標的9 退会、風紀委員
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僕は、4時間目が始まった後、副委員長に仕事を任せて、屋上にやってきた。
あまりに眠いから、昼休みまで、ここで寝ようと思ったんだ。
けど、昼休みになり、応接室に戻ろうと思って起きたら、急にさわがしくなった。
何かと思って見てみたら、新しく風紀委員に入った、真田魅真とかいう女が、以前応接室に来た草食動物と群れていた。
何あれ?
4時間目が始まる前の休憩の時忠告したのに、何群れてんの?
風紀委員に入る前も入った後も、散々群れるなって言ったのに。しかも本人は、それを承諾したのに、なんで約束をやぶるのかな?弱い草食動物のくせに、変に頑固で、たまに僕に歯向かうこともあるし、生意気だ。
ここらで、よくわからせてあげないとね。
標的9 退会、風紀委員
魅真は、まさか雲雀にこのシーンを見られてるとは思わず、ただひたすら、四人に抱きついていた。
「ツナ君」
「ん?」
「武君、隼人君」
「あ?」
「なんだ?」
「みんな大好き!」
「えぇ!?」
「んなっ」
「ハハッ。オレもだぜ」
人目を気にせず抱きついてきただけでなく、自分の想いをまっすぐにぶつけてきたので、山本は気にすることなく答えたが、ツナと獄寺は変な声を出し、照れて顔を赤くした。
「(学校中で変な噂をされていても、ツナ君達がいれば、全然平気よ)」
魅真は、自分の味方がいることを、ただ喜んでいた。
「何やってるんだい?」
だが、その喜びを壊す声が、後ろから聞こえてきた。
その聞き覚えのある声に、魅真だけでなくツナもビクッとなり、おそるおそる、声がした方へ顔を向けた。
「君達全員……
咬み殺す!!」
声をかけた本人…雲雀は、魅真達の顔が、自分の方へ完全に向くかどうかという瞬間に、一瞬にしてトンファーを取り出すと、一気に魅真達の方へ走っていった。
「あぶねっ」
それを見て、これからどんな風になるかわかった山本は、魅真を抱きかかえ、自分の体で覆い隠すようにかばった。
「うわっ」
けどそんな山本を、雲雀は容赦なく殴りとばした。
魅真は直接攻撃を受けなかったものの、山本が殴りとばされた時に、山本に抱きかかえられていたので、そのまま一緒にとんでいき、フェンスにたたきつけられた。
「武君!!大丈夫!?」
とは言っても、山本がかばったので、魅真はケガをすることはなかった。
けど、山本の方は重傷で、今の一撃で気を失ってしまった。
「ぎゃっ」
「10代目!!」
山本の心配をしていると、すぐ側で、ツナの叫び声が聞こえてきた。
振り向くと、ツナが山本と同じように、雲雀に一撃で倒され、気を失っていたのだ。
「ヤロウ!!」
ツナがやられたことで、獄寺は怒り、雲雀を倒そうとした。
「ぐあっ」
しかし、構えをとる前に、あっさりと雲雀に倒されてしまう。
「ツナ君!!隼人君!!」
山本だけでなく、ツナと獄寺もやられたので、心配そうに二人の名前を叫ぶ魅真。
魅真の声に反応した雲雀が自分の方を見ると、残るは自分だけとなったので、今度はいよいよ自分の番かと体をこわばらせた。
けど、雲雀は何を思ったのか、魅真を攻撃をせず、顔をツナの方へ戻した。
そして、目線を戻すと、すでに気絶しているというのに、雲雀は再び、トンファーでツナを殴りつけた。
「雲雀さん!何やってるんですか!!」
雲雀を止めるために魅真は叫ぶが、雲雀はまったくの無視であった。
「もうやめてください!!いくらなんでもやりすぎです!!」
それでも魅真は、なんとかやめるように叫ぶ。
「うるさいよ」
しかし、これは雲雀にとって逆効果で、ますます煽ってしまったのだ。
雲雀を止めようとしていた魅真だが、今の雲雀の声と目で、びびって畏縮してしまった。
それだけでなく、自分のところへ歩いてきたので、今度こそ自分の番かと、身を固くした。
けど、雲雀はまた魅真を攻撃せず、魅真の近くにいた山本を攻撃し出した。
「いやっ!!ダメです、雲雀さん!!やめてください!!」
魅真は、また雲雀を止めようと叫ぶが、雲雀はまったく聞いておらず、山本を攻撃し続けた。
「雲雀さん!!!!」
魅真は、雲雀がやめてくれるまで、何度も何度も叫んだが、雲雀はそれを聞くことなく、自分の気がすむまで、三人を殴り続けた。
それから数十分後…。
魅真は、雲雀と応接室にいた。
というより、強制的に連れて来られた。
本当は、雲雀が三人をひとしきり殴って去ろうとした時、三人の手当てをしたかったので駆けよろうとしたのだが、雲雀が魅真の腕をつかんでひっぱったのだ。
もちろん魅真は抵抗したのだが、雲雀の力に敵うわけもなく、応接室に来てしまった。
連れて来られた魅真は、ソファに座り、うつむいたまま、ここに来てからずっと何もしゃべらなかった。
