標的7 入会、風紀委員
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魅真が雲雀に風紀委員に勧誘された、次の日の朝…。
魅真は、いつも通りリボンを結ぶのではなく、並中の制服にはないスカーフを結んでいた。
「フ~~…」
何故なら、今着ているのは、いつものブレザーではなく、セーラー服だからだ。
「こんな感じかな…」
等身大の鏡に映っている魅真は、眉尻を下にさげ、やる気のない、とても憂鬱そうな顔をしていた。
セーラー服を着て、左腕には、金色の糸で風紀と刺繍された赤い腕章をつけていた。
その格好を見た魅真は、深いため息をついた。
理由は、これは今まで自分が着ていた制服ではなく、風紀委員専用の制服だからだ。
それが、風紀委員に勧誘されたのが、夢ではないということを証明しているので、更に深く重いため息をつく。
雲雀が風紀委員長なだけでなく、風紀委員の悪評を、ツナから聞いて知っている魅真は、暗い顔をして部屋を出た。
標的7 入会、風紀委員
「おはよ~……」
魅真は重い体をひきずりながら食卓へ行き、母親に朝のあいさつをした。
足取りは重く、部屋からの距離を、とても長く感じていた。
部屋から食卓まではそんなに離れていないのだが、そう感じたのは、やはり気が重いからだろう。
「おはよう、魅真。
あら、どうしたの?その格好。並中って、ブレザーだったわよね?」
「え?あ……その……ちょっとね…」
当然、魅真の格好を不思議に思った雪乃は、魅真に問いだす。
しかし魅真は、今は説明する気になれず、後で説明すると伝えると、朝食を食べ始める。
そして、朝食を食べ終えるとカバンを持ち、学校へ登校して行った。
途中で、同じ並中生だけでなく、近所の人からも、ものめずらしそうな目で見られていた。
その視線だけで魅真は縮こまってしまい、いたたまれない気持ちになる。
けど、それだけならよかった…。
家から20分ほど歩くと学校に着いた。
魅真は雲雀に、登校したら応接室に来るように言われたので、自分の教室ではなく、まず応接室に向かって行った。
「し、失礼しま~す…」
魅真はノックをすると、おそるおそる、中をのぞき見るような形で扉を開ける。
「遅いよ」
すでに中にいた雲雀の口から出た、開口一番がこれである。
その短い一言だけでも、魅真はびくつき、縮こまった。
「風紀委員なら、最低でも7時半までに来てくれる」
「す、すみません!」
魅真が学校に来た今の時間は、朝の8時。
結構早いと思っていたが、雲雀が怖いので、思わず謝ってしまった。
「それより、言われた通りにちゃんと来たね」
「え、はい…」
「まあ、君に拒否権はないけど」
「(勝手ぶりは相変わらずだわ…)」
とは言っても、半分呆れていて、半分は、もう慣れたといった感じであった。
「それで、今日から君は、風紀委員なわけだけど…」
「はい…」
「言っておくけど、僕は君の強さを買って勧誘したわけじゃないから。
というか、君に強さというもの自体、あるわけないんだけどね」
「じ…じゃあ、なんで勧誘したんですか?」
「君を見張るためさ」
「見張る?」
めずらしく自分の質問に答えてくれたが、言っていることの意味がわからず、疑問符を浮かべた。
「君、この前、僕にカバンをぶつけたでしょ」
「!」
「僕が他人に……しかも、よりによって、強くもなければ、戦うことすらできない女に、あんな目に合わされたなんて知られたら、一生の恥だからね」
「そのことなら、私、誰にもしゃべりません。ですから、私を風紀委員にいれるのはやめてください!」
「ダメだよ。念には念をいれる」
「そんな…」
「君には、卒業するまで、風紀委員に在籍してもらうよ」
1年生から3年生までの約2年半。中学校生活の半分以上も、自分の苦手な人物と関わり続けなければいけない上に、自分が望んでいないところへ、強制的に入らなければならないので、魅真はこの世の終わりが来たような、暗い顔になった。
「とりあえず、今は教室に行って、授業を受けてきなよ。また放課後に来て。その時に、また色々と説明するから」
