標的13 ガールフレンズ
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武器を持って以来、魅真は、今までやらなくてもいいと言われていた、見回りもすることになった。
………というより、やらなくてはいけなくなった。
そのことを最初に言われた時、何故かと問うたのだが、雲雀は、魅真が武器を持つようになったからなのだと、あっさりと言い放った。
何故だか妙に納得してしまった上、それ以上言い返す能力がない魅真は、渋々ではあるが、並盛の見回りを始めたのである。
そして、見回りを始めてから、何日か経ったある日のことだった…。
「あの……放してください」
「いいじゃねーか。ちょっと付き合えよ」
「ん?」
目の前で並中生が、いかにもチャラい感じの、並中生ではない、二人の男子生徒に絡まれていた。
タチの悪いケンカではないのだが、タチの悪いナンパだったので、魅真は困り、その場に立ち止まった。
この手の軽いナンパをする奴にはろくな思い出がないため、できれば素通りをしたかったのだが、立場上そんなわけにもいかず、勇気を出して歩きだした。
「ちょっとあなた達!」
「あ?」
彼らの前まで行くと、注意をするべく、声を大きく張り上げた。
「その子、嫌がってるじゃない。その子から手を放しなさい!」
内心、心臓がドキドキしてるが、それでも勇気をふりしぼった。
「なんだ?この女……
お、おい!こいつもかわいいじゃねーか!」
最初、魅真の方に振り向くまでは、ドスのきいた声でメンチを切っていたが、魅真を見た途端に目の色を変えて叫んだ。
そのことに、魅真はビクッとなり、嫌な汗をかいた。
「ちょうどいい。お前にも付き合ってもらおうか」
嫌な展開になったので、魅真は顔をひきつらせた。
「おい、ちょっと待て」
しかし、一体どうしようかと打開策を考えていると、もう一人の男が、何故か魅真をナンパした男を止める。
「んだよ?」
「こいつ……並中風紀委員長・雲雀恭弥の女じゃねーか!?」
「何ィ!?」
男が止めたのは、このことだった。
突然出てきた単語に、魅真は目が点になった。
並中以外の人間の口から、雲雀恭弥の女という単語が出てきたからだ。
「間違いねーよ。この制服は、並中風紀委員専用の制服だし、何より並中風紀委員の腕章をしてやがる。しかも、雲雀恭弥の女は風紀委員にいて、風紀委員に女は一人しかいないと聞いたぜ。
ということは………」
「じ……じゃあ、やっぱりこいつ……」
「ああ……」
二人の男は、とんでもない相手をナンパしてしまったと後悔をし、顔が青ざめていった。
「すっ!すんませんでしたぁあああ!!」
「どうかっ…!どうか、ヒバリさんには言わないでくださいぃいいいい!!」
男達は、涙を流しながら、脱兎の如く逃げ出した。
「(なんか……思いっきり誤解されてるし、この噂が真実味を増して周りに流れると思うと、なんかすっごく嫌だけど…。けど……とりあえず今日は、ある意味雲雀さんのおかげで助かったかも…)」
経緯はどうあれ一応助かったので、魅真は憂鬱になりながらも、彼らが退散したことにほっとしていた。
「大丈夫ですか?」
男達が見えなくなると、魅真は後ろへ振り向いて、絡まれていた女子生徒に声をかける。
「はい。助けてくれて、ありがとうございました」
「い、いいのよ…。(なんにもしてないし…)」
「あれ?」
魅真の顔が見えると、相手は目を見開いた。
「あなた、ひょっとして真田魅真ちゃん?」
しかも、魅真の名前を知っていたのだ。
「真田魅真ちゃんでしょ?2学期の初めに、1-Aに転校してきた」
「そう…だけど…。えと……あなたは?」
「あ、ごめんね突然」
自分は魅真を知っているのだが、魅真は自分を知らないようだったので、少しあわてだした。
「私、笹川京子!魅真ちゃんと同じ、1-Aよ」
それは、クラスメートであり、ツナのマドンナでもある、笹川京子だった。
標的13 ガールフレンズ
それから魅真は、京子に連れられて、商店街までやって来た。
「お待たせしました」
その一角にある、ラ・ナミモリーヌという京子お気に入りのケーキ屋さんに二人はおり、カフェにすわっていると、注文したケーキと紅茶が、魅真と京子の前に置かれた。
「あの……笹川さん。本当にいいの?」
