第八十三話 死闘、再び
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幽助達がトンネルの中を通っている頃、トンネルの結界がある場所では……。
「妖怪が来たら退治しろって言われたが、一匹もこねェぜ」
「くるはずがないさ。途中でオレ達の凄まじい霊気に気づいて、あわてて引き返してるんだろう。我々特防隊の手にかかれば、A級妖怪とて無事にはすまん」
「へっ、また妖狐を追いつめた時の自慢話か。聞きあきたぜ」
「はっ」
そこには、大竹に命を受けた三人の特防隊が待機をしていた。
すると、倫霾と舜潤の二人が話していると、突然結界の方へ顔を向けていた俠妃が、後ろの…人間界側の穴がある方へふり向いた。
「待って!!ものすごい妖気が近づいてくる!!」
「なに!?」
俠妃が人間界の穴の方へ目を向けると、倫霾と舜潤の二人も、そちらの方へ目を向けた。
「人間界の方からだ」
三人が目を向けた方向から、強大な妖気がこちらに向かってくるのを感じた。
「バカな!!何故人間界から妖気がくるんだ」
「ど…どうなってんだ!?」
三人が警戒してると、プーの姿が見えた。
「おらおら、どけどけーー!!」
「「「わっ」」」
そこへやってきたのは、プーに乗った幽助と瑠璃覇とコエンマだった。
三人が固まってる間に、幽助達は結界を通りぬけ、魔界へと向かっていく。
「い、今のは浦飯幽助!!」
「コエンマ様とパープル・アイも」
「抹消に失敗したんだ」
「そ…それにしても、今の妖力…」
「ああ、ケタ違いだ」
あまりに強い妖力故に、三人は通りすぎていった幽助の後ろ姿を見て、呆然としていた。
第八十三話 死闘、再び
一方、魔界へ向かった桑原達は仙水に勝負を挑んだが、圧倒的実力差の前に、手も足もでない状態だった。
しばらくの間戦っていたが、まったく歯がたたず、三人はぼろぼろで血だらけ。その上、倒れてほとんど動けなくなっていた。
そんな三人を、無傷の状態の仙水は、見下ろしながら不敵に笑う。
「苦しめてすまなかったな」
「さっさとやれ。貴様は運がいい」
飛影は膝をついていた状態から、地面におしりをつけてすわる。
「今は、お前の力が上だった。それだけのことだ。そして、魔界ではそれが全てだ」
蔵馬はうつぶせのまま、仙水がいる方を見上げた。
「(すまねェ……浦飯。こいつ、めっちゃ強いわ…)」
桑原は、起き上がる気力すら残っていないようで、仰向けの状態で、空を仰ぎ見ていた。
仙水のあまりの強さと、幽助がいないせいか、三人はすでにあきらめていた…。
「楽にしてやるよ」
仙水はとどめをさそうと、三人に手を向け、攻撃しようとした時だった。
穴の方からすさまじい妖気を感じとり、攻撃をやめ、穴の方に目を向けた。
「(何だ!?このすごい妖気は…。穴の方から向かってくる。まさか…」
仙水だけでなく、三人もそのすごい妖気に気づいて体を起こし、穴の方に注目する。
穴の方からこちらに向かってきたのは、プーに乗ってやってきた幽助。そして、瑠璃覇とコエンマだった。
「仙水、待たせたな。さあ、続きをやろうぜ!!」
全員が驚いてる間に、プーは桑原達が戦っている断首台の丘へと降り立った。
「なっ…な!?」
桑原は驚きのあまり、言葉がうまく出てこなかった。それは、飛影と蔵馬も同じで、三人は、幽助がプーの背中から降りるのを見て、目を丸くしていた。
「まさか!!」
確かに殺したはずなのに、甦った幽助。
その幽助を見て、仙水は、ある答えにいきついた。
「幽…助?」
「一体………」
確かに死んだはずなのに、自分達の目の前に生きて現れたので、何がなんだかわけがわからない状態だった。
「ワリィワリィ、遅れちまってよ!!いや~~~間に合ってよかったぜ。オメーら、なんかかん違いしてただろ。オレがテメェ自身のケンカ人に任せて、ケツまくると思ってたのかよ」
プーの背中から降りると、瑠璃覇も一緒に三人のもとへ歩いていく。
「う、浦飯!!オメェ…確かに心臓止まってたぞ。それにオマ…それ!!それ、妖気じゃねーか」
