標的2 屋上での再会
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それから、あの奇怪な事件の記憶も徐々に薄れていき、夏休みがあけた、9月3日の新学期。
並盛中学校に転校してきた魅真は、1-Aのクラスにやってきた。
「えー…。今日このクラスに転校してきた、真田魅真さんだ。みんな、仲良くするんだぞ」
「真田魅真です…。あの……よろしくお願いします」
魅真は担任に、今日から自分のクラスメートとなる生徒達に紹介され、その後に続いて、自分もみんなにあいさつをした。
こうして、魅真の並盛中学校での学校生活がスタートした。
標的2 屋上での再会
「それじゃあ…真田の席は、沢田の隣だな。
沢田、手あげろ」
「あ、はい」
自己紹介が終わると、魅真は担任に席をあてがわれる。
教室の真ん中あたりにいた、沢田という名前の男子生徒は、担任に名前を呼ばれると手をあげた。
「真田、お前の席は、今手をあげた男子生徒の隣だ」
「はい」
そう言われると、魅真は指定された席へと歩いていった。
「よろしく、真田さん」
「うん。こちらこそ、沢田く……
!!」
席につきながらあいさつを交わしていた魅真だったが、彼の顔を見た途端、驚きのあまり目を見開き、思わず立ちあがり、後退った。
「どうした?真田」
魅真がいきなり席を立ったことと、席を立ったことで鳴った椅子の音で、何事かと担任は声をかけた。
そして、担任だけでなく、他の生徒達も、何事かとざわついた。
「あ…いえ…なんでもありません。……すみません…」
転校早々失敗したので、魅真は顔を赤くし、教師はどこか呆れた表情をしており、生徒達は、一部をのぞいて全員笑っていた。
そんな中、魅真は顔を赤くして、身を縮めながら席についた。
「あ、あの…真田さん…。オレの顔に何かついてた?」
「えっ!?な、何も」
それを見ていた沢田綱吉こと通称ツナは、何故魅真に、初対面なのにあのような態度をとられたのかわからず、疑問をぶつけるが、魅真はびくついて誤魔化すだけで、真相を聞くことができなかった。
「そ…そう…。なら…いいんだけど…」
明らかに何かあったという反応だったのだが、理由は言いたくなさそうだったので、ツナはそれ以上は追及することはなく……というより追及できず、何も聞くことはなかった。
とりあえずは終息したが、ただ一人、それをよしとしない者がいた。
「(あンの転校生のヤロ~~…。10代目に対してなんつー無礼な態度を!!許せねぇ!!)」
獄寺隼人である。
獄寺は、初対面にも関わらず、ツナの顔を見て驚いた魅真が気にいらず、始終魅真を睨みつけていた。
「え~…。これから始業式なので、みんな速やかに体育館に移動するように。真田はまだ場所がわからないだろうから、みんなの後に着いていきなさい」
「あ、はい…」
転校したての魅真は、当然体育館の場所は知らないので、ちゃんと行けるか不安そうな顔をしていた。
「真田さん、はぐれたら大変だから、体育館まで一緒に行こうよ」
「え!?い、いいです」
「え…。でもさ…」
「だっ…大丈夫です。他の方の後に着いていきますから。お気遣いなくっ」
「そ、そう…?」
「はい…」
魅真は、ツナと顔を合わせる度に、夏休みのあの時のことを思い出してしまうので、あまり関わりたくないのでなんとか避けようとしてるのだが、ツナは、やはり魅真が転校生で何もわからないだろうから、手をさしのべたが、理由もわからず避けられたので、ショックを受ける以前に、何故そこまで避けられるのか疑問に思っていた。
「おい、テメェ!!」
ツナの誘いを断った魅真は、体育館に行くため廊下に出ようとしたが、突然、獄寺が怒鳴るように声をかけてきた。
名前は言ってなかったが、タイミングと雰囲気から自分だとわかった魅真は、声がした方へ振り向いた。
「きゃっ」
振り向くと、そこには獄寺が立っており、獄寺を目にすると、魅真は小さく悲鳴をあげた。
獄寺の顔が、鬼のように恐ろしい形相をしていたからだ。
「あ、あの……あの……私に…何か…?」
獄寺の表情があまりに怖いので、できれば関わりたくないのだが、それでも声をかけられた以上は無視するわけにもいかないので、勇気をふりしぼって話しかけた。