「わかりました…」
返事をすると、魅真はそこからが去ろうとしたが、雲雀が魅真の手をつかんできたために、そこから動くことができなかった。
「いいかい?もし、この前のことを話したりしたら…………咬み殺すよ」
「はい!」
雲雀に脅されると、魅真は体をまっすぐに伸ばして固まり、勢いよく返事をした。
「じゃあ、もう行きなよ。あと、授業に遅れたりしたら、その時も咬み殺すからね」
「はいぃ!」
更に脅され、魅真は逃げるように応接室を出ていき、教室に行った。
「(あ~~…怖かった。もう最悪!雲雀さんには絶対に関わりたくないのに、なんだかんだで関わっちゃってるし!しかも、もっと最悪なことに、風紀委員に入らされるし。それも卒業するまでだなんて…。私の中学校生活は、お先真っ暗だわ)」
ショックすぎて、とぼとぼと廊下を歩いていると、また周りから、痛い視線を感じた。
すれ違う生徒全員が、恐ろしげなものを見るような目で自分を見ており、見るからに引いていたのだ。
原因は、この風紀委員専用の制服を着て、風紀委員の腕章をつけているからだと、誰に問わなくてもわかったが、それでも気分は落ちこんでいた。
それから、数分歩いていくと教室に着くが、教室に入るなり、クラス中の注目を浴び、あからさまに引かれていた。
先日、雲雀がこの教室に来て、魅真を風紀委員に任命したこともだが、魅真が風紀委員専用の制服を着ていることで、より現実味が増したので、クラス中の人間に警戒をされてしまったのだ。
何も悪いことをしてないのに警戒されたので、魅真は余計に落ちこんだ。
しかも、生徒だけでなく教師まで、魅真の格好を見てびびってたので、落ちこむだけでなく、何故、何もしていないのに、そこまで警戒されなければいけないのか、不思議でしょうがなかった。
だが、これで終わりではなかった。
魅真が風紀委員に所属した話は、瞬く間に全校生徒に広まっていった。
しかも、生徒だけでなく教師の間にも広まっていき、魅真が転校してきて、まだ一ヶ月くらいしか経っていなくて、魅真のことをよく知らないのをいいことに、生徒達はいろんなうわさをしていた。
例えば、魅真は転校してくる前の学校では、ケンカがすごく強いとか…
前の学校では相当な悪で、不良グループを率いていたとか…
怒らせたら、町を壊滅させるまで暴れまわるとか…
魅真に何かあったら、日本中の不良が黙っちゃいないとか…
ヤクザすらも、魅真の強さに圧倒され、ひれふしてしまうとか…
裏世界にも、その名を轟かせているとか…
そんな話、一体どこから出てきたのかというくらい、尾びれや背びれがつくにもほどがあるというくらいにすごいウワサが、学校中に広まっていった。
しかも、更に追い討ちをかけるかのように、実は、魅真は雲雀の女だというウワサまでもが広まっており、魅真はクラスメートどころか、全校生徒や全教師にまでさけられた。
学校の外での痛い目線は、学校内の視線や、根も葉もないウワサにくらべれば、まだマシだったのだ。
「おい、知ってるか?副委員長に聞いたんだけど、今日、新しく風紀委員が入ってくるんだってよ。しかも、女らしいぜ」
一方こちらは校舎裏。
そこでは、風紀委員の男達が集まっており、魅真のことを話していた。
「マジかよ。どんなヤツだ?」
風紀委員は全員男なので、興味津々といった感じに、委員の1人が反応を示した。
「それがな、副委員長がいうには、普通の戦えない女らしい」
「マジかよ!?」
風紀委員は全員男なだけでなく、全員不良で、多少なりとも戦えるので、まさか女の上に、戦えない人間が入ってくるとは思わず、先程よりも更に驚いた。
「それ、オレも聞いたぜ」
「オレも!あいつ、委員長の女だって聞いたけど、本当にそうなのかな?」
「まさか。そんなわけないだろう」
「そうそう。雲雀さんは、群れるのが嫌いな方だぜ」
「けど、それだとなんで、戦えない普通の女を入れたんだ?それって、そいつが雲雀さんの女だからってことになるんじゃないのか?」
魅真が風紀委員に入ったことで、彼らの反応は様々だった。
彼らもまた、一般の生徒同様、魅真のことを何も知らないのをいいことに、好き勝手言っていた。