「いつまでそうしてる気だい?」
業を煮やした雲雀が、だんまりを続けている魅真を見て、呆れながら、ため息まじりに問いだした。
「僕の質問に答えなよ」
けど、魅真は何も答えなかった。
「ねえ……」
「なんでですか」
「ん?」
「なんで……ツナ君達を、あんな目に合わせたんですか…?」
「何かと思えば、そんなことか…」
先程のことを雲雀に問えば、雲雀は呆れ気味に答えた。
魅真は、雲雀の答えと、平然とした態度にカッとなったが、震える体を押さえて耐えた。
「あんなの、僕の前で群れてるのが悪いのさ。あの草食動物達も……君も……」
「…………」
「それに、君は僕に群れるなって言われて、それを承諾したはずだよね。風紀委員に入る前も……入った後も…。
それなのに群れるなんて、自業自得でしょ」
理由を話されても、魅真は何も答えなかった。
「それより、今度こそ、二度と僕の前で群れないって誓いなよ。そしたら、今回のことは水に流してあげるよ」
雲雀は、自分なりの妥協案を出したが、それでも魅真は何も答えず、黙っていた。
「言っとくけど、君に拒否権はないよ。君は、黙って僕の言うことを聞いてればいいんだ」
いつもみたいに、睨んだり脅したりすれば、魅真は言うことを聞くだろうと思っていたが、魅真は反応するどころか、何も言わないので、もともと気が短い雲雀は、すでに我慢の限界がきていた。
「ちょっと………いい加減にしなよ…」
いつまで経っても、返事どころか会話もしない魅真に腹を立てた雲雀は、低い声で脅すように話すが、それでも答えることなく、だんまりを決めこんでいた。
「それに、あいつらがやられたのだって、自業自得だよ。弱い奴はおとなしく僕にやられて、地面にはいつくばってればいい。黙って、強い奴の言うことを聞いてればいいんだ。
弱い奴が死のうがどうなろうが、僕の知ったことじゃない」
雲雀がそう言うと、魅真の目が大きく見開かれた。
パシン
そして、それとほぼ同時に、かわいた音が、応接室の中に響いた。
それは、魅真が雲雀の頬をはたいた音だった。
はたいたのは、雲雀の言う弱い奴というのが、明らかにツナ達のことを指しており、ツナ達を侮辱されたからだった。
「………君……」
今の魅真の行動で侮辱されたと思った雲雀は、低い声でつぶやくように魅真を呼ぶ。
雲雀の低い声を聞き、自分が、今雲雀に何をしたのかようやくわかった魅真は、血の気が引いていき、顔が青ざめていった。
「いい度胸してるね」
ただでさえ、負けを許さないのに、自分よりもはるかに弱く、戦うことすらできない魅真に頬をはたかれたので、雲雀のプライドはズタズタで、腸が煮えくり返っており、強く魅真を睨みつけた。
「……わ……私………」
ここで、いつもなら魅真は平謝りするところだが
「私っ……絶対に……謝りませんから!」
今回は違い、断固として謝らず、そう叫びながら、言い逃げるように応接室から出ていった。
それが、ますます雲雀のプライドに傷をつけ、機嫌を悪くさせたのだが、自分に逆らい続けている魅真を、雲雀は何故か、追いかけることをしなかった。
雲雀の頬をはたいた手はまだ熱をもっており、魅真は雲雀をたたいたその手を見つめながら、廊下を歩いていた。
「(やっちゃった…)」
勢いのままにたたいてしまったので、魅真は、怖さから体が震え、少しだけ後悔をしていた。
「(で……でも………あれは、雲雀さんが…悪いんだし…)」
けど、それ以上に、ツナ達に危害を加えたことが許せず、その思いはすぐになくなった。
「(とりあえず……ツナ君達の、ケガの手当てをしなくちゃ…)」
ツナ達のケガの手当てがまだなので、起きざりにしてしまったツナ達のところへ行くため、屋上へと歩いて行った。
それから魅真は、屋上に戻ると、自分よりも身長や体格が大きな、ツナと獄寺と山本を、保健室へ運んでいった。
特に、身長が高く、野球部に所属してるのでそれなりに体格がよく、一番重たい山本を運ぶのは大変だったが、それでもなんとか運び、ベッドに寝かせると、保健医がいないのもあり、自分で三人の手当てをした。
手当てを終えると、魅真は近くに置いてあったパイプ椅子に腰をかけて、三人の様子を見ていた。
見ているだけで、言葉を発することも、そこから動くこともなく、ただずっと見ているだけだったが、ふいに涙を流した。
魅真はそれをすぐにぬぐったが、涙は次から次へと流れてきた。
それは、ツナ達が自分のせいでやられたのと、ツナ達を傷つけた雲雀が許せないのもあるが、何より、何も悪くないツナ達を巻きこんでしまった、自分自身が許せなかったのだ。
それが原因で、魅真はしばらく、涙を流し続けた。
次の日…。