「何か?じゃねぇ!!テメェ!!10代目の親切を断ってんじゃねーよ!!」
「ひっ」
「ご、獄寺君!」
ツナはそこまで気にしてないのだが、それでもツナを異様に慕ってる獄寺には不愉快極まりないものなので、相手が転校生だというのもお構いなしに、魅真につっかかってきたのだ。
「(何?この人。なんか、この前屋上で会った人と同じくらいやばいよ!)」
そういう人間が苦手な魅真は、今にも泣きだしそうだった。
「聞いてんのか!?」
「ぅ……」
追い討ちをかけるように怒鳴られ、魅真は目尻に涙が浮かんだ。
「よせよ、獄寺」
するとそこへ、一人の男子生徒が魅真と獄寺の間に入り、魅真をかばうように立った。
「まだ転校してきたばかりなのに、かわいそうじゃねーか」
山本武だった。
山本は、少々言いすぎな獄寺に意見したが、獄寺は山本を睨みつけた。
「野球バカ…!」
「この子にも、何か事情があるんだろうから、そんなにガミガミ言わなくてもいいだろ?」
「そ、そうだよ。オレ……そんなに気にしてないからさ」
「じ、10代目!」
まさに鶴の一声という感じで、ツナが止めに入ると、獄寺はあっさりと大人しくなった。
「じゅ、10代目が……そうおっしゃるなら…」
そう言って、あっさりと引き下がっていく。
「(あ~~助かった~)」
「(あ~~怖かった~)」
獄寺の後ろ姿を見て、魅真とツナは、似たようなことを考えていた。
「よっ、大丈夫か?」
「は、はい…。あの……助けてくれて、どうもありがとうございました」
山本はさわやかな笑顔で魅真に話しかけた。それは、魅真を落ち着かせようとか、いい顔をしようといった計算からくるものではなく、自然なものだった。
それを見た魅真も、ほっとして笑顔になり、山本にお礼を言う。
「いいってことよ。あいつも本当は悪い奴じゃねーんだけどな。どうもツナのことになると、熱くなるみてーだ」
「つな?」
「お前の隣の席になった奴だよ」
山本が説明しながらツナを指さすと、それにつられるように、魅真は後ろへ振り返った。
そこには、どこかぎこちない笑顔を浮かべて、へらっと笑うツナがいたが、ツナを見た魅真は山本の後ろに素早く隠れた。
「ははっ。嫌われたな、ツナ」
その様子を見た山本は何故か笑っており、拒絶されたツナ本人はショックを受けた。
「ツナが無理なら、オレと一緒に行くか?体育館」
「へ?」
「まだ、場所わかんねーんだろ?」
「はい…!」
山本のさわやかな笑顔と人柄に安心をした魅真は、山本の誘いを受け入れる。
そのすぐ隣では、ツナは更にショックを受けていた。
「(あの子、転校生のくせにぃ~~~!)」
「(山本君になれなれしくして!)」
「(獄寺君に話しかけられて!)」
「「「「(許せない!)」」」」
後ろから、ほぼ全員と言っていいくらいの、山本と獄寺のファンからの妬みの視線が、魅真の背中に突き刺さっていた。
けど、異性どころかツナ以外の人間に興味がない獄寺と天然な山本、転校してきたばかりの魅真がわかるはずなく、関係のないツナだけが、正体はわからないが、妙な気配に顔を青くしていた。
魅真は山本のおかげで、体育館に無事に行くことができた。
山本は、始業式の最中以外は、とても楽しそうに魅真と話していた。
一方的に自分のことを話すのではなく、相手の話もちゃんと聞いてから返していた。
人懐っこい笑顔を浮かべ、決して声を荒げることはなく、魅真はほっとするのと同時に、山本の人柄の良さにほれこんだ。
始業式が終わり、教室に戻ると、魅真は体育館に案内してくれたことのお礼を言って、自分の席についた。
それから、担任がやって来て、帰りのHPも終わると、魅真は早々と帰路についた。
まるで、クラスメートとの関わりあいを、避けるように…。
「ただいまー」
「お帰り、魅真」
家に着くと、雪乃が台所からやって来て、魅真を出迎えた。
「どうだった?学校は。お友達できた?」
「ううん、まだ全然」
「そう…。まあ、転校初日だものね。きっと今に、いいお友達ができるわ」
「…うん」
はげまし、笑顔で話す雪乃に、魅真もぎこちなさそうに笑顔を返した。
「じゃあ私、しばらく部屋にいるから…」
「そう。母さんは台所にいるから、何かあったら言いなさいね」
「わかった」
