも、嫌な顔ひとつしない魅真を、ツナは心の底から感心した。
「うざいマフィアランキング、8万2千266人中ぶっちぎりで1位のランボの頼みを、苦とも思わないなんて……すごいんだね」
そこへ、今度はまた別の、幼い子供の声が聞こえてきた。
「だ…誰?」
「フゥ太」
そこにいたのは、フゥ太という名の、かわいらしい男の子だった。
「こんにちは、僕はフゥ太って言うんだ。よろしくね」
「あ…私は魅真よ。こちらこそよろしく」
フゥ太があいさつをすると、魅真もあいさつを交わす。
「ねえ、ツナ君」
「何?」
「ビアンキさんといい、ランボ君といい、イーピンちゃんといい、フゥ太君といい……一体どこの子?国籍が違うみたいだし、どう見ても似てないから、兄弟とかじゃないよね?前、一人っ子だって言ってたし…」
「ん~~。詳しくは言えないんだけど……。みんな、リボーンやオレを訪ねてきて、いつの間にか居ついちゃったんだ」
「…そうなんだ」
誤魔化したツナを見て、本当はもっと深い事情があると思ったが、あまり追究されたくなさそうなので、魅真はそれ以上は聞かなかった。
「ねえねえ、魅真姉って呼ばせてもらっていいかな?」
「いいよ」
「魅真姉は、今何か知りたいこととかある?」
「知りたいこと?何を?」
あまりにもざっくりすぎる質問なので、わけがわからず聞き返せば、フゥ太は自分の上半身くらいはありそうな大きな本を、魅真に見せる。
「何?その本」
「これは、ランキングブックっていって、色々なランキングが書いてあるんだ」
「ランキング?」
「フゥ太は、「ランキングフゥ太」って言ってな。ランキングをつくらせたら、右に出る者はいないっていう情報屋だ」
「何それ?」
横からリボーンが補足して説明をするが、魅真は意味がよくわかっていなかった。
「例えば……並中女子で勉強できるランキングでは、魅真姉は1位」
「え?そんな、まさか…」
「それで、並中で他人に合わせることに抵抗がないランキングでも1位」
「何、そのランキング…」
信じてもらうために自分の能力を披露するが、魅真は信じるどころか疑っていた。
「そんでもって、並中女子のおっちょこちょいランキングでも1位」
「あたってるかも……」
「そこで納得しちゃうの!?」
けど、次のランキングで納得する。
隣では、自分のことではないが、変なところで納得した魅真に、ツナがつっこんだ。
「すごいね、フゥ太君。なんでそんなことわかるの?」
「フゥ太は、遠い宇宙のランキングの星と交信してるって説があるんだ」
「ん~~~…。わかるような信じられないような…」
「ちなみに、フゥ太がつくるランキングの的中率は、100%なんだぞ」
「うっそぉ!!」
フゥ太本人ではなく、リボーンがまた補足して説明をすると、魅真は驚いた。
「魅真姉も、何かランキングしてほしいことがあったら、やってあげるよ」
「え……じゃあ、どうしようかな…」
特に何もないが、やってあげたそうなフゥ太を見て、別にいいと言うのも気が引けるので、魅真はどうしようか悩んだ。
「じゃあ、魅真の強さが並中で何位なのか、見てもらったらどうだ?」
「見ても無駄だと思うんだけど…」
雲雀に特訓してもらってるので、何もやってない女子よりは上だと思うが、全校生徒の中では明らかに下だというのが、何も言われなくてもわかりきっていた。
「じゃあ、いくよ」
「わっ」
フゥ太が交信を始めると、いきなり物が宙に浮いたので、魅真は驚いた。
「こちら、フゥ太。聞こえるよ、ランキングの星」
「えっ!何?どうしちゃったの!?」
物が宙に浮いた途端、フゥ太は目がうつろな感じになり、何やらぶつぶつとつぶやきだした。
「さっき言っただろ。フゥ太は、遠い宇宙のランキングの星と交信してるって。ついでに言うと、ランキングをしてる時に周りの物が浮くのは、自分の脳をレッドゾーンまで追い込んで、何かをランキングする時、奴の体内に凝縮されたエネルギーが磁場を狂わせて、奴のまわりの引力を無効化させるからなんだ」