「もちろんよ。だって、私を助けてくれたんだもの。どんどん食べて」
「で、でも……」
ナミモリーヌにいるのは、京子が魅真に、先程のお礼をするためだった。
けど、魅真にとって今の状況は、とても心苦しいものだった。
自分自身の力で、あの男達をおっぱらったわけではないし、ただナンパ男をおっぱらっただけでケーキをおごってもらうなど、申し訳なかったからだった。
「魅真ちゃん、ケーキ嫌いだった?」
煮えきらない魅真に不安になった京子は、眉をさげて上目づかいで魅真を見た。
「え?あ、いや……そんなことないよ。えっと……それじゃあ、せっかくだからいただこうかな…」
心苦しいのだが、せっかく好意でおごってもらっているのに、断って、それで京子が悲しそうな顔になり、それを見るのはもっと心苦しいので、魅真は京子の好意に甘えることにした。
魅真が答えると、京子は明るくなり、うれしそうな顔になる。
魅真は目の前に置いてあるいちごのショートケーキを、フォークで一口大に切り、それをフォークでさすと、口の中に入れた。
「わあ…おいしい!」
「本当?」
ケーキのおいしさに、魅真は顔をほころばせ、京子もまた、魅真の反応に顔をほころばせた。
「うん。こんなにおいしいケーキを食べたのは初めてよ」
「よかったぁ…。あ、このお店、私の行きつけのお店なのよ。どのケーキもおいしいの」
「そうなんだ。じゃあ、今度また行ってみようかな…」
「それじゃあ、今度一緒に行かない?私、月に一度、ケーキをいっぱい食べるって決めてるから、その日は必ず来るのよ」
「え…。いいの?」
「もちろんよ。一緒に行きましょう!」
にこっと笑う京子に、魅真の顔も明るくなり、笑顔を返した。
次の日…。
武器を持って以来、教室に行けない日が続いていた魅真だが、その日は久しぶりに教室に来ていた。
魅真はかなりの上機嫌で、うきうきしているのが目に見えてわかるくらい満面の笑顔だったので、いつもと違う様子の魅真を近くで見ていたツナ、獄寺、山本は、何事かと思った。
「あの…魅真ちゃん…」
この時の魅真は、暗い雰囲気ではないが、どこか話しかけにくい雰囲気だった。
けど、一体何があったのか気になったツナは、魅真のもとへ行って話しかけた。
「なに?ツナ君」
「あ……いや……なんか、すごくうれしそうだから、何かあったのかなって思ってさ…」
「あ!わかる?」
「(そりゃわかるよ…)」
周りから見れば、何かあったと一目瞭然なのだが、本人は隠しているつもりだったらしい。
「実はね、ツナ君達以外にも、友達ができたのよ」
「えぇ!?」
「しかも、念願の女の子の友達なのよ。しかも同じクラスの子なの!」
「え…。誰?」
「えへへ、それはね」
「魅真ちゃーん」
魅真が、その新しくできたという友達の名前を言おうとした時、途中で魅真の名前を呼ぶ者がいた。
「あ、京子ちゃん」
「え?京子ちゃん!?」
魅真を呼んだのは京子で、京子が来ると、魅真はうれしそうな顔になり、ツナは顔を真っ赤にした。
「魅真ちゃん、今日一緒に帰ろうよ」
「うん、いいよ」
いつの間にか距離が近くなっている魅真と京子に、ツナは驚き、口をあけて固まった。
「あの……ひょっとして、新しくできた、魅真ちゃんの友達って…」
「そう、京子ちゃんよ。ツナ君……京子ちゃんと仲いいの?」
「え?ま、まあ…」
「そうなんだ。うれしい!私の大好きな人と新しい友達が仲良しなんて。
ねえ、今度みんなで一緒に遊ばない?」
「う…うん。いいよ」
「私もいいわよ」
「よかったぁ」
自分のワガママを二人が了承してくれたので、魅真はうれしそうに顔をほころばせた。
「あ、そうだ。ねえ、魅真ちゃん」
京子は、急に何かを思い出したように、魅真に声をかける。
「何?」
「今日の帰り、私んちに遊びに来ない?」
「本当?いいの?」
「もちろん」
「ありがとう。絶対に行くわ」
京子がにこっと笑うと、魅真はますます明るくなり、笑顔でお礼を言う。
そして、京子に笑顔を返すと、魅真は教室の外へ出るべく、扉がある方へ向かおうとした。
「あれ?魅真ちゃん、どこに行くの?」
これから授業があるというのに、何故教室から出ようとするのかふしぎに思ったツナは、魅真に問いかける。
「応接室よ。京子ちゃんちに行くために、今日の仕事を片付けておこうと思ってね」