魅真は頷くと、静かに自分の部屋へ行った。
部屋に入ると、静かに扉を閉め、カバンを適当に床に置くと、ベッドの上に力なく倒れる。
「はあ……。今日はなんだか疲れたな…」
転校初日にして、いろいろとストレスを感じた魅真は、ため息をつきながらうつぶせになっていた。
「夏休みの時の悪夢の人が同じクラスにいるだけでなく、隣の席だし…」
実は、一番のストレスの原因であるツナのことを思い出し、更に深いため息をつく。
「しかも、目つきが悪い、やばい人も同じクラスにいるし…。やっぱり、あの人も不良かな?嫌だな~…。せっかく、今度はうまくやろうと思ってたのに…」
次に獄寺のことを思い出すと、ツナの時以上に重く深いため息をつく。
「だけど、私をかばってくれたあの人はよかったな。優しいし、親切だし。ああいう人と、友達になりたいな…」
けど、その次に山本のことを思い出すと、明るい顔になる。
「だけど、問題は山積みだわ。体育館から戻ってきたら、何故か、やたらと女の子の視線が痛かったし…。なんでだろう?女の子の友達もほしいのに…。なんだか話しかけにくいな。
それに不良の人が一人いるし、悪夢の人が隣の席だし、女の子達の視線は痛いし、しかも、あの時会ったやばい人も、この学校にいるし…。こんなことで、これから本当にやっていけるのかな…」
今日あったことを思い出してると、先行き不安という感じで、表情を曇らせる。
「しっかしあの女、本当にムカつきますよね」
同時刻、ツナ、獄寺、山本は三人一緒に家に帰っており、その途中で、獄寺が、魅真について文句を言っていた。
「え…。あの女って、真田さんのこと?」
「そうですよ。あいつ、せっかくの10代目のご好意をムゲにしたんですよ。許せません!」
「だ…だから、オレはそんなこと気にしてないよ。(なんか怖ぇ~よ~!)」
怒鳴るように話し、その上目が血走ってる獄寺に、ツナはびびり、萎縮してしまった。
「しかしですね、10代目!!あの女、10代目のご好意をムゲにするだけでなく、こともあろうに10代目を、初対面なのに、まるで異業のものを見るような目で見ていたんですよ。10代目の右腕として、許すわけにはまいりません!」
「それに関してはオレも不思議に思ったし、理由とかすごい気になるけど…。でも…真田さんは、そんな悪い子じゃないと思うよ」
「そうだぜ獄寺。あの子、話してみたら結構いい子だったぞ」
「うん。そんな、故意に人を傷つける子じゃないと思う」
「10代目まで……」
山本だけでなく、ツナまでも魅真の味方をしてきたので、獄寺は少し落ちこんだ。
「ま、今は転校してきたばっかだから、仕方ねーよ。そのうち、仲良くなれるって」
「ケッ。オレは、絶対にあんな女なんかと、仲良くなんねーかんな!」
「そうか?オレは仲良くしたいけどな…」
「オレも」
「じゅ、10代目ぇ…」
山本はともかく、自分が敬愛するツナが、自分と反対のことを言った(山本に賛同した)ので、獄寺はショックを受けた。
そして次の日…。
「よっ、おはよ」
「あ……おはようございます…」
登校し、教室に入り、自分の席につこうとすると、後ろから声をかけられた。
いきなり話しかけられたのでびっくりしたが、相手が山本だったのでほっとして、どこかぎこちない笑顔であいさつをした。
「そういや、自己紹介してなかったな。オレは山本武ってんだ。よろしくな」
「真田魅真です。よ…よろしく、山本君」
「おう」
山本が人のいい笑顔でニカッと笑えば、魅真もさっきよりはぎこちなさがなくなった笑顔で返した。
「(やったぁ~~。この人から話しかけてくれるなんて、ラッキー。この人ならお友達になれるかも)」
山本を、並中でのお友達第1号にしようと決意し、今度は自分から話しかけようとした時だった。
「おはよー、山本」
「おう、ツナ、獄寺。おはよ」
そこへ、魅真の苦手な人物(ツナと獄寺)が、二人もそろってやって来てしまった。
二人の姿を見た魅真は、山本と接したことでほぐれていた緊張が、一瞬にして、一気に高まった。
「あ、真田さんもいたんだね。おはよう」
「え!?あ…………お……おは……おはよ…」
ツナは、身長が高い山本の影に隠れて見えなかった魅真を見つけると、笑顔であいさつをするのだが、魅真はツナと顔を合わせず、下を向きながら、小さな声で返した。