「そうだよな。ま、どっちにしてもオレは、女の子が入ってうれしいけどな」
単純に、男だらけのむさい場所に、女の子が入るのがうれしいという者。
「そうか?オレは、男だけの世界に女が入るなんて嫌だけどな」
魅真が入ることに反対の者など、いろんな者がいた。
それから、あっという間に昼休みになり、いつも通り屋上で、ツナ、獄寺、山本と一緒に、お昼ご飯を食べていた。
しかし、せっかくのお昼休みだというのに、魅真は暗く落ちこんでおり、箸はほとんど進んでおらず、ため息ばかりついていた。
その異様な雰囲気を察した三人は、一言も発することなく、弁当を口に運びながら魅真を見ていた。
「あの……魅真ちゃん」
この暗く重い空気に耐えられなくなったのか、ツナはおそるおそる魅真に声をかける。
「ん…。何?ツナ君」
ツナの呼びかけには応じたが、明らかに生気がないといった感じで、ツナは開いた口を、再び閉じてしまった。
「あ、あの…。風紀委員に入ったっていう話だけど…」
まだ本題に入っていないというのに、風紀委員という単語が出ただけで、魅真はビクッと体を震わせる。
「………風紀委員が……なに?」
「あ……いや……本当なのかなって…」
「……本当よ…。だって、風紀委員専用の制服を着てるし、風紀委員の腕章をつけてるでしょう?」
「そ、そう……」
生気のない話し方をする魅真に、ツナは、それ以上はなんと言っていいかわからず、軽く返事を返すだけだった。
「………それで……学校のみんながしていた、あのウワサは……」
その質問で、また体が震えるだけでなく、顔つきも険しくなっていたので、ツナだけでなく、獄寺と山本もびっくりした。
「あれは違うのよ!私、前も言ったけど、自慢じゃないけど、友達なんて、一人もいなかったんだから!そんな私が、よりによって不良の人と一緒にいられるわけないじゃないの!!ていうか、いるわけないわ!!いろんな意味で、絶対に無理よ!!
それに、私はケンカは好きじゃないし、当然戦うことなんてできないし、裏世界の人間とか、テレビでしか見たことがないのよ!!関わってるわけないじゃないの!!尾びれ背びれがつくにもほどがあるわ!!あんなもの、根も葉もない、ただのウワサよ!!」
不良(おもに雲雀)と関わっていることはわかっているが、裏世界の人間とは、目の前に一人、本来は一般人だが、巨大マフィアのボス候補の人間、ここにはいないが、世界最強の殺し屋を名乗る人物と関わっていることなど知らない魅真は力説する。
普段はおとなしい魅真が、今度はマシンガントークをしてきたので、三人はそのことにびっくりした。
「まさかっ……ツナ君達まで、そのウワサを信じたんじゃないでしょうね!?」
「いや…そんなことないけど…」
「けど?」
「魅真ちゃん、なんかぐったりしてるからさ。だから、心配になっちゃって」
「ツナ君…」
いろいろと聞きだしていたのは、本当のことを確かめるためと、ただ単に魅真が心配だったからで、それがわかった魅真は感動して、瞳をうるませた。
「そもそもなんで、魅真みたいに戦うことすらできねー奴が、風紀委員に誘われたんだ?」
「オレも、そこは不思議に思ったよ」
「オレも」
次に獄寺が、疑問に思ったことを口にした。
風紀委員といえば不良の集まりでもあるので、何故不良でなければ強くもない魅真が誘われたのか、不思議でならなかったのだ。
「それは、私が……
!」
そこまで言いかけて、魅真は途中で、それ以上言うのをやめた。
「どうしたんだ?魅真」
「私が……なんだよ?」
「え……いや……な、なんでもないの…」
なんでもないという顔ではなく、顔が真っ青になっていた。
『いいかい?もし、この前のことを話したりしたら…………咬み殺すよ』
それと同時に、朝雲雀が言っていた、あの言葉を思い出していた。
魅真が、途中で理由を言うのをやめたのは、これだった。
三人は少々腑に落ちない感じであったが、それでも魅真が言いたくなさそうだったので、それ以上は追及しなかった。
そして、あっという間に放課後となった。
