標的14 お見舞い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
母の雪乃が倒れてから数日後。魅真は並盛病院に、雪乃のお見舞いに来ていた。
「ごめんなさいね。突然倒れたりして」
病室では雪乃が、申し訳なさそうな顔で、魅真に謝罪をしていた。
「それ、もう何回も聞いたわ」
「けど……」
「いいのよ。一人暮らしの気分が、いち早く味わえるから。それに、そんなことを言うんだったら、早く治して退院してよね」
「…わかったわ」
魅真の、まったく気にしてない言葉や態度に、雪乃はクスッと笑った。
標的14 お見舞い
それから、一時間ほど談笑すると、魅真は病室から退室した。
「あれ?」
「あ……」
帰る時、魅真は偶然にも草壁と遭遇した。
「草壁さん」
「真田」
顔見知りが偶然にも同じ場所にいて、偶然にも鉢合わせたので、目を丸くして驚いた。
「どうしたんですか?こんなところで」
「真田こそ」
「私は、母が倒れて入院したのでお見舞いに来たんです」
「そうか、大変だな。オレは、委員長が入院されたので、必要なものを持ってきたんだ」
「え!?入院?雲雀さんがですか!?」
草壁の口から意外な言葉が出たので、魅真はすごく驚いた。
「(雲雀さんて、どちらかというと、入院する方じゃなくて、入院させる方だと思うんだけどな…)
一体、何が原因で入院したんですか?」
「風邪をこじらせたんだそうだ」
「風邪!?」
入院した理由が、ただ単に風邪をこじらせただけと知り、魅真は更に驚く。
「真田も、一度見舞ってきたらどうだ?」
「わ、私がですか?でも、雲雀さんて群れるのが嫌いですから、私がお見舞いに行っても嫌がるだけなんじゃ…」
「そんなことないだろう。恋人である真田がお見舞いに行けば、委員長もきっと喜ばれる」
「(だから違うのに…)」
完璧に誤解なのだが、もう反論する気にもなれず、魅真はため息をついた。
魅真は今、母が入院している病室とは別の病室にいた。
そこは、雲雀が入院している病室で、魅真は草壁に押され、結局雲雀のお見舞いに来たのだった。
入るのをためらっていた魅真だったが、意を決して中に入るため、扉をノックしようとした時だった。
「うわあああああ!!」
「ぎゃあああああ!!」
突然、病院では聞くはずのない断末魔の叫び声が、病室の中から聞こえてきた。
「な、何事!?」
当然、魅真は今の声にびっくりした。
「し、失礼しま~す…」
叫び声を聞いて、中に入るのを更にためらったが、ノックをすると、そ~っと扉を開け、おそるおそる中を見た。
「!!
きゃあああああ!!」
中に入り、その中にあるものを見ると、魅真は思わず絶叫した。
何故なら、そこにはボコボコに殴られた男が二人、気絶して倒れてたからだ。
「な!ななっ……な、何?この状況。一体何があったの…」
病院ではあり得ないこの状況に、魅真は顔が青ざめ、引いてしまった。
「なんだ、真田か……」
倒れてる男の奥にベッドがあり、そこには雲雀が腰かけて、悠々と読書をしていた。
今更ながら、入らなければよかったと後悔する魅真だった。
「ひ、雲雀さん!あ、あの……この惨状は…一体……」
「ゲームだよ」
「ゲーム…ですか?」
「そう。相部屋になった人は、ゲームに参加してもらってるんだ。ルールは簡単。僕が寝ている間に物音をたてたら……咬み殺す…!」
「(どこからつっこめば…?) それって…拒否権は?」
「そんなもの、あるわけないだろう」
「で…ですよね…」
相変わらずムチャクチャな雲雀に、魅真はげんなりとしながらもどこかなれた様子で、また、自分が強制参加させられるわけではなさそうなのでほっとしていた。
その時、閉めたはずの部屋の扉が開いたので、魅真は後ろへ振り返った。
「ツナ君!?」