「そうらしいな。それに、実は今もまだ心臓は止まってんだけどよ。オレの先祖ってゾンビかな」
「くっ」
「くっく」
「ふっ」
突然笑い出した瑠璃覇と蔵馬と飛影の三人に、幽助と桑原は目を丸くした。
「くくく。ははは」
「はっはっはっは」
「あはははははは」
「へへへ」
三人の笑いが大きくなると、幽助も笑うが、桑原だけが、今いち輪の中に入っていけないでいた。
「心配ない。心臓の代わりに、「核」が働いているはずだ」
「核?」
「魔族の心臓だ」
蔵馬が言った意味がわからず、頭に疑問符を浮かべていると、コエンマがやって来て、蔵馬の代わりに、桑原の質問に答える。
「何が…一体どうなってるんだよ?」
「あまりのことにワシも驚いていたんだがな。幽助には、魔族の血が流れていた」
「つまりだ。オレの遠いご先祖様が妖怪で、その血がオレを甦らせてくれたんだとよ」
「な、なんだと!?」
この事実には、さすがの仙水も驚いているようで、目を丸くして幽助を見ていた。
「転生…!?魔族大覚醒か!!」
「さよう」
「(オレがあの時感じた迷いはこのせいだったのだ)」
洞窟で幽助にとどめをさす時に迷った原因がわかり、同時に、うれしそうに口角をあげて笑っていた。
「まさか魔族だったとはな。つくづくわけのわからんヤツだ」
「ホントだよな。オレ自身、あんま実感ねーけどよ。見たところ、全然変わってねーし。ま、とにかく、今度こそ決着がつけられるってわけだ。
仙水!!待たせたな。続きやろうぜ」
幽助は戦いを始めるため、妖気を放出した。
「ちょっと待て。気が変わった。奴と一対一(サシ)でやりたくなった」
その戦いに、飛影が待ったをかけた。
飛影はやる気満々で、立ち上がると妖気を放出する。
「いや、オレがやる」
飛影だけでなく、蔵馬までやる気満々で、同じく妖気を放出した。
「待て、ここは私がやる。お前らはもういいだろう。私は一回もやっていないんだ。私にゆずれ」
そして、瑠璃覇までもがやる気満々になっており、妖気を放出していた。
「どうしたんだオメーら」
三人がやる気満々になってるのは、幽助が戻ってきてくれたからなのだが、当の本人はまったくわかっておらず、急にやる気になった三人のことを、疑問に思っていた。
「おいおい、オレが死んでる間に何があったんだ!?まるで、何年か特訓した後みてーだぜ。瑠璃覇もなんか、さっきよりも元気になってるしよ…」
「へへ。へへへへ」
幽助が桑原に問いかけると、桑原もうれしくなって、目じりに涙を浮かべながら笑い出した。
先程まで、まだ幽助が生き返った実感がなかったのか呆けていたが、ようやく幽助が生き返ったという実感がわいたのか、桑原は笑いながら霊気を放出する。
「待て!!オレが先だ。今なら勝てそうな気がするぜ」
桑原も同じように立ちあがり、仙水とやろうとしていた。
「錯覚だ、バカめ」
「てめェ!!もういっぺん言ってみろ!!」
「バカめ」
「バーー?バーーカ!?」
やる気になっていたのに悪態をつかれ、再度同じことを言われると、桑原は奇声のような声を発しながら悔しがっていた。
「(浦飯が戻ってきたことで、あの3人に力が戻った。いや…前以上の力が。それにあの娘も、洞窟にいた時よりも、見るからにパワーアップしている。
コエンマ………いい奴等を見つけたな。決心が鈍りそうだよ)」
だが、そう思いながらも、仙水は再び決意を胸に、幽助を力強い目で見た。
そして、仙水が見ると、五人もまた、仙水を力強い目で見る。
そんな彼らを見ると、仙水は聖光気を放ち、戦闘の準備を整える。
「オメーらの気持ちもわかるがよ。あいつはオレが倒してーんだ。たのむ」
同じく妖気を放ち、ふり返った幽助の目を見た四人は、言葉を返すことができなかった。
飛影は無言で幽助を見ており、桑原は生つばを飲みこみ、蔵馬と瑠璃覇は静かにうなずいた。
「すぐに追いついてやるぜ…。奴にも、お前にもな」
飛影の言葉に幽助は口角をあげると、仙水の方へ歩いていった。
仙水も幽助の方へ歩いてきており、いよいよ、二人の最後の対決が始まろうとしていた。
「フウウ」
「コォオオ」
二人は向かい合うと、自分の気を高めた。
