標的12 ファイティングガール
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それは、魅真が風紀委員に戻ってきてから、次の日のことだった。
「ねえ、真田魅真…」
応接室で書類整理をやっていた魅真は、突然雲雀に呼ばれたので、雲雀の方へ顔を向ける。
魅真は、雲雀には今まで「君」としか呼ばれていなかったのに、突然フルネームで呼ばれるようになった。
「これ…読んどいて」
雲雀はそう言って、魅真の目の前に一冊の本を差し出す。
「必殺武器大全…。……なんですか?この…見るからに危なげな本は…」
それは、魅真が普段、絶対に手にしなさそうなタイトルの本だった。
「この中から、どれか一つ選んどいてね」
「へ?選ぶって何をですか?」
「武器をだよ」
「選んでどうするんですか?」
「持つんだよ」
「誰がですか?」
「寝ぼけてるの?」
魅真にその疑問をぶつけられると雲雀は呆れ、深く息を吐いた。
「君が持つに決まってるだろ」
「へ…?」
何かの聞き間違いかと思った魅真は、すっとんきょうな声を出した。
「えぇえええぇえええええぇえっ!!!?」
だが、すぐに聞き間違いではないということがわかったので、驚きのあまり、大声で叫んだ。
標的12 ファイティングガール
「うるさいよ…」
突然、すぐそばで大きな声を出されたので、雲雀は眉間にしわをよせ、不機嫌な顔をした。
「ひ、雲雀さん…。何かの冗談では?」
「僕が、冗談を言う人間に見えるかい?」
「で…ですよね…」
「君は、どこからどう見ても非力だからね。当然肉弾戦なんて無理だろ?なら、武器を持つしかないと思ってね」
「いえ…。ですから、一体何をどう考えたら、私が武器を持たなければいけないという結論に達するんですか?」
あまりにも唐突すぎる内容に、魅真はその疑問を雲雀にぶつける。
「君、強くなりたいって言ってなかった?」
「それは…まあ…そうですけど…」
「なら、問題ないでしょ。さっさと選びなよ」
「でも……」
「戦闘の経験がまったくない君は、すぐにでも特訓しなきゃいけない。特訓するのは、1日でも早い方がいいからね」
「私は、戦うなんて…一言も…」
「だけど君、強くなりたいんじゃなかったのかい?」
「それは……言いましたけど……。でも……戦うなんて………」
魅真の弱々しい発言に、雲雀は深く大きなため息をついた。
「戦おうとしないのに、どうやって強くなる気だったの?ギャグかい?」
「う……」
雲雀のもっともな意見に、魅真は言葉をつまらせる。
「それで、非力な君は、小回りがきく接近戦の武器より、距離がとれるリーチのある武器か、中距離戦の武器がいいと思うんだけど…」
「(なんか、絶対持たなくちゃいけない雰囲気になってる!!)」
魅真に渡した本を取り、パラパラとめくりながら、勝手に話を進め、もう魅真が武器を持つことが決定してるようなしゃべり方だった。
そして次の日…。
「真田魅真、届いたよ」
そう言いながら雲雀が差し出したのは、細長い箱だった。
「それは?」
本当はどんなものかわかっていたが、わかりたくないという気持ちから、現実から目をそらしていた。
「もちろん、君が持つ武器に決まってるじゃないか」
「(やっぱり…)」
最初からわかっていたが、予想通りの答えに、魅真は肩を落とした。
「……結局…武器持つんですね…」
「あたり前だろ」
当然のようにきっぱりと言う雲雀に、魅真はあきらめたようにため息をつく。
「で、それはどんなものなんですか?」
魅真に問われると、雲雀は魅真にはさみを渡した。自分で開けてみろということらしい…。
魅真ははさみを受け取り、箱をしばっているひもを切ると、箱があかないようにしているために貼られていたガムテープをはがし、箱をあけた。
「これって…」
「そう…。それが君の武器だよ」
「薙刀…ですか?」
そこに入っていたのは、一本の薙刀(木刀のタイプ)だった。
「薙刀は、昔は女が護身用として修得してたもので、女の武道としても発展してきたものだ」
「へぇ~~、そうなんですか」
雲雀の、薙刀に関するちょっとした豆知識に、魅真は感心していた。
「それに何より、少ない力でも使えるからね。君みたいに、見るからにひ弱で軟弱で、ドジでまぬけな人間には、ちょうどいい武器でしょ」
「……………」
だが、やはり雲雀は雲雀だったので、魅真は口を閉ざした。
「まあ、それはともかく、今日からさっそく特訓を始めるから」
「き、今日から!?」
いつ来るのかと思っていたが、あまりにも早く来すぎたので、魅真は顔を青くした。
そして午後になり、今日の仕事を終えた二人は体育館を貸し切り、その中にいた。
雲雀の特訓を受けることになった魅真は、いつもはしばっていない髪の毛を、後頭部の真ん中あたりの高さでしばり、今朝届いた薙刀を持って、緊張した面持ちで、そこに立っていた。
「それじゃあ、さっそく始めるよ」
「はい…」
流されるままに特訓を受けることになったが、内心受けたくないので、あまりいい顔はしていなかった。
「じゃあ、さっそくかかってきなよ」
「え…?」
そう言ってトンファーを構える雲雀に、魅真はすっとんきょうな声を出す。
「あの……雲雀さん…。これから特訓するんですよね?」
「あたり前でしょ。何言ってんの?」
「特訓て、素振りとかの基礎練習じゃないんですか?いきなり対決なんて…」
「これが僕のやり方だよ。ちまちまとやってくより、戦って感覚を身につけてく方がいいよ」
「(雲雀さんて、意外にアバウト)」
「それに、実戦に勝る修業はないからね。
大丈夫。一応手加減はするし、死ぬギリギリ三歩手前で我慢するから」
「全然大丈夫じゃありません!!