笑顔をつくる余裕はなく、緊張してるのが、見てわかるくらいだった。
「オイ、テメェ!!10代目に対して、なんつー無礼な態度だ!!果たすぞ、コラァ!!」
「きゃあっ!」
魅真のツナに対する態度が気にいらなかった獄寺は、いきなり、魅真に食ってかかった。
突然のことに、魅真は短い悲鳴をあげる。
「昨日から、10代目に対して、無礼な態度ばかりとりやがって!!気にいらねーんだよ!!」
「きゃあーーー!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「ごめんですむか!!」
とにかく魅真の全てが気にいらない獄寺は、魅真が謝っても怒りが収まることはなく、逆にますます燃えており、そんな獄寺に怒鳴られると魅真は山本の後ろに隠れた。
「あっ、テメッ!」
「まーまー、獄寺。落ちつけよ」
「落ちつけるか!つーか、オメェはひっこんでろ、野球バカ!」
山本は魅真をかばい、なんとか獄寺をなだめるが、まったく落ちつく気配はなかった。
「獄寺君、落ちつこうよ。オレは別にいいからさ」
「10代目っ…。…わかりました…」
しかし、ツナになだめられたことであっさりと落ちついた。
「ケッ。10代目に感謝するんだな」
そして、悪態をつくと、怒りを露にしたまま、自分の席に行った。
「大丈夫か?真田」
「はい、一応……」
「ははっ、正直なのな。
昨日も話した通り、あいつも悪い奴じゃねーんだ。そのうち仲良くできるさ」
「(え…。それじゃあ山本君は、あの怖い獄寺って人と仲いいの!?すごすぎるよ。私は………絶対に無理だわ)」
「どうしたんだ?」
「へ?あ……いや……なんでも……」
「心配ねーって。まだ転校2日目じゃねーか。そのうち、みんなと仲良くできるって」
そう言って笑いながら、山本は魅真の頭をなでた。
魅真はそれに安心し、安心感から、少しだけ笑顔になった。
しかしそれが原因で、山本のファンは、魅真に嫉妬の炎を燃やしていた。
だが、魅真はそれに気づくことはなく、山本と話していた。
それから魅真は、休み時間になると、はずかしそうにしながらも、なんとか勇気をふりしぼって女子達に話しかけようとするが、獄寺ファンと山本ファンの子達に避けられてしまった。
理由は言わずもがなといった感じであるが、そんなことは転校してきたばかりの魅真にはわからないので、魅真は何故自分が避けられているのかわからず、不思議に思うばかりだった。
最初は積極的に話しかけようとしていた魅真だが、もともとはそんな積極的な性格ではなく、その上人見知りで内気でひっこみ思案なところがあるので、昼休みをすぎると、次第に話しかけなくなっていった。
そんなこんなで、次の日の昼休み…。
「はぁあ~~~あ…」
魅真は、お昼ご飯を食べるために一人屋上まで来ており、心底疲れきった様子で、柵に両腕をのせて、深いため息をついていた。
「(なんで、うまくいかないんだろう…。そりゃあ、半分は、私が途中で諦めちゃったからなんだけど…。
でも……女の子達は、なんか私に冷たいし…。私は彼女達に、何かした覚えないし。というよりも、何かしようがないし!(話しかけても、全然返事をしないから)
それなのに、なんであんなに無視されちゃうんだろう?)」
魅真は考えごとをすると、もう一度、深いため息をついて、頭をふせた。
「…やっぱり私には、友達をつくるなんて、最初から無理だったのかな…」
そして、誰に言うでもなく小さくつぶやいた。
「君……そこで一体何してるの?」
その時、後ろから、一人の男の声が聞こえてきた。
それは、どこか聞き覚えのあるものだった。
まだ引っ越してきて間もなく、この学校で聞き覚えのある男の声といえば限られているので、とてつもなく嫌な予感がした。
魅真は嫌な予感がしながらも、変な汗をかきながら、おそるおそる後ろへ振り返る。
「!
あ、あなたは…!!」
そこにいたのは、自分がこの学校に来て、初めて出会った男子生徒…。
ここ(並盛町)に来てから、魅真の中でもっとも苦手となった人物……雲雀恭弥だった。
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