ツナの問いに答えると、教室から出ていき、うれしそうに応接室に向かっていった。
それから魅真は応接室に行くと、京子の家に遊びに行くため、その日の自分の仕事を片付けてしまおうと、はりきって仕事をしていた。
「(京子ちゃんの家に遊びに行ける。夢にまで見た、女の子の友達の家に、お宅訪問!)」
そんな魅真を見ていた雲雀は、いつもよりはりきっている上、満面の笑顔を浮かべながら仕事をしているので、怪訝な目を向けていた。
しかし魅真は、雲雀を気にすることなく、いつもよりも早く仕事を進めていた。
雲雀は、いつもと違う魅真を見て、一体何があったのかとふしぎに思っていたのだが、もともとあまり人に干渉しないのもあり、今の魅真を不気味に思いながらも、声をかけず、自分は自分で仕事をしていた。
授業時間をけずり、いつもよりも早いスピードで仕事をやっていたからか、魅真はあっという間に仕事を終わらせた。
そして教室に戻り、荷物を取りにいくと同時に京子と待ち合わせ、ツナ達に軽くあいさつをすると、うれしそうな顔で京子と一緒に帰っていった。
二人で他愛のない話をしながら、京子宅までの道のりを歩いている時も、魅真は幸せそうに笑っていたが、女の子の友達ができたことが、未だに信じられずにいた。
だが、やはりうれしいものはうれしいので、今の幸せを噛み締めていた。
それから20分ほど歩いていくと、あっという間に京子の家についた。
「ここが京子ちゃんのおうち?」
「そうよ。さあ、あがって」
「ありがとう。おじゃましまーす」
京子に中に入るように促されると、魅真は笹川家の中に、足を踏み入れた。
家に上がると、京子は2階の自分の部屋まで魅真を案内する。
「今、お母さんいないみたいだから、お茶持ってくるわ。適当にすわって待っててね」
「うん、わかったわ。わざわざありがとう」
京子は一言断ると、また1階へ降りていき、魅真はテーブルの前にすわった。
「(ここが京子ちゃんのお部屋かあ。かわいい部屋だな)」
シンプルだが、女の子らしく綺麗に片づけられた部屋を、魅真はその場にすわったまま見回していた。
その時、部屋の扉が開く音がした。
お茶を持ってくるにしては早かったが、部屋に入ってきたので、この部屋の主である京子だろうと思い、扉がある方へ振り向いた。
「あ、京子ちゃん。おかえりなさ………
!」
しかし、そこにいたのは京子ではなかった。
「(こっ………この人は……あの……体育祭ではりきってた怖い人!)」
そこに立っていたのは、京子ではなく、京子の兄の了平だった。
了平は、自分の中では苦手な部類の人間に属するので、魅真は固まってしまった。
「む?なんだお前は?」
「え?えと……私は……真田魅真といいまして……京子ちゃんの……」
「何ィ?真田魅真だと!?」
「は、はい!」
「そうか…お前が…」
いきなり、自分の名前を大きな声で、怒鳴るように呼んできたので、魅真はびくついた。
「お前のことは、京子から話を聞いている。この前、京子を助けてくれたそうだな。礼を言うぞ」
「え?あ…あの……あなたは、京子ちゃんとはどのような……」
「オレか?オレは京子の兄だぞ」
「えぇ!?きょ、京子ちゃんのお兄さん!?」
まさか、この苦手な部類の人間が京子の兄とは思わなかった魅真は、いろいろな意味でショックを受けた。
「(に、似てないなあ…。本当にこの人が、京子ちゃんのお兄さん?)」
兄妹だと言われても信じられず、疑いの眼差しで凝視していた。
「ところで、お前は京子の友達か?」
「は、はい。つい最近なったんですけど、京子ちゃんには、本当によくしてもらって…」
「そうか。これからも、京子をよろしくな」
「はい!」
先程の怖い雰囲気はなくなり、ほのかに笑う了平に、魅真は少しほっとした。
「そういえばお前、なんか見たことあるな」
「今更ですか!?」
体育祭の時に、会って話したはずなのに。しかもそんなに前ではないというのに、すでに忘れられていたので、魅真は思わずつっこんだ。
「では、改めてあいさつしよう。
オレの名は笹川了平。
座右の銘は…極限!!」
「(あ、熱い…!)」
バックに炎が見えるのではないかというくらい熱い了平に、魅真は少し引き気味になった。
「ところで真田…」
「な…なんでしょう?」
