第九十六話 過去
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「これはまた驚きです。なんとっ…華炎選手がかぶっていたフードの下からは、狐の耳が出てきました!!華炎選手の正体は、瑠璃覇選手と同じ妖狐だったのです!!」
華炎の正体に、幽助達だけでなく小兎も驚いており、小兎の実況で、周りの観客達も驚いていた。
「おい…蔵馬…。あの華炎が、瑠璃覇の唯一の身内って……一体…」
まだ驚きをかくせない幽助は、蔵馬に再び問いだした。
「そのまんまの意味だ。華炎は、瑠璃覇の祖母にあたる人物なんだ」
瑠璃覇と華炎の関係を知ると、幽助達は更に驚いた。
第九十六話 過去
「瑠璃覇は……生まれてから1000年以上も、ずっと独りだった」
蔵馬は幽助達に、ぽつりぽつりと、瑠璃覇の過去を語り始める。
それを聞いていたのは、幽助、コエンマ、ぼたん、ジョルジュ、陣、酎、凍矢、鈴駒、鈴木、死々若丸だけではなかった。
彼らの後ろにすわっている黄泉や、出入口の隣に立っている飛影や軀も、蔵馬の話を聞いていた。
「1000年!?気の遠くなる話だな…」
「瑠璃覇は昔…今は無き、稲荷(トウガ)の国という小国で、王の子供として生まれたんだ」
「王の子供!?てことは…瑠璃覇は……」
「稲荷の国の王女だ」
瑠璃覇が実は小国の王族だと知り、幽助達は驚きのあまり目を大きく開く。
「稲荷の国では、男女関係なく、長子が跡を継ぐ。だから瑠璃覇は、ゆくゆくは、女王として君臨するはずだったんだ」
「それが……なんで…?」
「生まれて……すぐにすてられたんだ…」
その事実に、幽助や陣達六人やコエンマ達だけでなく、後ろの席にすわっている黄泉や、その更に後ろの、出入口の横に立っている飛影と軀も、過剰に反応をした。
自分と、境遇が似ているからだった。
「稲荷の国では、瑠璃覇のように紫色の瞳をもつ者は、昔から災いをもたらすと伝えられてきた。過去に、瑠璃覇と同じ紫色の瞳をもった者に、国を滅ぼされかけたり、何人もの国民が無残に殺されたり…。そういうことが何度もあったそうだ…。だから、昔からの掟で、紫色の瞳をもつ者は、問答無用で国から追放するというルールがあった」
「なっ…」
「紫色の瞳をもって生まれた瑠璃覇は、異端児として扱われ、生まれてすぐに、国から何千万キロも離れた森にすてられたんだ。
生まれる前から目も見え、耳も聞こえていた瑠璃覇は、状況をちゃんと理解していた。
自分は……たかが、目の色が違うという…昔から、自分と同じように紫色の瞳をもつ者は、国に災いをもたらすという、自分がやったわけではない、自分がやるという根拠がない、ただそれだけの理由ですてられたということを…。
だから瑠璃覇は……生まれてすぐに、目的を立てた。
くだらない掟で自分をすてた、稲荷の国の者達全員に復讐をするという目的を…」
自分とほとんど同じ境遇に、飛影は更に過剰に反応を示した。
そして、一年以上前、軀の国にいた自分に会いに来た瑠璃覇が言っていた、「似た者同士かもしれない」という言葉を思い出していた。
「…それであいつ……国や…国の掟が嫌いだって……」
「瑠璃覇が…そんなことを言ったのか!?」
「ああ…。オレがここに来たばかりの時にな」
「…そうか」
また、幽助も同時に、魔界に来たばかりの頃、瑠璃覇が言っていたことを思い出していた。
まさか、瑠璃覇が自分以外の人物に、自分の昔の話をしていたとは知らなかった蔵馬は、少しだけ嫉妬すると同時に、瑠璃覇にそれだけ心を許せる者ができたのだと、うれしい気持ちもあり、内心複雑でもあった。