ていうか、我慢ってなんですか!?」
「さっ、始めるよ」
「聞いてください!!」
必死の叫びもむなしく、雲雀はマイペースにことを進めていった。
それから…魅真の、雲雀との特訓が始まった。
しかし、戦闘経験者でも雲雀には敵わないというのに、戦闘経験もない初心者の……ましてや女の魅真が敵うわけもなく、こてんぱんに叩きのめされていた。
雲雀も、相手が初心者ということで、一応雲雀なりに思い切り手加減をしているのだが、それでもやはり雲雀相手なので、とても強い力で殴られ、魅真の体は悲鳴をあげていた。
しかし、そんなことで特訓をやめるような雲雀ではなく、魅真を容赦なく攻めたてた。
そして、雲雀との特訓を始めてから半月が経った。
「あいたたたたた…」
魅真は体中に、とても女子中学生が負わないようなケガを負っており、今はそのケガの手当てのため、保健室にいた。
「もう…雲雀さんたら、本当に容赦ないんだから!」
保健医がいないため、一人椅子にすわって手当てをしていた時、突然扉が開いたので、魅真は勢いよく後ろへ振り向いた。
そこには、不精髭を生やしている、黒髪で獄寺と似た髪型の男が立っていた。
「あ…えと……保健の先生ですか?あの……すみません、勝手に救急箱を使ってしまって…」
魅真はあわてて謝罪をするのだが、彼はそこに立ったまま動かなかった。
「あの……」
謝罪しても、何もしゃべらないし動かない。
もしかしたら、勝手に入ったことを怒ってるのではないかと思い、再度声をかける。
「き………」
「?」
やっと声を発したが、何を言ってるかわからない上、体がふるふると震えていたので、一体どうしたのだろうと疑問に思った。
「君、か~わいーね~」
「え?」
今度ははっきりと聞きとれたが、いきなり突拍子のないことを言われたので、魅真は目を丸くする。
「…あ、あの………あなたは…?」
「オレはシャマル。ここの保健医だ」
「あ…えと……私、1-Aの真田魅真です…」
いきなりナンパをしてきたので魅真はドン引きしたが、相手が誰なのか気になったのもあり、とりあえず相手のことを聞いて、その後自分も名乗る。
「魅真ちゃんかぁ~~。君、本当にかわいいね~~」
「ど、どうも…」
シャマルが自分のところに近づいてきたので、何かされるかもと思った魅真は、思わず身構えた。
「で、なんでここにいたんだい?どこか具合いでも悪いのかい?」
「は…はい…。私、今戦いの特訓をしていまして…。その時にケガをしてしまったんです。特訓をしてくれている人が容赦ないので…」
「戦いの特訓!?君みたいに麗しく、か弱いレディーがかい?」
「え、ええ…まあ…」
「君みたくかわいい子に、そんなケガさせるくらい追いこむなんて、とんでもねえな。
よし!じゃあ、そいつに変わって、オジサンが特別に指導をしてあげよう。手とり足とり腰とり…」
「え…遠慮します!」
「遠慮するなよぉ~。オジサンなら、魅真ちゃんにそんなケガはさせないよ。優しくするからさ~」
「嫌です!」
ドン引きした上に、鳥肌が立ち、更に顔が青ざめた魅真は、特訓していた場所に帰るためにその場を立ち上がり、そこから去ろうと(逃げようと)した。
雲雀は容赦ないが、シャマルのように生理的嫌悪感を感じることはないので、そういう意味では、まだマシだと思ったからだ。
「逃げるなよぉ~~~~~お❤魅真ちゃあ~~~~ん❤」
「きゃーー!きゃーー!」
逃げてもますますせまってきたので、魅真は涙目になって叫び声をあげ、保健室の外へ出ていく。
「あれ…魅真ちゃん?」
「ツナ君!武君と隼人君も!」
廊下へ出ると、ちょうどタイミングよく、ツナと獄寺と山本が保健室の前を通りかかった。
いきなり、保健室から魅真がとび出してきたので、ツナ達はびっくりして魅真を見た。