「よく…わからないんだけど…」
「並中の強さランキング、魅真姉の順位は…」
リボーンと話している間にわかったようで、フゥ太は魅真の順位を発表しようとする。
「並中の全校生徒、924人中……503位」
「微妙ね…」
「ちなみに、並中の女子の中では461人中109位」
「本当にすごく微妙」
思ったよりはまだいい方だったが、微妙な順位に、魅真はどんな反応をしていいのか困っていた。
「でも魅真姉、これは進歩なんだよ。以前ランキングした時は、魅真姉は、全校生徒の中で最下位。女子の中でも最下位と、下の下だったんだから。だけど、少しずつ上がっていってるんだよ」
「一度も敵は倒したことないんだけどね」
出会う敵(不良)は、みんな自分を「雲雀恭弥の女」と認識しており、戦う前にみんな逃げているので、上がっていってるとは言われても、やはり微妙な心持ちだった。
「じゃあ、次は何にする?」
「まだやるの!?」
「うん。他にない?」
これで終わりかと思ったが、フゥ太はまだやる気満々だった。
最初から、何かランキングしてほしいことがないため、魅真はどうしようか更に迷った。
「それじゃあ……次は、魅真の愛してる人ランキングなんてのはどう?」
「ビアンキ」
「ビアンキさん」
そこへ、下の階にいたはずのビアンキが、いつの間にかツナの部屋までやって来て、次のランキングの提案をしてきた。
「ていうか、またそれやるの?今度は魅真ちゃんが?」
「そうよ。大事なのは愛。魅真が誰を愛してるのか、はっきりさせましょ」
「(ていうかビアンキの奴、魅真ちゃんが、本当にリボーンをなんとも思ってないかどうか、確かめたいだけなんじゃ…)」
ビアンキの本心に気づいたツナは、呆れ気味になるが、本当のことは本人には言えないので、心の中でつっこんだ。
「それで魅真、あなたは一体誰が好きなの?」
「え?それって…恋愛として好きって意味ですよね?」
「もちろん」
「いませんよ、そんな人。恋愛なんて、経験したことありませんもん」
「でも、もしかしたら無意識のうちに、誰かを好きになってるかもしれないわよ」
「誰か……」
ビアンキに言われると、魅真の頭の中には、雲雀がまっさきに思い浮かぶ。
「(なっ…なんで雲雀さんが?)」
そんなことはありえないと、魅真は思いっきり頭をふった。
「あら、やっぱり誰かいるのね」
「いや、違います。これは…その……」
恋愛に関して鋭いビアンキは、今の魅真の表情やしぐさだけで、魅真には気になる人がいるのだと察したが、魅真はそれを否定した。
「フゥ太、やってあげて」
「わかったよ。じゃあ、いくよ」
「ま!待ってーー!!」
ビアンキは勝手にフゥ太に指示を出した。
ビアンキに言われると、フゥ太はランキングを始める。
魅真はあわてて止めようとするが、もうすでに遅く、フゥ太はランキングモードに入り、ランキングの星と交信をしていた。
「フゥ太くん、ダメだってば……きゃっ」
フゥ太を止めるため、魅真がフゥ太のそばに駆け寄ると、ランキングモードに入っている影響で、宙に浮いてしまう。
「魅真姉が愛してる人ランキング、第一位は」
魅真の制止も聞かず、ランキングを終えたフゥ太は、魅真が愛してる人第一位を発表しようとする。
「雲雀恭弥」
「えっ…雲雀さん?」
「えぇええぇえええええっ!?」
まさかの結果に、ツナは驚いて目を丸くし、魅真は絶叫した。
また周りでは、リボーンはニヤっと笑い、ビアンキはほっとしており、イーピンはショックを受けていた。
「あら、やっぱりいるんじゃないの。誰?その子」
「…同じ並中に通ってる人で、私と同じ風紀委員会の委員長です」
「そう…。なかなかおいしいシチュエーションね」
「いえ……違うんですってば。確かに今は、少しはいい人って思えるようになりましたけど、出会った当初は、最悪な印象しかなかったんですよ。もう、絶対に関わりたくないって思ってたくらいですから」
