第六十五話 ふしぎな能力
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それから、約15分ほど歩いていき、五人は目的地である四次元屋敷にたどり着いた。
「なんだ?この家は」
目的地である四次元屋敷は、一言で表すなら、奇妙な家といった感じで、なんとも形容しがたい不気味さをかもし出している家だった。
「よし、ぼたんは残れ。何があるかわかんねーからな」
「あたしもいくよ!!あんたの霊感がきかない今は、あたししか七つ道具を使えないんだからね」
「仕方ないですね。気をつけて」
五人は門を通り、敷地の中に入っていく。
第六十五話 ふしぎな能力
「ん?」
「あたっ」
家まで歩いていき、扉の前に来ると、四人が急に歩みを止めたので、ぼたんは前にいた桑原の背中にぶつかってしまう。
「なんだよ?急に」
なんで突然止まったのかわからず、ぼたんが文句を言おうとすると、扉の前にはり紙があることに気づいた。
その紙にはこう書かれていた。
〈この家に入った者は、決して『あつい』と言ってはいけない。もし言えば…………。〉
読んでみてもよくわからない、何かの警告のような文章だった。
「なんだ!?このはり紙は……」
「「あつい」と言っちゃいけないって、どういうことだい?」
「ナゾナゾか?」
「いえ、警告でしょう。理由はよくわからないけど…。とにかく注意して」
「おう」
蔵馬が扉を開け、中に入ると、四人も続いて中に入っていった。
「何、これ?」
中に入ると、更に自動扉があったので、その中に入った。
太陰太極図のような形の扉をくぐると、その中には、オブジェのような明かりに、熱帯魚が泳いでいる水槽、顔の模型の口から熱風が吹き出しているものがいくつもついた、シャンデリアのような明かりがある、とても奇妙な部屋だった。
「何?この部屋」
五人が前に進むと、自動扉が閉まる。
その時、瑠璃覇、蔵馬、飛影の三人は、妙な違和感を感じた。
「なんちゅー部屋じゃ」
「ほんと…」
「蔵馬、瑠璃覇、気づいてるか?」
「ああ、入り口を入った瞬間からね。まるで、異次元に入ったような違和感を感じたよ」
「なんだ?この感じは…」
「ようこそ」
その時、部屋の奥から男の声が聞こえた。
「みんなそろって来てくれたようだね」
部屋の奥…階段の前に、眼鏡をかけた、蔵馬と同じ制服を着た男が立っていた。
「てめェか…。こんなくだらねェまねしたのは!!」
「フッフッフッフッフッフッフ。僕一人の計画じゃないけどね」
「あ!!てめェ、浦飯を呼び出した奴らの一人じゃねーか!!」
「「海藤……!!」」
「え!?知ってんのか」
「海藤優…。盟王学園の同級生だ。特に親しいわけじゃない。当然、オレのことも、瑠璃覇のことも、飛影や幽助、桑原君のことも、話してはいない。
海藤、なぜキミがオレ達のことを知っている?幽助をさらった目的はなんだ!?」
「フフ…。ある人が教えてくれたんだ。キミ達が、暗黒武術会とかいう格闘大会で、優勝したってことをね…」
軽く笑みを浮かべ、蔵馬の問いに答えると、海藤は側にある椅子に腰をかけた。
「でも意外だったな。南野と銀ってさァ、すごい力持ってんだってねェ。ちょっと見せてくんない?例の、植物や風をあやつるってやつ」
海藤の口から自分の能力のことが出ると、蔵馬と瑠璃覇は、海藤を鋭く睨みつける。
「ハハ…怖いな。その顔学校じゃ、一度も見せたことないだろ。オレもさ、最近自分に、妙な能力があることを発見してさあ。力だめしっていうのかな…。君達に挑戦してみたくなったんだ」