幽助が指の関節を鳴らすと、二人同時に上に跳んだ。
上に跳ぶと、二人は激しい殴りあいを始めた。
そのすさまじい力のぶつかりあいに、一瞬にして、丘の真ん中の部分…ちょうど、二人がいる真下の部分が陥没し、丘の砕けた岩が舞い上がる。
殴り合いが続いたが、仙水は隙をついて、幽助を殴りとばした。
だが幽助は、舞い上がった岩を足場にして、体勢を立て直そうとするが、続けざまに仙水が蹴りを入れてきて、岩を破壊した。
幽助は、蹴りをかわして仙水の後ろに跳ぶと、仙水が丘に着地をした隙を狙って、霊丸を撃った。
霊丸はかなり大きく、仙水は逃げきれないと思ったが、霊丸は仙水の顔の横スレスレのところを通過し、その時に気鋼闘衣を貫いた。
その様子に、この戦いを見ていた全員が驚く。
そして、仙水にあたらなかった霊丸は、後ろの岩山にあたり、破壊された。
それは、爆発が起こるすさまじさだった。
「あれ!?はずれちまったぞ」
てっきりあたると思っていたのに、気鋼闘衣を貫くだけだったので、幽助はふしぎそうにしていた。
だが、桑原達三人が、どうやっても傷ひとつつけることも敵わなかった気鋼闘衣を貫いた上、後ろの岩山も一瞬にして消しとんだので、今の霊丸の威力は、相当に強いものだということがわかる。
仙水も、それをまともにくらったらただではすまないことがわかった。
今の攻撃に、仙水は幽助と戦ってから、初めて冷や汗をかいた。
「おっかしいな~~」
そんな仙水をよそに、幽助は霊丸があたらなかったのを、ただただふしぎに思い、指先を見ながら考えこんでいる。
「完全にとらえたと思ったが」
「力をもて余しているんだ。自分の力に、感覚が、まだ追いついていないんだ。あいつのことだ。闘いながら、すぐ慣れるだろうがな」
「ただ……あまり悠長なことも言ってられないぞ」
「浦飯!!無駄使いすんじゃねェ。洞窟に来る前に、一発撃っただろーが」
「あっ、いけね。そういや霊光弾も一発撃ったな。あと一発か。ま、お楽しみは後にとっとくか」
幽助が指先を見ていると、仙水は気を高めはじめた。
「ぬうううっ」
気を高めると、仙水は、今までまとっていた気鋼闘衣をといた。
「気綱闘衣をほどいた!!まだ霊力があがるのかよ」
「攻撃主体に切りかえる気だ!!」
気が高まると、仙水の闘衣が、気鋼闘衣とはまた別の闘衣に変わる。
「へっ、おもしれーじゃねェか」
それを見ると、幽助も妖気を放出する。
二人は気を放出しながら向かい合っていた。
「プーー!みんなを乗せて、高いところまで飛んでくれ。ちょっとハデな闘いになりそうだ」
幽助がそう言った後、仙水が動くのと、プーが飛びたつのは、ほぼ同時だった。
コエンマはすばやくプーの背中に跳び乗り、プーが桑原を足でつかみ、飛影は跳躍してプーの足をつかんだ。
そして、蔵馬は浮葉科の魔界植物で、瑠璃覇は風の力で、それぞれ飛び上がる。
五人が空中に避難すると、仙水は幽助のもとへ向かってきて、幽助の顔面を殴った。
続けて下から拳をふるうと、幽助は殴りとばされてしまう。
そして、今仙水が拳をふるった衝撃で、拳をつきだした方向に丘がえぐれたかと思うと、丘の一角が破壊される。
空中で体勢を立て直した幽助は、妖気を放出すると仙水に向かっていき、仙水もまた、ふっとんでいった幽助の後を追うように、まっすぐに向かってきた。
二人はすごい早さで殴り合っていた。
最初は互角だったが、次第に幽助は顔に攻撃を受け、防戦一方になっていく。
そして、隙をついて仙水に腹を殴られ、後ろへふっとんでいくが、後方にある岩に着地する。
今の攻撃に、幽助は舌なめずりをして楽しそうに笑っており、そんなにダメージを受けてはいない感じだった。
「一瞬……ほんの数秒だぜ…。あのでけェ岩棚がすっとんじまった」
今まで幽助と仙水が戦っていた丘は、二人が着地した棒のようになってる部分を残し、見る影もないほどに破壊されていた。
その今の出来事に、桑原は冷や汗をかいた。
「よぉ、もっとだだっ広いとこでやろうぜ。何もねーとこの方が闘いやすいだろ?」
「うむ。いいだろう」