「やあ」
「ヒバリさん!!それに、魅真ちゃんも!!うそーー!!?え!?なんで病院に!!!」
「カゼをこじらせてね」
「私は……お母さんのお見舞いに」
「あ…そうなんだ」
「退屈しのぎにゲームをしてたんだが、みんな弱くて…」
「んなーー!!!(何があったのー!!!)」
当然のことながら、ツナもこの惨状に、魅真と同じように悲鳴をあげ、心の中で同じことを考えていた。
「相部屋になった人には、ゲームに参加してもらってるんだよ。ルールは簡単だ。
僕が寝ている間に、物音をたてたら
咬み殺す」
説明をしながら、言ってることが本気だということを示すように、トンファーを構えた。
「一方的ーーっ!!?ってか、病院じゃありえない状況だーーーーーーーー!!!」
「そ、そうだよね。やっぱり…」
ツナが言う通り、病院ではありえない状況に、魅真も同意した。
ツナは骨折してここの病院に入院してきたのだが、看護師から因縁をつけられ、部屋を移動するように言われ、この部屋に来たのである。
しかし、この悲惨な状況を見て、この部屋にいるくらいなら、家の方がマシだと考えた。
「あ、あの僕、もうすっかりよくなったんで、たっ…退院します!!」
「(そうだよね。やっぱり、誰だってそう思うよね)」
「だめだよ。医師の許可がなくちゃ」
「!!?」
そう思ったツナは、ここから一刻も早く去ろうとしたのだが、後ろから医師の男が現れて釘をさした。
「やあ、院長」
「え゙、いんちょー!!?」
「こうして、安心して病院を運営できるのもヒバリ君のおかげ。生贄でもなんでも、なんなりとお申しつけください」
「(病院ぐるみーー!!!)」
「(お医者さんまで!?一体何やってんの?この人!!)」
腰を折りまげてキレイにおじぎをする院長を見て、大人までもが雲雀に従い、しかもこびている様子に、魅真はますます雲雀に対しての謎が深まり、ツナはこの部屋の移動は病院ぐるみだったことにショックを受けていた。
「じゃあ、そろそろ寝るよ。ちなみに僕は、葉が落ちる音でも目を覚ますから」
「なっ」
雲雀はマイペースにも、ゲームを始めるためにベッドに横になった。
「では、失礼します」
「えっ、うそ!!ゲームスタート!?(マジスか~~!!!)」
更に、院長が退室したことでゲームがスタートしてしまったために、ツナは顔が青ざめた。
血の気が引いた状態でいると、閉まったはずの扉が開き、何かと思って振り向いてみると、そこには、ツナの家に居候しているイーピンがいた。
それだけでなく、同じく居候しているランボが来た。
ランボはウザイとさわがしいの代名詞なので、これだと雲雀が起きてぼこぼこにされてしまうため、ツナは余計に青ざめる。
「(あれ?この子って確か……)」
ランボがやって来ると、魅真は穴があくくらいに、ランボを凝視した。
「ガハ…んむむ」
さっそくさわごうとするランボだが、ツナは素早くランボの口を押さえて、さわがないようにジェスチャーをする。
ランボはその意味がわかったのか、指で合図を送った。
「どかん?」
だが、ランボは勘違いをして、手榴弾を取り出して安全ピンを抜いた。
魅真には、ランボがツナに隠れていて見えていないので、状況がつかめていないが、目の前に手榴弾を見せられたツナは、慌ててランボを外につれていき、病室から離れた窓から外に投げて、爆発させた。
「(な、何?今の…)」
すごい音がしたが、何が起こってるのかさっぱりわからない魅真は、その音を疑問に思った。
廊下ではツナがさわいでいるが、それすらもわからない状況である。
「(ん?)」
何気なく、扉の方を見てみると、そこにはイーピンが何もせずただ立っていたので、ふしぎに思った魅真が声をかけようとした時、戻ってきたツナがイーピンをつれていき、先程と同じように、窓から投げて爆発させた。