「なんだとコノヤロー!!なめた口きくんじゃねーぞコラァ!!」
桑原が怒ると、近くにいた飛影が剣をぬいた。
「思い知らせてやるぜ。貴様がどれだけ無謀な戦いを挑んでいるかをな」
そして、その場を跳躍すると、海藤に向かっていく。
「ムダだよ」
「ほざけ」
海藤の前まで来ると、躊躇なく剣をふり下ろすが、剣は海藤にあたる前に、見えない壁にはばまれて折れてしまう。
「フッフッフッフッフッフッフッフ」
「あ…」
目の前で起きた出来事が信じられず、飛影は目を丸くした。
飛影の近くでは、今しがた折れた剣の先が、金属音をたてて床に落ちる。
「何?」
「ほらね」
驚く飛影とは逆に、海藤は表情を変えずにすわっていた。
「一体どういうこった?剣がヤツにあたる前に折られちまった」
「この部屋はね、言葉だけが力を持つ世界なんだよ。この中では、オレのルールに従って戦うしかないんだな、キミ達は」
「ルールだと?」
「あのはり紙のことね」
「つまり、あのカッコの中に書いてあった言葉を、言ってはいけないと…」
「おそらく…」
「オレね、ある日自分の周りに、妙な空間を創れることに気がついたんだ。だからね、この空間の中では、乱暴な行動はできない。誰もね」
「く……」
よりによって、戦う力のない…いわゆる一般の人間に歯が立たないとは思わず、飛影は悔しそうに海藤を睨んだ。
「飛影くんて言ったっけ」
「ん?」
「キミは剣技と妖術拳法の使い手だってねェ。けど、オレの領域(テリトリー)の中じゃ、ただのチビだぜ」
海藤が、見下すように笑いながら挑発すると、飛影はその場を立ちあがる。
「ん?」
「落ちつけ飛影!!奴の挑発だ。のっちゃいけない」
「フン。言ったらどうなるっていうんだ!?言葉でオレを殺せるとでもいうのか!?」
「ハ…。言えばわかるよ」
「たかが『あつい』という言葉でか!?」
「あ~~あ、言っちゃったね」
その瞬間、飛影の視界が一瞬ゆがんだかと思うと、体がすさまじい光につつまれる。
「あぁっ!!」
「飛影!?」
光ったかと思うと、飛影の体から魂がぬけ、海藤の手もとへとんでいった。
「オレの領域の中でね、言っちゃいけないこと言うと、魂をとられちゃうんだよね」
魂がなくなったせいで、飛影の体は灰色になって動かなくなってしまった。
「飛影!!」
「しっかりして」
「おい飛影」
「飛影」
桑原とぼたんは飛影に駆け寄っていき、声をかけるが、当然反応はなかった。
「これで、"人質"が二人になったね。浦飯君は2階にいるよ。
さあ、どうする?帰る?戦う?」
「く…」
予想外の…しかも最悪な事態に、蔵馬は海藤を睨みつけた。
「オレだって努力したんだよ。力をつけてから一か月ぐらいかな……。まず自分の力を知ることから始めたよ。同じ仲間同士では、領域(テリトリー)と呼んでるけどね。オレの領域は半径10m。出入りは自由さ。ただ、多少の霊能力を持ってる奴なら、入った瞬間に違和感を感じるらしいね。能力はごらんの通りさ」
「では、その能力を打ち破り、お前に勝てば、飛影の魂は元通りになるんだな」
「さあねェ~~~」
とぼけた声でしゃべる海藤に、蔵馬の顔がけわしいものとなる。
「負けたことないからわかんないな」
「てめェ!!いつまでもいい気になってんじゃねーぞ、コノヤロー!!」
「ほんとのことを言ってるだけさ。ま、とにかく、このまま帰るか、オレと戦うか、二つに一つ。キミらの意志にまかせるよ」
「いや!!選択肢はもう一つあるぜ!!」
「ん?」
「もう一つ…って?」