「ずーーっと向こうに高い岩山が見えるだろ。あそこら辺から岩と砂だけになってるはずだ」
「まるで、来たことがあるみたいだな」
「……多分あるんだろうな。ずっと昔の、オレの先祖がよ。行くぜ」
幽助の言葉を合図に、二人は一瞬にしてそこから消え、すごいスピードで岩山へ向かっていった。
「どこ行ったんだ!?」
あまりの早さに、桑原は二人の姿をとらえることができず、辺りを見回す。
「あそこだ」
それを、飛影がいち早く見つけ、あごをさした先には、二人が小さな岩山を足場にして、目的地に移動していた。
「プー、二人を追ってくれ!」
コエンマに言われると、プーは二人が行った方へ移動を始め、プーに乗っていない瑠璃覇と蔵馬も一緒に追いかけ始めた。
「なんだ?でっけェ鳥かと思ったが、これがあのプー助なのか!?」
「プーは幽助にシンクロしてるからな。幽助とともに、プーも変化したんだ」
「だって、浦飯は全然変わってねーぜ」
「見た目はな」
「けど……中身は確実に変わっている…」
一方幽助は、移動している最中に、突然強い鼓動を感じた。
「なんだ?」
何事かと思い、移動しながら胸の方を見た。
「ま、いっか」
けど、体はなんともないので、特に深く気にすることなく、そのまま進んでいった。
二人はあっという間に目的の場所についた。
目的地に着くなり、二人はすぐに殴りあいを始める。
「もうおっ始めてやがる。ケタ違いの速さだ」
二人が殴りあいをするだけで、岩山は簡単に崩れ落ちていった。
岩山が崩れると同時に、二人は砂地の上に移動し、また殴りあう。
そして、何度か殴りあうと、二人は同時に向かっていき、お互いがお互いの手を組んで押し合っていて、一歩もゆずらない状態となった。
「ぐぎィィ」
「むうう」
激しい気のぶつかり合いで、二人の周りには竜巻が起こり、桑原達はそれ以上近づくことができなかった。
「またエネルギーに包まれやがった」
「闘気の放出で、竜巻が起きているとは…」
「これ以上近づくのは危険だ。S級二人分の力だ。巻き添えをくえば一撃で全滅だ。これが、S級クラスの闘いか…!!」
二人はエネルギーに包まれ、周りには竜巻が発生する、すさまじい戦いだった。
幽助と仙水は、竜巻の中心で力の押し合いをしていたが、仙水が隙をついて幽助を蹴りとばした。
力の拮抗がなくなったことにより、竜巻はなくなった。
仙水に蹴りとばされると、幽助は川で石投げをした時の、水面をはねる石のようにふっとんでいき、姿が見えなくなる。
「出て来いよ。後ろにいるんだろう。砂の中を移動しても、その妖気を隠さないと意味がないぞ」
砂煙がなくなり、少しすると、仙水はそのままの姿勢で話しだした。
仙水に指摘されると、後ろから幽助が、砂の中から現れる。
「ヘヘへ、バレてた?なんかオレの妖気、暴れ馬に乗ってるみてーで、なかなかコントロールできねーんだ、これが。だが、大分慣れてきたぜ」
けど、幽助にそう言われても、仙水は余裕のある、不敵な笑みを浮かべる。
「気にくわねーな、その余裕ヅラがよ。まだ何か企んでやがるのか」
「何でもないさ。極々つまらんことだ」
「教えろよ」
「今はまだ言えんな」
「ケチ!!本当は何もねーんじゃねーか!?」
「くくく、そうかもしれん」
幽助と会話しながらも、仙水はその笑みをたやすことはなかった。
「おい飛影…どう見る。二人の力を」
「ん…」
「幽助が、まだうまく力を使い切れない点を差し引いても、まだ少し仙水が上か…」
「ここからは、幽助が、いかに力を使いこなせるようになるかで、勝敗が決まるだろうな…」
五人は、これから幽助と仙水がどう出るかを、空の上から見守っていた。
「よーし、そっちがその気なら、体に聞くかんな」
幽助は、仙水が何を考えているかを聞きだすため、再び戦おうと前に出た。
だがその瞬間、また先程の鼓動を感じ、足を止めた。
急に足を止めた幽助を、仙水はふしぎそうに見る。
「な、なんだ?」
鼓動は段々と大きくなっていき、幽助は自分の胸をみつめた。
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