魅真が来てほしくないと思ったのもむなしく、こういう時ほど早く時間が過ぎるもので、魅真はまた雲雀に怒られないように、掃除が終わると、すぐに教室をとび出して、応接室へ向かっていった。
しかし……
「遅いよ」
またしても、開口一番がこれだった。
早め早めに行動をしたというのに、それでも遅いと言われたので、魅真はビクッとなると同時に、ショックを受けた。
「あ、あの……授業が終わったら掃除が……」
「そんなの関係ないよ」
あたり前にしなくてはならないことなのに、バッサリと切って捨てられたので、更にショックを受ける。
「で、でも……掃除はしなくては…」
「だから何?」
とりつく島がないので、魅真はそれ以上は何も言えず、黙りこんでしまう。
「とにかく、これから掃除があったとしても、1分で終わらせなよ」
「そんなの絶対に無理ですよ」
「じゃあ3分だよ」
「(じゃあって何!?) だから無理ですよ。最低でも15分はかかりますから。ここに来るまでの時間を含めて、多めに見積もると、やっぱ20分は…」
「いいから…。早く来ないと……
咬み殺すよ…!」
「はい!」
色々と説明をするのだが、それでもまったく聞いてもらえず、脅しまでかけられた魅真は、雲雀の怖さに負けて、勢いよく返事をしてしまった。
「ま、いいや。
そんなことより、最初だし風紀委員のメンバーを紹介しとくよ」
雲雀がしゃべりながら扉の方へ顔を向けると、いつの間に待機していたのか(魅真が来た時にはまだいなかった)、雲雀と同じように学ランを着て、頭をリーゼントにしている、いかにもな人達が、応接室に入ってきた。
「(ふ、不良ばっかり!しかもあの人って…)」
そこには、魅真が苦手とする人物の一人、リーゼントに学ランの葉っぱをくわえた、あの男が立っていた。
「こいつらが、風紀委員に所属する奴らだよ。僕を含めて、全員で16人」
「(ちょっと……泣きたいかも…)」
「それで、一番左側にいるのが、風紀委員の副委員長だよ」
「(えぇ!?あの人が副委員長!?)」
苦手な人種が、二人も自分の上に立つ人間だと知り、魅真は固まる。
「風紀委員の紹介は以上だよ。君達は仕事に戻って」
「「「「ハッ」」」」
「(え…。これでおしまいなの!?)」
「それで次に、風紀委員としての心構えというか、ルールのようなものを説明をするよ」
魅真の心中などまったくのお構いなしに、風紀委員のメンバーがいなくなると、マイペースに説明を始める。
「まず、朝は必ず、最低でも 7時30分までに来るように」
「え…。は……い…」
本当は、いくらなんでも早すぎだと反論したかったのだが、雲雀が怖いので、今朝と同じように、素直に返事をしてしまった。
「それから、与えられた業務をしっかりこなすこと。間違えたら、ちゃんと合うまでやり直すこと。じゃないと家に帰さないから。
それから、本来風紀委員の仕事は、見回りが主だ。風紀を乱してる奴がいたら、どんな手を使ってでも矯正する」
それはつまり、逆らう相手には、暴力行為も辞さないという意味なので、魅真はドン引きしていた。
ツナから雲雀の話を聞いていたのだが、想像以上のものだったので、魅真は、何故全校生徒が自分を警戒したりさけたりしていたのかが、よくわかった。
「けど、君には絶対無理だろ。だから君は、見回りはやめて、おもに事務仕事と雑用をやってもらうよ」
「はい…」
風紀委員に入ったので、自分も戦わなきゃいけないのかと思ったら、やらなくていいと言われたので、魅真はほっとするのと同時に、雲雀は女性にはそういうムチャなことはさせない人間だと、少しはまともな人なのだと見直した。
「君が戦ってもジャマなだけだよ。足手まといになるのがオチだしね」
「……………」
けど、すぐ後に言われた言葉が、いくら本当のことでもひどいものだったので、魅真は前言撤回した。
「それで、これが一番のルールだ」
内心、まだあるのか!とも思ったが、次で最後のようなので、おとなしく聞くことにして、何を言うのかを待った。
「もし……これから先、誰かと群れたりしたら
その時は容赦なく……
咬み殺すよ」
「(ひぃいいいぃぃぃいいいいい!!)」