「瑠璃覇は、自分の両親と国に、強い怒りと憎しみを抱いた。復讐をするために、強くなることを誓ったんだ」
「けどよ、いくらなんでも、国の奴が何人いるのかも…そいつらが、どのくらい強いのかもわかんねーってのに、一人でやるなんてムチャだぜ」
「その通りだ。だから瑠璃覇は、強さを得るために、盗賊という道を選んだんだ。強くなるには、実戦が一番だからな。
いずれ、自分の国をつぶすための練習も兼ねていたのと、単純に国が嫌いだからというのもあり、瑠璃覇は国を専門に狙う盗賊になった。国崩しの妖狐と言われている由縁だ。
そして瑠璃覇は、生きぬくため、自分一人で戦いぬくために、様々な技を編み出した。
敵の攻撃から身を護り、攻撃に転じることができるように、風の結界を…。
攻撃をくらってしまった時に、回復できるように、癒しの風や浄化の風を…。
敵がどんな風に動いているのかを把握するために、現状を把握する術を…。
障害物をとりのぞくために、風化の術を…。
敵を翻弄したり、素早く移動するために、風の移動術を…。
戦略の第一歩は情報収集ということで、相手の強さを見抜くようにもした。それだけで、相手を倒せるかどうかわかるからな。
そして、妖力探知。敵がどこにいるかってことがわかるだけでも、ことを有利にはこべる可能性は高くなる。
もちろん、他の攻撃用の技も編み出し、技を磨いていった。毎日…毎日…。
すべては……復讐をとげるために…。
そして、そんな日々を106年過ごしたある日、ついに瑠璃覇は、自分の故郷をみつけ、復讐をとげた。
とげた…はずだった…」
「はず?」
「確かに瑠璃覇は、一ヶ月かけて情報収集をした後、両親をはじめとし、国民全員をみな殺しにして、復讐をとげた。
けど、まだ一人残っていたんだ」
「まさか…その一人ってのが…」
「そう……あの華炎だ…。
瑠璃覇が復讐をとげてから、27年の歳月が経った頃、目的をなくし、無気力に生きていた瑠璃覇の前に、華炎が現れた。華炎は、自分が瑠璃覇の祖母であることを告げた。華炎はあの日、別の国に二ヵ月ほど行っていて、国を留守にしていた。だから瑠璃覇も、華炎の存在を知った時は、とても驚いたそうだ。
そして華炎に会い、真実を聞かされた時、瑠璃覇の心の奥底に眠ったはずの憎しみや怒りが、再び大きく燃え上がった。
けど、それは華炎も同じだった。華炎も、自分の息子…瑠璃覇の父や国民を殺され、国を滅ぼされたことに対して、怒りと憎しみを抱き、瑠璃覇に復讐するために、瑠璃覇の前に現れたんだ。
瑠璃覇は、最初は簡単に倒せると思っていたみたいだ。
けど、華炎はかなり手強く、そう簡単にはいかなかった。それは華炎も同じで、瑠璃覇を簡単に殺すことはできなかった。
それからは、復讐しあいのイタチごっこ。復讐のために戦うが、お互いの力が互角で深手を負うだけ。その傷を癒すために退却。技を磨いて強くなる。そして、また戦う。それを、何十年から何百年という周期で繰り返していた。
それでどんどん強くなり、知名度をあげていった。けど、そのせいで、己の野心のために利用しようとする輩があとを絶たなかった。そのために、瑠璃覇はますます他者を信用しなくなった。敵しかいなかったからな。
そのせいで、1000年以上もずっと独りだったんだ…」
「でも……蔵馬、おめェと出会ったことで、独りじゃなくなった…」
「まあ…な…。瑠璃覇はオレに、初めて他者を好きになり、信用したと言ってくれたよ」
こういうことは、自分で言うのははずかしいので、蔵馬はほのかに頬を赤くしていた。
「だけど、オレも最初から信頼されていたわけじゃなかった。