海藤が言ったことを否定する桑原に、一体どんなものかと、蔵馬も瑠璃覇も注目した。
「はて、思いつかないな。なんだい?」
「飛影のことはほっぽって先へ進む!!これしかねェ!!」
「あらー」
それは、飛影を見捨てていくというものだったので、後ろにいたぼたんがハデにずっこけた。
「ちょいと!!飛影の魂をそのまんまにして行こーってのかい!?」
「その通りでー!!ぼたん、オレァな、頭にきてるんだ。蔵馬の忠告を無視して、禁句(タブー)を口にした、飛影の身勝手さ加減によ」
「ん~~…」
確かに、桑原の言うことにも一理あるので、ぼたんは何も言い返せなくなる。
「そんなバカの面倒なんか、見てられますかってんだよ」
「そうだね」
「何?」
「オレもそれが一番いいと思うな。キミ、意外に頭いいじゃん」
「大きなお世話だ、このやろう」
「でも、せっかくの名案だけどね。もう先手は打ってあるんだ」
そこへ、奥のドアから別の男が出てきて、ドアに鍵をかけた。
「なんだ、てめェは!?」
「フッフッフッフ」
男は不気味に笑い、見下すようにこちらを見ていた。
「奥に進むドアはあそこ一つ。カギは柳沢が持っている」
「ほぉ~~。そらいいこと聞いたぜ」
ニヤっと笑うと、桑原は海藤の横を通りすぎていき、階段をあがり、柳沢のもとへ歩いて行った。
「おいてめェ、悪いことは言わねェ。カギよこしてそこどけや」
「フン」
柳沢は鼻で笑うと、おちょくるようにガムをふくらました。
そして、ガムがわれると、唇をひとなめし、口を開く。
「やだね」
「てめ…。このオレが誰だかわかってんのか?オレが大人しく頼んでるうちに…」
「じゃあさァ…」
柳沢は桑原がしゃべってる途中で言葉を遮る。
「オレを殴ってムリヤリうばえばァ?ね?く~~わちゃん」
わざとらしく鍵をちらつかせ、人をおちょくる態度の柳沢に、桑原はブチ切れた。
「ぐっ……ぬ…ぬわぁにィ~~!?」
顔中にたくさんの青筋が浮かび、歯をギリギリと噛みしめる。
「上等だぁあああ!!」
頭に血がのぼった桑原は、柳沢に殴りかかろうとした。
「バカ!!やめろ、桑原!!」
それを瑠璃覇が止めようとするが、桑原の拳の勢いがなくなることはなかった。
「タ……あ…」
柳沢に殴りかかった桑原は、柳沢の周りにある結界にはばまれてしまい、手首が曲がってしまう。
「ぬわあああ!!」
その痛みに、桑原は手首をおさえながら、膝を床につけてうずくまった。
「アッハハハハハハハハ!!ハハッ。あんた、忘れっぽいね~。暴力は、海藤の領域の中じゃ不可能なんだよ。やさしくしてくれなきゃダメじゃな~い。ねェ?」
先程瑠璃覇が止めたのはこのことで、変わらずおちょくる態度で桑原の頭をなでる柳沢に、桑原は悔しそうに睨みつけ、拳をにぎりしめた。
「ッヘヘ…」
そして、これ見よがしに鍵を見せつけると、ニヤニヤと笑いながら、鍵を制服の胸ポケットにしまった。
「チッキショー…」
暴力ではどうすることもできない。領域の出入りは自由だが、幽助がこの先でとらえられている以上、ここから出るという選択肢はない。
それがわかった桑原は、悔しそうにしていた。
「さあ、どうするのかな?」
「どうするもこうするも……ひとつしかないだろ…。暴力行為はできない。かと言って、後にも引けない。……となれば…」
「ああ…やらざるを得ないようだな。お前の"ルール"で」
海藤は再び、どうするかを蔵馬に聞くと、瑠璃覇と蔵馬は、睨むような目を海藤に向けた。
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