ギラギラと肉食獣のような目をした雲雀に、魅真は血の気が引いていき、びびりまくった。
単純に雲雀が怖いのもあるが、自分には今、ツナ、獄寺、山本という友達がいるというのもあった。
「ところで君、携帯持ってるかい?」
「え?持ってますけど…」
「じゃあ、ちょっと貸してくれる」
「へ?あ、はい…」
いきなり話が変わり、携帯を出すように言われると、魅真は何故そんなことを言うのだろうと疑問に思ったが、抵抗することなく携帯を雲雀に渡した。
すると、雲雀は魅真の携帯を開くなり、いきなり操作し始めた。
「ち…ちょっと雲雀さん!いきなり何を…」
プライベートともいえる携帯を、持ち主である魅真の了承も得ずに勝手に操作しだしたので、さすがの魅真もあわてて止めようとした。
だが、雲雀はまったく聞いておらず、黙々と操作すると、魅真に返した。
「君の携帯に、僕の携帯の番号を登録しておいたから」
「えぇ!?」
「何か問題でもあるのかい?」
「え?あ…いえ……なんでも…」
本当は、勝手にプライベートなものを見られた上、勝手に番号を登録されてすごく嫌だったのだが、雲雀が怖いので、強く出ることができなかった。
「それで、僕からの電話には最低でも10秒で出てね。できたら5秒以内で」
「(無理だし!!)」
いろんな意味で難しいのに、それでもムチャ難題をさらりと言ってのける雲雀に、魅真はつっこまずにはいられなかった。
しかし、それを口に出して言えるはずがないので、もちろん心の中でつっこんでいた。
「それで、君の仕事…というか、行動なんだけど…」
「行動?」
一体、行動とはどういう意味なのか?と、魅真は疑問に思った。
「君には、基本的にこの応接室で仕事をしてもらう。君は見回りはないけど、僕は見回りがあるから、その時はいいけど。でも…」
「でも?」
「それ以外の時は、常に僕といてもらうよ」
「えぇええ!?」
さすがに魅真も、これには声をあげずにはいられなかった。
「何か文句あるの?」
「いや……だって、雲雀さんも仕事あるじゃないですか。そんなに私といて、大丈夫なんですか?」
本音は、雲雀と少しでも一緒にいたくない…であるのだが、そんなことはさすがに言えないので、無難にまとめて雲雀に伝えた。
「本当は、群れるのは嫌なんだけどね…。だけど、あのことを他人に知られるのはもっと嫌だから、そのためだよ。僕の沽券に関わることだしね。
あ、安心しなよ。トイレはさすがについていかないから」
「(どこが安心!?)」
「あと、ここで仕事してる時以外も、不正を行ってる奴がいたら、君じゃ無理だから、咬み殺せとまでは言わないけど、注意して、すぐに僕に知らせて。咬み殺すから。見逃したらダメだよ」
「え?でも、見回りはしなくていいって…」
「見回りはね。でも、見回りをしてる時以外にも、違反者はいるからね。やらないと、君を咬み殺すから」
「ゔっ……わ……かり…ま………した……」
自分自身でも雲雀にも、戦うことは無理だとわかってて、最初はやらなくていいと言っていたのに、なんだか言ってることが矛盾してる!と言いたかったが、やはり雲雀が怖いので、いやいやながらも承諾してしまう。
「説明は以上だよ。それじゃあ、さっそく仕事をやってもらうから、こっちに来て」
「はい…」
雲雀が背を向けながら言ったことに返事をすると、魅真は、雲雀が気づかないくらい小さなため息をついた。
「(これから毎日、20人近い不良と一緒にやっていかなきゃならないと思うと、すごい泣けてくる…。しかも、雲雀さんだけでなく、あの副委員長って人もいるし)」
魅真がため息をついた理由はこれで、心の中で考えている通り、今にも泣きそうな顔をしていた。
「(こんなんで私、こんな人と、これからやっていけるのかしら?)」
魅真は、強くもなければ不良でもない。
とりたてて、すごい才能があるわけではない。
それなのに、不良の集まりである、風紀委員に任命されてしまった。
そんな魅真の最悪な学校生活は、こうして幕をあけた。
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