瑠璃覇とは、ちょうど瑠璃覇が国を滅ぼすために動いている時、オレが盗賊として、ある国の国王の別荘に忍びこんだ時に、偶然出会ったんだ。その時の瑠璃覇は、今とは違って、常に冷たい目をしていた。他者をよせつけず、他者を嫌い、他者を信頼しない、氷のように冷たい目を…。
けど、次第に瑠璃覇は、オレのことを好きになってくれた。オレはうれしかった。純粋に…自分を好きになってくれたことが…。
そうしてオレは、瑠璃覇に、自分が瑠璃覇を好きという証として、金鈴珠のネックレスと、瑠璃覇という名前を贈った」
「名前もか!?」
「言ったろ。瑠璃覇は、生まれてすぐにすてられたと…。だから、名前なんてなかったんだ。強いて言うなら、パープル・アイという異名が、1000年以上もの間、瑠璃覇の名前だった」
「自分でつけたりは…しなかったのか?」
「自分の名前を呼ぶ者はいなかったから、別にこまらなかったそうだ」
蔵馬のその言葉で、瑠璃覇はずっと独りだったということが現実味を増し、周りの者は、全員しんみりとしてしまう。
「オレが華炎のことを知ったのは、それから、1年半経った頃。突然華炎が襲撃をしてきた時だ。
オレといるようになってからも、華炎は度々襲撃してきた。力は互角で、あと一歩というところで、いつも倒せなかったけど…。
それでも瑠璃覇はあきらめなかった。華炎を倒すために、すごい努力をしてきた。技を編み出し、技だけでなく、妖力の探知や、相手の強さを見抜く術を磨いてきた。
瑠璃覇は天才肌タイプだと思われがちだけど、実はすごい努力家なんだ。生まれた時から今までずっと毎日、それらの技を磨くことや、妖気のコントロールはかかさなかったらしい」
「ずっと!?2000年以上もか!?」
そんな、気が遠くなるような時間を、毎日地道な努力を積み重ねていたことに、幽助は驚いていた。
「そういや、瑠璃覇がよく言っていたな。戦いにおいて、もっとも重要なのは、妖気のコントロールだって…。でも、それが強さとなんの関係があるんだ?」
「たとえば…幽助の最大妖力値を100として、幽助が霊丸を使った時の力の消費量が10としよう。
妖力値が最大の状態で霊丸を一発撃つと、残りの妖力は90となる。
けど、それはあくまで、ちゃんとコントロールできていればの話だ。
コントロールをちゃんとできていなければ、消費量が10ですむのが30になってしまう。ムダに妖気を消費してしまう。それでは、あと9発撃てるはずの霊丸が、2発しか撃てなくなる。
その違いだ」
「それは言えているな」
蔵馬が幽助に、妖気のコントロールの重要さを説明していると、今まで黙って聞いていたコエンマが口をはさんできた。
「幽助、お前が霊界探偵として活動をし始めた頃、お前は霊丸が、一日に一発しか撃てなかっただろう?」
「ああ…」
「それは、単純にお前の最大霊力値がまだ低かったというのもあるが、ちゃんとコントロールできていなかったからなんだ。
だが、幻海の弟子となり、修業をしたことで、霊丸が日に何発か撃てるようになり、しかも力の調節もできるようになった。それは、ちゃんと霊気のコントロールを学んだからなんだ」
「その通りだ。コントロールができていない状態では、つねに妖力がたれ流しになっているのと同じだ。たとえるなら、水道の蛇口を全開にして、水をすごい勢いで出しているようなものだ。
だけど、コントロールができるようになることで、使える技の回数が増えるし、放った技を、自分の思いのままに操作することも可能だ。
瑠璃覇は、わずか0.001mmという、微細なコントロールができるんだ。その微細なコントロールができるから、正確に技をあてることができ、使える技の回数が多く、一度に複数の技を使える。
さっきの、森の中から攻撃できていたのは、妖力探知ができるからだけじゃないんだ」