だけど、またすぐに重苦しい雰囲気になったので、魅真は身構えてしまう。
「お前、ボクシング部に入らないか?」
「……は…?」
いきなり、男子しか入れない部活に勧誘されたので、魅真はすっとんきょうな声をあげた。
「あの……センパイ、何故ボクシング部なんでしょうか?」
「それは、オレがボクシング部だからだ」
「い、いえ……そうではなくて…」
了平は真剣そのものだったが、どこかずれた答えなので、魅真は脱力する。
「ボクシング部って、男子しか入れないんですよね。私、女なんですけど…」
「お前、風紀委員の人間だな。うわさは知ってるぞ」
「う、うわさ?」
了平はボクシングの話をしていたのに、いきなり別の話題をふってきた。
「風紀委員」と「うわさ」という単語を聞き、魅真は嫌な予感しかしなかった。
「ああ。並中の風紀を守るために、戦いの特訓を始めたとか。もともと才能があったから、すぐに強くなって、熊やヤクザまでも倒してしまったとか。怒るとレーザービームを出して、敵を倒してしまうとか!」
「どんなうわさですか!」
合ってるのは最初の戦いの特訓を始めたという部分だけで(しかも並中の風紀を守るためではない)、あとは学校内でも少しもささやかれていなかった……というより、まず人間では絶対にあり得ないことを言う了平に、魅真は強くつっこんだ。
「とにかく、とても強く、熱い奴だと聞いている!というわけで、ボクシング部に入れ、真田魅真!」
「うわさ違いです!というか、さっきも言いましたが、私は女ですから、ボクシングなんて無理です!」
「そんなものは関係ない!!ボクシングへの愛さえあれば、男でも女でも、誰でも入部大歓迎だ!!」
「え…えぇ~…」
何を言っても、引きさがるどころか逆に押してきたので、魅真は困りはてた。
「お兄ちゃん?」
そこへ、京子がお茶を持って戻ってきた。
「京子」
「京子ちゃん」
京子が戻ってきたことで魅真はほっとし、天の助けとばかりに、京子の名前を呼んだ。
「なんでお兄ちゃんが、私の部屋にいるの?」
「おぉ、お前に借りていた辞書を返そうと思ってな。そしたら、お前の友達がいたので、ボクシング部に勧誘していたのだ」
「ボクシング?魅真ちゃんは女の子よ」
「それはわかっておる。しかし、男とか女とかそんなものは関係ない!ボクシングへの愛さえあれば、誰でもできる!」
「もぉーーー、やめてよ。男の子ならいざ知らず、女の子にまで。もう、用事が終わったんなら出てってよ」
女の魅真にまでボクシング部に勧誘していた事実を知り、京子ははずかしさのあまり、顔を赤くして怒った。
「スマンスマン。
お、そうだ。これをお前にやろう」
謝ると、京子が持っているトレーの上に、クッキーの袋を置いた。
「クッキー?」
「コンビニで売ってたやつだけどな。でも、すごくうまいぞ。友達と一緒に食べてみろ」
「わあ…。ありがとう、お兄ちゃん」
「ありがとうございます、センパイ」
「おう、じゃあな」
今までの怒りはどこへ行ったのか?クッキーをもらったことで京子の機嫌は直り、笑顔で了平に礼を言った。
「(この人、ムチャクチャなところはあるけど、前に武君が言ってた通り、悪い人じゃないのかも…)」
魅真の方は、了平に対する誤解がとけ、京子と了平のやりとりを微笑ましそうに見ていた。
それから魅真と京子は、二人だけになると、ガールズトークを始めた。
ファッションや学校の話など、ごく普通の女子中学生の話を飽きることなく話していった。
そして、あっという間に夕方となり、帰る時間になると魅真は、次の日曜日に、京子と一緒にナミモリーヌに行くという約束をして、家に帰るために玄関まで降りていき、くつをはいた。
「じゃあね、魅真ちゃん。また来てね」
「うん、ありがとう。ぜひまた行かせてもらうわ。今度は、私の家にも遊びに来てね」
玄関には京子が見送りに来ていて、わかれのあいさつをしていた。
「もちろんよ。ぜひ行かせてね」
「絶対に来てね。バイバーイ」
「うん!とりあえず、今度は日曜日にね」
「わかった。それじゃあねー」
お互いに約束をすると、魅真は京子に手をふって帰路についた。
そして日曜日…。
「はじめまして!緑女子中の、三浦ハルっていいまーす!」
この日魅真は、京子と一緒にナミモリーヌに来ていた。