「でも、今は違うんでしょ?段々好きになっていってるんじゃない?」
「ちーがーいーまーすーー!」
違うと言ってるのに、それでも自分が雲雀を好きだという方向にもっていくビアンキに、魅真は大きな声で更に否定する。
「本当に違うんですよ。その人、群れるのが大嫌いなので、私が風紀委員に入った当初、あの雲雀恭弥が、不良でもない戦えない女を自ら入れるくらいだから、二人はデキてるだろうって勘違いされて…。雲雀恭弥の女だとか言われてて。並中以外の人にも知られてしまって…。でもそんなのは、根も葉もないうわさです。私は雲雀さんのことは、全然なんとも思っていません!周りが勝手にそう言ってるだけなんですから。それに、私だけじゃなく、雲雀さんも私に興味なんてないですよ。前に、弱いから興味ないって、面と向かって言われたんですから。だから、私も恋愛の意味で好きではありません。むこうもきっと、そう思ってます。そんなことは生涯ありえません」
「でもお前、今はわけあって、雲雀ん家に居候してんだろ?なら、いつ愛が芽生えてもおかしくねーじゃねーか」
「あら、それはかなりおいしいわね」
「それに、前は最下位だった順位がかなり上がってるって、さっきフゥ太のランキングでわかっただろ。もしかしたら…ってこともありえるぞ」
「その可能性は十分にあるわね」
めずらしくマシンガントークをして、説明をするが、リボーンとビアンキにあっさりと返される。
「それに、雲雀に対して恋愛感情をもってないっつっても、それは前までのことだろ?」
「そうね。無意識のうちに、好きになってるってこともありえるわ。そもそも、今までは恋愛感情を抱いていなかったとしても、これから抱かないって、どうして言いきれるのかしら?」
「うっ……」
それどころか、逆に納得させられてしまい、言葉がつまってしまう。
「それじゃあ、次いってもいい?魅真姉が愛してる人ランキングの第二位を言うよ」
「いや、待って。もういいです……」
「えぇ?」
今ので疲れた魅真は、フゥ太を制止する。
制止されると、フゥ太は不満そうに口をとがらせた。
「なんか……もう、今ので疲れちゃった。自分でも、自分がよくわからなくなってきたし…」
「あら。よくわからないってことは、やっぱ無意識のうちに好きなのね」
「そうじゃないです。もう、ありえないことで気分が沈んじゃって、心の中が、外で降っている雨みたいになってるってことですよ」
「雨?」
「ぐぴゃ」
「いたっ」
「●△×」
雨という単語が出てくると、急にフゥ太のランキングモードが解けて、宙に浮いていた魅真、ランボ、イーピンは、床に落ちてしまった。
「ど…どうしたの?フゥ太君」
一体どうしたのかとフゥ太の方を見てみると、フゥ太はだるそうに横になっていた。
「たるい。僕、雨に弱いんだ…」
「え…。雨が嫌いなの?」
「うん。だって、ランキングの能力がデタラメになっちゃうんだもの」
「えぇっ!?」
「雨が降ると能力が乱れるのは、ランキング星との交信が乱れるからって説があるんだ」
「そ、そうなんだ。それじゃあ、さっきのはウソなんだね」
デタラメだと言われ、一番に雲雀を愛してるというランキングがウソだとわかった魅真は、顔が明るくなり、ほっとした。
「でも、いつ雨が降ってきたかなんてわからないわよ。もしかしたら、ランキングをしたあとかも…」
「そーだな」
それでも、どうあってもそっちの方にもっていきたいリボーンとビアンキは、そのことを否定する。
「まさか…。そんなことないですよ、絶対に」
けど、二人が言ったことを否定しながらも、魅真は何故かドキドキしていた。
それは、クリスマスやお正月、バレンタインの日に雲雀に家まで送ってもらった時、その時に感じた時よりも、ずっと……。
雨は一体、いつ降ってきたのか…。
それは、天のみぞ知ることである。
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