「すげェな…。それを、毎日やってたのか?」
「そう……。すべては華炎を倒すためだ。少なくとも、オレと出会ってからは、ひまさえあれば、ずっと妖気のコントロールをしていた。いつもすごい努力をしていた。オレは…瑠璃覇ほど努力をしている者は、見たことがない…」
それは、自分が生まれた稲荷の国。自分をすてた両親。稲荷の国の国民。そして、偶然にも生き残った華炎に対する憎しみや怒りが、想像を絶するほどにすさまじいのはそのためだったのだと、そこにいる者達は納得していた。
そして幽助は、予選を見ていた時、急にどこかへ行って戻ってきた時の、瑠璃覇のすさまじい殺気や憎悪。瑠璃覇が自分と出会ってから言っていた言葉を思いだし、それらのことは生い立ちが理由だったのだと納得をしていた。
「でも、オレはそんな瑠璃覇を見るのが、痛ましくてたまらなかった。
だからオレは、度々瑠璃覇に言っていた。
昔あったことをすべて忘れて、オレと二人で、ともに静かに暮らそうと…。
国や、国王をはじめとする国民に対して復讐をしようと、生まれた時から決意していた瑠璃覇には、酷かもしれない…。
けど、オレは瑠璃覇を、復讐と……怨恨や…憤怒や…憎悪という感情から、解放してやりたかったんだ」
「……瑠璃覇は…なんて……」
「言った時は、受け入れてくれた…。
だけど……すぐに、憎しみや、怒りや、恨みといった感情にかられて、やはりムリだと言われたよ。
それほどまでに、瑠璃覇の華炎に対する憎しみや怒りは強いんだ…」
最終的には、瑠璃覇は自分よりも華炎への復讐の道をとったので、蔵馬は寂しそうに…そして悲しそうに語っていた。
「おっとお!!華炎選手!!ものすごい巨大な火球をつくり、それを瑠璃覇選手に投げつけたぁああーー!!」
蔵馬が瑠璃覇の過去を話していると、突然小兎の実況が聞こえてきた。
はっとなった蔵馬達が、画面の方へ目を向けると、闘技場では、華炎が直径30メートルほどの巨大な火球を、瑠璃覇に向けて投げていた。
「しかし瑠璃覇選手!!風で結界をつくって、その巨大な火球をはじきとばしました!!」
けど、瑠璃覇は竜巻の形の結界で、華炎の攻撃を防いだ。
「あんなにも巨大な火球を作りだした華炎選手もすごいですが、それをあっさりと防いだ瑠璃覇選手もすごい!!こんなに激しいバトルは、今大会初めてではないでしょうか!?
あーーっとおーーー!!華炎選手、今度はマグマを使って攻撃だああーー!!」
攻撃を防がれてしまうが、華炎は手を休めることなく、今度は山のマグマを使って瑠璃覇を攻撃する。
しかし瑠璃覇は、それを風でからめとり、その風で竜巻をつくると、マグマを巻きこんだ竜巻を、黒龍波のように撃って華炎に返した。
華炎はそれをよけるために跳躍するが、わずかに腹に喰らってしまう。
けど、すぐに体勢を立て直した。
「…なかなかやるな」
「私は、17年もの間、ずっと人間界にいた。そこは、ろくに戦いのない、平和そのものの世界だった。
しかし……人間界にいたからといって、技を磨くのを怠っていたわけじゃない」
「それは…わしとて同じことよ…」
華炎は話しながら手に炎を生み出すと、瑠璃覇に放つが、それを瑠璃覇はあっさりとよける。
よけられても、華炎は次々と炎で攻撃するが、瑠璃覇は風を操って炎を巻きこみ、先程のマグマの時のように、華炎に返した。
しかし華炎は、それを炎の壁で防ぎ、同時に炎を次々と撃っていった。
瑠璃覇はそれを結界で防いでいく。
あまりにもたくさんの炎がとんできたので、結界にはじかれて飛んでいったり、あたらなかった炎が、地面にあたって土煙が起こり、華炎の姿が見えなくなった。
「!!」
その時、瑠璃覇は頭上に気配を感じた。