雲雀に指定された時間よりは遅いが、一般の生徒(部活で朝練がある者を除く)よりは早い時間に、魅真は登校した。
そんな魅真の姿を見て、周りにいた生徒達は、驚いてざわめき、魅真を凝視していたが、魅真はそんなことは気にすることなく、校舎に入っていく。
その頃応接室では、奥にある机で、雲雀が書類の確認をしていた。
「!」
書類の確認をしていると、ノックもなしに、突然扉が開いたので、そちらの方に顔を向けた。
「なんだ…君か…」
それは魅真だった。
いつもならノックをしてから入るのだが、昨日のことがあり、少々不機嫌になってるので、ノックなしで、少し荒々しく扉を開けたのだ。
「遅いよ」
もう、とっくに指定された時間は過ぎているというのに、まったく悪びれる様子もなく、ノックもせず、更には荒々しく入ってきたので、雲雀の声はとても不機嫌だった。
「もう、集合時間はとっくに過ぎてるよ。30分も遅刻だ。
それに、なんだい?その格好は?風紀委員用の制服はどうしたのさ?」
そう……。魅真は、風紀委員専用の制服ではなく、一般の生徒が着ている、並中の制服を着ていたのだ。
先程、生徒達が魅真を見て驚いたり、ざわめいたり、凝視したりしてたのは、これだった。
「ねえ……君……聞いてるの?」
「……………」
雲雀は再度魅真に問いかけるが、魅真は口を閉ざしたままで、何も答えようとしなかった。
「まただんまりかい?」
「…………」
「君、昨日から何様のつもり?ずっと僕に逆らいっぱなしで。ちょっと調子にのってるんじゃないの?大体……」
雲雀が話していると、その間に雲雀の前までやって来た魅真は、無言のまま、持っていた紙袋を雲雀の前に突き出す。
「何これ?」
話してる時に、話を遮るように渡されたので、疑問符を浮かべる。
「…………なんのつもりだい?」
紙袋の中を見て、中に入っていたものを確認すると、雲雀は今までにないくらいに不機嫌になる。
「何って………セーラー服ですけど……」
「だからっ……風紀委員専用の制服を渡すなんて、一体どういうつもりなのかと聞いているんだ!!」
中に入っていたのは、風紀委員専用の制服であるセーラー服と、風紀と刺繍された、風紀委員の腕章だった。
本来の並中の制服を着ている上、これらのものを返されたということは、どういう意味なのかを理解した雲雀は、めずらしく声を荒げた。
「君は、何故僕が、君を攻撃しなかったか……わかっていないようだね…」
雲雀は椅子から立ち上がると、感情を隠すことなく、魅真のもとへ歩いていく。
「君を生かしたのは、仕事がたまっているからだよ。これまでにやっていた仕事は、君が専任でやっていたものなんだ」
「………」
「わかったかい?わかったら、こっちの制服に着替えて、さっさと仕事にとりかかりなよ。君が30分も遅刻したおかげで、どれだけの遅れが出たと思って…「嫌です」
説得(?)しようとするが、それでも魅真は、それを静かに拒否する。
「ツナ君と隼人君と武君は……私の大切な友達なんです!!その友達を、何も悪いことをしてないのに、個人の感情だけで、気絶するまで殴って傷つけたあなたを、許すわけにはいきません!!
いえ……個人の感情じゃなくても、それは絶対に許せません!!」
そして、今までの気が弱い魅真からは考えられないほど、強い物言いだったので、雲雀は思わず絶句した。
「友達?くだらない…。僕が君の友達を咬み殺したから?だからなんだって言うの?」
「!」
「そんなの関係ないよ。君は黙って、僕の言うことを聞いてればいいんだ」
けど、すぐに口を開き、鋭く睨みつけながら命令をする。
「お断りします!」
「な…!」
「私は、もう風紀委員を辞めます!あなたの言いなりにはなりません!」
しかし魅真は、それでもまた拒否をした。
「そんなことを言って、僕が、君を風紀委員に入れた理由を忘れたのかい?拒否をすれば、君もどうなるかわからないよ」
それは、風紀委員を許可なく辞めたら、制裁を加えるという意味だった。
「構いません」
けど、雲雀に脅されても、きっぱりはっきりと断った。
それを聞いた雲雀は、今まで以上に驚き、目を大きく見開いた。
「咬み殺したいのなら、そうすればいいです。もう、これからどんなに脅されようとも……ツナ君達を傷つけるあなたの言うことは、絶対に聞きません!!」
これが本当に、あの、自分を見る度にビクビクおどおどして、泣きそうになっていた魅真なのかと、タンカをきった姿を見て、不思議に思った雲雀は、その場で固まってしまった。
「では、失礼します!」
雲雀が固まってる間に、魅真は雲雀の了承を得ずに応接室を去って行き、雲雀はただ呆然として立ちつくし、その後ろ姿をじっと見ていた。
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