「どうしたの?」
「何かあったのか?」
「保健室に変な人が…」
「変な人だぁ?」
保健室と変な人という単語で、ツナと獄寺はもしや!と思った。
その2つのキーワードで思い浮かぶのは、一人しかいないからだ。
「待ってくれよぉお~~~!!魅真ちゅあ~~~ん❤」
「きゃあ!」
「「シャマル!」」
そこへツナと獄寺の予想通り、保健室からシャマルが出てきた。
シャマルの出現により、魅真は、素早く獄寺の後ろに隠れる。
「あ?んだよ、隼人にボンゴレボーズじゃねーか。何やってんだ?こんなところで」
「それはこっちのセリフだぜ。オメーこそ、魅真に何やってやがんだ」
「オレはただ、魅真ちゃんがかわいいからちゅーしたいだけだ」
「相変わらずの変態だな、テメェは…!」
包み隠すことなく変態発言をするシャマルに、呆れながら、また嫌悪感を表すように、眉間にしわをよせる。
「つーか隼人、魅真ちゃんと知り合いか?」
「魅真ちゃんはクラスメートだよ」
「オレ達の友達だぜ」
問いかけられたのは獄寺だが、獄寺ではなく、隣にいたツナと山本が答えた。
「クラスメートで友達かぁ~~。うらやましいぜ…。
そんなことよりも魅真ちゃん!オジサンとちゅ~をしよう…」
「絶対に嫌です!!」
「つれね~な~…」
はっきりきっぱりと断られたシャマルは、口をとがらせて、まるで子供のようにすねる。
「そこまでにしておけ」
そんなやりとりをしていると、第三者の声が聞こえてきた。
「リボーン!」
「ちゃおっす」
声がした方へ振り向くと、窓の枠の上に、リボーンがすわっていた。
「わあ。久しぶり、リボーン君」
「ちゃおっす、魅真」
「ふふっ、こんにちは」
リボーンは魅真とあいさつをすると、窓の枠から床にとび降りて、シャマルの前に立った。
「シャマル、おまえが魅真を気に入るのは、無理もないことだがな。あんまりしつこいと嫌われるぞ」
「ぐっ。それは困る」
リボーンにそう言われると、シャマルは口をつぐむが、ツナと獄寺は、もうすでに嫌われてるだろと心の中でつっこんだ。
「それに、魅真はもう、オレの愛人だからな」
「何ィ!?」
「本当だぞ」
リボーンは今言ったことを証明するように、魅真の懐にとびこもうとジャンプをする。
それを見た魅真は、腕を上にあげて、リボーンを受け止める。
「そういうことだからな、シャマル。
行くぞ、魅真」
「う、うん…」
魅真は天の助けとばかりにリボーンを抱え、そこから去っていった。
そして、魅真がリボーンを抱えて歩きだすと、ツナ達も一緒に去っていく。
五人はシャマルのもとから去ると、保健室から離れた廊下を歩いていた。
「あ~~助かった~~」
魅真は、ようやくシャマルから離れることができたので、緊張がほぐれて、ほっとした様子だった。
「ありがとうツナ君、隼人君、武君、リボーン君」
「あ、いや…別に大したことは…」
「そうそう。たまたまあそこを通りかかっただけなのな」
「だけど、本当に助かったわ。あの先生、変な上にしつこいんだもの」
魅真の口から、変としつこいという単語が出ると、ツナは苦笑した。
「そういえば、ツナ君と隼人君て、シャマル先生と知り合いなの?親しい間柄って感じだったけど…」
「別に親しいってわけじゃないけど…」
「あのヤロウは、昔オレの城の専属医だった。だから知ってるだけだ」
「お城!?」
獄寺が、実はおぼっちゃんで、屋敷ではなく城という単語が出てきたので、魅真は驚いて目を見開いた。
「あ…オレは、前病気になった時、リボーンの知り合いの医者……さっきの保健医に診てもらったんだ」
「リボーン君の?」
「ああ、そうだぞ。ちなみにあいつは、腕は確かだが、女好きだから女しか診ねぇんだぞ」
「何それ!?そんなんで本当に医者なの?