気配を感じ、上を見てみると、拳に炎をまとった華炎が、瑠璃覇の頭上まで跳躍しており、そのまま降下していき、炎をまとった拳をふるった。
けど、瑠璃覇は後ろへ跳んでよけたので、拳は空振り、地面にめりこんだ。
それだけでなく、めりこんだところを中心に、地面にひびが入った上に、炎が燃えさかった。
それを見た瑠璃覇は、跳んでよけて正解だと思っていた。
炎で強化された強力な打撃攻撃の上に、灼熱の炎で焼かれる二段攻撃。しかも威力はかなりのもの。結界で防いでも、攻撃に転じるのは難しく、やっかいそうだったからだ。
しかし華炎は、自分の攻撃がよけられたというのに、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
華炎が不敵な笑みを浮かべ、瑠璃覇が地面に着地した瞬間、瑠璃覇は左足を何かにつかまれ、足の自由をうばわれる。
「!?」
何かと思い、左足に感じた違和感の正体を確かめるために下を見てみると、信じられないものを目にした。
「あれはっ…!!」
その…信じられないものに、見覚えがある蔵馬は、驚きのあまり目を見開く。
「つかまえた」
その信じられないものとは、瑠璃覇の足をつかまえている、地面から出現した枷と……導火線のついた目玉だった。
「地下爆弾(マッディボム)」
そう…それは、暗黒武術会で鴉が使っていた、マッディボムだったのである。
「ああああああああっっ!!」
華炎が静かにつぶやくように言うと、マッディボムは爆発した。
マッディボムを目にした瞬間、固まった瑠璃覇は、その攻撃を喰らってしまい、爆風でとんでいくと、地面にたたきつけられる。
攻撃はかなりの威力で、瑠璃覇の左足の下腿の部分が、血で真っ赤にそまった。
「くっ……」
華炎がマッディボムを使ったことの謎と、痛みのせいで頭が混乱している瑠璃覇は、小さくうめき声をあげる。
「鴉のマッディボム…。何故…華炎が……」
観客席では、蔵馬達…特に、鴉と直接戦った蔵馬が、華炎がマッディボムを使ったことに、一番驚いていた。
「その技には……見覚えがある…」
かなりの威力であったが、瑠璃覇はよろめきながらも、なんとか立ちあがる。
「それは……一年半ほど前に、暗黒武術会で蔵馬が戦った、鴉という奴の技…。何故……貴様が…」
何故華炎が、鴉が使っていたこの技を使えるのかという疑問を、瑠璃覇は華炎にぶつけた。
「ぐ……」
けど、華炎から答えを聞く前に、瑠璃覇は痛みで顔をゆがめた。
結構大きなダメージをくらった瑠璃覇は、足が崩れ、ひざをつきそうになるが、なんとかふんばった。
それは、瑠璃覇のプライドだった。
ひざをついてなるものか…と…。
しかし、ボムをくらった方の足のひざが、少し折れまがっているため、少々不格好な体勢になり、足に力をいれてふんばってるせいか、爆発をくらったところからは、血がどんどん流れてきた。
「くくくくく。これが…わしの新しい力よ」
苦痛に顔をゆがめる瑠璃覇を見た華炎は、勝ち誇った笑みを見せた。
「支配者級の力を手に入れ、その力で爆弾を創りだす能力を手にしたのだ」
「…まさか!!」
瑠璃覇は華炎の言葉をヒントに、ある考えに至った。
「そう……そのまさかよ…」
瑠璃覇が考えていることがわかった華炎は、またニヤリと笑う。
「蔵馬が暗黒武術会で戦った鴉…。奴は……わしの弟子だ…!!」
それは、衝撃的な一言だった。
華炎が爆弾も扱うようになったこともだが、何よりも鴉の師匠だという事実に瑠璃覇は目を見開き、華炎を凝視していた。
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