「(な…なんだったの?今のは…。あと、その後に起こった轟音も…)」
さすがに2回も立て続けに爆音が響いたので、気になった魅真は、ツナの様子を見るため、外に出ていった。
「はあ…疲れた…」
「ツナ君」
「あ、魅真ちゃん」
廊下に出て、爆音がした方へ歩いていくと、途中でツナに出くわした。
「ツナ君、一体何があったの?」
「え?いや……なんでも…」
「そうなんだ。とりあえず、何事もなくてよかったね」
「うん」
「あ、疲れたでしょ。私、売店に行って飲み物買ってくるよ。待ってて」
「え?別にオレ…………行っちゃった…」
遠慮がちに声をかけるが、魅真は話を聞かずに行ってしまい、ツナは仕方なしに、部屋に戻ろうと、部屋がある方へ顔を向ける。
だがその時、目の前に雲雀の顔があったので、ツナは顔が青ざめ、心拍数が尋常でないくらいに早くなった。
運が悪いことに、雲雀はイーピンの時の爆発音で、目を覚ましてしまったのだ。
その後ツナは、雲雀によってボコボコにされ、ケガが増えてしまった。
ちなみに、雲雀はツナを殴るだけ殴ると自分の病室に戻っていき、売店に行ったことで難を逃れた魅真は、廊下で倒れているツナを見てびっくりしたが、看護師を呼んでなんとかしてもらうと、雲雀の病室へ戻ったのだった。
「(ツナ君…大丈夫かな?色々と大変だな…)」
ツナをみつけた時の惨状を思いだし、もしタイミングがずれていたら、自分もああなってたかもしれないと想像すると顔が青くなり、身震いした。
「ぅ……」
考え事をしていると、隣から小さなうめき声が聞こえてきたので、魅真は隣を見た。
そこには、寝てはいるが、風邪が悪化したのか苦しそうに顔を歪めている雲雀がいた。
そんな雲雀を見ると、魅真はぬれタオルを雲雀にのせようと思い、床頭台に置いてある洗面器でタオルをぬらすと、雲雀のおでこにのせようとした。
「!?」
すると、いきなり雲雀に手をつかまれ、下にひっぱられた。
「(え…?えぇええええぇええっ!?)」
それはまさに、雲雀の上に覆いかぶさってる状態なので、魅真は顔を真っ赤にして固まる。
「あ……の………ヒ……バリ……さん…?」
体と体が密着し、服ごしにではあるが、雲雀の体温のあたたかさを感じ、そのことで魅真は顔が真っ赤になり、心臓がとび出そうなくらいにドキドキしていた。
その時間は、実際にはそんなに長くはないのだが、とても長く感じ、状態が状態なだけに、硬直してしまっていた。
「(何この状況?なんでこうなってんの?)」
それだけでなく、もうパニック状態で、心臓が爆発しそうになっていた。
「ねえ…」
その時、耳元で雲雀の声がしたのでふりむいてみた。
「!!」
ふりむいてみると、そこには不機嫌な雲雀がいたので、魅真は別の意味で固まってしまう。
「何勝手に、人の上に乗ってるの?一体なんのつもり…?」
「なっ!!そ…それはっ……ひ、雲雀さんが勝手に…」
魅真は誤解をとこうとしたが、雲雀は聞く耳もたずで、上半身だけ起き上がると、床頭台に置いていたトンファーを素早くつかみ、魅真を押し倒して、威嚇するように魅真の喉もとにあてた。
ひんやりとした鉄の冷たさに、魅真は顔が青ざめ、体をわずかに震わせた。
「僕に気安くふれないでくれる?もし………今度こんなことすれば、その時は容赦なく……
咬み殺す!!!」
脅しをかけられれば、魅真はますます震え、動かない体に指令を送ってなんとかベッドの上からどくと、雲雀はまた眠りについた。
魅真は脅されたものの、体が動かないというのもあり、その後もしばらくその部屋にいた。
脅され………首にトンファーをあてられたというのに……先程の、雲雀の上に覆いかぶさった時のことをずっと考えていた魅真は、青かった顔色が再び真っ赤になり、少しだけ心臓がどきどきしていた。
.