そこには、学校は違うが京子の親友の三浦ハルがいて、魅真と会うなり元気よくあいさつをすると、あまりの元気のよさに、魅真は圧倒された。
「あ…はじめまして、京子ちゃんと同じクラスの、真田魅真です。よろしくお願いします」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします」
京子は、ナミモリーヌに行く時はいつもハルと一緒に行ってるので、ケーキ好きと女の子同士ということもあり、魅真を誘い、ハルも誘ったのだった。
魅真とハルがあいさつをすると、三人はさっそくケーキを選びにいった。
選び終えるとカフェにすわり、注文したものを待っている間も、きてからも、三人は絶え間なくガールズトークを繰り広げていた。
「へー。じゃあ、ハルちゃんはツナ君が好きなんだね」
「そうですよ。川で溺れたところを助けてもらったんです!ツナさんは、ハルの命の恩人であり、未来のハズバンドです!」
今はそれぞれの好きな人を言うという、女子中学生にありがちな話題で盛り上がっていた。
「確かに、ツナ君てすごいもんね。いろんなとこで大活躍みたいだし」
「そうです。ツナさんはすごいんですよ!」
ハルとは初対面であったが、すっかり仲良くなり、会話に花を咲かせていた。
「それに優しいしね。私もツナ君好きだな…」
「はひ!?ひょっとして、魅真ちゃんもツナさんを好きなんですか!?むむっ…恋敵です…」
「ち…違うよ!好きっていうのは、友達でって意味だよ!」
勝手に恋敵と勘違いされ、睨むように見られると、あわてて訂正する。
「あ、なーんだ。そうだったんですか」
「そうだよハルちゃん。だって魅真ちゃんは、ヒバリさんのことが好きなんだもんね」
「へ…?」
「はひぃ!ヒバリさんて、あのデンジャラスな方ですか!?風紀委員をやってるっていう…」
京子の口から思わぬ言葉が出てきたので、魅真は一瞬固まってしまう。
「違うよ!私の好きな人は、雲雀さんじゃないよ!」
「でも、魅真ちゃんと雲雀さんが付き合ってるって、みんな言ってたよ?」
「それは、根も葉もないただのうわさだよ!今は、好きな人も付き合ってる人もいないから、私!」
一番知られたくないうわさ話が京子の口から出ると、魅真は力いっぱい全否定をした。
「それじゃあ、なんで風紀委員に入ったんですか?」
「そ、それは……雲雀さんに、強制的に入らされて…」
「それじゃあ、雲雀さんが魅真ちゃんのことを好きなんだね」
「それは、絶対にあり得ないわ」
「なんで?」
「な…なんでって…」
魅真は今まで強気に出ていたのだが、本当のことを言うわけにはいかないので、口ごもってしまう。
「でも、魅真ちゃんは雲雀さんじゃないですから、わかりませんよ!普段興味がないふりをしてても、本当は好きっていうパターンもありますから!」
「それはそうね。本当は、雲雀さんが魅真ちゃんのことを好きなのかも」
魅真が否定するものの、京子とハルは勝手に盛り上がっていた。
押しに弱い魅真は、盛り上がってる二人の間に入っていけず、これ以上言っても無駄と思い、二人の熱が冷めるのを待った。
それから、話はつきることなくずっと三人で話していたが、夕方になるとお開きになり、この日は解散となった。
解散した時はまだ明るかったが、魅真が家に着いた頃には、もう日もだいぶ傾いていた。
「ただいまー」
家に着くと、元気よくあいさつをして中に入った。
「お母さん?」
しかし、母からの返事がないので、ふしぎに思った魅真は、廊下を歩きながら声をかけた。
くつはあるので出かけてないはずなのに、いつも返事を返してくれる母からの応答がなかったからだ。
「(どうしたんだろ?)」
ふしぎに思いながらも、魅真は母を探すために居間に入る。
「いない…」
けど、今ぐらいの時間には大抵いるはずの居間にもいなかったので、別の部屋を探そうと、踵を返した時だった。
「!」
魅真は目の前にある台所の向こう側に、床に一本の腕が横になっているのをみつけ、目を見開いた。
嫌な予感がした魅真は、台所の方へ足を進めていく。
「!!
お母さん!?」
台所へ行くと、そこには母の雪乃が、意識を失って倒れていた。
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