あ……でも、ツナ君は前に診てもらったんだよね?」
「え?うん、まあね…」
「女の人しか診ない人に診てもらっているなんて、やっぱりツナ君てすごいんだね」
魅真は、ツナにはそれだけのカリスマ性があるのだと思い、ツナをますます尊敬して、きらきらとした眼差しで見つめた。
「何やってるんだい」
「「「「ヒバリ(さん)!」」」」
楽しそうに話していると、そこへ、体育館で待っていたはずの雲雀が、四人の前に現れる。
「ちゃおっす、ヒバリ」
「やあ、赤ん坊」
雲雀は、ツナ達のことは無視していたが、リボーンにはあいさつをした。
「雲雀さん、何故こんなとこに?」
「手当てをしに行っただけなのに、やたらと遅いからね」
「あ、それは…」
「何をやってたんだい?また……群れてたのかい?」
雲雀のその発言により、リボーン以外、全員ギクッとなる。この間、群れてるという理由で、めちゃくちゃに咬み殺されたからである。
「雲雀、魅真は保健室で手当てをしてる時に、トラブルがあったんだ。そこを、たまたま通りかかったツナ達が助けただけだぞ」
きっと、今のこの状況を、雲雀に上手く説明できる人間は、この中にはいないだろうと思ったリボーンは、雲雀に説明をした。
「ふぅん。そう……」
リボーンに説明をされると、妙に納得し、それ以上何かしようとはしなかった。
「まあ…それはともかく、早く来なよ。特訓する時間がけずられて、もったいないからね」
雲雀はそう言うと、魅真の腕をつかんだ。
その拍子にリボーンを抱きかかえていた手がほどけてしまったが、リボーンはなんてことないように、床に着地をする。
雲雀は、魅真の意志などはまったくのお構いなしで、魅真を強制的に体育館に連れて行ってしまった。
そして、リボーンは二人の後ろ姿を見て、ニッと笑っていた。
「行っちまったな」
「うん…。魅真ちゃん、大丈夫かな…?」
けど、ツナは魅真のことを心配していた。
しかし、そんなことは杞憂に終わることを、ツナは知らなかった。
体育館に戻って来ると、雲雀はすみっこの方に置いてある魅真の薙刀をひろいあげ、魅真に渡した。
「ほら、早く始めるよ」
「はい」
魅真は薙刀を受け取ると、そのまま構え、雲雀も魅真が構えるのを見ると、一瞬笑って、自分の武器であるトンファーを構えた。
もう、すでにボロボロの状態であるにも関わらず、また立ち向かってこようとしてるからだ。
更に言えば、今までの魅真なら、絶対に弱音を吐いていたからだった。
「ねえ、真田魅真…」
「なんですか?」
「君を……少しだけ見直したよ」
「え…。本当になんなんですか?唐突に…」
「前の君なら、こういう時は絶対に弱音吐いてただろうからね。
それに、君って意外に度胸あるし」
「度胸……ですか?」
「うん。前、タンカ切ったり、僕を殴ったりしたことがあっただろ?そのことさ。周りの人間は、僕にそんなことしないからね」
「あ……えと……そ、それは……」
「何どもってるの?ほめてるんだよ」
「(ほめてるんだ…)」
結構わかりにくいが、雲雀は本人なりにほめてるらしかった。
しかし、あまりほめられてる感じがしない上、まさか雲雀が自分をほめるとは思わなかった魅真は、言葉をつむぎにくくなり、心の中でそっとつっこんだ。
「ほら見ろよ。やっぱそうなんじゃねーか」
一方、体育館の扉の前(外の方)には風紀委員達がいて、中にいる魅真と雲雀の様子を、こっそりとのぞき見をしていた。
「あの雲雀さんが、他人に戦いの特訓をしてるなんて、やっぱり魅真さんは特別なんだよ」
「やっぱオレ達の姐さんだな」
「た、確かに…。今まで委員長が、他人に………それも、女に戦いの特訓をするなんてなかったな」
「それ以前に、まず群れることなんてしないだろ。間違いねぇ。真田………いや……魅真さんは、雲雀さんの恋人なんだ!!」
彼らが言ったことは、まったくの見当違いだった。
しかし、将来彼らが言っていたことが現実のことになるとは、彼らも、魅真と雲雀も、まったく予想すらしていなかった。
.